説明

記憶型表示装置の電源

【課題】書替える期間と電力を供給しない期間の電力の平均値が非常に少ない記憶型表示装置を提供する。
【解決手段】記憶型表示装置6は、小さな電力供給能力の蓄電池1を使い、これと並列に大きな容量値の蓄電器2を接続し、書替え時の大きな電力は主としてこの大きな容量値の蓄電器2から供給する。また蓄電器を充電する電源として電力供給能力の小さな太陽電池或いは電磁波の電力変換器を使用することで自然エネルギを活用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
低消費電力特性の記憶型表示装置の電源回路
【背景技術】
【0002】
情報を表示する装置としてテレビ、パソコンのモニタ、PDAの画面、携帯電話の画面、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイを使用する店頭、公共施設に設置されているが現在は高速(例えば1秒間に60枚の画面)対応の表示内容デバイスが用いられ動画を主体とした情報を表示している。これに対し紙に置替わる様な使い方では電子ブック(本の1ページだけ表示し、読む速さにあわせて次のページの表示に切り替える)、或は電子広告板(電車の吊り下げ広告、建物の壁面に貼り付けるポスタなど)ではページの内容を変える間隔は数秒、或は数日でよい。このような要求に対し消費電力が少ない記憶型表示装置が開発されている。電力は書替えのときだけ必要で書替え後は次の書替えに反応する動作状態を保持するだけの極少の待機電力を与えておけばよい。非書替(書替後の表示期間)時間に対し書替時間が非常に少ない事と表示画面の照明が外光の反射を用いる為に平均の消費電力は非常に少なくなる。
本発明は非常に少ない平均消費電力に見合った電力を供給する電源構成を供給する。
【事例のもつ課題】
【0003】
特許公開広報:H10−17620
装置の電源として太陽電池或は電磁波の電力を表示装置の電源に使用することを示しているが書き込み時の電力が太陽電池の電力を超えたときの対応策が明記されていない(太陽電池の電力を大きくする事は記憶型表示装置の持つ低消費電力に反するものである)
特許公開広報:2006−201461
装置の電源として太陽電池と蓄電池の組み合わせが示されており光のエネルギが少なくなった時は蓄電池から電力供給すれば書替えが可能となる電源構成にはなっている。ただし蓄電池の電源容量は書替え時の電力を供給できる大きさが必要になり、記憶型表示装置の持つ低消費電力に反するものである。
特許公開広報:2008−116972
装置の電源として電磁波と蓄電池(2次電池)、或はスーパーキャパシタ(電気2重層コンデンサ)の組み合わせが示されている。電磁波と蓄電池の組み合わせでは蓄電池が書替え時の電力を供給できる大きさが必要になり、電磁波とスーパキャパシタの組み合わせでは書替え時の電力をスーパキャパシタに充電できる電磁波の大きさ(送信電力を大きくする、送信アンテナを大きくする、受信アンテナを大きくする等)を大きくする必要があり記憶型表示装置の持つ低消費電力に反するものである。
特許公開広報:2006−47671
所定の画像情報を含んだ電磁波を電磁結合による相互誘導で通信を行い、電磁波から電力をえて蓄電部に蓄電することが可能であり、この蓄電部から電力供給する事が可能であって、電源装置を不要としている。「蓄電部」はおおよそ電力を何らかの構造で一定時間保持しておけることが可能なもの全てを含み、たとえば平滑部で用いられるコンデンサ自体を蓄電器としたり、スーパーキャパシタを別途設けたり、2次電池を蓄電池としたりできる。
と示されているが画像情報を含んだ電磁波を送信し、電磁結合によりその電力を装置の電源として使用する周知の内容説明で情報を送る電磁波を利用するので電子ペーパの書き込みが終わった後の必要な電源を確実に得ることが難しい。
特許公開広報:2008:203842
所定の画像情報を含んだ電磁波を送信し、電磁波を受信するアンテナ部からの信号を整流、蓄積する蓄積部と蓄積された信号を降圧或いは昇圧する電源回路部の構成が示されているが電圧調整の為に降圧あるいは昇圧することは周知の内容であり目的・効果が明確ではない。
既に公開されている特許では太陽電池の使用、電磁波の使用、蓄電池の組み合わせ、電気2重層コンデンサとの組み合わせを示しているがいずれも公知の技術を組み合わせただけで記憶型表示装置の持つ特性を満足する構成ではないと考えることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は現在、普及している逐次書替え型表示装置が大きな電力を消費するのに対し記憶型表示装置は非常に低消費電力であるが更にこの特徴を活かす電源構成を実現する事である。
記憶型表示装置では平均電力は非常に小さくなるが書替え時は大きな電力が必要になる。
電源の電力供給能力は最大電力で設定する、つまり書替時の電力供給能力が必要になる。
非常に小さな平均電力の供給能力で電源を構成できれば記憶型表示装置の持つ低消費電力の長所を更に発揮できる。
【課題を解決する為の手段】
2次電池は装置の待機電力を供給する目的と電気2重層コンデンサを充電する目的の機能を有する。電気2重層コンデンサは表示の書替え時の電力を供給する(一部は2次電池からも供給される)。太陽電池は装置周辺が明るい状態で発電を行い2次電池を充電する。この装置の書替え時間と待機時間の比率は100倍位から数万倍である。従って電気2重層コンデンサを充電する時間を長くする事ができる、つまり2次電池の電力容量を小さくできる。
太陽電池での2次電池の充電も装置の設置環境が明るいときに発電されるので充電時間を長く取れるので太陽電池も小さな電力のものでよい。
従って記憶型表示装置の書替えの電力を非書替時の充電できれば小さな電力の電源(電池)で良い事になる。
【0005】
記憶型表示装置では画面表示を行っている待機時間の消費電力(瞬時)は数μWから数十μWであり、書き換え時の消費電流(瞬時)は数Wになる。待機時間と書替え時間の比率が100倍位から10万倍なので平均電力は100mWから100μWとなる。
【0006】
記憶型表示装置では画面が表示されている期間は待機状態となるので表示を保持する回路電力は不要である。一方、次の書替え信号が到達した時に回路を動かす必要があるので信号到達を判断できる最低限の回路を動かしておく必要がある。これが待機電力になる。
現在は回路特性が改善され消費電流で数μAになっている。使用する電池の電力によるが1年から数年の寿命となる。
【0007】
次に画面を書き換えている期間は書替え信号を受信し、書替え信号に変換する回路の電力、マトリックス構成の画面の各部分を書き換える為の電力が必要になる。これが短時間であるが数Wの電力となる。
つまり、装置を動作させる電源は短時間であってももっとも大きな電力を供給できる性能が必要になる。
【0008】
待機状態の電力と書替え時の電力の平均をとると書替え時の時間が非常に短いので平均電力にすると待機電力に対し少し大きくなった位の電力になる。
書替え時の短時間の大きな電力を時間軸で分散できれば電源の電力は平均電力位まで小さくできる。
【0009】
電源(電池)の電力供給能力が小さな時に能力を超える電力を短い時間だけ取り出すには電源と並列に大きな蓄電器(コンデンサ)を接続すれば良い。
【0010】
具体的な回路構成は以下のようになる
【0011】
電源供給部は電池(2次電池)となる(電池を使用した時)
電池の電力供給能力は装置の平均電力をまかなうレベルとする。
【0012】
上記電池に並列に電気2重層コンデンサを接続する。
【0013】
装置が待機状態の時には待機電流は2次電池から供給される。
同時に電気2重層コンデンサを充電する。
【0014】
書替え時には大きな電流がながれるので電池の供給電流を超えたときには電気2重層コンデンサから大きな電流が供給される。
電気2重層コンデンサは電流が流れる事で電圧低下する。動作時間内に回路許容電圧以下にならないコンデンサ容量値に設定する。
電池側に電流が逆流させない回路を入れる。
【0015】
放電により電池電圧が低下するので常時、充電を行う事で2次電池の電圧低下を抑える。
充電の手段として太陽電池を使用する。
【0016】
太陽電池の負荷に2次電池を接続する。太陽電池の出力電圧が2次電池電圧を超えると充電電流がながれ充電される。
2次電池から太陽電池への電流が流れないように逆流防止回路を入れる。
【0017】
この2個の回路構成で書替え時の大きな電流を流す事ができ、2次電池の放電が進み電池残量が低下した時に自動的に太陽電池から充電する事ができる。
【0018】
待機時の電力、書替え時の電力と時間から電源(電池)電力と蓄電器の大きさの概略値は以下の様になる。
待機電力:100μW(2.4mWh/日)
書替え電力:20W(55.6mWh/日)
書替え時間:10秒
書替え頻度:1回/日
算出平均電力:58mWh/日
電池電力:300mAh(1.2Vの2次電池5本では1800mWh)
電池寿命:30日(1ヶ月)
書替え時の電流:3.4A(20W/6V≒3.4A)
蓄電器容量:20F(20W動作で電源電圧が6Vから4Vまで低下を許容)
太陽電池の供給電流:1.2mA
太陽電池の発電時間:8時間
【0019】
太陽電池以外の方法
【0020】
2次電池の充電はトリクル充電になるので充電電流は非常に小さな値となる。
太陽電池以外の電磁波の受電でも充電が可能となる。
【0021】
現在、生活空間の中には多くの電磁波が存在するのでこの電磁波を受電して充電電力として使用する。
【0022】
太陽電池の代わりにアンテナと整流回路をもうけて2次電池の充電電流を取得する。
【0023】
アンテナと整流回路で構成される素子を2次電池に接続する。
素子電圧が2次電池電圧より高くなると充電電流が流れ充電状態になる。
整流回路があるので電池からアンテナ側への逆流は起きない。
但し空間の電界強度が小さい時はアンテナの電圧発生を高くする必要がある。
アンテナを大きくできないときは必要の電力を取得できずこのシステムが構成できないこともある。
【0024】
先に示した様に電界強度が確保できない(弱い)場所では電界強度を高める必要がある。
装置の近くに電磁波発生装置を設置する事で必要な電界強度を得る事ができる。
もちろん電磁波発生装置は電波法で規定される電力以下にする必要がある。
【0025】
大容量蓄電器の回路構成は蓄電池を直接、記憶型表示装置の電源ラインに接続する方法と昇圧コンバータを介して接続する方法がある。
【0026】
直接接続する場合は装置回路に電流が流れる事で蓄電器の電荷が減少し電圧が低下(減衰)していく。
装置が正常動作する電圧以下になると装置は停止する。例えば装置の電源電圧の許容値が4V〜6Vの場合は最高電圧6Vで蓄電池を充電して装置に接続して動作させると例えば10秒後に4Vまで低下すると装置は停止する。蓄電器の電力は6V−4V=2Vの分が消費される。
【0027】
一方、蓄電器と装置電源ラインの間に昇圧コンバータ(入力電圧値にかかわらず5Vを出力する)を接続すると蓄電池の電圧は6Vから低下して昇圧コンバータの動作可能電圧例えば1.5V迄電力を供給する事が可能になる。
【0028】
つまり、6V−1.5V=4.5Vの分が消費される。これは蓄電器を直接接続した時に対し2倍以上の電力を蓄積電力から取り出す事になる。同じ電力を取り出す(蓄積)のに必要な容量は半分で良い事になる。
昇圧コンバータの構成部品が増えるが蓄電器の容量を小さくできる(大きさが小さくなる)ので体積とコストの比較で有利な方式を採用すればよい。
【発明の効果】
【0029】
電源能力(電力)から見ると電流が最大となる3.4Aを流せる電源が必要になる。
本発明の方法では1/10以下の電源能力で充分である(電池或は電源を小さくできる)
電池の電流は常に一定の値しか流れないので放電特性が良くなり電池寿命も長くなる事が期待できる。
太陽電池で充電電流を少なくしてトリクル充電的な充電を行う事で常に2次電池を満充電に近い状態で使用できるので太陽電池以外の充電が不要となりメンテナンスが簡単になる。
2次電池の電力を使い回路を動作させるので太陽電池、無線電力変換部は少ない充電電流を得るだけなので小さなもので良い。
【発明の形態】
【0030】
本発明の回路構成は図1になる。
太陽電池の負荷に小さな蓄電池があり更に大容量蓄電器が接続される。それぞれには逆流防止素子が接続される。
これを記憶型表示装置の電源とする。
記憶型表示装置の電力は書替え時に大きな値が必要であるが書き換えた表示画面を保持する期間は電力が不要である。図1の回路構成にすると大きな電力が必要なときは大容量蓄電器から電力が供給される。大容量蓄電器への電力供給は小さ蓄電池が時間をかけておこなう。蓄電池の充電は通常は短時間で大きな電流を流して行うが本発明では長時間で充電を行うので充電電流は少なくてよい。したがって太陽電池、電磁波電力変換器の電力は小さくてよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】太陽電池と蓄電池、蓄電器の回路ブロック図 1:太陽電池 2:2次電池 3:電気2重層コンデンサ(大容量コンデンサ) 4:太陽電池逆流防止 5:電気2重層コンデンサ逆流防止 6:記憶型表示装置
【図2】電磁波受信アンテナと蓄電池、蓄電器の回路ブロック図 1:アンテナ(電磁波受電素子と蓄電池、蓄電器の回路ブロック図) 2:2次電池 3:電気2重層コンデンサ(大容量コンデンサ) 4:整流ダイオード 5:電気2重層コンデンサ逆流防止 6:記憶型表示装置 7:高周波阻止コイル
【図3】電磁波受電素子と蓄電池、蓄電器の回路ブロック図 1:ループアンテナ 2:2次電池 3:電気2重層コンデンサ(大容量コンデンサ) 4:整流ダイオード 5:電気2重層コンデンサ逆流防止 6:記憶型表示装置 7:同調コンデンサ
【図4】太陽電池、蓄電池、蓄電器、昇圧コンバータの回路ブロック図 1:太陽電池 2:2次電池 3:電気2重層コンデンサ(大容量コンデンサ) 4:太陽電池逆流防止 5:電気2重層コンデンサ逆流防止 6:記憶型表示装置 7:昇圧コンバータ
【図5】記憶型表示装置の動作特性図 ライン1:蓄電器を直接、装置電源ラインに接続 装置に動作電流が流れ蓄電器電圧が低下する(4Vで装置動作停止) ライン2:昇圧コンバータを介して装置電源ラインに接続時の装置電源ライン電圧 蓄電池電圧が変化しても出力電圧は5V一定(昇圧コンバータ入力電圧が動作保証値以下で5Vより低下する) ライン3:蓄電器電圧(昇圧コンバータを使用する時)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶型表示装置において自然界に存在する光、或は電磁波の持つエネルギ、あるいは人工的に作り出した光、或は電磁波のエネルギを取得する素子とその電力を充電する蓄電池と蓄電池の電力を一時的に蓄積する大容量蓄電器を有し、大容量蓄電器は蓄電池と直接接続、或いは電圧変換部を介して接続され、記憶型表示部を書換える時に大容量蓄電器から多くの電力を供給する電源

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−97156(P2010−97156A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291518(P2008−291518)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(508069512)デルタ電子株式会社 (7)
【Fターム(参考)】