説明

記録媒体層の流体ジェット印刷

【課題】記録媒体層の流体ジェット印刷を提供する。
【解決手段】磁気記録媒体を製造することは、基板を提供する工程、および基板上に複数の機能層を形成して、記録に適合した被膜基板を提供する工程を含む。磁気記録媒体の層のうちの少なくとも1つは、印刷層として流体ジェット印刷される。いくつかの実施形態では、印刷層は、耐荷重機能、ヘッドクリーニング機能、接着促進機能、反応促進機能、潤滑機能、表面洗浄機能、磁気記録機能、およびエッジ仕上げ機能のうちの少なくとも1つを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に記録媒体に関する。特に、本発明は、磁気記録媒体層等の1つ以上の記録媒体層を流体ジェット印刷することに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体、特に磁気記録媒体は、基板上に形成される磁気記録層等の1つ以上の層を基板上に含む。磁気記録媒体内の層は、例えば、帯電防止材料、使用中に記録ヘッドの清掃を助ける研磨材料、磁気記録ヘッドと磁気記録媒体の表面との摩擦を軽減する潤滑材料、またはこれらの組み合わせを含む。所望に応じてさらなる流体層を磁気記録媒体に組み込んで、例えば媒体性能、塗膜のしやすさ、または生産性に対処することができる。特に、機能材料を、基板上に積層される離散流体層に組み込んで、機能層を提供することができる。別法として、1つ以上の機能材料を、乾燥したときに、結果生成される磁気記録媒体に多機能層を形成する流体単層に組み込むことができる。
【0003】
磁気記録テープまたはディスク等の磁気記録媒体は、通常、少なくとも1つの非磁性基板上にコーティングヘッドを使用して被膜されるフロントコートを備える。特定の設計では、フロントコートは、非磁性基板上に単層として直接形成される。代替の手法では、複層フロントコートが利用される。例えば、2層フロントコートは、多くの場合、基板上に被膜される正面副層および正面副層上に被膜される磁性薄層を含む。2層は同時にまたは順次形成することができる。正面副層は、通常、非磁性であり、一般に、バインダ系に分散させた非磁性粉体を含む。逆に、磁性層は、バインダ系に分散させた1つ以上の金属粒子粉体または顔料を含む。磁気記録媒体は、磁気記録媒体の耐久性、導電性、およびトラッキング性を向上させるために、非磁性基板の反対側に塗布されるバックコートを有することもできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明のいくつかの態様によれば、磁気記録媒体を製造することは、基板を提供する工程、および基板上に複数の機能層を形成して、記録に適合した被膜基板を提供する工程を含む。磁気記録媒体の層のうちの少なくとも1つは、印刷層として流体ジェット印刷される。いくつかの実施形態では、印刷層は、耐荷重機能、ヘッドクリーニング機能、接着促進機能、反応促進機能、潤滑機能、表面洗浄機能、磁気記録機能、およびエッジ仕上げ機能のうちの少なくとも1つを提供する。
【0005】
本発明は、例えば、磁気記録媒体の性能および/または製造容易性の向上を実現するための、磁気記録媒体の1つ以上の機能層の流体ジェット印刷に関する。したがって、本発明の原理による磁気記録媒体構造について最初に説明することが有益である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の原理による磁気記録媒体10を大まかに、概略側面図から図1に示す。磁気記録媒体10は、第1の端部12と第2の端部14との間に縦方向に、または長手方向に延在し、一般に、各種磁気記録媒体機能を提供するように機能する基板16、フロントコート18、およびバックコート20を含む。磁気記録媒体10は、磁気記録テープ、ならびにフロッピーディスクおよびハードドライブに使用されるハードディスクを含む、磁気記録ディスク等の他の様式であってよい。さらに、本発明の原理を他の記録媒体、例えば光磁気記録ディスク、およびDVD、CD、および他の様式を含む他の記録媒体等にも適用可能なことを理解されたい。
【0007】
図1を参照すると、基板16は、上面22および上面22に対向する底面24を画定する。一般に、基板16は細長形であり、基板16上に1つ以上の層が形成された後に最終形態(例えば、テープまたはディスク)にされるように構成される。上述したように、いくつかの実施形態では、基板16および基板16に関連する層は、例えばスリッティング作業を介して最終形態幅を有する細長いテープ形にされる。別法として、基板16は他の形態、例えばパンチング作業によりディスク形態にされる。
【0008】
フロントコート18は一般に、基板16の上面22上に延在し、上面22に接合され、正面26を画定する。フロントコート18は磁性成分を含み、記録に適合され、所望に応じて追加機能を提供する。例えばフロントコート18は、例えば磁気記録媒体10の耐久性を向上させるとともに、フロントコート18と読み出し/書き込み機構との摩擦を軽減するように構成することができる。バックコート20は、基板16の底面24の下に延在し、底面24に接合され、正面26とは逆の裏面28を画定する。いくつかの実施形態では、バックコート20は、磁気記録媒体10の耐久性を向上させるとともに、磁気記録媒体10と読み出し/書き込み機構、例えばテープドライブの読み出し/書き込み機構との摩擦量を軽減するように構成される。バックコート20は、いくつかの実施形態では、所望に応じてヘッドクリーニング機能(例えば、読み出し/書き込み機構のクリーニング)または潜在的に磁気記録機能等の追加機能も提供する。
【0009】
フロントコート18およびバックコート20はそれぞれ、複層構造または単層構造として形成することができる。いくつかの実施形態では、フロントコート18は正面副層30および記録層32を含む。以下にさらに詳細に説明するように、フロントコート18は、任意に、正面26を画定する正面外面等の追加の機能層を含むが、例えば、記録層32が正面26を画定する単層構造または2層構造として形成してもよい。一般的な関係で言えば、正面副層30は基板16の上面22上に延在し、上面22に接合され、記録層32が正面副層30に延在して正面副層30に接合される。そして、正面外面層34が記録層32上に延在し、記録層32に接合され、正面26の少なくとも一部を画定する。さらに、各種実施形態では、1つ以上の機能層が、任意に、基板16と正面副層30との間、正面副層30と記録層32との間等に介在する。
【0010】
そして、バックコート20が、各種のバックコート機能を提供する単層構造として、またはバックコート機能を提供する複数の層を有する複層構造として形成される。例えば、複層構造を含むいくつかの実施形態では、バックコート20は、裏面副層40および裏面28を画定する裏面外面層42を含む。以下にさらに詳細に説明するように、バックコート20は、所望に応じて1つ以上の追加層を含むこともできる。
【0011】
先に言及したように、磁気記録媒体10の各種層(ならびにこのような層を形成する成分)は一般に、磁気記録媒体10の製造中および/または使用中に1つ以上の役割または機能を果たす。例えば、磁気記録媒体10の機能層は、耐荷重機能(例えば、耐荷重粒子(LBP:load−bearing particle)の組み込みを介して)、ヘッドクリーニング機能(例えば、研磨粒子または他のヘッドクリーニング剤(HCA)の組み込みを介して)、表面洗浄機能(例えば、洗浄溶媒の塗布を介して)、接着促進または下塗り機能(例えば、バインダ等の接着促進剤の組み込みを介して)、潤滑機能(例えば、潤滑剤の組み込みを介して)、反応促進機能(例えば、触媒、架橋剤、および/または他の反応種の組み込みを介して)、および磁気記録機能(例えば、磁性材料の組み込みを介して)、ならびに他の機能を提供するように機能する。
【0012】
「層」および「被膜」なる用語は、フロントコート18および/またはバックコート20を含む機能層に関連して、基板16上に形成されて被膜基板、ひいては磁気記録媒体10を提供する組成物を指すために、本明細書において交換可能に使用されることに留意されたい。さらに、「基板上に形成される」なる語句は、基板16上に直接形成される層を含むのみならず、磁気記録媒体10の一部である任意の層に塗布される層も含むものとして理解されたい。一般に、各種機能層は非水性溶媒および妥当な場合にはバインダ系等の1つ以上の溶質を含む流体として塗布される。溶質が存在する場合、被膜溶質は、選択された溶媒が乾燥した後に残る。換言すれば、溶質が存在する場合、機能層は、塗布が容易なために液体として塗布されるが、機能層は、通常、最終製品では乾燥している。しかし、いくつかの実施形態では、すべての機能層が基板16上に流体として形成されるとは限らない。例えば、1つ以上の機能層をb段階膜として予め形成して塗布することができる。
【0013】
許容可能な溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン、イソホロン等のケトン系溶媒、メチルアセテート、エチルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、イソプロピルアセテート、乳酸エチル、グリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、クレゾール、クロロベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素系溶媒、塩化メチレン、塩化エチレン、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロロヒドリン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素系溶媒、N,N‐ジメチルホルムアミド、ヘキサン、およびこれらの混合物が含まれる。
【0014】
適当な場合、フロントコート18およびバックコート20の各種機能層の代表的なバインダ系は、熱可塑性樹脂等の少なくとも1つのバインダ樹脂を、所望の機能に従う他の添加物と併せて含む。許容可能なバインダとしては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−二塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−二塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−二塩化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、熱可塑性ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフッ化ビニル、二塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、セルロース誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アルキル樹脂、ユリアホルムアルデヒド樹脂、これらの組み合わせ、および他が含まれる。
【0015】
組成物は任意に、ダイコーティングヘッド、または、例えばシングルもしくはデュアルスロットダイコーティング、スライドコーティング、もしくはグラビアコーティング等の他のコーティング方法およびシステムを使用して基板16上に形成または積層される。しかし、以下にさらに詳細に説明するように、いくつかの実施形態では、磁気記録媒体10の1つ以上の機能層または「被膜」が、流体ジェット印刷により「噴射」または「印刷」される。参考のため、本明細書において使用する「被膜基板」および「被膜」は、流体ジェット印刷を含む種々の手段を介して形成される層を含むものと理解されたい。
【0016】
流体ジェット印刷は、一般に、小量の材料または材料の液滴を表面上に連続して噴射することに関する。図2を参照して、1つ以上の流体ジェットアレイ52および流体ジェットアレイ52を作動させるコントローラ54を含む流体ジェットプリンタ50を大まかに概略形で示す。流体ジェットアレイ52は、粒子分散液を含む流体を噴射するように適合される。流体ジェットアレイ52は、1行、複数行、または他の任意の所望の構成(例えば、放射パターン、螺旋パターン、不規則もしくはランダムなパターン、または他)に配置される複数の流体ジェットポンプ62、および流体を流体ジェットポンプ62に提供する1つ以上の流体供給源66を含む。
【0017】
各ポンプ62は、所望に応じて共通の流体供給源66または異なる流体供給源66に接続される。このようにして、異なる供給源66から提供される異なる組成物を、流体ジェットアレイ52を使用して印刷することができる。例えば、任意に、第1の組成物または分散流体(dispersion)が略連続して印刷され、第2の組成物または分散流体が、第1の組成物に加えて断続的に印刷される。各ポンプ62は、供給源66から流体を受ける流体槽68を含む。計量分配または噴射する特定の流体は、アクチュエータ70により流体槽68からノズル72を通るように強制される。いくつかの実施形態では、1つの流体ジェットポンプ62につき複数のノズル72があるとも考えられることにも留意されたい。一実施形態では、流体ジェットアレイ52は100個以上のノズル72を含み、ノズル72は、例えば、約0.02インチ(約0.508mm)間隔で配置される。1つの流体ジェットアレイ52に対するノズル72の数および/または流体ジェットポンプ62の数は、一般に、塗布される流体の量に基づくが、他の事項がこのような選択において役割を果たすこともある。
【0018】
いくつかの実施形態では、各ポンプ62は、約3ピコリットル〜約80ピコリットルの量を有する流体の液滴を吐出するように適合されるが、より小さな、またはより大きな液滴吐出量を含む他の適合も考えられる。アクチュエータ70は圧電式であり、圧電水晶を使用して、流体を流体槽68から強制して流出させるため、流体ジェットアレイ52は圧電印刷ジェットアレイを特徴とする。他の実施形態では、アクチュエータ70は、抵抗等の加熱素子であり、流体ジェットアレイ52はサーマル印刷ジェットアレイを特徴とする。さらなるアクチュエータの種類またはアクチュエータ種類の組み合わせ(例えば、圧電印刷式およびサーマル印刷式が組み合わせられた流体ジェットアレイ)も考えられる。
【0019】
一般に、各ポンプ62はバイナリ様式で作動するように適合される。すなわち、各ポンプは、所望の周波数で流体の液滴を吐出するように作動する。所望であれば、任意に、1つ以上のポンプ62をパルスさせるか、または別の方法で高速作動させてより高速に流体を塗布する。例えば、各ポンプ62は任意に、サイクルまたはパルスして、複数の流体液滴を、約60kHzを上限とした周波数で塗布するように適合されるが、他の周波数も考えられる。さらに、流体塗布のいくつかのスクリーン印刷またはグラビア式コーティングヘッド技法等の他のいくつかのコーティング技法とは対照的に、流体ジェット印刷は、作動毎に既知の所定量の流体の塗布を提供し、それにより特定の磁気記録媒体の表面に塗布される流体量をより厳密に制御できるとともに、流体量の変動をより低く抑えることができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、流体ジェットアレイ52は、媒体10が流体ジェットアレイ52を通過して移動する際に、磁気記録媒体10の1つ以上の表面上に印刷するように適合される。参考のため、本明細書において使用する「磁気記録媒体10」なる用語は、最終形態での乾燥された完成組立体ならびに各種の組み立て段階での媒体を説明している。いくつかの実施形態では、磁気記録媒体10は、流体ジェットアレイ52に隣接して、最高で1000フィート/分(300m/分)の速度で縦方向すなわち長さ方向に移動するが、他の速度も考えられる。流体ジェットアレイ52を可動キャリッジ(図示せず)に保持して、流体ジェットアレイ52を磁気記録媒体10に対して横方向すなわち幅方向に移動させることができる。縦方向および長さ方向なる用語は、代替として機械方向MDとして説明され、横方向および幅方向もウェブ横断方向CWとも呼ばれる。特に、このような使用法は、多くの場合、媒体10が、例えば、各種ロールおよび/または他の適当な部品(図示せず)を含むウェブハンドリングシステムを使用して機械方向MDに運搬されている場合により一般的である。
【0021】
いくつかの実施形態では、コントローラ54は、例えば、所望に応じて各アクチュエータ70を個々に動作させるか、またはアクチュエータ70の「群」を動作させて、流体ジェットアレイ52を作動させるように適合されるマイクロプロセッサである。さらに、コントローラ54は、流体ジェットアレイ52の作動タイミングおよび位置ならびに他の印刷パラメータを含め、各種パターンを印刷するように流体ジェットアレイ52を作動させるようにプログラム可能であるとともに、他の様式でもそのように適合される。
【0022】
例えば、あるスロットダイコーティング法、スライドコーティング法、スクリーン印刷法、またはグラビアコーティング法等のいくつかのコーティング法とは対照的に、流体ジェット印刷は非接触式層形成法として実施可能であり、流体ジェットアレイ52は、普通なら、流体が塗布されている表面に接触せず、または流体が塗布されている表面と流体がコータから噴射されているポイントとの間に延出する流体関係を形成しない。例えば、いくつかの実施形態では、流体ジェットアレイ52は、印刷表面から約1mm離間され、普通なら、印刷されている表面に接触せず、または印刷されている表面との流体界面または流体関係を形成しないが、印刷表面と流体関係または流体界面を形成するのに十分に近いオフセットまたは動作パラメータを含め、より小さなオフセットおよびより大きなオフセットも考えられる。
【0023】
以下のテキストを参照してさらに詳細に理解されるように、流体ジェット印刷は、磁気記録媒体の機能層を形成するために各種実施形態において使用される。例えば、いくつかの実施形態では、流体ジェット印刷により、機能層を、高度に制御された量、比較的低くかつ/または均一な厚さで印刷し、1つ以上のドット離散パターンまたは他の形状を画定するようにパターン印刷し、略連続した層を画定するようにフラッド印刷し(比較的広いエリアが印刷層によって略覆われる)、層厚またはパターン厚に勾配を画定するように印刷し、かつ/または普通ならコーティングヘッドまたは他のコーティング機器が扱いにくいであろう製造プロセスの様々な時点での層形成に利用することができる。さらに、いくつかの実施形態では、流体ジェット印刷では、単一の機能層の一部として別個の供給源からの別個の組成物の塗布が可能である。別段に示すか、または妥当でない限り、後述する印刷パターンおよび/または他の印刷構造は、機能層が湿った状態、乾燥した状態、または両方での機能層の特徴を記述している。例えば、いくつかの実施形態では、機能層は、印刷後の湿った状態では所望のパターンを画定するように印刷されるが、例えば、分散粘度または後続処理により、機能層は乾燥状態では実質的に異なるパターンを画定するか、または実質的に何のパターンも画定しない。別法として、他の実施形態では、機能層は、湿った状態では所望のパターンを画定し、乾燥状態では略同様のパターンを画定するように印刷される。
【0024】
図3A〜図3Dを参照すると、いくつかの実施形態による機能層の「湿潤」パターンおよび/または「乾燥」パターンが例示を目的として提示され、本明細書において述べる任意の機能層の製造に適宜適用可能なものとして理解されたい。図3Aを参照すると、一実施形態では、第1のパターン200が機械方向MDおよびウェブ横断方向CWで画定され、複数のドット202を含む。一実施形態では、各ドット202は、例えば約715μm以下の面積を画定する。それに関係なく、第1のパターン200は概して、機械方向MDおよびウェブ横断方向CWの両方で規則的に繰り返す一実施形態による機能層を表す。パターン200は、第1の組成物、例えばHCA分散流体および第2の組成物200B、例えば潤滑剤を含む複数のドット202を特徴とする。第1および第2の組成物200A、200Bは、印刷中に別個に保たれ、機械方向MDおよびウェブ横断方向CWの両方で交互パターンに塗布される。したがって、一実施形態では、HCAおよび潤滑剤の位置および量を、向上したヘッドクリーニング機能および潤滑機能を提供するように厳密に制御するとともに、事前に選択することができる。
【0025】
図3Bを参照すると、別の実施形態では、第2のパターン210が機械方向MDおよびウェブ横断方向CWにおいて画定される。特に、第2のパターン210は、機械方向MDおよびウェブ横断方向CWの両方で規則的に繰り返す機能層を表す。第2のパターン210は、第1の組成物210Aおよび第2の組成物210Bの複数のドット212によって画定される。第1および第2の組成物210A、210Bは、機械方向でのみ交互になったパターンで塗布される。一実施形態では、第1の組成物210Aは「粗い」ヘッドクリーニング機能を提供し、第1の濃度の研磨粒子および/または第1のサイズの粒子のHCAから構成される。そして、第2の組成物210Bは任意に、例えば、より高濃度のHCAおよび/またはサイズのより小さい粒子を有するより細かいヘッドクリーニング機能を提供するように適合される。したがって、一実施形態では、HCAの位置および量を、読み出し/書き込みヘッドを粗く研磨し、読み出し/書き込みヘッドに仕上げを施す、すなわち細かく研磨することにより、向上したヘッドクリーニング機能を提供するように厳密に制御するとともに、事前に選択することができる。
【0026】
図3Cを参照すると、さらに別の実施形態では、第3のパターン220が機械方向MDおよびウェブ横断方向CWで画定される。第3のパターン220は、機械方向MDおよびウェブ横断方向CWの両方において不規則に繰り返す、すなわち略ランダムな、事前に選択されたパターンを表す。第3のパターン220は、第1の組成物220Aおよび第2の組成物220Bの複数のドット222によって画定される。第1および第2の組成物220A、220Bは、機械方向MDおよびウェブ横断方向CWの両方でランダムなパターンで互い違いになる。一実施形態では、第1の組成物220Aはバインダ系であり、第2の組成物220Bは触媒および/または架橋剤であり、ランダムなパターンで塗布されて接着促進機能を提供する。例えば、ランダムパターンおよび三次元構造の複数のドット222を使用し、触媒およびバインダ系が所望の化学的接合特徴を提供して、機能層と機能層上に塗布される層との機械的な接合を促進することができる。
【0027】
図3Dを参照すると、さらに別の実施形態では、第4のパターン230が機械方向MDで規則的に画定される。第4のパターン230は、機械方向MDでのみ規則的に繰り返す機能層を表す。第2のパターン202は、第1の組成物230Aおよび第2の組成物230Bの一連のフラッド印刷またはバンド232によって画定される。第1および第2の組成物230A、230Bは、機械方向MDでのみ規則的に交互になる。一実施形態では、第1の組成物230Aは「粗い」ヘッドクリーニング機能を提供し、第1のサイズの第1の濃度の研磨粒子のHCAで構成される。そして、第2の組成物230Bは任意に、例えば、サイズのより小さいより高濃度のHCAを有するより細かいヘッドクリーニング機能を提供するように適合される。したがって、一実施形態では、HCAの位置および量は、例えば読み出し/書き込みヘッドを粗く研磨するとともに、仕上げを施す、すなわち細かく研磨することにより、例えば向上したヘッドクリーニング機能を提供するように位置および塗布量が厳密に制御され、事前に選択されて、パターンでフラッド印刷される。
【0028】
さらに、種々の厚さを画定するように機能層を印刷することができる。いくつかの実施形態では、機能層は、流体ジェットポンプ62が計量分配するように適合される印刷可能な最小量、例えば約3ピコリットルもしくはさらに小量、で印刷可能である。しかし、流体ジェット印刷は、比較的厚い機能層の形成に使用することもできる。例えば、作動する流体ジェットポンプ62の数を増大させ、かつ/または流体ジェットポンプ62をより高い周波数で作動させることにより、より多量の流体が表面上に塗布され、より厚い層を形成することができる。このようにして、流体ジェット印刷を使用して、あるスロットダイコーティング法およびスライドダイコーティング法等のいくつかのコーティング法を使用して容易に形成されるものよりもはるかに薄い機能層を印刷可能であるのみならず、そのような他の方法と略同じ厚さでの印刷にも使用することが可能である。
【0029】
さらに、いくつかの実施形態では、機械方向MDまたはウェブ横断方向CWのいずれかでの機能層厚の勾配を、流体ジェット印刷を使用して実現することが可能である。例えば、デュアルスロットダイコータ等のコーティングヘッドを使用するコーティング方法を、特に機械方向MDで厚みが所定パターンの勾配の層、または厚みの勾配が制御された層の形成に利用することは時に不可能でない場合であっても難しい。
【0030】
図4Aを参照すると、一実施形態では、第1の厚さ勾配300が漸進パターンの印刷構造310により画定される。構造310の厚さは任意に、例えば、流体の塗布に使用される流体ジェットポンプ62の数および/または動作周波数を変化させることによって変化する。図4Bを参照すると、別の実施形態では、第2の厚さ勾配320が、略連続した層の厚さの増大として画定される。いくつかの実施形態では、第1および第2の勾配300、320は機械方向MDで画定され、全体の傾きは略線形である。しかし、いくつかの実施形態では、階段状、曲線状、波状、および他の形状が画定されることを理解されたい。さらに、厚さ勾配は、機械方向に加えて、または機械方向に代えてウェブ横断方向CWで画定される。上で参照したように、勾配は任意に、湿潤状態、乾燥状態、または両方で画定される。
【0031】
いくつかの実施形態では、流体ジェット印刷は、埋め込み層パターンならびに磁気記憶媒体10の正面26および/または裏面28の外側、すなわち露出したパターン層の塗布に使用される。例えば、環境に敏感な成分を含む機能層は、別の機能層内に、または単一機能層の一部として埋め込むことができる。さらに、反応成分、例えばバインダ系ならびに触媒および/または架橋剤を含む機能層は、移動触媒反応、遊離基反応、および他の反応等の極めて厳密かつ制御された反応の場合に、反応成分を埋め込んだ状態で、または他の様式で互いに重なった層として印刷された状態で形成することができる。さらに、コーティングヘッドの「目詰まり」(反応生成物の粘度が変化し、コーティング問題を引き起こす)がより容易に回避される。例えば、このような「目詰まり」問題は、反応種を塗布前に事前に混合するのではなく、別個の流体供給源から表面への触媒および/または架橋剤ならびにバインダ等の流体ジェット印刷反応種により軽減または回避することができる。
【0032】
外側、すなわち露出したパターン層の一般的な例として、図5Aは、例えば磁気記録媒体10(図1)の正面26に最外層として印刷パターンを画定する第1の機能層500の一実施形態の概略を示す。埋め込み層の一般的な例として、図5Bは、埋め込みパターンを画定する第1の機能層510の概略を示し、ここで、第1の機能層510は略連続した第2の機能層512内に埋め込まれている。上述したように、連続した機能層は任意に、フラッド印刷として流体ジェット印刷されるか、または他のコーティングシステムおよび方法、例えばダイコーティンまたはスライドコーティングを使用して機能層510上に塗布される。
【0033】
埋め込み層の別の例として、図5Cは、印刷パターンを画定する第1の機能層520を示し、ここで、第1の機能層520は第2の機能層522内に埋め込まれており、第2の機能層522も一実施形態による印刷パターンを画定する。特に第2の機能層522は最外層として塗布され、第1の層520上にパターン成形される。埋め込み層のさらに別の例として、図5Dは、印刷パターンを画定する第1の機能層530の一実施形態を示し、ここで、第1の機能層530は、第1の機能層530上に印刷パターンを画定する第2の機能層532内に埋め込まれている。さらに、第1および第2の機能層530、532は両方とも、第3の機能層534内に埋め込まれ、第3の機能層534は略連続した層534として塗布される。
【0034】
さらに、いくつかの実施形態では、1つ以上の機能層が、機械方向MDにおいて粒子サイズに事前に選択された勾配を付けて印刷される。例えば、流体ジェットアレイ52は任意に、縦方向において機能層内に略連続した勾配を平均粒子サイズに付けて生成するように作動する。別法として、流体ジェットアレイ52を使用して、平均粒子サイズに階段状の勾配を画定し、この場合、異なる平均粒子サイズを有するいくつかの別個の領域がある(例えば、図6Aおよび以下の関連説明を参照)。
【0035】
さらに、いくつかの実施形態では、機能層は、複数の解像度または事前に選択される解像度勾配で印刷される。一実施形態では、解像度勾配は略連続しており、例えば、磁気記録媒体10に沿って縦方向に漸次変化する。別法として、階段状の解像度勾配も考えられ、この場合、異なる印刷解像度を有するいくつかの別個の領域がある(例えば、図6Bおよび以下の関連説明を参照)。参考のため、本明細書において使用する「解像度」は任意に、「1インチ当たりのドット数」(DPI)として測定される。DPIは流体ジェット印刷解像度の測定基準であり、特に、表面上の線形1インチ空間内に生成される個々の流体液滴の数である。
【0036】
上述した前出のパターンおよび形状は一般に基本的な性質のものであるが、より複雑なパターンおよび形状も考えられ、上記例は例示を目的として提示されることを理解されたい。例えば、機械可読パターン(例えば、印刷されたバーコードまたはセキュリティ特徴)ならびに人間可読パターン(例えば、シンボル)を含む埋め込みパターンおよび/または表面パターンも考えられる。
【0037】
上記を念頭に置き、図1を大まかに参照して、磁気記録媒体10を製造する方法についてさらに詳細に説明する。いくつかの実施形態では、磁気記録媒体10を製造する方法は、一般に、基板16を提供すること、基板16上に複数の機能層(例えば、フロントコート18および/またはバックコート20を形成する層)を形成して、機能層の少なくとも1つが流体ジェット印刷された被膜基板を提供すること、および被膜基板を最終形態(例えば、テープまたはディスク)にすることを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、被膜基板に表面処理を施すことも含む。表面処理(適用される場合)後、かつ/または最終形態にした後、1つ以上の機能層が任意に形成され、この方法の部分は所望に応じてインラインまたはオフラインで行われることにも留意されたい。
【0038】
いくつかの実施形態では、基板16を提供することは、スプールまたは供給源から基板16または関連する材料を解くこと、およびウェブハンドリングシステム(図示せず)を使用してウェブ経路に沿った機械方向MDに基板16を、例えば約1000フィート/分(300m/分)で運搬または移動させることを含むが、他の速度も考えられる。
【0039】
基板16は、特定の磁気記録媒体形態の支持体として有用な従来の任意の非磁性基板であることができる。磁気記録媒体形態に有用な基板材料の例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフサレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンナフサレートとの混合等のポリエステル系、ポリオレフィン系(例えば、ポリプロピレン)、セルロース誘導体系、ポリアミド系、およびポリイミド系が含まれる。
【0040】
いくつかの実施形態では、基板16上に複数の機能層を形成して被膜基板を提供することは、後述するように、フロントコート18およびバックコート20を含む機能層ならびに表面洗浄機能層等の他の機能層を形成することを含む。少なくとも1つの機能層は、流体ジェットアレイ52等の1つ以上の流体ジェットアレイを使用する流体ジェット印刷を介して基板16上に形成される。所望であれば、磁気記録媒体10の略すべての機能層が流体ジェット印刷を介して形成される。しかし、1つ以上の機能層が、例えば、スライドコーティングまたはスロットダイコーティング等の他のコーティング技法を使用して基板16上に形成されることが考えられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、流体ジェットアレイ52は、洗浄剤、例えば上述した溶媒等の洗浄溶媒を計量分配するように適合される。表面洗浄動作のいくつかの実施形態では、流体ジェットアレイ52は、基板16を解いた後、ウェブ経路に沿って配置され、または別法として、オフライン動作の一環として表面洗浄層の塗布に利用される。基板16は任意に、フロントコート18および/またはバックコート20の塗布前に洗浄される。特に、表面洗浄機能を有する1つ以上の機能層が基板上、基板16の上面22および/または底面24に流体ジェット印刷を介して形成される。このような「表面洗浄層」は任意に、基板16上の、1つ以上の機能層上に、その機能層形成後に形成されることも理解されたい。
【0042】
いくつかの実施形態では、表面洗浄層には、バインダ、潤滑剤、および粒子、例えば耐荷重粒子(LBP)、ヘッドクリーニング剤(HCA)、または磁性粒子等の溶質が実質的にない。洗浄剤は、本明細書において述べるあらゆるパターンまたは構成を含め、フラッド印刷、パターン印刷(例えば、複数のドット)、またはこれらの組み合わせとして基板16(または洗浄対象の他の表面)上に噴射される。
【0043】
確実に十分に高速な乾燥させるのを支援するために、洗浄剤は、極めて薄い層として、例えば略連続するのに十分な厚さであるが、それでも塗布後に略即座に洗い流せるか、または塗布後、所望の時間内に乾燥するのに十分薄く塗布することができる。表面洗浄層の乾燥も、任意に、追加層の形成前にインラインオーブンまたは他の乾燥手段を使用して促進させる。
【0044】
いくつかの実施形態では、バックコート20は、フロントコート18の形成前に基板16上に形成される。しかし、バックコート20をフロントコート18の後に形成してもよいことを理解されたい。さらに、フロントコート18およびバックコート20の部分を略同時に形成してもよい。例えば、フロントコート層およびバックコート層を略同時に印刷することができる。さらに、フロントコート18のいくつかの部分をバックコート20よりも先に形成し、他の部分をバックコート20の後に形成してもよく、この逆も同様である。
【0045】
上述したように、バックコート20は任意に、複数の機能を有する単層として、またはそれぞれが1つ以上の機能を有する複層として基板16上に形成される。複層構造を含むいくつかの実施形態では、裏面副層40および裏面外面層42が両方とも、基板16上に形成される。しかし、例えば、裏面副層40および外面層42の機能を単層に「組み合わせ」た、単層構造も考えられることを理解されたい。さらに、いくつかの実施形態では、バックコート20は、所望に応じて裏面副層40の部分として、外面層42の部分として、または裏面副層40および外面層42とは別個の層として接着促進機能を果たす1つ以上の機能層を含む。
【0046】
例えば、任意に、適当なバインダ系および溶媒が利用されて、流体ジェット印刷可能であり、それによって少なくとも部分的にプライマ層として機能する機能層を形成する表面下塗り分散流体が提供される。例えば、バインダが非水性有機溶媒に分散する。所望に応じて、界面活性剤または湿潤剤および1つ以上の硬化剤、ならびに任意の潤滑剤、LBP、HCA、または触媒等の他の成分を含めることができる。いくつかの実施形態では、プライマ層は、主に接着促進剤として機能する特殊な機能層である。特に、この機能層は、実質的にバインダ系豊富な、例えば最大で約100重量パーセント(wt%)のバインダ系または他の接着促進剤を湿潤状態、乾燥状態、または両方で含むことで「特化」することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、プライマ層は、基板16上、例えば基板16の底面24上に、流体ジェット印刷を介して複数のドットとして、または本明細書において述べた任意のパターンおよび/またはフラッド印刷として形成される。プライマ層は、化学的ならびに機械的な接合構造を向上させるように機能することができる。例えば、三次元構造を形成することにより、機械的な接合を促進することができ、適当なプライマを選択して化学的接合を促進することができる。さらに、本明細書に提供される教示を鑑みて当業者により理解されるように、印刷パターンをランダム化して、機械的接合をさらに増大させることができる。複数の連続した層を接着促進機能のために利用してもよいことも理解されたい。例えば、第1のプライマ層を基板16上にフラッド印刷して、第1のプライマ層形成後に熱乾燥またはb段階処理またはUV硬化またはb段階処理を施すことができる。いくつかの実施形態では、所望に応じて、第2の、続けてパターン成形されるプライマ層を第1のプライマ層上に形成して、さらなる構造を追加することができる。
【0048】
複層構造では、裏面副層40は、コーティングダイ等のコーティングヘッドを使用して、流体ジェット印刷を使用して、または他の手段を介して基板16上に形成される。いくつかの実施形態では、裏面副層40は、上述したような適当なバインダ樹脂と組み合わせて、1つ以上のカーボンブラック成分を含む。裏面副層40は、所望に応じて潤滑剤、ヘッドクリーニング剤(HCA)、または他の成分も含む。
【0049】
いくつかの実施形態では、裏面外面層42が続けて、流体ジェット印刷を使用して基板16の裏面副層40上に形成される。裏面副層40は、裏面外面層42の塗布前に乾燥させる、すなわちウェットオンドライ形成することができる。しかし、裏面副層40への裏面外面層42のウェットオンウェット形成も考えられる。
【0050】
いくつかの実施形態では、任意に、裏面外面層42の分散流体は流体ジェット印刷可能であり、耐荷重粒子を含み、バックコート副層40に見合う必要な溶媒およびバインダと共に潤滑剤および/または他の成分を含む場合もあれば、含まない場合もある。適当な耐負荷粒子としては、例えば、炭素、黒鉛、二酸化ケイ素、二硫化モリブデン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリコーンビーズ、ポリメタクリレートビーズ、これの組み合わせ、および他が含まれる。いくつかの実施形態では、裏面外面層42の耐荷重粒子は、単独の状態および/または凝集した状態で、約1μm〜約3μmの絶対サイズを超えない。しかし、流体ジェット印刷に向けた他の適したサイズ(例えば、ジェットノズルの早期の詰まりを回避するようなサイズ)も考えられる。
【0051】
続けて、裏面外面層42の耐荷重粒子分散流体を裏面副層40に塗布することにより、裏面外面層42の耐荷重粒子が、磁気記録テープ10の裏面28の近傍に配置される可能性が高くなる。逆に、耐荷重粒子が裏面副層40のカーボン分散流体に添加され、裏面副層40のカーボン分散流体の部分としてダイコーティングされる場合、バックコート20の分散流体コーティング内に分散した耐荷重粒子は、通常、裏面28、または裏面28の近傍にすべてがあるわけではないため、比較的より小さい耐荷重機能がバックコート20に提供される。さらに、このような「標的(target)」手法がない場合には通常、裏面28での耐荷重機能を促進するために、より大きな耐荷重粒子が必要になり得る。
【0052】
バックコート20の機能層を流体ジェット印刷することにより、比較的高度な制御が層形成に対して提供される。例えば、機能層は幅広い厚さおよびパターンを通して印刷可能であり、それにより、任意の印刷パターン、厚さ勾配、および本明細書において述べた他の印刷層構造を含む事前に選択された様式で、例えば、機械方向MD、ウェブ横断方向CW、および/またはz方向(すなわち、機能層の厚さ方向)で耐荷重粒子(LBP)が空間的に塗布される。さらに、デュアルスロットダイコーティング等の他のいくつかのコーティング方法とは対照的に、機能層は、先に形成された層の、前の被膜層が形成された位置の近傍ではない位置に印刷することができる。
【0053】
特に、いくつかの実施形態では、機能層を次々と間を置かずに形成する必要はない。これは部分的に、例えば、前に形成された層の分散流体粘度等の、典型的なダイコーティング考慮事項が、いくつかの実施形態による流体ジェット印刷を使用しての層形成に当てはまらないためであることができる。したがって、多くのウェットオンウェットコーティング動作では、例えば、裏面副層40が形成される位置と裏面外面層42が続けて裏面副層40上に形成される位置とが比較的近傍にあることを必要とし得るのに対して、いくつかの実施形態では、流体ジェットアレイ52をウェブ経路に沿って異なる位置に配置することができる。さらに、流体ジェット印刷は、制御された条件下で、かつ小量の生成物で、分散流体を乾燥した被膜上に塗布(ウェットオンドライ)するように容易に適合可能である。実際に、2層40、42の形成は、インラインで、同じウェブ経路に沿って、または略連続した形成プロセスの一環として行われる必要はない。
【0054】
バックコート20と同様に、フロントコート18は、複数の機能を有する単層として、または1つ以上の機能をそれぞれ示す複層として基板16上に形成される。いくつかの実施形態では、フロントコート18は、所望に応じて正面副層30の部分として、磁気記録層32の部分として、または正面副層30および磁気記録層32とは別個の層として接着促進機能を果たす1つ以上の機能層を含む。バックコート20に関連して説明したプライマ層の実施形態の製造および設計の原理が、フロントコート18のプライマ層の各種実施形態にも等しく適用可能であるため、これ以上の考察は行わない。
【0055】
いくつかの実施形態では、正面副層30は本質的に非磁性である。本明細書において使用する「本質的に非磁性」は、保磁力約300Oe未満を示す。参考のために、「保磁力」および「磁気保磁力」は同義であり、Hcと略され、材料が磁気飽和に達した後、強磁性材料の磁化を約ゼロに低減するために必要な磁場の強度を指す。本質的な非磁性材料としては、非磁性または軟磁性の成分および樹脂バインダ系が含まれる。本明細書において使用する「軟磁性成分」なる用語は、保磁力約300Oe未満を有する磁性成分を指す。正面副層30を乾燥状態で本質的に非磁性であるように形成することにより、記録層32の電磁特性は実質的に悪影響を受けない。しかし、実質的な悪影響が発生しない程度まで、正面副層30は小量の磁性粉体を含んでよい。
【0056】
正面副層30は、主に顔料材料、導電性カーボンブラック、研磨剤もしくはヘッドクリーニング剤、バインダ樹脂、ヘッドクリーニング剤バインダ、触媒もしくは架橋剤等の反応促進剤、潤滑剤、および/または溶媒のうちの少なくとも1つを含むこともできる。正面副層30の材料が混合され、正面副層30がその後、基板16上に、基板16の上面22上に、または別個のプライマ層(適用可能な場合)上に形成される。他の機能層と同様に、正面副層30は任意に、例えばコーティングヘッドを使用して被膜されるか、またはフラッド印刷として、パターン印刷として、厚さ勾配を付けて、または本明細書において適当であると説明されている任意の印刷層構造に従って流体ジェット印刷される。
【0057】
コーティングヘッドを使用するいくつかのコーティング動作では、フロントコート18、特に磁気記録層32および正面副層30は、複層ウェットオンウェットコーティングプロセス、例えばスライドコーティングまたはデュアルスロットダイコーティング等の一環として形成される。しかし、上で参照したように、例えば、デュアルスロットダイコーティングまたはスライドコーティングとは対照的に、流体ジェット印刷を使用する場合、磁気記録層32をウェブ経路に沿って、正面副層分散流体がウェブ経路に沿って塗布された位置とは別個で非近傍の位置に塗布することが可能である。いくつかの実施形態では、磁気記録層32はウェットオンウェット動作の一環として正面副層30上に流体ジェット印刷されるが、流体ジェットアレイ52は、正面副層30が形成されているウェブ経路上の箇所の近傍にない。
【0058】
しかし、いくつかの実施形態では、正面副層分散流体が基板16上に形成され、乾燥かつ/または硬化される。正面副層30の乾燥後、磁気記録層32が次いで、流体ジェット印刷を使用してウェットオンドライ動作の一環として塗布され、これは正面副層30の塗布とインラインまたはオフラインであることができる。ウェットオンウェット法またはウェットオンドライ法のいずれを用いる場合でも、磁気記録層32が潜在的に流体ジェット印刷される場所の厚さのばらつきが比較的低く、かつ/または薄いことが、磁気記録層32ならびに他の記録層に対するあらゆる厚さ均等性についての懸念を軽減するのに役立ち得ることが考えられる。例えば、より均等な厚さを有する磁気記録層32を提供することで、磁気記録媒体10の磁束変調特性を向上させることができる。しかし、磁気記録層32の所定の厚さ勾配または他の事前に選択される厚さ変化も考えられる。
【0059】
参考のために、磁束の程度が磁気記録層32の表面にわたって変化する場合、磁気記録層32に書き込まれる磁化が異なる信号対雑音比を示す可能性がある。したがって、読み出しに妥当なノイズフロアは最悪の場合を想定しなければならず、これは一般に記憶密度および記録性能の増大を阻む。磁束は、特に磁気記録層32の厚さのばらつきによって変化し得る。この種のばらつきは、所与の磁気記録層32の体積内で磁化可能な材料の量に影響し得る。したがって、磁気記録層32の厚さのばらつきが比較的小さいいくつかの実施形態が、より望ましい磁束変調を提供することができる。
【0060】
さらに、磁気記録層32がウェットオンドライ動作の一環として正面副層30上に形成されるいくつかの実施形態では、磁気記録層32を形成する前に、磁気記録媒体10に対して表面処理(例えば、カレンダロールを使用するカレンダ加工)を施すことができる。正面副層30は、表面処理前に、例えば従来のオーブンを使用して乾燥されるか、または乾燥され硬化される。別法として、副層30をUV硬化可能にし、ウェブ経路に沿ってUV硬化ステーションにおいてUV硬化(b段階処理を含む)することができる。任意に、磁気記録層32をUV硬化可能にしてもよいことにも留意されたい。別法として、いくつかの実施形態では、カレンダ加工等の表面処理により、続く磁気記録層32の形成を確実なものにする。
【0061】
上で参照したように、磁気記録層32は、基板16の正面副層30上に、ウェットオンウェット動作またはウェットオンドライ動作の一環として形成される。磁気記録層32は任意に、任意の妥当な印刷パターン、厚さ勾配、または本明細書において説明された他の構造に従って、例えばコーティングヘッドを使用して正面副層30上に被膜されるか、または正面副層30上に流体ジェット印刷される。
【0062】
いくつかの実施形態では、乾燥され処理された磁気記録層32は、所望に応じて最終的な厚さ約0.03μm〜約0.25μmまたは約0.05μm〜0.15μmを有するが、他の厚さも考えられる。任意に、記録層32は、乾燥状態で残留磁化‐厚さ積(Mrt)が約2.5memu/cm未満または約2.1memu/cm未満であるように形成される。「残留磁化‐厚さ積」なる用語は、強磁場(796kA/m)での飽和後の残留磁化と磁性層コーティングの厚さとを乗算した積を指す。いくつかの実施形態では、乾燥した磁気記録層32は、例えば、300エルステッド(Oe)超、2000Oe超、または2300Oe超の保磁力を特徴とするが、より高い値を含む他の保磁力も考えられる。
【0063】
いくつかの実施形態では、磁気記録層32は、記録層32が磁気記録機能と同様にヘッドクリーニング機能も提供するように機能するように研磨成分も含む。所望であれば、磁気記録層32のヘッドクリーニング剤成分は、以下さらに詳細に後述するように正面外面層34がフロントコート18に対してヘッドクリーニング機能を提供する場合、実質的に低減する、または実質的に省くことさえ可能である。同様に、記録層32にその他に含まれる潤滑剤または他の添加剤も低減または省いて、正面外面層34または正面外面層34を画定する複数の機能層内に含めてもよい。
【0064】
それに関係なく、いくつかの実施形態では、記録層32の磁性顔料の分散流体は、1つ以上の磁性成分を高度に含有する。例えば、記録層32は、いくつかの実施形態では、磁性成分を乾燥状態で約75重量%含むように形成されるが、他の値も考えられる。上で言及したように、任意の下層への接着等の他の記録層特性を許容できないほど低減することなく、より高い磁性成分濃度を実現するには、任意に、所望に応じて記録層32のヘッドクリーニング剤、潤滑剤、耐荷重粒子、および/または他の成分の量を低減するか、または略なくす。
【0065】
いくつかの実施形態では、磁性粒子は、上述したようなバインダおよび/または溶媒の添加前に、濃磁性粒子分散体として用意される。濃磁性粒子分散体は、例えば、高速インペラミル、磨砕機、サンドミル、および他等の分散機を使用して用意することができる。濃磁性粒子分散体は、適した非水性有機溶媒で希釈して、流体ジェット印刷に適した磁性被膜組成物を作ることができる。通常、非水性有機溶媒は、上述したようなバインダを中に溶解または分散させている。さらに、単独の状態および/または凝集した状態の各種の分散粒子を、約1μm〜約5μmを超えない絶対サイズにすることができる。いくつかの実施形態では、粒子サイズの低減が、流体ジェットアレイ62の早期の詰まりの低減に役立つ。
【0066】
磁気記録層32形成後のある時点で、磁気記録媒体10は磁気的に配向されて乾燥される(当てはまる場合にはUV硬化される)。より具体的には、記録層32を1つ以上の磁場に通して、全体的に記録層32の金属粒子の磁化方向を揃えることによって記録層32を配向させる。一例では、各磁場が、電気コイルおよび/または永久磁石によって形成される。配向の一測定基準である「配向比」は、強磁場(796kA/m)での飽和後に磁場が印加されていない状態での残留磁化の、記録媒体10の意図する搬送方向に平行する方向で測定される量と磁気記録媒体10の意図する搬送方向を横断する(すなわち、垂直であるが、磁気記録媒体10の平面内で)測定される対応する量との比を指す。一実施形態では、完全に処理されて乾燥した記録層32は、例えば、配向比約2.2超または約2.4超を有する。
【0067】
正面外面層34は任意に、磁気記録層32上に塗布される。いくつかの実施形態では、正面外面層34の塗布前の表面処理により、例えば、正面外面層34がヘッドクリーニング剤を含む場合、カレンダロールの摩耗を低減することができる。参考のために、通常、表面処理は、鋼の上に鋼のある(SOS:steel−on−steel)カレンダロール、鋼の上に弾性体のある(COS:compliant−on−steel)カレンダロール、または弾性体の上に弾性のある(COC:compliant−on−compliant)カレンダロール、およびインラインプロセスもしくはオフラインプロセスの一環としてのこれの組み合わせ、またはこれらの組み合わせの使用を含む。正面外面層34のヘッドクリーニング剤粒子は比較的高い研磨性を有するため、カレンダ加工を磁気記録層32の塗布後であるが正面外面層34の塗布前に行うことにより、カレンダロールが研磨性ヘッドクリーニング剤粒子と接触しないことから、カレンダロールの摩耗を低減することができる。
【0068】
カレンダ加工は、磁気記録層32の形成後または媒体10の製造での別の段階においてインラインおよび/オフラインで行うことができる。いくつかの実施形態では、インラインカレンダ加工後、オフラインカレンダ加工が、磁気記録媒体10を一連の概して非弾性のローラ、例えば複数のスチールローラに通すことを含む。
【0069】
それに関係なく、正面外面層34は任意に、磁気記録層32の形成後、例えば当てはまる場合には磁化配向後あるいは前に形成される。いくつかの実施形態では、乾燥した正面外面層34は本質的に非磁性であり、非磁性または軟磁性成分または粉体および樹脂バインダ系を含む。上で参照したように、「本質的に非磁性」なる用語は、保磁性が約300Oe未満であることを指す。さらに、上面外面層34は比較的薄く形成することができる。いくつかの実施形態では、上面外面層34を比較的薄く、かつ/または乾燥時に本質的に非磁性に形成することにより、記録層32の電磁特性は実質的に悪影響を受けない。これに代えて、またはこれに加えて、外面層34は、記録層32への電磁干渉を低減するパターンを画定するように形成することができる。例えば、一実施形態では、外面層34は任意に、磁気記録媒体10の各エッジに沿って縦方向に延在する「ストリップ」または媒体10の各エッジの間に横方向に延在する断続ストリップとして形成される。
【0070】
それに関係なく、正面外面層34は、ウェットオンウェット動作またはウェットオンドライ動作の一環として形成される(すなわち、磁気記録層32の乾燥および/または硬化後)。いくつかの実施形態では、正面外面層34は、耐荷重機能(1つ以上の耐荷重粒子成分を含む)、ヘッドクリーニング機能(1つ以上のヘッドクリーニング剤成分を含む)、潤滑機能(1つ以上の潤滑剤を含む)、および反応促進機能(架橋剤および/または触媒等の1つ以上の反応種を含む)のうちの少なくとも1つを提供する。さらに、所望であれば、正面外面層34は任意に、上で参照したような1つ以上の機能を提供する複数の機能層として形成される。
【0071】
いくつかの実施形態では、正面外面層34は、潤滑剤を含む単層構造または別個に配置された潤滑機能層を含む複層構造である。有用な潤滑剤の例としては、C10〜C22脂肪酸、脂肪酸のC〜C18アルキルエステル、およびこれらの混合物;シリコーン油、フルオロケミカル潤滑剤、フルオロシリコーン等のシリコーン化合物;無機材料もしくはプラスチック材料の粉体等の粒子潤滑剤;ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸イソセチル、オレイン酸、およびこれらのブチルエステルおよびアミルエステル;および脂肪酸および脂肪酸エステルの混合物を含むこれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0072】
いくつかの実施形態では、潤滑剤は分散流体として、例えば上述したような溶媒に分散し、磁気記録層32上に流体ジェット印刷される。いくつかの実施形態では、潤滑層は、磁気記録層32の乾燥および/または硬化後に磁気記録層32上に流体ジェット印刷されるが、パターン印刷も考えられる。任意に、潤滑層はヘッドクリーニング層(後述)の部分として、または最大で約100重量%もしくはそれを超える潤滑材料を含有するなど、潤滑剤を高度に含有する別個の特殊な機能層として形成される。
【0073】
使用に際して、磁気記録層32の乾燥後または乾燥中等に、潤滑層を磁気記録層32とは別個にウェブ経路に沿った位置に塗布できることは、他の利点の中でも特に、例えば、磁気記録層32の磁性顔料による潤滑剤の望ましくない吸収を低減するのに役立つことができる。いくつかの実施形態では、潤滑剤が配置された層に吸収されることが考えられるが、潤滑剤が吸収されすぎると、フロントコート18の正面26に、十分な潤滑かつ/または効率的な潤滑機能を提供するための潤滑剤がなくなってしまうことになり得ることも理解されたい。参考のために、潤滑剤/潤滑層は任意に、裏面外面層34の部分として流体ジェット印刷を介して基板16上に同様に形成されて、裏面28での十分かつ/またはより効率的な潤滑機能を保証するのに役立つことも理解されたい。
【0074】
いくつかの実施形態では、先に参照したように、正面外面層34は任意に、ヘッドクリーニング機能を有する単層構造であるか、または正面外面素34の部分としてヘッドクリーニング機能層を含む複層構造である。有用なヘッドクリーニング剤の例としては、サイズが約2μm未満、0.5μm未満、または他の直径のアルミナ粒子、二酸化クロム粒子、アルファ酸化鉄粒子、および二酸化チタン粒子が含まれるがこれらに限定されない。このようなヘッドクリーニング剤粒子は、一般に、モース硬度約5超を有するが、他の値も許容可能である。いくつかの実施形態では、研磨性ヘッドクリーニング剤粒子は、単独の状態および/または凝集した状態で、絶対サイズ約1〜約3μmを超えない。
【0075】
ヘッドクリーニング剤成分は、バインダ系ならびに他の成分、例えば上で参照した潤滑剤と共に溶媒に分散して、流体ジェット印刷可能な分散流体を形成する。ヘッドクリーニング剤分散流体は、基板16上の磁気録層43に、所望に応じてウェットオンウェット動作またはウェットオンドライ動作の一環として流体ジェット印刷される。いくつかの実施形態では、ヘッドクリーニング層はヘッドクリーニング機能に特化され、ヘッドクリーニング剤粒子を比較的高度に含有する。いくつかの実施形態では、ヘッドクリーニング層分散流体は、約20重量%またはこれを超えるヘッドクリーニング剤を含有するが、他の値も考えられる。さらに、図4に関連して上で参照したように、ヘッドクリーニング層は任意に、パターン印刷されて、ヘッドクリーニング機能を向上させる。
【0076】
例えば、磁気記録層32とは別個の層としてヘッドクリーニング剤を流体ジェット印刷するは、正面26にない、または正面26の近傍にないヘッドクリーニング剤成分に関連する問題の低減に役立つ。例えば、ヘッドクリーニング剤粒子が磁気記録層分散流体に単に添加されるだけの場合、通常、このようなヘッドクリーニング剤粒子のすべてが磁気記録層32の外面に、または外面の近傍に存在するとは限らない。したがって、効率の劣るヘッドクリーニング機能が提供される。さらに、磁気記録層32内のヘッドクリーニング剤を単に増量するだけでは(時として、磁気記録層32の外面のヘッドクリーニング剤の含有率を高めるために行われるように)、磁気記録層32の電磁特性または他の属性の低下に繋がる恐れがある。
【0077】
いくつかの実施形態では、ヘッドクリーニング層を磁気記録層32、特に正面外面層34とは別個に流体ジェット印刷することにより、磁気記録層32の電磁特性を実質的に低減することなく、または少なくとも、電磁属性を、ヘッドクリーニング剤粒子を磁気記録層分散流体にそのまま組み込むことによるものと、表面で同様の濃度のヘッドクリーニング剤粒子を実現するために必要な程度よりも低く低減することなく、所定の、制御された量のヘッドクリーニング剤を正面26近傍に塗布することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、正面外面層34は、磁気記録媒体10を最終形態形状にする前に基板16上の、磁気記録層32上に形成されるが、他の実施形態では、正面外面層34および/またはその部分は、磁気記録媒体10を最終形態形状にした後に形成される。磁気記録媒体10が磁気記録テープとして適合されるばあい、最終形態形状にすることは、磁気記録媒体10を所望のテープ幅または最終形態幅にスリッティングすること、および磁気記録媒体10を所望の長さ、例えば磁気記録テープのリール長さに切断することを含む。いくつかの実施形態では、スリッティング中、磁気記録媒体10の一方のエッジが「支持エッジ」として形成され、磁気記録媒体10の幅の対向するエッジが「非支持エッジ」として形成される。それに関係なく、磁気記録媒体10は所望に応じて最終形態にされ、その後、処理される。
【0079】
図6Aおよび図6Bを参照すると、いくつかの実施形態では、磁気記録媒体10は、駆動ヘッドを積極的にクリーニングするように適合されるクリーニングセクション600を画定するように形成される。例えば、いくつかの実施形態では、正面外面層34の部分が、ヘッドクリーニング機能のために正面26の第1、第2、および第3の領域610、612、614を画定するように流体ジェット印刷され、各領域610、612、614は磁気記録媒体10の第1の端部12(または所望に応じて第2の端部14)の近くにあり、クリーニングセクション600に隣接する正面26の部分は、実質的に研磨性が低い性質のものである。クリーニングセクション600は、磁気記録媒体10が最終形態にされた後に形成されるが、任意に、同様のパターンまたは組成物が、最終形態にされる前にも同様に、または別法として印刷されることを理解されたい。
【0080】
それに関係なく、いくつかの実施形態では、領域610、612、614は累積して縦方向に長さ約10フィート(304.8cm)分延在するが、他の寸法も考えられる。第1、第2、および第3の各領域は、上で参照したヘッドクリーニング剤等の研磨粒子を含む。図6Aに示すように、各領域610、612、614は粒子サイズをそれぞれ増大させ、それにより、使用中に、磁気記録媒体10が機械方向MDに移動する際にテープ駆動ヘッドを粗く研磨してから細かく研磨するようにする。特に、いくつかの実施形態では、第1の領域610は第1の平均サイズの粒子を含み、第2の領域612は、第1の平均サイズよりも大きな第2の平均サイズの粒子を含み、第3の領域614は第2の平均粒子サイズよりも大きな第3の平均サイズの粒子を含む。
【0081】
さらに、これに加えて、またはこれに代えて、領域610、612、614のパターン解像度は図6Bに示すように第1、第2、および第3の解像度の間で変化する。いくつかの実施形態では、第1の解像度は第2の解像度未満であり、そして第2の解像度は第3の解像度未満である。いくつかの実施形態では、ヘッドクリーニング層印刷パターンの解像度を低減していくことにより、テープが機械方向MDに移動する際、テープ駆動ヘッドはまず積極的に研磨されてから、細かく研磨される。
【0082】
したがって、いくつかの実施形態では、別個のヘッドクリーニングカートリッジを使用して読み出し/書き込みヘッドを積極的にクリーニングするのではなく、任意に、磁気記録媒体10の長さに、例えばセルフクリーニング磁気テープカートリッジの一部としてセルフクリーニング機能が提供される。
【0083】
さらに、所望であれば、最終形態幅にされた後、または処理での別の適当な段階において、エッジ仕上げ機能を提供するエッジ仕上げ機能層を基板16上に形成することができる。例えば、磁気記録媒体10のエッジは、デブリ、ひび割れ、突起、または他の望ましくない物質/または構造の除去を特に対象とすることができる。いくつかの実施形態では、エッチング液(例えば、液状の酸または塩基)、溶媒、または他の適当なエッジ仕上げ剤等の化学物質が、基板16上の磁気記録媒体10上に、磁気記録媒体10のエッジに沿って形成され、例えば流体ジェット印刷される。このようにして、基板16、機能層のひび割れ、スリットエッジでの突起、デブリ、または他の望ましくない物質および構造、または媒体10にとっての異物を略除去または低減することができる。いくつかの実施形態では、化学物質が基板材料に使用される。そして、いくつかの実施形態では、MEK等の溶媒が機能層材料に使用される。それに関係なく、いくつかの実施形態では、基板材料および/または機能層材料は、所望に応じて、例えば磁気記録媒体10のエッジにおいて、磁気記録媒体10から別離され、かつ/または除去される。
【0084】
上記を鑑みて、任意に、磁気記録媒体10に関連する任意の成分または材料が流体ジェット印刷を介して流体または分散流体として計量分配されることが考えられることを理解されたい。さらに、このような印刷層は、種々のパターン、厚さ、および本明細書において述べた他の層構造で流体ジェット印刷できることが考えられる。この理解によれば、特定の実施形態が本明細書において図示され説明されたが、本発明の範囲から逸脱することなく、同じ目的を実現するように計算された幅広い代替および/または均等な実施態様で、図示し説明された特定の実施形態を置き換えられることが当業者により理解されよう。化学、機械、電気機械、電気、およびコンピュータの分野での当業者は、本発明が非常に広い範囲の実施形態で実施可能なことを容易に理解しよう。本願は、本明細書において考察した好ましい実施形態のあらゆる適合または変形を包含するものである。したがって、明らかに、本発明は特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の原理による磁気記録媒体の実施形態の概略側面図である。
【図2】本発明の原理による、図1の磁気記録媒体の1つ以上の機能層を印刷する流体ジェットプリンタの概略図である。
【図3】本発明の原理による層印刷パターンの各種実施形態の概略上面図である。
【図4】本発明の原理による印刷層の厚さ勾配の各種実施形態の概略側面図である。
【図5】本発明の原理による印刷層の各種実施形態の概略側面図である。
【図6】本発明の原理による、図1の磁気記録媒体の印刷層の実施形態を示す概略側面図(図6A)および概略上面図(図6B)である。
【符号の説明】
【0086】
10 磁気記録媒体
12 第1の端部
14 第2の端部
16 基板
18 フロントコート
20 バックコート
22 上面
24 底面
26 正面
28 裏面
30 正面副層
32 磁気記録層
34 正面外面層
40 裏面副層
42 裏面外面層
50 流体ジェットプリンタ
52 流体ジェットアレイ
54 コントローラ
62 流体ジェットポンプ
66 流体供給源
68 流体槽
70 アクチュエータ
72 ノズル
200 第1のパターン
200A 第1の組成物
200B 第2の組成物
202 複数のドット
210 第2のパターン
210A 第1の組成物
210B 第2の組成物
212 複数のドット
220 第3のパターン
220A 第1の組成物
220B 第2の組成物
222 複数のドット
230 第4のパターン
230A 第1の組成物
230B 第2の組成物
232 フラッド印刷またはバンド
300 第1の厚さ勾配
310 構造
320 第2の厚さ勾配
500 第1の機能層
510 第1の機能層
512 第2の機能層
520 第1の機能層
522 第2の機能層
530 第1の機能層
532 第2の機能層
534 第3の機能層
600 クリーニングセクション
610 第1の領域
612 第2の領域
614 第3の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を提供する工程、
前記基板上に複数の機能層を形成し、記録に適合した被膜基板を提供する工程であって、前記層の少なくとも1つを印刷層として流体ジェット印刷することを含む工程、および
前記複数の機能層を前記基板上に形成した後、前記被膜基板を最終形態にする工程、
を含む、磁気記録媒体を製造する方法。
【請求項2】
前記印刷層が、ヘッドクリーニング剤および耐荷重粒子のうちの少なくとも一つとして機能するように適合された成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記印刷層が、接着下塗り層、表面洗浄層、エッジ仕上げ層、反応促進層、および潤滑層のうちの少なくとも1つとして機能するように適合される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の層を形成する工程が、
前記基板上に前記複数の層のうちの1つ以上の層を形成する工程、
前記1つ以上の層を乾燥させる工程、および
前記1つ以上の乾燥させた層上に前記印刷層を流体ジェット印刷する工程、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板上に前記複数の層のうちの1つ以上の層を形成する工程、
前記1つ以上の層をカレンダ加工する工程、および
前記1つ以上のカレンダ加工された層上に前記印刷層を流体ジェット印刷する工程、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−71471(P2008−71471A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−173778(P2007−173778)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(596099398)イメイション・コーポレイション (37)
【氏名又は名称原語表記】Imation Corp.
【Fターム(参考)】