説明

記録システム、情報処理装置、及び記録システムの処理方法

【課題】従来の構成よりも更に、記録動作の効率化や生産性を向上させて記録ヘッドのクリーニング処理を行なえるようにした技術を提供する。
【解決手段】記録システムは、記録に使用されない未使用ヘッドを特定する特定手段と、クリーニング対象の記録ヘッドが前記特定手段により特定された記録ヘッドでない場合、記録データの回転によりクリーニング対象の記録ヘッドを前記未使用ヘッドとすることができるか否かを判定する回転判定手段と、前記回転判定手段によりクリーニング対象の記録ヘッドを前記未使用ヘッドとすることができると判定された場合に記録データを回転させる回転手段と、記録データに基づく記録をクリーニング対象以外の記録ヘッドを用いて行なっている間に、クリーニング対象の記録ヘッドに対して各記録ヘッドを個別にクリーニング可能なクリーニング機構によりクリーニング処理を実行させる記録制御手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録システム、情報処理装置、及び記録システムの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の記録ヘッドからなるフルラインタイプの記録ヘッドユニットを用いて、比較的大判の記録媒体に記録を行なう記録装置(又は記録システム)が知られている。このような記録装置においては、複数のノズルが配列された記録ヘッドを用いて記録媒体上に画像を形成する。ここで、複数のノズルにおけるインクの累積的な吐出量が所定値を越えると、ノズル面にインク滴が成長して良好な記録特性を維持できなくなる場合がある。
【0003】
従来、複数の記録ヘッドからなる記録ヘッドユニットを有する記録装置においては、各記録ヘッド毎に所定期間、記録データがなくなるタイミングを予測し、記録データが存在しない間に記録ヘッド単位でクリーニングを行なう技術が知られている(特許文献1)。これにより、クリーニング中の記録動作の中断を回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−255984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1では、記録データが存在しないタイミングにおいては記録動作を続けながら、クリーニング動作を行なうことができるが、常に記録を続けている記録ヘッドについては、クリーニング動作を行なうことが困難となる。そのため、記録動作中の記録ヘッドにクリーニングが必要となった場合には、記録を中断してクリーニング動作を行なう必要がある。このように断続的に記録動作を継続している場合には、その途中でクリーニング動作が行なわれるため、記録動作の効率や生産性の低下が招かれていた。
【0006】
また、特定の記録ヘッドのみにおいて断続的に記録が行なわれると、その他の記録ヘッドが寿命に到達する前に、当該特定の記録ヘッドが寿命を迎え、交換が必要となってしまう場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、従来の構成よりも更に、記録動作の効率化や生産性を向上させて記録ヘッドのクリーニング処理を行なえるようにした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、複数のノズルが配列される記録ヘッドが該ノズルの配列方向に沿って複数配置されるフルラインタイプの記録ヘッドユニットを有し、該記録ヘッドユニットに対して該ノズルの配列方向と直交する方向に相対移動する記録媒体に対して各ノズルからインクを吐出させて記録を行なう記録システムであって、各記録ヘッドを個別にクリーニング可能なクリーニング機構と、前記複数の記録ヘッドのうちのいずれかの記録ヘッドに対するクリーニング要求を受信する受信手段と、前記クリーニング要求を受信した場合、記録データ内のうち前記ノズルからのインクの吐出による記録が必要とされない領域を解析する解析手段と、前記解析手段による解析結果に基づいて、前記記録ヘッドユニットに設けられる複数の記録ヘッドのうち、記録に使用されない未使用ヘッドを特定する特定手段と、前記クリーニング対象の記録ヘッドが前記特定手段により特定された記録ヘッドでない場合、前記記録データの回転により前記クリーニング対象の記録ヘッドを前記未使用ヘッドとすることができるか否かを判定する回転判定手段と、前記回転判定手段により前記クリーニング対象の記録ヘッドを前記未使用ヘッドとすることができると判定された場合に前記記録データを回転させる回転手段と、前記記録データに基づく記録を前記クリーニング対象以外の記録ヘッドを用いて行なっている間に、前記クリーニング対象の記録ヘッドに対して前記クリーニング機構によるクリーニング処理を実行させる記録制御手段とを具備する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の構成よりも更に、記録動作の効率化や生産性を向上させて記録ヘッドのクリーニング処理を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)は本発明の一実施の形態に係わる記録システムの構成の一例を示す図、(b)は記録装置20の概略構成の一例を示す図。
【図2】図1(b)に示す記録ヘッドユニット30の概略構成の一例を示す図。
【図3】記録動作中に記録ヘッドのクリーニング処理を行なう際の処理の概要を示す図。
【図4】記録データの180度回転を説明するための図。
【図5】図1に示す記録システムにおける機能的な構成の一例を示す図。
【図6】図1に示す情報処理装置10の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図7】図1に示す記録装置20の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図8】実施形態2に係わる情報処理装置10の処理の流れの一例を示すフローチャート。
【図9】変形例の一例を示す図。
【図10】変形例の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明においては、インクジェット記録方式を用いた記録装置を例に挙げて説明する。
【0012】
なお、記録装置は、例えば、記録機能のみを有するシングルファンクションプリンタであっても良いし、また、例えば、記録機能、FAX機能、スキャナ機能等の複数の機能を有するマルチファンクションプリンタであっても良い。また、例えば、カラーフィルタ、電子デバイス、光学デバイス、微小構造物等を所定の記録方式で製造するための製造装置であっても良い。
【0013】
なお、以下の説明において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。更に人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン、構造物等を形成する、又は媒体の加工を行なう場合も表す。
【0014】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、樹脂、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表す。
【0015】
更に、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表す。
【0016】
(実施形態1)
図1(a)は、本発明の一実施の形態に係わる記録システムの構成の一例を示す図である。
【0017】
記録システムには、LAN(Local Area Network)やUSB(Universal Serial Bus)等で構成された通信手段を介して情報処理装置10と、記録装置20とが接続される。なお、ここに示す全体構成はあくまで一例であり、例えば、情報処理装置10、記録装置20がそれぞれ複数台ずつ設けられていてもよいし、また、これ以外の装置が通信手段に接続されていてもよい。
【0018】
情報処理装置10は、記録装置20に対して画像データを供給する。情報処理装置10は、例えば、パーソナルコンピュータで実現される。情報処理装置10には、記録装置20を制御するためのプリンタドライバや、アプリケーション等がインストールされている。情報処理装置10においては、アプリケーションを使用して記録対象となるデータを生成し、プリンタドライバを使用して当該生成されたデータを記録装置20が解釈可能な形式に変更し、それを記録装置20に向けて送信する。
【0019】
記録装置20は、情報処理装置10からのデータに基づいて記録媒体上に画像を記録する。ここで、図1(b)を用いて、記録装置20の概略構成について説明する。
【0020】
記録装置20には、記録媒体の幅に相当する記録幅を持つ、いわゆる、フルラインタイプの記録ヘッドユニット30が設けられる。記録ヘッドユニット30には、複数の記録ヘッドが設けられる。記録ヘッド各々は、記録媒体Pの搬送方向(走査方向:X方向)と直交する方向(ノズル配列方向:Y方向)に延在して設けられる。
【0021】
各記録ヘッドには、インクを吐出するインク吐出口と、インクタンクのインクが供給される共通液室と、この共通液室から各インク吐出口へとインクを導くインク流路(ノズル)とが設けられる。各ノズルには、例えば、発熱抵抗素子から構成される記録素子(以下、ヒータ呼ぶ場合もある)やヒータ駆動回路等が設けられる。
【0022】
また、記録ヘッドユニット30の側方には、各記録ヘッドの回復処理を独立して行なう回復機構が設けられる。
【0023】
搬送用ベルト5は、記録媒体Pを搬送する役割を果たし、ベルト駆動モータ11に連結された駆動ローラに掛け渡される。搬送用ベルト5は、モータドライバによってその作動が切り替えられる。
【0024】
搬送用ベルト5の上流側には、帯電器13が設けられる。帯電器13は、搬送用ベルト5を帯電することにより、記録媒体Pを搬送用ベルト5に密着させる。一対の給送ローラ14及び24は、搬送用ベルト5上に記録媒体Pを供給する。給送用モータ15は、これら一対の給送ローラ14を駆動回転させる。
【0025】
ここで、図2を用いて、図1(b)に示す記録ヘッドユニット30の概略構成を示す図である。
【0026】
記録ヘッドユニット30には、記録ヘッド31(31a、31b)が千鳥状に複数配置されており、各記録ヘッドには、記録媒体の搬送方向に沿って、Y、C、M、Bkの順にノズル列が配列されている。記録ヘッド31a及び31bは、各々の記録ヘッド単独で記録データを記録することができる。
【0027】
なお、ここでは、図示を省略しているが、例えば、各記録ヘッド31は、それぞれ所定数のノズル分だけオーバーラップした構成となっている。より具体的には、互いに隣接する記録ヘッドのノズル列の一部のノズルが互いにY方向(ノズル配列方向)に重複して配置されている。
【0028】
ここで、符号50は、記録データのイメージを示しており、情報処理装置10のアプリケーション及びプリンタドライバにより作成される。この場合、記録データ50は、記録ヘッドユニット30全体としての記録可能領域のうち、記録ヘッド31aのみを使用して記録される。
【0029】
以上が記録装置20の構成の一例についての説明である。なお、上述した記録装置20の構成は、あくまで一例であり、必ずしもこのような構成に限られない。例えば、上述した記録装置20の構成では、記録ヘッドユニット30に対して記録媒体Pが搬送される構成であったが、記録ヘッドユニット30と記録媒体Pとが相対移動する構成であれば良く、その構成は特に問わない。例えば、記録ヘッドユニット30が記録媒体Pに対して移動する構成であっても良い。
【0030】
次に、図3を用いて、記録動作中に記録ヘッドのクリーニング処理を行なう際の処理の概要について説明する。
【0031】
記録ヘッドユニット30は、記録データ41に基づいて記録媒体P上に記録を行なう。このとき、記録ヘッドユニット30においては、記録ヘッド31aのみを用いて記録データ41に基づく記録を行なう。
【0032】
ここで、記録ヘッド31aに対するクリーニング処理が必要になったとする。この場合、その旨が記録装置20から情報処理装置10に対して通知される。これにより、情報処理装置10においては、記録データ41を180度回転させる。その結果、記録データ42に示すように、当該データ内における記録画像の領域の位置が回転している。そのため、記録データ42に基づく記録動作中は、記録ヘッド31aは未使用の記録ヘッドとなり、その代わりに記録ヘッド31bが使用されることになる。
【0033】
その後、記録装置20においては、当該180度回転された記録データ42に基づいて、記録ヘッド31bを用いて記録を行なう。クリーニング対象以外の記録ヘッド31aにおいては、この記録と並行してクリーニング処理が実行される。
【0034】
ここで、図4は、記録動作中にクリーニング要求が発生し、記録データを180度回転させた際の記録データのイメージを示している。
【0035】
符号51は記録データの開始ページを示している。符号53は180度回転された記録データを示している。ここで、記録データの開始ページ51では、通常の記録データ(回転なし)を使用して記録が行なわれる。その後、符号52に示すページが記録されている際中に、記録動作中の記録ヘッドに対してクリーニング要求が発生している。
【0036】
クリーニング要求が発生すると、情報処理装置10においては、記録データを180度回転させ、当該回転後の記録データを記録装置20に送信する。これにより、クリーニング対象の記録ヘッドに対してクリーニング処理が行なわれるのに並行して、180度回転された記録データに基づいてもう一方の記録ヘッドにより記録動作が継続して行なわれる。
【0037】
その後、クリーニング対象となる記録ヘッドのクリーニング処理が終了すると、当該記録ヘッドは、記録可能状態となり、符号54に示す記録データに基づく記録動作を行なう。また、クリーニング処理の終了後、情報処理装置10及び記録装置20の少なくともいずれかにおいて、記録データの回転処理が行なわれた旨を示すメッセージをユーザに向けて出力(音声や表示等)する。なお、記録装置20の構成によっては、記録済みの記録媒体を排紙するトレイを記録データ回転前と回転後とで変更しても良い。すなわち、トレイにおいて、回転前後で記録画像の方向が変化しないように制御しても良い。
【0038】
次に、図5を用いて、図1に示す記録システムにおける機能的な構成の一例について説明する。
【0039】
情報処理装置10は、クリーニング要求受信部61と、記録データ解析部62と、未使用ヘッド特定部63と、回転判定部64と、回転部65と、記録装置制御部66と、回転ページ番号保持部67と、ユーザ通知部68とを具備して構成される。
【0040】
クリーニング要求受信部61は、記録装置20から記録ヘッドのクリーニング要求を受信する。クリーニング要求には、記録ヘッドの識別情報等が含まれる。
【0041】
記録データ解析部62は、クリーニング要求があった場合に、記録データの解析を行なう。より具体的には、記録データ内のうちノズルからのインクの吐出による記録が必要とされない領域(又は記録領域)の解析を行なう。この解析は、例えば、記録データ内の記録画像の開始座標及び終了座標等が求められ、その結果に基づいてインクの吐出による記録が必要とされない領域が導出される。なお、インクの吐出による記録が必要とされない領域とは、例えば、記録データ内における余白や白色のデータの領域を指す。
【0042】
未使用ヘッド特定部63は、記録データ解析部62の解析結果に基づいて、当該解析した記録データの記録に使用されない記録ヘッド(未使用ヘッド)が存在するか否かを判定し、未使用ヘッドがあれば、当該記録ヘッドを特定する。すなわち、記録ヘッドユニット30に設けられる複数の記録ヘッド31(31a、31b)のうち、記録時に使用されない未使用ヘッドを特定する。
【0043】
回転判定部64は、記録データ解析部62の解析結果と未使用ヘッド特定部63の特定結果とに基づいて、記録データを180度回転させるか否かを判定する。より具体的には、クリーニング対象の記録ヘッドが未使用ヘッド特定部63により特定された記録ヘッドでない場合に、記録データを180度回転させることによりクリーニング対象の記録ヘッドを未使用ヘッドとすることができるか否かを判定する。
【0044】
回転部65は、回転判定部64による判定結果に基づいて記録データを回転させる。記録装置制御部66は、各種データや指示等を記録装置20に送信することにより記録装置20の動作を制御する。
【0045】
回転ページ番号保持部67は、180度回転された記録データに対応するページ番号(すなわち、回転された記録データを識別するための識別情報)を保持する。ユーザ通知部68は、回転ページ番号保持部67に保持されたページ番号をユーザに通知する。この通知の仕方は、特に問わず、例えば、音声や表示等により行なえば良い。
【0046】
記録装置20は、クリーニング要求送信部71と、記録制御部72と、クリーニング機構73と、ユーザ通知部74と、記録ヘッドユニット30とを具備して構成される。
【0047】
クリーニング要求送信部71は、記録ヘッドユニット30に設けられる複数の記録ヘッド31(31a、31b)のうち、いずれかの記録ヘッド31にクリーニング処理が必要となった場合に、クリーニング要求を情報処理装置10に向けて送信する。
【0048】
記録制御部72は、記録装置20における動作を統括制御する。例えば、記録ヘッド31による記録動作や、クリーニング機構73によるクリーニング処理等の制御を行なう。
【0049】
クリーニング機構73は、記録ヘッド31をクリーニングする。クリーニング機構73は、各記録ヘッド31を個別にクリーニング可能に構成される。ユーザ通知部74は、180度回転された記録データに対応するページ番号をユーザに通知する。なお、このページ番号は、例えば、情報処理装置10側から記録装置20側に通知される。
【0050】
以上が、記録システムにおける機能的な構成の一例についての説明である。なお、情報処理装置10及び記録装置20に設けられた機能的な構成は、必ずしも図示した通りに実現される必要はなく、記録システム内におけるいずれかの装置にその全部若しくは一部が実現されていればよい。例えば、記録装置20の内部に、上述した符号61〜66に示す構成の全部若しくは一部を設け、記録装置20側で各種判定や回転処理等を行なっても良い。
【0051】
次に、図6を用いて、図1に示す情報処理装置10の処理の流れの一例について説明する。なお、ここでは、記録装置20からクリーニング要求を受信した後の処理の流れについて説明する。
【0052】
この処理が始まると、情報処理装置10は、記録データ解析部62において、記録データの解析を行なう(S101)。具体的には、記録データを解析し、記録データ内の特定部分のみに記録画像があるか否かを判定する。この処理では、例えば、記録データ内の記録画像の開始座標及び終了座標と、各記録ヘッドの記録可能領域(ノズル配列方向に沿った記録ヘッドの幅)との比較が行なわれる。そして、いずれかの記録ヘッド(記録ヘッド31a又は31b)の記録可能領域内に記録画像が収まっているか否か等の解析が行なわれる。
【0053】
ここで、S101の解析の結果、情報処理装置10は、未使用ヘッド特定部63において、未使用ヘッドがあるか否かを判定する。判定の結果、未使用ヘッドがなければ(S102でNO)、情報処理装置10は、記録装置制御部66において、そのまま記録データを記録装置20に向けて送信する(S111)。その後、情報処理装置10は、次の記録データの処理に移るため、再度、S101の処理に戻る。
【0054】
一方、未使用の記録ヘッドがあれば(S102でYES)、情報処理装置10は、未使用ヘッド特定部63において、クリーニング対象の記録ヘッドが未使用ヘッドであるか否かを判定する。判定の結果、クリーニング対象の記録ヘッドが未使用ヘッドであれば(S103でYES)、情報処理装置10は、記録装置制御部66において、そのまま記録データを記録装置20に向けて送信する(S104)。そして、クリーニング処理の開始指示が未送信であれば(S109でNO)、情報処理装置10は、記録装置制御部66において、クリーニング処理の開始を記録装置20に指示した後(S110)、次の記録データの処理に移るため、再度、S101の処理に戻る。また、クリーニング処理の開始指示が送信済みであれば(S109でYES)、情報処理装置10は、S101の処理に戻る。
【0055】
また、S103の判定の結果、クリーニング対象の記録ヘッドが未使用ヘッドでなければ(S103でNO)、情報処理装置10は、S105の処理に進み、更なる判定を行なう。具体的には、回転判定部64において、記録データを180度回転させることによりクリーニング対象の記録ヘッドを未使用ヘッドにできるか否かを判定する。
【0056】
判定の結果、記録データを回転させたとしてもクリーニング対象の記録ヘッドを未使用ヘッドにできなければ(S105でNO)、情報処理装置10は、記録装置制御部66において、そのまま記録データを記録装置20に向けて送信する(S111)。その後、情報処理装置10は、次の記録データの処理に移るため、再度、S101の処理に戻る。
【0057】
また、S105の判定の結果、記録データ回転によりクリーニング対象の記録ヘッドを未使用ヘッドにできるのであれば(S105でYES)、情報処理装置10は、回転部65において、記録データを180度回転させる(S106)。そして、記録装置制御部66において、回転後の記録データを記録装置20に向けて送信するとともに(S107)、回転ページ番号保持部67により当該回転された記録データのページ番号を保持する(S108)。
【0058】
ここで、クリーニング処理の開始指示が未送信であれば(S109でNO)、情報処理装置10は、記録装置制御部66において、クリーニング処理の開始を記録装置20に指示し(S110)、次の記録データの処理に移るため、再度、S101の処理に戻る。また、クリーニング処理の開始指示が送信済みであれば(S109でYES)、情報処理装置10は、S101の処理に戻る。
【0059】
次に、図7(a)及び図7(b)を用いて、図1に示す記録装置20の処理の流れの一例について説明する。
【0060】
まず、図7(a)を用いて、クリーニング処理を開始する際の処理の流れの一例について説明する。
【0061】
この処理が始まると、記録装置20は、記録制御部72において、クリーニング処理が必要な記録ヘッドがあるか否かを判定する。なお、クリーニング処理が必要であるか否かは、例えば、インクの累積的な吐出量等に基づいて判定すれば良い。
【0062】
判定の結果、クリーニング処理が必要な記録ヘッドがあれば(S201でYES)、記録装置20は、クリーニング要求送信部71において、クリーニング要求を情報処理装置10に向けて送信する(S202)。クリーニング要求には、例えば、クリーニング処理が必要な記録ヘッドを識別するための情報等が含まれる。
【0063】
ここで、この要求に応答してクリーニング開始指示が情報処理装置10から送られてくると(S203でYES)、記録装置20は、クリーニング機構73において、クリーニング対象の記録ヘッドに対してクリーニング処理を開始する。
【0064】
次に、図7(b)を用いて、図7(a)に示すクリーニング処理の流れの一例について説明する。
【0065】
クリーニング処理が開始し、記録データを受信すると(S301でYES)、記録装置20は、記録制御部72において、当該記録データの解析を行なう(S302)。すなわち、クリーニング対象の記録ヘッドを使用せずに、当該記録データに基づく記録動作を行なえるか否かを判定する。
【0066】
判定の結果、該当の記録ヘッドが未使用で記録を行なえるのであれば(S303でYES)、記録装置20は、クリーニング機構73において、当該記録ヘッドに基づく記録動作に並行して、該当の記録ヘッドのクリーニング処理を行なう(S304)。その後、記録装置20は、該当の記録ヘッドに対するクリーニング処理が終了したか否かを判定し、終了していなければ(S305でNO)、再度、S301の処理に戻る。
【0067】
また、S303の判定の結果、該当の記録ヘッドが記録に使用される場合には(S303でNO)、記録装置20は、記録装置制御部66において、記録動作を待機させるとともに、クリーニング機構73において、クリーニング処理を行なう(S306)。そして、クリーニング処理が終了すれば(S307でYES)、記録装置20は、この処理を終了する。
【0068】
なお、上述した情報処理装置10側における記録データの回転制御は、クリーニング処理が終了したことを示す終了通知を記録装置側から受信して終了すれば良い。また、当該終了通知を受信した時点でユーザに回転制御を継続するか否かをオペレーションパネル等を介して問い合わせるようにしても良い。
【0069】
また、詳細な説明については省略するが、S108の処理で保持した回転ページ番号は、例えば、クリーニング処理の終了時点で、情報処理装置10(ユーザ通知部68)及び記録装置(ユーザ通知部74)20の少なくとも一方においてユーザに通知すれば良い。
【0070】
以上説明したように本実施形態によれば、記録動作中にいずれかの記録ヘッドに対してクリーニング処理が要求された場合、記録データを回転させる等してクリーニング対象以外の記録ヘッドを用いて記録動作を継続し、その間にクリーニング処理を行なう。
【0071】
これにより、クリーニング処理に起因した記録動作の中断を抑制できるため、記録動作の効率化や生産性を向上させられる。
【0072】
(実施形態2)
次に、実施形態2について説明する。実施形態2においては、情報処理装置10において、クリーニング処理の終了タイミングを検出する場合について説明する。
【0073】
ここで、図8を用いて、実施形態2に係わる情報処理装置10の処理の流れの一例について説明する。ここでは、クリーニング処理の終了時の処理について説明する。
【0074】
この処理は、実施形態1を説明した図6のS110に示すクリーニング処理の開始指示が行なわれると開始する(S401でYES)。この処理が開始すると、情報処理装置10は、記録装置制御部66において、記録ヘッドの状態を取得するとともに(S402)、当該取得した情報に基づいてクリーニングの予測時間を算出する(S403)。すなわち、クリーニング処理が完了するまでの時間を予測する。この場合、記録装置制御部66においては、記録ヘッドの状態を取得する情報取得機能と、クリーニングの予測時間を算出する算出機能とが実現される。
【0075】
この予測時間が経過すると(S404でYES)、記録装置20は、記録データの回転処理を終了するとともに(S405)、記録装置制御部66において、回転処理の終了指示を記録装置20に向けて送信する(S406)。すなわち、上述した記録データの回転に係わる処理は、当該処理を開始した時点から予測時間が経過するまでの間、継続して行なわれる。
【0076】
その後、記録装置20は、実施形態1を説明した図6のS108の処理で保持した回転ページ番号をユーザに通知した後(S407)、この処理を終了する。なお、上述した通り、この通知は、情報処理装置10(ユーザ通知部68)及び記録装置(ユーザ通知部74)20の少なくとも一方においてユーザに通知すれば良い。
【0077】
以上説明したように実施形態2によれば、クリーニング処理が終了するまでの予測時間を算出し、当該時間が経過していれば、記録データの回転処理を解除する。そのため、クリーニング処理が行なわれている間のみ、回転された記録データに基づく記録動作が行なわれることになる。
【0078】
以上が本発明の代表的な実施形態の例であるが、本発明は、上記及び図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0079】
例えば、上述した実施形態1及び2においては、2つの記録ヘッドから構成される記録ヘッドユニットを例に挙げて説明したが、記録ヘッドユニットの構成はこれに限られず、3つ以上の記録ヘッドから構成されていても構わない。
【0080】
ここで、図9は、3つ以上の記録ヘッドから構成される記録ヘッドユニットの一例として、4つの記録ヘッドが含まれる記録ヘッドユニットが示される。この場合、記録データ90は、複数の記録ヘッド(この場合、32a及び32b)に跨っていても良い。すなわち、図9に示す記録ヘッドユニットの構成の場合、複数の記録ヘッドに記録データが跨っていたとしても、記録動作を継続させつつ、クリーニング処理を並行して行なえるためである。
【0081】
また、例えば、上述した実施形態1及び2においては、クリーニング処理を開始した後、その後の記録データでクリーニング処理中の記録ヘッドを使用する記録データが送られてきた場合、当該クリーニング処理が終了するまで記録装置20の記録動作が停止されることとなっていた(S303、S306、S307)。
【0082】
このような事態を回避するため、例えば、図10に示すように、情報処理装置10側において、未使用ヘッドを確保できる記録データが連続して所定数以上続くか否かを判定するようにしても良い(S501)。この場合、未使用ヘッドを確保できる記録データが連続して所定数以上続く場合のみ(S502でYES)、記録装置にクリーニング処理を開始させるようにしても良い(S103〜S110)。なお、所定数としては、クリーニング処理の開始〜終了までの間、未使用ヘッドを確保できるような記録データの数を設定すれば良い。この場合、記録動作とクリーニング処理とを完全に並行して行なえることになるため、上述した実施形態1及び2よりも更に効率良くクリーニング処理を行なえることになる。
【0083】
また、例えば、上述した記録データの回転処理を行なうか否かは、例えば、ユーザに動作設定を設定させることにより、オン/オフできるように構成しても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが配列される記録ヘッドが該ノズルの配列方向に沿って複数配置されるフルラインタイプの記録ヘッドユニットを有し、該記録ヘッドユニットに対して該ノズルの配列方向と直交する方向に相対移動する記録媒体に対して各ノズルからインクを吐出させて記録を行なう記録システムであって、
各記録ヘッドを個別にクリーニング可能なクリーニング機構と、
前記複数の記録ヘッドのうちのいずれかの記録ヘッドに対するクリーニング要求を受信する受信手段と、
前記クリーニング要求を受信した場合、記録データ内のうち前記ノズルからのインクの吐出による記録が必要とされない領域を解析する解析手段と、
前記解析手段による解析結果に基づいて、前記記録ヘッドユニットに設けられる複数の記録ヘッドのうち、記録に使用されない未使用ヘッドを特定する特定手段と、
前記クリーニング対象の記録ヘッドが前記特定手段により特定された記録ヘッドでない場合、前記記録データの回転により前記クリーニング対象の記録ヘッドを前記未使用ヘッドとすることができるか否かを判定する回転判定手段と、
前記回転判定手段により前記クリーニング対象の記録ヘッドを前記未使用ヘッドとすることができると判定された場合に前記記録データを回転させる回転手段と、
前記記録データに基づく記録を前記クリーニング対象以外の記録ヘッドを用いて行なっている間に、前記クリーニング対象の記録ヘッドに対して前記クリーニング機構によるクリーニング処理を実行させる記録制御手段と
を具備することを特徴とする記録システム。
【請求項2】
前記クリーニング対象の記録ヘッドの状態に基づいて該記録ヘッドに対するクリーニング処理が終了するまでの予測時間を算出する算出手段
を更に具備し、
前記解析手段、前記特定手段、前記回転判定手段及び前記回転手段による処理は、該処理を開始した時点から前記算出手段により算出された予測時間が経過するまでの間、継続して行なわれる
ことを特徴とする請求項1記載の記録システム。
【請求項3】
前記解析手段は、
前記クリーニング要求を受信した場合、複数の連続する記録データに基づいて、当該複数の連続する記録データ内のそれぞれから前記ノズルからのインクの吐出による記録が必要とされない領域を解析し、
前記特定手段は、
前記解析手段による解析結果に基づいて、前記複数の連続する記録データそれぞれに対して、前記記録ヘッドユニットに設けられる複数の記録ヘッドのうち、記録に使用されない未使用ヘッドを特定し、
前記回転判定手段及び前記回転手段による処理は、前記複数の連続する記録データの全ての記録時に未使用ヘッドがあると特定された場合に行なわれる
ことを特徴とする請求項1記載の記録システム。
【請求項4】
前記回転手段により回転された記録データを識別するための識別情報をユーザに通知する通知手段
を更に具備することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録システム。
【請求項5】
複数のノズルが配列される記録ヘッドが該ノズルの配列方向に沿って複数配置されるフルラインタイプの記録ヘッドユニットを有し、該記録ヘッドユニットに対して該ノズルの配列方向と直交する方向に相対移動する記録媒体に対して各ノズルからインクを吐出させて記録を行なう記録装置に記録データを供給する情報処理装置であって、
前記複数の記録ヘッドのうちのいずれかの記録ヘッドに対するクリーニング要求を受信する受信手段と、
前記クリーニング要求を受信した場合、記録データ内のうち前記ノズルからのインクの吐出による記録が必要とされない領域を解析する解析手段と、
前記解析手段による解析結果に基づいて、前記記録ヘッドユニットに設けられる複数の記録ヘッドのうち、記録に使用されない未使用ヘッドを特定する特定手段と、
前記クリーニング対象の記録ヘッドが前記特定手段により特定された記録ヘッドでない場合、前記記録データの回転により前記クリーニング対象の記録ヘッドを前記未使用ヘッドとすることができるか否かを判定する回転判定手段と、
前記回転判定手段により前記クリーニング対象の記録ヘッドを前記未使用ヘッドとすることができると判定された場合に前記記録データを回転させる回転手段と、
前記記録データに基づく記録を前記クリーニング対象以外の記録ヘッドを用いて行なっている間に、前記クリーニング対象の記録ヘッドに対して各記録ヘッドを個別にクリーニング可能なクリーニング機構によりクリーニング処理を実行させる記録制御手段と
を具備することを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
複数のノズルが配列される記録ヘッドが該ノズルの配列方向に沿って複数配置されるフルラインタイプの記録ヘッドユニットを有し、該記録ヘッドユニットに対して該ノズルの配列方向と直交する方向に相対移動する記録媒体に対して各ノズルからインクを吐出させて記録を行なう記録システムの処理方法であって、
受信手段が、前記複数の記録ヘッドのうちのいずれかの記録ヘッドに対するクリーニング要求を受信する工程と、
解析手段が、前記クリーニング要求を受信した場合、記録データ内のうち前記ノズルからのインクの吐出による記録が必要とされない領域を解析する工程と、
特定手段が、前記解析手段による解析結果に基づいて、前記記録ヘッドユニットに設けられる複数の記録ヘッドのうち、記録に使用されない未使用ヘッドを特定する工程と、
回転判定手段が、前記クリーニング対象の記録ヘッドが前記特定手段により特定された記録ヘッドでない場合、前記記録データの回転により前記クリーニング対象の記録ヘッドを前記未使用ヘッドとすることができるか否かを判定する工程と、
回転手段が、前記回転判定手段により前記クリーニング対象の記録ヘッドを前記未使用ヘッドとすることができると判定された場合に前記記録データを回転させる工程と、
記録制御手段が、前記記録データに基づく記録を前記クリーニング対象以外の記録ヘッドを用いて行なっている間に、前記クリーニング対象の記録ヘッドに対して各記録ヘッドを個別にクリーニング可能なクリーニング機構によりクリーニング処理を実行させる工程と
を含むことを特徴とする処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−43302(P2013−43302A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180827(P2011−180827)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】