説明

記録システム、映像撮影装置および映像記録方法

【課題】 複数の映像撮影装置を用いた映像記録を、従来よりも利便性良く、実行可能にする。
【解決手段】 親機となる映像撮影装置1は送受信機能とシステム全体の制御機能とを有し、子機となる映像撮影装置2,3,…,nは送受信機能を有する。親機1は時間同期をとるための同期データを送信し、各子機2,3,…,nは受信した同期データに従って、親機1との間の時間同期をとりながら、撮影を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数のビデオカメラなどの映像撮影装置を用いて、同時に、撮影記録する記録システムに関する技術に属する。
【0002】
【従来の技術】近年、携帯ムービー等の普及が進み、様々な形態でビデオ撮影が行われるようになっている。また、撮影した映像データをパソコン上で気軽に編集できるソフトも、一般に普及している。
【0003】複数のビデオカメラを用いて撮影を行うシステムの技術が、特開昭61−94461号公報に開示されている。このシステムでは、システムの各撮影装置に向けて基準となるタイムコードを電波によって送出する主タイムコード送信機を配置している。そして、タイムコードで各装置間の同期をとることによって、記録済みのデータ編集作業を容易にすることを実現していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の従来の構成では、複数台の撮影装置の他に、別途、同期をとるための主タイムコード送信機を配置する必要があり、利用者が気軽に撮影を行うという点では、大きな問題があった。
【0005】また、各撮影装置間ではタイムコードによる同期は取られているものの、例えばフォーカス、絞り、または記録映像の圧縮レート等の撮影装置自体のパラメータは、動的に変更できない。このため、各撮影装置をシステムとして相互同期させながら撮影を行うことができず、利便性の面で優れているとはいえなかった。
【0006】さらに、各撮影装置毎に、テープなどの蓄積装置を備えているので、コストが高くなるとともに、携帯性や機動性の面でも問題があった。
【0007】前記の問題に鑑み、本発明は、複数の映像撮影装置を用いた映像記録を、従来よりも利便性良く、実行可能にすることを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決するために、請求項1の発明が講じた解決手段は、複数の映像撮影装置を有する記録システムとして、前記複数の映像撮影装置は、送受信機能と当該記録システムの制御機能とを有する親機と、送受信機能を有する少なくとも1つの子機とを含み、前記親機は時間同期をとるための同期データを送信し、前記子機は前記親機から送信された前記同期データを受信し、この同期データに従って前記親機との間の時間同期をとりながら撮影を行うものである。
【0009】請求項1の発明によると、各子機は、親機から送信された同期データに従って親機との間の時間同期をとりながら、撮影を行う。このため、従来のように、同期をとるための装置を別途設けなくても、映像撮影装置のみで、互いの時間同期を取りながら撮影を行うことが可能になる。したがって、利用者の利便性が大幅に向上する。
【0010】そして、請求項2の発明では、前記請求項1における親機は、受信した前記子機の映像データを当該親機の映像データと併せて蓄積する機能を有するものとする。
【0011】また、請求項3の発明では、前記請求項1の記録システムにおいて、前記親機は、前記子機の動作仕様を規定する動作パラメータを制御情報として送信し、前記子機は、前記親機から送信された前記動作パラメータを受信し、この動作パラメータに従って自己の動作仕様を設定し撮影を行うものとする。
【0012】そして、請求項4の発明では、前記請求項3における動作パラメータは、カメラの焦点距離、絞りおよびホワイトバランス、映像データの符号化圧縮率、多重レートおよび多重期間、静止画か動画かの区別、並びに、音声の有無のうちの少なくとも1つを含むものとする。
【0013】また、請求項5の発明では、前記請求項3の記録システムにおいて、前記子機は、自己の動作仕様を変更したいとき、前記制御情報として変更内容を示す変更要求信号を送信し、前記親機は、前記子機から送信された前記変更要求信号を受信し、この変更要求信号が示す変更内容を許可するか否かを判定し、許可するとき、前記制御情報として変更許可信号と変更後の前記子機の動作仕様を示す動作パラメータとを送信するものとする。
【0014】また、請求項6の発明では、前記請求項1における子機は、受信信号の強度を検出し、この信号強度が低下したか否かを示す識別信号を出力する信号強度検出部と、前記識別信号を受け、この識別信号が信号強度の低下を示すとき、送信する映像データを一時的に記憶する記憶部とを備え、信号強度の低下が解消したとき、前記記憶部に記憶された映像データを送信するものとする。
【0015】請求項6の発明によると、子機において、信号強度検出部によって信号強度の低下が検出されたとき、送信する映像データが記憶部によって一時的に記憶され、この記憶された映像データは、信号強度の低下が解消したとき、改めて送信される。これにより、各子機は、たとえ弱電界になったとしても、映像データを確実に親機に送信することができる。
【0016】また、請求項7の発明が講じた解決手段は、複数の映像撮影装置を有する記録システムとして、前記複数の映像撮影装置は、送受信機能と当該記録システムの制御機能とを有する親機と、送受信機能を有する少なくとも1つの子機とを含み、前記親機は、受信した前記子機の映像データを当該親機の映像データと併せて蓄積する機能を有するものである。
【0017】請求項7の発明によると、親機が、子機の映像データと自己の映像データとを併せて蓄積し、このため、映像データの蓄積機能が親機に集中するので、子機には蓄積機能を持たせる必要がなくなり、蓄積装置を省くことができる。したがって、子機の構成を小型化でき、コストを低減できるとともに、携帯性や機動性も向上させることができる。
【0018】また、請求項8の発明が講じた解決手段は、複数の映像撮影装置を有する記録システムとして、前記複数の映像撮影装置は、送受信機能と当該記録システムの制御機能とを有する親機と、送受信機能を有する少なくとも1つの子機とを含み、前記親機は、前記子機の動作仕様を規定する動作パラメータを制御情報として送信し、前記子機は、前記親機から送信された前記動作パラメータを受信し、この動作パラメータに従って自己の動作仕様を設定し撮影を行うものである。
【0019】請求項8の発明によると、各子機は、親機から送信された動作パラメータに従って、自己の動作仕様を設定し、撮影を行う。これにより、子機となる映像撮影装置の動作仕様を動的に変更しながら、記録システム全体として協調して撮影を行うことが可能になる。
【0020】また、請求項9の発明が講じた解決手段は、複数の映像撮影装置を有する記録システムにおいて親機として用いられる映像撮影装置として、送受信機能と当該記録システムの制御機能とを有し、子機として用いられる他の映像撮影装置が、当該映像撮影装置との間で時間同期をとりながら撮影ができるように、時間同期をとるための同期データを送信するものである。
【0021】また、請求項10の発明が講じた解決手段は、複数の映像撮影装置を有する記録システムにおいて親機として用いられる映像撮影装置として、送受信機能と、当該記録システムの制御機能と、子機として用いられる他の映像撮影装置から受信した映像データを、当該映像撮影装置の映像データと併せて蓄積する機能とを備えたものである。
【0022】また、請求項11の発明が講じた解決手段は、複数の映像撮影装置を有する記録システムにおいて親機として用いられる映像撮影装置として、送受信機能と、当該記録システムの制御機能とを有し、子機として用いられる他の映像撮影装置の動作仕様を規定する動作パラメータを制御情報として送信するものである。
【0023】また、請求項12の発明が講じた解決手段は、複数の映像撮影装置を有する記録システムによって映像データの記録を行う方法として、前記複数の映像撮影装置は、送受信機能と当該記録システムの制御機能とを有する親機と、送受信機能を有する少なくとも1つの子機とを含み、前記親機から時間同期をとるための同期データを送信するステップと、前記子機が前記親機から送信された前記同期データを受信するステップと、前記子機が受信した同期データに従って前記親機との間の時間同期をとりながら撮影を行うステップとを備えたものである。
【0024】また、請求項13の発明が講じた解決手段は、複数の映像撮影装置を有する記録システムによって映像データの記録を行う方法として、前記複数の映像撮影装置は、送受信機能と当該記録システムの制御機能とを有する親機と、送受信機能を有する少なくとも1つの子機とを含み、前記子機が撮影した映像データを送信するステップと、前記親機が前記子機から送信された前記映像データを受信するステップと、前記親機が、受信した前記子機の映像データを当該親機の映像データと併せて蓄積するステップとを備えたものである。
【0025】また、請求項14の発明が講じた解決手段は、複数の映像撮影装置を有する記録システムによって映像データの記録を行う方法として、前記複数の映像撮影装置は、送受信機能と当該記録システムの制御機能とを有する親機と、送受信機能を有する少なくとも1つの子機とを含み、前記親機が、前記子機の動作仕様を規定する動作パラメータを制御情報として送信するステップと、前記子機が前記親機から送信された前記動作パラメータを受信するステップと、前記子機が、受信した動作パラメータに従って自己の動作仕様を設定し撮影を行うステップとを備えたものである。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】図1は本発明の一実施形態に係る複数の映像撮影装置を有する記録システムの構成図である。図1において、1,2,3,…,nはそれぞれ、ビデオカメラ機能と無線伝送による送受信機能とを併せ持つ映像撮影装置であって、映像撮影装置1は当該記録システムの制御機能を有しており、親機として動作し、他の映像撮影装置2,3,…,nは子機として動作する。なお、nは記録システムで設定する子機の台数によって決定される数である。
【0028】図2は親機となる映像撮影装置1の内部構成を示す図、図3は子機となる映像撮影装置2の内部構成を示す図である。図2において、11は受信時においては送受信アンテナ1bから受信信号の復調を行って復調信号11bを出力する一方、送信時においては多重システムデータ12aの変調を行い送受信アンテナ1bに出力する変復調部である。
【0029】12は変復調部11から出力された復調信号11bを入力し、多重されている映像データと制御情報データとの分離を行い、分離映像音声(AV)データ12bと分離制御情報データ12cを出力する一方、エンコード映像データ13cとシステム制御情報データ17bを入力し、採用する送受信方式に応じた多重処理を行い、多重システムデータ12aとして出力する分離多重部である。
【0030】13は分離多重部12の出力である分離AVデータ12bを入力し、デコード処理を行いデコード映像出力信号13bとして出力部14に出力する一方、入力部15(カメラやマイクなど)からの撮影データ15bを入力し、エンコード処理を行ってエンコード映像データ13cとして分離多重部12へ出力するコーデック部である。コーデック部13における処理は、MPEGなどいかなる方式によるものであってもよい。
【0031】16はコーデック部13から出力されたエンコード映像データ13cと、分離多重部12によって分離された分離AVデータ12b(各子機から送信されたAVデータ)とを、併せて記録する蓄積部である。蓄積部16は具体的には例えば、DVD−RAM、HDDなどによって構成される。
【0032】17は分離多重部12から出力された分離制御情報データ12cを入力し、システム制御に必要となる制御情報の検出を行い、検出制御情報17cとして出力する一方、システムからの機能操作情報1aとマイコン18からの制御信号18cを入力とし、システム制御情報データ17bとして分離多重部12へ出力する制御情報検出生成部、18は制御信号18cを参照しながらシステム全体の制御を行うマイコンである。
【0033】また、図3に示す子機の内部構成は、マイコンと蓄積部がないことを除くと、図2に示す親機とほぼ同様の構成からなる。本実施形態では、親機が記録システム全体を制御する機能を有するので、子機にはマイコンは設けられていない。また、親機が自己および各子機の映像データを併せて蓄積する機能を有するので、子機には蓄積部は必ずしも設ける必要はない。なお、図3における信号強度検出部28およびバッファリング部29については、後述する。
【0034】本実施形態では、記録システムは、2台の子機を有するものとする。すなわち、本実施形態に係る記録システムは、親機1および子機2,3の計3台の映像撮影装置によって構成されているものとする。
【0035】また本実施形態では、送受信の方式としては、時分割多重方式を用いるものとする。ただし、実際に本記録システムを構築する場合には、システムが利用される環境に応じて最適な送受信方式(分離多重方式や変復調方式)を選択すればよい。
【0036】図4は送受信データのフレームデータフォーマットの一例を示す図である。図4に示すフォーマットでは、フレームデータは、時間同期をとるための同期データ、制御情報、および多重AVデータによって構成されている。
【0037】(同期データ)まず親機1は、システムの同期をとるために、同期データであるプリアンブル信号Paと同期パターンSywを各フレームの先頭で送信する。すなわち、制御情報検出生成部17が、マイコン18で管理された時刻情報を基にして、同期データをシステム制御データ17bとして生成する。この同期データは、分離多重部12によって時分割多重され、さらに変復調部11によって変調されて各子機2,3へ送信される。
【0038】プリアンブル信号Paは“1”“0”が交番する信号であり、システムのクロック成分を含む信号である。このプリアンブル信号Paは各子機2,3が親機1とクロック位相を合わせるための基準信号となる。すなわち、各子機2,3は、このプリアンブル信号Paを基準にしてクロック再生を行う。
【0039】同期パターンSywは、システムによって設定されるユニークな“1”“0”のビットパターンであり、多重データとの識別が可能なパターンである。
【0040】各子機2,3は、システムスタート時は受信状態であり、変復調部21においてプリアンブル信号Paに基づいてシステムのクロック再生を行い、親機1とのクロックの位相を同期させる。さらに、この位相同期したクロックによって、分離多重部22において同期パターンSywを検出することによって、システムのフレーム同期を確立させる。
【0041】フレーム同期確立後は、受信状態では、復調信号21bから、分離制御情報データ22aとしての制御情報CTRL2,CTRL3(動作パラメータおよび変更許可信号)と、分離AVデータ22bとしての多重AVデータAV1,AV2,AV3とを分離することが可能になる。また送信状態では、システム制御情報27bとしての制御情報CTRL2,CTRL3(変更要求信号)と、エンコード映像データ29b(23c)としての多重AVデータAV2またはAV3とを、時分割多重することが可能になる。
【0042】(制御情報)子機2,3は親機1から多重送信される制御情報CTRL2,CTRL3に応じて、動作モードが決定される。この制御情報CTRL2,CTRL3は、動作パラメータPRM21〜PRM24,PRM31〜PRM34、変更許可信号Pms2,Pms3および変更要求信号Dmd2,Dmd3を含んでいる。
【0043】動作パラメータは各子機2,3の動作仕様を規定するデータである。具体的には例えば、カメラの焦点距離、絞りおよびホワイトバランス、映像データの符号化圧縮率、多重レートおよび多重期間、静止画か動画かの区別、並びに、音声の有無など、映像音声信号、ビデオ編集、システム制御などに関連するパラメータである。この他にも、システム時刻、カメラアングル、映像フィールドなど様々なものが考えられる。
【0044】そして、各子機2,3が撮影中にこれらの動作パラメータを変更したい場合には、親機1に対して変更要求を行う必要がある。この変更要求は、各子機2,3が、変更内容を示す変更要求信号Dmd2,Dmd3を親機1に送信することによって実現される。
【0045】親機1は子機2,3から送信された変更要求信号Dmd2,Dmd3を受信する。そして、受信した変更要求信号Dmd2,Dmd3が示す変更内容について、許可するか否かを判定する。変更を許可する場合には、次のフレームにおいて、変更許可信号Pms2,Pms3と、許可した変更後の各子機2,3の動作仕様を示す動作パラメータPRM21〜PRM24,PRM31〜PRM34を、時分割多重して送信する。
【0046】子機2,3は、親機1からの変更許可信号Pms2,Pms3を受信して、自己の動作仕様をこれに連動させて随時変更させていく。
【0047】(動作説明)このように、子機2,3はフレーム同期確立後は、親機1と相互に制御情報CTRL2,CTRL3を介して通信を行いながら、撮影を実行する。図5はフレーム同期確立後の親機1と子機2,3との送受信の一例を模式的に示すタイミングチャートである。図5を参照して、本実施形態に係る記録システムの動作について説明する。なお図5では、親機1のAVデータ用のタイムスロットAV1については、親機1と子機2,3との間の送受信には直接関わらないので、図示を省略している。
【0048】<第1フレーム>フレーム同期確立後、まず第1フレームにおいて、親機1は制御情報検出生成部17によって各子機2,3に対する動作パラメータPRM21〜PRM24,PRM31〜PRM34をシステム制御情報データ17bとして生成し、これを多重分離部12によって時分割多重して、変復調部11によって変調して送信する。この第1フレームでは、子機2,3から親機1への変更要求信号Dmd2,Dmd3は発生していない。
【0049】子機2,3は制御情報検出生成部27によって、制御情報CTRL2,CTRL3から動作パラメータPRM21〜PRM24,PRM31〜PRM34をそれぞれ検出する。検出された動作パラメータPRM21〜PRM24,PRM31〜PRM34は、検出制御情報27cとして出力され、これにより、各動作パラメータに規定された動作仕様が反映された処理が実行される。すなわち、子機2は、動作パラメータPRM21〜PRM24によって割り当てられたタイムスロットAV2に、エンコードAVデータ29bを時分割多重して(AV21)送信する。一方、子機3は、動作パラメータPRM31〜PRM34によって割り当てられたタイムスロットAV3に、エンコードAVデータ29bを時分割多重して(AV31)送信する。
【0050】親機1では、復調信号11bから、子機2,3にそれぞれ割り当てたタイムスロットAV2,AV3において受信したデータ(AV21,AV31)を分離AVデータ12bとして分離し、蓄積部16に蓄積する。
【0051】<第2フレーム>次の第2フレームでは、子機2が、高品質での録画を要求するものとする。この場合、子機2の映像データ量が増大するので、多重期間の拡大、すなわちタイムスロットAV2の期間を長くすることが必要になる。したがって、子機2は、変更内容として多重期間の拡大を示す変更要求信号Dmd2を制御情報検出生成部27によって生成し、これを時分割多重して送信する。そして、この変更要求が親機1によって許可されるか否かを、次フレームまで待つ。
【0052】親機1は復調信号11bから、子機2からの変更要求信号Dmd2を分離し、制御情報検出生成部17によってその変更内容を検出する。そして、マイコン18が、この変更要求に応じることが可能か否か、システム全体における整合性を鑑みて判定する。そして、検出した変更内容を許可するときは、子機2に対する変更許可信号Pms2を準備するとともに、子機2,3に対する動作パラメータPRM21〜PRM24,PRM31〜PRM34について、多重期間の変更に係るパラメータの変更準備を行う。
【0053】子機2,3は、第1フレームと同一の動作パラメータに応じて動作する。すなわち、子機2は、動作パラメータPRM21〜PRM24によって割り当てられたタイムスロットAV2に、エンコードAVデータ29bを時分割多重して(AV22)送信し、その一方、子機3は、動作パラメータPRM31〜PRM34によって割り当てられたタイムスロットAV3に、エンコードAVデータ29bを時分割多重して(AV32)送信する。
【0054】<第3フレーム>次の第3フレームでは、親機1は、第2フレームにおける子機2からの変更要求を許可するものとする。親機1において、制御情報検出生成部17は、子機2に対する変更許可信号Pms2と、子機2における変更内容とシステムとの整合性をとるために変更した各子機2,3に対する動作パラメータPRM21〜PRM24,PRM31〜PRM34とを生成する。この変更許可信号Pms2と動作パラメータPRM21〜PRM24,PRM31〜PRM34とを含む制御情報は、システム制御情報データ17bとして、分離多重部12によって時分割多重されて送信される。
【0055】子機2は、制御情報検出生成部27によって検出した制御情報CTRL2から変更許可信号Pms2を認識し、前の第2フレームにおいて要求した変更が許可されたことを確認する。そして変更が許可されたので、動作パラメータPRM21〜PRM24を検出し、これに規定された動作仕様を検出制御情報27cとして出力する。分離多重部22は、パラメータ変更により期間延長されたタイムスロットAV2において、エンコード映像データ29b(23c)の時分割多重を行う(AV23)。
【0056】また子機3は、制御情報検出生成部27によって動作パラメータPRM31〜PRM34を検出し、これに規定された動作仕様を検出制御情報27cとして出力する。分離多重部22は、パラメータ変更により始期と終期が時間的にずらされたタイムスロットAV3において、エンコード映像データ29b(23c)の時分割多重を行う(AV33)。
【0057】このように本実施形態に係る記録システムによると、まず、各子機は、親機から送られた同期データに従って、親機との間の時間同期をとりながら撮影を行うことが可能になる。このため、親機と子機それぞれで記録された映像データは、全て時間同期が取られるので、映像データの編集時にフレームやフィールドの合わせ込みが不要になり、編集作業の効率が飛躍的に向上する。
【0058】また、本実施形態によると、各子機は、親機から送信された動作パラメータに従って自己の動作仕様を規定し、撮影を行う。すなわち、親機がシステムの全体の整合性をとりながら、各子機の動作仕様を規定および変更することができるので、動作パラメータの組合せによって、システムに適した様々な機能を動的に実現することが可能になる。
【0059】また、本実施形態によると、親機が、受信した各子機の映像データを、自己の映像データと併せて蓄積する機能を有しているので、各子機には、蓄積装置を設ける必要がなくなる。このため、子機のさらなる小型化を図ることができ、携帯性を向上させることができるとともに、コスト面でも有利になる。もちろん、子機に蓄積装置を設けてもかまわない。この場合には、例えばバックアップとして、あるいは一時的なバッファとしての用途が考えられる。
【0060】<信号強度低下対策>例えば、撮影時にアングル移動を瞬間的に行ったような場合、一時的に弱電界での送受信を行わなければならない。この場合には、子機2,3から親機1へ送信する映像データの信号強度が一時的に低下する。この信号強度の低下の対策として、図3に示すように、子機2には、信号強度検出部28およびバッファリング部29が、設けられている。ここでは、これらの構成及び動作について説明する。
【0061】図6は信号強度検出部28の構成例を示す図である。図6において、28aは変復調部21から受信電界に関連する情報、例えば自動利得制御(AGC)電圧VAGCを一方の入力とし、システムで予め設定された電界設定レベルLVLを他方の入力とし、2つの入力の大小比較を行い、その結果を識別信号SDTとして出力する比較回路である。変復調部21は復調信号レベルを一定に保つため、送受信アンテナ2bでの電界の強弱に応じて利得の大きさを変えるために、AGC電圧VAGCの大きさも、信号強度に応じて変化する。そこで、電界設定レベルLVLを標準電界と弱電界との間の電圧値に設定することによって、信号強度の低下が検出できる。ここでは、AGC電圧VAGCと電界設定レベルLVLとの比較が常時行われ、AGC電圧VAGCが電界設定レベルLVLを下回ったとき、識別信号SDTが信号強度の低下を示すために“H”になるものとする。
【0062】図7は記憶部としてのバッファリング部29の構成例を示す図である。図7において、29aはエンコード映像データ23cをバッファリングし、保持映像データ291bを出力するメモリであり、信号強度検出部28の出力である識別信号SDTが“H”になったとき、1フレーム遡ったデータから数フレーム後までのデータを格納する。29bはエンコード映像データ23cと保持映像データ291bとを入力とし、システムからの選択信号292aに応じて、いずれか一方を選択して、選択映像データ292bとして出力する選択回路である。
【0063】図8は信号強度の低下を検出したときの親機と子機との間の送受信動作の例を示す図である。図8に示すように、弱電界になって信号強度が低下した場合には、子機2から親機1に送信したAVデータは、その復調・分離・エンコード処理において何らかのエラーが生じる可能性が高くなる(A)。したがって、より確実にAVデータの記録を行うために、この弱電界の期間にメモリ29aに記憶していた保持映像データ291bを、システムからの選択信号292aに応じて切り替えて選択映像データ292bとして多重伝送することで、より確実な記録が実現できる。
【0064】図8の場合には、弱電界から通常電界へ復帰し、信号強度の低下が解消したとき、子機2は親機1に対して多重期間の拡大を要求している(B)。そして、この変更が許可されたとき(C)、現フレームにおけるエンコード映像データ23cに続いて、保持映像データ291bを、時分割多重して送信している。これにより、AVデータを確実に記録することができる(D)。
【0065】また、撮影者が重要な映像と判断するときは、通常電界に復帰した後、保持映像データ291bを、現フレームにおけるエンコード映像データ23cの代わりに、システムからの選択信号292aによって強制的に多重伝送する方式にしてもかまわない。
【0066】なお、本実施形態では、親機と子機との間の送受信の方式として、時間軸多重方式を用いるものとしたが、周波数多重方式など、他の方式を用いてもかまわない。
【0067】また、本実施形態では、親機と子機との間の送受信は、無線伝送で行うものとしたが、もちろん、有線伝送を利用してもかまわない。この場合、例えば、インターネットを介して送受信を行うことも可能であり、また、監視カメラへの適用も考えられる。
【0068】
【発明の効果】以上のように本発明によると、同期をとるための装置を別途設けなくても、映像撮影装置のみで互いの時間同期を取りながら撮影を行うことが可能になり、利用者の利便性が大幅に向上する。また、映像データの蓄積機能が親機に集中するので、子機の構成を小型化でき、コストを低減できるとともに、携帯性や機動性も向上させることができる。さらに、各映像撮影装置の動作仕様を動的に変更しながら、記録システム全体として協調して撮影を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る複数の映像撮影装置を有する記録システムの構成図である。
【図2】親機となる映像撮影装置の内部構成の例を示す図である。
【図3】子機となる映像撮影装置の内部構成の例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態における送受信データのフレームフォーマットを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態における親機と子機との間の送受信動作を示す図である。
【図6】図3に示す子機の構成における信号強度検出部の構成を示す図である。
【図7】図3に示す子機の構成におけるバッファリング部の構成を示す図である。
【図8】信号強度の低下を検出したときの親機と子機との間の送受信動作の例を示す図である。
【符号の説明】
1 映像撮影装置(親機)
2,3,n 映像撮影装置(子機)
11,21 変復調部
12,22 分離多重部
13,23 コーデック部
16 蓄積部
28 信号強度検出部
29 バッファリング部(記憶部)
Pa プリアンブル信号(同期データ)
Syw システム同期パターン(同期データ)
CTRL2,CTRL3 制御情報
PRM21〜PRM24,PRM31〜PRM34 動作パラメータ
Pms2,Pms3 変更許可信号
Dmd2,Dmd3 変更要求信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の映像撮影装置を有する記録システムであって、前記複数の映像撮影装置は、送受信機能と、当該記録システムの制御機能とを有する親機と、送受信機能を有する少なくとも1つの子機とを含み、前記親機は、時間同期をとるための同期データを送信し、前記子機は、前記親機から送信された前記同期データを受信し、この同期データに従って前記親機との間の時間同期をとりながら、撮影を行うことを特徴とする記録システム。
【請求項2】 請求項1において、前記親機は、受信した前記子機の映像データを、当該親機の映像データと併せて蓄積する機能を有するものであることを特徴とする記録システム。
【請求項3】 請求項1において、前記親機は、前記子機の動作仕様を規定する動作パラメータを、制御情報として送信し、前記子機は、前記親機から送信された前記動作パラメータを受信し、この動作パラメータに従って自己の動作仕様を設定し、撮影を行うことを特徴とする記録システム。
【請求項4】 請求項3において、前記動作パラメータは、カメラの焦点距離、絞りおよびホワイトバランス、映像データの符号化圧縮率、多重レートおよび多重期間、静止画か動画かの区別、並びに、音声の有無のうちの、少なくとも1つを含むことを特徴とする記録システム。
【請求項5】 請求項3において、前記子機は、自己の動作仕様を変更したいとき、前記制御情報として、変更内容を示す変更要求信号を送信し、前記親機は、前記子機から送信された前記変更要求信号を受信し、この変更要求信号が示す変更内容を、許可するか否かを判定し、許可するとき、前記制御情報として、変更許可信号と、変更後の前記子機の動作仕様を示す動作パラメータとを、送信することを特徴とする記録システム。
【請求項6】 請求項1において、前記子機は、受信信号の強度を検出し、この信号強度が低下したか否かを示す識別信号を出力する信号強度検出部と、前記識別信号を受け、この識別信号が信号強度の低下を示すとき、送信する映像データを一時的に記憶する記憶部とを備え、信号強度の低下が解消したとき、前記記憶部に記憶された映像データを、送信することを特徴とする記録システム。
【請求項7】 複数の映像撮影装置を有する記録システムであって、前記複数の映像撮影装置は、送受信機能と、当該記録システムの制御機能とを有する親機と、送受信機能を有する少なくとも1つの子機とを含み、前記親機は、受信した前記子機の映像データを、当該親機の映像データと併せて蓄積する機能を有するものであることを特徴とする記録システム。
【請求項8】 複数の映像撮影装置を有する記録システムであって、前記複数の映像撮影装置は、送受信機能と、当該記録システムの制御機能とを有する親機と、送受信機能を有する少なくとも1つの子機とを含み、前記親機は、前記子機の動作仕様を規定する動作パラメータを、制御情報として送信し、前記子機は、前記親機から送信された前記動作パラメータを受信し、この動作パラメータに従って自己の動作仕様を設定し、撮影を行うことを特徴とする記録システム。
【請求項9】 複数の映像撮影装置を有する記録システムにおいて、親機として用いられる映像撮影装置であって、送受信機能と、当該記録システムの制御機能とを有し、子機として用いられる他の映像撮影装置が、当該映像撮影装置との間で時間同期をとりながら撮影ができるように、時間同期をとるための同期データを送信することを特徴とする映像撮影装置。
【請求項10】 複数の映像撮影装置を有する記録システムにおいて、親機として用いられる映像撮影装置であって、送受信機能と、当該記録システムの制御機能と、子機として用いられる他の映像撮影装置から受信した映像データを、当該映像撮影装置の映像データと併せて、蓄積する機能とを備えたことを特徴とする映像撮影装置。
【請求項11】 複数の映像撮影装置を有する記録システムにおいて、親機として用いられる映像撮影装置であって、送受信機能と、当該記録システムの制御機能とを有し、子機として用いられる他の映像撮影装置の動作仕様を規定する動作パラメータを、制御情報として送信することを特徴とする映像撮影装置。
【請求項12】 複数の映像撮影装置を有する記録システムによって、映像データの記録を行う方法であって、前記複数の映像撮影装置は、送受信機能と、当該記録システムの制御機能とを有する親機と、送受信機能を有する少なくとも1つの子機とを含み、前記親機から、時間同期をとるための同期データを送信するステップと、前記子機が、前記親機から送信された前記同期データを受信するステップと、前記子機が、受信した同期データに従って、前記親機との間の時間同期をとりながら、撮影を行うステップとを備えたことを特徴とする映像記録方法。
【請求項13】 複数の映像撮影装置を有する記録システムによって、映像データの記録を行う方法であって、前記複数の映像撮影装置は、送受信機能と、当該記録システムの制御機能とを有する親機と、送受信機能を有する少なくとも1つの子機とを含み、前記子機が、撮影した映像データを送信するステップと、前記親機が、前記子機から送信された前記映像データを受信するステップと、前記親機が、受信した前記子機の映像データを、当該親機の映像データと併せて蓄積するステップとを備えたことを特徴とする映像記録方法。
【請求項14】 複数の映像撮影装置を有する記録システムによって、映像データの記録を行う方法であって、前記複数の映像撮影装置は、送受信機能と、当該記録システムの制御機能とを有する親機と、送受信機能を有する少なくとも1つの子機とを含み、前記親機が、前記子機の動作仕様を規定する動作パラメータを、制御情報として送信するステップと、前記子機が、前記親機から送信された前記動作パラメータを受信するステップと、前記子機が、受信した動作パラメータに従って自己の動作仕様を設定し、撮影を行うステップとを備えたことを特徴とする映像記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2002−325216(P2002−325216A)
【公開日】平成14年11月8日(2002.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−35162(P2002−35162)
【出願日】平成14年2月13日(2002.2.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】