説明

記録媒体のエンドレスウェブを供給するリールを有する印刷装置

【課題】本発明は、皺寄り現象を低減することが可能である印刷装置を与えることを目的とする。
【解決手段】本発明は印刷装置に係る。該装置は、リール上に巻かれたエンドレスウェブのコイルの形状で記録媒体を供給するリール、リールから印刷機構へと繋がる送り経路、ウェブを切断するよう送り経路に置かれた切断装置、及び、送り制御システムを有し、送り制御システムは、印刷装置が所定の操作状態にある際、コイルの外周表面上にウェブの切断端部を引き出すよう適合される、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール上に巻かれたエンドレスウェブのコイルの形状で記録媒体を供給するリール、リールから印刷機構へと繋がる送り経路、ウェブを切断するよう送り経路に置かれた切断装置、及び、送り制御システムを有する、印刷装置に係る。更に特には、本発明は熱溶解インクジェット印刷装置に係る。
【背景技術】
【0002】
記録媒体として用紙又は同様の媒体が使用される印刷装置において、用紙に皺が寄る傾向が、深刻な問題となることがあり得る。皺寄り現象は、用紙及び同様の材料が、周囲空気から湿気を吸収し、湿度含有量に従って伸縮する傾向がある、という事実にかかわる。典型的には、伸縮は、同方性(unisotropic)であり、特には、用紙の繊維が主に向きを合わせられた方向で行われる。用紙において湿度に変化がある際は、用紙のより多湿の部分がより乾いた部分よりも拡張し、必然的に皺又は襞の発生をもたらす。
【0003】
例えば、特に大型印刷機である、インクジェット印刷装置の典型的な設定においては、用紙は平らなシート支持板上を断続的に前進し、一方でキャリッジは用紙にわたって前後に動き、キャリッジ上に取り付けられたインクジェット印刷ヘッド部は、印刷された画像を形成するよう用紙上にインクの液滴を排出するよう加圧される。キャリッジは、比較的速い速度で動くため、用紙上に排出されたインクの液滴は、一定の収差を受け、何らかの異なる位置で用紙上に蒸着される。転位の量は、インクの液滴の移動距離に比例する。故に、皺が用紙上にある際、移動距離が均一ではなく、従って用紙上のインクの点の転位もまた不均一となり、印刷された画像の質が低下される。
【0004】
熱溶解インクジェット印刷装置においては、インクは室温では硬質であり、典型的には液体インクの液滴が用紙上に噴出され得る前に、100℃のオーダで融点を上回るまで加熱されなければならない。結果として、画像が印刷される際、用紙は、インクの高温によって熱せられ、用紙に吸収されていた水分の一部が蒸発する。これによって、印刷機構の域において紙の湿度変化がもたらされ、皺の発生が起こり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、皺寄り現象を低減することが可能である印刷装置を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、かかる目的は、上述された種類の印刷装置によって達成される。該印刷装置では、送り制御システムが、印刷装置が所定の操作状態にある際に、コイルの外周表面上にウェブの切断端部を引き出すよう適合される。
【0007】
所定の操作状態は、例えば、印刷操作が完了されたか、又は印刷装置がスタンバイ・モードに入っている一方で、切断装置で切断されたウェブの先端部は送り経路に位置付けられる状態であり得る。続いて、送り経路に存在するウェブの端部は、特に空気湿度が高い際に、両方の側から周囲空気に露出され、従って大量の湿気を吸収し得る。ウェブがしばらくかかる状態におかれ、その後印刷操作が継続又は再開される場合、ウェブの先端部の高湿度含有量は、所望されない皺寄り減少をもたらす。しかしながら本発明によれば、ウェブの端部は、リールを逆方向に回転することによりコイル上に引き出される。結果として、ウェブの全長がコイル上に巻かれ、非常に少ない部分が周囲空気に露出される。これは、コイルの外側層においてさえも、ウェブの一表面がコイルの下方の層によって保護され、ウェブを通ろうとする空気が大きく低減するようにされるためである。故に、印刷作業が継続され、ウェブが再び送り経路に送られる際、ウェブの湿度含有量は低く、原則的に均一であり、結果として皺寄り傾向が抑えられる。
【0008】
本発明のより特定の実施例及び更なる詳細は、従属請求項に記載される。
【0009】
望ましくは、引離し構造は、コイルの外周近くに置かれ、コイル上に巻かれたウェブの先端部は、例えば空気吸入を用いてコイルの表面から確実に切離され得、送り経路へと案内され得る。故に、印刷装置がスイッチを入れられるか、又はスタンバイ・モードから印刷モードへと切り替えられる際に、ウェブは、ユーザの介入無しに印刷機構へと容易に供給され得る。
【0010】
更には、印刷装置は、周囲空気の湿度を検出するよう配置された湿度センサを有し得る。送り制御システムの機能は、検出された湿度に依存し得、空気が比較的乾燥していて皺寄り傾向が低い際に、少なくとも印刷装置のスタンバイ期間中はウェブの先端部は引き出されずに切断装置内の場所に残されるようにされる。これにより、望ましい湿度状態下での印刷操作の再開がスピードアップされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の望ましい実施例は、図面を参照して説明される。
【0012】
図1に示す通り、熱溶解インクジェット印刷装置は、フレーム10(きわめて細い線で図示されるのみ)を有し、該フレームは、用紙マガジン12と、フレーム10の上側上で印刷機構18に対して用紙のシート16を送るよう適合された用紙送りシステム14とを収容する。印刷機構18では、シート16は、真空システム(図示せず)を用いて穿孔されたシート支持板20の平らな上方表面(印刷表面)に対して、巻き込まれる。キャリッジ22は、図1中の図面の法線の方向にシート16をわたって前後に動くよう配置され、その底部側において、シート16に面する多数の熱溶解インクジェット印刷ヘッド部24を運ぶ。故に、印刷ヘッド部24を加圧することによって、画像の帯は、キャリッジ22の各経路において印刷される。続いてシート16は、矢印Aによって示された方向において適切な長さの段階分を進められ、次の帯が印刷され得るようにされる。搬出構造26は、トレイ28上にシートを排出する。該トレイは、図示された例では、すでに印刷されたシート30を収容する。シート支持板20は、冷却速度、及び用紙上に蒸着された熱溶解インクの固化を制御するよう温度制御される。例えば、シート支持板20の印刷表面の温度は32℃で維持される。
【0013】
用紙マガジン12は、エンドレスウェブ34の形状で印刷用紙を夫々供給する6本のリールの一式32を有する。リール32は、3つのレベルに配置され、各リールからのウェブ34は、夫々関連された一組の送りローラ36を用いて引き出される。ガイド板38の配置は、用紙マガジン上側上で共通の送り経路42へと統合する狭い送り経路40の分岐されたシステムを定義付ける。一組の送りローラ36は選択的に駆動され、ウェブ34を、リール32のうちの選択された1つから共通の送り経路42へと送るようにする。リール32は、異なる品質の用紙、及びプラスチックフィルム等の非用紙の記録媒体でもあり得る。更に、リール32上のウェブは幅が異なり得、印刷されたシートは、異なる形式、例えばA4縦書式からA0横書式までの範囲で作られ得る。「エンドレスウェブ34」という語は、リール32上の紙の長さが、切断された寸法A4又はA0と比較して長いことを意味する。典型的には、ウェブの長さは20乃至200メートルであるが、それより長くてもよい。
【0014】
共通の送り経路42から、選択されたウェブは、所望されたシートの長さにウェブを切断する切断構造44を通って案内される。続いて、切断されたシート16は、偏向のシステム、伸張ローラ46、ガイド板48をわたって、プラテン50に案内され、プラテンからシート支持板20上に繰り出される。
【0015】
リール32からプラテン50までの途中、ウェブ34及びシート16は、夫々不可避的に周囲空気に露出され、その結果、特に周囲空気の相対湿度RHが高い際に湿度を吸収する。図示された例では、用紙は、切断構造44付近で周囲の空気に特に露出される。
【0016】
用紙の湿度含有量が上昇する際、特に用紙中の繊維が主に方向付けられた方向に膨張する傾向がある。典型的には、これは、ウェブの長手方向に対して横断する方向である。シート16は、かかる方向に膨張した後、シート支持板20に達し、蒸着された熱溶解インクによって熱せられる際、用紙に含有される水分の一部は蒸発され、用紙はシートの幅方向に再度収縮する。故に、湿度変化が用紙に存在するため、シートの幅における随伴低減は、皺の発生につながる。
【0017】
かかる皺の発生を低減するよう、ウェブ34を、湿気のある周囲空気との接触から可能な限り保護することが有用である。これを達成するよう、用紙マガジン12は、送り経路42へと送られていたウェブ34を、ウェブ34が取られたリール32上のコイルに戻すことができる。各リール32は、図示されていないが、電気モータによって独立して駆動され、図1中の2つの上方のリール32に対する点線62によって示す通り、電気送り制御システム60の制御のもとでいずれかの方向に回転し得る。
【0018】
送り制御システム60は、また、湿度センサ64に接続される。図示された例では、センサ64は、用紙が特に周囲空気に露出される用紙送り経路の一部分の近くで空気の湿度を検出し得る位置に配置される。
【0019】
送り制御システム60の機能は、図2乃至図4と合わせて詳細に説明される。
【0020】
図2は、リール32のうちの1つで用紙コイル68から取られたウェブ34状態が、切断装置44を用いて切断された状態を図示する。ウェブ34の先端部は、切断装置44の位置で用紙送り経路に位置付けられるようにされる。切断されたシート16は、図2中に図示されておらず、印刷される工程にある。丁度その時に新しい印刷ジョブがすでにプログラムされ、記録媒体がすでに送り経路にある同一のウェブ34であるべきだとかかる印刷ジョブが特定した際、ウェブ34は、印刷機構18に向かって更に送られる。
【0021】
一方、新しい印刷ジョブが印刷のキューにない場合、送り制御システム60は、センサ64によって検出された空気湿度を読み、空気湿度が40%RHである一定の閾値を上回る場合、例えば、カウンタは、切断装置44が起動される瞬間にトリガされる。カウンタは、一定の時間間隔をカウントし、該時間間隔の長さは、検出された空気質度量に依存し得、空気湿度が高い際は時間間隔は短い。新しい印刷ジョブが入らずに時間間隔が終了する際は、リール32は、図2中矢印Aによって示される通り逆方向に駆動され、ウェブ34を用紙送り経路から引き出し、コイル68の外周上に戻すようにする。リール32の回転は、ウェブ34の先端部が引離し装置66の位置に達したと検出された際に、停止される。故に、ウェブ34の全長は、周囲空気に略露出されないコイル68に圧縮された状態で格納される。かかる状態は、図3に図示される。
【0022】
図2乃至図4に図示される通り、コイル38は、任意でシェル70に取り囲まれ得る。該シェルは、引離し構造66の位置でのみ途絶され、コイル68上のウェブの外側の層を周囲空気に対して保護する役割をなす。
【0023】
ウェブ34がコイル68上に引き戻されるとき、又は独立して決定されたタイミングで、印刷装置は、スタンバイ・モードに入る。
【0024】
新しい印刷ジョブが入る際、印刷装置は再度、操作モードにスイッチが入れられ、送り制御システム60は、図4中矢印で図示される通り、リール32を制御して前方方向に回転するようにさせる。同時に、引離し構造66が起動され、空気吸入等によってコイル68の外周からウェブの先端部を引き離すようにする。引離し構造66は、リール32の半径方向で可動であるよう取り付けられ、コイル68の可変の厚さに対して適合するようにされる、ことが理解される。ホイール32が前方方向に回転する一方、ウェブ34の先端部は、送りローラ36によって捉えられるまで前に押し出され、送り経路へと更に送られ、印刷操作が再開され得、新しいシート17が切断及び印刷され得るようにされる。
【0025】
図2に図示される状態において、検出された空気湿度が閾値を下回る場合、ウェブ34は用紙送り経路に残され、新しい印刷ジョブが入る際に印刷工程が遅れることなく再開されうるようにされる。かかる場合において、ウェブは、コマンドが印刷装置のスイッチを完全に切るよう入れられた際に、コイル68上に引き戻されるのみである。
【0026】
図2に図示される状態において、カウントされた時間間隔が終了する前に新しい印刷ジョブが入った場合、又は空気湿度が低い際、新しい印刷ジョブが記録媒体は他のリールから取られるべきだと特定すると、図2に図示されるウェブ34は、新しいウェブに対して送り経路を空けるよう、ある程度引き戻されなければならない。この時点で空気湿度が高い場合、ウェブ34は、従来技術通り、その先端部がまだ送りローラ36の間に挟まれて保持されるところまで引き戻されるのみであり、かかるウェブが再度必要とされる際に用紙送り経路へと容易に供給され得るようにされる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に従った熱溶解インクジェット印刷装置の用紙送りシステムの概略的な鉛直断面図である。
【図2】異なる状態における用紙送りシステムの一部分の拡大された該略図である。
【図3】異なる状態における用紙送りシステムの一部分の拡大された該略図である。
【図4】異なる状態における用紙送りシステムの一部分の拡大された該略図である。
【符号の説明】
【0028】
10 フレーム
12 用紙マガジン
14 用紙送りシステム
16 シート
18 印刷機構
20 シート支持板
22 キャリッジ
24 熱溶解インクジェット印刷ヘッド部
26 搬出構造
28 トレイ
30 印刷されたシート
32 リール
34 エンドレスウェブ
36 送りローラ
38 ガイド板
40 送り経路
42 共通送り経路
44 切断構造
46 伸張ローラ
48 ガイド板
50 プラテン
60 送り制御システム
62 送り制御
64 センサ
66 引離し構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置であって、
リール(32)と、前記リールから印刷機構(18)へと繋がる送り経路(40、42)と、前記ウェブを切断するよう前記送り経路に置かれた切断装置(44)と、送り制御システム(60)とを有し、前記リールは、前記リール上に巻かれたエンドレスウェブ(34)のコイル(68)の形状で記録媒体を供給するようにされ、
前記送り制御システム(60)は、前記印刷装置が所定の操作状態にある際、前記コイル(68)の外周表面上に前記ウェブ(34)の切断端部を引き出すよう適合される、ことを特徴とする、
印刷装置。
【請求項2】
前記所定の操作状態が、
− 前記印刷装置がスイッチを切られた状態と、
− 前記印刷装置がスタンバイに切り替えられた状態と、
− 印刷ジョブが完了した後、新しい印刷ジョブが入らずに所定の時間間隔が切れた状態と、
− 他のリールからの記録媒体が、印刷用に選択される状態と、
のうちの1つである、請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記コイル(68)の外周に置かれ、前記コイル上に引き出された前記ウェブの先端部を、前記コイルから切り離し、前記送り経路(40、42)へと送るようにする、引離し構造(66)を有する、
請求項1又は2記載の印刷装置。
【請求項4】
周囲空気の湿度を検出するよう湿度センサ(64)を有し、
前記送り制御システム(60)が、前記検出された湿度が所定の閾値を上回る場合に限り、前記ウェブを引き出すよう適合される、
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷装置は、インクジェット印刷装置である、
請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の印刷装置。
【請求項6】
前記プリンタは、熱溶解インクジェット印刷装置である、
請求項5記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−150959(P2006−150959A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330468(P2005−330468)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(593016732)オセ−テクノロジーズ ビーブイ (103)
【Fターム(参考)】