説明

記録ヘッド駆動装置及び液滴吐出装置

【課題】記録ヘッドの検査時には、検査に必要な回路に電圧を供給する回路のみを監視する記録ヘッド駆動装置及び液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】検査モード時はLレベル、駆動モード時はHレベルのモード信号が入力される。ANDゲート44には、検査回路22に電源を供給するDC−DCコンバータ34の電圧を監視する監視回路35の電源モニタ信号と、モード信号と、が入力されDC−DCコンバータ30、32のイネーブル信号が出力される。ANDゲート42には、駆動回路20に電源を供給するDC−DCコンバータ30、32、直流電源+V5を各々監視する監視回路31、33、37の電源モニタ信号が入力される。マルチプレクサ40は、検査モードの場合には監視回路35の電源モニタ信号を、駆動モードの場合にはANDゲート42の電源モニタ信号をデジタル回路基板14に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッド駆動装置及び液滴吐出装置、特に記録ヘッドの状態を検査する検査手段を備えた記録ヘッド駆動装置及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドとしてインクジェットを用いた場合のインクジェット駆動装置の例を図4に示す。図4に示したインクジェットヘッド駆動装置112は、デジタル回路基板114及びアナログ回路基板116を含んで構成されている。インクジェットの駆動電圧を示すデータがデジタル回路基板114のD/A変換器119に順次送られ、D/A変換器119から出力されたアナログ信号がアナログ回路基板116に入力され、差動増幅回路124及び駆動回路120が動作する。アナログ回路基板116は、DC−DCコンバータ130を備えており、差動増幅回路124及び駆動回路120の動作に必要な電源電圧を生成する。
【0003】
インクジェットヘッド117に近いと、インクミストや飛散したインクが付着しやすく、壊れやすくなる。そのため、CPU118等の高価なデジタル部品等はデジタル回路基板114に搭載し、比較的安価なアナログ部品をアナログ回路基板116に搭載するようにしておくことにより、アナログ回路基板116が壊れた場合でも、アナログ回路基板116のみを交換することで対応ができるため、比較的安価にシステムを復旧できる。
【0004】
一方、一般にインクジェットヘッド駆動装置112の起動においては、アナログ回路基板116に比べてデジタル回路基板114の方が、起動に時間がかかる。デジタル回路基板114が起動する前にアナログ回路基板116が起動した場合、D/A変換器119の出力はハイインピーダンスとなるため、差動増幅回路124の出力がゼロになる。これは差動増幅回路124の出力振幅範囲の中心に相当するため、駆動回路120の出力にはフルスケール振幅範囲の中心に相当する電圧があらわれてしまう。すなわちインクジェットヘッド117に意図しない大きな電圧が印加されることになるため、インクジェットヘッド117上のスイッチ162を破壊したり、ピエゾアクチュエータ160が作動してインクを吐出してしまったりするおそれがある。
【0005】
そこでデジタル回路基板114はアナログ回路基板116に対して、起動開始信号を出力するように制御することが行われている。デジタル回路基板114が起動していない間は、当該起動開始信号は出力されないためアナログ回路基板116は起動せず、デジタル回路基板114が起動すると起動開始信号が出力されるため、アナログ回路基板116が起動する。
【0006】
また、駆動基板上の電源電圧をモニタし、異常電圧が発生した場合、プリンタ制御回路に対してリセットをかけることにより制御回路を保護する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
一方、インクジェットヘッド117には、内部の電気回路領域にインクが染みこんでアクチュエータ160が等価的に低抵抗または短絡状態となる不具合が発生する場合がある。当該不具合を放置しておくと、駆動回路120の出力段128の素子であるトランジスタTr1、Tr2に常時、大電流が流れてしまい、発熱し、焼損に至る可能性がある。そのため、出力150の電位(アナログ回路基板116とインクジェットヘッド117とが接続される信号線の電位)を検出し、インクジェットヘッド117の状態を検査することが行われている(例えば、特許文献2参照)。アクチュエータ160の抵抗値が小さいほど出力150の電位が小さくなるため、当該電位に基づいてインクジェットヘッド117の状態を検査し、駆動回路120を起動させても良いか判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開H07−290730号公報
【特許文献2】特開H7−68907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
デジタル回路基板114がアナログ回路基板116の電源電圧の状態を監視する場合は、アナログ回路基板116が、搭載されているDC−DCコンバータの出力が正常であるか否かを常時監視して、監視結果を示す信号(電源モニタ信号)をデジタル回路基板114に出力する。デジタル回路基板114は、当該電源モニタ信号により、アナログ回路基板116の電源電圧が正常であるか否かを監視する。
【0010】
デジタル回路基板114は、インクジェットヘッド117の状態が正常であるか否かを示す情報と、電源モニタ信号と、に基づいてアナログ回路基板116の起動を制御することが望ましい。すなわち、インクジェットヘッド117が正常であり、アナログ回路基板116の電源電圧が正常である場合に、アナログ回路基板116が起動するようにすることが望ましい。
【0011】
一方、上記従来技術で示したようにインクジェットヘッド117の状態を検査する場合は、アナログ回路基板116に搭載されている検査に使用される回路のみを起動させるために検査用電源(DC−DCコンバータ)が電圧を供給し、通常時にインクジェットヘッド117を駆動する場合は、アナログ回路基板116に搭載されている駆動回路120等を起動させるために駆動用電源(DC−DCコンバータ)が電圧を供給する。
【0012】
デジタル回路基板114では、駆動用電源を含む全ての電源電圧を監視しているが、インクジェットヘッド117の状態を検査している間は、駆動用電源が起動していないため、アナログ回路基板116の電源電圧が正常ではないという監視結果になる。これにより、デジタル回路基板114は、インクジェットヘッド117の状態が正常であるか否かにかかわらず、アナログ回路基板116の起動を指示しない。また、起動を指示する信号が入力されないため、アナログ回路基板116は起動しない。従って、アナログ回路基板116(駆動回路120)が起動されないという問題が生じる。
【0013】
本発明は、記録ヘッドの検査時には、検査に必要な回路に電圧を供給する回路のみを監視することができる、記録ヘッド駆動装置及び液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の記録ヘッド駆動装置は、液滴を吐出して記録媒体に画像を記録するように記録ヘッドを駆動するための駆動電圧を生成し、前記記録ヘッドに出力する駆動手段と、前記駆動手段が前記記録ヘッドを駆動させる駆動モードの場合に、前記駆動手段を動作させるための駆動電源用電圧を前記駆動手段に出力する駆動用電源と、前記駆動用電源から出力された駆動電源用電圧の異常を検知して、当該異常の有無を示す駆動用電源異常信号を出力する駆動用電源異常検知手段と、検査モードの場合に前記記録ヘッドの状態が異常であるか否かを検査し、検査結果を示す検査結果信号を出力する検査手段と、前記検査手段を動作させるための検査電源用電圧を前記検査手段に出力する検査用電源と、前記検査用電源から出力された検査電源用電圧の異常を検知して、当該異常の有無を示す検査用電源異常信号を出力する検査用電源異常検知手段と、入力された前記検査用電源異常信号及び前記駆動用電源異常信号のうち、前記検査モードの場合は前記検査用電源異常信号を出力し、前記駆動モードの場合は前記駆動用電源異常信号を出力する検知信号出力手段と、を備える。
【0015】
駆動手段は、駆動モードの場合に、駆動電源から駆動電源用電圧が印加されると、液滴を吐出して記録媒体に画像を記録するように記録ヘッドを駆動するための駆動電圧を生成し、記録ヘッドに出力する。駆動用電源異常検知手段は、駆動用電源から出力された駆動電源用電圧の異常を検知して、異常の有無を示す駆動用電源異常信号を出力する。検査手段は、検査モードの場合に、検査用電源から検査用電源電圧が印加されると、記録ヘッドの状態が異常であるか否かを検査し、検査結果を示す検査結果信号を出力する。検査電源異常検知手段は、検査用電源から出力された検査電源用電圧の異常を検知して、当該異常の有無を示す検査用電源異常信号を出力する。検知信号出力手段は、検査モードの場合は検査用電源異常信号を出力し、駆動モードの場合は駆動用電源異常信号を出力する。
【0016】
このように本発明の記録ヘッド駆動装置によれば、検知信号出力手段により、検査モードの場合は検査手段に出力される検査用電源の検査電源用電圧の異常の有無を示す検査用電源異常信号が出力され、駆動モードの場合は駆動用電源の駆動電源用電圧の異常の有無を示す駆動用電源異常信号を出力する。
【0017】
従って、記録ヘッドの検査時には、検査に必要な回路に電圧を供給する回路のみを監視する。これにより、当該監視結果と記録ヘッドの検査結果とに基づいて記録ヘッドを駆動する駆動手段を起動させるか否か判断することができる。
【0018】
請求項2に記載の記録ヘッド駆動装置は、請求項1に記載の記録ヘッド駆動装置において、異常であることを示す前記検査用電源異常信号が入力された場合に、前記駆動用電源が前記駆動電源用電圧の出力を禁止するための駆動電源用電圧出力禁止信号を出力する、駆動電源用電圧出力禁止手段を備える。
【0019】
駆動電源用電圧出力禁止手段は、異常であることを示す検査用電源異常信号が入力された場合に、駆動用電源が駆動電源用電圧の出力を禁止するための駆動電源用電圧出力禁止信号を出力するため、検査用電源に異常がある場合は、駆動手段には駆動電源用電圧が出力されず、駆動手段が動作しない。また、駆動電源用電圧が出力されないため、駆動用電源異常検知手段が異常を検知する。従って、駆動用電源異常検知手段により間接的に検査用電源の異常の有無を検知することができる。
【0020】
請求項3に記載の記録ヘッド駆動装置は、請求項1または請求項2に記載の記録ヘッド駆動装置において、前記駆動用電源が複数の電源を含み、前記駆動用電源異常検知手段が、前記複数の電源のうち少なくとも1つから出力された駆動電源用電圧が異常である場合に、異常であることを示す前記駆動用電源異常信号を出力する。
【0021】
このように、前記駆動用電源が複数の電源を含む場合は、当該電源の少なくとも1つが異常であると、前記駆動用電源異常検知手段は異常を検知する。
【0022】
請求項4に記載の記録ヘッド駆動装置は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の記録ヘッド駆動装置において、前記検査手段から出力された前記検査結果信号と、前記検知信号出力手段により出力された前記検査用電源異常信号または前記駆動用電源異常信号と、に基づいて、前記駆動モードを示すモード信号を出力する、モード信号出力手段を備える。
【0023】
モード信号出力手段は、検査手段から出力された検査結果信号と、検知信号出力手段により出力された検査用電源異常信号または駆動用電源異常信号と、に基づいて駆動モードを示すモード信号を出力するため、記録ヘッドの状態が異常である場合や、検査用電源が異常である場合や、駆動用電源が異常である場合は、駆動モードにしないことができる。
【0024】
請求項5に記載の記録ヘッド駆動装置は、請求項4に記載の記録ヘッド駆動装置において、前記モード信号出力手段が、前記検査モードを示すモード信号を前記検査手段に出力中は、前記検査手段から異常がないことを示す検査結果信号が出力され、かつ、前記検知信号出力手段から異常がないことを示す前記検査用電源異常信号が出力された場合に、前記検査モードを示すモード信号から前記駆動モードを示すモード信号に切替えて出力する。
【0025】
モード信号出力手段は、記録ヘッドに異常がない場合、かつ、検査用電源に異常がない場合に、検査モードを示すモード信号から駆動モードを示すモード信号に切り替えて出力する。これにより、記録ヘッドに異常がない場合、かつ、検査用電源に異常がない場合に、駆動手段が駆動するようにできる。
【0026】
請求項6に記載の記録ヘッド駆動装置は、請求項4または請求項5に記載の記録ヘッド駆動装置において、前記モード信号出力手段が、前記駆動モードを示すモード信号を出力した場合は、少なくとも前記駆動電源から前記駆動電源用電圧が出力されるまでのあいだ前記駆動モード信号を出力する。
【0027】
駆動用電源の起動が遅いと、駆動用電源から駆動電源用電圧が出力されるまで時間がかかる場合がある。この場合、駆動用電源から駆動電源用電圧が出力されるまでのあいだ駆動用電源異常検知手段は、駆動用電源が正常に動作しているにもかかわらず、駆動電源用電圧の異常を検知してしまう。そのため、モード信号出力手段が、駆動モードを示すモード信号を出力した場合は、少なくとも駆動用電源から駆動電源用電圧が出力されるまでのあいだ駆動モード信号を出力する。これにより、駆動用電源異常検知手段が異常を検知しても、駆動手段を動作させることができる。
【0028】
請求項7に記載の記録ヘッド駆動装置は、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の記録ヘッド駆動装置において、前記検査手段が、前記駆動手段から前記記録ヘッドに前記駆動電圧を出力する配線上に所定の検査用電圧を印加する検査用電圧印加手段、及び前記検査用電圧印加手段から電圧が印加された前記配線の電位と、基準電位と、を比較する比較器を含み、前記比較器の比較結果に基づいて検査結果信号を出力し、前記モード信号出力手段は、前記駆動モードを示すモード信号を出力した場合は、前記駆動モードを示すモード信号を出力する。
【0029】
検査手段が、駆動手段から記録ヘッドに駆動電圧を出力する配線上に所定の検査用電圧を印加する検査用電圧印加手段、及び検査用電圧印加手段から電圧が印加された配線の電位と、基準電位と、を比較する比較器を含み、前記比較器の比較結果に基づいて検査結果信号を出力するものであり、駆動モードにおいて、当該比較器が起動している場合がある。この場合、駆動電圧の電位が当該比較器の基準電位を下回ってしまうと、記録ヘッドが正常に動作しているにもかかわらず、異常を示す検査結果信号が出力されてしまう。そのため、モード信号出力手段は、駆動モード信号を出力した場合は、検査結果信号にかかわらず、駆動モード信号を出力する。これにより、検査手段が誤って異常を検知した場合でも、駆動手段を動作させることができる。
【0030】
請求項8に記載の記録ヘッド駆動装置は、請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の記録ヘッド駆動装置において、前記駆動電圧の基準となるデジタル信号をアナログ信号に変換して前記駆動手段に出力するデジタルアナログ変換手段と、前記モード信号出力手段と、を含むデジタル回路が搭載された第1の基板と、前記駆動手段と、前記駆動用電源と、前記駆動用電源異常検知手段と、前記検査手段と、前記検査用電源と、前記検査用電源異常検知手段と、前記検知信号出力手段と、を含むアナログ回路が搭載された第2の基板と、を備える。
【0031】
駆動電圧の基準となるデジタル信号をアナログ信号に変換して駆動手段に出力するデジタルアナログ変換手段と、モード信号出力手段と、はデジタル回路であり、第1の基板に搭載される。駆動手段と、駆動用電源と、駆動用電源異常検知手段と、検査手段と、検査用電源と、検査用電源異常検知手段と、検知信号出力手段と、はアナログ回路であり、第2の基板に搭載される。このようにすることにより、アナログ回路基板に比べてデジタル回路基板の方が、起動に時間がかかるという問題に対応することができる。
【0032】
請求項9に記載の液滴吐出装置は、前記請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の記録ヘッド駆動装置と、前記記録ヘッド駆動装置により駆動される、液滴を吐出して記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと、を備える。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、記録ヘッドの検査時には、検査に必要な回路に電圧を供給する回路のみを監視することができる、記録ヘッド駆動装置及び液滴吐出装置を提供することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る液滴吐出装置を備えた画像形成装置の概略構成の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施の形態の液滴吐出装置の概略構成の一例を示す構成図である。
【図3】本実施の形態の液滴吐出装置におけるアナログ回路基板の概略構成一例を示す構成図である。
【図4】従来の液滴吐出装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して 本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0036】
まず、本発明の実施の形態に係る液滴吐出装置により、画像を形成するための液滴が吐出される画像形成装置について説明する。図1は、当該画像形成装置の一例の概略を示す概略構成図である。
【0037】
本実施の形態の画像形成装置200は、記録媒体としての枚葉紙(以下、「用紙」という)の搬送方向上流側に用紙を給紙搬送する給紙搬送部212、給紙搬送部212の下流側に用紙の搬送方向に沿って用紙の記録面に処理液を塗布する処理液塗布部214、用紙の記録面に画像を形成する画像形成部216、記録面に形成された画像を乾燥させるインク乾燥部218、乾燥した画像を用紙に定着させる画像定着部220、及び画像が定着した用紙を排出する排出部221を備えている。
【0038】
以下、各処理部について説明する。
【0039】
(給紙配送部)
【0040】
給紙搬送部212には、用紙が積載される積載部222が設けられており、積載部222の用紙搬送方向下流側(以下、「下流側」という場合もある)には、当該積載部222に積載された用紙を一枚ずつ給紙する給紙部224が設けられている。この給紙部224によって、給紙された用紙は、複数のローラ対226で構成された搬送部228を経て処理液塗布部214へ搬送される。
【0041】
(処理液塗布部)
【0042】
処理液塗布部214では、処理液塗布ドラム230が回転可能に配設されている。この処理液塗布ドラム230には、用紙の先端部を狭持して用紙を保持する保持部材232が設けられており、当該保持部材232を介して、処理液塗布ドラム230の表面に用紙を保持した状態で、処理液塗布ドラム230の回転によって当該用紙を下流側へ搬送する。
【0043】
なお、後述する中間搬送ドラム234、画像形成ドラム236、インク乾燥ドラム238、及び画像定着ドラム240についても、処理液塗布ドラム230と同様に保持部材232が設けられている。そして、この保持部材232によって、上流側のドラムから下流側のドラムへの用紙の受け渡しが行われる。
【0044】
処理液塗布ドラム230の上部には、処理液塗布ドラム230の周方向に沿って、処理液塗布装置242及び処理液乾燥装置244が配設されており、処理液塗布装置242によって、用紙の記録面に処理液が塗布され、処理液乾燥装置244によって、当該処理液が乾燥する。
【0045】
ここで、処理液は画像を形成するためのインクと反応して色材(顔料)を凝集し、色材と溶媒を分離促進する効果を有している。処理液塗布装置242には、処理液が貯留している貯留部246が設けられており、グラビアローラ248の一部が処理液に浸されている。
【0046】
このグラビアローラ248には、ゴムローラ250が圧接して配置されており、当該ゴムローラ250が用紙の記録面(表面)側に接触して処理液が塗布される。また、グラビアローラ248には、スキージ(図示省略)が接触しており、用紙の記録面に塗布する処理液塗布量を制御する。
【0047】
一方、処理液乾燥装置244には、熱風ノズル254及び赤外線ヒータ256(以下、「IRヒータ256」という)が処理液塗布ドラム230の表面に近接して配設されている。この熱風ノズル254及びIRヒータ256により、処理液中の水等の溶媒を蒸発させ、固体または薄膜処理液層を用紙の記録面側に形成する。処理液乾燥工程で処理液を薄層化することで、画像形成部216でインク打滴したドットが用紙表面と接触して必要なドット径が得られると共に、薄層化した処理液と反応して色材凝集し、用紙表面に固定する作用が得られやすい。
【0048】
このようにして、処理液塗布部214で記録面に処理液が塗布、乾燥された用紙は、処理液塗布部214と画像形成部216との間に設けられた中間搬送部258へ搬送される。
【0049】
(中間搬送部)
【0050】
中間搬送部258には、中間搬送ドラム234が回転可能に設けられており、中間搬送ドラム234に設けられた保持部材232を介して、中間搬送ドラム234の表面に用紙を保持し、中間搬送ドラム234の回転によって当該用紙を下流側へ搬送する。なお中間搬送部270、中間搬送部276は、中間搬送部258と構成が略同一であるため詳細な説明を省略する。
【0051】
(画像形成部)
【0052】
画像形成部216には、画像形成ドラム236が回転可能に設けられており、画像形成ドラム236に設けられた保持部材232を介して、画像形成ドラム236の表面に用紙を保持し、画像形成ドラム236の回転によって当該用紙を下流側へ搬送する。
【0053】
画像形成ドラム236の上部には、画像形成ドラム236の表面に近接して、本実施の形態の液滴吐出装置である、シングルパス方式のインクジェットヘッド17で構成されたヘッドユニット266が配設されている。当該ヘッドユニット266では、少なくとも基本色であるYMCKのインクジェットヘッド17が画像形成ドラム236の周方向に沿って配列され、処理液塗布部214で用紙の記録面に形成された処理液層上にノズルからインクを吐出(打滴)することにより、各色の画像を形成する。なお、インクジェットヘッド17及びインクジェットヘッド17を駆動するインクジェットヘッド駆動装置を備えた本実施の形態の液滴吐出装置については詳細を後述する。
【0054】
処理液はインク中に分散する色材とラテックス粒子とを処理液に凝集する効果を持たせ、用紙上で色材流れ等が発生しない凝集体を形成する。インクと処理液の反応の一例として、処理液内に酸を含有しPHダウンにより顔料分散を破壊し、凝集するメカニズムを用いて色材の滲み、各色インク間の混色、及びインク滴の着弾時の液合一等による打滴干渉を回避する。
【0055】
インクジェットヘッド17は、画像形成ドラム236に配置された回転速度を検出するエンコーダ(図示省略)に同期して打滴を行うことで、高精度に着弾位置を決定すると共に、画像形成ドラム236の振れ、回転軸268の精度、及びドラム表面速度等に依存せず、打滴ムラを低減することが可能となる。
【0056】
なお、ヘッドユニット266は、画像形成ドラム236の上部から退避可能とされており、インクジェットヘッド17のノズル面清掃や増粘インク排出等のメンテナンス動作は、当該ヘッドユニット266を画像形成ドラム236の上部から退避させることで実施される。
【0057】
記録面に画像が形成された用紙は、画像形成ドラム236の回転によって、画像形成部216とインク乾燥部218との間に設けられた中間搬送部270を介してインク乾燥部218へ搬送される。
【0058】
(インク乾燥部)
【0059】
インク乾燥部218には、インク乾燥ドラム238が回転可能に設けられており、インク乾燥ドラム238の上部には、インク乾燥部の表面に近接して、熱風ノズル272及びIRヒータ274が複数配設されている。
【0060】
本実施の形態では、一例として、上流側と下流側に熱風ノズル272が配設されるようにして、熱風ノズル272と平行配列された一つのIRヒータ274を交互に配設している。これに限らず、例えば、上流側にIRヒータ274を多く配設して上流側で熱エネルギーを多く照射し水分の温度を上昇させ、下流側に熱風ノズル272を多く配設して、飽和水蒸気を吹き飛ばすようにしても良い。
【0061】
熱風ノズル272及びIRヒータ274による温風によって、用紙の画像形成部では、色材凝集作用により分離された溶媒が乾燥され、薄膜の画像層が形成される。
【0062】
記録面の画像が乾燥した用紙は、インク乾燥ドラム238の回転によってインク乾燥部と画像定着部220との間に設けられた中間搬送部276を介して画像定着部220へ搬送される。
【0063】
(画像定着部)
【0064】
画像定着部220には、画像定着ドラム240が回転可能に設けられており、画像定着部220では、インク乾燥ドラム238上で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が加熱及び加圧されて溶融し、用紙上に固着定着する機能を有する。
【0065】
画像定着ドラム240の上部には、画像定着ドラム240の表面に近接して、加熱ローラ278が配設されている。当該加熱ローラ278は熱伝導率の良いアルミ等の金属パイプ内にハロゲンランプが組み込まれており、当該加熱ローラ278によって、ラテックスのガラス転移温度Tg以上の熱エネルギーが付与される。これにより、ラテックス粒子を溶融し、用紙上の凹凸に押し込み定着を行うと共に、画像表面の凹凸をレベリングし、光沢性を得ることを可能とする。
【0066】
加熱ローラ278の下流側には、定着ローラ279が設けられている。当該定着ローラ279は、画像定着ドラム240の表面に圧接した状態で配設され、画像定着ドラム240との間でニップ力を得るようにしている。このため、定着ローラ279または画像定着ドラム240のうち少なくとも一方は表面に弾性層を持ち、用紙に対して均一なニップ幅を持つ構成とする。
【0067】
以上のような工程により、記録面の画像が定着した用紙は、画像定着ドラム240の回転によって、画像定着部220の下流側に設けられた排出部221側へ搬送される。
【0068】
なお、本実施の形態では、画像定着部220について説明したが、インク乾燥部218で記録面に形成された画像を乾燥・定着させることができれば良いため、当該画像定着部220を備えない構成としても良い。
【0069】
次に、本実施の形態の液滴吐出装置10及びインクジェットヘッド駆動装置12について詳細に説明する。図2に、本実施の形態の液滴吐出装置10及びインクジェットヘッド駆動装置12の一例の概略構成図を示す。
【0070】
本実施の形態の液滴吐出装置10は、インクジェットヘッド駆動装置12及びインクジェットヘッド17を含んで構成されている。
【0071】
インクジェットヘッド17は、各アクチュエータ60に個別に対応する複数のスイッチ62を含んで構成されている。スイッチ62は、駆動回路20とアクチュエータ60とを接続状態及び非接続状態の2つの状態の間で切り替えるものである。
【0072】
各スイッチ62は、CPU18に接続されている。CPU18は、各スイッチ62を制御するスイッチ制御信号をスイッチ62毎に生成して、対応するスイッチ62に出力する。
【0073】
本実施の形態のインクジェットヘッド駆動装置12は、デジタル回路基板14及びアナログ回路基板16を含んで構成されている。デジタル回路基板14及びアナログ回路基板16は、コネクタ15Aとコネクタ15Bとによりハーネスを介して機械的に接続されている。
【0074】
デジタル回路基板14は、デジタル回路が搭載された基板であり、CPU18及びD/A変換器19が搭載されている。
【0075】
CPU18は、制御部(図示省略)から入力される画像データに基づいてアナログ回路基板16及びインクジェットヘッド17を制御する。なお、本実施の形態のインクジェットヘッド17は、CPU18が入力された画像データに基づいてアクチュエータ60に印加する電圧の基準となる電圧を示すデジタル信号を生成し、当該デジタル信号をD/A変換器19に出力する。
【0076】
D/A変換器19は、CPU18から入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換して出力するものである。
【0077】
一方、アナログ回路基板16は、アナログ回路が搭載された基板である。アナログ回路基板16の詳細な構成図を図3に示す。
【0078】
本実施の形態のアナログ回路基板16には、駆動回路20、検査回路22、差動増幅回路24、DC−DCコンバータ30、32、34、監視回路31、33、35、37、マルチプレクサ40、及びANDゲート42、44等が搭載されている。
【0079】
差動増幅回路24は、入力端がコネクタ15A、15Bを介してD/A変換器19の出力端に接続されており、D/A変換器19から差動出力されたアナログ信号が入力され、当該アナログ信号を差動増幅して駆動回路20に出力する。
【0080】
駆動回路20は、電圧オフセット部26、オペアンプ27、抵抗R1、R2、R3、R4、及び増幅回路28等を含んで構成されている。
【0081】
電圧オフセット部26は、差動増幅回路24から入力されたアナログ信号の電圧レベルをインクジェットヘッド17を駆動させるために予め定められた電圧レベルだけ嵩上げして、オペアンプ27に出力するものである。
【0082】
オペアンプ27は、反転入力端子が抵抗R1を介して接地されており、出力端が増幅回路28の入力端に接続されており、電圧オフセット部26から入力されたアナログ信号の電圧を増幅して増幅回路28に出力する。
【0083】
増幅回路28は、PNP型のトランジスタTr1及びNPN型のトランジスタTr2によるコンプリメンタリ回路で構成されており、オペアンプ27から入力されたアナログ信号を増幅してヘインクジェットヘッド17に信号線50を介して出力するものである。トランジスタTr1はベースがオペアンプの出力端に、コレクタがグランドに、エミッタがトランジスタTr2のエミッタに、各々接続されている。トランジスタTr2は、ベースがオペアンプ27の出力端に、コレクタが直流電源+V5に、各々接続されている。また、トランジスタTr1、Tr2のエミッタは、オペアンプ27の非反転端子に接続されている。
【0084】
直流電源+V5は、外部から入力されるパワー系の電源であり、スイッチS1により通電(オン)または遮断(オフ)される。
【0085】
検査回路22は、比較器38、抵抗R5〜R7、スイッチS1、S2、及び直流電源39で構成されており、信号線50(以下、「出力50」という)の電位を検出することにより、インクジェットヘッド17のアクチュエータ60の状態を検査するものである。
【0086】
抵抗R5は、直流電源+V5と、出力50との間に設けられている。比較器38は出力50の電位をR6、R7により抵抗分割された分割電位と、直流電源+V1(基準電位)とを比較し、比較結果をインクジェットヘッド17の検査結果としてデジタル回路基板14に出力する。
【0087】
デジタル回路基板14から検査モードを指示するための信号(モード信号)が入力されると検査回路22は検査状態(以下、「検査モード」という)になる。モード信号がLレベルのときは、検査モードを示し、モード信号がHレベルのときは、駆動回路20の駆動によりインクジェットヘッド17が駆動され、画像を形成する状態(以下、「駆動モード」という)になる。
【0088】
検査モードの場合には、スイッチS1が遮断状態に、スイッチS2が通電状態になり、直流電源+V5が抵抗R5を介して出力50に検査用電圧として印加される。インクジェットヘッド17のアクチュエータ60に短絡等の異常が発生している場合、出力50の電位が下がる。出力50を抵抗R6、R7で抵抗分割した電位と基準電位とを比較し、出力50の電位が下がっているか否かを検査結果として出力する。
【0089】
DC−DCコンバータ30、32は、イネーブル信号がハイレベルの信号(以下、「Hレベル」という)のときに起動状態になり、ローレベルの信号(以下、「Lレベル」という)のときに停止状態になり、駆動回路20に電源を供給するものである。
【0090】
監視回路31、33は、それぞれDC−DCコンバータ30、31の出力電圧を監視するものであり、正常な場合はHレベルの電源モニタ信号を出力し、異常な場合は、Lレベルの電源モニタ信号を出力する。
【0091】
DC−DCコンバータ34は、イネーブル信号がHレベルのときに起動状態になり、Lレベルのときに停止状態になり、比較器38の動作用電源+V3と、基準電源39と、に電源を供給するものである。
【0092】
監視回路35は、DC−DCコンバータ34の出力電圧を監視するものであり、正常な場合はHレベルの電源モニタ信号を出力し、異常な場合は、Lレベルの電源モニタ信号を出力する。
【0093】
監視回路37は、直流電源+V5の電圧を監視するものであり、正常な場合はHレベルの電源モニタ信号を出力し、異常な場合は、Lレベルの電源モニタ信号を出力する。
【0094】
ANDゲート42には、監視回路31、33、37の電源モニタ信号が入力される。入力される監視回路31、33、37の電源モニタ信号が全てHレベルの場合には、Hレベルを出力し、入力される監視回路31、33、37の電源モニタ信号に一つでもLレベルがある場合には、Lレベルを出力する。すなわち、DC−DCコンバータ30、32、および直流電源+V5のうち少なくとも一つ以上に出力電圧の異常がある場合、Lレベルの電源モニタ信号を出力する。
【0095】
ANDゲート44には、監視回路35の出力及びデジタル回路基板14から入力されたモード信号が入力される。入力される監視回路35の電源モニタ信号及びモード信号が全てHレベルの場合には、DC−DCコンバータ30、32のイネーブル信号としてHレベルを出力し、入力される監視回路35の電源モニタ信号及びモード信号のいずれかが一つでもLレベルである場合には、DC−DCコンバータ30、32のイネーブル信号としてLレベルを出力する。すなわち、検査モードの場合はDC−DCコンバータ30、32にLレベルを出力するため、DC−DCコンバータ30、32は起動しない。駆動モードの場合はDC−DCコンバータ34に出力電圧の異常がある場合にLレベルを出力するため、DC−DCコンバータ30、32は起動しない。従って、DC−DCコンバータ30、32は、駆動モードかつ、DC−DCコンバータ34の出力が正常である場合にのみANDゲート44からHレベルのイネーブル信号が出力され、起動する。
【0096】
マルチプレクサ40は、2つの入力と1つの出力とを備えており、ANDゲート42の出力と監視回路35の電源モニタ信号とが入力され、モード信号により、いずれの入力を出力するのか制御される。検査モードの場合には、監視回路35の電源モニタ信号がデジタル回路基板14に出力され、駆動モードの場合には、ANDゲート42の出力がデジタル回路基板14に出力される。
なお、本実施の形態では、DC−DCコンバータ34及び直流電源+V5が検査用電源に対応し、DC−DCコンバータ30、32、34及び直流電源+V5が駆動用電源に対応する。
【0097】
次に、アナログ回路基板16に搭載されている各回路の動作について詳細に説明する。
【0098】
なお、動作の初期状態は検査モードであるためデジタル回路基板14から検査モード信号(Lレベル)が入力される。
【0099】
本実施の形態では、デジタル回路基板14が起動すると、DC−DCコンバータ34と、駆動回路20及び検査回路22に電源を供給する直流電源+V5と、が起動する。なお、このとき、スイッチS1は開いており、直流電源+V5から駆動回路20への電源供給は遮断されている。DC−DCコンバータ34が起動することにより、比較器38及び基準電源39が起動する。
【0100】
監視回路35は、DC−DCコンバータ34の出力電位+V3を所定の基準電位(図示省略)と比較することにより、DC−DCコンバータ34が正常であるか異常であるかを判定する。検査モードであるため、マルチプレクサ40を介してデジタル回路基板14に判定結果の電源モニタ信号が出力される。これにより、デジタル回路基板14は、検査モードにおけるDC−DCコンバータ34の状態が正常であるか否かを知ることができる。
【0101】
ANDゲート44には、監視回路35の電源モニタ信号とLレベルのモード信号とが入力されるため、DC−DCコンバータ30、32のイネーブル信号としてLレベルが出力される。従って、DC−DCコンバータ30、32は起動しない。また、DC−DCコンバータ30、32が起動しないため、増幅回路28のトランジスタTr1、Tr2はいずれもオフ状態のままである。
【0102】
次に、スイッチS2が閉じる。トランジスタTr1、Tr2がオフ状態であるため、これにより出力50の電位は抵抗R5と(抵抗R6+抵抗R7)/インクジェットヘッド17の抵抗比率で決まる電位になる。インクジェットヘッド17が正常である場合、DC電圧に対して非常に高い抵抗値を示すため、出力50の電位は実質的に抵抗R5と(抵抗R6+抵抗R7)の比で決まる電位となる。一方、インクジェットヘッド17のアクチュエータ60が短絡状態等を起こして異常である場合は、出力50の電位はほぼ0Vになる。
【0103】
出力50の電位を抵抗R6と抵抗R7とで抵抗分圧した電位と基準電位+V1とが比較器38により比較され、比較結果が検査結果としてデジタル回路基板14に出力される。
【0104】
インクジェットヘッド17の検査結果が正常である場合、デジタル回路基板14には、比較器38からインクジェットヘッド17が正常であることを示す検査結果と、マルチプレクサ40からDC−DCコンバータ34が正常であるか否かを示す電源モニタ信号が入力される。
【0105】
まず、DC−DCコンバータ34が正常である場合について説明する。この場合、デジタル回路基板14は、モード信号を検査モード(Lレベル)から駆動モード(Hレベル)に切り替えてアナログ回路基板16に出力する。また、スイッチS1を閉じて、直流電源+V5をトランジスタTr2に通電すると共に、スイッチS2を開いて、出力50への強制バイアスを停止する。
【0106】
一方、モード信号がLレベルからHレベルになるため、ANDゲート44には、Hレベルのモード信号と、監視回路35の電源モニタ信号が入力され、DC−DCコンバータ30、32にHレベルのイネーブル信号が出力される。これによりDC−DCコンバータ30、32は起動を開始する。
【0107】
また、モード信号がLレベルからHレベルになるため、マルチプレクサ40は、ANDゲート42の出力をデジタル回路基板14に出力するように切り替わる。これにより、デジタル回路基板14には、駆動モードにおけるDC−DCコンバータ30、32及び直流電源+V5の状態が全て正常であるか、または少なくとも一つ以上が正常ではない(異常である)かを判定した電源モニタ信号が入力される。
【0108】
このように、駆動モードにおいて、DC−DCコンバータ34に異常が発生した場合は、DC−DCコンバータ30、32は起動しない。また、DC−DCコンバータ30、42、及び直流電源+V5の少なくとも一つが正常に起動していない場合は、デジタル回路基板14へLレベルの電源モニタ信号が出力される。従って、デジタル回路基板14は、直流電源+V5、DC−DCコンバータ30、32の動作状態に加え、間接的に、DC−DCコンバータ34の動作状態を知ることができる。
【0109】
なお、モード信号がLレベルからHレベルに切り替わるタイミングでマルチプレクサ40の入力選択が切り替わるが、一般に、DC−DCコンバータ30、32の起動は数10ミリ秒と遅い。そのため、マルチプレクサ40の入力選択が切り替わってから、DC−DCコンバータ30、32が起動するまでの間、監視回路31、33は、異常と判定し、Lレベルの電源モニタ信号を出力する。
【0110】
従って、マルチプレクサ40の入力選択が切り替わってからDC−DCコンバータ30、32が起動するまでの所定の時間は、DC−DCコンバータ30、32が正常であるか否かにかかわらず、Lレベルの電源モニタ信号がデジタル回路基板14に入力される。そのため、デジタル回路基板14は当該所定の時間は、マルチプレクサ40から入力される、電源モニタ信号を無視する必要がある。すなわち、デジタル回路基板14は、少なくともマルチプレクサ40の入力選択が切り替わってから、DC−DCコンバータ30、32が起動するまでのあいだHレベルの電源モニタ信号を出力する。
【0111】
また、本実施の形態では、比較器38は、駆動モードにおいて、常時起動しているため、インクジェットヘッド17が正常であっても、例えば、駆動回路20から出力される駆動電圧の電位が比較器38の基準電位+V1よりも下回る場合には、比較器38の出力はインクジェットヘッド17の異常を示すLレベルになる。
【0112】
従って、駆動モードの間は、デジタル回路基板14は、インクジェットヘッド17の検査結果を無視する必要がある。
【0113】
すなわち、本実施の形態では、マルチプレクサ40がANDゲート42の出力結果を出力するように切り替わってから所定の時間の間は、デジタル回路基板14は、アナログ回路基板16から入力される信号のレベルにかかわらず、Hレベルのモード信号(駆動モード)を出力する。
【0114】
次に、DC−DCコンバータ34が異常である場合について説明する。この場合、比較器38及び直流電源39に電源が供給されず、比較器38が起動しないため、インクジェットヘッド17の検査結果としてLレベルがデジタル回路基板14へ出力される。また、上述のように、ANDゲート44からLレベルのイネーブル信号が出力されるため、DC−DCコンバータ30、32は起動しない。
【0115】
従って、デジタル回路基板14には、インクジェットヘッド17の異常を示すLレベルの検査結果と、電源の異常を示すLレベルの電源モニタ信号と、が入力されるため、アナログ回路基板16を起動しない。
【0116】
一方、インクジェットヘッド17が短絡等しており、異常が発生している場合、上述したようにLレベルの検査結果がデジタル回路基板14に入力されるため、デジタル回路基板14は、アナログ回路基板16を起動しない。
【0117】
以上説明したように、本実施の形態のインクジェットヘッド駆動装置12では、デジタル回路基板14からLレベルのモード信号が入力されると、検査モードになり、検査回路22によりインクジェットヘッド17のアクチュエータ60の検査を行い、検査結果をデジタル回路基板14に出力する。また、デジタル回路基板14からHレベルのモード信号が入力されると、駆動モードになり、駆動回路20によりインクジェットヘッド17を駆動させて記録媒体に画像を形成させる。
【0118】
ANDゲート44には、検査回路22に電源を供給するDC−DCコンバータ34の電圧を監視する監視回路35の電源モニタ信号と、モード信号と、が入力されDC−DCコンバータ30、32のイネーブル信号が出力されるため、DC−DCコンバータ30、32は、駆動モード、かつ、DC−DCコンバータ34が正常である場合に起動する。ANDゲート42には、駆動回路20に電源を供給するDC−DCコンバータ30の電圧を監視する監視回路31の電源モニタ信号と、DC−DCコンバータ32の電圧を監視する監視回路監視回路33の電源モニタ信号と、直流電源+V5の電圧を監視する監視回路37の電源モニタ信号と、が入力される。マルチプレクサ40には、監視回路35の電源モニタ信号と、ANDゲート42の出力とが接続されており、検査モードの場合には監視回路35の電源モニタ信号をデジタル回路基板14に出力し、駆動モードの場合にはANDゲート42の出力をデジタル回路基板14に出力する。
【0119】
これによりデジタル回路基板14は、検査モードの場合には、インクジェットヘッド17の検査結果と、検査回路22に電源を供給するDC−DCコンバータ34の電源モニタ信号と、に基づいて検査モードから駆動モードに切り替えて駆動回路20を駆動させるか否か判断ずる。一方、駆動モードの場合には、インクジェットヘッド17の検査結果と、DC−DCコンバータ30、32、及び直流電源+V5の電源モニタ信号と、に基づいて駆動回路20の駆動を継続するか否か判断する。
【0120】
従って、本実施の形態のインクジェットヘッド駆動装置12は、記録ヘッドの検査時には、検査に必要な検査回路22に電圧を供給するDC−DCコンバータ34回路のみを監視し、当該監視結果とインクジェットヘッド17の検査結果とに基づいてインクジェットヘッド17を駆動する駆動回路20を起動させるか否か判断することができる。
【0121】
また、DC−DCコンバータ34が正常動作していない場合、DC−DCコンバータ30、32が起動しないため、デジタル回路基板14は、駆動モードの場合には、間接的にDC−DCコンバータ34の動作を監視することができる。
【符号の説明】
【0122】
10 液滴吐出装置
12 インクジェットヘッド駆動装置
14 デジタル回路基板
16 アナログ回路基板
17 インクジェットヘッド
20 駆動回路
22 検査回路
28 増幅回路
30、32、34 DC−DCコンバータ
31、33、35、37 監視回路
38 比較器
39 直流電源
40 マルチプレクサ
42、44 ANDゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出して記録媒体に画像を記録するように記録ヘッドを駆動するための駆動電圧を生成し、前記記録ヘッドに出力する駆動手段と、
前記駆動手段が前記記録ヘッドを駆動させる駆動モードの場合に、前記駆動手段を動作させるための駆動電源用電圧を前記駆動手段に出力する駆動用電源と、
前記駆動用電源から出力された駆動電源用電圧の異常を検知して、当該異常の有無を示す駆動用電源異常信号を出力する駆動用電源異常検知手段と、
検査モードの場合に前記記録ヘッドの状態が異常であるか否かを検査し、検査結果を示す検査結果信号を出力する検査手段と、
前記検査手段を動作させるための検査電源用電圧を前記検査手段に出力する検査用電源と、
前記検査用電源から出力された検査電源用電圧の異常を検知して、当該異常の有無を示す検査用電源異常信号を出力する検査用電源異常検知手段と、
入力された前記検査用電源異常信号及び前記駆動用電源異常信号のうち、前記検査モードの場合は前記検査用電源異常信号を出力し、前記駆動モードの場合は前記駆動用電源異常信号を出力する検知信号出力手段と、
を備えた、記録ヘッド駆動装置。
【請求項2】
異常であることを示す前記検査用電源異常信号が入力された場合に、前記駆動用電源が前記駆動電源用電圧の出力を禁止するための駆動電源用電圧出力禁止信号を出力する、駆動電源用電圧出力禁止手段を備えた、請求項1に記載の記録ヘッド駆動装置。
【請求項3】
前記駆動用電源が複数の電源を含み、前記駆動用電源異常検知手段が、前記複数の電源のうち少なくとも1つから出力された駆動電源用電圧が異常である場合に、異常であることを示す前記駆動用電源異常信号を出力する、請求項1または請求項2に記載の記録ヘッド駆動装置。
【請求項4】
前記検査手段から出力された前記検査結果信号と、前記検知信号出力手段により出力された前記検査用電源異常信号または前記駆動用電源異常信号と、に基づいて、前記駆動モードを示すモード信号を出力する、モード信号出力手段を備えた、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の記録ヘッド駆動装置。
【請求項5】
前記モード信号出力手段が、前記検査モードを示すモード信号を前記検査手段に出力中は、前記検査手段から異常がないことを示す検査結果信号が出力され、かつ、前記検知信号出力手段から異常がないことを示す前記検査用電源異常信号が出力された場合に、前記検査モードを示すモード信号から前記駆動モードを示すモード信号に切替えて出力する、請求項4に記載の記録ヘッド駆動装置。
【請求項6】
前記モード信号出力手段が、前記駆動モードを示すモード信号を出力した場合は、少なくとも前記駆動電源から前記駆動電源用電圧が出力されるまでのあいだ前記駆動モード信号を出力する、請求項4または請求項5に記載の記録ヘッド駆動装置。
【請求項7】
前記検査手段が、前記駆動手段から前記記録ヘッドに前記駆動電圧を出力する配線上に所定の検査用電圧を印加する検査用電圧印加手段、及び前記検査用電圧印加手段から電圧が印加された前記配線の電位と、基準電位と、を比較する比較器を含み、前記比較器の比較結果に基づいて検査結果信号を出力し、
前記モード信号出力手段は、前記駆動モードを示すモード信号を出力した場合は、前記検査結果信号にかかわらず、前記駆動モードを示すモード信号を出力する、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の記録ヘッド駆動装置。
【請求項8】
前記駆動電圧の基準となるデジタル信号をアナログ信号に変換して前記駆動手段に出力するデジタルアナログ変換手段と、前記モード信号出力手段と、を含むデジタル回路が搭載された第1の基板と、前記駆動手段と、前記駆動用電源と、前記駆動用電源異常検知手段と、前記検査手段と、前記検査用電源と、前記検査用電源異常検知手段と、前記検知信号出力手段と、を含むアナログ回路が搭載された第2の基板と、を備えた請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の記録ヘッド駆動装置。
【請求項9】
前記請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の記録ヘッド駆動装置と、
前記記録ヘッド駆動装置により駆動される、液滴を吐出して記録媒体に画像を記録する記録ヘッドと、
を備えた、液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−228360(P2010−228360A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79988(P2009−79988)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】