説明

記録体

【課題】本発明は、記録体における記録部位が、白色光を照射すると無色で視認できず、ブラックライト等で励起光を照射すると記録部位が可視化でき、さらに記録部位の保存性に優れた記録体に関するものである。
【解決手段】支持体上に、加熱処理、或いは活性エネルギー線照射により脱離する置換基を分子中に有する色素前駆体を含有する記録層を設けた記録体であって、前記色素前駆体が、特定の化合物であり、記録層または前記記録層に隣接する層にカチオン性高分子であるポリエチレンイミンが含有されることを特徴とする記録体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱処理、或いは活性エネルギー線照射により脱離する置換基を分子中に有する色素前駆体及びその前駆体を用いた感熱記録体に関するものである。更に詳しくは、感熱記録部位が白色光を照射すると無色で視認できず、ブラックライト等で励起光を照射すると記録部が可視化するものである。
【背景技術】
【0002】
無色乃至淡色の染料前駆体と呈色剤による像形成を目的とし、熱処理により両物質を接触させて記録像を得る感熱記録体はよく知られている。例えば、感熱記録紙、熱転写記録紙等が挙げられる。
【0003】
特許文献1では、染料前駆体として新規なフルオラン化合物の記載がある。熱処理、或いは熱処理だけでなく酸性物質の作用により、3級アルキルオキシカルボニル基が脱離するフルオラン化合物を使用することで、白色度が高く、且つ保存性、耐湿性、耐薬品性及び耐可塑剤性に優れ、しかも発色性も良好な優れた感熱記録体を見出している。
【0004】
上記のフルオラン化合物の中でもフルオレセイン誘導体の例示があるが、記録像の着色として主に黄色、或いは橙色との例示がなされている。上記文献に限らず、感熱記録体の多くは、記録部位が白色光等の日常的な光源の環境下では着色し、視認できることを前提とする。
【0005】
しかしながら、フルオレセイン及びその誘導体は、紫外光等による励起光に対し強い蛍光発光能を有する。このため、特許文献1は、蛍光画像を得る感熱記録体としても考えられるが、記録部位が白色光の下で視認できる点で本発明とは異なる。
【0006】
特許文献2では、ブラックライトで励起光を照射すると粒子が蛍光発光することで可視化するものであるが、粒子径を50〜800μmという粒子そのものを可視化することで、通常の光源でも蛍光発色粒子が視認できるものである。本発明は、粒子径が小さく、粒子そのものを視認できない点で異なる。更に、感熱記録による所望の記録部位のみをブラックライトにより可視化する点でも異なる。
【0007】
特許文献3では、ロイコインジゴイド誘導体について記載されている。本発明で用いる色素前駆体として、例えば特許文献3の実施例16に挙げられる4つのtert−ブトキシカルボニル置換体であるロイコインジゴイド誘導体、すなわちN,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイトが好ましく用いられる。
【0008】
【特許文献1】特開平4−213368号公報
【特許文献2】特開2002−88688号公報
【特許文献3】特開平4−124175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、記録体における記録部位が、白色光を照射すると無色で視認できず、ブラックライト等で励起光を照射すると記録部位が可視化することであり、さらに記録部位の保存性を高くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記の課題について記録層に特定の色素前駆体を使用し、さらに記録層または該記録層に隣接する層にカチオン性高分子であるポリエチレンイミンを含有させることで解決できることを見出した。
【0011】
即ち、本発明は、以下の記録体を提供するものである。
【0012】
項1:支持体上に、加熱処理、或いは活性エネルギー線照射により脱離する置換基を分子中に有する色素前駆体を含有する記録層を設けた記録体であって、前記色素前駆体が、下記一般式(1)から選ばれた少なくとも1種であり、記録層または前記記録層に隣接する層にカチオン性高分子であるポリエチレンイミンが含有されることを特徴とする記録体。
【0013】
【化1】

〔式(1)中、R、R、R、Rはそれぞれ−COORを示し、RはC1〜C12の3級アルキル基を示す。なお、R、R、R、Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。〕
項2:前記ポリエチレンイミンの数平均分子量が、150〜100,000である、項1に記載の記録体。
項3:前記色素前駆体が、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイトである、項1または2に記載の記録体。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、加熱処理、或いは活性エネルギー線照射により脱離する置換基を分子中に有する色素前駆体及びその前駆体を用いた記録体に関するものであるが、更に詳しくは、記録部位が白色光を照射すると無色で視認できず、ブラックライト等で励起光を照射すると記録部が可視化できるものであり、さらに記録部位の保存性に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の記録体は、支持体上に、加熱処理、或いは活性エネルギー線照射により脱離する置換基を分子中に有する色素前駆体を含有する記録層を設けた記録体であって、該色素前駆体が、下記一般式(1)から選ばれた少なくとも1種であり、記録層または該記録層に隣接する層にポリエチレンイミンを含有することを特徴とする。
【0016】
【化2】

〔式(1)中、R、R、R、Rはそれぞれ−COORを示し、RはC1〜C12の3級アルキル基を示す。なお、R、R、R、Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。〕
【0017】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブチルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ペンチルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ヘキシルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ヘプチルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−オクチルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−(4-エチル)ヘキシルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−デシルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ドデシルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’− テトラ(tert−ステアリルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’− テトラ(tert−ベヘニルカルボニル)インジゴホワイト、
【0018】
N,N’,O,O’−テトラ(シクロペンチルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(シクロヘキシルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(シクロヘプチルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ビニルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(アリルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ブテニルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ブタジエニルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ペンテニルカルボニル)インジゴホワイト、
N,N’,O,O’−テトラ(オクテニルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ベンジルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(2−フェニルエチルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(1−フェニルエチルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(3−フェニルプロピルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(4−トルイルカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(4−エチルフェニルカルボニル)インジゴホワイト、
【0019】
N,N’,O,O’−テトラ(シクロペンチルオキシカルボニル)インジゴホワイト、
N,N’,O,O’−テトラ(シクロヘキシルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(シクロヘプチルオキシカルボニル)インジゴホワイト、
N,N’,O,O’−テトラ(ビニルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(アリルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ブテニルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ブタジエニルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ベンジルオキシカルボニル)インジゴホワイト、
【0020】
N,N’,O,O’−テトラ(メトキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(エトキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(プロピオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ブトキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ペンチルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ヘキシルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ヘプチルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(オクチルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ノニルオキシカルボニル)インジゴホワイト、
N,N’,O,O’−テトラ(デシルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(ドデシルオキシカルボニル)インジゴホワイト、
【0021】
N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイト、
N,N’,O,O’−テトラ(tert−ペンチルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ヘキシルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ヘプチルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−オクチルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−(4-エチル)ヘキシルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−デシルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ドデシルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ステアリルオキシカルボニル)インジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ベヘニルオキシカルボニル)インジゴホワイト、
【0022】
N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5−ブロモインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5、5’−ジブロモインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−4、5、5’、7、7’−ペンタブロモインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−4、4’、5、5’、7、7’−ヘキサブロモインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5、6’、7−トリクロロインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5、5’、7、7’−テトラブロモインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5、5’、7、7’−テトラクロロインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’、5、5’、7、7’−ヘキサブロモインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’−ジクロロインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’、5、5’−テトラクロロインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジメチルインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジフルオロインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−4,4’−ジクロロ−5,5’−ジブロモインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジクロロ−7,7’−ジブロモインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−7,7’−ジメチルインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−5,5’−ジメチル−7,7’−ジクロロインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−7,7’−ジエチルインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−6,6’−ジエトキシインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−6,6’−ジメトキシインジゴホワイト、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)−6,6’−ジエチルメルカプトインジゴホワイト等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じて2種以上の化合物を併用することもできる。
【0023】
本発明における色素前駆体とは、分子中に、加熱処理、或いは活性エネルギー線照射により離脱する置換基を有し、置換基を脱離しなければ実質的に変色していない状態を維持し得る化合物である。
【0024】
一般式(1)で表される化合物の置換基Ra〜Rbが脱離する反応は、一般にエステルの分解であり、加水分解反応である。この分解反応を促進するものであれば、何でも良いが、主に加熱処理、或いは活性エネルギー線処理が適している。
【0025】
加熱処理について、一般式(1)の置換基Ra〜Rbが脱離し、加水分解反応を促進する際に必要な熱エネルギーであれば、何でも良いが、例えば記録媒体に印加エネルギーを与えることのできる感熱記録体向けの記録装置でよく、電流で発熱する発熱体を有するサーマルヘッド、サーミスタ、熱板、熱ロール、或いは熱ドラム等を装備した記録装置でも良い。ただし、印加エネルギーのレベルによって、加水分解反応が生じないこともあり、一般に高い印加エネルギーのほうが前記加水分解反応は起こりやすい。
【0026】
活性エネルギー線について、一般式(1)の置換基Ra〜Rbが脱離するものであれば何でもよいが、例えば紫外線、可視光線、赤外線、X線、γ線、中性子線、陽子線、電子線等が挙げられる。これらの活性エネルギー線により、記録媒体に含まれる材料が直接化学的に反応しても良いし、その材料の振動エネルギー等による発熱を2次的に利用することで加熱処理と同じ効果を狙っても良いが、例えば記録媒体に赤外線レーザー、ハロゲンランプ、赤外線ランプ、紫外〜可視光線ランプ、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、YAGレーザー、COレーザー、アルゴンレーザー、エキシマランプ、或いはエキシマレーザー等を照射することで熱エネルギー及び光化学的反応を生じさせて、印画する装置でもよい。この時、レーザーによる光を熱エネルギーに変換させる光熱変換材料を使用しても良く、例えばシアニン系色素、フタロシアニン系色素、オキソノール系色素、ポリメチン系色素、ナフタロシアニン系色素、ジチオール金属錯塩系色素、トリフェニルメタン系色素、アミニウム系色素、ジインモニウム系色素、或いはスクアリウム系色素等が挙げられる。
【0027】
本発明の蛍光発光については、前記色素前駆体を、加熱処理、或いは活性エネルギー線照射、または化学的手段により、置換基R或いはRbの脱離により、蛍光発光能を有することを利用している。理由は定かではないが、置換基R或いはRbが脱離すると水酸基を生じるが、この時の構造が蛍光発光能を有すると推測している。カラーインデックス3548項には、類似化合物であるインジゴ(C.I.Vat Blue 1)の還元体であるインジゴホワイト(C.I.Reduced Vat Blue 1)の蛍光性について記載されている。
【0028】
前記色素前駆体において、置換基R或いはRbが脱離すると水酸基を生じるものであるが、この水酸基が更に酸化されてカルボニル基になる際、色素前駆体の共役系が伸び、吸収波長360〜900nmにおいて変化を生じ、ある色相を呈するようになるものである。即ち、この吸収波長の変化により、感熱記録部位は白色光を照射すると記録部が視認されることになり、この状態ではブラックライト等で励起光を照射しても記録部が視認されない。
【0029】
つまり、前記色素前駆体においては、幾つかの段階を経た反応機構を利用しているものである。置換基R或いはRbが脱離すると水酸基を生じる(加水)分解反応、水酸基が酸化されてカルボニル基になる酸化反応である。
【0030】
本発明において、カチオン性高分子であるポリエチレンイミンは、上記の(加水)分解反応を促進し、さらに上記の酸化反応を阻害する働きがあり、その結果として、白色光を照射しても記録部が視認されず、ブラックライト等で励起光を照射すると記録部が可視化され、記録部が高い保存性を有すると考えられる。
【0031】
白色光については、特に限定されないが、本発明の記録体に光照射する際、記録部位の蛍光発光が実質的に視認できなければ何でもよく、蛍光灯、蛍光ランプ等が挙げられる。
【0032】
ブラックライト等による励起光照射については、特に限定されないが、本発明の記録体に光照射する際、記録部位の蛍光発光が実質的に視認できれば何でもよい。
【0033】
記録部位の蛍光発光のための光源としては、特に限定されないが、例えば、一般的なブラックライト、殺菌灯、健康ランプと称される光を用いることができる。その他、本発明の記録体に光照射する際、記録部位の蛍光発光が実質的に視認できれば何でもよいが、メタルハライドランプ、水銀ランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等が挙げられる。
【0034】
前記ポリエチレンイミンの添加量は、記録層または該記録層に隣接する層の全固形分に対して0.1〜90質量%が好ましく、より好ましくは、0.5〜70質量%程度である。0.1〜90質量%の範囲内であれば、記録部において良好な保存性が得られる。
【0035】
前記ポリエチレンイミンの数平均分子量は、150以上の高分子量のものであれば(加水)分解反応を促進し、さらに酸化反応を阻害する働きに優れ、さらに優れた記録部の保存性が得られる。また、数平均分子量の上限値については、材料の合成のし易さ、扱い易さからの点から100,000以下が好ましい。なお、前記数平均分子量は、沸点上昇法により得られた数値である。
【0036】
その他、記録層中または該記録層に隣接する層には、本発明の所望の効果を損なわない限りにおいて、従来から使用されている公知の顔料、接着剤を添加することも可能である。
【0037】
前記顔料としては、例えばカオリン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、無定形シリカ、焼成カオリン、酸化チタン、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、コロイダルシリカ、尿素−ホルマリン樹脂フィラー、プラスチックピグメント等が挙げられ、コロイダルシリカ、無定形シリカが特に好ましく用いられる。
【0038】
前記接着剤としては、例えば、種々の分子量の部分鹸化ポリビニルアルコール、完全鹸化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、デンプン及びその誘導体、メトキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、及びエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸3元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、及びカゼイン等の水溶性高分子材料、並びにポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びスチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等の疎水性重合体のラテックス等が挙げられ、1種または2種以上で併用することも可能であり、部分鹸化ポリビニルアルコール、完全鹸化ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールが特に好ましく用いられる。
【0039】
その他、各種助剤として、滑剤、消泡剤、濡れ剤、防腐剤、分散剤、増粘剤、着色剤、帯電防止剤、架橋剤等、公知のものを用いることができる。
【0040】
本発明の記録層及び該記録層に隣接する層は、一般的に知られている方法により作成することが出来る。例えば、記録層用塗液は色素前駆体を接着剤水溶液と共に、ボールミル等の分散機で粉砕分散した後、必要に応じて各種助剤等と混合攪拌して調製する。次いで、支持体上に記録層用塗液を、公知の方法で塗布、乾燥すればよい。
【0041】
前記色素前駆体を粉砕分散した後の粒子径は、粒子が目視で確認できない程度であれば特に限定されないが、50μm未満が好ましく、0.1〜30μm程度が特に好ましい。
【0042】
前記記録層用塗液の塗布量は、乾燥後の重量で0.05〜50g/m程度が好ましく、0.1〜30g/m程度がより好ましい。
【0043】
前記記録層用塗液を支持体に塗布する方法としては、エアナイフコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ローラーコート法、ディップコート法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バリバーブレードコート報、ピュアブレードコート法、ロッドブレードコート法、ショートドウェルコート法、ダイコート法若しくはエクストルージョンコート法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本発明に用いられる支持体としては、紙、表面に顔料、ラテックス等を塗工したコーテッド紙、ポリオレフィン系樹脂から作られた副層構造の合成紙、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド等のプラスチックフィルム等から選ぶことが出来るが、この限りではない。支持体中に本発明で使用されるポリエチレンイミンを含んでもよい。
【0045】
本発明では、必要に応じて、支持体と記録層との間に、記録感度及び記録走行性を高めるために、下塗り層を設けることが出来る。下塗り層中に前記ポリエチレンイミンを含んでもよい。
【0046】
本発明では、必要に応じて、記録層の上に、印画部、或いは未印画部の地肌の状態の保存状態を良好に保つために、保護層を設けることが出来る。保護層中に前記ポリエチレンイミンを含んでもよい。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【0048】
実施例1
特開平4−124175号公報の実施例16に準じた方法により、N,N’,O,O’−テトラ(tert-ブトキシカルボニル)インジゴホワイトを合成した。なお、合成方法としてはこの限りでない。ここで、合成した上記化合物をろ紙に含ませ、室温下でポリエチレンイミンと接触させても無色のままであるが、ヘアドライヤーにて加温し、且つブラックライトによる励起光照射により強い蛍光発光が見られた。
【0049】
・色素前駆体分散液(A液)の調製
N,N’,O,O’−テトラ(tert-ブトキシカルボニル)インジゴホワイト10部、メチルセルロースの5%水溶液20部、及び水20部からなる組成物をサンドミルで平均粒子径が0.5μmとなるまで粉砕して色素前駆体分散液(A液)を得た。
【0050】
・記録層用塗液(B液)の調製
A液10部、ポリエチレンイミン(商品名:エポミンSP−003、分子量300、日本触媒社製)の20%水分散液1部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−110、クラレ社製)の20%水分散液40部、シリカ(商品名:ミズカシルP−605、水澤化学社製)の20%水分散液50部からなる組成物を混合撹拌して記録層用塗液を得た。
【0051】
・記録体の作製
48g/mの原紙の一方の面上に、乾燥後の塗布量が5.0g/mとなるようにB液を塗布乾燥した。その後スーパーカレンダーによって処理し、その表面の平滑度が王研式平滑度計で500〜5000秒の記録体を得た。
【0052】
実施例2
実施例1のB液調製において、ポリエチレンイミンとしてエポミンSP−003の代わりに、エポミンP−1000(分子量約7万、日本触媒社製)の20%水分散液1部を用いた以外は、実施例1と同様にして記録体を得た。
【0053】
実施例3
・記録層用塗液(C液)の調製
A液10部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−110、クラレ社製)の20%水分散液40部、シリカ(商品名:ミズカシルP−605、水澤化学社製)の20%水分散液50部からなる組成物を混合撹拌して記録層用塗液(C液)を得た。
【0054】
・保護層用塗液(D液)の調製
ポリエチレンイミン(商品名:エポミンSP−003、前出)の20%水分散液10部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA−110、前出)の20%水分散液40部、シリカ(商品名:ミズカシルP−605、前出)の20%水分散液50部からなる組成物を混合撹拌して保護層用塗液(D液)を得た。
【0055】
・記録体の作製
48g/mの原紙の一方の面上に、乾燥後の塗布量が1.0g/mとなるようにC液を塗布乾燥した。更にこの記録層上に、乾燥後の塗布量が1.0g/mとなるようにD液を塗布乾燥した。その後スーパーカレンダーによって処理し、その表面の平滑度が王研式平滑度計で500〜5000秒の記録体を得た。
【0056】
比較例1
実施例1のB液調製において、ポリエチレンイミン(商品名:エポミンSP−003、前出)の20%水分散液1部の代わりに、ジ−2−アミノエチルアミン(分子量105、東京化成社製)の20%水分散液1部を用いた以外は、実施例1と同様にして記録体を得た。
【0057】
比較例2
実施例2のD液調製において、ポリエチレンイミン(商品名:エポミンSP−003、前出)の20%水分散液10部の代わりに、ジ−2−アミノエチルアミン(前出、東京化成社製)の20%水分散液10部を用いた以外は、実施例2と同様にして記録体を得た。
【0058】
比較例3
実施例1のB液調製において、ポリエチレンイミン(商品名:エポミンSP−003、前出)の20%水分散液1部を用いなかった以外は、実施例1と同様にして記録体を得た。
【0059】
かくして得られた6種類の記録体について、以下の評価を行い、その結果を表1に記した。
【0060】
<感熱記録の方法>
得られた記録体を感熱評価機(商品名:TH−PMH、大倉電気社製)を用い、印加エネルギー0.24mJ/dotにて記録させ、記録シートを作製した。また、比較例3については、印加エネルギー1.0mJ/dotの条件でも記録させた。
【0061】
<白色光での視認性>
○:記録部が白色光で視認できなかった。
×:記録部が白色光で視認できた。
【0062】
<ブラックライトでの視認性>
○:記録部がブラックライトで視認できた。
×:記録部がブラックライトで視認できなかった。
【0063】
<保存性試験>
記録シートを60℃環境下に1日保管した。
【0064】
<保存性試験後の記録シートの白色光での視認性>
○:記録部が白色光で視認できなかった。
×:記録部が白色光で視認できた。
【0065】
<保存性試験後の記録シートのブラックライトでの視認性>
○:記録部がブラックライトで視認できた。
×:記録部がブラックライトで視認できなかった。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例1〜3については、ポリエチレンイミンが含有されているため、0.24mJ/dotといった低い印加エネルギーで記録しても分解反応が起こり、さらに酸化反応が阻害された結果、保存性試験前の視認性において、白色光で視認できず、ブラックライトで視認が可能となった。また、保存性試験後の視認性についても、記録部が高い保存性を有しているため、保存性試験前と同様な結果となった。
【0068】
比較例1、2については、ジ−2−アミノエチルアミンが含有されているため、0.24mJ/dotといった低い印加エネルギーで記録しても分解反応が起こり、さらに酸化反応が阻害された結果、保存性試験前の視認性において、白色光で視認できず、ブラックライトで視認が可能となった。しかし、記録部が高い保存性を有していないため、保存性試験後の視認性については、白色光で視認でき、ブラックライトで視認ができなくなった。
【0069】
比較例3においては、印加エネルギーが0.24mJ/dotでは、分解反応が起こらず、保存性試験前では、白色光、ブラックライトでいずれも視認ができなかった。また、印加エネルギーが1.0mJ/dotでは、分解反応が起こったが、さらに酸化反応まで進んだために保存性試験前の視認性において、白色光で視認でき、ブラックライトで視認ができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
表1の結果から明らかなように、白色光環境下では記録情報が視認されず、ブラックライト環境下では記録情報が可視化される記録体であり、且つ記録情報の保存性が高いものが得られた。偽造防止シート等で使用できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、加熱処理、或いは活性エネルギー線照射により脱離する置換基を分子中に有する色素前駆体を含有する記録層を設けた記録体であって、前記色素前駆体が、下記一般式(1)から選ばれた少なくとも1種であり、記録層または前記記録層に隣接する層にカチオン性高分子であるポリエチレンイミンが含有されることを特徴とする記録体。
【化1】

〔式(1)中、R、R、R、Rはそれぞれ−COORを示し、RはC1〜C12の3級アルキル基を示す。なお、R、R、R、Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。〕
【請求項2】
前記ポリエチレンイミンの数平均分子量が、150〜100,000である、請求項1に記載の記録体。
【請求項3】
前記色素前駆体が、N,N’,O,O’−テトラ(tert−ブトキシカルボニル)インジゴホワイトである、請求項1または2に記載の記録体。