説明

記録媒体駆動装置並びにヘッド位置検出方法およびクロック信号生成方法

【課題】比較的に簡単な構造で高い精度のトラッキングサーボ制御を実現することができる記録媒体駆動装置およびヘッド位置決め方法を提供する。
【解決手段】分離トラック26は、隣接する第1および第2記録トラック25a、25bを隔てる。第1ヘッド38の出力は境界47との相対位置に応じて変化する。第2ヘッド39の出力は境界46との相対位置に応じて変化する。しかも、第1および第2ヘッドは異なる境界47、48上に配置される。第1および第2ヘッド38、39の出力は確実に変化する。出力の差は確実に変化する。こうした出力の差に基づき正確な位置情報は生成される。位置情報はトラッキングサーボ制御に利用されることができる。その結果、トラッキングサーボ制御は高い精度で実現されることができる。しかも記録媒体ではサーボセクタ領域の形成は省略される。記録媒体では比較的に簡単な構造が確立されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体上の記録トラックにヘッドを位置決めする記録媒体駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されるように、いわゆるディスクリートトラック媒体は広く知られる。こうした媒体には、隣接する記録トラック同士を隔てる分離トラックが区画される。例えば同文献では、分離トラックは磁性体から構成される。例えば同文献の図19や図20に示されるように、いわゆるトラッキングサーボ制御にあたってトラッキングヘッドが用いられる。トラッキングヘッドは、分離トラックに書き込まれるトラッキング信号を読み出す。読み出されたトラッキング信号に基づき読み出し書き込みヘッドは所定の記録トラックを辿ることができる。
【特許文献1】特開2002−279616号公報
【特許文献2】特開2003−151103号公報
【非特許文献1】S.E.Lambert,et.al.,“Recording Characteristics of Submicron Discrete Magnetic Tracks”,IEEE Transactions on Magnetics,vol.23(5),1987年9月,p.3690−3692
【非特許文献2】Yoshikazu Soeno,et.al.“Feasibility of Discrete Track Perpendicular Media for High Track Density Recording”,IEEE Transactions on Magnetics,vol.39(4),2003年7月,p.1967−1971
【非特許文献3】Stephen Y.Chou,et.al.,“Single−domain Magnetic Pillar Array of 35nm Diameter and 65Gbits/in.2 Density for Ultrahigh Density Quantum Magnetic Storage”,J.Appl.Phys.76(10),1994年11月,p.6673−6675
【非特許文献4】内藤勝之、「有機分子の自己組織化ナノ構造を利用した2.5インチディスク状パターンドメディアの作製」、日本応用磁気学会誌、vol.27(3)、2003年、p.101−105
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上のようなトラッキングサーボ制御では、例えばトラッキングヘッドのコア幅が分離トラックのトラック幅よりも大きい場合や小さい場合が想定される。このとき、トラッキングヘッドが媒体の半径方向に移動しても、トラッキング信号の出力値は例えば最大値のまま変化しない場合が考えられる。その結果、読み出し書き込みヘッドが記録トラックから半径方向にずれても、トラッキングヘッドは半径方向のずれを検出することができない。トラッキングサーボ制御の精度は低下してしまう。
【0004】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、比較的に簡単な構造で高い精度のトラッキングサーボ制御を実現することができる記録媒体駆動装置およびヘッド位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1発明によれば、隣接する第1および第2記録トラックを隔てる分離トラックおよび第1記録トラックの境界上に第1ヘッドを配置すると同時に、分離トラックおよび第2記録トラックの境界上に第2ヘッドを配置する工程と、第1および第2記録トラックに基づき第1および第2ヘッドから供給される出力の差を検出する工程と、検出された差に基づき、第1および第2ヘッドの位置を特定する位置情報を生成する工程とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置のヘッド位置検出方法が提供される。
【0006】
こういったヘッド位置検出方法では、第1ヘッドは分離トラックおよび第1記録トラックの境界上に配置されることから、第1記録トラックに基づき第1ヘッドと境界との相対位置に応じて第1ヘッドの出力は変化する。同様に、第2ヘッドは分離トラックおよび第2記録トラックの境界上に配置されることから、第2記録トラックに基づき第2ヘッドと境界との相対位置に応じて第2ヘッドの出力は変化する。しかも、第1および第2ヘッドは異なる境界上に配置されることから、第1および第2ヘッドの出力は確実に変化する。出力の差は確実に変化する。出力の差に基づき正確な位置情報は確実に生成されることができる。こうした位置情報はトラッキングサーボ制御に利用されることができる。その結果、トラッキングサーボ制御は高い精度で実現されることができる。
【0007】
しかも、トラッキングサーボ制御は第1および第2ヘッドの出力の差に基づき実現される。出力の差の検出にあたって第1および第2ヘッドの出力が用いられる。記録媒体ではいわゆるサーボセクタ領域の形成は省略されることができる。記録媒体ではこれまでの記録媒体に比べて記録トラックの面積は増大することができる。記録トラックに書き込まれる情報の記録面積は増大することができる。その上、記録媒体では比較的に簡単な構造が確立されることができる。記録媒体の製造にあたってサーボセクタ領域の形成工程は省略されることができる。作業時間は著しく短縮されることができる。
【0008】
以上のような記録媒体駆動装置のヘッド位置検出方法では、第1および第2記録トラックのトラック幅Lと、分離トラックのトラック幅Wとが規定される際に、第1および第2ヘッドの個々のコア幅Xは、
【数1】

ただし、
【数2】

に従って設定されればよい。
【0009】
第2発明によれば、隣接する第1および第2記録トラックを隔てる分離トラックを区画する記録媒体と、記録媒体の分離トラックおよび第1記録トラックの境界に向き合わせられる第1ヘッドと、記録媒体の分離トラックおよび第2記録トラックの境界に向き合わせられる第2ヘッドと、第1および第2ヘッドを支持し、第1および第2記録トラックの幅方向に第1および第2ヘッドを移動させる駆動機構と、第1および第2記録トラックに基づき第1および第2ヘッドから供給される出力の差に基づき駆動機構の動きを制御する制御回路とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置が提供される。
【0010】
こういった記録媒体駆動装置では、前述と同様に、第1および第2ヘッドの出力は変化する。しかも、第1および第2ヘッドは異なる境界に向き合わせられることから、例えば第1および第2ヘッドのいずれか一方の出力が変化しない場合でも、他方の出力は確実に変化する。出力の差は確実に変化する。出力の差に基づき第1および第2ヘッドの位置は確実に検出されることができる。こうして出力の差に基づき制御回路は駆動機構の動きを制御する。その結果、トラッキングサーボ制御は高い精度で実現されることができる。
【0011】
しかも、前述と同様に、出力の差の検出にあたって第1および第2ヘッドの出力が用いられる。記録媒体ではいわゆるサーボセクタ領域の形成は省略されることができる。記録媒体ではこれまでの記録媒体に比べて記録トラックの面積は増大することができる。記録トラックに書き込まれる情報の記録面積は増大することができる。その上、記録媒体では比較的に簡単な構造が確立されることができる。記録媒体の製造にあたってサーボセクタ領域の形成工程は省略されることができる。作業時間は著しく短縮されることができる。
【0012】
第3発明によれば、隣接する記録トラックを隔てる分離トラック内で、等間隔に配置される記録セルを含む記録セル列に沿って順番に第1および第2ヘッドを移動させる工程と、記録セルに基づき第1および第2ヘッドから供給される出力の差を検出する工程と、検出された差に基づきクロック信号を生成する工程とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置のクロック信号生成方法が提供される。
【0013】
こういったクロック信号生成方法では、第1および第2ヘッドから供給される出力に基づき出力の差が検出される。検出にあたって、第1および第2ヘッドは、分離トラック内で等間隔に配置される記録セルを含む記録セル列に沿って順番に移動する。こうした移動に基づき第1および第2ヘッドでは時間の経過とともに出力が変化する。しかも、第1および第2ヘッドは順番に移動することから、第1および第2ヘッドの出力の間で時間的なずれが観察される。こうして出力の差は変動する。変動に基づきクロック信号は生成される。その結果、記録媒体駆動装置では、例えば読み出し動作や書き込み動作のタイミングは制御される。いわゆるクロック制御は高い精度で実現されることができる。
【0014】
第4発明によれば、隣接する記録トラック同士を隔てる分離トラック内で等間隔に配置される記録セルを含む記録セル列を区画する記録媒体と、分離トラック内の記録セル列に沿って記録セルに向き合わせられる第1および第2ヘッドと、記録トラックに対して情報の読み出しおよび書き込みを実現する読み出し書き込みヘッドと、第1および第2ヘッドから供給される出力の差に基づき、読み出し書き込みヘッドの書き込みおよび読み出しのタイミングを特定するクロック信号を生成するクロック信号生成回路とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置が提供される。
【0015】
こういった記録媒体駆動装置では、第1および第2ヘッドから供給される出力に基づき出力の差が検出される。検出にあたって、第1および第2ヘッドは、分離トラック内で等間隔に配置される記録セルを含む記録セル列に沿って順番に移動する。こうした移動に基づき第1および第2ヘッドでは時間の経過とともに出力が変化する。しかも、第1および第2ヘッドの出力の間で時間的なずれが観察される。こうして出力の差は変動する。変動に基づき読み出し書き込みヘッドに対してクロック信号は生成される。その結果、記録媒体駆動装置では、読み出し書き込みヘッドの読み出し動作や書き込み動作のタイミングは制御される。いわゆるクロック制御は高い精度で実現されることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、比較的に簡単な構造で高い精度のトラッキングサーボ制御を実現することができる記録媒体駆動装置およびヘッド位置決め方法が提供されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。
【0018】
図1は本発明に係る記録ディスク駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)11の内部構造を概略的に示す。このHDD11は箱形の筐体すなわちエンクロージャ12を備える。エンクロージャ12は、例えば平たい直方体の内部空間すなわち収容空間を区画する箱形の筐体本体13を備える。筐体本体13は例えばアルミニウムといった金属材料から鋳造に基づき成形されればよい。筐体本体13には蓋体すなわちカバー(図示されず)が結合される。カバーと筐体本体13との間で収容空間は密閉される。カバーは例えばプレス加工に基づき1枚の板材から成形されればよい。
【0019】
筐体本体13の外側にはプリント基板(図示されず)が取り付けられる。プリント基板には、CPU(中央処理演算装置)やHDC(ハードディスクコントローラ)といったLSIチップのほか、コネクタが実装される。CPUやHDCの働きでHDD11の動作は制御される。コネクタには、例えばホストコンピュータのメインボードから延びる制御信号用ケーブルや電源用ケーブルが受け入れられる。CPUやHDCは電源用ケーブルから供給される電力に基づき動作する。
【0020】
エンクロージャ12の収容空間には記録媒体としての1枚以上の磁気ディスク14が収容される。磁気ディスク14はスピンドルモータ15の回転軸に装着される。スピンドルモータ15は例えば5400rpmや7200rpm、10000rpmといった高速度で磁気ディスク14を回転させることができる。
【0021】
収容空間には駆動機構すなわちヘッドアクチュエータ16がさらに収容される。このヘッドアクチュエータ16は、垂直方向に延びる支軸17に回転自在に支持されるアクチュエータブロック18を備える。アクチュエータブロック18には、支軸17から水平方向に延びる剛体のアクチュエータアーム19が規定される。アクチュエータアーム19は磁気ディスク14の表面および裏面ごとに配置される。アクチュエータブロック18は例えば鋳造に基づきアルミニウムから成型されればよい。
【0022】
アクチュエータアーム19の先端にはヘッドサスペンション21が取り付けられる。ヘッドサスペンション21は、アクチュエータアーム19の先端から前方に向かって延びる。周知の通り、ヘッドサスペンション21の前端には浮上ヘッドスライダ22が支持される。浮上ヘッドスライダ22は磁気ディスク14の表面に向き合わせられる。
【0023】
浮上ヘッドスライダ22には、磁気ディスク14の表面に向かってヘッドサスペンション21から押し付け力が作用する。磁気ディスク14の回転に基づき磁気ディスク14の表面で生成される気流の働きで浮上ヘッドスライダ22には浮力が作用する。ヘッドサスペンション21の押し付け力と浮力とのバランスで磁気ディスク14の回転中に比較的に高い剛性で浮上ヘッドスライダ22は浮上し続けることができる。周知の通り、複数枚の磁気ディスク14が筐体本体13内に組み込まれる場合には、隣接する磁気ディスク14同士の間で2本のアクチュエータアーム19すなわち2つのヘッドサスペンション21が配置される。
【0024】
アクチュエータブロック18には動力源すなわちボイスコイルモータ(VCM)23が接続される。このVCM23の働きでアクチュエータブロック18は支軸17回りで回転することができる。こうしたアクチュエータブロック18の回転に基づきアクチュエータアーム19およびヘッドサスペンション21の揺動は実現される。浮上ヘッドスライダ22の浮上中に支軸17回りでアクチュエータアーム19が揺動すると、浮上ヘッドスライダ22は半径方向に磁気ディスク14の表面を横切ることができる。
【0025】
図2は本発明の第1実施形態に係る磁気ディスク14の構造を概略的に示す。磁気ディスク14の表裏面には磁気ディスク14の周方向に沿って複数筋の記録トラック25、25…が延びる。各記録トラック25は同心円状に形成される。記録トラック25は磁性体から構成される。記録トラック25に磁気情報は書き込まれる。隣接する記録トラック25、25同士は非記録トラックすなわち分離トラック26で隔てられる。分離トラック26は、記録トラック25と同様に、磁気ディスク14の周方向に沿って同心円状に延びる。分離トラック26は非磁性体から構成される。ここでは、記録トラック25のトラック幅は分離トラック26のトラック幅の2倍〜4倍程度に設定されればよい。
【0026】
図3に示されるように、磁気ディスク14は基板27を備える。基板27には例えばガラス基板が用いられればよい。基板27の表面には磁性膜28が積層される。この磁性膜28に記録トラック25は確立される。磁性膜28には溝29が形成される。溝29には非磁性材料が埋め込まれる。こうして分離トラック26は確立される。記録トラック25および分離トラック26の表面には平坦面31が規定される。平坦面31は、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜といった保護膜32や、例えばパーフルオロポリエーテル(PFPE)膜といった潤滑膜33で被覆されればよい。こうした磁気ディスク14はいわゆる面内磁気記録媒体として構成される。磁性膜28では磁化容易軸は面内方向に設定される。
【0027】
図4に示されるように、浮上ヘッドスライダ22は、例えば平たい直方体に形成されるスライダ本体35を備える。このスライダ本体35は媒体対向面すなわち浮上面36で磁気ディスク14に向き合う。磁気ディスク14が回転すると、スライダ本体35の前端から後端に向かって浮上面36には気流が作用する。スライダ本体35は、例えばAl−TiC(アルチック)製の母材35aと、この母材35aの空気流出側端面に積層され、Al(アルミナ)から構成されるヘッド素子内蔵膜35bとで構成されればよい。
【0028】
スライダ本体35には電磁変換素子すなわち読み出し書き込みヘッド素子37が搭載される。この読み出し書き込みヘッド素子37はスライダ本体35のヘッド素子内蔵膜35b内に埋め込まれる。読み出し書き込みヘッド素子37は、例えば、スピンバルブ膜やトンネル接合膜の抵抗変化を利用して磁気ディスク14から情報を読み出す巨大磁気抵抗効果(GMR)素子やトンネル接合磁気抵抗効果(TMR)素子といった読み出しヘッドと、薄膜コイルパターンで生成される磁界を利用して磁気ディスク14に情報を書き込む薄膜磁気ヘッドといった書き込みヘッドとで構成されればよい。
【0029】
同様に、スライダ本体35には、第1読み出しヘッド素子38および第2読み出しヘッド素子39が搭載される。この第1および第2読み出しヘッド素子38、39は、読み出し書き込みヘッド素子37と同様に、スライダ本体35のヘッド素子内蔵膜35b内に埋め込まれる。第1および第2読み出しヘッド素子38、39は、磁気ディスク14から情報を読み出す例えばGMR素子やTMR素子といった磁気抵抗効果(MR)読み取り素子で構成されればよい。
【0030】
第1および第2読み出しヘッド素子38、39は記録トラック25の幅方向に並列に隣接して配置される。第1および第2読み出しヘッド素子38、39の境界Pと読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHとの距離は、記録トラック25の中心線CRと分離トラック26の中心線CDとの距離と同一に設定されればよい。第1および第2読み出しヘッド素子38、39のコア幅は同一に設定される。第1および第2読み出しヘッド素子38、39のコア幅の詳細は後述される。
【0031】
図5に示されるように、HDD11には制御回路すなわちトラッキング制御回路41が組み込まれる。トラッキング制御回路41は、第1および第2読み出しヘッド素子38、39から供給される再生信号に基づきいわゆるトラッキングサーボ制御を実現する。トラッキングサーボ制御では、浮上ヘッドスライダ22上の読み出し書き込みヘッド素子37と予め決められた軌道との乖離量に基づき支軸17回りでヘッドアクチュエータ16の回転量は決定される。こういったトラッキングサーボ制御の働きに基づき、読み出し書き込みヘッド素子37は磁気ディスク14の1記録トラック25上を辿ることができる。
【0032】
トラッキング制御回路41には第1読み出し回路42から第1読み出しヘッド素子38の再生信号が供給される。同様に、トラッキング制御回路41には第2読み出し回路43から第2読み出しヘッド素子39の再生信号が供給される。第1および第2読み出し回路42、43は第1および第2読み出しヘッド素子38、39にそれぞれセンス電流を供給する。第1および第2読み出しヘッド素子38、39の抵抗変化はセンス電流の電圧変化に現れる。電圧変化に基づき検出された再生信号は出力差演算回路44に供給される。
【0033】
出力差演算回路44は、第1読み出し回路42から供給される再生信号と、第2読み出し回路43から供給される再生信号との出力差を検出する。こうして検出された出力差に基づき、出力差演算回路44では、第1および第2読み出しヘッド素子38、39の位置を特定する位置情報が生成される。位置情報の生成の詳細は後述される。この位置情報に基づき制御信号は生成される。制御信号はVCM23に供給される。VCM23は制御信号の大きさに基づき支軸17回りでヘッドアクチュエータ16を回転させる。こうしてトラッキングサーボ制御は実現される。
【0034】
いま、磁気ディスク14の回転中に磁気ディスク14の半径方向に浮上ヘッドスライダ22が位置決めされる場面を想定する。ここでは、例えば図6に示されるように、磁気ディスク14上に、分離トラック26で相互に隔てられる第1および第2記録トラック25a、25bが想定される。読み出し書き込みヘッド素子37は第1記録トラック25a上に配置される。第1読み出しヘッド素子38は分離トラック26および第2記録トラック25bの境界46上に配置される。同様に、第2読み出しヘッド素子39は分離トラック26および第1記録トラック25aの境界47上に配置される。
【0035】
図6から明らかなように、例えば浮上ヘッドスライダ22や磁気ディスク14の振動その他の要因に基づき第1記録トラック25aの中心線CRから半径方向に微妙に読み出し書き込みヘッド素子37のずれが観察される。このとき、例えば第1読み出しヘッド素子38が分離トラック26上から第2記録トラック25b上に移動すれば、第1読み出しヘッド素子38で出力は増大する。反対に、例えば第1読み出しヘッド素子38が第1記録トラック25a上から分離トラック26上に移動すれば、第1読み出しヘッド素子38で出力は減少する。こうして第1読み出しヘッド素子38の出力は磁気ディスク14の半径方向で変動する。すなわち、第1読み出しヘッド素子38と境界46との相対位置に基づき出力は変化する。第2読み出しヘッド素子39でも、第1読み出しヘッド素子38と同様に、出力は半径方向位置で変動する。こうして第1および第2読み出しヘッド素子38、39の出力差は変動する。
【0036】
トラッキング制御回路41は、第1および第2読み出しヘッド素子38、39の出力差に基づき読み出し書き込みヘッド素子37の半径方向ずれ量すなわちオフセット量sを算出する。オフセット量sは、記録トラック25の中心線CRと読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHとの間で観察される乖離量として定義される。前述されるように、境界Pと読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHとの距離は、記録トラック25の中心線CRと分離トラック26の中心線CDとの距離と同一に設定される。したがって、オフセット量sは、境界Pと分離トラック26の中心線CDとの間で観察される乖離量に等しい。すなわち、オフセット量sは境界Pの半径方向位置で特定されることができる。
【0037】
図7は、出力差演算回路44で検出される第1および第2読み出しヘッド素子38、39の出力差の変動を示す。出力差演算回路44では、第1読み出しヘッド素子38の再生信号は出力48として検出される。その一方で、第2読み出しヘッド素子39の再生信号は出力49として検出される。出力差演算回路44は出力48、49に基づき出力差51を算出する。出力差51の算出にあたって出力48、49の差分が算出される。図7から明らかなように、出力48、49は境界Pの半径方向位置に基づき変動する。したがって、出力差51は境界Pの半径方向位置に基づき変動する。
【0038】
磁気ディスク14の回転中に例えば境界Pが分離トラック26の中心線CD上に配置されると、出力差演算回路44は第1および第2読み出しヘッド素子38、39の再生信号で同一の出力を検出する。出力差演算回路44では半径方向位置Aで出力差ゼロが算出される。このとき、読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHは第1記録トラック25aの中心線CR上に配置される。こうして出力差ゼロが検出される限り、読み出し書き込みヘッド素子37は第1記録トラック25aの中心線CR上を辿り続けることができる。このとき、書き込みヘッドは記録トラック25aに情報を書き込めばよい。同様に、読み出しヘッドは、記録トラック25aに書き込まれるビットデータ列を読み取ればよい。
【0039】
例えば浮上ヘッドスライダ22の振動に基づき読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHが記録トラック25の中心線CRから所定のオフセット量sで磁気ディスク14の外周側に半径方向にずれると、境界Pは分離トラック26の中心線CDから第2記録トラック25bに向かってオフセット量sで半径方向にずれる。第1読み出しヘッド素子38は分離トラック26上から第2記録トラック25b上に向かって移動することから、第1読み出しヘッド素子38の再生信号の出力は増大する。その一方で、第2読み出しヘッド素子39は第1記録トラック25a上から分離トラック26上に向かって移動することから、第2読み出しヘッド素子39の再生信号の出力は減少する。こうして出力差演算回路44の出力差51では正の出力値が検出される。この出力差51に基づき境界Pの半径方向位置すなわち読み出し書き込みヘッド素子37のオフセット量sが算出される。こうして位置情報は生成される。位置情報に基づき生成される制御信号はVCM23に供給される。
【0040】
VCM23は制御信号の大きさに基づき支軸17回りでヘッドアクチュエータ16を回転させる。アクチュエータ16の回転に基づき境界Pは分離トラック26の中心線CDに向かって移動する。境界Pは分離トラック26の中心線CD上に位置決めされる。同時に、読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHは第1記録トラック25aの中心線CRに向かってオフセット量sで近づく。こうして読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHは第1記録トラック25aの中心線CR上に位置決めされる。読み出し書き込みヘッド素子37は第1記録トラック25aの中心線CR上を辿り続けることができる。このとき、書き込みヘッドは記録トラック25aに情報を書き込む。同様に、読み出しヘッドは、記録トラック25aに書き込まれるビットデータ列を読み取る。
【0041】
その一方で、例えば浮上ヘッドスライダ22の振動に基づき読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHが記録トラック25の中心線CRから所定のオフセット量sで磁気ディスク14の内周側に半径方向にずれると、境界Pは分離トラック26の中心線CDから第1記録トラック25aに向かって半径方向にオフセット量sでずれる。第1読み出しヘッド素子38は第2記録トラック25b上から分離トラック26上に向かって移動することから、第1読み出しヘッド素子38の再生信号の出力は減少する。その一方で、第2読み出しヘッド素子39は分離トラック26上から第1記録トラック25a上に向かって移動することから、第2読み出しヘッド素子39の再生信号の出力は増大する。こうして出力差演算回路44の出力差51では負の出力値が検出される。この出力差51に基づき境界Pの半径方向位置すなわち読み出し書き込みヘッド素子37のオフセット量sが算出される。こうして位置情報は生成される。位置情報に基づき精製される制御信号はVCM23に供給される。
【0042】
前述と同様に、VCM23は制御信号の大きさに基づき支軸17回りでヘッドアクチュエータ16を回転させる。アクチュエータ16の回転に基づき境界Pは分離トラック26の中心線CDに向かって移動する。境界Pは分離トラック26の中心線CD上に位置決めされる。同時に、読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHは第1記録トラック25aの中心線CRに向かってオフセット量sで近づく。こうして読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHは第1記録トラック25aの中心線CR上に位置決めされる。読み出し書き込みヘッド素子37は第1記録トラック25aの中心線CR上を辿り続けることができる。このとき、書き込みヘッドは記録トラック25aに情報を書き込む。同様に、読み出しヘッドは、記録トラック25aに書き込まれるビットデータ列を読み取る。
【0043】
なお、記録トラック25に書き込まれるビットデータ列ではS極とN極とが混在することから、第1および第2読み出しヘッド素子38、39から供給される再生信号の出力には最大ピーク値と最小ピーク値とが混在する。第1および第2読み出しヘッド素子38、39の出力は時間の経過とともに変動する。したがって、出力差演算回路44では、第1および第2読み出しヘッド素子38、39の出力には、例えば所定の時間にわたる平均出力で正規化されたものが利用されればよい。その一方で、第1および第2読み出しヘッド素子38、39の出力には、記録トラック25の1周にわたる平均出力で正規化されたものが利用されてもよい。
【0044】
以上のようなHDD11では、出力差51の検出にあたって第1および第2読み出しヘッド素子38、39は記録トラック25から再生信号を読み出す。第1および第2読み出しヘッド素子38、39の出力は磁気ディスク14の半径方向で変動する。第1および第2読み出しヘッド素子38、39は半径方向に隣接することから、出力は確実に変化する。出力差51は確実に変動する。こうした変動に基づき第1および第2読み出しヘッド素子38、39の半径方向位置すなわち読み出し書き込みヘッド素子37のオフセット量sは算出される。したがって、境界Pが出力差ゼロの位置に位置決めされる限り、読み出し書き込みヘッド素子37は常に記録トラック25の中心線CRを辿り続けることができる。トラッキングサーボ制御は高い精度で実現されることができる。
【0045】
しかも、トラッキングサーボ制御は、第1および第2読み出しヘッド素子38、39の出力差51に基づき実現される。出力差51の検出にあたって、記録トラック25に書き込まれるビットデータ列から読み出される再生信号が用いられる。磁気ディスク14ではいわゆるサーボセクタ領域の形成は省略されることができる。磁気ディスク14ではこれまでの磁気ディスクに比べて記録トラック25の面積は増大することができる。ビットデータ列の記録面積は増大することができる。その上、磁気ディスク14では比較的に簡単な構造が確立されることができる。磁気ディスク14の製造にあたってサーボセクタ領域の形成工程は省略されることができる。作業時間は著しく短縮されることができる。
【0046】
以上のようなHDD11では、記録トラック25のトラック幅Lと、分離トラック26のトラック幅Wとが規定される際に、第1および第2読み出しヘッド素子38、39の個々のコア幅Xは次式に従って設定される。
【0047】
【数1】

ここで、例えばnには0(ゼロ)が設定されればよい。このとき、コア幅Xが(W/2)を下回ると、第1および第2読み出しヘッド素子38、39の境界Pが分離トラック26の中心線CDからずれても第1および第2読み出しヘッド素子38、39では第1および第2記録トラック25a、25bの磁界を受け取ることができない。したがって、出力差はゼロに維持されてしまう。
【0048】
反対に、コア幅Xが(W/2+L)を上回ると、第1読み出しヘッド素子38の両端や第2読み出しヘッド素子39の両端はいずれも分離トラック26上に配置されてしまう。その結果、境界Pが分離トラック26の中心線CDからずれても第1および第2読み出しヘッド素子38、39に向き合わせられる記録トラック25の大きさに変化は生じない。この場合も出力差はゼロに維持されてしまう。
【0049】
その他、nが1以上の整数に設定される限り、こういった大小関係は常に維持される。ただし、nが増加するにつれて第1および第2読み出しヘッド素子38、39に向き合わせられる記録トラック25の本数は増加する。したがって、第1および第2読み出しヘッド素子38、39の出力は増大する。その一方で、記録トラック25の本数に拘わらず出力の増減値は常に一定に維持される。記録トラック25の本数が増加すればするほど出力全体に対して増減値の割合は減少してしまう。したがって、nにはゼロが設定されることが望まれる。
【0050】
その他、例えば図8に示されるように、浮上ヘッドスライダ22には、第1および第2読み出しヘッド素子38、39に代えて第1〜第3読み出しヘッド素子55、56、57が搭載されてもよい。第1〜第3読み出しヘッド素子55、56、57は半径方向に並列に配置されればよい。第1読み出しヘッド素子55は、第2および第3読み出しヘッド素子56、57の間に挟み込まれればよい。ここでは、第1読み出しヘッド素子55の中心線CTと読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHとの半径方向の距離は、第1記録トラック25aの中心線CRと分離トラック26の中心線CDとの距離と同一に設定されればよい。第1〜第3読み出しヘッド素子55、56、57の再生信号は第1〜第3読み出し回路(図示されず)に供給されればよい。
【0051】
いま、磁気ディスク14の回転中に磁気ディスク14の半径方向に浮上ヘッドスライダ22が位置決めされる場面を想定する。磁気ディスク14の回転中に例えば第1および第2読み出しヘッド素子55、56の境界Qが分離トラック26の中心線CD上に配置されると、図9に示されるように、出力差演算回路44は第1および第2読み出しヘッド素子55、56の再生信号で同一の出力58、59を検出する。出力差演算回路44の出力差61では半径方向位置Bでゼロが算出される。読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHおよび第1記録トラック25aの中心線CRの間には規定のオフセット量sが規定される。このとき、読み出し書き込みヘッド素子37は第1記録トラック25a上で読み出し動作および書き込み動作の許容範囲に位置決めされる。
【0052】
その一方で、例えば第1および第3読み出しヘッド素子55、57の境界Rが分離トラック26の中心線CD上に配置されると、図9に示されるように、出力差演算回路44は第1および第3読み出しヘッド素子55、57の再生信号で同一の出力58、62を検出する。出力差演算回路44の出力差63では半径方向位置Cでゼロが算出される。読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHおよび第1記録トラック25aの中心線CRの間には規定のオフセット量sが設定される。このとき、読み出し書き込みヘッド素子37は第1記録トラック25a上で読み出し動作および書き込み動作の許容範囲に位置決めされる。
【0053】
こうして出力差61でゼロが算出される半径方向位置Bと、出力差63でゼロが算出される半径方向位置Cとの間には、読み出し書き込みヘッド素子37の読み出し動作および書き込み動作の許容範囲64が設定される。その結果、出力差演算回路44では、第1〜第3読み出しヘッド素子55、56、57の出力58、59、62や出力差61、出力差63に基づき読み出し書き込みヘッド素子37のオフセット量sが算出される。こうして出力差61、63が許容範囲64内に設定される限り、読み出し書き込みヘッド素子37は読み出し動作や書き込み動作は実施されることができる。以上のようなHDD11では、第1〜第3読み出しヘッド素子55、56、57の出力に基づき読み出し書き込みヘッド素子37は読み出し動作や書き込み動作の許容範囲64内に確実に位置決めされることができる。トラッキングサーボ制御は高い精度で実現されることができる。
【0054】
なお、磁気ディスク14はいわゆる垂直磁気記録媒体として構成されてもよい。このとき、基板27と磁性膜28との間には軟磁性層すなわち裏打ち層が挟み込まれればよい。磁性膜28では、磁化容易軸は、基板27の表面に直交する垂直方向に設定されればよい。
【0055】
図10は本発明の第2実施形態に係る磁気ディスク14aの構造を概略的に示す。この磁気ディスク14aの表裏面には、磁気ディスク14aの半径方向に沿って湾曲しつつ延びる複数筋(例えば60本)のサーボセクタ領域65が規定される。記録トラック25および分離トラック26はサーボセクタ領域65で分断される。サーボセクタ領域65は磁性体から構成される。サーボセクタ領域65にはサーボパターンが確立される。サーボセクタ領域65の湾曲は読み出し書き込みヘッド素子37の移動経路に基づき設定される。隣接するサーボセクタ領域65の間にはデータ領域66が確保される。データ領域66内で記録トラック25に磁気情報は書き込まれる。以下、前述の第1実施形態と均等な構成や構造には同一の参照符号が付される。
【0056】
磁気ディスク14aの回転中、読み出し書き込みヘッド素子37はトラッキングサーボ制御に基づき記録トラック25を追従し続ける。このトラッキングサーボ制御では、磁気ディスク14a上のサーボパターンに基づき読み出しヘッドからポジション信号が読み出される。ポジション信号は増幅された後にHDCに送り込まれる。HDCはポジション信号に基づきVCM23の制御量を特定する。HDCから供給される制御信号に基づきVCM23に駆動電流は供給される。こうしてポジション信号に基づき読み出し書き込みヘッド素子37のオフセットは解消される。読み出し書き込みヘッド素子37は磁気ディスク14aの半径方向に位置決めされる。こうして読み出し書き込みヘッド素子37は所定の1記録トラック25上を辿り続けることができる。読み出し書き込みヘッド素子37の書き込みヘッドは記録トラック25に沿ってデータ領域66に情報を書き込む。同様に、読み出し書き込みヘッド素子37の読み出しヘッドは、データ領域66の記録トラック25に書き込まれるビットデータ列を読み取る。
【0057】
図11に示されるように、磁気ディスク14aでは、記録トラック25は、例えばマトリックス状に等間隔に配置される記録セル67、67…を備える。一方で、分離トラック26は、例えば等間隔で分離トラック26内に配置される記録セル68、68…を備える。記録セル68は記録セル列69を構成する。記録セル列69は分離トラック26内で磁気ディスク14aの周方向に延びる。記録セル68の周方向の位置は記録セル67の周方向の位置に揃えられる。1記録セル68に対して整数倍の数の記録セル67が配置されればよい。ここでは、1記録セル68に対して例えば2つの記録セル67が配置されればよい。記録セル67、68は非磁性体71で隔てられる。
【0058】
図12から明らかなように、磁気ディスク14aでは、基板27の表面に軟磁性層すなわち裏打ち層72が積層される。裏打ち層72の表面に非磁性膜73が積層される。非磁性膜73で非磁性体71は確立される。非磁性膜73にはいわゆるナノホール74が形成される。ナノホール74には磁性材料が埋め込まれる。こうして磁性体67、68は確立される。前述と同様に、記録トラック25および分離トラック26の表面には平坦面31が規定される。平坦面31は、保護膜32や潤滑膜33で被覆されればよい。こうした磁気ディスク14aはいわゆる垂直磁気記録媒体として構成される。磁性体67、68では磁化容易軸は、基板27の表面に直交する垂直方向に設定される。ここでは、磁性体68の極性はS極またはN極のいずれか一方に設定される。なお、磁気ディスク14aでは裏打ち層72は省略されてもよい。
【0059】
図13に示されるように、浮上ヘッドスライダ22aでは、スライダ本体35に第1および第2読み出しヘッド素子75、76が搭載される。この第1および第2読み出しヘッド素子75、76は、前述と同様に、磁気ディスク14aから情報を読み出す例えばGMR素子やTMR素子といった磁気抵抗効果(MR)読み取り素子で構成されればよい。第1および第2読み出しヘッド素子75、76は記録トラック25の長手方向に隣接して配置される。第1および第2読み出しヘッド素子75、76の境界Sは半径方向に延びる。第1および第2読み出しヘッド素子75、76の中心線と読み出し書き込みヘッド素子37の中心線CHとの距離は、記録トラック25の中心線CRと分離トラック26の中心線CDとの距離と同一に設定されればよい。第1および第2読み出しヘッド素子75、76のコア幅は同一に設定されればよい。
【0060】
図14に示されるように、HDD11にはクロック信号生成回路77が組み込まれる。クロック信号生成回路77は、第1および第2読み出しヘッド素子75、76から供給される再生信号に基づきクロック信号を生成する。クロック信号は読み出し動作および書き込み動作のタイミングを特定する。出力差演算回路44は、前述と同様に、第1読み出し回路42から供給される再生信号と、第2読み出し回路43から供給される再生信号との出力差を検出する。こうして検出された出力差に基づき読み出し書き込みヘッド素子37に対してクロック信号は生成される。クロック信号に基づき読み出し書き込みヘッド素子37では読み出しや書き込みのタイミングは特定される。
【0061】
いま、磁気ディスク14aの回転中に磁気ディスク14aの半径方向に浮上ヘッドスライダ22aが位置決めされる場面を想定する。図15に示されるように、磁気ディスク14aの回転中に第1および第2読み出しヘッド素子75、76は分離トラック26上に配置される。磁気ディスク14aの回転に基づき第1および第2読み出しヘッド素子75、76は記録セル列69に沿って記録セル68上を順番に移動する。このとき、クロック信号生成回路77は、第1および第2読み出しヘッド素子75、76の出力差に基づき読み出し書き込みヘッド素子37の読み出し動作や書き込み動作のタイミングを算出する。
【0062】
図16は、出力差演算回路44で検出される第1および第2読み出しヘッド素子75、76の出力差の変動を示す。出力差演算回路44では、第1読み出しヘッド素子75の再生信号は出力78として検出される。その一方で、第2読み出しヘッド素子76の再生信号は出力79として検出される。出力差演算回路44は出力78、79の出力差81を算出する。出力差81の算出にあたって出力78、79の差分が算出される。こうして算出される出力差81は時間の経過に基づき変動する。
【0063】
磁気ディスク14aの回転に基づき例えば第1および第2読み出しヘッド素子75、76が分離トラック26上を周方向に移動すると、まず、第1読み出しヘッド素子75が任意の1記録セル68上を通過する。こうして第1読み出しヘッド素子75では、通過にともなって再生信号の出力は最小値から最大値、最大値から最小値に変動する。続いて、第2読み出しヘッド素子76が通過する。第2読み出しヘッド素子76では、第1読み出しヘッド素子75の出力から所定の時間遅れて、再生信号の出力は最小値から最大値、最大値から最小値に変動する。こうした出力に基づき出力差演算回路44では出力差81が検出される。この出力差81に基づき境界Sの周方向位置すなわち読み出し書き込みヘッド素子37の読み出し動作や書き込み動作のタイミングが算出される。
【0064】
ここでは、境界Sが記録セル68の中心を通過する際、出力差演算回路44は第1および第2読み出しヘッド素子75、76の再生信号で同一の出力を検出する。出力差演算回路44では時間T1や時間T2、時間T3で出力差ゼロが算出される。この出力差ゼロの時間は、読み出し書き込みヘッド素子37の読み出し動作や書き込み動作のタイミングに設定される。こうした時間T1や時間T2、時間T3に基づきクロック信号生成回路77でクロック信号は生成される。クロック信号は読み出し書き込みヘッド素子37に供給される。こうして読み出し書き込みヘッド素子37の読み出し動作や書き込み動作のタイミングは制御される。クロック信号に応じて書き込みヘッドは記録トラック25aに情報を書き込む。同様に、クロック信号に応じて読み出しヘッドは、記録トラック25aに書き込まれるビットデータ列を読み取る。
【0065】
以上のようなHDD11aでは、第1および第2読み出しヘッド素子75、76から供給される再生信号の出力に基づき出力の差が検出される。検出にあたって、第1および第2読み出しヘッド素子75、76は、分離トラック26内で等間隔に配置される記録セル68上を順番に移動する。こうした移動に基づき第1および第2読み出しヘッド素子75、76では時間の経過とともに出力が変化する。しかも、第1および第2読み出しヘッド素子75、76の間で出力の時間的なずれが観察される。こうして出力の差は変動する。こうした変動に基づき読み出し書き込みヘッド素子37に対してクロック信号は生成される。その結果、読み出し書き込みヘッド素子37では、読み出し動作や書き込み動作のタイミングは制御される。いわゆるクロック制御は高い精度で実現されることができる。
【0066】
その他、図17に示されるように、前述の浮上ヘッドスライダ22には第1および第2読み出しヘッド素子75、76がさらに搭載されてもよい。第1および第2読み出しヘッド素子38、39の境界Pは、第1および第2読み出しヘッド素子75、76のトラック幅方向の中心線上に配置されればよい。その一方で、磁気ディスク14は例えば垂直磁気記録媒体として構成されればよい。記録トラック25は磁性膜および裏打ち層から構成されればよい。分離トラック26には記録セル68、68…が等間隔で配置されればよい。
【0067】
こうしたHDD11では、第1および第2読み出しヘッド素子38、39の出力差の算出にあたって、第1および第2読み出しヘッド素子38、39の出力は記録トラック25および記録セル68に基づき規定されればよい。こうして第1および第2読み出しヘッド素子38、39の出力差に基づき、読み出し書き込みヘッド素子37は常に記録トラック25の中心線CRを辿り続けることができる。トラッキングサーボ制御は高い精度で実現されることができる。同時に、第1および第2読み出しヘッド素子75、76に基づき読み出し書き込みヘッド素子37に対してクロック信号は生成されることができる。いわゆるクロック制御は高い精度で実現されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の記録媒体駆動装置の一具体例すなわちハードディスク駆動装置(HDD)の内部構造を概略的に示す平面図である。
【図2】磁気ディスクの部分平面図である。
【図3】図2の3−3線に沿った拡大部分断面図である。
【図4】浮上ヘッドスライダの浮上面の様子を概略的に示す拡大部分平面図である。
【図5】トラッキングサーボの制御系を概略的に示すブロック図である。
【図6】第1および第2読み出しヘッド素子並びに読み出し書き込みヘッド素子の相関関係を概略的に示す概念図である。
【図7】第1および第2読み出しヘッド素子の出力値の相関関係を概略的に示すグラフである。
【図8】第1〜第3読み出しヘッド素子および読み出し書き込みヘッド素子の相関関係を概略的に示す概念図である。
【図9】第1〜第3読み出しヘッド素子の出力値の相関関係を概略的に示すグラフである。
【図10】磁気ディスクの部分平面図である。
【図11】磁気ディスクの拡大部分平面図である。
【図12】図11の12−12線に沿った拡大部分断面図である。
【図13】浮上ヘッドスライダの浮上面の様子を概略的に示す拡大部分平面図である。
【図14】クロック信号生成回路を概略的に示すブロック図である。
【図15】第1および第2読み出しヘッド素子並びに読み出し書き込みヘッド素子の相関関係を概略的に示す概念図である。
【図16】第1および第2読み出しヘッド素子の出力値の相関関係を概略的に示すグラフである。
【図17】磁気ディスクの拡大部分平面図である。
【符号の説明】
【0069】
11 記録媒体駆動装置(ハードディスク駆動装置)、14 記録媒体(磁気ディスク)、16 駆動機構(ヘッドアクチュエータ)、25 記録トラック、25a 第1記録トラック、25b 第2記録トラック、26 分離トラック、37 読み出し書き込みヘッド、38 第1ヘッド(第1読み出しヘッド素子)、39 第2ヘッド(第2読み出しヘッド素子)、41 制御回路(トラッキング制御回路)、46 境界、47 境界、51 出力差、68 記録セル、69 記録セル列、77 クロック信号生成回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する第1および第2記録トラックを隔てる分離トラックおよび第1記録トラックの境界上に配置される第1ヘッドから供給される出力と、分離トラックおよび第2記録トラックの境界上に配置される第2ヘッドから供給される出力との差を検出する工程と、検出された差に基づき、第1および第2ヘッドの位置を特定する位置情報を生成する工程とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置のヘッド位置検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の記録媒体駆動装置のヘッド位置検出方法において、前記第1および第2記録トラックのトラック幅Lと、前記分離トラックのトラック幅Wとが規定される際に、前記第1および第2ヘッドの個々のコア幅Xは、
【数1】

ただし、
【数2】

に従って設定されることを特徴とする記録媒体駆動装置のヘッド位置検出方法。
【請求項3】
隣接する第1および第2記録トラックを隔てる分離トラックを区画する記録媒体と、記録媒体の分離トラックおよび第1記録トラックの境界に向き合わせられる第1ヘッドと、記録媒体の分離トラックおよび第2記録トラックの境界に向き合わせられる第2ヘッドと、第1および第2ヘッドを支持し、第1および第2記録トラックの幅方向に第1および第2ヘッドを移動させる駆動機構と、第1および第2記録トラックに基づき第1および第2ヘッドから供給される出力の差に基づき駆動機構の動きを制御する制御回路とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。
【請求項4】
隣接する記録トラックを隔てる分離トラック内で、等間隔に配置される記録セルを含む記録セル列に沿って順番に第1および第2ヘッドを移動させる工程と、記録セルに基づき第1および第2ヘッドから供給される出力の差を検出する工程と、検出された差に基づきクロック信号を生成する工程とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置のクロック信号生成方法。
【請求項5】
隣接する記録トラック同士を隔てる分離トラック内で等間隔に配置される記録セルを含む記録セル列を区画する記録媒体と、分離トラック内の記録セル列に沿って記録セルに向き合わせられる第1および第2ヘッドと、記録トラックに対して情報の読み出しおよび書き込みを実現する読み出し書き込みヘッドと、第1および第2ヘッドから供給される出力の差に基づき、読み出し書き込みヘッドの書き込みおよび読み出しのタイミングを特定するクロック信号を生成するクロック信号生成回路とを備えることを特徴とする記録媒体駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−244550(P2006−244550A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55623(P2005−55623)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】