説明

記録再生ヘッド、磁気記録再生装置、及び磁気記録再生方法

【課題】記録中においても誤記録を検知することが可能な記録再生ヘッド、磁気記録再生装置、及び磁気記録再生方法を実現する。
【解決手段】記録再生ヘッド1は、磁気記録媒体2の記録トラック22に記録素子10を用いて磁気的情報を記録するとともに、記録トラック22に記録された磁気的情報を記録トラック再生素子11により読み取る記録再生ヘッド1であって、
記録トラック22と磁気記録媒体2の径方向において隣接する隣接トラック21・23に記録された磁気的情報を読み取る第1隣接トラック再生素子12・13を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体に対する記録時に生ずる誤記録の検知、ならびに誤記録によって消失した記録情報の復旧が可能な記録再生ヘッド、磁気記録再生装置、及び磁気記録再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高度情報化社会が進展するにつれ、大容量の磁気記録媒体に対する需要が高まっており、それと共に磁気記録媒体の高密度化も進んでいる。そして、磁気記録媒体の大容量化および高密度化と並行して、記録再生ヘッドの小型化、あるいは磁気記録媒体に対する記録再生ヘッドの浮上高の低減など、様々な工夫がなされてきた。さらに、レーザ照射、電界電子放出等により磁気記録媒体を加熱・昇温し、磁気記録媒体の記録層における保磁力を低下させ、その状態で記録磁界を印加することによりデータを記録する熱アシスト磁気記録再生装置、および熱アシスト磁気記録再生方法が提案されている。
【0003】
その一方で、記録密度の飛躍的な向上により、磁気記録媒体上の単位ビットあたりが占める記録面積が小さくなっており、磁気的情報を所望の領域に書き込むだけでなく、その領域の周辺にも意図しない書き込みを行う問題、すなわち誤記録の問題が懸念されている。誤記録が生じた場合、そこに書き込まれてあった記録情報が失われるため、記録情報の信頼性の観点から大きな問題となる。つまり、高密度化にあたっては、磁気的記録情報の信頼性は常に保証されていなければならない。
【0004】
従来の磁気記録再生装置における誤記録の原因として、記録再生ヘッドに設けられた記録素子による記録領域の拡大、および振動による記録再生ヘッドの位置ずれが挙げられる。記録素子による記録領域の拡大とは、記録素子によって記録される領域が正常動作時よりも拡大し、記録を意図しない領域に対しても誤って記録することをいう。その理由として、電気ノイズ等の外乱に起因して記録素子に流れる記録電流が増大すること、および、外部からの振動・衝撃等により記録再生ヘッドと磁気記録媒体との距離が縮まることにより、従来よりも強い磁界が磁気記録媒体に与えられることが挙げられる。振動による記録再生ヘッドの位置ずれとは、外部からの振動・衝撃、または気圧の変化によってスライダ周りにおける空気流の変化が原因となり、記録素子の位置が記録を行う領域から外れ、記録を意図しない領域に誤記録することをいう。
【0005】
さらに、熱アシスト磁気記録方式においては、上記の要因に加えて別の要因による誤記録が発生しうる。つまり、加熱・昇温する領域が拡大することにより、誤記録がなされる現象である。具体的には、レーザにより磁気記録媒体を加熱する方法の場合、レーザは、温度が変化することにより駆動電流と光出力との関係が変化する。例えば、気温が下がることによりレーザの閾値電流が小さくなり、同じ駆動電流によってレーザを駆動すると、光出力、すなわちレーザパワーが増加し、昇温領域も拡大する。熱アシスト磁気記録方式では昇温領域が記録領域となるため、昇温領域の拡大によって意図しない領域に誤って記録してしまうことになる。このように、加熱装置における温度変化、あるいは電気ノイズを原因とする誤記録が発生しうる。誤記録が度々生じて記録情報が失われると、磁気記録再生装置の信頼性に多大な影響を及ぼす結果となる。
【0006】
誤記録の問題を回避するためには、記録前において適切な記録条件を設定することにより誤記録を防止する方法、あるいは記録後に誤記録を検知し、誤記録によって磁気記録媒体上から失われた記録情報を復旧する方法が考えられる。記録前において適切な記録条件を設定する方法については、従来から数多くなされており、その代表的な例として、試験的に記録(以下、テストライト)を行う方法がある。例えば、特許文献1、2では、テストライトの結果をもとに最適な記録条件を定めている。特許文献3では、光磁気記録媒体において、第一のトラックに主ビームを照射し、同時に第一のトラックに隣接する第二のトラックに副ビームを照射し、反射光量からレーザ照射のはみ出しを検知し、それに応じてレーザの出力を補正する記録再生装置を開示している。特許文献4では、加熱手段から出射されるエネルギー線の放出部に近接して複数の磁気記録素子を設け、加熱によって形成される記録可能温度分布内の記録トラックに記録を行い、隣接トラックが加熱されることで信号磁化の消去を回避する熱アシスト磁気記録装置を開示している。
【特許文献1】特開2002−298301号公報(平成14年10月11日公開)
【特許文献2】特開2006−155795号公報(平成18年6月15日公開)
【特許文献3】特開2001−126334号公報(平成13年5月11日公開)
【特許文献4】特開2002−32901号公報(平成14年1月31日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の記録再生ヘッド、および磁気記録再生装置では、たとえ頻繁に記録条件を調整できたとしても、周囲環境の変化、あるいは振動・衝撃などの外乱が記録中に突発的に生じた場合、誤記録は免れない。従って、記録中に外乱が生じ誤記録が発生した場合においても対処可能な磁気記録装置が求められていた。
【0008】
上記問題と共に以下の問題点も指摘されている。つまり、特許文献1、2では、テストライトの結果をもとに最適な記録条件を定めているが、テストライトに時間を多く費やすと、記録するための時間を割くこととなり、現実的に妥当ではない。特許文献3では、常時レーザ出力を調整しているものの、レーザのはみ出しによる誤記録の有無を検知する機構を備えていない。特許文献4では、隣接トラックの加熱に起因する信号磁化の消滅を回避するうえで、複数の記録素子が必要となる。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録中においても誤記録を検知することが可能な記録再生ヘッド、磁気記録再生装置、及び磁気記録再生方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る記録再生ヘッドは、前記課題を解決するために、磁気記録媒体の記録トラックに記録素子を用いて磁気的情報を記録するとともに、前記記録トラックに記録された磁気的情報を記録トラック再生素子により読み取る記録再生ヘッドであって、前記記録トラックと前記磁気記録媒体の径方向において隣接する隣接トラックに記録された磁気的情報を読み取る第1隣接トラック再生素子を有することを特徴としている。
【0011】
前記の構成によれば、本発明に係る記録再生ヘッドは、前記記録トラックと前記磁気記録媒体の径方向において隣接する隣接トラックに第1隣接トラック再生素子を有している。従って、前記記録素子によって前記記録トラックに磁気的情報を記録する前後において、前記第1隣接トラック再生素子を用いて前記隣接トラックの磁気的情報を読み取ることで、前記隣接トラックが誤記録されたか否かを検知することが可能になる。
【0012】
本発明に係る記録再生ヘッドは、前記第1隣接トラック再生素子が、前記記録素子から見て前記磁気記録媒体が移動する方向の逆方向を上流方向とした場合、前記記録素子の上流方向に配設されることが好ましい。
【0013】
前記第1隣接トラック再生素子が前記記録素子の上流方向に配設されることにより、前記磁気記録媒体の同一の周回において、前記第1隣接トラック再生素子によって前記第1磁気的情報を読み取り、かつ前記記録素子によって前記記録トラックに磁気的情報を記録することができる。このように、前記磁気記録媒体の同一の周回において前記磁気記録媒体に磁気的情報を記録することができ、記録前のバックアップ作業に時間を費やす必要がなくなる。つまり、記録を開始する前に前記磁気記録媒体を余分に1回転させる必要がなくなり、記録バッファ(記録するための磁気的情報を保持しておくメモリ)に記録を保持する時間を短縮することができ、記録バッファを圧迫しなくて済むという効果を奏する。
【0014】
本発明に係る記録再生ヘッドは、前記記録素子から見て前記磁気記録媒体が移動する方向を下流方向とした場合、前記記録素子の下流方向に配設され、前記隣接トラックに記録された磁気的情報を読み取る第2隣接トラック再生素子を有することが好ましい。
【0015】
前記第1隣接トラック再生素子および前記第2隣接トラック再生素子が前記記録素子の上下流方向にそれぞれ配設されているため、前記磁気記録媒体の同一の周回において、前記記録素子が前記記録トラックに磁気的情報を記録する前後における前記隣接トラックの磁気的情報を読み取ることができ、それによって誤記録の検知を行うことが可能となる。このように、前記記録素子による記録中に誤記録を検知することができる。
【0016】
本発明に係る記録再生ヘッドは、前記第1隣接トラック再生素子が、前記記録素子に対して前記磁気記録媒体の内周側に配設されていることが好ましい。
【0017】
本発明に係る記録再生ヘッドは、前記第1隣接トラック再生素子が、前記記録素子に対して前記磁気記録媒体の外周側に配設されていることが好ましい。
【0018】
本発明に係る記録再生ヘッドは、前記第1隣接トラック再生素子が、前記記録素子に対して前記磁気記録媒体の外周側および内周側に配設されていることが好ましい。
【0019】
前記第1隣接トラック再生素子は、前記記録素子に対して前記磁気記録媒体の内周側、外周側、あるいはその両方に配設されることができる。特に内周側および外周側の両方に配設されている場合、前記磁気記録媒体を2回転させるだけで、両隣接トラックの誤記録の検知を行うことができる。
【0020】
ここで、本発明に係る記録再生ヘッドの特徴をより明確にするため、従来の記録再生ヘッドによる誤記録の検知について説明する。従来の記録再生ヘッドは、記録素子、および該記録素子と同一のトラックに配設された再生素子によって構成される。そして、誤記録の検知に際しては、再生素子が1つしかないため、磁気記録媒体が1回転する間に再生できるのは1つのトラックのみであった。従って、両隣接トラックの誤記録を検知するには、記録素子によって記録トラックの記録を行う前後において、磁気記録媒体を計4回転させる必要があった。加えて、記録素子によって記録トラックを記録するため、磁気記録媒体は計5回の回転を必要とした。このことからも、本発明に係る記録再生ヘッドは、従来の再生ヘッドと比較して、極めて短時間に誤記録の検知が可能であることが分かる。
【0021】
本発明に係る記録再生ヘッドでは、前記記録トラック再生素子が、前記記録素子から見て前記磁気記録媒体が移動する方向の逆方向を上流方向とした場合、前記記録素子よりも上流方向に配設されることが好ましい。
【0022】
本発明に係る記録再生ヘッドは、隣接トラックにおける誤記録の検知に加えて、前記記録トラック再生素子を用いて前記記録トラックにおける誤記録も検知することができる。しかも、前記記録トラック再生素子を前記記録素子の上流側に配設することにより、前記磁気記録媒体の同一の周回において、前記記録素子により前記記録トラックに磁気的情報を記録することができ、記録前のバックアップ作業に時間を費やす必要がなくなる。つまり、記録を開始する前に前記磁気記録媒体を余分に1周させる必要がなく、記録バッファ(記録するための磁気的情報を保持しておくメモリ)に記録を保持する時間を短縮することができ、記録バッファを圧迫しなくて済むというさらなる効果を奏する。
【0023】
本発明に係る記録再生ヘッドは、前記記録トラックを加熱昇温する加熱手段を有することが好ましい。
【0024】
これにより、熱アシスト磁気記録方式に対応可能な記録再生ヘッドとすることができる。
【0025】
本発明に係る磁気記録再生装置は、磁気記録媒体の記録トラックに記録素子を用いて磁気的情報を記録するとともに、前記記録トラックに記録された磁気的情報を記録トラック再生素子により読み取る記録再生ヘッドであって、前記記録トラックと前記磁気記録媒体の径方向において隣接する隣接トラックに記録された磁気的情報を読み取る第1隣接トラック再生素子を有することを特徴とする記録再生ヘッドを有する磁気記録再生装置であって、前記第1隣接トラック再生素子によって前記隣接トラックの第1磁気的情報を読み取り、次に、前記記録素子によって前記記録トラックに磁気的情報を記録し、
そのうえで、前記第1隣接トラック再生素子によって前記隣接トラックの第2磁気的情報を読み取り、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を比較する第1比較器を有し、前記第1比較器は、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報が異なっている場合には、前記隣接トラックが誤記録されたと判断することが好ましい。
【0026】
前記磁気記録再生装置が前記第1比較器を有することにより、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を比較し、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報が異なっている場合には、前記隣接トラックが誤記録されたと判断することができる。
【0027】
なお、第1比較器における磁気的情報の比較は、たとえば、以下のように行うことができる。すなわち、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報をデジタル信号に変換し、エラー訂正処理を行ったうえで、それぞれのビット情報に対する排他的論理和を取る。このように比較することにより、アナログ信号によって誤記録を検知する方法に比べ、より正確に誤記録の有無を検知することができる。
【0028】
誤記録を検知するうえで、アナログ信号に対するデジタル信号の優位性を説明する。前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報がアナログ信号として比較処理された場合、記録トラックが正常に記録されていれば、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報は全く同一となる。しかしながら、誤記録が生じた場合には、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報の減算処理(比較処理)によって、0とならない領域が発生する。従って、アナログ信号を用いた場合、磁気的情報として同一とみなせるか否かの基準となる閾値を予め設けておく必要がある。つまり、閾値の設定次第で誤記録の有無の判断が相違することになり、この点において、デジタル信号を用いた場合の誤記録の検知に比べ正確性が劣る結果となる。
【0029】
本発明に係る磁気記録再生装置は、前記第1隣接トラック再生素子が、前記記録素子から見て前記磁気記録媒体が移動する方向の逆方向を上流方向とした場合、前記記録素子の上流方向に配設され、前記第1磁気的情報を、前記磁気記録媒体の1周目の回転において読み取り、前記第2磁気的情報を、前記磁気記録媒体の2周目の回転において読み取ることが好ましい。
【0030】
前記第1隣接トラック再生素子が前記記録素子の上流方向に配設されることにより、前記磁気記録媒体の1周目の回転において前記第1磁気的情報を読み取り、かつ前記記録素子によって前記記録トラックに磁気的情報を記録することができる。これにより、先述したのと同様の理由により、記録バッファ(記録するための磁気的情報を保持しておくメモリ)に記録を保持する時間を短縮することができ、記録バッファを圧迫しなくて済むという効果を奏する。
【0031】
本発明に係る磁気記録再生装置は、前記記録素子から見て前記磁気記録媒体が移動する方向を下流方向とした場合、前記記録素子の下流方向に配設され、前記隣接トラックに記録された磁気的情報を読み取る第2隣接トラック再生素子を有する記録再生ヘッドを備えた磁気記録再生装置であって、前記第1隣接トラック再生素子によって前記隣接トラックの第1磁気的情報を読み取り、次に、前記記録素子によって前記記録トラックに磁気的情報を記録し、そのうえで、前記第2隣接トラック再生素子によって前記隣接トラックの第2磁気的情報を読み取り、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を比較する第1比較器を有し、前記第1比較器は、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報が異なっている場合には、前記隣接トラックが誤記録されたと判断することが好ましい。
【0032】
前記磁気記録再生装置が前記第1比較器を有することにより、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を比較し、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報が異なっている場合には、前記隣接トラックが誤記録されたと判断することができる。なお、第1比較器における磁気的情報の比較は、たとえば、以下のように行うことができる。すなわち、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報をデジタル信号に変換し、エラー訂正処理を行ったうえで、それぞれのビット情報に対する排他的論理和を取る。このように比較することにより、アナログ信号によって誤記録を検知する方法に比べ、より正確に誤記録の有無を検知することができる。
【0033】
本発明に係る磁気記録再生装置は、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を、前記磁気記録媒体の1周目の回転において読み取ることが好ましい。
【0034】
前記第1隣接トラック再生素子および前記第2隣接トラック再生素子を用いることにより、前記磁気記録媒体を1回転させるだけで前記隣接トラックの誤記録を検知することができるため、誤記録の検知に必要な時間を短縮することができる。さらに、先述したのと同様の理由により、記録バッファ(記録するための磁気的情報を保持しておくメモリ)に記録を保持する時間を短縮することができ、記録バッファを圧迫しなくて済むという効果を奏する。
【0035】
本発明に係る磁気記録再生装置は、前記記録トラック再生素子によって、前記記録素子により磁気的情報が記録される前記記録トラックの記録領域に周方向で隣接する隣接領域における第3磁気的情報を読み取り、次に、前記記録素子によって前記記録領域に磁気的情報を記録し、そのうえで、前記記録トラック再生素子によって前記隣接領域における第4磁気的情報を読み取り、前記第3磁気的情報および前記第4磁気的情報を比較する第2比較器を有し、前記第2比較器は、前記第3磁気的情報および前記第4磁気的情報が異なっている場合には、前記隣接領域が誤記録されたと判断することが好ましい。
【0036】
前記磁気記録再生装置が前記第2比較器を有することにより、前記第3磁気的情報および前記第4磁気的情報を比較し、前記第3磁気的情報および前記第4磁気的情報が異なっている場合には、前記隣接領域が誤記録されたと判断することができる。
【0037】
なお、第2比較器における磁気的情報の比較は、たとえば、以下のように行うことができる。すなわち、前記第3磁気的情報および前記第4磁気的情報をデジタル信号に変換し、エラー訂正処理を行ったうえで、それぞれのビット情報に対する排他的論理和を取る。このように比較することにより、アナログ信号によって誤記録を検知する方法に比べ、より正確に誤記録の有無を検知することができる。
【0038】
本発明に係る磁気記録再生装置は、前記記録トラック再生素子が、前記記録素子から見て前記磁気記録媒体が移動する方向の逆方向を上流方向とした場合、前記記録素子の上流方向に配設された場合であって、前記第3磁気的情報を、前記磁気記録媒体の1周目の回転において読み取り、前記第4磁気的情報を、前記磁気記録媒体の2周目の回転において読み取ることが好ましい。
【0039】
前記記録トラック再生素子が前記記録素子の上流方向に配設されることにより、前記磁気記録媒体の1周目の回転において、前記第3磁気的情報を読み取ると共に、前記記録素子によって前記記録領域に磁気的情報を記録することができる。また、前記磁気記録媒体の2周目の回転において、前記第4磁気的情報を読み取ることがえきる。これにより、先述したのと同様の理由により、記録バッファ(記録するための磁気的情報を保持しておくメモリ)に記録を保持する時間を短縮することができ、記録バッファを圧迫しなくて済むという効果を奏する。
【0040】
本発明に係る磁気記録再生装置は、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を保存するための記録部をさらに有することが好ましい。
【0041】
前記記録部を有することにより、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を保存することができ、それによって、いつでも前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を取得することができる。特に、前記第1隣接トラック再生素子が前記記録素子の上流側に配設されている場合、前記記録部への記録と、前記記録素子による記録とを同時に行うことができる。また、前記記録部を備えることにより、誤記録の判断を任意のタイミングで行うことが可能となる。そのため、何らかの事情で比較作業以降が処理できなかった場合、前記磁気記録媒体のアイドル時間などに処理することにより、他の動作への負担を軽減することができる。
【0042】
本発明に係る磁気記録再生装置は、前記第1磁気的情報、前記第2磁気的情報、前記第3磁気的情報、および前記第4磁気的情報を保存するための記録部をさらに有することが好ましい。
【0043】
前記記録部を有することにより、前記第1磁気的情報、前記第2磁気的情報、前記第3磁気的情報、および前記第4磁気的情報を保存することができ、それによって、いつでも前記第1磁気的情報、前記第2磁気的情報、前記第3磁気的情報、および前記第4磁気的情報を取得することができる。特に、前記第1隣接トラック再生素子、および前記記録トラック再生素子が前記記録素子の上流側に配設されている場合、前記記録部への記録と、前記記録素子による記録とを同時に行うことができる。また、前記記録部を備えることにより、誤記録の判断を任意のタイミングで行うことが可能となる。そのため、何らかの事情で比較作業以降が処理できなかった場合、前記磁気記録媒体のアイドル時間などに処理することにより、他の動作への負担を軽減することができる。
【0044】
本発明に係る磁気記録再生装置は、前記第1比較器によって、誤記録がなされたと判断された場合に、前記第1磁気的情報が、前記記録部から取得されると共に、前記磁気記録媒体の任意の領域に記録されることが好ましい。
【0045】
これによって、前記第1磁気的情報を前記磁気記録媒体に書き込むことが可能となり、誤記録された磁気的情報を復旧することができる。
【0046】
本発明に係る磁気記録再生装置は、前記第1比較器によって、誤記録がなされたと判断された場合に、前記第1磁気的情報が、前記記録部から取得されると共に、前記磁気記録媒体上であって自身が読み取られたのと同一の領域に記録されることが好ましい。
【0047】
これによって、前記第1磁気的情報を前記磁気記録媒体に書き込むことが可能となり、誤記録された磁気的情報を復旧することができる。さらに、前記第1磁気的情報が、前記磁気記録媒体上であって自身が読み取られたのと同一の領域に記録されるため、磁気的情報の復旧に伴うアドレス情報の変更が不要となる。
【0048】
本発明に係る磁気記録再生装置は、前記第1比較器、および前記第2比較器の少なくとも一方によって、誤記録がなされたと判断された場合に、誤記録がなされたと判断された前記第1磁気的情報、または前記第3磁気的情報が、前記記録部から取得されると共に、前記磁気記録媒体の任意の領域に記録されることが好ましい。
【0049】
これによって、前記第1磁気的情報および前記第3磁気的情報を前記磁気記録媒体に書き込むことが可能となり、誤記録された磁気的情報を復旧することができる。
【0050】
本発明に係る磁気記録再生装置は、前記第1比較器、および前記第2比較器の少なくとも一方によって、誤記録がなされたと判断された場合に、誤記録がなされたと判断された前記第1磁気的情報、または前記第3磁気的情報が、前記記録部から取得されると共に、前記磁気記録媒体上であって自身が読み取られたのと同一の領域に記録されることが好ましい。
【0051】
これによって、前記第1磁気的情報および前記第3磁気的情報を前記磁気記録媒体に書き込むことが可能となり、誤記録された磁気的情報を復旧することができる。さらに、前記第1磁気的情報および前記第3磁気的情報が、前記磁気記録媒体上であって自身が読み取られたのと同一の領域に記録されるため、磁気的情報の復旧に伴うアドレス情報の変更が不要となる。
【0052】
本発明に係る磁気記録再生装置は、前記記録トラックを加熱昇温する加熱手段を有することが好ましい。
【0053】
これにより、熱アシスト磁気記録方式に対応可能な磁気記録再生装置とすることができる。
【0054】
本発明に係る磁気記録再生方法は、磁気記録媒体の記録トラックに記録素子を用いて磁気的情報を記録するとともに、前記記録トラックに記録された磁気的情報を記録トラック再生素子により読み取る記録再生ヘッドであって、前記記録トラックと前記磁気記録媒体の径方向において隣接する隣接トラックに記録された磁気的情報を読み取る第1隣接トラック再生素子を有する記録再生ヘッドを用いた磁気記録再生方法であって、前記第1隣接トラック再生素子によって前記隣接トラックの第1磁気的情報を読み取る工程と、次に、前記記録素子によって前記記録トラックに磁気的情報を記録する工程と、そのうえで、前記第1隣接トラック再生素子によって前記隣接トラックの第2磁気的情報を読み取る工程と、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を比較する第1比較工程と、を含み、前記第1比較工程は、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報が異なっていると判断された場合には、前記隣接トラックが誤記録されたと判断する工程を含むことが好ましい。
【0055】
本発明に係る磁気記録再生方法が上記の工程を含むことにより、記録中においても誤記録を検知することが可能であり、また、誤記録が生じた場合にも、前記記録部から誤記録された時期的情報を取得し、前記磁気記録媒体上に書き込むことによって、誤記録により失われた記録情報を復旧することが可能となる。
【発明の効果】
【0056】
本発明に係る記録再生ヘッドは、以上のように、前記記録素子によって前記記録トラックに磁気的情報を記録する前後において、前記第1隣接トラック再生素子を用いて前記隣接トラックの磁気的情報を読み取ることで、前記隣接トラックが誤記録されたか否かを検知することが可能になる。また、磁気記録媒体の回転回数を調節することによって、誤記録の検知に必要な時間を短縮することが可能となる。さらに、記録中においても誤記録を検知することが可能であり、また、誤記録が生じた場合にも、誤記録によって失われた記録情報を復旧することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0058】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置の構成について、以下説明する。
【0059】
図2は、実施の形態1に係る磁気記録再生装置のブロック構成図である。実施の形態1に係る磁気記録再生装置は、記録再生ヘッド1と、磁気記録媒体2と、サスペンション3と、モータ4と、記録部51と、比較回路52(第1比較器)と、制御回路53と、ヘッド駆動回路54と、アドレス検出回路55と、スイッチング回路56と、ボイスコイルモータ57と、を有する。
【0060】
記録再生ヘッド1は、サスペンション3と一体となっており、磁気記録媒体2に対する記録再生ヘッド1の位置を制御するアクチュエータ(図示せず)によって駆動する。また、記録再生ヘッド1は、磁気記録媒体2に対向し、磁気記録媒体2に対して記録再生を行う。なお、記録再生ヘッド1から伸びている矢印は、記録再生ヘッド1が有する再生素子から出力される磁気的情報の経路を示す。記録信号の経路に関しては省略している。
【0061】
磁気記録媒体2は、円盤状であり、磁気的情報が記録されており、その動作時にモータ4によって一定回転数で回転する。なお、実施の形態1では、磁気記録媒体2に記録されている情報、磁気記録媒体2に記録する情報、磁気記録媒体2から読み取った再生信号、および磁気記録媒体2から読み取った再生信号に対してA/D変換した信号を、総じて磁気的情報と称する。
【0062】
サスペンション3は、記録再生ヘッド1と一体化しており、さらにボイスコイルモータ57が取り付けられている。モータ4は、例えばスピンドルモータであり、記録再生時においては磁気記録媒体2を一定の回転速度で回転させる。記録部51は、例えば磁気記録再生装置の内外に備え付けられた半導体メモリなどの磁気的情報を保持できる機構を有し、記録再生ヘッド1によって再生した磁気的情報を記録するための装置である。
【0063】
比較回路52は、記録再生ヘッド1から再生した2つの磁気的情報を比較し、それら2つの磁気的情報が異なっているか否かを判断し、その判断結果を制御回路53に送る回路である。アドレス検出回路55は、磁気記録媒体2に記録された磁気的情報を読み取ることによりアドレスを検出し、記録再生ヘッド1の位置情報を制御回路53に送る回路である。制御回路53は、アドレス情報、あるいは比較回路52から送られてくる信号等の情報を受け取り、記録再生ヘッド1による磁気記録媒体2への記録・再生動作の制御、あるいはヘッド駆動回路54の制御を目的としている。
【0064】
ヘッド駆動回路54は、制御回路53により指定された磁気記録媒体2の所定の場所に記録再生ヘッド1を移動させるため、ボイスコイルモータ54に適切な電流を流すことを目的とする。ボイスコイルモータ57は、ヘッド駆動回路54により調節され、記録再生ヘッド1およびサスペンション3を所定の場所に動かすことを目的とする。スイッチング回路56は、制御回路53の制御のもと、磁気的情報の送り先を選択する。
【0065】
図3(a)は、磁気記録媒体2を記録再生ヘッド1の側から見た概略図である。図3(b)は、磁気記録媒体2における、磁気的情報を記録する領域を説明するための図である。磁気記録媒体2においては、記録する磁気的情報は同心円状に分割されて記録される。これらの同心円状に分割された領域、すなわち磁気記録媒体2が回転する方向(周方向)における領域をトラックと呼ぶ。なお、本実施の形態においては、磁気記録媒体2の中心に近づく方向を内周側、遠ざかる方向を外周側と称する。
【0066】
一般的に、磁気記録媒体2の領域は、サーボ・データ領域6とユーザ・データ領域7とに大別される(図3(b))。サーボ・データ領域6は、記録再生ヘッド1の位置情報等を取得するためのアドレス情報が書き込まれている。ユーザ・データ領域7は、サーボ・データ領域6の間に配置され、磁気的情報を記録することを目的としている。
【0067】
図3(c)は、磁気記録媒体2の一部を拡大した図であり、サーボ・データ領域6とユーザ・データ領域7との関係をより明確に示した図である。ユーザ・データ領域7は、2つのサーボ・データ領域6の間に配置されている。ユーザ・データ領域7には、通常512バイトごと区切られたセクタと呼ばれる記録単位が複数配置されている。また、1つのセクタがサーボ・データ領域6をまたいで配置されている場合もある。通常は磁気的情報の記録再生は1セクタ単位で行われるが、複数のセクタをひとまとめにしたクラスタと呼ばれる記録単位で記録されることもある。なお、1つのトラックにおけるセクタの数は、トラックの半径位置により異なる。
【0068】
図1は、実施の形態1に係る記録再生ヘッド1の構成を説明する図である。図1(a)は、記録再生ヘッド1および磁気記録媒体2の断面図を示す。図1(b)は、記録再生ヘッド1が有する記録素子および再生素子と、磁気記録媒体2と、記録再生ヘッド1周辺の磁気記録媒体2のトラックとの位置関係を示す。
【0069】
磁気記録媒体2は、図1(a)および図1(b)の左側から右側の方向に回転している(図中の矢印の方向)。ここで、記録再生ヘッド1から見て、磁気記録媒体2が移動する方向を下流方向、その逆方向を上流方向と定義する。図1においては、上流方向側が左側であり、下流方向側が右側である。
【0070】
本実施の形態では、記録素子によって記録される磁気記録媒体上のトラックのことを記録トラックと呼び、図1(b)ではトラック22が記録トラックに該当する。記録トラック22に隣接するトラックを、内周側、外周側ともに隣接トラックと呼ぶ。図1(b)において、内周側の隣接トラックがトラック21に、外周側の隣接トラックがトラック23に該当する。また、本実施の形態では、誤記録のうち隣接トラックに誤って記録される現象をクロスライトと称する。
【0071】
図1に示すように、記録再生ヘッド1は、記録素子10と、再生素子11(記録トラック再生素子)、再生素子12(第1隣接トラック再生素子)、再生素子13(第1隣接トラック再生素子)と、を含む。記録素子10は、磁気記録媒体2に磁気的情報を書き込むための素子であり、記録トラック22に対応して配設されている。再生素子11〜13は、磁気記録媒体2に記録された磁気的情報を読み取るためのものである。再生素子11は、記録トラック22に対応する位置に、再生素子12は、記録素子10に対して内周側の隣接トラック21に対応する位置に、再生素子13は、記録素子10に対して外周側の隣接トラック23に対応する位置に、それぞれ配設されている。そして、再生素子12・13は記録素子10に対して下流方向側に位置している。また、再生素子12・13によって再生された磁気的情報は、図2に示すように、記録再生ヘッド1からスイッチング回路56およびアドレス検出回路55に送られる。
【0072】
記録動作を開始する前に、制御回路53を用いて、磁気記録媒体2におけるどの領域、すなわちどのセクタあるいはクラスタに磁気的情報を記録するかが決定されるが、本実施の形態ではその記録する領域を記録領域と称する。従って、記録領域は記録データ量に応じた複数のセクタ、あるいは複数のクラスタによって形成される。
【0073】
図4(a)〜(d)は、記録領域30、および記録領域30の周辺部であって記録領域30への記録により誤記録が生じる可能性のある領域(41、42、43、44)を説明するための図である。
【0074】
図4(a)は、記録動作を開始する前に決定された磁気記録媒体2の記録領域30を示す。記録領域30は、図面左右方向において3つのセクタから構成されている。また、記録領域30に対して、図の左右方向には記録トラック22に配置された複数のセクタが、上下方向には隣接トラック21・23に配置された複数のセクタがある。
【0075】
記録領域30は、記録素子10によって記録が行われる領域であり、磁気記録媒体2におけるユーザ・データ領域7に設けられている。実際の記録動作においては、記録領域30の下流方向側の端である記録開始地点31から記録が開始され、記録領域30の上流方向側の端である記録終了地点32にて記録が終了する。
【0076】
図4(b)は、記録領域30と、記録領域30の周辺領域との関係を示す図である。ここで、後述する記録動作に関する記録再生動作アルゴリズムの説明の便宜上、記録領域30の周辺部に参照番号を付して説明する。つまり、図4(b)に示すように、領域41〜44が記録領域30の周辺部に設定される。領域41、領域42は図面上下方向、つまり磁気記録媒体2の径方向において記録領域30に隣接し、それぞれ記録領域30と同じセクタ数から形成された領域である。図4(b)では、記録領域30が3つのセクタから形成されているため、領域41、領域42もそれぞれ3つのセクタで形成されている。領域41は、記録領域30の内周側の隣接トラックにおける領域である。領域42は、記録領域30の外周側の隣接トラックにおける領域である。領域41、及び領域42は記録領域30に隣接する領域であることから、記録素子10による記録領域の拡大の影響を受ける領域、つまり記録素子10による誤記録が発生しうる領域である。あるいは、衝撃・振動による記録再生ヘッド1の位置ずれ等に起因する誤記録が発生しうる領域である。つまり、後述する領域43(隣接領域)、領域44(隣接領域)と共に誤記録される可能性が高い領域である。
【0077】
領域43、および領域44は、記録領域30と同一トラックにあり、それぞれ記録開始地点31より下流方向側の領域、または記録終了地点32より上流方向側の領域である。領域43、および領域44のトラック方向の長さは自由に設定してよいが、少なくとも数バイトの情報量に相当する長さが必要であり、記録再生の最小単位である1つのセクタ、あるいは1つのクラスタの長さとすることもできる。
【0078】
記録データ量、または記録動作を開始する前に設定した記録領域30の場所によっては、記録領域30が、サーボ・データ領域6をまたぐ場合とまたがない場合とがある。図4(a)、および図4(b)は、記録領域30がサーボ・データ領域6をまたがない場合を示す。一方、図4(c)は、記録領域30がサーボ・データ領域6をまたぐ場合を示す。
【0079】
図4(c)に示すように、記録領域30がサーボ・データ領域6をまたぐ場合は、分断された記録領域30にあわせて、領域41〜44を図4(d)のように設定する。つまり、記録領域30に含まれる各セクタに対して、内周側、および外周側に配置されたセクタからなる領域をそれぞれ領域41、領域42とする。さらに、記録領域30に対して下流方向側の領域43、および上流方向側の領域44は、複数に分断された記録領域30にあわせて複数設けられている。
【0080】
以上のように、サーボ・データ領域6が、記録領域30の上流方向側、あるいは下流方向側、若しくは記録領域30に挟まれた領域に存在する場合には、記録トラック22上のサーボ・データ領域6の一部または全部の領域が領域43、あるいは領域44であると考えればよい。
【0081】
本実施の形態では、記録領域30、およびその周辺部は上述したように設定される。なお、正常記録時には、記録は記録領域30のみに行われる。その他の領域に記録が行われた場合は誤記録として扱う。そして、誤記録が生じやすい領域は、記録領域30の周辺部、すなわち領域41〜44である。
【0082】
上記構成において、実施の形態1に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置の動作、及び磁気記録再生方法を説明する。より具体的には、実施の形態1に係る磁気記録再生装置の動作、及び磁気記録再生方法は、隣接トラックにおけるクロスライトの検知と、クロスライトによって失われた記録情報の復旧と、に大別される。クロスライトの検知とは、記録前の磁気的情報のバックアップを取りつつ、隣接トラックが誤記録されたか否かを常に監視し、誤記録の有無を判断する動作である。また、記録情報の復旧とは、誤記録されたと判断した領域の磁気的情報を磁気記録媒体に書き込む動作のことをいう。
【0083】
まず、隣接トラックにおけるクロスライトの検知について説明する。
【0084】
本実施の形態は、記録再生ヘッド1の構成、および記録動作のアルゴリズムに特徴を有する。一般的な記録動作と本実施の形態に係る磁気記録再生装置の記録動作との違いを明確にするために、まず両者の記録動作について説明する。
【0085】
以下、一般的に行われる記録動作の流れを説明する。
1.記録イベントが発生する。
2.磁気記録媒体2のどの領域に記録するかを判断し、記録領域30を決定する。
3.記録素子10により記録領域30に記録情報を記録する。
4.スタンバイ状態へ移行する。
【0086】
これに対して、本実施の形態に係る磁気記録再生装置の記録動作は以下の通りである。
1.記録イベントが発生する。
2.磁気記録媒体2のどの領域に記録するかを判断し、記録領域30を決定する。
3.誤記録が生じうる領域を再生する。
4.記録素子10にて記録領域30を記録する。
5.誤記録が生じうる領域を再生する。
6.上記3、5で再生した磁気的情報を比較し、誤記録されたか否か判断する。
7.スタンバイ状態へ移行する。
【0087】
詳細な動作アルゴリズムは後述するが、本実施の形態では、一般的に行われている記録動作を上記のように変更することにより、記録時に生じうる誤記録を検知することが可能となる。なお、本実施の形態では、記録再生ヘッド1の構成と記録再生手順とを工夫することにより、上記処理を行うのに要する時間を短縮することができる。以上が本実施の形態に係るクロスライトの検知手順の概要である。
【0088】
図5は、記録領域30が連続する場合(図4(b))の、クロスライトの検知についての具体的な動作アルゴリズムのフローチャートを示す。なお、記録領域30が分断された場合(図4(d))の動作アルゴリズムについては後述する。
【0089】
図6(a)〜(f)は、記録再生動作中の記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係を示す図である。図6(a)が示すように、再生素子11は、記録トラック22に対応する位置に、再生素子12は、記録素子10に対して内周側の隣接トラック21に対応する位置に、再生素子13は、記録素子10に対して外周側の隣接トラック23に対応する位置に、それぞれ配設されている。そして、再生素子11〜13は記録素子10に対して下流方向側に配設されている。また、再生素子11、12、13は、その順番で上流方向から配置している。なお、図6では領域43、および領域44は、説明の便宜のため省略している。また、図6における矢印は、磁気記録媒体2の移動方向を示す。
【0090】
以下、クロスライトの検知についての動作手順を図5、および図6に基づいて説明する。
【0091】
(ステップ1)
図6(a)に示す記録素子10、再生素子11〜13、および磁気記録媒体2の位置関係において、再生素子12により領域41の再生が開始する。これは、制御回路53が、アドレス検出回路55等からの情報を元に、磁気記録媒体のどの場所に再生素子12が位置しているかを計算し、領域41の下流端に再生素子12が位置したときに再生素子12の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子12による再生はステップ3まで継続する。ここで、領域41から再生した記録情報を磁気的情報S(第1磁気的情報)とする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報Sの送り先を選択し、そのうえで磁気的情報Sが記録部51に記録される。その記録が領域41における磁気的情報Sのバックアップとなる。
【0092】
(ステップ2)
ステップ1から時間が経過し、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係が図6(b)に示す状態になると、再生素子13により領域42の再生が開始する。これは、再生素子13が領域42の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子13の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子13による再生はステップ4まで継続する。ここで、領域42から再生した記録情報を磁気的情報T(第1磁気的情報)とする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報Tの送り先を選択し、そのうえで磁気的情報Tが記録部51に記録される。その記録が領域42における磁気的情報Tのバックアップとなる。
【0093】
(ステップ3)
ステップ2から時間が経過し、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係が図6(c)に示す状態になると、領域41の再生が終了する。これは、再生素子12が領域41の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子12の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0094】
(ステップ4)
ステップ3から時間が経過し、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係が図6(d)に示す状態になると、領域42の再生が終了する。これは、再生素子13が領域42の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子13の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0095】
(ステップ5)
磁気記録媒体を少なくとも1周回転させる。
【0096】
(ステップ6)
記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係が図6(e)に示す状態になると、記録素子10による記録領域30への記録が開始する。記録素子10による記録はステップ9まで継続する。これは、記録素子10が記録開始地点31に位置したときに、制御回路53が、記録素子10の記録を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0097】
(ステップ7)
ステップ6から時間が経過し、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係が図6(a)に示す状態になると、再生素子12により領域41の再生が開始する。これは、再生素子12が領域41の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子12の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子12による再生はステップ10まで継続する。ここで、領域41から再生した記録情報を磁気的情報U(第2磁気的情報)とする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報Uの送り先を選択し、磁気的情報Uが比較回路52に送られる。
【0098】
(ステップ8)
ステップ7から時間が経過し、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係が図6(b)に示す状態になると、再生素子13により領域42の再生が開始する。これは、再生素子13が領域42の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子13の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子13による再生はステップ11まで継続する。ここで、領域42から再生した記録情報を磁気的情報V(第2磁気的情報)とする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報Vの送り先を選択し、磁気的情報Vが比較回路52に送られる。
【0099】
(ステップ9)
ステップ8から時間が経過し、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係が図6(f)に示す状態になると、記録領域30への記録が終了する。これは、記録素子10が記録終了地点32に位置したときに、制御回路53が、記録素子10の記録を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0100】
(ステップ10)
ステップ9から時間が経過し、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係が図6(c)に示す状態になると、領域41の再生が終了する。これは、再生素子12が領域41の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子12の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0101】
(ステップ11)
ステップ10から時間が経過し、記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係が図6(d)に示す状態になると、領域42の再生が終了する。これは、再生素子13が領域42の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子13の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0102】
(ステップ12)
得られた磁気的情報Sと磁気的情報Uとを、および磁気的情報Tと磁気的情報Vとをそれぞれ比較回路52により比較し、異なる否かを判断する。比較処理の例については、後述のステップ31〜ステップ34において説明する。
【0103】
(ステップ13)
ステップ12において比較の結果が異なると判断された場合、比較結果が異なるとの信号が比較回路52から制御回路53に送られる。制御回路53は、クロスライトされたと検知し、その磁気記録媒体2のクロスライトされたと判断した領域の位置情報を取得し、データの復旧作業に移行する。
【0104】
(ステップ14)
ステップ12における比較の結果が同一であると判断された場合、比較結果が同一であるとの信号が比較回路52から制御回路53に送られる。制御回路53は、正常に記録されたと判断する。
【0105】
記録領域30が分断された場合(図4(d))においては、磁気記録媒体を1周回転させるステップ5までにステップ1〜ステップ4を繰り返し行い、すべての領域41、及び領域42の再生を行えばよい。同様に、ステップ6〜ステップ11を繰り返し行い、すべての記録領域30への記録とすべての領域41、及び領域42の再生を行えばよい。
【0106】
ここで、ステップ1、及びステップ2に記載したバックアップについて説明する。本願では、記録素子10による記録の際にクロスライトが生じ、記録トラック22に隣接するトラック21・23へ上書きがなされる問題を扱っている。そのため、記録素子10による記録が行われる前の隣接トラック21・23の記録情報である磁気的情報S、および磁気的情報Tを取得し記録部に記録する行為がバックアップに相当する。クロスライトがなされ、隣接トラック21・23の記録情報が失われたとき、バックアップした記録情報に基づいて、記録情報が失われた領域の復旧を行うことができる。なお、記録情報が失われた領域の復旧の動作については後述する。
【0107】
上記構成において、実施の形態1に係る記録再生ヘッド、磁気記録再生装置、及び磁気記録再生方法による効果を説明する。
【0108】
記録素子、および記録素子と同一のトラックに配設された再生素子によって構成される従来の記録再生ヘッドを用いて、クロスライトを検知することは可能である。しかしながら、従来の一般的な記録再生ヘッドは再生素子を1つ有するのみであり、磁気記録媒体が1周する間に再生できるのは1つの領域のみである。そのため磁気的情報S、および磁気的情報Tを得た後、記録素子によって記録し、その後、磁気的情報U、および磁気的情報Vを得るために、それぞれ磁気記録媒体を1周ずつ回転させるために計5周回転させる必要がある。つまり、クロスライトの検知に余計に時間を費やすことになる。一方、実施の形態1では、図1に示すように、隣接トラック21・23に対応する位置に再生素子12・13を配置する構成とすることにより、ステップ1〜ステップ11で説明したように、磁気記録媒体の回転を2周に抑えることができ、クロスライトの検知に費やす時間を短縮することができる。
【0109】
なお、ステップ12における磁気的情報の比較において、磁気的情報はA/D変換後のデジタル信号を用いる。ここで、デジタル信号による磁気的情報の比較手段について、図7を用いて説明する。図7は、記録前に再生したバックアップ用の再生信号と記録後に再生した再生信号とを、デジタル信号として比較する動作アルゴリズムを説明する図である。この動作アルゴリズムに基づいてクロスライトの検知が可能となる。
【0110】
(ステップ31)
比較回路52において、磁気的信号Sおよび磁気的信号Uに対するデコードが行われ、それにより磁気的信号SおよびUがデジタル信号に変換される。磁気記録媒体2から再生した磁気的信号S、および磁気的信号Uは、磁気記録媒体2からの漏れ磁界を再生素子の磁気抵抗素子などで読み取った信号であり、電流の強弱で情報が表現されるアナログの信号である。この信号をアンプで増幅し、ハイパスフィルタなどにより波形を整形した後、A/D変換を含む一般的なデコードを行い、それによりアナログ信号をデジタル信号に変換する。デジタル信号とは磁気的情報が0または1で表現された信号であり、デジタル回路にて処理できる信号である。
【0111】
(ステップ32)
比較回路52においてデジタル信号となった磁気的信号S、および磁気的信号Uに対するエラー訂正処理が行われる。一般的に行われているエラー訂正コードをもとにエラー訂正処理を行う。
【0112】
(ステップ33)
比較回路52において、磁気的信号Sおよび磁気的信号Uのそれぞれのビット情報に対する排他的論理和が取られる。ここで、ステップ31・32において、磁気的情報Sおよび磁気的信号Uは、0または1で表されたデータ列となっている。そして、磁気的情報Sと磁気的信号Uとに対して、先頭データから順に排他的論理和をとる。
【0113】
例えば、磁気的情報Sおよび磁気的信号Uが以下のようなデータ列となっているとする。
磁気的情報S:01001110010101・・・
磁気的情報U:01001101110101・・・
これを先頭データから順に排他的論理和を取ると、
排他的論理和:00000011100000・・・
となる。
【0114】
なお、磁気的信号Sは、磁気的信号Uに対して時間的に前にデコードが完了する。そのため、遅延回路を用いて磁気的信号Sを遅延させる、あるいは磁気的信号Sを一時的に記録部51に保持する、といった処理を行う必要がある。それにより磁気的信号Sおよび磁気的信号Uは、排他的論理和の回路に入力されるタイミングが一致する。
【0115】
(ステップ34)
比較回路52にて、排他的論理和の結果がすべて0であったと判断された場合、磁気的信号Sと磁気的信号Uとが同一であるとみなされ、ステップ14に移行する。排他的論理和の結果に1が存在する場合、ステップ13に移行する。
【0116】
磁気的信号Sを再生する時刻と磁気的信号Uを再生する時刻との間における信号に相違がなければ、両者の信号は全く同一の領域から読み取った信号であるため、その磁気的情報も同一となる。そのため、磁気的信号Sと磁気的信号Uとの排他的論理和はすべて0となり、誤記録が検知されないことに相当するステップ14に移行する。逆に、磁気的信号Sを再生する時刻と磁気的信号Uを再生する時刻との間における信号に相違がある、すなわち誤記録がなされたときは、磁気的信号Sと磁気的信号Uとの排他的論理和はすべて0にならず、誤記録が検知されたとしてステップ13に移行する。因みに、ステップ33において示したデータ列の例では、排他的論理和の結果に1が存在するため、ステップ13に移行する。
【0117】
ステップ31〜ステップ34では、磁気的情報Sと磁気的情報Uとの比較処理を行っているが、磁気的情報Tと磁気的情報Vとの比較処理も同様に行う。
【0118】
ステップ34の結果から、ビット列の中に1が存在する場合、クロスライトが検知されたと判断する。つまり、磁気的情報Sを取得する時刻と磁気的情報Uを取得する時刻との間に記録領域30への記録動作しか行われていないため、仮に領域41に変化が生じたという比較結果を得た場合、それは記録領域30への記録時においてクロスライトが生じたことを意味する。
【0119】
なお、磁気的信号S、および磁気的信号Uに対するエラー訂正処理(ステップ32)を省略してもよい。しかしながら、磁気的情報S、および磁気的情報Uを取得する際に読み取りエラーが発生する可能性があり、読み取りエラーのために誤ってクロスライトとして検知してしまうこともある。従って、エラー訂正処理を行うことが望ましい。
【0120】
以上、ステップ1〜ステップ14の動作を行うことにより、デジタル信号によるクロスライトの検知が可能となる。
【0121】
上記構成において、クロスライトによって消失した記録情報を復旧する際の動作を説明する。なお、記録情報を復旧するうえで、記録部51は必須の構成となる。
【0122】
クロスライトによって消失した記録情報を復旧する際の基本的な手順は以下の通りである。
1.誤記録される前の記録情報のバックアップを予め取得する。
2.テストライトを行い、正常な記録ができるようにする。
3.誤記録された領域に誤記録される前の記録情報を書き込み、誤記録前の状態に戻す。
【0123】
図8は、誤記録の検知がなされた後の、記録情報の復旧の動作アルゴリズムを説明する図である。以下、図8について説明する。
【0124】
(ステップ41)
テストライトを行い、正常に記録できるよう記録条件を整える。テストライトは一般に使用されている方法を用いる。
【0125】
(ステップ42)
制御回路53は、クロスライトされたと検知すると、その磁気記録媒体2上のクロスライトされたと判断した領域の位置情報を取得し、その位置に記録再生ヘッドを移動するようヘッド駆動回路54を制御する。
【0126】
(ステップ43)
制御回路53が、バックアップとして取得した磁気的情報S、または磁気的情報Tを記録部51から取得し、誤記録されたと判断した磁気記録媒体の位置に上書きするようヘッド駆動回路54を制御し、誤記録する以前の状態に復旧する。
【0127】
テストライトとは、記録素子に流す電流等の記録条件を変化させながら磁気記録媒体に試験的に記録を行い、最適な記録条件を設定する方法である。以下、ステップ41におけるテストライトの一例を説明する。
【0128】
一例として、記録領域とは別のトラック、例えば磁気記録媒体の最内周または最外周の3トラックを用いて試験的に記録を行う。ここでは便宜上、内周側のトラックから順に、トラックa、トラックb、及びトラックcとする。テストライトの手順は以下の通りである。
1.トラックa、トラックb、及びトラックcを磁気的に消去する。
2.トラックbに対して、適当な磁気的情報のテストパターンを記録する。
3.トラックa、トラックb、及びトラックcを再生する。
4.再生信号について評価する。正常記録されていれば、トラックa、及びトラックcは、それぞれ手順1で消去されたままの状態であり、トラックbには手順2で記録されたテストパターンが再生信号として出力される。正常記録されていればテストライトは終了する。正常記録されていなければ、記録素子に印加する電力を変化させて手順1から再び繰り返す。
【0129】
上記のステップ41〜ステップ43による効果は次の通りである。つまり、誤記録により記録情報が失われたとしても、事前に取得していた誤記録された領域のバックアップを記録部から取得し、磁気記録媒体2に書き込むことにより、失われた記録情報を復旧することができる。
【0130】
なお、図1に示した記録再生ヘッド1を用いることにより、複数トラックの同時再生が可能となる。また、記録条件を調整するために一般的に行われているテストライトの工程において、前述のようにトラックa、トラックb、及びトラックcを再生する必要があるが、該複数トラックの再生を同時に行うことにより、テストライトに要する時間を短縮することができる。
【0131】
図4(b)、および図4(d)では、領域41、及び領域42の上流方向側の端、下流方向側の端は、それぞれ記録終了地点32、および記録開始地点31に対してトラック幅方向に並んで記載されているが、領域41、及び領域42は、それぞれ上記に示した領域に限定されない。つまり、領域41、及び領域42の上流方向側の端をより上流方向側に、下流方向側の端をより下流方向側に広げることにより、誤記録の検知、および記録情報の復旧を行う領域を広げることもできる。広げる長さは任意であり、例えば数バイトの情報量に相当する長さであっても、1セクタに相当する長さであっても、また、1クラスタに相当する長さであってもよい。
【0132】
また、例えば図1(b)では再生素子11が記録素子10に対して下流方向側に位置しているが、上流方向側に位置してもよい。同様に、再生素子12は再生素子13に対して上流方向側に位置しているが、下流方向側に位置していてもよく、後述する図9(a)のように、再生素子12と再生素子13とが、トラック幅方向に並んでいてもよい。また、図9(b)のように、再生素子11〜13がすべてトラック幅方向に並んでいてもよい。しかしながら、トラック幅方向における各再生素子の長さは、磁気記録媒体の1トラックにおけるトラック幅よりも長いため、各再生素子をトラック幅方向に並べて配設することは通常困難である。そのため、図1(b)のように、再生素子11〜13を互いに並べることなく、異なる位置に配置することが望ましい。
【0133】
再生素子13が再生素子12に対して上流方向側にある場合、ステップ1とステップ2、ステップ3とステップ4、ステップ7とステップ8、及びステップ10とステップ11の順序は逆になる。また、再生素子12と再生素子13との位置関係が、図9(a)または図9(b)のようにトラック幅方向に並んでいるのであれば、ステップ1とステップ2、ステップ3とステップ4、ステップ7とステップ8、及びステップ10とステップ11は同時に実行される。
【0134】
クロスライトの検知のみを行い、記録情報の復旧を行わない場合には、記録部51は必ずしも必要ではない。この場合、記録部51の代わりに遅延回路を用いることにより、ステップ1及びステップ2で得た磁気的情報Sおよび磁気的情報Tをステップ12まで遅延させることになる。このようにして、記録部51を介することなくステップ12までに要する時間を短縮することができる。しかしながら、クロスライトによって失われた記録情報を復旧するために、磁気的情報を分岐させて、バックアップのための記録部51への記録と並行してステップ12までの処理を行うことが望ましい。
【0135】
磁気的情報S、および磁気的情報Tに加えて、磁気的情報U、および磁気的情報Vを記録部51に記録してもよい。この場合、記録部51から記録情報を取得することによって、ステップ11の直後でも、あるいは任意の時間後でも、ステップ12以降の処理を行うことができる。そのため、何らかの事情でステップ11の直後にステップ12を処理できなかった場合でも、正常にステップ12以降の処理を行うことができ、また、磁気記録媒体2のアイドル時間等を利用してステップ12以降を処理することにより他の動作への負担を軽減することができる。
【0136】
再生素子12、および再生素子13は、記録素子10の隣接トラックに対応させても、2つ以上隣りのトラックに対応させても、また、図1に記載する記録再生ヘッド1の構成に新たな再生素子を追加して、新たなトラックに対応させてもよい。
【0137】
また、各再生素子を、記録素子10に対して内周側の隣接トラック21か外周側の隣接トラック23のどちらか一方に配置してもよい。しかし、内周側、および外周側の両隣接トラックとも同時にクロスライトされる可能性が高いため、記録素子10に対して内周側、および外周側の両隣接トラックに再生素子を対応させることが望ましい。
【0138】
ステップ42、及びステップ43にて、磁気的情報S、あるいは磁気的情報Tを磁気記録媒体2の誤記録されたと判断された領域に上書きする代わりに、別の記録領域に記録してもよい。しかし、誤記録されたと判断された領域に上書きを行った場合、記録情報の復旧に伴うアドレス情報の変更が不要となり、誤記録以前の状態に復旧することが可能となる。
【0139】
ここまでに述べた誤記録の検知、および記録情報の復旧は、熱アシスト記録方式に対しても同様の効果を得る。熱アシスト記録方式のための加熱手段は、記録再生ヘッド1、あるいは磁気記録再生装置、若しくはその両方に設けてもよい。熱アシスト記録方式のための加熱手段を用いた場合の記録再生ヘッド1の構成を図10に示す。図10では、記録再生ヘッド1が、加熱手段としてレーザを有している。記録再生ヘッド1は、レーザ照射部91と、レーザの絞り込みもしくは近接場光発生のための微小開口部92と、を含む。また、図10では、加熱手段はレーザ照射としているが、電界放出であっても、他の加熱手段であってもよい。
【0140】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置の構成について、以下説明する。
【0141】
実施の形態2に係る磁気記録再生装置のブロック構成図は、実施の形態1と同様、図2によって示される。図11は、実施の形態2に係る記録再生ヘッド1の構成を示す。実施の形態1に係る記録再生ヘッド1は、再生素子12、および再生素子13が記録素子10の下流方向側に配設されている。一方、実施の形態2では、再生素子12、および再生素子13が記録素子10の上流方向側に配設されている点で、実施の形態1と異なる。なお、図1を参照して前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は省略する。
【0142】
上記構成において、実施の形態2に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置の動作、及び磁気記録再生方法を説明する。なお、実施の形態2に係る磁気記録再生装置の動作、及び磁気記録再生方法は、実施の形態1と同様に、隣接トラックにおけるクロスライトの検知と、クロスライトによって失われた隣接トラックにおける記録情報の復旧と、に大別される。そこで、以下、隣接トラックにおけるクロスライトの検知について説明する。
【0143】
以下、記録領域30が連続する場合(図4(b))の動作アルゴリズムを示す。なお、記録領域30が分断された場合(図4(d))の説明は後述する。
【0144】
実施の形態2では、実施の形態1で述べたステップ1〜ステップ14の代わりに、ステップ51〜ステップ64の動作を行う。図12は、その動作アルゴリズムのフローチャートである。また、図13(a)〜(f)は、それぞれの記録再生動作における記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係を示す。便宜上、図13では領域43、および領域44を省略している。図13における矢印は、磁気記録媒体2の移動方向を示す。
【0145】
(ステップ51)
図13(a)における記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係において、再生素子12により領域41の再生が開始する。これは、再生素子12が領域41の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子12の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子12による再生はステップ54まで継続する。ここで、領域41から再生した記録情報を磁気的情報Sとする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報Sの送り先を選択し、磁気的情報Sが記録部51に記録される。その記録が領域41における磁気的情報Sのバックアップとなる。
【0146】
(ステップ52)
ステップ51から時間が経過し、図13(b)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子13により領域42の再生が開始する。これは、再生素子13が領域42の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子13の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子13による再生はステップ55まで継続する。ここで、領域42から再生した記録情報を磁気的情報Tとする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報Tの送り先を選択し、磁気的情報Tが記録部51に記録される。その記録が領域42における磁気的情報Tのバックアップとなる。
【0147】
(ステップ53)
ステップ52から時間が経過し、図13(c)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、記録素子10により記録領域30の記録が開始する。そして、記録素子10による記録はステップ56まで継続する。これは、記録素子10が記録開始地点31に位置したときに、制御回路53が、記録素子10の記録を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0148】
(ステップ54)
ステップ53から時間が経過し、図13(d)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、領域41の再生が終了する。これは、再生素子12が領域41の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子12の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0149】
(ステップ55)
ステップ54から時間が経過し、図13(e)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、領域42の再生が終了する。これは、再生素子13が領域42の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子13の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0150】
(ステップ56)
ステップ55から時間が経過し、図13(f)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、記録領域30への記録が終了する。これは、記録素子10が記録終了地点32に位置したときに、制御回路53が、記録素子10の記録を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0151】
(ステップ57)
磁気記録媒体を少なくとも1周回転させる。
【0152】
(ステップ58)
図13(a)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子12により領域41の再生が開始する。これは、再生素子12が領域41の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子12の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子12による再生はステップ60まで継続する。ここで、領域41から再生した記録情報を磁気的情報Uとする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報Uの送り先を選択し、磁気的情報Uが比較回路52に送られる。
【0153】
(ステップ59)
ステップ58から時間が経過し、図13(b)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子13により領域42の再生が開始する。これは、再生素子13が領域42の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子13の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子13による再生はステップ61まで継続する。ここで、領域42から再生した記録情報を磁気的情報Vとする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報Vの送り先を選択し、磁気的情報Vが比較回路52に送られる。
【0154】
(ステップ60)
ステップ59から時間が経過し、図13(d)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、領域41の再生が終了する。これは、再生素子12が領域41の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子12の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0155】
(ステップ61)
ステップ60から時間が経過し、図13(e)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、領域42の再生が終了する。これは、再生素子13が領域42の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子13の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0156】
(ステップ62)
以上のステップによって得られた磁気的情報Sと磁気的情報Uとを、および磁気的情報Tと磁気的情報Vとをそれぞれ比較回路52により比較し、異なるか否かを判断する。比較処理は、ステップ31〜ステップ34において行った比較処理と同一である。
【0157】
(ステップ63)
ステップ62における比較の結果が異なると判断された場合、比較結果が異なるとの信号が比較回路52から制御回路53に送られる。制御回路53は、クロスライトされたと検知し、その磁気記録媒体上のクロスライトされたと判断した領域の位置情報を取得し、データの復旧作業に移行する。
【0158】
(ステップ64)
ステップ62における比較の結果が同一であると判断された場合、比較結果が同一であるとの信号が比較回路52から制御回路53に送られ、制御回路53は、正常に記録されたと判断する。
【0159】
記録領域30が分断された場合(図4(d))においては、磁気記録媒体を1周回転させるステップ57までにステップ51〜ステップ56を繰り返し行い、すべての記録領域30への記録、及びすべての領域41、及び領域42の再生を行えばよい。同様に、ステップ58〜ステップ61を繰り返し行い、すべての領域41、及び領域42の再生を行えばよい。
【0160】
上記構成において、実施の形態2に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置、及び磁気記録再生方法の効果を説明する。なお、実施の形態2は、実施の形態1に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置、及び磁気記録再生方法の効果をすべて含み、さらに以下の効果を有する。従って、実施の形態1に係る上記効果に関する説明は省略する。
【0161】
実施の形態2では、ステップ51〜ステップ56に示すように、バックアップ作業と記録動作とを並列して動作させることができる。そのため、実施の形態1に比べ、磁気記録媒体2への記録前のバックアップ作業に時間を費やさずに済む。また、ステップ58〜ステップ61の2周目の動作をハードディスクのアイドル時間などを利用して一括して処理することができ、より柔軟な対応が可能となる。
【0162】
さらに、図13(a)が示すように、再生素子12・13を記録素子10よりも上流側に設置することにより、1周目に磁気記録媒体2に記録することができ、実施の形態1のように記録前のバックアップ作業に時間を費やす必要がなくなる。そのため、実施の形態1では、記録イベントが発生してからバックアップ作業のため磁気記録媒体2を1周させなければならず、記録するまでの間、記録バッファ(記録するための磁気的情報を保持しておくメモリ)に記録を保持する必要があった。しかしながら、実施の形態2では、バックアップ作業と記録動作とを並列して動作させることができ、記録バッファに記録を保持する時間を短縮することができ、記録バッファを圧迫しなくて済むという効果を奏する。
【0163】
また、実施の形態2では、クロスライトの検知のみを行い、記録情報の復旧を行わない場合には、実施の形態1と同様に記録部51は必ずしも必要ではない。この場合、記録部51の代わりに遅延回路を用いることにより、ステップ51及びステップ52で得た磁気的情報Sおよび磁気的情報Tをステップ62まで遅延させることになる。このようにして、記録部51を介することなくステップ62までに要する時間を短縮することができる。
【0164】
しかしながら、記録部51を用いない場合でも、実施の形態1とは異なり、磁気的情報Sおよび磁気的情報Tの取得と記録動作とを並列して行うことができる。よって記録動作までに要する時間を実施の形態1よりも短縮することができる。
【0165】
なお、記録情報を復旧するうえで、記録部51は必須の構成となる。この場合、ステップ42の「ステップ13にて誤記録されたと判断」を「ステップ63にて誤記録されたと判断」と読み替えればよい。また、図7では、ステップ11、ステップ12、ステップ13、ステップ14を、それぞれステップ61、ステップ62、ステップ63、ステップ64と読み替えればよい。
【0166】
再生素子13が再生素子12よりも上流に位置するときは、ステップ51とステップ52、ステップ54とステップ55、ステップ58とステップ59、及びステップ60とステップ61の順序が入れ替わる。また、再生素子12と再生素子13との位置関係がトラック幅方向に並んでいるのであれば、ステップ51とステップ52、ステップ54とステップ55、ステップ58とステップ59、及びステップ60とステップ61は同時に実行される。
【0167】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置の構成について、以下説明する。
【0168】
実施の形態1、2は隣接トラックへのクロスライトを検知し、記録情報の復旧を行うものであったが、実施の形態3は、さらに記録トラックにおける記録領域30の下流方向側に位置する領域43、および上流方向側に位置する領域44の誤記録を検知する構成である。つまり、実施の形態3の構成は、隣接トラックに配設された再生素子によって隣接トラックの誤記録を検知する構成と併用して使用される。ただし、隣接トラックに配設された再生素子によって隣接トラックの誤記録を検知する構成は上記実施の形態1、2において説明しているため、ここではその記載を省略する。
【0169】
図14は、実施の形態3に係る磁気記録再生装置のブロック構成図を示す。なお、記録再生ヘッド1の構成は、図1あるいは図11の記録再生ヘッド1の構成を用いることができる。つまり、図1あるいは図11のどちらの構成を用いても、実施の形態3に係る記録再生ヘッド、磁気記録再生装置、及び磁気記録再生方法の効果が発揮される。図14が示すように、再生素子によって再生された磁気的情報は、記録再生ヘッド1からスイッチング回路56およびアドレス検出回路55に送られる。なお、図1を参照して前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は省略する。
【0170】
上記構成において、実施の形態3に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置の動作、及び磁気記録再生方法を説明する。なお、実施の形態3に係る磁気記録再生装置の動作、及び磁気記録再生方法は、記録トラックにおける誤記録の検知と、誤記録によって失われた記録トラックの記録情報の復旧と、に大別される。より具体的には、図4(b)、および図4(d)における領域43、および領域44に対する誤記録の検知、および記録情報の復旧に関するものである。
【0171】
以下、記録領域30が連続する場合(図4(b))の動作アルゴリズムを示す。なお、記録領域30が分断された場合(図4(d))の説明は後述する。
【0172】
図15は、記録再生ヘッド1が図1に示す構成である場合の、記録トラック22の誤記録を検知する動作アルゴリズムのフローチャートである。また、図16(a)〜(f)は、それぞれの記録再生動作における記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係を示す。便宜上、図16では領域41、及び領域42を省略している。また、図16における矢印は、磁気記録媒体2の移動方向を示す。
【0173】
(ステップ71)
図16(a)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子11により領域43の再生が開始する。これは、再生素子11が領域43の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子11による再生はステップ72まで継続する。ここで、領域43から再生した記録情報を磁気的情報W1(第3磁気的情報)とする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報W1の送り先を選択し、磁気的情報W1が記録部51に記録される。その記録が領域43における磁気的情報W1のバックアップとなる。
【0174】
(ステップ72)
ステップ71から時間が経過し、図16(b)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、領域43の再生が終了する。これは、再生素子11が領域43の上流端(=記録開始地点31)に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0175】
(ステップ73)
ステップ72から時間が経過し、図16(c)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子11により領域44の再生が開始する。これは、再生素子11が領域44の下流端(=記録終了地点32)に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子11による再生はステップ74まで継続する。ここで、領域44から再生した記録情報を磁気的情報W2(第3磁気的情報)とする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報W2の送り先を選択し、磁気的情報W2が記録部51に記録される。その記録が領域44における磁気的情報W2のバックアップとなる。なお、便宜上、磁気的情報W1と磁気的情報W2とを併せて磁気的情報Wとする。
【0176】
(ステップ74)
ステップ73から時間が経過し、図16(d)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、領域44の再生が終了する。これは、再生素子11が領域44の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0177】
(ステップ75)
磁気記録媒体を少なくとも1周回転させる。
【0178】
(ステップ76)
図16(e)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、記録素子10により記録領域30の記録が開始する。記録素子10による記録はステップ79まで継続する。これは、記録素子10が記録開始地点31に位置したときに、制御回路53が、記録素子10の記録を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0179】
(ステップ77)
ステップ76から時間が経過し、図16(a)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子11により領域43の再生が開始する。これは、再生素子11が領域43の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子11による再生はステップ78まで継続する。ここで、領域43から再生した記録情報を磁気的情報X1(第4磁気的情報)とする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報X1の送り先を選択し、磁気的情報X1が比較回路52(第2比較器)に送られる。
【0180】
(ステップ78)
ステップ77から時間が経過し、図16(b)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、領域43の再生が終了する。これは、再生素子11が領域43の上流端(=記録開始地点31)に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0181】
(ステップ79)
ステップ78から時間が経過し、図16(f)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、記録領域30への記録が終了する。これは、記録素子10が記録終了地点32に位置したときに、制御回路53が、記録素子10の記録を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0182】
(ステップ80)
ステップ79から時間が経過し、図16(c)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子11により領域44の再生が開始する。これは、再生素子11が領域44の下流端(=記録終了地点32)に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子11による再生はステップ81まで継続する。ここで、領域44から再生した記録情報を磁気的情報X2(第4磁気的情報)とする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報X2の送り先を選択し、磁気的情報X2が比較回路52に送られる。なお、便宜上、磁気的情報X1と磁気的情報X2とを併せて磁気的情報Xとする。
【0183】
(ステップ81)
ステップ80から時間が経過し、図16(d)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、領域44の再生が終了する。これは、再生素子11が領域44の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0184】
(ステップ82)
得られた磁気的情報Wと磁気的情報Xとを比較回路52により比較し、異なるか否かを判断する。比較処理は、ステップ31〜ステップ34において行った比較処理と同一である。
【0185】
(ステップ83)
ステップ82における比較の結果が異なると判断された場合、比較結果が異なるとの信号が比較回路52から制御回路53に送られる。制御回路53は、クロスライトされたと検知し、その磁気記録媒体2のクロスライトされたと判断した領域の位置情報を取得し、データの復旧作業に移行する。
【0186】
(ステップ84)
ステップ82における比較の結果が同一であると判断された場合、比較結果が同一であるとの信号が比較回路52からに制御回路53に送られる。制御回路53は、正常に記録されたと判断する。
【0187】
記録領域30が分断された場合(図4(d))においては、磁気記録媒体を1周回転させるステップ75までにステップ71〜ステップ74を繰り返し行い、すべての領域43、および領域44の再生を行えばよい。同様に、ステップ76〜ステップ81を繰り返し行い、すべての記録領域30への記録と、すべての領域43、および領域44の再生を行えばよい。
【0188】
次に、ステップ71、及びステップ73に記載したバックアップについて説明する。実施の形態3では、記録素子10による記録の際に、記録領域30と同一トラックであって、その下流方向側近傍の領域43、および上流方向側近傍の領域44へ上書きがなされた場合の問題を扱っている。そのため、記録領域30への記録が行われる前の領域43、および領域44に対応する磁気的情報Wを取得し、記録部51に記録することがバックアップに相当する。誤記録がなされ、領域43、および領域44の記録情報が失われたとき、バックアップした記録情報を元に、記録情報が失われた領域の復旧が行われる。
【0189】
上記構成において、実施の形態3に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置、及び磁気記録再生方法の効果を説明する。
【0190】
上記動作アルゴリズムを用いることにより、実施の形態1、2で述べた隣接トラックへのクロスライトの検知に加えて、記録トラック22への誤記録を検知することが可能となる。なお、記録情報の復旧を実施するためには、記録部51は必須の構成となる。この場合、ステップ42の「ステップ13にて誤記録されたと判断」を「ステップ83にて誤記録されたと判断」に、ステップ43の「磁気的情報S、または磁気的情報T」を「磁気的情報W」と読み替えればよい。また、図7では、ステップ11、ステップ12、ステップ13、ステップ14をそれぞれ、ステップ81、ステップ82、ステップ83、ステップ84と読み替えればよい。
【0191】
ステップ71、及びステップ73では、遅延回路を用いることにより、ステップ82まで磁気的情報Wを遅延させてもよい。その場合、記録部51を介することなくステップ82までに要する時間を短縮することができる。しかしながら、クロスライトによって失われた記録情報を復旧するために、磁気的情報を分岐させて、バックアップのための記録部51への記録と並行してステップ82までの処理を行うことが望ましい。
【0192】
誤記録の検知のみを行い記録情報の復旧を行わない場合には、記録部51は必ずしも必要ではない。この場合、記録部51の代わりに遅延回路を用いて、磁気的情報Wをステップ82まで遅延させることになる。
【0193】
磁気的情報Wと共に磁気的情報Xを記録し、記録部51から磁気的情報を取得することにより、ステップ82以降の処理は任意の時間後に行うことができる。そのため、何らかの事情でステップ82以降の処理が実行できなかった場合においても、誤記録を検知することができ、ハードディスクのアイドル時間等を利用してステップ82以降を処理することにより他の動作への負担を軽減することができる。
【0194】
磁気的情報Xを得るとき、領域43、および領域44と共に記録領域30を再生し、記録領域30に対応する磁気的情報と、記録素子10にて記録した記録情報とを比較することにより、正常に記録されたか否かを検知することができる。この動作は、領域43、および領域44における誤記録の検知と並行して行うことが望ましい。また、記録した記録情報はデジタル信号であるので、記録領域30に対応する磁気的情報をA/D変換して、デジタル信号として比較することが望ましい。このとき、記録した記録情報と記録領域30とを再生した磁気的情報が異なっていれば、磁気記録媒体2に記録情報を書き込む記録条件が不適切であると判断され、最適な書き込み条件とするテストライトの作業に移行する。
【0195】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置の構成について、以下説明する。
【0196】
実施の形態4に係る磁気記録再生装置のブロック構成図は、実施の形態3と同様、図14によって示される。図17は、実施の形態4に係る記録再生ヘッド1の構成を示す。実施の形態3では、記録再生ヘッド1は、記録トラックに配設された再生素子11が記録素子10の下流方向側にあった。実施の形態4では、再生素子11が記録素子10の上流方向側に配設されている点で、実施の形態3と異なっている。また、図17では、再生素子12、および再生素子13は記録素子10の上流方向側に位置しているが、記録素子10の下流方向側に位置した場合においても、同様の効果を発揮する。なお、図1を参照して前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は省略する。
【0197】
上記構成において、実施の形態4に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置の動作、及び磁気記録再生方法を説明する。
【0198】
実施の形態4では、実施の形態3と同様に、領域43、および領域44の磁気的情報を、記録領域30に記録する前後において再生し、記録前後の磁気的情報を比較することにより誤記録を検知する。そして、実施の形態4に係る磁気記録再生装置の動作、及び磁気記録再生方法は、実施の形態3と同様に、記録トラックにおける誤記録の検知と、誤記録によって失われた記録トラックにおける記録情報の復旧と、に大別される。以下、記録トラックにおける誤記録の検知についての動作アルゴリズムについて説明する。
【0199】
以下、記録領域30が連続する場合(図4(b))の動作アルゴリズムを示す。なお、記録領域30が分断された場合(図4(d))の説明は後述する。
【0200】
実施の形態4では、実施の形態3で述べたステップ71からステップ84の代わりに、ステップ91からステップ104の動作を行う。図18は、その動作アルゴリズムのフローチャートである。また、図19(a)〜(f)は、それぞれの記録再生動作における記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係を示す。便宜上、図19では領域41、および領域42を省略している。また、図19における矢印は、磁気記録媒体2の移動方向を示す。
【0201】
(ステップ91)
図19(a)に示す記録再生ヘッド1と磁気記録媒体2の位置関係になると、再生素子11により領域43の再生が開始する。これは、再生素子11が領域43の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子11による再生はステップ92まで継続する。ここで、領域43から再生した記録情報を磁気的情報W1とする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報W1の送り先を選択し、磁気的情報W1が記録部51に記録される。その記録が領域43における磁気的情報W1のバックアップとなる。
【0202】
(ステップ92)
ステップ91から時間が経過し、図19(b)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、領域43の再生が終了する。これは、再生素子11が領域43の上流端(=記録開始地点31)に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0203】
(ステップ93)
ステップ92から時間が経過し、図19(c)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、記録素子10により記録領域30の記録が開始する。記録素子10による記録はステップ96まで継続する。これは、記録素子10が記録開始地点31に位置したときに、制御回路53が、記録素子10の記録を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0204】
(ステップ94)
ステップ93から時間が経過し、図19(d)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子11により領域44の再生が開始する。これは、再生素子11が領域44の下流端(=記録終了地点32)に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子11による再生はステップ95まで継続する。ここで、領域44から再生した記録情報を磁気的情報W2とする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報W2の送り先を選択し、磁気的情報W2が記録部51に記録される。その記録が領域44における磁気的情報W2のバックアップとなる。なお、便宜上、磁気的情報W1と磁気的情報W2とを併せて磁気的情報Wとする。
【0205】
(ステップ95)
ステップ94から時間が経過し、図19(e)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、領域44の再生が終了する。これは、再生素子11が領域44の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0206】
(ステップ96)
ステップ95から時間が経過し、図19(f)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、記録領域30への記録が終了する。これは、記録素子10が記録終了地点32に位置したときに、制御回路53が、記録素子10の記録を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0207】
(ステップ97)
磁気記録媒体を少なくとも1周回転させる。
【0208】
(ステップ98)
図19(a)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子11により領域43の再生が開始する。これは、再生素子11が領域43の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子11による再生はステップ99まで継続する。ここで、領域43から再生した記録情報を磁気的情報X1とする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報X1の送り先を選択し、磁気的情報X1が比較回路52に送られる。
【0209】
(ステップ99)
ステップ98から時間が経過し、図19(b)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、領域43の再生が終了する。これは、再生素子11が領域43の上流端(=記録開始地点31)に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0210】
(ステップ100)
ステップ99から時間が経過し、図19(d)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子11により領域44の再生が開始する。これは、再生素子11が領域44の下流端(=記録終了地点32)に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子11による再生はステップ101まで継続する。ここで、領域44から再生した記録情報を磁気的情報X2とする。制御回路53の制御のもと、スイッチング回路56が磁気的情報X2の送り先を選択し、磁気的情報X2が比較回路52に送られる。なお、便宜上、磁気的情報X1と磁気的情報X2とを併せて磁気的情報Xとする。
【0211】
(ステップ101)
ステップ100から時間が経過し、図19(e)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、領域44の再生が終了する。これは、再生素子11が領域44の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子11の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0212】
(ステップ102)
得られた磁気的情報Wと磁気的情報Xとを比較回路52により比較し、異なるか否かを判断する。比較処理は、ステップ31〜ステップ34において行った比較処理と同一である。
【0213】
(ステップ103)
ステップ102における比較の結果が異なると判断された場合、比較結果が異なるとの信号が比較回路52から制御回路53に送られる。制御回路53は、誤記録されたと検知し、その磁気記録媒体2の誤記録がなされたと判断した領域の位置情報を取得し、データの復旧作業に移行する。
【0214】
(ステップ104)
ステップ102における比較の結果が同一であると判断された場合、比較結果が同一であるとの信号が比較回路52から制御回路53に送られる。制御回路53は、正常に記録されたと判断する。
【0215】
記録領域30が分断された場合(図4(d))においては、磁気記録媒体を1周回転させるステップ97までに、ステップ91〜ステップ96を繰り返し行い、すべての記録領域30への記録、及びすべての領域43・44の再生を行えばよい。同様に、ステップ98〜ステップ101を繰り返し行い、すべての領域43・44の再生を行えばよい。
【0216】
上記構成において、実施の形態4に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置、及び磁気記録再生方法の効果を説明する。なお、実施の形態4は、実施の形態3の効果をすべて含み、さらに以下の効果を有する。従って、実施の形態3の効果に関する説明は省略する。
【0217】
実施の形態4では、ステップ91〜ステップ96に示すように、バックアップ作業と記録動作とを並列して動作させることができる。そのため、実施の形態3に比べ、磁気記録媒体2への記録前のバックアップ作業に時間を費やさずに済む。また、ステップ98〜ステップ101の2周目の動作をハードディスクのアイドル時間などを利用して一括して処理することができ、より柔軟な対応が可能となる。
【0218】
また、実施の形態4では、誤記録の検知のみを行い、記録情報の復旧を行わない場合には、実施の形態3と同様に記録部51は必ずしも必要ではない。この場合、記録部51の代わりに遅延回路を用いて、ステップ91及びステップ94で得た磁気的情報Wを、ステップ102まで遅延させればよい。そして、記録部51を介していないため、ステップ102までに要する時間を短縮することができる。
【0219】
しかしながら、記録部51を用いない場合においても、実施の形態3とは異なり、磁気的情報Wの取得と記録動作とを並列して行うことができる。よって記録動作までに要する時間を実施の形態3よりも短縮することができる。
【0220】
なお、記録情報を復旧するうえで、記録部51は必須の構成となる。この場合、ステップ42の「ステップ13にて誤記録されたと判断」を「ステップ103にて誤記録されたと判断」に、ステップ43の「磁気的情報S、または磁気的情報T」を「磁気的情報W」と読み替えればよい。また、図7では、ステップ11、ステップ12、ステップ13、ステップ14をそれぞれ、ステップ101、ステップ102、ステップ103、ステップ104と読み替えればよい。
【0221】
(実施の形態5)
実施の形態5に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置の構成について、以下説明する。
【0222】
実施の形態1、2では、隣接トラックに配設する再生素子は記録素子10の上流方向側、あるいは下流方向側の何れか一方であった。しかしながら、実施の形態5では、再生素子が記録素子10の上流方向側および下流方向側の両側に配設されている点で実施の形態1、2と異なる。
【0223】
以下、本実施の形態5に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置の構成について説明する。図20は、実施の形態5に係る磁気記録再生装置のブロック構成図を示す。記録再生ヘッド1から伸びている矢印は、記録再生ヘッド1が有する再生素子からの磁気的情報の経路を示す。また、図21は、実施の形態5に係る記録再生ヘッド1の構成を示す。記録再生ヘッド1は、内周側の隣接トラック21に対応する位置であって、記録素子10に対して上流方向側に再生素子12を、下流方向側に再生素子14(第2隣接トラック再生素子)を有する。また、記録再生ヘッド1は、外周側の隣接トラック23に対応する位置であって、記録素子10に対して上流方向側に再生素子13を、下流方向側に再生素子15(第2隣接トラック再生素子)を有する。図20、及び図21が示すように、再生素子12、再生素子13、再生素子14、および再生素子15は、それぞれ磁気的情報S、磁気的情報T、磁気的情報U、磁気的情報Vを再生する。そして、図20が示すように、再生素子12、再生素子13、再生素子14、および再生素子15によって再生された磁気的情報は、記録再生ヘッド1からそれぞれのスイッチング回路56およびアドレス検出回路55に送られる。なお、図1を参照して前述した構成要素と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。従って、これらの構成要素の詳細な説明は省略する。
【0224】
上記構成において、実施の形態5に係る記録再生ヘッド、及び磁気記録再生装置の動作、及び磁気記録再生方法を説明する。なお、実施の形態5に係る磁気記録再生装置の動作、及び磁気記録再生方法は、実施の形態1と同様に、誤記録の検知と、誤記録によって失われた記録情報の復旧と、に大別される。そして、誤記録によって失われた記録情報の復旧については実施の形態1と同様である。以下、隣接トラックにおけるクロスライトの検知について説明する。
【0225】
以下、記録領域30が連続する場合(図4(b))の動作アルゴリズムを示す。なお、記録領域30が分断された場合(図4(d))の説明は後述する。
【0226】
図22は、隣接トラックにおけるクロスライトの検知についての動作アルゴリズムのフローチャートである。また、図23(a)〜(j)は、それぞれの記録再生動作における記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係を示す。便宜上、図23では領域43、及び領域44を省略している。また、図23における矢印は、磁気記録媒体2の移動方向を示す。以下、クロスライトの検知についてのそれぞれの動作手順を以下に示す。
【0227】
(ステップ111)
図23(a)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子12により領域41の再生が開始する。これは、再生素子12が領域41の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子12の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子12による再生はステップ116まで継続する。ここで、領域41から再生した記録情報を磁気的情報Sとする。磁気的情報Sが記録部51に記録され、領域41における磁気的情報Sのバックアップとなる。
(ステップ112)
ステップ111から時間が経過し、図23(b)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子13により領域42の再生が開始する。これは、再生素子13が領域42の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子13の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子13による再生はステップ117まで継続する。ここで、領域42から再生した記録情報を磁気的情報Tとする。磁気的情報Tが記録部51に記録され、領域41における磁気的情報Tのバックアップとなる。
【0228】
(ステップ113)
ステップ112から時間が経過し、図23(c)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、記録素子10により記録領域30の記録が開始する。記録素子10による記録はステップ118まで継続する。これは、記録素子10が記録開始地点31に位置したときに、制御回路53が、記録素子10の記録を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0229】
(ステップ114)
ステップ113から時間が経過し、図23(d)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子14により領域41の再生が開始する。これは、再生素子14が領域41の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子14の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子14による再生はステップ119まで継続する。ここで、領域41から再生した記録情報を磁気的情報Uとする。
【0230】
(ステップ115)
ステップ114から時間が経過し、図23(e)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子15が領域42の再生を開始する。これは、再生素子15が領域42の下流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子14の再生を開始するよう記録再生ヘッドを制御することによる。再生素子15による再生はステップ120まで継続する。ここで、領域42から再生した記録情報を磁気的情報Vとする。
(ステップ116)
ステップ115から時間が経過し、図23(f)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子12による領域41の再生が終了する。これは、再生素子12が領域41の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子12の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0231】
(ステップ117)
ステップ116から時間が経過し、図23(g)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子13による領域42の再生が終了する。これは、再生素子13が領域42の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子13の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0232】
(ステップ118)
ステップ117から時間が経過し、図23(h)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、記録領域30への記録が終了する。これは、記録素子10が記録終了地点32に位置したときに、制御回路53が、記録素子10の記録を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0233】
(ステップ119)
ステップ118から時間が経過し、図23(i)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子14による領域41の再生が終了する。これは、再生素子14が領域41の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子14の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0234】
(ステップ120)
ステップ119から時間が経過し、図23(j)に示す記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係になると、再生素子15による領域42の再生が終了する。これは、再生素子15が領域42の上流端に位置したときに、制御回路53が、再生素子15の再生を終了するよう記録再生ヘッドを制御することによる。
【0235】
(ステップ121)
得られた磁気的情報Sと磁気的情報Uとを、および磁気的情報Tと磁気的情報Vとをそれぞれ比較回路52により比較し、異なるか否かを判断する。比較処理は、ステップ31〜ステップ34において行った比較処理と同一である。
【0236】
(ステップ122)
ステップ121における比較の結果が異なると判断された場合、比較結果が異なるとの信号が比較回路52から制御回路53に送られる。制御回路53は、クロスライトされたと検知し、その磁気記録媒体2のクロスライトされたと判断した領域の位置情報を取得し、データの復旧作業に移行する。
【0237】
(ステップ123)
ステップ121における比較の結果が同一であると判断された場合、比較結果が同一であるとの信号が比較回路52から制御回路53に送られる。制御回路53は、正常に記録されたと判断する。
【0238】
記録領域30が分断された場合(図4(d))においては、ステップ111〜ステップ120を繰り返し行い、すべての記録領域30への記録と、すべての領域41・42の再生を行えばよい。
【0239】
上記構成において、実施の形態5に係る記録再生ヘッド、磁気記録再生装置、及び磁気記録再生方法による効果を説明する。つまり、記録再生ヘッド1を図21の構成とすることにより、クロスライトの検知を、ステップ111〜ステップ120に示すように磁気記録媒体2を1回転させる間に行うことができ、記録以外の処理のために磁気記録媒体2を余計に回転させる必要が生じない。そのため、クロスライトの検知に費やす時間を、実施の形態1、2よりもさらに短縮することができる。
【0240】
なお、記録情報を復旧するうえで、記録部51は必須の構成となる。この場合、ステップ42の「ステップ13にて誤記録されたと判断」を「ステップ122にて誤記録されたと判断」に読み替えればよい。また、図7では、ステップ11、ステップ12、ステップ13、ステップ14をそれぞれ、ステップ120、ステップ121、ステップ122、ステップ123と読み替えればよい。
【0241】
また、図21(b)では、再生素子11が記録素子10に対して下流方向側に位置しているが、上流方向側に位置していてもよい。また、再生素子12は再生素子13に対して上流方向側に位置しているが、下流方向側に位置していても、トラック幅方向に並んでいてもよい。同様に、再生素子14は再生素子15に対して上流方向側に位置しているが、下流方向側に位置していても、トラック幅方向に並んでいてもよい。
【0242】
ここで、再生素子13が再生素子12に対して上流方向側にあるときは、ステップ111とステップ112、及びステップ116とステップ117の順序が入れ替わる。また、再生素子12と再生素子13との位置関係がトラック幅方向に並んでいるのであれば、ステップ111とステップ112、及びステップ116とステップ117は同時に実行される。同様に、再生素子15が再生素子14に対して上流方向側にあるときは、ステップ114とステップ115、及びステップ119とステップ120の順序が入れ替わる。また、再生素子14と再生素子15との位置関係がトラック幅方向に並んでいるのであれば、ステップ114とステップ115、及びステップ119とステップ120は同時に実行される。
【0243】
磁気的情報Sおよび磁気的情報Tを、遅延回路を用いてステップ121まで遅延させてもよい。その際、上流方向側の再生素子12および再生素子13と下流方向側の再生素子14および再生素子15との距離、および磁気記録媒体2の線速などから、適切な遅延時間を定めるとよい。この場合、記録部51を介さないことから、ステップ121まで余計な時間を要することなく処理できる。従って、記録によるクロスライトが発生してから、クロスライトを検知し記録を中断するまでの時間を短縮することができる。つまり、クロスライトによって失われる情報量が少なくて済み、記録部51に記録するバックアップ用の容量を削減することができる。しかしながら、クロスライトによって失われた記録情報を復旧するために、磁気的情報を分岐させて、バックアップのための記録部51への記録と並行してステップ12までの処理を行うことが望ましい。
【0244】
再生素子12および再生素子14、あるいは再生素子13および再生素子15については、記録素子10の隣接トラックに対応させても、2つ以上隣りのトラックに対応させても、また、図21の構成に新たな再生素子を追加して記録素子10よりも内周側または外周側の2つ以上のトラックに対応させてもよい。
【0245】
なお、以上の動作を実施の形態3または実施の形態4と並列して動作させてもよい。並列して動作させることにより、隣接トラックへのクロスライトの検知、および記録トラックでの誤記録の検知と、それぞれの領域における記録情報の復旧を同時に行うことができる。
【0246】
本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施の形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0247】
本発明は、磁気記録媒体に対する記録時に生ずる誤記録の検知、ならびに誤記録によって消失した記録情報の復旧が可能な記録再生ヘッド、磁気記録再生装置、及び磁気記録再生方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】本実施の形態に係る記録再生ヘッドの構成を説明する図であり、(a)は、記録再生ヘッドおよび磁気記録媒体の断面図である。(b)は、記録再生ヘッドが有する記録素子および再生素子と、磁気記録媒体と、記録再生ヘッド周辺の磁気記録媒体上のトラックとの位置関係を示す図である。
【図2】図1に係る磁気記録再生装置のブロック構成図である。
【図3】(a)は、磁気記録媒体を記録再生ヘッドの側から見た概略図である。(b)は、磁気記録媒体における、磁気的情報を記録する領域を説明するための図である。(c)は、磁気記録媒体の一部を拡大した図であり、サーボ・データ領域とユーザ・データ領域との関係を示した図である。
【図4】(a)は、記録動作を開始する前に決定された磁気記録媒体上の記録領域を示す図である。(b)は、記録領域がサーボ・データ領域をまたがない場合の、記録領域と記録領域の周辺領域との関係を示す図である。(c)は、記録領域がサーボ・データ領域をまたぐ場合の記録領域を示す図である。(d)は、記録領域がサーボ・データ領域をまたぐ場合の、記録領域と記録領域の周辺領域との関係を示す図である。
【図5】クロスライトの検知についての具体的な動作アルゴリズムのフローチャートである。
【図6】(a)〜(f)は、それぞれ、記録再生動作中の記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係を示す図である。
【図7】記録前に再生したバックアップ用の再生信号と記録後に再生した再生信号とを、デジタル信号として比較する動作アルゴリズムのフローチャートである。
【図8】誤記録の検知がなされた後の、記録情報の復旧の動作アルゴリズムのフローチャートである。
【図9】記録再生ヘッドが有する記録素子および再生素子と、磁気記録媒体と、記録再生ヘッド周辺の磁気記録媒体上のトラックとの位置関係を示す図であり、(a)は、再生素子12・13がトラック幅方向に並んだ状態を示し、(b)は、再生素子11〜13がトラック幅方向に並んだ状態を示す図である。
【図10】熱アシスト記録方式を採用した場合の記録再生ヘッドの構成を説明する図であり、(a)は、記録再生ヘッドおよび磁気記録媒体の断面図である。(b)は、記録再生ヘッドが有する記録素子および再生素子と、磁気記録媒体と、記録再生ヘッド周辺の磁気記録媒体上のトラックとの位置関係を示す図である。
【図11】本実施の形態に係る他の記録再生ヘッドの構成を説明する図であり、(a)は、記録再生ヘッドおよび磁気記録媒体の断面図である。(b)は、記録再生ヘッドが有する記録素子および再生素子と、磁気記録媒体と、記録再生ヘッド周辺の磁気記録媒体上のトラックとの位置関係を示す図である。
【図12】クロスライトの検知についての具体的な動作アルゴリズムのフローチャートである。
【図13】(a)〜(f)は、それぞれ、記録再生動作中の記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係を示す図である。
【図14】本実施の形態に係る他の磁気記録再生装置のブロック構成図である。
【図15】クロスライトの検知についての具体的な動作アルゴリズムのフローチャートである。
【図16】(a)〜(f)は、それぞれ、記録再生動作中の記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係を示す図である。
【図17】本実施の形態に係る他の記録再生ヘッドの構成を説明する図であり、(a)は、記録再生ヘッドおよび磁気記録媒体の断面図である。(b)は、記録再生ヘッドが有する記録素子および再生素子と、磁気記録媒体と、記録再生ヘッド周辺の磁気記録媒体上のトラックとの位置関係を示す図である。
【図18】クロスライトの検知についての具体的な動作アルゴリズムのフローチャートである。
【図19】(a)〜(f)は、それぞれ、記録再生動作中の記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係を示す図である。
【図20】本実施の形態に係る他の磁気記録再生装置のブロック構成図である。
【図21】本実施の形態に係る他の記録再生ヘッドの構成を説明する図であり、(a)は、記録再生ヘッドおよび磁気記録媒体の断面図である。(b)は、記録再生ヘッドが有する記録素子および再生素子と、磁気記録媒体と、記録再生ヘッド周辺の磁気記録媒体上のトラックとの位置関係を示す図である。
【図22】クロスライトの検知についての具体的な動作アルゴリズムのフローチャートである。
【図23】(a)〜(j)は、それぞれ、記録再生動作中の記録再生ヘッドと磁気記録媒体との位置関係を示す図である。
【符号の説明】
【0249】
1 記録再生ヘッド
2 磁気記録媒体
3 サスペンション
4 スピンドルモータ
5 スライダ
6 サーボ・データ領域
7 ユーザ・データ領域
8 セクタ
10 記録素子
11 再生素子(記録トラック再生素子)
12、13 再生素子(第1隣接トラック再生素子)
14、15 再生素子(第2隣接トラック再生素子)
21 内周側の隣接トラック
22 記録トラック
23 外周側の隣接トラック
30 記録領域
31 記録開始地点
32 記録終了地点
41、42 領域
43、44 領域(隣接領域)
51 記録部
52 比較回路(第1比較器、第2比較器)
53 制御回路
54 ヘッド駆動回路
55 アドレス検出回路
56 スイッチング回路
57 ボイスコイルモータ
91 レーザ照射部
92 微小開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体の記録トラックに記録素子を用いて磁気的情報を記録するとともに、前記記録トラックに記録された磁気的情報を記録トラック再生素子により読み取る記録再生ヘッドであって、
前記記録トラックと前記磁気記録媒体の径方向において隣接する隣接トラックに記録された磁気的情報を読み取る第1隣接トラック再生素子を有することを特徴とする記録再生ヘッド。
【請求項2】
前記第1隣接トラック再生素子が、前記記録素子から見て前記磁気記録媒体が移動する方向の逆方向を上流方向とした場合、前記記録素子の上流方向に配設されることを特徴とする請求項1に記載の記録再生ヘッド。
【請求項3】
前記記録素子から見て前記磁気記録媒体が移動する方向を下流方向とした場合、前記記録素子の下流方向に配設され、前記隣接トラックに記録された磁気的情報を読み取る第2隣接トラック再生素子を有することを特徴とする請求項2に記載の記録再生ヘッド。
【請求項4】
前記第1隣接トラック再生素子が、前記記録素子に対して前記磁気記録媒体の内周側に配設されていることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の記録再生ヘッド。
【請求項5】
前記第1隣接トラック再生素子が、前記記録素子に対して前記磁気記録媒体の外周側に配設されていることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の記録再生ヘッド。
【請求項6】
前記第1隣接トラック再生素子が、前記記録素子に対して前記磁気記録媒体の外周側および内周側に配設されていることを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の記録再生ヘッド。
【請求項7】
前記記録トラック再生素子が、前記記録素子から見て前記磁気記録媒体が移動する方向の逆方向を上流方向とした場合、前記記録素子よりも上流方向に配設されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の記録再生ヘッド。
【請求項8】
前記記録トラックを加熱昇温する加熱手段を有することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の記録再生ヘッド。
【請求項9】
請求項1に記載の記録再生ヘッドを有する磁気記録再生装置であって、
前記第1隣接トラック再生素子によって前記隣接トラックの第1磁気的情報を読み取り、
次に、前記記録素子によって前記記録トラックに磁気的情報を記録し、
そのうえで、前記第1隣接トラック再生素子によって前記隣接トラックの第2磁気的情報を読み取り、
前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を比較する第1比較器を有し、
前記第1比較器は、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報が異なっている場合には、前記隣接トラックが誤記録されたと判断することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項10】
前記第1隣接トラック再生素子が、前記記録素子から見て前記磁気記録媒体が移動する方向の逆方向を上流方向とした場合、前記記録素子の上流方向に配設され、
前記第1磁気的情報を、前記磁気記録媒体の1周目の回転において読み取り、
前記第2磁気的情報を、前記磁気記録媒体の2周目の回転において読み取ることを特徴とする請求項9に記載の磁気記録再生装置。
【請求項11】
請求項3に記載の記録再生ヘッドを有する磁気記録再生装置であって、
前記第1隣接トラック再生素子によって前記隣接トラックの第1磁気的情報を読み取り、
次に、前記記録素子によって前記記録トラックに磁気的情報を記録し、
そのうえで、前記第2隣接トラック再生素子によって前記隣接トラックの第2磁気的情報を読み取り、
前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を比較する第1比較器を有し、
前記第1比較器は、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報が異なっている場合には、前記隣接トラックが誤記録されたと判断することを特徴とする磁気記録再生装置。
【請求項12】
前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を、前記磁気記録媒体の1周目の回転において読み取ることを特徴とする請求項11に記載の磁気記録再生装置。
【請求項13】
前記記録トラック再生素子によって、前記記録素子により磁気的情報が記録される前記記録トラックの記録領域に周方向で隣接する隣接領域における第3磁気的情報を読み取り、
次に、前記記録素子によって前記記録領域に磁気的情報を記録し、
そのうえで、前記記録トラック再生素子によって前記隣接領域における第4磁気的情報を読み取り、
前記第3磁気的情報および前記第4磁気的情報を比較する第2比較器を有し、
前記第2比較器は、前記第3磁気的情報および前記第4磁気的情報が異なっている場合には、前記隣接領域が誤記録されたと判断することを特徴とする請求項9〜11の何れか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項14】
前記記録トラック再生素子が、前記記録素子から見て前記磁気記録媒体が移動する方向の逆方向を上流方向とした場合、前記記録素子の上流方向に配設された場合であって、
前記第3磁気的情報を、前記磁気記録媒体の1周目の回転において読み取り、
前記第4磁気的情報を、前記磁気記録媒体の2周目の回転において読み取ることを特徴とする請求項13の何れか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項15】
前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を保存するための記録部をさらに有することを特徴とする請求項9〜12の何れか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項16】
前記第1磁気的情報、前記第2磁気的情報、前記第3磁気的情報、および前記第4磁気的情報を保存するための記録部をさらに有することを特徴とする請求項13又は14に記載の磁気記録再生装置。
【請求項17】
前記第1比較器によって、誤記録がなされたと判断された場合に、
前記第1磁気的情報が、前記記録部から取得されると共に、前記磁気記録媒体の任意の領域に記録されることを特徴とする請求項15に記載の磁気記録再生装置。
【請求項18】
前記第1比較器によって、誤記録がなされたと判断された場合に、
前記第1磁気的情報が、前記記録部から取得されると共に、前記磁気記録媒体上であって自身が読み取られたのと同一の領域に記録されることを特徴とする請求項15に記載の磁気記録再生装置。
【請求項19】
前記第1比較器、および前記第2比較器の少なくとも一方によって、誤記録がなされたと判断された場合に、
誤記録がなされたと判断された前記第1磁気的情報、または前記第3磁気的情報が、前記記録部から取得されると共に、前記磁気記録媒体の任意の領域に記録されることを特徴とする請求項16に記載の磁気記録再生装置。
【請求項20】
前記第1比較器、および前記第2比較器の少なくとも一方によって、誤記録がなされたと判断された場合に、
誤記録がなされたと判断された前記第1磁気的情報、または前記第3磁気的情報が、前記記録部から取得されると共に、前記磁気記録媒体上であって自身が読み取られたのと同一の領域に記録されることを特徴とする請求項16に記載の磁気記録再生装置。
【請求項21】
前記記録トラックを加熱昇温する加熱手段を有することを特徴とする請求項9〜20の何れか1項に記載の磁気記録再生装置。
【請求項22】
磁気記録媒体の記録トラックに記録素子を用いて磁気的情報を記録するとともに、前記記録トラックに記録された磁気的情報を記録トラック再生素子により読み取る記録再生ヘッドであって、前記記録トラックと前記磁気記録媒体の径方向において隣接する隣接トラックに記録された磁気的情報を読み取る第1隣接トラック再生素子を有する記録再生ヘッドを用いた磁気記録再生方法であって、
前記第1隣接トラック再生素子によって前記隣接トラックの第1磁気的情報を読み取る工程と、
次に、前記記録素子によって前記記録トラックに磁気的情報を記録する工程と、
そのうえで、前記第1隣接トラック再生素子によって前記隣接トラックの第2磁気的情報を読み取る工程と、
前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報を比較する第1比較工程と、を含み、
前記第1比較工程には、前記第1磁気的情報および前記第2磁気的情報が異なっていると判断された場合には、前記隣接トラックが誤記録されたと判断する工程を含むことを特徴とする磁気記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−123305(P2009−123305A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298574(P2007−298574)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】