記憶装置および潤滑膜の膜厚の調整方法
【課題】一様な膜厚の潤滑膜を維持することができる記憶装置および潤滑膜の膜厚の調整方法を提供する。
【解決手段】記憶装置11は、表面に潤滑膜53を有する記憶媒体14を備える。ヘッドスライダ22は媒体対向面34で記憶媒体14の表面に向き合わせられる。ヘッドスライダ22には媒体対向面34から潤滑膜53に熱を作用させる発熱体48が組み込まれる。発熱体48から記憶媒体14上の潤滑膜53に熱が作用すると、潤滑膜53の温度は上昇する。温度の上昇に基づき潤滑膜53の粘性は低下する。潤滑膜53の流動性は増大する。膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜53は移動していく。こうして潤滑膜53の表面は平滑化される。潤滑膜53の膜厚は均一値に向かって調整される。こうして発熱体48の発熱に基づき潤滑膜53の表面の平滑化は促進される。
【解決手段】記憶装置11は、表面に潤滑膜53を有する記憶媒体14を備える。ヘッドスライダ22は媒体対向面34で記憶媒体14の表面に向き合わせられる。ヘッドスライダ22には媒体対向面34から潤滑膜53に熱を作用させる発熱体48が組み込まれる。発熱体48から記憶媒体14上の潤滑膜53に熱が作用すると、潤滑膜53の温度は上昇する。温度の上昇に基づき潤滑膜53の粘性は低下する。潤滑膜53の流動性は増大する。膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜53は移動していく。こうして潤滑膜53の表面は平滑化される。潤滑膜53の膜厚は均一値に向かって調整される。こうして発熱体48の発熱に基づき潤滑膜53の表面の平滑化は促進される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に潤滑膜を有する記憶媒体を備える記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハードディスク駆動装置(HDD)の磁気ディスクは、記録磁性膜上に積層される保護膜を備える。保護膜には例えば硬質のダイアモンドライクカーボン(DLC)膜が用いられる。保護膜の表面には潤滑膜が塗布される。潤滑膜には例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜が用いられる。ゼロキャリブレーション時、浮上ヘッドスライダでは電熱線の発熱に基づき局所的な熱膨張が生じ、媒体対向面に突き出し部が形成される。突き出し部は磁気ディスクの表面に接触する。このとき、潤滑膜は突き出し部および磁気ディスクの間で接触の摩擦を低減させることができる。
【特許文献1】特開平6−295579号公報
【特許文献2】特開平11−162131号公報
【特許文献3】特開平8−279120号公報
【特許文献4】特開平10−320735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ゼロキャリブレーション時、突き出し部は磁気ディスクのダウントラック方向に磁気ディスクの表面を摺動する。その結果、潤滑膜にはダウントラック方向に摺動痕が形成される。摺動痕に基づき潤滑膜の膜厚は減少する。同時に、摺動に基づき摺動痕の脇に潤滑膜は押しやられる。潤滑膜の膜厚は増大する。こうして潤滑膜の表面に起伏が形成される。こうした起伏に沿って浮上ヘッドスライダが浮上すると、浮上ヘッドスライダでは振動が引き起こされる。こうした振動は磁気情報の正確な書き込みや読み出しに悪影響を及ぼす。しかも、摺動痕に基づき潤滑膜の摩擦低減の効果は損なわれる。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、一様な膜厚の潤滑膜を維持することができる記憶装置および潤滑膜の膜厚の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、記憶装置は、表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜に熱を作用させる発熱体とを備えることを特徴とする。
【0006】
こうした記憶装置では、ヘッドスライダに組み込まれる発熱体から記憶媒体上の潤滑膜に熱が作用する。熱の作用に基づき潤滑膜の温度は上昇する。温度の上昇に基づき潤滑膜の粘性は低下する。潤滑膜の流動性は増大する。膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜は移動していく。こうして潤滑膜の表面は平滑化される。潤滑膜の膜厚は均一値に向かって調整される。こうして発熱体の発熱に基づき潤滑膜の表面の平滑化は促進される。
【0007】
上記目的を達成するために、記憶装置は、表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜に電磁波を照射して前記潤滑膜を加熱する照射源とを備えることを特徴とする。
【0008】
こうした記憶装置では、ヘッドスライダに組み込まれる照射源から記憶媒体上の潤滑膜に電磁波が照射される。電磁波の照射に基づき潤滑膜は加熱される。潤滑膜の温度は上昇する。温度の上昇に基づき潤滑膜の粘性は低下する。潤滑膜の流動性は増大する。膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜は移動していく。こうして潤滑膜の表面は平滑化される。潤滑膜の膜厚は均一値に向かって調整される。こうして電磁波の照射に基づき潤滑膜の表面の平滑化は促進される。
【0009】
上記目的を達成するために、記憶装置は、表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜にレーザを照射してキュリー温度より低温で前記潤滑膜を加熱する照射源とを備えることを特徴とする。
【0010】
こうした記憶装置では、ヘッドスライダに組み込まれる照射源から記憶媒体上の潤滑膜にレーザが照射される。レーザの照射に基づき潤滑膜は加熱される。潤滑膜の温度は上昇する。温度の上昇に基づき潤滑膜の粘性は低下する。潤滑膜の流動性は増大する。膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜は移動していく。こうして潤滑膜の表面は平滑化される。潤滑膜の膜厚は均一値に向かって調整される。こうしてレーザの照射に基づき潤滑膜の表面の平滑化は促進される。
【0011】
上記目的を達成するために、潤滑膜の膜厚の調整方法は、記憶媒体の表面に塗布される潤滑膜に加熱処理を施して前記潤滑膜の膜厚を均一値に向かって調整する工程を備えることを特徴とする。
【0012】
こうした調整方法によれば、記憶媒体上の潤滑膜に加熱処理が施される。加熱処理に基づき潤滑膜の温度は上昇する。温度の上昇に基づき潤滑膜の粘性は低下する。潤滑膜の流動性は増大する。膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜は移動していく。こうして潤滑膜の表面は平滑化される。潤滑膜の膜厚は均一値に向かって調整される。こうして潤滑膜の表面の平滑化は促進される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、記憶装置および潤滑膜の膜厚の調整方法は一様な膜厚の潤滑膜を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0015】
図1は本発明に係る記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このハードディスク駆動装置11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばAl(アルミニウム)といった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0016】
収容空間には、記憶媒体としての1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の回転軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば5400rpmや7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。ここでは、例えば磁気ディスク14は垂直磁気記録ディスクに構成される。すなわち、磁気ディスク14上の記録磁性膜では磁化容易軸は磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に設定される。
【0017】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、垂直方向に延びる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には、支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。キャリッジブロック17は例えば押し出し成型に基づきAl(アルミニウム)から成型されればよい。
【0018】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21はキャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21の先端にはフレキシャが張り合わせられる。フレキシャにはいわゆるジンバルばねが区画される。こうしたジンバルばねの働きで浮上ヘッドスライダ22はヘッドサスペンション21に対してその姿勢を変化させることができる。後述されるように、浮上ヘッドスライダ22にはヘッド素子すなわち電磁変換素子が搭載される。
【0019】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力および負圧とヘッドサスペンション21の押し付け力とが釣り合うことで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0020】
こういった浮上ヘッドスライダ22の浮上中にキャリッジ16が支軸18回りで回転すると、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間でデータゾーンを横切ることができる。こうして浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は目標の記録トラック上に位置決めされる。
【0021】
キャリッジブロック17には例えばボイスコイルモータ(VCM)23といった動力源が接続される。このVCM23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。
【0022】
図1から明らかなように、キャリッジブロック17上には、フレキシブルプリント基板ユニット25が配置される。フレキシブルプリント基板ユニット25は、フレキシブルプリント基板26に実装されるヘッドIC(集積回路)27を備える。ヘッドIC27は電磁変換素子の読み出し素子および書き込み素子に接続される。接続にあたってフレキシャ28が用いられる。フレキシャ28はフレキシブルプリント基板ユニット25に接続される。磁気情報すなわち2値情報の読み出し時には、このヘッドIC27から電磁変換素子の読み出し素子に向けてセンス電流が供給される。同様に、2値情報の書き込み時には、ヘッドIC27から電磁変換素子の書き込み素子に向けて書き込み電流が供給される。センス電流の電流値は特定の値に設定される。ヘッドIC27には、収容空間内に配置される小型の回路基板29や、ベース13の底板の裏側に取り付けられるプリント回路基板(図示されず)から電流が供給される。
【0023】
図2は第1具体例に係る浮上ヘッドスライダ22を示す。この浮上ヘッドスライダ22は、例えば平たい直方体に形成されるスライダ本体31を備える。スライダ本体31の空気流出端面には絶縁性の非磁性膜すなわち素子内蔵膜32が積層される。この素子内蔵膜32に前述の電磁変換素子33が組み込まれる。スライダ本体31は例えばAl2O3−TiC(アルチック)といった硬質の非磁性材料から形成されればよい。素子内蔵膜32は例えばAl2O3(アルミナ)といった比較的に軟質の絶縁非磁性材料から形成されればよい。
【0024】
浮上ヘッドスライダ22は媒体対向面すなわち浮上面34で磁気ディスク14に向き合う。浮上面34には平坦なベース面35すなわち基準面が規定される。磁気ディスク14が回転すると、スライダ本体31の前端から後端に向かって浮上面34には気流36が作用する。
【0025】
浮上面34には、前述の気流36の上流側すなわち空気流入側でベース面35から立ち上がる1筋のフロントレール37が形成される。フロントレール37はベース面35の空気流入端に沿ってスライダ幅方向に延びる。同様に、浮上面34には、気流の下流側すなわち空気流出側でベース面35から立ち上がるリアセンターレール38が形成される。リアセンターレール38はスライダ幅方向の中央位置に配置される。リアセンターレール38はスライダ本体31から素子内蔵膜32まで延びる。
【0026】
浮上面34には、空気流出側でベース面35から立ち上がる左右1対のリアサイドレール39、39がさらに形成される。リアサイドレール39、39はベース面35の左右の縁に沿ってそれぞれ配置される。その結果、リアサイドレール39、39同士はスライダ幅方向に間隔を空けて配置される。リアサイドレール39、39同士の間にリアセンターレール38は配置される。
【0027】
フロントレール37、リアセンターレール38およびリアサイドレール39の頂上面にはいわゆる空気軸受け面(ABS)41、42、43が規定される。空気軸受け面41、42、43の空気流入端は段差でレール37、38、39の頂上面に接続される。磁気ディスク14の回転に基づき生成される気流36は浮上面34に受け止められる。このとき、段差の働きで空気軸受け面41、42、43には比較的に大きな正圧すなわち浮力が生成される。しかも、フロントレール37の後方すなわち背後には大きな負圧が生成される。これら浮力および負圧のバランスに基づき浮上ヘッドスライダ22の浮上姿勢は確立される。なお、浮上ヘッドスライダ22の形態はこういった形態に限られるものではない。
【0028】
空気軸受け面42の空気流出側でリアセンターレール38には電磁変換素子33が埋め込まれる。図3に示されるように、電磁変換素子33は読み出し素子45および書き込み素子46を備える。読み出し素子45および書き込み素子46の間にはアクチュエータすなわちヒータ47が組み込まれる。ヒータ47は例えば電熱線から形成される。ヒータ47に電力が供給されると、ヒータ47は発熱する。ヒータ47の熱でヒータ47とともに読み出し素子45や書き込み素子46、素子内蔵膜32は熱膨張する。その結果、図4に示されるように、空気軸受け面42で素子内蔵膜32やスライダ本体31は隆起する。いわゆる突き出し部が形成される。読み出し素子45および書き込み素子46は磁気ディスク14に向かって変位する。
【0029】
その一方で、図3および図4に示されるように、空気軸受け面41でフロントレール37には発熱体48が埋め込まれる。発熱体48は例えばコイルから形成される。発熱体48に電力が供給されると、発熱体48は発熱する。浮上ヘッドスライダ22の浮上中、発熱体48の熱は浮上ヘッドスライダ22の空気軸受け面41から磁気ディスク14に向かって作用する。ここでは、発熱体48の発熱量の設定に基づき磁気ディスク14の表面は例えば100℃程度の温度まで加熱される。
【0030】
磁気ディスク14は記録磁性膜51を備える。記録磁性膜51ではダウントラック方向に並列に延びる複数筋の記録トラックが確立される。記録磁性膜51では磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に磁化容易軸は確立される。その結果、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に上向きの磁化または下向きの磁化が確立される。こうして記録磁性膜51に2値情報が記録される。記録磁性層51の表面は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜52およびパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜53で被覆される。ここでは、潤滑膜53には例えばFomblin Zdol 2000が用いられる。こうした磁気ディスク14は例えばビットパターンドメディアやディスクリートトラックメディアを構成してもよい。
【0031】
読み出し素子45には例えばトンネル接合磁気抵抗効果(TuMR)素子が用いられる。トンネル接合磁気抵抗効果素子では磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から2値情報は読み出される。書き込み素子46には例えば単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで記録磁界を生成する。この記録磁界の働きで磁気ディスク14に2値情報は書き込まれる。電磁変換素子33は素子内蔵膜32の表面に読み出し素子の読み出しギャップや書き込み素子の書き込みギャップを臨ませる。なお、空気軸受け面42の空気流出側で素子内蔵膜32の表面には硬質の保護膜が形成されてもよい。こういった硬質の保護膜は素子内蔵膜32の表面で露出する読み出しギャップや書き込みギャップを覆う。保護膜には例えばDLC膜が用いられればよい。
【0032】
図5に示されるように、ヘッドIC27にはプリアンプ回路55、電流供給回路56および電力供給回路57が組み込まれる。プリアンプ回路55は読み出し素子45に接続される。プリアンプ回路55から読み出し素子45に向かってセンス電流は供給される。センス電流の電流値は一定値に維持される。電流供給回路56は書き込み素子46に接続される。電流供給回路56から書き込み素子46に書き込み電流は供給される。供給された書き込み電流に基づき書き込み素子46で磁界が生成される。電力供給回路57はヒータ47および発熱体48に接続される。電力供給回路57はヒータ47および発熱体48に所定の電力を供給する。電力の供給に応じてヒータ47および発熱体48は発熱する。ヒータ47および発熱体48の温度は電力量で決定される。
【0033】
ヘッドIC27には制御回路(ハードディスクコントローラ)58が接続される。制御回路58はヘッドIC27に対してセンス電流や書き込み電流、電力の供給を指示する。同時に、制御回路58はセンス電流の電圧を検知する。検知に先立ってプリアンプ回路55はセンス電流の電圧を増幅する。制御回路58はプリアンプ回路55の出力に基づき2値情報を判別する。同時に、制御回路58はプリアンプ回路55の出力に基づき電圧値の「揺れ」を検知する。例えば前述の突き出し部が磁気ディスク14に接触すると、浮上ヘッドスライダ22は微小な振動に曝される。このとき、センス電流の電圧値には「揺れ」が生じる。こういった「揺れ」が制御回路58で検出される。同時に、制御回路58はアコースティックエミッション(AE)センサ59に接続される。AEセンサ59は突き出し部および磁気ディスク14の接触に基づき浮上ヘッドスライダ22の振動を検出する。
【0034】
この制御回路58は所定のソフトウェアプログラムに従ってプリアンプ回路55、電流供給回路56および電力供給回路57の動作を制御する。ソフトウェアプログラムは例えばメモリ61に格納されればよい。こういったソフトウェアプログラムに基づき後述のゼロキャリブレーションおよび潤滑膜53の膜厚の調整処理は実施される。実施にあたって必要なデータは同様にメモリ61に格納されればよい。メモリ61には他の記憶媒体からソフトウェアプログラムやデータが移行されればよい。制御回路58やメモリ61は例えば回路基板29上に実装される。AEセンサ59は例えばキャリッジブロック17上に実装される。
【0035】
このHDD11では2値情報の読み出しや書き込みに先立って書き込み素子46の突き出し量が設定される。この突き出し量の設定にあたってゼロキャリブレーションが実施される。ゼロキャリブレーションでは、突き出し部が磁気ディスク14に接触する際に突き出し部の突き出し量が測定される。こうした接触時の突き出し量に基づき読み出し時や書き込み時の突き出し部の突き出し量は設定される。こうして読み出し時や書き込み時に突き出し部の突き出し量が設定されると、電磁変換素子33すなわち書き込み素子46は予め決められた浮上量で磁気ディスク14の表面から浮上することができる。こういったゼロキャリブレーションは例えばHDD11の起動のたびに実施されればよい。
【0036】
ゼロキャリブレーションの実施にあたって制御回路58は所定のソフトウェアプログラムを実行する。ソフトウェアプログラムが実行されると、制御回路58はHDD11の初期設定を実施する。この初期設定で制御回路58はスピンドルモータ15に駆動を命じる。磁気ディスク14は所定の回転速度で回転する。同時に、制御回路58はVCM23に駆動を命じる。キャリッジ16は支軸18回りで揺動する。その結果、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の表面に向き合わせられる。浮上ヘッドスライダ22は所定の浮上高さで磁気ディスク14から浮上する。加えて、制御回路58はヘッドIC27に電流を供給する。制御回路58はプリアンプ回路55の出力を監視する。すなわち、制御回路58はセンス電流の電圧値を観察する。このとき、電力供給回路57は電力の供給を保留する。
【0037】
初期設定が完了すると、制御回路58は電力供給回路57に指令信号を供給する。制御回路58は規定の増加量で突き出し部の突き出し量を増加させる。指令信号の受信に応じて電力供給回路57は増加後の突き出し量に見合った電力量の電力をヒータ47に供給する。電力量は例えば書き込み素子46の線膨張係数に基づき予め設定されればよい。こうして突き出し部の突き出し量が増加すると、制御回路58は突き出し部および磁気ディスク14の「接触」を判定する。判定にあたって制御回路58はセンス電流の電圧値に出現する前述の「揺れ」の有無を観察する。こうして「揺れ」が観察されるまで、制御回路58は規定の増加量で突き出し部の突き出し量を増加させる。その結果、突き出し部は磁気ディスク14に接触する。「揺れ」が観察される。制御回路58は突き出し部および磁気ディスク14の間で接触を判断する。制御回路58は接触時の突き出し部の突き出し量を特定する。特定された突き出し量は例えばメモリ61に保存される。こうしてゼロキャリブレーションは完了する。
【0038】
次に、本発明に係る潤滑膜53の膜厚の調整方法を説明する。HDD11の工場出荷に先立って、突き出し部および磁気ディスク14の接触時にAEセンサ59の出力が計測される。工場出荷前の磁気ディスク14では磁気ディスク14の表面の全面にわたって潤滑膜53は一様に規定値の膜厚を有する。所定の回転速度で回転する磁気ディスク14の表面に突き出し部が接触する。回転速度は例えば5400rpmに設定される。図6に示されるように、AEセンサ59から所定の出力が検出される。このとき、磁気ディスク14のダウントラック方向に例えば7周分の出力の平均値が計測される。保護膜52の表面では潤滑膜53は下層のボンド層と上層のモバイル層とに分けられる。ボンド層には保護膜52の表面に固着するボンド分子が含まれる。モバイル層はボンド層の表面で流動的なモバイル分子を含む。前述のAEセンサ59の出力では、突き出し部へのモバイル分子のまとわりつきに基づき複数の大きなピークが検出される。この出力は基準値としてメモリ61に格納される。
【0039】
前述のゼロキャリブレーションの実施時、突き出し部は磁気ディスク14の表面に接触する。同様に、浮上ヘッドスライダ22の浮上時、突き出し部は磁気ディスク14の表面に偶発的に接触する。このとき、突き出し部はダウントラック方向に磁気ディスク14上を摺動する。突き出し部は例えば複数の記録トラック上を同時に摺動する。こうした摺動の結果、図7に示されるように、磁気ディスク14の表面でダウントラック方向に摺動痕62が生成される。摺動痕62に基づき潤滑膜53の膜厚は規定値から減少する。その一方で、例えば摺動痕62の脇に潤滑膜53は押しやられる。その結果、摺動痕62の脇で潤滑膜53の膜厚は規定値から増大する。こうして潤滑膜53の表面に起伏が生じる。磁気ディスク14上で潤滑膜53の膜厚に不均一が生じる。
【0040】
調整処理の実施にあたって、制御回路58は所定のソフトウェアプログラムを実行する。ソフトウェアプログラムが実行されると、制御回路58はスピンドルモータ15に駆動を命じる。磁気ディスク14は所定の回転速度で回転する。回転速度は例えば5400rpmに設定される。同時に、制御回路58はVCM23に駆動を命じる。キャリッジ16は支軸18回りで揺動する。その結果、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の表面に向き合わせられる。浮上ヘッドスライダ22は所定の浮上高さで磁気ディスク14から浮上する。このとき、電力供給回路57はヒータ47に所定量の電力を供給する。こうして突き出し部は磁気ディスク14の表面に接触する。制御回路58はAEセンサ59の出力を監視する。
【0041】
浮上ヘッドスライダ22は、磁気ディスク14上で所定のクロストラック方向位置に位置決めされる。ここでは、浮上ヘッドスライダ22は例えば磁気ディスク14の最内周位置に配置される。スピンドルモータ15の回転軸回りに例えば7周にわたって突き出し部は磁気ディスク14に接触し続ける。このとき、7周分にわたるAEセンサ59の出力の平均値が検出される。その後、浮上ヘッドスライダ22は最内周位置から外周側位置にずれて位置決めされる。外周側位置で同様にAEセンサ59の出力の平均値が検出される。こうして磁気ディスク14のすべてのクロストラック方向位置でAEセンサ59の出力の平均値が検出される。出力はメモリ61に格納される。こうした出力の平均値は潤滑膜53の膜厚に応じて変化する。例えば潤滑膜53の膜厚が規定値より薄い場合、図8に示されるように、1つのピークが出現する。潤滑膜53のまとわりつきの減少に基づき浮上ヘッドスライダ22の振動が減少する。その結果、出力のピークの数は減少する。例えば潤滑膜53の膜厚が規定値より厚い場合、多くのピークが出現する。こうしてAEセンサ59の出力は潤滑膜53の膜厚に応じて変化する。
【0042】
出力の検出後、電力供給回路57からヒータ47に電力の供給は停止される。突き出し部の突き出し量は減少する。その後、制御回路58は、メモリ61に格納される出力に基づき磁気ディスク14のクロストラック方向位置で例えば膜厚の減少した損傷位置を特定する。制御回路58はVCM23に駆動を命じる。キャリッジ16は支軸18回りで揺動する。その結果、図9に示されるように、浮上ヘッドスライダ22の発熱体48は前述の損傷位置の脇で磁気ディスク14の表面に向き合わせられる。浮上ヘッドスライダ22は所定の浮上高さで磁気ディスク14から浮上する。
【0043】
このとき、電力供給回路57は発熱体48に所定量の電力を供給する。発熱体48の発熱に基づき潤滑膜53に熱が作用する。その結果、潤滑膜53では例えば50℃程度まで加熱される。こうして潤滑膜53の粘度は低下する。潤滑膜53の拡散係数は例えば加熱前の3倍程度まで上昇する。ここで、拡散係数は単位時間あたりの潤滑膜53の拡散面積の増加速度を示す。拡散係数が高ければ高いほど潤滑膜53は容易に拡散する。こうして、図10に示されるように、潤滑膜53では膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜53は移動していく。その結果、潤滑膜53の表面で起伏は平滑化されていく。潤滑膜53の膜厚は均一値に向かって調整される。こうして発熱体48の発熱に基づき潤滑膜53の表面の平滑化は促進される。
【0044】
発熱体48に基づく加熱処理後、所定の時間が経過すると、浮上ヘッドスライダ22は前述の損傷位置上に位置決めされる。このとき、電力供給回路57はヒータ47に所定量の電力を供給する。こうして突き出し部は磁気ディスク14の表面に接触する。制御回路58はAEセンサ59の出力を監視する。前述と同様に、例えば7周分にわたるAEセンサ59の出力の平均値が検出される。制御回路58は、検出された出力と前述の基準値とを比較する。すべての損傷位置の出力が、例えば基準位置を含む所定の範囲内に含まれれば、潤滑膜53の膜厚の調整処理は終了する。その一方で、いずれかの損傷位置の出力が、例えば基準値を含む所定の範囲外に含まれれば、当該損傷位置で前述の調整処理が再び実施される。こうして磁気ディスク14上で潤滑膜53の表面は確実に平坦化される。その結果、磁気ディスク14上で一様な膜厚の潤滑膜53が確実に維持される。調整処理の終了後、HDD11では通常の書き込み処理および読み出し処理が再開される。なお、こうした調整処理は、所定の期間毎に定期的に自動的に実施されてもよく、HDD11のユーザの指示に応じて不定期に実施されてもよい。例えばHDD11が、潤滑膜53の粘性を一層増大させる低温環境下に置かれる場合、こういった調整処理は特に顕著な効果を奏する。
【0045】
図11は本発明の第2具体例に係る浮上ヘッドスライダ22aの構造を概略的に示す。この浮上ヘッドスライダ22aでは、前述の発熱体48に代えて、空気軸受け面41でフロントレール37に照射源71が埋め込まれる。照射源71は浮上面34から潤滑膜53に向かってマイクロ波といった電磁波を照射する。こうした照射源71は例えばコイルおよびコンデンサから形成される。照射源71は前述の調整処理に用いられる。前述の損傷位置の脇で潤滑膜53にマイクロ波が照射される。潤滑膜53は加熱される。その結果、膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜53は移動していく。その他、前述と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。こうした構成によれば、前述と同様の作用効果が実現される。
【0046】
図12は本発明の第3具体例に係る浮上ヘッドスライダ22bの構造を概略的に示す。この浮上ヘッドスライダ22bでは、前述の照射源71に代えて、空気軸受け面41でフロントレール37に照射源72が埋め込まれる。照射源72は浮上面34から潤滑膜53に向かってレーザ光を照射する。こうした照射源72には例えばレーザダイオード(LD)が用いられる。照射源72は前述の調整処理に用いられる。前述の損傷位置の脇で潤滑膜53にレーザ光が照射される。レーザ光の波長は例えば720nm〜1500nmの範囲に設定される。こうしたレーザ光の出力の調整に基づき潤滑膜53のレーザ光の照射点でキュリー温度よりも低い例えば100℃程度の温度が実現される。その他、前述と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。こうした構成によれば、前述と同様の作用効果が実現される。
【0047】
図13は本発明の第4具体例に係る浮上ヘッドスライダ22cの構造を概略的に示す。この浮上ヘッドスライダ22cでは、前述の照射源72が空気軸受け面42で電磁変換素子33に隣接して埋め込まれる。この照射源72ではレーザ光の波長は例えば400nm〜700nmの範囲に設定される。制御回路58は照射源72の出力を変化させることができる。その一方で、磁気ディスク14では記録磁性膜51に所定の複合膜が用いられる。複合膜は、例えばCo/Pd(コバルト−パラジウム)多層膜と、CoNi/Pd(コバルト−ニッケル−パラジウム)多層膜とから構成される。こうした複合膜のキュリー温度は例えば200℃〜250℃の範囲に設定される。その他、前述と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0048】
こうしたHDD11では2値情報の書き込みにあたって熱アシスト方式が用いられる。浮上ヘッドスライダ22の浮上中、照射源72は出力の調整に基づき記録磁性膜51に所定の出力でレーザ光を照射する。こうして記録磁性膜51は加熱される。ここでは、記録磁性膜51の温度はキュリー温度まで上昇する。その結果、記録磁性膜51では強磁性体が常磁性体に転移する。記録磁性膜51では保磁力が減少する。このとき、電磁変換素子33の書き込み素子46は記録磁性膜51に2値情報を書き込む。書き込み後、記録磁性膜51の温度が室温に戻ると、記録磁性膜51の保磁力は増大する。記録磁性膜51で2値情報は確実に保持される。
【0049】
その一方で、前述の調整処理の実施にあたって、浮上ヘッドスライダ22の浮上中、照射源72は出力の調整に基づき潤滑膜53に所定の出力でレーザ光を照射する。こうして潤滑膜53は加熱される。潤滑膜53の温度はキュリー温度より十分に低い例えば100℃まで上昇する。その結果、膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜53は移動していく。その結果、潤滑膜53の表面で起伏は平滑化されていく。こうした調整処理の実施に基づき磁気ディスク14上で一様な膜厚の潤滑膜53が維持される。こうして浮上ヘッドスライダ22では、2値情報の書き込み時と調整処理の実施時とで照射源72の出力が調整される。
【0050】
(付記1) 表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、
前記ヘッドスラ イダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜に熱を作用させる発熱体とを備えることを特徴とする記憶装置。
【0051】
(付記2) 付記1に記載の記憶装置において、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記記憶媒体の表面に向かって前記媒体対向面の突き出し部を形成するアクチュエータと、
前記記憶媒体および前記突き出し部の接触に基づき前記潤滑膜の減少を検出する制御部とをさらに備えることを特徴とする記憶装置。
【0052】
(付記3) 付記2に記載の記憶装置において、前記制御部は、前記潤滑膜の減少を検出すると前記発熱体を発熱させることを特徴とする記憶装置。
【0053】
(付記4) 表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜に電磁波を照射して前記潤滑膜を加熱する照射源とを備えることを特徴とする記憶装置。
【0054】
(付記5) 付記4に記載の記憶装置において、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記記憶媒体の表面に向かって前記媒体対向面の突き出し部を形成するアクチュエータと、
前記記憶媒体および前記突き出し部の接触に基づき前記潤滑膜の減少を検出する制御部とをさらに備えることを特徴とする記憶装置。
【0055】
(付記6) 付記5に記載の記憶装置において、前記制御部は、前記潤滑膜の減少を検出すると前記照射源を駆動させることを特徴とする記憶装置。
【0056】
(付記7) 表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜にレーザを照射してキュリー温度より低温で前記潤滑膜を加熱する照射源とを備えることを特徴とする記憶装置。
【0057】
(付記8) 付記7に記載の記憶装置において、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記記憶媒体の表面に向かって前記媒体対向面の突き出し部を形成するアクチュエータと、
前記記憶媒体および前記突き出し部の接触に基づき前記潤滑膜の減少を検出する制御部とをさらに備えることを特徴とする記憶装置。
【0058】
(付記9) 付記8に記載の記憶装置において、前記制御部は、前記潤滑膜の減少を検出すると前記照射源を駆動させることを特徴とする記憶装置。
【0059】
(付記10) 記憶媒体の表面に塗布される潤滑膜に加熱処理を施して前記潤滑膜の膜厚を均一値に向かって調整する工程を備えることを特徴とする潤滑膜の膜厚の調整方法。
【0060】
(付記11) 付記10に記載の潤滑膜の膜厚の調整方法において、前記加熱処理に先立って、前記記憶媒体の表面で前記潤滑膜の減少を検出する工程をさらに備えることを特徴とする潤滑膜の膜厚の調整方法。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】第1具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す拡大斜視図である。
【図3】図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】浮上ヘッドスライダで突き出し部が形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図5】記憶装置の制御系を概略的に示すブロック図である。
【図6】アコースティックエミッション(AE)センサの出力を示すグラフである。
【図7】潤滑膜の表面に起伏が生成される様子を概略的に示す断面図である。
【図8】AEセンサの出力を示すグラフである。
【図9】潤滑膜に向かって熱が作用する様子を概略的に示す図である。
【図10】潤滑膜の表面で起伏が低減される様子を概略的に示す図である。
【図11】第2具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す断面図である。
【図12】第3具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す断面図である。
【図13】第4具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
11 記憶装置(ハードディスク駆動装置)、14 記憶媒体(磁気ディスク)、22 ヘッドスライダ(浮上ヘッドスライダ)、34 媒体対向面(浮上面)、47 アクチュエータ(ヒータ)、48 発熱体、53 潤滑膜、58 制御部(制御回路)、71 照射源、72 照射源。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に潤滑膜を有する記憶媒体を備える記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばハードディスク駆動装置(HDD)の磁気ディスクは、記録磁性膜上に積層される保護膜を備える。保護膜には例えば硬質のダイアモンドライクカーボン(DLC)膜が用いられる。保護膜の表面には潤滑膜が塗布される。潤滑膜には例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜が用いられる。ゼロキャリブレーション時、浮上ヘッドスライダでは電熱線の発熱に基づき局所的な熱膨張が生じ、媒体対向面に突き出し部が形成される。突き出し部は磁気ディスクの表面に接触する。このとき、潤滑膜は突き出し部および磁気ディスクの間で接触の摩擦を低減させることができる。
【特許文献1】特開平6−295579号公報
【特許文献2】特開平11−162131号公報
【特許文献3】特開平8−279120号公報
【特許文献4】特開平10−320735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ゼロキャリブレーション時、突き出し部は磁気ディスクのダウントラック方向に磁気ディスクの表面を摺動する。その結果、潤滑膜にはダウントラック方向に摺動痕が形成される。摺動痕に基づき潤滑膜の膜厚は減少する。同時に、摺動に基づき摺動痕の脇に潤滑膜は押しやられる。潤滑膜の膜厚は増大する。こうして潤滑膜の表面に起伏が形成される。こうした起伏に沿って浮上ヘッドスライダが浮上すると、浮上ヘッドスライダでは振動が引き起こされる。こうした振動は磁気情報の正確な書き込みや読み出しに悪影響を及ぼす。しかも、摺動痕に基づき潤滑膜の摩擦低減の効果は損なわれる。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、一様な膜厚の潤滑膜を維持することができる記憶装置および潤滑膜の膜厚の調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、記憶装置は、表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜に熱を作用させる発熱体とを備えることを特徴とする。
【0006】
こうした記憶装置では、ヘッドスライダに組み込まれる発熱体から記憶媒体上の潤滑膜に熱が作用する。熱の作用に基づき潤滑膜の温度は上昇する。温度の上昇に基づき潤滑膜の粘性は低下する。潤滑膜の流動性は増大する。膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜は移動していく。こうして潤滑膜の表面は平滑化される。潤滑膜の膜厚は均一値に向かって調整される。こうして発熱体の発熱に基づき潤滑膜の表面の平滑化は促進される。
【0007】
上記目的を達成するために、記憶装置は、表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜に電磁波を照射して前記潤滑膜を加熱する照射源とを備えることを特徴とする。
【0008】
こうした記憶装置では、ヘッドスライダに組み込まれる照射源から記憶媒体上の潤滑膜に電磁波が照射される。電磁波の照射に基づき潤滑膜は加熱される。潤滑膜の温度は上昇する。温度の上昇に基づき潤滑膜の粘性は低下する。潤滑膜の流動性は増大する。膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜は移動していく。こうして潤滑膜の表面は平滑化される。潤滑膜の膜厚は均一値に向かって調整される。こうして電磁波の照射に基づき潤滑膜の表面の平滑化は促進される。
【0009】
上記目的を達成するために、記憶装置は、表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜にレーザを照射してキュリー温度より低温で前記潤滑膜を加熱する照射源とを備えることを特徴とする。
【0010】
こうした記憶装置では、ヘッドスライダに組み込まれる照射源から記憶媒体上の潤滑膜にレーザが照射される。レーザの照射に基づき潤滑膜は加熱される。潤滑膜の温度は上昇する。温度の上昇に基づき潤滑膜の粘性は低下する。潤滑膜の流動性は増大する。膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜は移動していく。こうして潤滑膜の表面は平滑化される。潤滑膜の膜厚は均一値に向かって調整される。こうしてレーザの照射に基づき潤滑膜の表面の平滑化は促進される。
【0011】
上記目的を達成するために、潤滑膜の膜厚の調整方法は、記憶媒体の表面に塗布される潤滑膜に加熱処理を施して前記潤滑膜の膜厚を均一値に向かって調整する工程を備えることを特徴とする。
【0012】
こうした調整方法によれば、記憶媒体上の潤滑膜に加熱処理が施される。加熱処理に基づき潤滑膜の温度は上昇する。温度の上昇に基づき潤滑膜の粘性は低下する。潤滑膜の流動性は増大する。膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜は移動していく。こうして潤滑膜の表面は平滑化される。潤滑膜の膜厚は均一値に向かって調整される。こうして潤滑膜の表面の平滑化は促進される。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、記憶装置および潤滑膜の膜厚の調整方法は一様な膜厚の潤滑膜を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0015】
図1は本発明に係る記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このハードディスク駆動装置11は筐体すなわちハウジング12を備える。ハウジング12は箱形のベース13およびカバー(図示されず)から構成される。ベース13は例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する。ベース13は例えばAl(アルミニウム)といった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。カバーはベース13の開口に結合される。カバーとベース13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0016】
収容空間には、記憶媒体としての1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の回転軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば5400rpmや7200rpm、10000rpm、15000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。ここでは、例えば磁気ディスク14は垂直磁気記録ディスクに構成される。すなわち、磁気ディスク14上の記録磁性膜では磁化容易軸は磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に設定される。
【0017】
収容空間にはキャリッジ16がさらに収容される。キャリッジ16はキャリッジブロック17を備える。キャリッジブロック17は、垂直方向に延びる支軸18に回転自在に連結される。キャリッジブロック17には、支軸18から水平方向に延びる複数のキャリッジアーム19が区画される。キャリッジブロック17は例えば押し出し成型に基づきAl(アルミニウム)から成型されればよい。
【0018】
個々のキャリッジアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21はキャリッジアーム19の先端から前方に延びる。ヘッドサスペンション21の先端にはフレキシャが張り合わせられる。フレキシャにはいわゆるジンバルばねが区画される。こうしたジンバルばねの働きで浮上ヘッドスライダ22はヘッドサスペンション21に対してその姿勢を変化させることができる。後述されるように、浮上ヘッドスライダ22にはヘッド素子すなわち電磁変換素子が搭載される。
【0019】
磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で気流が生成されると、気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には正圧すなわち浮力および負圧が作用する。浮力および負圧とヘッドサスペンション21の押し付け力とが釣り合うことで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。
【0020】
こういった浮上ヘッドスライダ22の浮上中にキャリッジ16が支軸18回りで回転すると、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の半径線に沿って移動することができる。その結果、浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は最内周記録トラックと最外周記録トラックとの間でデータゾーンを横切ることができる。こうして浮上ヘッドスライダ22上の電磁変換素子は目標の記録トラック上に位置決めされる。
【0021】
キャリッジブロック17には例えばボイスコイルモータ(VCM)23といった動力源が接続される。このVCM23の働きでキャリッジブロック17は支軸18回りで回転することができる。こうしたキャリッジブロック17の回転に基づきキャリッジアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。
【0022】
図1から明らかなように、キャリッジブロック17上には、フレキシブルプリント基板ユニット25が配置される。フレキシブルプリント基板ユニット25は、フレキシブルプリント基板26に実装されるヘッドIC(集積回路)27を備える。ヘッドIC27は電磁変換素子の読み出し素子および書き込み素子に接続される。接続にあたってフレキシャ28が用いられる。フレキシャ28はフレキシブルプリント基板ユニット25に接続される。磁気情報すなわち2値情報の読み出し時には、このヘッドIC27から電磁変換素子の読み出し素子に向けてセンス電流が供給される。同様に、2値情報の書き込み時には、ヘッドIC27から電磁変換素子の書き込み素子に向けて書き込み電流が供給される。センス電流の電流値は特定の値に設定される。ヘッドIC27には、収容空間内に配置される小型の回路基板29や、ベース13の底板の裏側に取り付けられるプリント回路基板(図示されず)から電流が供給される。
【0023】
図2は第1具体例に係る浮上ヘッドスライダ22を示す。この浮上ヘッドスライダ22は、例えば平たい直方体に形成されるスライダ本体31を備える。スライダ本体31の空気流出端面には絶縁性の非磁性膜すなわち素子内蔵膜32が積層される。この素子内蔵膜32に前述の電磁変換素子33が組み込まれる。スライダ本体31は例えばAl2O3−TiC(アルチック)といった硬質の非磁性材料から形成されればよい。素子内蔵膜32は例えばAl2O3(アルミナ)といった比較的に軟質の絶縁非磁性材料から形成されればよい。
【0024】
浮上ヘッドスライダ22は媒体対向面すなわち浮上面34で磁気ディスク14に向き合う。浮上面34には平坦なベース面35すなわち基準面が規定される。磁気ディスク14が回転すると、スライダ本体31の前端から後端に向かって浮上面34には気流36が作用する。
【0025】
浮上面34には、前述の気流36の上流側すなわち空気流入側でベース面35から立ち上がる1筋のフロントレール37が形成される。フロントレール37はベース面35の空気流入端に沿ってスライダ幅方向に延びる。同様に、浮上面34には、気流の下流側すなわち空気流出側でベース面35から立ち上がるリアセンターレール38が形成される。リアセンターレール38はスライダ幅方向の中央位置に配置される。リアセンターレール38はスライダ本体31から素子内蔵膜32まで延びる。
【0026】
浮上面34には、空気流出側でベース面35から立ち上がる左右1対のリアサイドレール39、39がさらに形成される。リアサイドレール39、39はベース面35の左右の縁に沿ってそれぞれ配置される。その結果、リアサイドレール39、39同士はスライダ幅方向に間隔を空けて配置される。リアサイドレール39、39同士の間にリアセンターレール38は配置される。
【0027】
フロントレール37、リアセンターレール38およびリアサイドレール39の頂上面にはいわゆる空気軸受け面(ABS)41、42、43が規定される。空気軸受け面41、42、43の空気流入端は段差でレール37、38、39の頂上面に接続される。磁気ディスク14の回転に基づき生成される気流36は浮上面34に受け止められる。このとき、段差の働きで空気軸受け面41、42、43には比較的に大きな正圧すなわち浮力が生成される。しかも、フロントレール37の後方すなわち背後には大きな負圧が生成される。これら浮力および負圧のバランスに基づき浮上ヘッドスライダ22の浮上姿勢は確立される。なお、浮上ヘッドスライダ22の形態はこういった形態に限られるものではない。
【0028】
空気軸受け面42の空気流出側でリアセンターレール38には電磁変換素子33が埋め込まれる。図3に示されるように、電磁変換素子33は読み出し素子45および書き込み素子46を備える。読み出し素子45および書き込み素子46の間にはアクチュエータすなわちヒータ47が組み込まれる。ヒータ47は例えば電熱線から形成される。ヒータ47に電力が供給されると、ヒータ47は発熱する。ヒータ47の熱でヒータ47とともに読み出し素子45や書き込み素子46、素子内蔵膜32は熱膨張する。その結果、図4に示されるように、空気軸受け面42で素子内蔵膜32やスライダ本体31は隆起する。いわゆる突き出し部が形成される。読み出し素子45および書き込み素子46は磁気ディスク14に向かって変位する。
【0029】
その一方で、図3および図4に示されるように、空気軸受け面41でフロントレール37には発熱体48が埋め込まれる。発熱体48は例えばコイルから形成される。発熱体48に電力が供給されると、発熱体48は発熱する。浮上ヘッドスライダ22の浮上中、発熱体48の熱は浮上ヘッドスライダ22の空気軸受け面41から磁気ディスク14に向かって作用する。ここでは、発熱体48の発熱量の設定に基づき磁気ディスク14の表面は例えば100℃程度の温度まで加熱される。
【0030】
磁気ディスク14は記録磁性膜51を備える。記録磁性膜51ではダウントラック方向に並列に延びる複数筋の記録トラックが確立される。記録磁性膜51では磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に磁化容易軸は確立される。その結果、磁気ディスク14の表面に直交する垂直方向に上向きの磁化または下向きの磁化が確立される。こうして記録磁性膜51に2値情報が記録される。記録磁性層51の表面は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜52およびパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜53で被覆される。ここでは、潤滑膜53には例えばFomblin Zdol 2000が用いられる。こうした磁気ディスク14は例えばビットパターンドメディアやディスクリートトラックメディアを構成してもよい。
【0031】
読み出し素子45には例えばトンネル接合磁気抵抗効果(TuMR)素子が用いられる。トンネル接合磁気抵抗効果素子では磁気ディスク14から作用する磁界の向きに応じてトンネル接合膜の抵抗変化が引き起こされる。こういった抵抗変化に基づき磁気ディスク14から2値情報は読み出される。書き込み素子46には例えば単磁極ヘッドが用いられる。単磁極ヘッドは薄膜コイルパターンの働きで記録磁界を生成する。この記録磁界の働きで磁気ディスク14に2値情報は書き込まれる。電磁変換素子33は素子内蔵膜32の表面に読み出し素子の読み出しギャップや書き込み素子の書き込みギャップを臨ませる。なお、空気軸受け面42の空気流出側で素子内蔵膜32の表面には硬質の保護膜が形成されてもよい。こういった硬質の保護膜は素子内蔵膜32の表面で露出する読み出しギャップや書き込みギャップを覆う。保護膜には例えばDLC膜が用いられればよい。
【0032】
図5に示されるように、ヘッドIC27にはプリアンプ回路55、電流供給回路56および電力供給回路57が組み込まれる。プリアンプ回路55は読み出し素子45に接続される。プリアンプ回路55から読み出し素子45に向かってセンス電流は供給される。センス電流の電流値は一定値に維持される。電流供給回路56は書き込み素子46に接続される。電流供給回路56から書き込み素子46に書き込み電流は供給される。供給された書き込み電流に基づき書き込み素子46で磁界が生成される。電力供給回路57はヒータ47および発熱体48に接続される。電力供給回路57はヒータ47および発熱体48に所定の電力を供給する。電力の供給に応じてヒータ47および発熱体48は発熱する。ヒータ47および発熱体48の温度は電力量で決定される。
【0033】
ヘッドIC27には制御回路(ハードディスクコントローラ)58が接続される。制御回路58はヘッドIC27に対してセンス電流や書き込み電流、電力の供給を指示する。同時に、制御回路58はセンス電流の電圧を検知する。検知に先立ってプリアンプ回路55はセンス電流の電圧を増幅する。制御回路58はプリアンプ回路55の出力に基づき2値情報を判別する。同時に、制御回路58はプリアンプ回路55の出力に基づき電圧値の「揺れ」を検知する。例えば前述の突き出し部が磁気ディスク14に接触すると、浮上ヘッドスライダ22は微小な振動に曝される。このとき、センス電流の電圧値には「揺れ」が生じる。こういった「揺れ」が制御回路58で検出される。同時に、制御回路58はアコースティックエミッション(AE)センサ59に接続される。AEセンサ59は突き出し部および磁気ディスク14の接触に基づき浮上ヘッドスライダ22の振動を検出する。
【0034】
この制御回路58は所定のソフトウェアプログラムに従ってプリアンプ回路55、電流供給回路56および電力供給回路57の動作を制御する。ソフトウェアプログラムは例えばメモリ61に格納されればよい。こういったソフトウェアプログラムに基づき後述のゼロキャリブレーションおよび潤滑膜53の膜厚の調整処理は実施される。実施にあたって必要なデータは同様にメモリ61に格納されればよい。メモリ61には他の記憶媒体からソフトウェアプログラムやデータが移行されればよい。制御回路58やメモリ61は例えば回路基板29上に実装される。AEセンサ59は例えばキャリッジブロック17上に実装される。
【0035】
このHDD11では2値情報の読み出しや書き込みに先立って書き込み素子46の突き出し量が設定される。この突き出し量の設定にあたってゼロキャリブレーションが実施される。ゼロキャリブレーションでは、突き出し部が磁気ディスク14に接触する際に突き出し部の突き出し量が測定される。こうした接触時の突き出し量に基づき読み出し時や書き込み時の突き出し部の突き出し量は設定される。こうして読み出し時や書き込み時に突き出し部の突き出し量が設定されると、電磁変換素子33すなわち書き込み素子46は予め決められた浮上量で磁気ディスク14の表面から浮上することができる。こういったゼロキャリブレーションは例えばHDD11の起動のたびに実施されればよい。
【0036】
ゼロキャリブレーションの実施にあたって制御回路58は所定のソフトウェアプログラムを実行する。ソフトウェアプログラムが実行されると、制御回路58はHDD11の初期設定を実施する。この初期設定で制御回路58はスピンドルモータ15に駆動を命じる。磁気ディスク14は所定の回転速度で回転する。同時に、制御回路58はVCM23に駆動を命じる。キャリッジ16は支軸18回りで揺動する。その結果、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の表面に向き合わせられる。浮上ヘッドスライダ22は所定の浮上高さで磁気ディスク14から浮上する。加えて、制御回路58はヘッドIC27に電流を供給する。制御回路58はプリアンプ回路55の出力を監視する。すなわち、制御回路58はセンス電流の電圧値を観察する。このとき、電力供給回路57は電力の供給を保留する。
【0037】
初期設定が完了すると、制御回路58は電力供給回路57に指令信号を供給する。制御回路58は規定の増加量で突き出し部の突き出し量を増加させる。指令信号の受信に応じて電力供給回路57は増加後の突き出し量に見合った電力量の電力をヒータ47に供給する。電力量は例えば書き込み素子46の線膨張係数に基づき予め設定されればよい。こうして突き出し部の突き出し量が増加すると、制御回路58は突き出し部および磁気ディスク14の「接触」を判定する。判定にあたって制御回路58はセンス電流の電圧値に出現する前述の「揺れ」の有無を観察する。こうして「揺れ」が観察されるまで、制御回路58は規定の増加量で突き出し部の突き出し量を増加させる。その結果、突き出し部は磁気ディスク14に接触する。「揺れ」が観察される。制御回路58は突き出し部および磁気ディスク14の間で接触を判断する。制御回路58は接触時の突き出し部の突き出し量を特定する。特定された突き出し量は例えばメモリ61に保存される。こうしてゼロキャリブレーションは完了する。
【0038】
次に、本発明に係る潤滑膜53の膜厚の調整方法を説明する。HDD11の工場出荷に先立って、突き出し部および磁気ディスク14の接触時にAEセンサ59の出力が計測される。工場出荷前の磁気ディスク14では磁気ディスク14の表面の全面にわたって潤滑膜53は一様に規定値の膜厚を有する。所定の回転速度で回転する磁気ディスク14の表面に突き出し部が接触する。回転速度は例えば5400rpmに設定される。図6に示されるように、AEセンサ59から所定の出力が検出される。このとき、磁気ディスク14のダウントラック方向に例えば7周分の出力の平均値が計測される。保護膜52の表面では潤滑膜53は下層のボンド層と上層のモバイル層とに分けられる。ボンド層には保護膜52の表面に固着するボンド分子が含まれる。モバイル層はボンド層の表面で流動的なモバイル分子を含む。前述のAEセンサ59の出力では、突き出し部へのモバイル分子のまとわりつきに基づき複数の大きなピークが検出される。この出力は基準値としてメモリ61に格納される。
【0039】
前述のゼロキャリブレーションの実施時、突き出し部は磁気ディスク14の表面に接触する。同様に、浮上ヘッドスライダ22の浮上時、突き出し部は磁気ディスク14の表面に偶発的に接触する。このとき、突き出し部はダウントラック方向に磁気ディスク14上を摺動する。突き出し部は例えば複数の記録トラック上を同時に摺動する。こうした摺動の結果、図7に示されるように、磁気ディスク14の表面でダウントラック方向に摺動痕62が生成される。摺動痕62に基づき潤滑膜53の膜厚は規定値から減少する。その一方で、例えば摺動痕62の脇に潤滑膜53は押しやられる。その結果、摺動痕62の脇で潤滑膜53の膜厚は規定値から増大する。こうして潤滑膜53の表面に起伏が生じる。磁気ディスク14上で潤滑膜53の膜厚に不均一が生じる。
【0040】
調整処理の実施にあたって、制御回路58は所定のソフトウェアプログラムを実行する。ソフトウェアプログラムが実行されると、制御回路58はスピンドルモータ15に駆動を命じる。磁気ディスク14は所定の回転速度で回転する。回転速度は例えば5400rpmに設定される。同時に、制御回路58はVCM23に駆動を命じる。キャリッジ16は支軸18回りで揺動する。その結果、浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の表面に向き合わせられる。浮上ヘッドスライダ22は所定の浮上高さで磁気ディスク14から浮上する。このとき、電力供給回路57はヒータ47に所定量の電力を供給する。こうして突き出し部は磁気ディスク14の表面に接触する。制御回路58はAEセンサ59の出力を監視する。
【0041】
浮上ヘッドスライダ22は、磁気ディスク14上で所定のクロストラック方向位置に位置決めされる。ここでは、浮上ヘッドスライダ22は例えば磁気ディスク14の最内周位置に配置される。スピンドルモータ15の回転軸回りに例えば7周にわたって突き出し部は磁気ディスク14に接触し続ける。このとき、7周分にわたるAEセンサ59の出力の平均値が検出される。その後、浮上ヘッドスライダ22は最内周位置から外周側位置にずれて位置決めされる。外周側位置で同様にAEセンサ59の出力の平均値が検出される。こうして磁気ディスク14のすべてのクロストラック方向位置でAEセンサ59の出力の平均値が検出される。出力はメモリ61に格納される。こうした出力の平均値は潤滑膜53の膜厚に応じて変化する。例えば潤滑膜53の膜厚が規定値より薄い場合、図8に示されるように、1つのピークが出現する。潤滑膜53のまとわりつきの減少に基づき浮上ヘッドスライダ22の振動が減少する。その結果、出力のピークの数は減少する。例えば潤滑膜53の膜厚が規定値より厚い場合、多くのピークが出現する。こうしてAEセンサ59の出力は潤滑膜53の膜厚に応じて変化する。
【0042】
出力の検出後、電力供給回路57からヒータ47に電力の供給は停止される。突き出し部の突き出し量は減少する。その後、制御回路58は、メモリ61に格納される出力に基づき磁気ディスク14のクロストラック方向位置で例えば膜厚の減少した損傷位置を特定する。制御回路58はVCM23に駆動を命じる。キャリッジ16は支軸18回りで揺動する。その結果、図9に示されるように、浮上ヘッドスライダ22の発熱体48は前述の損傷位置の脇で磁気ディスク14の表面に向き合わせられる。浮上ヘッドスライダ22は所定の浮上高さで磁気ディスク14から浮上する。
【0043】
このとき、電力供給回路57は発熱体48に所定量の電力を供給する。発熱体48の発熱に基づき潤滑膜53に熱が作用する。その結果、潤滑膜53では例えば50℃程度まで加熱される。こうして潤滑膜53の粘度は低下する。潤滑膜53の拡散係数は例えば加熱前の3倍程度まで上昇する。ここで、拡散係数は単位時間あたりの潤滑膜53の拡散面積の増加速度を示す。拡散係数が高ければ高いほど潤滑膜53は容易に拡散する。こうして、図10に示されるように、潤滑膜53では膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜53は移動していく。その結果、潤滑膜53の表面で起伏は平滑化されていく。潤滑膜53の膜厚は均一値に向かって調整される。こうして発熱体48の発熱に基づき潤滑膜53の表面の平滑化は促進される。
【0044】
発熱体48に基づく加熱処理後、所定の時間が経過すると、浮上ヘッドスライダ22は前述の損傷位置上に位置決めされる。このとき、電力供給回路57はヒータ47に所定量の電力を供給する。こうして突き出し部は磁気ディスク14の表面に接触する。制御回路58はAEセンサ59の出力を監視する。前述と同様に、例えば7周分にわたるAEセンサ59の出力の平均値が検出される。制御回路58は、検出された出力と前述の基準値とを比較する。すべての損傷位置の出力が、例えば基準位置を含む所定の範囲内に含まれれば、潤滑膜53の膜厚の調整処理は終了する。その一方で、いずれかの損傷位置の出力が、例えば基準値を含む所定の範囲外に含まれれば、当該損傷位置で前述の調整処理が再び実施される。こうして磁気ディスク14上で潤滑膜53の表面は確実に平坦化される。その結果、磁気ディスク14上で一様な膜厚の潤滑膜53が確実に維持される。調整処理の終了後、HDD11では通常の書き込み処理および読み出し処理が再開される。なお、こうした調整処理は、所定の期間毎に定期的に自動的に実施されてもよく、HDD11のユーザの指示に応じて不定期に実施されてもよい。例えばHDD11が、潤滑膜53の粘性を一層増大させる低温環境下に置かれる場合、こういった調整処理は特に顕著な効果を奏する。
【0045】
図11は本発明の第2具体例に係る浮上ヘッドスライダ22aの構造を概略的に示す。この浮上ヘッドスライダ22aでは、前述の発熱体48に代えて、空気軸受け面41でフロントレール37に照射源71が埋め込まれる。照射源71は浮上面34から潤滑膜53に向かってマイクロ波といった電磁波を照射する。こうした照射源71は例えばコイルおよびコンデンサから形成される。照射源71は前述の調整処理に用いられる。前述の損傷位置の脇で潤滑膜53にマイクロ波が照射される。潤滑膜53は加熱される。その結果、膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜53は移動していく。その他、前述と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。こうした構成によれば、前述と同様の作用効果が実現される。
【0046】
図12は本発明の第3具体例に係る浮上ヘッドスライダ22bの構造を概略的に示す。この浮上ヘッドスライダ22bでは、前述の照射源71に代えて、空気軸受け面41でフロントレール37に照射源72が埋め込まれる。照射源72は浮上面34から潤滑膜53に向かってレーザ光を照射する。こうした照射源72には例えばレーザダイオード(LD)が用いられる。照射源72は前述の調整処理に用いられる。前述の損傷位置の脇で潤滑膜53にレーザ光が照射される。レーザ光の波長は例えば720nm〜1500nmの範囲に設定される。こうしたレーザ光の出力の調整に基づき潤滑膜53のレーザ光の照射点でキュリー温度よりも低い例えば100℃程度の温度が実現される。その他、前述と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。こうした構成によれば、前述と同様の作用効果が実現される。
【0047】
図13は本発明の第4具体例に係る浮上ヘッドスライダ22cの構造を概略的に示す。この浮上ヘッドスライダ22cでは、前述の照射源72が空気軸受け面42で電磁変換素子33に隣接して埋め込まれる。この照射源72ではレーザ光の波長は例えば400nm〜700nmの範囲に設定される。制御回路58は照射源72の出力を変化させることができる。その一方で、磁気ディスク14では記録磁性膜51に所定の複合膜が用いられる。複合膜は、例えばCo/Pd(コバルト−パラジウム)多層膜と、CoNi/Pd(コバルト−ニッケル−パラジウム)多層膜とから構成される。こうした複合膜のキュリー温度は例えば200℃〜250℃の範囲に設定される。その他、前述と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0048】
こうしたHDD11では2値情報の書き込みにあたって熱アシスト方式が用いられる。浮上ヘッドスライダ22の浮上中、照射源72は出力の調整に基づき記録磁性膜51に所定の出力でレーザ光を照射する。こうして記録磁性膜51は加熱される。ここでは、記録磁性膜51の温度はキュリー温度まで上昇する。その結果、記録磁性膜51では強磁性体が常磁性体に転移する。記録磁性膜51では保磁力が減少する。このとき、電磁変換素子33の書き込み素子46は記録磁性膜51に2値情報を書き込む。書き込み後、記録磁性膜51の温度が室温に戻ると、記録磁性膜51の保磁力は増大する。記録磁性膜51で2値情報は確実に保持される。
【0049】
その一方で、前述の調整処理の実施にあたって、浮上ヘッドスライダ22の浮上中、照射源72は出力の調整に基づき潤滑膜53に所定の出力でレーザ光を照射する。こうして潤滑膜53は加熱される。潤滑膜53の温度はキュリー温度より十分に低い例えば100℃まで上昇する。その結果、膜厚の大きい領域から膜厚の小さい領域に潤滑膜53は移動していく。その結果、潤滑膜53の表面で起伏は平滑化されていく。こうした調整処理の実施に基づき磁気ディスク14上で一様な膜厚の潤滑膜53が維持される。こうして浮上ヘッドスライダ22では、2値情報の書き込み時と調整処理の実施時とで照射源72の出力が調整される。
【0050】
(付記1) 表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、
前記ヘッドスラ イダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜に熱を作用させる発熱体とを備えることを特徴とする記憶装置。
【0051】
(付記2) 付記1に記載の記憶装置において、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記記憶媒体の表面に向かって前記媒体対向面の突き出し部を形成するアクチュエータと、
前記記憶媒体および前記突き出し部の接触に基づき前記潤滑膜の減少を検出する制御部とをさらに備えることを特徴とする記憶装置。
【0052】
(付記3) 付記2に記載の記憶装置において、前記制御部は、前記潤滑膜の減少を検出すると前記発熱体を発熱させることを特徴とする記憶装置。
【0053】
(付記4) 表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜に電磁波を照射して前記潤滑膜を加熱する照射源とを備えることを特徴とする記憶装置。
【0054】
(付記5) 付記4に記載の記憶装置において、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記記憶媒体の表面に向かって前記媒体対向面の突き出し部を形成するアクチュエータと、
前記記憶媒体および前記突き出し部の接触に基づき前記潤滑膜の減少を検出する制御部とをさらに備えることを特徴とする記憶装置。
【0055】
(付記6) 付記5に記載の記憶装置において、前記制御部は、前記潤滑膜の減少を検出すると前記照射源を駆動させることを特徴とする記憶装置。
【0056】
(付記7) 表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜にレーザを照射してキュリー温度より低温で前記潤滑膜を加熱する照射源とを備えることを特徴とする記憶装置。
【0057】
(付記8) 付記7に記載の記憶装置において、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記記憶媒体の表面に向かって前記媒体対向面の突き出し部を形成するアクチュエータと、
前記記憶媒体および前記突き出し部の接触に基づき前記潤滑膜の減少を検出する制御部とをさらに備えることを特徴とする記憶装置。
【0058】
(付記9) 付記8に記載の記憶装置において、前記制御部は、前記潤滑膜の減少を検出すると前記照射源を駆動させることを特徴とする記憶装置。
【0059】
(付記10) 記憶媒体の表面に塗布される潤滑膜に加熱処理を施して前記潤滑膜の膜厚を均一値に向かって調整する工程を備えることを特徴とする潤滑膜の膜厚の調整方法。
【0060】
(付記11) 付記10に記載の潤滑膜の膜厚の調整方法において、前記加熱処理に先立って、前記記憶媒体の表面で前記潤滑膜の減少を検出する工程をさらに備えることを特徴とする潤滑膜の膜厚の調整方法。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る記憶装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】第1具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す拡大斜視図である。
【図3】図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】浮上ヘッドスライダで突き出し部が形成される様子を概略的に示す断面図である。
【図5】記憶装置の制御系を概略的に示すブロック図である。
【図6】アコースティックエミッション(AE)センサの出力を示すグラフである。
【図7】潤滑膜の表面に起伏が生成される様子を概略的に示す断面図である。
【図8】AEセンサの出力を示すグラフである。
【図9】潤滑膜に向かって熱が作用する様子を概略的に示す図である。
【図10】潤滑膜の表面で起伏が低減される様子を概略的に示す図である。
【図11】第2具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す断面図である。
【図12】第3具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す断面図である。
【図13】第4具体例に係る浮上ヘッドスライダを概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
11 記憶装置(ハードディスク駆動装置)、14 記憶媒体(磁気ディスク)、22 ヘッドスライダ(浮上ヘッドスライダ)、34 媒体対向面(浮上面)、47 アクチュエータ(ヒータ)、48 発熱体、53 潤滑膜、58 制御部(制御回路)、71 照射源、72 照射源。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜に熱を作用させる発熱体とを備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記憶装置において、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記記憶媒体の表面に向かって前記媒体対向面の突き出し部を形成するアクチュエータと、
前記記憶媒体および前記突き出し部の接触に基づき前記潤滑膜の減少を検出する制御部とをさらに備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記憶装置において、前記制御部は、前記潤滑膜の減少を検出すると前記発熱体を発熱させることを特徴とする記憶装置。
【請求項4】
表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜に電磁波を照射して前記潤滑膜を加熱する照射源とを備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項5】
表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜にレーザを照射してキュリー温度より低温で前記潤滑膜を加熱する照射源とを備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項6】
記憶媒体の表面に塗布される潤滑膜に加熱処理を施して前記潤滑膜の膜厚を均一値に向かって調整する工程を備えることを特徴とする潤滑膜の膜厚の調整方法。
【請求項7】
請求項6に記載の潤滑膜の膜厚の調整方法において、前記加熱処理に先立って、前記記憶媒体の表面で前記潤滑膜の減少を検出する工程をさらに備えることを特徴とする潤滑膜の膜厚の調整方法。
【請求項1】
表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜に熱を作用させる発熱体とを備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記憶装置において、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記記憶媒体の表面に向かって前記媒体対向面の突き出し部を形成するアクチュエータと、
前記記憶媒体および前記突き出し部の接触に基づき前記潤滑膜の減少を検出する制御部とをさらに備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記憶装置において、前記制御部は、前記潤滑膜の減少を検出すると前記発熱体を発熱させることを特徴とする記憶装置。
【請求項4】
表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜に電磁波を照射して前記潤滑膜を加熱する照射源とを備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項5】
表面に潤滑膜を有する記憶媒体と、
媒体対向面で前記記憶媒体の表面に向き合わせられるヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダに組み込まれて、前記媒体対向面から前記潤滑膜にレーザを照射してキュリー温度より低温で前記潤滑膜を加熱する照射源とを備えることを特徴とする記憶装置。
【請求項6】
記憶媒体の表面に塗布される潤滑膜に加熱処理を施して前記潤滑膜の膜厚を均一値に向かって調整する工程を備えることを特徴とする潤滑膜の膜厚の調整方法。
【請求項7】
請求項6に記載の潤滑膜の膜厚の調整方法において、前記加熱処理に先立って、前記記憶媒体の表面で前記潤滑膜の減少を検出する工程をさらに備えることを特徴とする潤滑膜の膜厚の調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−108539(P2010−108539A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278275(P2008−278275)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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