説明

記憶媒体制御装置及び記憶媒体制御方法

【課題】メモリ(記憶媒体)が動作しないというトラブルを防止することができる記憶媒体制御装置及び記憶媒体制御方法を提供する。
【解決手段】記憶媒体を制御する記憶媒体制御装置において、所定の記憶媒体にアクセスし正常にアクセスできない場合、自動的にACタイミングを調整するか、又は、記憶媒体の制御信号のドライブ能力を調整することにより、正常にアクセスできるように設定する。また、ACタイミング又はドライブ能力のいずれか一方の調整を行った上で正常にアクセスできなかった場合、自動的にもう一方の調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置などに搭載され、情報処理装置に装着される記憶媒体を制御する記憶媒体制御装置及び記憶媒体制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する技術例として、ACタイミングの調整及びドライブ能力の調整に関する技術が開示されている。
ACタイミング調整に関する例としては、入力回路及び/又は出力回路のACタイミング特性が、製造時の電気的特性のばらつきや使用時の電源電圧・温度などの動作条件の変化の影響を受け難くなり、高速なインターフェースの実現に寄与し得る「半導体集積回路」(例えば、特許文献1参照)や、温度、プロセス、電源電圧変動があったとしても、自動タイミング制御回路により安定したメモリアクセスが可能となる「メモリ制御回路」がある(例えば、特許文献2参照)。
ドライブ能力調整に関する例としては、ホストデバイスとスレーブデバイスとを備えた電子回路において、スレーブデバイスに供給する信号波形に生じる欠陥を軽減できる「電子回路および信号供給方法」がある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2007−003337号公報
【特許文献2】特開2003−177959号公報
【特許文献3】特開2007−013807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在、メモリ(記憶媒体)として使用できるメディアは多種存在する。例えば、PCカードタイプのもの、SDカード、MemoryStick、xD_Pictureなどがある。また、これらのメモリは、多数のメーカが製造しており、メーカ毎にその特性も異なる。また、メモリ制御装置も、使用するメーカや機種により配線長なども異なる。そして、これらの複合要因により、動作しないメモリが発生してしまうという課題があった。
【0004】
上記特許文献1及び2の技術は、電気的特性のばらつき、電源電圧変動、温度などの変化に対応するためのものであり、上記課題を解決するものではない。また、上記特許文献3の技術も、上記課題を解決するものではない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、メモリ(記憶媒体)が動作しないというトラブルを防止することができる記憶媒体制御装置及び記憶媒体制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明の第1の記憶媒体制御装置は、記憶媒体を制御する記憶媒体制御装置において、所定の記憶媒体にアクセスし正常にアクセスできない場合、自動的にACタイミングを調整するか、又は、記憶媒体の制御信号のドライブ能力を調整することにより、正常にアクセスできるように設定することを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の記憶媒体制御装置は、本発明の第1の記憶媒体制御装置において、ACタイミング又はドライブ能力のいずれか一方の調整を行った上で正常にアクセスできなかった場合、自動的にもう一方の調整を行うことを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の記憶媒体制御装置は、本発明の第1又は第2の記憶媒体制御装置において、記憶媒体へのアクセス及び調整を、ハードウェアを用いて行うことを特徴とする。
【0009】
本発明の第4の記憶媒体制御装置は、本発明の第1又は第2の記憶媒体制御装置において、記憶媒体へのアクセス及び調整を、ソフトウェアを用いて行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の第5の記憶媒体制御装置は、本発明の第1又は第2の記憶媒体制御装置において、記憶媒体へのアクセス及び調整を、ハードウェアを用いて行うか、又は、ソフトウェアを用いて行うかをユーザが選択できることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の記憶媒体制御方法は、記憶媒体を制御する記憶媒体制御方法において、所定の記憶媒体にアクセスし正常にアクセスできない場合、自動的にACタイミングを調整するか、又は、記憶媒体の制御信号のドライブ能力を調整することにより、正常にアクセスできるように設定することを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の記憶媒体制御方法は、本発明の第1の記憶媒体制御方法において、ACタイミング又はドライブ能力のいずれか一方の調整を行った上で正常にアクセスできなかった場合、自動的にもう一方の調整を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の記憶媒体制御方法は、本発明の第1又は第2の記憶媒体制御方法において、記憶媒体へのアクセス及び調整を、ハードウェアを用いて行うことを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の記憶媒体制御方法は、本発明の第1又は第2の記憶媒体制御方法において、記憶媒体へのアクセス及び調整を、ソフトウェアを用いて行うことを特徴とする。
【0015】
本発明の第5の記憶媒体制御方法は、本発明の第1又は第2の記憶媒体制御方法において、記憶媒体へのアクセス及び調整を、ハードウェアを用いて行うか、又は、ソフトウェアを用いて行うかをユーザが選択できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、メモリ(記憶媒体)が動作しないというトラブルを防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明の記憶媒体制御装置は、パーソナルコンピュータ(PC)等の情報処理装置に搭載され、その情報処理装置に装着されるメモリカード等の記憶媒体を制御する記憶媒体制御装置である。本発明の記憶媒体制御装置は、記憶媒体が装着される度に実際にメモリにアクセスし、アクセスできない場合には、ACタイミング調整あるいはドライブ能力(スルーレート)調整を自動的に実施することを特徴とする。
【0019】
まず、本発明の記憶媒体制御装置のACタイミング調整機能について説明する。
メモリ(メモリカード・記憶媒体)に対するアクセスのACタイミングは、図1に示すように、通常基本となる制御信号(通常はクロックだがクロックがない場合はそれに準ずる信号)に対するデータバスのセットアップ及びホールドで規定される。最も簡単な調整方法としては、基本制御信号の出力遅延を調整することである。但し、基本制御信号だけでは調整できない場合もあるため、他の制御信号やデータバスの全ての遅延調整をできるようにしておいてもよい。
【0020】
次に、遅延調整の方法を示す。装置全体のブロック図を図2に示す。なお、以下の説明では、基本制御信号の調整として説明するが、他の信号も同様の方法で実現できるものとする。
【0021】
図2に示すように、基本制御信号の遅延調整用の遅延回路1を複数段あらかじめ配置しておく。そして、各遅延回路1から出力される、遅延量の異なる信号をセレクトできるようにする。
【0022】
セレクト信号2は、内部レジスタ3の設定で制御できるようにする。このレジスタ3を2bit、遅延回路1を3段配置することで、4段階の調整が可能となる。もちろんレジスタ3のbit、遅延の段数を増やすことで、より多くの調整が可能となる。また、初期状態の遅延を図2のようにしておくことで、早くすることも遅くすることもできるようにしておくことが望ましい。
【0023】
以下、ACアクセス調整の実際の調整シーケンスについて、図3を参照して説明する。
メモリカードが挿入され、記憶媒体制御装置がそれを認識する(ステップS1)。但し、ホストCPUには伝えない。
【0024】
メモリカードの電源を入れる(カード電源の制御信号をアクティブにする)(ステップS2)。
【0025】
メモリカードを初期化し、メモリカードにアクセスできる状態にする(ステップS3)。
【0026】
メモリカードにアクセスする(ステップS4)。
【0027】
正常にアクセスできたかを判定する(ステップS5)。
確定した値がカードに記録されていることがあらかじめわかっている場合は、その領域をリードするだけでよい。わかっていない場合は、任意の領域にデータを書き込み、それをリードする。正しいデータが読み出せれば、正常にアクセスできたものと判断する。
【0028】
正常にアクセスできた場合は(ステップS5/YES)、設定を変更せずに、メモリカードが挿入されたこと(カード挿入の割り込み発生)をホストCPU側に伝え、その後は通常の動作に移行する(ステップS6)。
【0029】
正常にアクセスできなかった場合は(ステップS5/NO)、全ての設定を実施したかを判定する(ステップS7)。全てのタイミング設定を実施していない場合は(ステップS7/NO)、レジスタ3の設定を変更して(ステップS8)、ステップS4に戻る(ステップS3に戻ってもよい)。タイミング設定の全てを実施しても正常にアクセスできない場合は(ステップS7/YES)、動作不能として処理する(ステップS9)。
【0030】
以上説明したように、本発明の記憶媒体制御装置によれば、メモリのメーカおよび機器の配線長などの違いによるACタイミングの問題で生じる、メモリが動作しないというトラブルを防止することができる。
【0031】
なお、上記はハードウェアにて対応する場合であるが、ソフトウェアにて対応する場合も同様である。ソフトウェア対応の場合は、ステップS1でメモリカード挿入割り込みが発生した時、メモリカードが挿入されたことをホストCPUに伝える。そして、ステップS2〜S5の動作をソフトウェアにて実行させる。(ソフトがハードに対して命令を出し実行すると言う意味)。ステップS6では当然、カードが挿入をホスト側に伝える必要はなく、そのまま通常動作に移行する。但し、タイミング設定の全てを実施しても正常にアクセスできない場合は(ステップS5/NO→ステップS7/YES)、動作不能として処理する(ステップS9)。
【0032】
ステップS6において、ハード対応の場合は、カード挿入を伝えると共に、動作不能であることもホストに伝え、エラーメッセージを出すようにする。一方、ソフト対応の場合は、動作不能であることが判明した時点で、エラーメッセージを出すようにする。
【0033】
ハードでの対応が可能な場合、ハードの機能をDisableできる機能を設けておけば、両方の対応が可能となる。つまり、ユーザが好みに応じて、ハード機能のDisable/Enableを切り換えることで、ハード、ソフトの切り換え(選択)が可能となる。これにより、ユーザの自由度が上がる。
【0034】
次に、本発明の記憶媒体制御装置のドライブ能力調整機能について説明する。
メモリカードへ正常にアクセスできない原因がACタイミングの問題ではなく、オーバーシュート、アンダーシュートなどの波形品質の問題である場合も考えられる。そこで、ドライブ能力の調整(スルーレート調整)を行うことにより、図4に示すように、オーバーシュート、アンダーシュートなどの波形品質の問題にも対応できる。
【0035】
メモリカードの制御信号のドライブ能力の調整も、上記ACタイミング調整と同様のシーケンスで実現できる。以下、例として、ACタイミング調整とドライブ能力調整の両方を用いて調整する場合のシーケンスについて図5を参照して説明する。なお、ステップS11〜S18までは、図3のステップS1〜S8と同じなので、ここでの説明は省略し、ステップS19以降について説明する。
【0036】
ACタイミング調整を全てのタイミング設定で行っても、メモリカードへ正常にアクセスできない場合(ステップS17/NO)、ドライブ能力調整に自動的に移行する。
【0037】
ドライブ設定を変更し(ステップS19)、メモリカードへアクセスを行う(ステップS20)。
【0038】
正常にアクセスできたかを判定し(ステップS21)、正常にアクセスできた場合は(ステップS21/YES)、通常処理に移行する(ステップS16)。
【0039】
正常にアクセスできなかった場合は(ステップS21/NO)、全てのドライブ設定を実施したかを判定する(ステップS22)。全てのドライブ設定を実施していない場合は(ステップS22/NO)、ステップS19へ戻る。ドライブ設定の全てを実施しても正常にアクセスできない場合は(ステップS22/YES)、動作不能として処理する(ステップS23)。
【0040】
以上説明したように、本発明の記憶媒体制御装置によれば、ACタイミングおよびドライブ能力のどちらか一方の調整では、メモリカードへ正常にアクセスできないという問題が解決しない可能性があるが、両方の調整ができるようにすることで、より確実に問題を解決することができる。
【0041】
なお、上記の場合、組み合わせも多くなるのであらゆる組み合わせを実施する方法も考えられる。この方法では、ACタイミングをひとつ設定するごとに、全てのドライブ設定を実施するようなフローにすればよい。
【0042】
また、上記説明では、ACタイミング調整とドライブ能力調整の両方を用いて調整する場合としたが、ドライブ能力調整のみを行うようにしてもよい。
【0043】
また、上記説明では、ACタイミング調整の後にドライブ能力調整を行うようにしたが、その逆の順序でもよい。
【0044】
また、上記で説明した図5のフローは、図3で説明したACタイミング調整と同様に、ハードウェアでも、ソフトウェアでも実現できる。
【0045】
なお、上記ACタイミング調整及びドライブ能力調整の少なくとも1つをソフトウェアにて実現する場合、当然ソフトウェアの修正が必要となる。また、ソフトウェアの場合、ホストCPUを介することになり、他の動作の影響も受けるため、処理に時間が掛かることが考えられる。よって、ハードウェアのみで実現すると、ソフトウェアの修正が必要ない。また、ホスト側の動作に依存しないので、必要最小限の時間で実現が可能となる。
【0046】
一方、上記ACタイミング調整及びドライブ能力調整の少なくとも1つをハードウェアのみで実施する場合、メモリのアクセス禁止領域にアクセスしてしまう可能性があり、最悪、メモリを壊してしまう可能性がある。また、ハードウェア設計が複雑になる。よって、禁止領域等を把握しているソフトウェアにて実現することで、メモリを壊すことはなくなる。また、ハードウェアの設計は遅延部分のみなので、非常に容易となる。
【0047】
よって、ハードウェア、ソフトウェアはそれぞれ一長一短であるため、上述したように、どちらを用いるかをユーザが選択できるようにするのが好ましい。これにより、自由度が上がる。
【0048】
以上、本発明の実施例について説明したが、上記記載に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、記憶媒体へアクセスする装置・機器、システム、方法、プログラム等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の記憶媒体制御装置に係るACタイミング調整を説明する図である。
【図2】本発明の記憶媒体制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の記憶媒体制御装置のACタイミング調整の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の記憶媒体制御装置に係るドライブ能力調整を説明する図である。
【図5】本発明の記憶媒体制御装置のACタイミング調整及びドライブ能力調整の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
1 遅延回路
2 セレクト信号
3 内部レジスタ
4 セレクタ
5 基本制御信号
6 データバス
7 メモリカード(記憶媒体)
8 ソケット
9 電源スイッチIC
11 カード検出信号
12 メモリインターフェースブロック
13 ホストインターフェースブロック
14 ホストバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶媒体を制御する記憶媒体制御装置において、
所定の記憶媒体にアクセスし正常にアクセスできない場合、自動的にACタイミングを調整するか、又は、該記憶媒体の制御信号のドライブ能力を調整することにより、正常にアクセスできるように設定することを特徴とする記憶媒体制御装置。
【請求項2】
前記ACタイミング又は前記ドライブ能力のいずれか一方の調整を行った上で正常にアクセスできなかった場合、自動的にもう一方の調整を行うことを特徴とする請求項1記載の記憶媒体制御装置。
【請求項3】
前記記憶媒体へのアクセス及び前記調整を、ハードウェアを用いて行うことを特徴とする請求項1又は2記載の記憶媒体制御装置。
【請求項4】
前記記憶媒体へのアクセス及び前記調整を、ソフトウェアを用いて行うことを特徴とする請求項1又は2記載の記憶媒体制御装置。
【請求項5】
前記記憶媒体へのアクセス及び前記調整を、ハードウェアを用いて行うか、又は、ソフトウェアを用いて行うかをユーザが選択できることを特徴とする請求項1又は2記載の記憶媒体制御装置。
【請求項6】
記憶媒体を制御する記憶媒体制御方法において、
所定の記憶媒体にアクセスし正常にアクセスできない場合、自動的にACタイミングを調整するか、又は、該記憶媒体の制御信号のドライブ能力を調整することにより、正常にアクセスできるように設定することを特徴とする記憶媒体制御方法。
【請求項7】
前記ACタイミング又は前記ドライブ能力のいずれか一方の調整を行った上で正常にアクセスできなかった場合、自動的にもう一方の調整を行うことを特徴とする請求項6記載の記憶媒体制御方法。
【請求項8】
前記記憶媒体へのアクセス及び前記調整を、ハードウェアを用いて行うことを特徴とする請求項6又は7記載の記憶媒体制御方法。
【請求項9】
前記記憶媒体へのアクセス及び前記調整を、ソフトウェアを用いて行うことを特徴とする請求項6又は7記載の記憶媒体制御方法。
【請求項10】
前記記憶媒体へのアクセス及び前記調整を、ハードウェアを用いて行うか、又は、ソフトウェアを用いて行うかをユーザが選択できることを特徴とする請求項6又は7記載の記憶媒体制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−70233(P2009−70233A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239330(P2007−239330)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】