説明

記録方法

【課題】レーザー照射による印字濃度が高い画像を記録する記録方法を提供する。
【解決手段】支持体上に、塩基性染料前駆体を内包するマイクロカプセルを少なくとも含有する記録層と、バインダーを含有する保護層と、を順次有する記録材料に、波長が9〜11μmのCOレーザーを照射して画像を記録することを特徴とする記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録方法に関し、詳しくは、レーザー光線の照射により発色する記録材料に画像を記録する記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料缶、飲料容器、食品容器、医薬品容器、化粧品容器、包装材料、電子部品、電気部品、自動車部品など(以下、「容器等」という)には、例えば、製造ロツト番号、製造年月日、機種、メーカーなどが、文字、記号、マーク、図、バーコードなど(以下、「マーク等」という)で表示されている。
【0003】
その表示方法として、例えば着色印刷インキをパッド印刷、スクリーン印刷、インクジエツト方式などで容器等に直接印刷する方法、またはマーク等を印刷したラベルを貼付する方法などが採用されている。しかし、前記直接印刷する方法では被印刷材である容器等の形状によって印刷が困難となり、前記印刷したラベルを貼付する方法ではマーク等の種類ごとに非常に多品種のラベルを準備しておかなければならないなどの欠点がある。
【0004】
近年、これらの欠点を解消する方法として、容器等に発色剤および顕色剤を含むレーザーマーキング層を形成し、その層にレーザー光線を照射して化学変化を起こさせて発色せしめる。いわゆるレーザーマーキング法が採用されつつある(例えば、特許文献1〜3参照)。この方法は、上記に比べて生産性がすぐれているために上記容器等にマーク等を形成するのに好適である。
【0005】
しかし、前記レーザーマーキング法は、レーザーマーキング層を塗布したラベルに印刷を施す場合に印刷インキの溶剤によりラベルが発色してしまったり、ラベルを添付した容器を加熱殺菌処理した場合に熱で発色してしまうことがあり、その後レーザーを照射して発色させても鮮明なマーク等が得られず、商品価値を大きく損なう結果になってしまう。
【特許文献1】特開平7−257042号公報
【特許文献2】特開2002−347344号公報
【特許文献3】特開平9−175035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、レーザー照射による印字濃度が高い画像を記録する記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討の結果、特定の記録材料に波長が9〜11μmのCOレーザーを照射することにより、前記課題が完成することを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、
<1> 支持体上に、塩基性染料前駆体を内包するマイクロカプセルを少なくとも含有する記録層と、バインダーを含有する保護層と、を順次有する記録材料に、波長が9〜11μmのCOレーザーを照射して画像を記録することを特徴とする記録方法である。
【0008】
<2> 前記バインダーの含有量が保護層の総固形分の50質量%以上であることを特徴とする<1>に記載の記録方法である。
<3> 前記保護層が無機顔料を含み、該無機顔料の含有量が保護層の総固形分の20質量%以下であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の記録方法である。
【0009】
<4> 前記マイクロカプセルの壁剤がイソホロンジイソシアネート化合物を含有することを特徴とする<1>〜<3>の何れか1つに記載の記録方法である。
<5> 前記支持体が発泡ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする<1>〜<4>の何れか1つに記載の記録方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザー照射による印字濃度が高い画像を記録する記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の記録方法は、支持体上に、塩基性染料前駆体を内包するマイクロカプセルを少なくとも含有する記録層と、保護層と、を順次有する記録材料に、波長が9〜11μmのCOレーザーを照射して画像を記録することを特徴とする。
【0012】
<記録層>
本発明の記録方法に用いる記録材料における記録層は、少なくとも発色成分を含有してなり、更に、必要に応じてその他の成分を含有することができる。前記記録層は、1層設けられていても、2層以上設けられていてもよい。
【0013】
(発色成分)
前記発色成分としては、未処理時には優れた透明性を有し、加熱により速やかに呈色する性質を有するものであり、実質的に無色の発色成分Aと、該発色成分と反応して呈色する実質的に無色の発色成分Bとを含有する、いわゆる2成分型の発色成分が挙げられ、本発明においては(a)塩基性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せを用い、該塩基性染料前駆体はマイクロカプセルに内包して用いる。
【0014】
また、本発明の記録方法に用いる記録材料は、発色成分として前記(a)塩基性染料前駆体と電子受容性化合物とを含有する記録層のほかに、更に他の記録層を積層していてもよい。この場合の該他の記録層における発色成分である発色成分A及び発色成分Bとしては、前記(a)塩基性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せの他に、下記の(b)〜(m)が挙げられ、貯蔵安定性及び地肌カブリの観点より、発色成分A又は発色成分Bは、マイクロカプセルに内包されている形態が好ましい。
【0015】
(a)塩基性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ
(b)光分解性ジアゾ化合物とカプラーとの組合せ
(c)ベヘン酸銀、ステアリン酸銀等の有機金属塩と、プロトカテキン酸、スピロインダン、ハイドロキノン等の還元剤との組合せ
(d)ステアリン酸第二鉄、ミリスチン酸第二鉄等の長鎖脂肪族塩と、没食子酸、サリチル酸アンモニウム等のフェノール類との組合せ
(e)酢酸、ステアリン酸、パルミチン酸等のニッケル、コバルト、鉛、銅、鉄、水銀、銀等との塩等の有機酸重金属塩と、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化カリウム等のアルカリ土類金属硫化物との組合せ、又は、前記有機酸重金属塩と、s−ジフェニルカルバジド、ジフェニルカルバゾン等の有機キレート剤との組合せ
(f)硫化銀、硫化鉛、硫化水銀、硫化ナトリウム等の(重)金属硫酸塩と、Na−テトラチオネート、チオ硫酸ソーダ、チオ尿素等の硫黄化合物との組合せ
(g)ステアリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、3,4−ジヒドロキシテトラフェニルメタン等の芳香族ポリヒドロキシ化合物との組合せ
(h)シュウ酸銀、シュウ酸水銀等の有機貴金属塩と、ポリヒドロキシアルコール、グリセリン、グリコール等の有機ポリヒドロキシ化合物との組合せ
(i)ペラルゴン酸第二鉄、ラウリン酸第二鉄等の脂肪族第二鉄塩と、チオセシルカルバミドやイソチオセシルカルバミド誘導体との組合せ
(j)カプロン酸鉛、ペラルゴン酸鉛、ベヘン酸鉛等の有機酸鉛塩と、エチレンチオ尿素、N−ドデシルチオ尿素等のチオ尿素誘導体との組合せ
(k)ステアリン酸第二鉄、ステアリン酸銅等の高級脂肪酸重金属塩と、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛との組合せ
(l)レゾルシンとニトロソ化合物との組合せの様なオキサジン染料を形成する物
(m)ホルマザン化合物と還元剤及び/又は金属塩との組合せ
【0016】
上記の中でも、前記他の記録層における発色成分として、(a)塩基性染料前駆体と電子受容性化合物との組合せ、(b)光分解性ジアゾ化合物とカプラーとの組合せ、及び(c)有機金属塩と還元剤との組合せ、の何れかを用いることが好ましく、特に、前記(a)又は(b)の組合せを用いることがより好ましい。
【0017】
また、本発明に用いる記録材料は、(拡散透過率/全光透過率)×100(%)から算出されるヘイズ値を低減する様に記録層を構成することにより、透明性に優れた画像を得ることができる。前記ヘイズ値は材料の透明性を表す指数であり、一般にはヘイズメーターを使用して全透過光量、拡散透過光量、平行透過光量から算出される。
【0018】
本発明において、前記ヘイズ値を下げる方法としては、例えば、(1)記録層に含まれる発色成分AとBの両成分の50%体積平均粒径を1.0μm以下、好ましくは、0.6μm以下とし、且つバインダーを記録層の全固形分の30〜60質量%の範囲で含有させる方法、或いは(2)発色成分A、Bのいずれか一方をマイクロカプセル化し、他方を塗布乾燥後に実質的に連続層を構成する様なもの(例えば、乳化分散物)として使用する方法等が挙げられる。また、記録層に使用する成分の屈折率を出来るだけ一定の値に近付ける方法も有効である。
ここで、前記50%体積平均粒径とは、例えば、(株)堀場製作所製のレーザー回折粒度分布測定装置「LA700」により測定される、顔料中の50%体積に相当する顔料粒子の平均粒径(以下、単に「平均粒径」ということがある。)を意味し、以下においても同様とする。
【0019】
次に、本発明において、マイクロカプセルに内包される必須の発色成分であり、前記他の記録層における発色成分の好ましい組合せである(a)の組合せと、前記他の記録層における発色成分の好ましい組合せである(b)、(c)について、以下に詳しく説明する。
(a)塩基性染料前駆体と電子受容性化合物の組合せ
本発明において用いられる塩基性染料前駆体としては、実質的に無色のものであれば特に限定されるものではないが、エレクトロンを供与して、或いは、酸等のプロトンを受容して発色する性質を有するものであり、特に、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触したときに、これらの部分骨格が開環もしくは開裂する無色の化合物であるものが好ましい。
【0020】
前記塩基性染料前駆体としては、例えば、トリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、インドリルフタリド系化合物、ロイコオーラミン系化合物、ローダミンラクタム系化合物、トリフェニルメタン系化合物、トリアゼン系化合物、スピロピラン系化合物、フルオレン系化合物、ピリジン系化合物、ピラジン系化合物等が挙げられる。
【0021】
前記トリフェニルメタンフタリド類の具体例としては、米国再発行特許明細書第23024号、米国特許明細書第3491111号、同第3491112号、同第3491116号、同第3509174号等に記載された化合物が挙げられる。
前記フルオラン類の具体例としては、米国特許明細書第3624107号、同第3627787号、同第3641011号、同第3462828号、同第3681390号、同第3920510号、同第3959571号等に記載された化合物が挙げられる。
前記スピロピラン類の具体例としては、米国特許明細書第3971808号等に記載された化合物が挙げられる。
【0022】
前記ピリジン系及びピラジン系化合物類としては、米国特許明細書第3775424号、同第3853869号、同第4246318号等に記載された化合物が挙げられる。
前記フルオレン系化合物の具体例としては、特願昭61−240989号公報等に記載された化合物が挙げられる。
これらの中でも、特に、黒発色の2−アリールアミノ−3−〔H、ハロゲン、アルキル又はアルコキシ−6−置換アミノフルオラン〕が好適に用いられる。
【0023】
具体的には、例えば、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−シクロヘキシル−N−メチルアミノフルオラン、2−p−クロロアニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジオクチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−ドデシルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メトキシ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−o−クロロアニリノ−6−ジブチルアミノフルオラン、2−p−クロロアニリノ−3−エチル−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−o−クロロアニリノ−6−p−ブチルアニリノフルオラン、2−アニリノ−3−ペンタデシル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−エチル−6−ジブチルアミノフルオラン、2−o−トルイジノ−3−メチル−6−ジイソプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−イソブチル−N−エチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−N−エチル−N−イソアミルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−メチル−N−γ−エトキシプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−γ−エトキシプロピルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−N−エチル−N−γ−プロポキシプロピルアミノフルオラン等が挙げられる。
【0024】
前記塩基性染料前駆体と反応する電子受容性化合物としては、フェノール化合物、有機酸又はその金属塩、オキシ安息香酸エステル等の酸性物質が挙げられ、これらは、例えば、特開昭61−291183号公報等に記載されている化合物が挙げられる。
具体的には、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般名:ビスフェノールA)、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクロロフェニル)プロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−メチル−ペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−エチル−ヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、1,3−ビス(p−ヒドロキシフェニルクミル)ベンゼン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル等のビスフェノール類;
【0025】
3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、3,5−ジ−ターシャリーブチルサリチル酸、3−α−α−ジメチルベンジルサリチル酸、4−(β−p−メトキシフェノキシエトキシ)サリチル酸等のサリチル酸誘導体;又は、その多価金属塩(特に、亜鉛、アルミニウムが好ましい);p−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエルテル、p−ヒドロキシ安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、β−レゾルシン酸−(2−フェノキシエチル)エステル等のオキシ安息香酸エステル類;p−フェニルフェノール、3,5−ジフェニルフェノール、クミルフェノール、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシ−ジフェニルスルフォン、4−ヒドロキシ−4’−フェノキシ−ジフェニルスルフォン等のフェノール類が挙げられる。
前記の中でも、良好な発色特性を得る観点からビスフェノール類が特に好ましい。また、これらの電子受容性化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(b)光分解性ジアゾ化合物とカプラーの組合せ
この光分解性ジアゾ化合物とは、後述するカップリング成分であるカプラーとカップリング反応を起こして所望の色相に発色するものであり、反応前に特定波長域の光を受けると分解し、最早カップリング成分が存在しても発色能力を持たなくなる光分解性のジアゾ化合物である。
この発色系における色相は、光分解性ジアゾ化合物とカプラーとが反応して生成するジアゾ色素により決定される。従って、光分解性ジアゾ化合物、或いはカプラー化合物の化学構造を変えることにより、発色色相を容易に変えることができ、その組み合わせ次第で、任意の発色色相を得ることができる。
【0027】
本発明において好ましく用いられる光分解性ジアゾ化合物としては、芳香族系ジアゾ化合物が挙げられ、具体的には、芳香族ジアゾニウム塩、ジアゾスルフォネート化合物、ジアゾアミノ化合物等が挙げられる。
前記芳香族ジアゾニウム塩としては、下記の構造式で表される化合物が好適に挙げられるが、これに限定されるものではない。また、該芳香族ジアゾニウム塩は、光定着性に優れ、定着後の着色ステインの発生の少なく、発色部の安定なものが好ましく用いられる。
Ar−N2+・X-
上式中、Arは置換若しくは無置換の芳香族炭化水素環基を表し、N2+はジアゾニウム基を表し、X-は酸アニオンを表す。
【0028】
前記ジアゾスルフォネート化合物としては、近年多数のものが知られるようになり、各々のジアゾニウム塩を亜硫酸塩で処理することにより得られ、本発明の記録材料に好適に用いることができる。
【0029】
前記ジアゾアミノ化合物としては、ジアゾ基を、ジシアンジアミド、サルコシン、メチルタウリン、N−エチルアントラニックアシッド−5−スルフォニックアシッド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、グアニジン等でカップリングさせることにより得ることができ、本発明の記録材料に好適に用いることができる。
これらのジアゾ化合物の詳細については、例えば、特開平2−136286号公報等に詳細に記載されている。
【0030】
一方、上述の光分解性ジアゾ化合物とカップリング反応するカプラー化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸アニリドの他、レゾルシンを始め、特開昭62−146678号公報等に記載されているものが挙げられる。
【0031】
前記他の記録層において、光分解性ジアゾ化合物とカプラーとの組合せによるものを用いる場合、これらのカップリング反応は塩基性雰囲気下で行うことによりその反応をより促進させることができる観点から、増感剤として塩基性物質を添加することが好ましい。
前記塩基性物質としては、水不溶性又は難溶性の塩基性物質や加熱によりアルカリを発生する物質が挙げられ、例えば、無機又は有機アンモニウム塩、有機アミン、アミド、尿素やチオ尿素又はそれらの誘導体、チアゾール類、ピロール類、ピリミジン類、ピペラジン類、グアニジン類、インドール類、イミダゾール類、イミダゾリン類、トリアゾール類、モルフォリン類、ピペリジン類、アミジン類、フォリムアジン類又はピリジン類等の含窒素化合物が挙げられる。
これらの具体例としては、例えば、特開昭61−291183号公報等に記載されたものが挙げられる。
【0032】
(c)有機金属塩と還元剤の組合せ
前記有機金属塩としては、具体的には、ラウリン酸銀、ミリスチン酸銀、パルミチン酸銀、ステアリン酸銀、アラキン酸銀又はベヘン酸銀等の長鎖脂肪族カルボン酸の銀塩;ベンゾトリアゾール銀塩、ベンズイミダゾール銀塩、カルバゾール銀塩又はフタラジノン銀塩等のイミノ基を有する有機化合物の銀塩;s−アルキルチオグリコレート等の硫黄含有化合物の銀塩;安息香酸銀、フタル酸銀等の芳香族カルボン酸の銀塩;エタンスルホン酸銀等のスルホン酸の銀塩;o−トルエンスルフィン酸銀等のスルフィン酸の銀塩;フェニルリン酸銀等のリン酸の銀塩;バルビツール酸銀、サッカリン酸銀、サリチルアスドキシムの銀塩又はこれらの任意の混合物が挙げられる。
これらの内、長鎖脂肪族カルボン酸銀塩が好ましく、中でもベヘン酸銀がより好ましい。また、ベヘン酸をベヘン酸銀と共に使用してもよい。
【0033】
前記還元剤としては、特開昭53−1020号公報の第227頁左下欄第14行目〜第229頁右上欄第11行目の記載に基づいて適宜に使用することができる。中でも、モノ、ビス、トリス又はテトラキスフェノール類、モノ又はビスナフトール類、ジ又はポリヒドロキシナフタレン類、ジ又はポリヒドロキシベンゼン類、ヒドロキシモノエーテル類、アスコルビン酸類、3−ピラゾリドン類、ピラゾリン類、ピラゾロン類、還元性糖類、フェニレンジアミン類、ヒドロキシルアミン類、レダクトン類、ヒドロオキサミン酸類、ヒドラジド類、アミドオキシム類、N−ヒドロキシ尿素類等を使用することが好ましい。
前記の内、ポリフェノール類、スルホンアミドフェノール類又はナフトール類等の芳香族有機還元剤が特に好ましい。
【0034】
記録材料に十分な透明性を確保するためには、前記他の記録層に(a)塩基性染料前駆体と電子受容性化合物の組合せ、又は(b)光分解性ジアゾ化合物とカプラーの組合せを用いることが好ましい。また、本発明では、前記他の記録層において、前記発色成分Aと発色成分Bのいずれか一方を、マイクロカプセルに内包して使用することが好ましく、前記塩基性染料前駆体、又は光分解性ジアゾ化合物をマイクロカプセルに内包して用いることがより好ましい。
【0035】
(マイクロカプセル)
次ぎに、マイクロカプセルの製造方法について詳述する。
マイクロカプセルの製造には、界面重合法や内部重合法、外部重合法等があり、いずれの方法も採用することができる。
上述の通り、本発明に用いる記録材料は、塩基性染料前駆体を内包するマイクロカプセルを含有する記録層を有し、更に前記他の記録層を有する場合は、塩基性染料前駆体又は光分解性ジアゾ化合物をマイクロカプセル化することが好ましく、特に、カプセルの芯となる塩基性染料前駆体又は光分解性ジアゾ化合物を、疎水性の有機溶媒に溶解又は分散させて調製した油相を、水溶性高分子を溶解した水相中に投入し、ホモジナイザー等の攪拌手段により乳化分散した後、加温することによりその油滴界面で高分子形成反応を起こさせ、高分子物質からなるマイクロカプセル壁を形成する界面重合法を採用することが好ましい。
【0036】
前記高分子物質を形成する壁剤は、油滴内部及び/又は油滴外部に添加される。前記高分子物質の具体例としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレンメタクリレート共重合体、スチレン−アクリレート共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートが好ましく、特にポリウレタンとポリウレアが好ましい。
【0037】
例えば、ポリウレアをカプセル壁剤として用いる場合には、ジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネート、ポリイソシアネートプレポリマー等のポリイソシアネートと、ジアミン,トリアミン,テトラアミン等のポリアミン、2以上のアミノ基を有するプレポリマー、ピペラジン若しくはその誘導体又はポリオール等と、を前記水相中で界面重合法によって反応させることにより容易にマイクロカプセル壁を形成することができる。
【0038】
また、例えば、ポリウレアとポリアミドからなる複合壁若しくはポリウレタンとポリアミドからなる複合壁は、例えば、ポリイソシアネート及びそれと反応してカプセル壁を形成する第2物質(例えば、酸クロライドもしくはポリアミン、ポリオール)を水溶性高分子水溶液(水相)又はカプセル化すべき油性媒体(油相)中に混合し、これらを乳化分散した後、加温することにより調製することができる。このポリウレアとポリアミドからなる複合壁の製造方法の詳細については、特開昭58−66948号公報に記載されている。
【0039】
本発明においては、カプセル壁剤が、少なくともイソホロンジイソシアネート化合物を含有することが好ましい。このように、マイクロカプセルを、イソホロンジイソシアネート化合物を含有する壁剤を用いて形成することにより、カプセル壁は疎水化され、高湿度下での水の吸着量は低減されるとともに、低湿度下での水の脱着量も低減され、マイクロカプセルの熱応答性の環境湿度依存性は低減される。その結果、記録材料の感度の環境湿度依存性も低減される。
【0040】
上述のように、カプセル壁剤は、少なくともイソホロンジイソシアネート化合物を含有することが好ましい。前記壁剤は、イソホロンジイソシアネート化合物を主原料(壁剤中の含有量が50質量%以上)とするものが好ましく、イソホロンジイソシアネート由来の材料が全体の50質量%以上であるのが好ましい。また、前記イソホロンジイソシアネート化合物は、イソホロンジイソシアネートの単量体であってもよいが、多量体を用いてもよく、中でも、3量体を用いるのが好ましい。また、イソホロンジイソシアネートの2量体と3量体の混合物も、壁剤として好ましく用いられるが、3量体の割合が、カプセル壁剤の全重量中、20質量%以上含有されているのが好ましく、50質量%以上含有されているのがより好ましい。
【0041】
また、記録材料の感度の環境湿度依存性を低減させるという効果を阻害しない範囲で、前記イソホロンジイソシアネート化合物とともに、他のモノマーあるいはプレポリマー等を組み合わせることによって、種々の疎水性の高いマイクロカプセルが形成できる。中でも、前記他のモノマーあるいはプレポリマーとしては、既述のイソホロンジイソシアネート単量体および/または多量体と、ポリアミン、2以上のアミノ基を有するプレポリマー、ピペラジン若しくはその誘導体、またはポリオール等を併用して形成されるポリウレアあるいはポリウレタンからなるマイクロカプセルが好ましい。
【0042】
記録材料の感度の環境湿度依存性を低減させるという効果を阻害しない範囲で、前記イソホロンジイソシアネート化合物とともに、他のポリイソシアネート化合物を併用してもよい。前記他のポリイソシアネート化合物としては、3官能以上のイソシアネート基を有する化合物が好ましいが、3官能以上のイソシアネート基を有する化合物に2官能のイソシアネート化合物を併用してもよいし、2官能のイソシアネート化合物を単独で用いてもよい。具体的には、キシレンジイソシアネート及びその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びその水添物、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートを主原料とし、これらの2量体あるいは3量体(ビューレットあるいはイソシアヌレート)の他、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネートとのアダクト体として多官能としたもの、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネートとのアダクト体にポリエチレンオキシド等の活性水素を有するポリエーテル等の高分子量化合物を導入した化合物、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物等が挙げられる。
特開昭62−212190号公報、特開平4−26189号公報、特開平5−317694号公報、特願平8−268721号公報等に記載の化合物も好ましい。
【0043】
前記イソホロンジイソシアネート化合物は、マイクロカプセルの平均粒径が0.3〜12μmで、カプセル壁の厚みが0.01〜0.3μmとなる様に添加されることが好ましい。尚、分散粒子径は0.2〜10μm程度が一般的である。
【0044】
ポリイソシアネートと反応してマイクロカプセル壁を構成する成分の一つとして、水相中及び/又は油相中に添加するポリオール又は/及びポリアミンの具体例としては、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。ポリオールを添加した場合には、ポリウレタン壁が形成される。前記反応において、反応温度を高く保ち、あるいは適当な重合触媒を添加することが反応速度を速める点で好ましい。
これらのポリイソシアネート、ポリオール、反応触媒、或いは壁剤の一部を形成させるためのポリアミン等については、岩田敬治編「ポリウレタンハンドブック」(日刊工業新聞社、1987)に詳しい。
【0045】
また、前記マイクロカプセル壁には、必要に応じて金属含有染料、ニグロシン等の荷電調節剤、或いは、その他任意の添加物質を加えることができる。これらの添加剤はカプセル壁の形成時、又は任意の時点でカプセル壁に含有させることができる。また、必要に応じてカプセル壁表面の帯電性を調節するために、ビニルモノマー等のモノマーをグラフト重合させてもよい。
【0046】
更に、マイクロカプセル壁をより低温の状況下でも物質透過性に優れ、発色感度に富む壁質とするため、壁材として用いるポリマーに適合した可塑剤を用いることが好ましい。該可塑剤としては、その融点が50℃以上のものが好ましく、更に該融点が120℃以下のものがより好ましい。これらの内、常温下で固体状のものを好適に選択して用いることができる。
例えば、壁材がポリウレアやポリウレタンからなる場合、ヒドロキシ化合物、カルバミン酸エステル化合物、芳香族アルコキシ化合物、有機スルホンアミド化合物、脂肪族アミド化合物、アリールアミド化合物等が前記可塑剤として好適に用いられる。
【0047】
尚、油相の調製に際して、塩基性染料前駆体又は光分解性ジアゾ化合物を溶解し、マイクロカプセルの芯を形成する時に用いられる疎水性有機溶媒としては、沸点100〜300℃の有機溶媒が好ましい。
具体的には、エステル類の他、ジメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、ジイソプロピルナフタレン、ジメチルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、ジイソブチルビフェニル、1−メチル−1−ジメチルフェニル−2−フェニルメタン、1−エチル−1−ジメチルフェニル−1−フェニルメタン、1−プロピル−1−ジメチルフェニル−1−フェニルメタン、トリアリルメタン(例えば、トリトルイルメタン、トルイルジフェニルメタン)、ターフェニル化合物(例えば、ターフェニル)、アルキル化合物、アルキル化ジフェニルエーテル(例えば、プロピルジフェニルエーテル)、水添ターフェニル(例えば、ヘキサヒドロターフェニル)、ジフェニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、エステル類を使用することが乳化分散物の乳化安定性の観点から特に好ましい。
【0048】
前記エステル類としては、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、リン酸ブチル、リン酸オクチル、リン酸クレジルフェニル等のリン酸エステル類;フタル酸ジブチル、フタル酸−2−エチルヘキシル、フタル酸エチル、フタル酸オクチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル;テトラヒドロフタル酸ジオクチル;安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸イソペンチル、安息香酸ベンジル等の安息香酸エステル;アビエチン酸エチル、アビエチン酸ベンジル等のアビエチン酸エステル;アジピン酸ジオクチル;コハク酸イソデシル;アゼライン酸ジオクチル;シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル等のシュウ酸エステル;マロン酸ジエチル;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル;クエン酸トリブチル;ソルビン酸メチル、ソルビン酸エチル、ソルビン酸ブチル等のソルビン酸エステル;セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル等のセバシン酸エステル;ギ酸モノエステル及びジエステル、酪酸モノエステル及びジエステル、ラウリン酸モノエステル及びジエステル、パルミチン酸モノエステル及びジエステル、ステアリン酸モノエステル及びジエステル、オレイン酸モノエステル及びジエステル等のエチレングリコールエステル類;トリアセチン;炭酸ジエチル;炭酸ジフェニル;炭酸エチレン;炭酸プロピレン;ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリペンチル等のホウ酸エステル等が挙げられる。
【0049】
これらの中でも、特にリン酸トリクレジルを単独又は混合して用いた場合、乳化物の安定性が最も良好となり好ましい。前記のオイル同士又は他のオイルとの併用による使用も可能である。
【0050】
カプセル化しようとする塩基性染料前駆体又は光分解性ジアゾ化合物の前記疎水性有機溶媒に対する溶解性が劣る場合には、溶解性の高い低沸点溶媒を補助的に併用することもできる。この様な低沸点溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチレンクロライド等が好適に挙げられる。
また、少ない塗布量で高い濃度を実現させるために、特開平4−101885号公報に記載のように、カプセル溶剤に低沸点溶媒のみを使用することもできる。この場合の低沸点溶媒としては、上述の補助的に併用することができる低沸点溶媒と同様のものが好適に使用できる。
【0051】
前記塩基性染料前駆体又は光分解性ジアゾ化合物を記録材料の記録層に含有する場合、該塩基性染料前駆体の含有量としては、0.1〜5.0g/m2が好ましく、1.0〜4.0g/m2がより好ましい。また、光分解性ジアゾ化合物の含有量としては、0.02〜5.0g/m2が好ましく、発色濃度の点から0.10〜4.0g/m2がより好ましい。
前記塩基性染料前駆体の含有量が前記の範囲内にあると、十分な発色濃度が得られ、また、両者の含有量が5.0g/m2以内であると、十分な発色濃度が維持され、且つ記録層の透明性を保持することができる。
【0052】
一方、用いる水相には保護コロイドとして水溶性高分子を溶解した水溶液を使用し、これに前記油相を投入後、ホモジナイザー等の攪拌手段により乳化分散を行うが、前記水溶性高分子としては、分散を均一に且つ容易にすると共に、乳化分散した水溶液を安定化させる分散媒として作用する。ここで、更に均一に乳化分散し安定化させるために、油相あるいは水相の少なくとも一方に界面活性剤を添加してもよい。該界面活性剤としては、周知の乳化用界面活性剤を使用することができる。該界面活性剤の添加量は、油相の質量に対して0.1〜5%が好ましく、0.5〜2%がより好ましい。
【0053】
水相に含有させる前記界面活性剤としては、アニオン性又はノニオン性の界面活性剤の中から、前記保護コロイドと作用して沈殿や凝集を起こさないものを適宜に選択して使用することができる。
好ましい界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、アセチレングリコール等が挙げられる。
【0054】
乳化分散は、前記成分を含有した油相と保護コロイド及び界面活性剤を含有する水相とを、高速撹拌機、超音波分散装置等の通常の微粒子乳化に用いられる手段、例えば、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル等、その他公知の乳化分散装置を用いて容易に行うことができる。乳化分散後は、カプセル壁の形成反応を促進させるために、該乳化物を30〜70℃に加温することが好ましい。また、反応中はカプセル同士の凝集を防止するために、加水してカプセル同士の衝突確率を下げたり、十分な攪拌を行うことが好ましい。
【0055】
また、カプセル形成の反応中に改めて凝集防止用の分散剤を添加してもよい。重合反応の進行に伴って炭酸ガスの発生が観測され、その発生の終息をもって凡そのカプセル形成反応の終点と見なすことができる。通常、数時間反応させることにより、目的とするマイクロカプセルを得ることができる。
【0056】
(乳化分散物)
塩基性染料前駆体、更に光分解性ジアゾ化合物を芯物質としてカプセル化した場合のカプラー化合物は、例えば、水溶性高分子及び有機塩基、その他の発色助剤等と共に、サンドミル等の混合手段により固体分散して用いることもできるが、予め水に難溶性又は不溶性の高沸点有機溶剤に溶解した後、これを界面活性剤及び/又は水溶性高分子を保護コロイドとして含有する高分子水溶液(水相)と混合し、ホモジナイザー等で乳化分散した乳化物として用いることがより好ましい。この場合、必要に応じて、低沸点溶剤を溶解助剤として用いることもできる。
更に、カプラー化合物と有機塩基は別々に乳化分散することも、混合してから高沸点有機溶剤に溶解し、乳化分散することもできる。好ましい乳化分散粒子径は1μm以下である。
【0057】
この場合に使用される高沸点有機溶剤は、例えば、特開平2−141279号公報に記載された高沸点オイルの中から適宜選択することができる。中でもエステル類を使用することが、乳化分散液の乳化安定性の観点から好ましく、その中でも、リン酸トリクレジルが特に好ましい。前記のオイル同士、又は他のオイルとの併用も可能である。
【0058】
前記の保護コロイドとして含有される水溶性高分子としては、公知のアニオン性高分子、ノニオン性高分子、両性高分子の中から適宜に選択することができ、乳化しようとする温度における水に対する溶解度が5%以上の水溶性高分子が好ましく、その具体例としては、ポリビニルアルコール又はその変成物、ポリアクリル酸アミド又はその誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール、ゼラチン、セルロース誘導体が好ましく、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0059】
また、油相の水相に対する混合比(油相質量/水相質量)は、0.02〜0.6が好ましく、0.1〜0.4がより好ましい。該混合比が0.02〜0.6の範囲内であると、適度の粘度に保持でき、製造適性に優れ、塗布液の経時安定性に優れる。
【0060】
本発明に用いる記録材料において電子受容性化合物を用いる場合、該電子受容性化合物は、前記塩基性染料前駆体の1質量部に対して、0.5〜30質量部が好ましく、1.0〜10質量部がより好ましい。
また、本発明に用いる記録材料においてカプラー化合物を用いる場合、該カプラーは、前記光分解性ジアゾ化合物の1質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
【0061】
(記録層用塗布液)
記録層用塗布液は、例えば、前記の様に調製したマイクロカプセル液と乳化分散物とを混合することにより、調製することができる。ここで、前記マイクロカプセル液の調製の際に保護コロイドとして用いた水溶性高分子、並びに前記乳化分散物の調製の際に保護コロイドとして用いた水溶性高分子は、記録層におけるバインダーとして機能する。また、これら保護コロイドとは別にバインダーを添加し混合して、記録層用塗布液を調製することも好ましい態様である。
【0062】
前記記録層に含有されるバインダーとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エピクロルヒドリン変性ポリアミド、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレインサリチル酸共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸アミド、メチロール変性ポリアクリルアミド、デンプン誘導体、カゼイン、ゼラチン等が挙げられる。
また、これらのバインダーに耐水性を付与する目的で耐水性の改良剤を加えたり、疎水性ポリマーのエマルジョン、具体的には、アクリル樹脂エマルジョン、スチレン−ブタジエンラテックス等を添加することもできる。
【0063】
記録層用塗布液を支持体上に塗布するには、水系又は有機溶剤系の塗布液に用いる公知の塗布手段が用いられるが、この場合、記録層用塗布液を安全且つ均一に塗布すると共に、塗膜の強度を確保するために、本発明に用いる記録材料においては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、澱粉類、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリスチレン又はその共重合体、ポリエステル又はその共重合体、ポリエチレン又はその共重合体、エポキシ樹脂、アクリレート系樹脂又はその共重合体、メタアクリレート系樹脂又はその共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン−ブタジエンラテックス等を使用することもできる。
【0064】
(その他の成分)
以下に、記録層に用いることのできるその他の成分について述べる。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的或いは必要に応じて適宜に選択することができるが、例えば、公知の熱可融性物質、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
その他の成分の塗布量としては、0.05〜1.0g/m2程度が好ましく、0.1〜0.4g/m2がより好ましい。また、該他の成分は、前記マイクロカプセル内に添加してもよいし、マイクロカプセル外に添加してもよい。
【0065】
前記熱可融性物質は、熱応答性の向上を図る目的で記録層に含有させることができる。この様な熱可融性物質としては、芳香族エーテル、チオエーテル、エステル、脂肪族アミド、ウレイド等が挙げられる。これらの例は、特開昭58−57989号、同58−87094号、同61−58789号、同62−109681号、同62−132674号、同63−151478号、同63−235961号、特開平2−184489号、同2−215585号の各公報等に記載されている。
【0066】
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤等が好適に挙げられる。これらの例は、特開昭47−10537号、同58−111942号、同58−212844号、同59−19945号、同59−46646号、同59−109055号、同63−53544号、特公昭36−10466号、同42−26187号、同48−30492号、同48−31255号、同48−41572号、同48−54965号、同50−10726号の各公報、米国特許第2719086号、同第3707375号、同第3754919号、同第4220711号の各明細書等に記載されている。
【0067】
前記酸化防止剤としては、ヒンダードアミン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アニリン系酸化防止剤、キノリン系酸化防止剤等が好適に挙げられる。これらの例は、特開昭59−155090号、同60−107383号、同60−107384号、同61−137770号、同61−139481号、同61−160287号の各公報等に記載されている。
【0068】
本発明における記録層は、塗布及び乾燥後の固形分塗布量が1〜25g/m2になるように塗布されること、及び該記録層の厚みが1〜25μmになるように塗布されることが好ましい。また、記録層は2層以上を積層して用いることも可能であるが、この場合、全記録層の塗布及び乾燥後の固形塗布量が1〜25g/m2であることが好ましい。
【0069】
<保護層>
本発明に用いる記録材料は、記録層を有する面側の最上層として保護層を有する。該保護層は通常、保護層用塗布液として調製された塗布液を塗布して形成される。
【0070】
(顔料)
前記保護層に用いられる顔料は、有機顔料及び無機顔料のいずれも使用できる。
前記保護層に用いられる顔料としては、その平均粒径、詳しくは、レーザー回折法で測定した50%体積平均粒径(堀場製作所(株)製のレーザー回折粒度分布測定装置「LA700」により測定された、顔料中の50%体積に相当する顔料粒子の平均粒径を指し、以下、これを単に「平均粒径」ということがある。)が、0.10〜5.0μmであるものが好ましく、前記平均粒径は0.20〜0.50μmの範囲にあることがより好ましい。前記平均粒径が0.10〜5.0μmの範囲内にあると、ヘイズ値を低く抑えることができる。
【0071】
前記保護層に用いることのできる顔料の種類は、特に限定されるものではなく、公知の有機及び無機の顔料から適宜に選択して使用することができるが、中でも、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、水酸化アルミニウム、非晶質シリカ、酸化亜鉛等の無機顔料、及び尿素ホルマリン樹脂、エポキシ樹脂等の有機顔料が好ましい。前記保護層に用いる顔料としては、無機顔料が好ましく、中でも特に、カオリン、水酸化アルミニウム、非晶質シリカがより好ましい。これらの顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また前記顔料の中でも、高級脂肪酸や高級脂肪酸の金属塩、高級アルコールからなる群より選択される少なくとも1種により表面被覆された顔料を好適に使用することができる。前記表面処理に用いる高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸等が挙げられる。
【0072】
上述のように、前記保護層に用いる顔料は、無機顔料が好ましく、該無機顔料の含有量は、保護層の総固形分の20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、前記保護層が顔料を全く含有しないことが更に好ましい。
【0073】
前記顔料は、例えば、ヘキサメタリン酸ソーダ、部分鹸化又は完全鹸化のポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体、各種界面活性剤等の分散助剤、好ましくは部分鹸化又は完全鹸化のポリビニルアルコール、イタコン酸変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸共重合体アンモニウム塩の共存下で、ディゾルバーやサンドミル、ボールミル等の既知の分散機で前記平均粒径にまで分散して使用されることが好ましい。即ち、顔料の50%体積平均粒径が0.1〜5.0μmの範囲の粒径になるまで微分散してから使用されることが好ましい。
【0074】
(マット剤)
前記保護層中に含有されるマット剤としては、例えば、大麦、小麦、コーン、米、豆類より得られる澱粉等の微粒子の他、セルロースファイバー、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂、塩化ビニルまたは酢酸ビニル等の共重合体樹脂、ポリオレフィン等の合成高分子の微粒子、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、スメクタイト粘土、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛等の無機物の微粒子等が挙げられる。また、記録材料の透明性を良好なものとする観点から、屈折率が1.45〜1.75の微粒子状物質が好ましく、平均粒径としては、1〜20μm(特に1〜10μm)が好ましい。
【0075】
また、前記保護層は、裁断時の塗膜剥がれやハンドリングの際の損傷を防止するために、その表面のJIS K6718に規定する表面引っ掻き堅さを、40g以上の表面堅さとすることが好ましい。本発明においては、前記の表面引っ掻き堅さの試験法としては、連続加重式引っ掻き強度試験機を用い、サファイア製の円錐型引っ掻き針(先端R:0.1mm)で、移動距離100mmの間に加重を0〜200gの範囲で連続的に変化させて保護層表面を引っ掻き、これを透過濃度1.2に発色させたものを透過光下で観察して、傷により濃度変化が発生した移動距離から引っ掻き堅さを求めたものである。
【0076】
(バインダー等)
前記保護層はバインダーを含有する。該バインダーとしては、透明性及び耐水性を良好なものとする観点から、バインダーとしてポリビニルアルコールが好ましく用いられ、カルボキシ変性ポリビニルアルコールやシリカ変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを用いることもできる。
本発明において、前記バインダーの保護層中の含有量は、保護層の総固形分の50質量%以上であることが好ましく、55〜99質量%であることがより好ましく、60〜99質量%であることが更に好ましい。
【0077】
また、前記保護層には公知の硬膜剤等が含有されることが好ましい。該硬膜剤としては、硼酸、硼砂、コロイダルシリカ等の無機化合物やアルデヒド誘導体、ジアルデヒド誘導体などを挙げることができる。
本発明において、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン類を保護層に硬膜剤として添加することが皮膜強度を上げ、保護層の耐水性を向上する点で好ましい。2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン類としては、2,3−ジヒドロキシ−5−メチル−1,4−ジオキサン(下記構造式[002]で表わされる化合物)、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン、2,3−ジヒドロキシ−5,6−ジメチル−1,4−ジオキサン、2,3−ジヒドロキシ−2,5,6−トリメチル−1,4−ジオキサン、2,3−ジヒドロキシ−2−メチル−1,4−ジオキサンが挙げられる。
これらの2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン類はその層のバインダーに対して0.1〜200質量%用いることが好ましく、より好ましくは1〜100質量%、更に好ましくは10〜50質量%、特に好ましくは20〜40質量%である。
【0078】
【化1】

【0079】
本発明において、記録層又は中間層上に均一に保護層を形成させるために、保護層形成用塗布液に界面活性剤を添加することが好ましい。該界面活性剤としては、スルホコハク酸系のアルカリ金属塩、フッ素含有界面活性剤等が好ましく、具体的には、ジ−(2−エチルヘキシル)スルフォコハク酸、ジ−(n−ヘキシル)スルフォコハク酸等のナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩、アセチレングリコール誘導体、パーフルオロアルキル硫酸ナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩、パーフルオロアルキルベタイン化合物等が挙げられる。
【0080】
更に前記保護層中には、記録材料の帯電防止の目的で、金属酸化物微粒子、無機電解質、高分子電解質等を添加してもよい。また、前記保護層は単層構造であってもよいし、2層以上の積層構造であってもよい。
前記保護層の乾燥塗布量は0.2〜7g/m2が好ましく、1〜4g/m2がより好ましい。
【0081】
<支持体>
本発明に用いる記録材料における支持体としては、カール等の変形を効果的に防止するために、縦方向及び横方向における熱収縮率が1%未満であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましい。熱収縮率の小さい支持体を選択することで、例えば医療用記録に用いられる場合など、高熱エネルギーが印加される用途に用いられる場合でも、支持体自体の熱収縮が抑えられ、記録後におけるカール状に変形する等の不具合を防止することができる。
【0082】
本発明における支持体としては、前記の様に熱収縮率の小さい支持体が好ましく、公知の支持体の中から適宜に選択することができるが、中でも、高分子フィルムからなる支持体が好ましく、透明な支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、三酢酸セルロースフィルム、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルム等の合成高分子フィルム、等が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート(PET)の支持体が好ましい。これらは単独で、あるいは貼り合わせて使用することができる。前記合成高分子フィルムの厚みとしては、10μm以上200μm以下であることが好ましく、15μm以上150μm以下であることがより好ましく、20μm以上100μm以下であることが更に好ましい。前記合成高分子フィルムの厚みが10μm以上200μm以下であると、フィルム搬送などの取り扱い性が良く、立体的な対象物に貼り付けた場合にラベルが剥がれにくい。
【0083】
また、前記合成高分子フィルムは透明であることが好ましく、更に、任意の色相に着色されていてもよい。該合成高分子フィルムを着色する方法としては、樹脂フィルムを成形する前に樹脂に染料を混練してフィルムを成形する方法、染料を適当な溶剤に溶かした塗布液を調製し、これを無色透明な樹脂フィルム上に公知の塗布方法、例えば、グラビアコート法、ローラーコート法、ワイヤーコート法等により塗布する方法が挙げられる。中でも、青色染料を混練したポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂をフィルムに成形し、これに耐熱処理や延伸処理、帯電防止処理等を施したものが好ましい。本発明における支持体としては、厚みが20〜100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0084】
一方、前記支持体は、発泡ポリエチレンテレフタレートからなることが好ましい。前記支持体が発泡ポリエチレンテレフタレートからなると、後述するCOレーザーを照射することにより発生した熱を逃がしにくくし、印字濃度を高めることができ好ましい。
【0085】
<バック層>
本発明に用いる記録材料においては、カールバランスを良好とする為に、前記支持体の記録層や中間層を有する発色面の反対側(裏面)に、少なくとも1層の水溶性バインダーを含有するバック層が設けられることが好ましい。前記裏面の水溶性バインダー塗布量は、カールバランスを更に向上させる観点より、0.5〜5g/m2であることが好ましく、特に1.5〜4g/m2であるのが最も好ましい。
また、本発明におけるバック層に用いる前記水溶性バインダーの中でも、ゼラチン類が最も好ましく、該ゼラチンとしては、特に等電点の低いアルカリ処理ゼラチン、アミノ基を反応させた誘導体ゼラチン(例えば、フタル化ゼラチン等)等が好ましい。
本発明におけるバック層に用いる前記水溶性バインダーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、バック層が2層以上の複数層からなる場合には、その少なくとも2層はゼラチンを含有することが好ましく、ゼラチンと共に他の水溶性バインダーを含んでいてもよい。
【0086】
また、本発明に用いる記録材料は、カールバランスを向上させる為に、前記裏面に更にラテックスを含有させることが可能であり、この場合、該ラテックス塗布量は裏面のゼラチン塗布量以下であることが好ましい。更に、カールバランスをより向上させる為に、前記裏面のラテックス塗布量は、裏面のゼラチン塗布量の50質量%以下であることが好ましい。ここで、該ラテックスは水分散液の形態で用いることが好ましい。
【0087】
前記ラテックスはゼラチンの充填剤として作用すると考えられ、ゼラチン膜の熱伸縮を抑制し寸法安定性を向上させる機能を有する。一方、ゼラチンに対するラテックスの塗布比率が高くなると、ゼラチン膜を可塑化するため耐接着性を悪化させてしまう。特に、ラテックスの塗布乾燥後の塗布質量が、バック面のゲル分塗布質量を越えると、バック面と発色面の接着性が大きくなり、両者を剥がす際に膜剥がれを起こし易くなるため、実用に適さなくなる場合がある。それを避ける為に、該ラテックス塗布量は裏面のゼラチン塗布量以下であることが好ましく、特に裏面のゼラチン塗布量の50質量%以下であることが好ましい。
【0088】
本発明に用いる前記ラテックスとしては、各種モノマーの共重合体が好ましく、そのモノマー組成としては、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレート類;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート類;ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸、スチレン等が挙げられる。これらのモノマーの共重合体は、単独で使用又は複数を混合して用いることができる。
【0089】
本発明における前記バック層は、1層で構成されたものであってもよいし、2層以上で構成されたものであってもよい。特に、他に支障を来すことなく、ゼラチンを含有する水溶性バインダーの塗布量を高めながら良好に塗膜を形成できる観点より、2層或いはそれ以上の複数層で構成されることが好ましい。また、必要もしくは目的に応じて硬膜剤、マット剤、紫外線吸収剤、染料、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤等の他の成分を含有していてもよい。
【0090】
本発明におけるバック層に用いる前記水溶性バインダーとしては、ゼラチン類以外に、例えば、酢酸ビニル−アクリルアミド共重合体、珪素変性ポリビニルアルコール、アセチル変性ポリビニルアルコール、フッ化アセチル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、澱粉、変性澱粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アラビアゴム、カゼイン、スチレン−マレイン酸共重合体加水分解物、スチレン−マレイン酸共重合物ハーフエステル加水分解物、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体加水分解物、ポリアクリルアミド誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンスルホン酸ソーダ、アルギン酸ソーダなどの水溶性高分子及びスチレン−ブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、アクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス、酢酸ビニルエマルジョン等の水不溶性ポリマー等が挙げられる。
【0091】
本発明におけるバック層に用いる他の成分として、水溶性バインダー(特にゼラチン)と作用させて塗布膜を固め、耐水性を付与する目的で、硬膜剤を含有してもよい。該硬膜剤としては、例えば、「THE THEORY OF THE PHOTOGRAPHIC PROCESS;FORTH EMOTION」(T.H.James著)の頁77〜87に記載のものが挙げられ、ビニルスルホン系化合物が好ましい。
【0092】
また、前記バック層には、搬送性の改良、光反射防止の目的で、マット剤を含有してもよい。
本発明におけるバック層に用いる前記マット剤としては、例えば、大麦、小麦、コーン、米、豆類より得られる澱粉等の微粒子の他、セルロースファイバー、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート樹脂、塩化ビニルまたは酢酸ビニル等の共重合体樹脂、ポリオレフィン等の合成高分子の微粒子、炭酸カルシウム、酸化チタン、カオリン、スメクタイト粘土、水酸化アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛等の無機物の微粒子等が挙げられる。
また、記録材料の透明性を良好なものとする観点から、屈折率が1.45〜1.75の微粒子状物質が好ましく、平均粒径としては、1〜20μm(特に1〜10μm)が好ましい。
【0093】
また、塗布助剤又は帯電防止剤として、支持体からみて記録層と反対側で最外層となるバック層にフッ素系界面活性剤を添加することが好ましい。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸カリウム、N−プロピル−N−オキシエチレンパーフルオロオクタンスルホンアミドブチルスルホン酸ナトリウム、トリメチル(プロピレンアミノスルホニルパーフルオロオクタン)アンモニウムクロリド、N−プロピル−N−オキシエチレンパーフルオロオクタンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0094】
前記バック層には、バック層を塗布形成する場合の塗布を円滑に行う目的で、塗布液の粘度調整を行う増粘剤を添加してもよい。記録後の画像の耐光性を高める目的で、紫外線吸収剤を添加してもよい。前記増粘剤、紫外線吸収剤は、公知のものの中から適宜選択することができる。
【0095】
バック層形成用の塗布液の安定性を保つ目的で、例えば水酸化ナトリウムなど、pHの調整が可能なpH調整剤を添加してもよい。また、バック層形成の塗布液、及び記録材料の劣化防止の目的で、防腐剤を添加してもよい。該防腐剤としては、公知のものの中から適宜選択できる。
【0096】
バック層が複数層からなる場合、前記の他の成分はいずれの層に含まれていてもよい。また、他の成分は本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有できる。
前記バック層を塗布形成する場合の塗布方法としては、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等の公知の塗布方法を適用できる。前記バック層を複数層で構成する場合には、押出しダイ方式等により重層塗布してもよい。
【0097】
支持体の記録層を有しない側には、前記バック層のほか、印画後短時間でのカールの大きさが平衡に達する前の挙動を調整できる点で、該バック層に隣接して、ポリビニルアルコールを含有する層(以下、「PVA層」ということがある。)を有していてもよい。該層は、支持体のバック層を有する側において、支持体からみて最も離れたバック層表面に設けられてもよく、支持体とバック層との間に設けられてもよく、またバック層が複数層からなる場合には、バック層とバック層との間に設けられてもよい。前記PVA層は、複数形成されていてもよい。
【0098】
前記PVA層におけるポリビニルアルコールとしては、例えば、完全鹸化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、シリカ変性ポリビニルアルコール、等が好適である。
前記ポリビニルアルコールのPVA層における含有量としては、該層の固形分(質量)の50〜100質量%が好ましい。
【0099】
前記PVA層は、更に界面活性剤を含有していてもよい。該界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム塩、ポリアルキレングリコール、等が挙げられる。
【0100】
前記PVA層は、前記バック層と同様、ポリビニルアルコールを含んで調製された塗布液を塗布等して形成することができ、該層の層厚としては、0.5〜10μmが好ましい。
【0101】
<その他の層>
本発明においては、支持体上の任意の位置に、画像の褪色防止の目的で、紫外線フィルター層を設けてもよい。該紫外線フィルター層には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等の紫外線吸収剤が含有される。
また、光反射防止層を更に有していてもよい。該光反射防止層は、前記バック層に使用可能なマット剤に好適な微粒子を含んで構成できる。
【0102】
また、支持体から記録層が剥がれることを防止する目的で、記録層や保護層等を塗布する前に支持体上に予め下塗り層を形成しておいてもよい。該下塗り層は、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、SBR、水性ポリエステル等を用いてなり、該層の厚みとしては、0.05〜0.5μmが好ましい。
【0103】
前記下塗り層上に記録層を塗布する際、記録層用塗布液に含まれる水分により下塗り層が膨潤して、記録層に記録された画像が悪化することがあるので、下塗り層はグルタルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類又はホウ酸等の硬膜剤を用いて硬膜させることが好ましい。該硬膜剤の添加量は、下塗り層の乾燥質量に対して0.2〜3.0質量%の範囲で、所望の硬化度に合わせて適宜、添加することができる。
【0104】
本発明に用いる記録材料は、例えば、下記のように作製することができるが、これらに限定されるものではない。本発明における支持体の一方の側に、記録層形成用の塗布液(以下、「記録層用塗布液」という。)を塗布して記録層を形成し、該記録層上に中間層用塗布液及び保護層用塗布液を塗布して形成し、かつ該側とは逆側に、既述の様に、単一若しくは複数層からなるバック層をバック層用塗布液を塗布して形成し、更に必要に応じて、前記一方及び他方において他の層を形成してなる。尚、前記一方の側における具体的な塗布方法については、バック層を塗布形成する場合と同様の塗布方法が適用できる。
ここで、前記記録層及び中間層と保護層を同時に形成してもよく、その場合、前記記録層用塗布液と中間層及び保護層用塗布液とを支持体上に同時に重層塗布することにより形成することができる。
【0105】
本発明の記録方法は、既述の記録材料に、波長が9〜11μmのCOレーザーを照射して画像を記録する方法である。該照射するCOレーザーの波長としては、9.6〜10.7μmであることが好ましく、10.5〜10.6μmであることがより好ましい。波長が9〜11μmのCOレーザーを照射することにより、印字濃度が高い画像を記録することができる。
【0106】
前記COレーザーとしては、波長9〜11μmのCOレーザー光を照射できるものであるならば特に制限はなく目的に応じて適宜選定することができ市販のレーザーを用いることができる。例えば、レーザーテクニクス製「BLAZAR6000」、ウシオ電機社製「ユニマーク」、コヒーレント社製「ザイマーク7000」、キーエンス社製「ML―9110」、イーデーエム社製「スマートレイズ110」、コーンズドッドウエル社製「ドミノスキャニングレーザー」などが挙げられる。
また、前記COレーザーは記録材料表面でのエネルギーが10〜200mJ/mmとなるように調整して照射することが好ましい。記録材料表面でのエネルギーが10〜150mJ/mmであるとより好ましい。前記CO炭酸ガスレーザーのエネルギーが10mJ/mm未満であると十分な発色が起こらないことがあり、200mJ/mmを超えると、アブレーションが発生して発色した記録層が消失することがある。
【実施例】
【0107】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「%」は、特に断わりのない限り「質量%」を表す。
【0108】
[実施例1]
(保護層用塗布液の調製)
<保護層用顔料分散液の調製>
水100gに、顔料としてステアリン酸表面処理水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製の商品「ハイジライトH42S」)30gを加え3時間撹拌した後、これに40%分散助剤(花王(株)製の商品名「ポイズ532A」)水溶液0.8g、9.4%ポリビニルアルコール水溶液((株)クラレ製の商品名「PVA105」)10g、2%に調整した下記構造式[100]で表される化合物の水溶液10gを加えサンドミルで分散し、水を加えて固形分濃度を18.5%に調整し、平均粒径0.30μmの保護層用顔料を含む保護層用顔料分散液を得た。
【0109】
【化2】

【0110】
<保護層用塗布液の調製>
水83gに、8%ポリビニルアルコール水溶液((株)クラレ製の商品名「PVA124C」)90g、4%ホウ酸水溶液10g、前記保護層用顔料分散液(固形分濃度:18.5%)30.3g、10%ドデシルベンゼンスルフォン酸Na塩水溶液3.2g、ジ−2−エチルヘキシルスルフォコハク酸のアンモニウム塩(日本油脂(株)製の商品名「ニッサンエレクトールSAL1」)の75%水溶液1.6g、10%「サーフロンS131S」(旭ガラス(株)製)水溶液16g、「プライサーフA217E」(第一工業製薬(株)製)1.1g、及び2%酢酸水溶液8gを混合して保護層用塗布液を得た。
【0111】
(記録層用塗布液の調製)
<マイクロカプセル含有塗布液の調製>
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン21.0gを酢酸エチル21.0gに添加し、70℃に加熱、溶解した後、45℃まで冷却した。これにカプセル壁材(武田薬品工業(株)製の商品名「タケネートD110N」)16.6gを加え混合した。この溶液を水16.6gに8%のポリビニルアルコール((株)クラレ製の商品名「MP−103」)48.1gを混合した水相中に加え、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用い、15000rpmで5分間乳化分散を行なった。得られた乳化液に更に水112gを添加した後、60℃で4時間カプセル化反応を行ない、平均粒径0.3μmのマイクロカプセル液含有塗布液を調製した。
【0112】
<電子受容性化合物乳化分散液の調製>
電子受容性化合物として、下記構造式[301]で表される化合物22.0g、下記構造式[302]で表される化合物8.0g、下記構造式[303]で表される化合物2.6g、下記構造式[304]で表される化合物2.6g、下記構造式[305]で表される化合物0.5g、紫外線吸収剤として、下記構造式[306]で表される化合物4.0g、をトリクレジルフォスフェート1.0g、マレイン酸ジエチル0.5gと共に、酢酸エチル16.5gに添加し、70℃に加熱して溶解した。この溶液を、水67g、8%ポリビニルアルコール水溶液((株)クラレ製の「PVA217C」)55g、15%のポリビニルアルコール水溶液((株)クラレ製の商品名「PVA205C」)19.5g、下記構造式[401]で表される化合物の2%水溶液11g及び下記構造式[402]で表される化合物の2%水溶液11gを混合した水相中に加えた後、エースホモジナイザー(日本精機(株)製)を用いて回転数10000rpmで平均粒径0.7μmになるように乳化分散して、電子受容性化合物乳化物を得た。
【0113】
【化3】

【0114】
【化4】

【0115】
【化5】

【0116】
<記録層用塗布液の調製>
マイクロカプセル含有塗布液(固形分濃度:23%)27.0g、電子受容性化合物乳化分散液(固形分濃度:22%)100g、33g、コロイダルシリカ(日産科学(株)製の「スノーテックス」)4.5g、前記構造式[002]で表される化合物の50%水溶液1.2g、及び水14.5gを混合し、記録層用塗布液を調製した。
【0117】
<記録層の作製>
厚み60μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の片面に、支持体に近い側から、記録層用塗布液、保護層用塗布液の順に、それぞれ塗布量が50ml/m、26ml/mになる様にスライドビード法により同時重層塗布して乾燥し、該支持体上に記録層、及び保護層を設けた。この際、各層の塗布液は温度33℃〜37℃の範囲に調整した。また、乾燥条件は以下の通りである。塗布スピードは160m/分とし、コーティングダイ先端と支持体との間隔を0.10〜0.30mmとし、減圧室の圧力を大気圧に対し200〜1000Pa低く設定した。支持体は塗布前にイオン風にて除電した。引き続く初期乾燥ゾーンにおいて、温度45℃〜55℃、露点0〜5℃の風にて乾燥後、無接触で搬送して、つるまき式無接触型乾燥装置により、乾球温度30〜45℃、湿球温度17〜23℃の乾燥風で乾燥させ、乾燥後25℃で湿度40〜60%にて調湿した。
【0118】
<粘着剤層および剥離紙の貼り付け>
上記の記録層及び保護層を設けた支持体の、記録層及び保護層が設けられていない側の表面に、アクリル系粘着剤[商品名:サイビノールX−491−286E、サイデン化学(株)製]を乾燥重量で15g/mとなるようにロールコーターにて塗布乾燥し、この粘着剤を含む層に剥離紙の剥離面を貼り合わせ、実施例1の記録材料(レーザーマーキング材料)を得た。得られた記録材料の保護層の上から、炭酸ガス(CO)レーザー(商品名:BLAZAR6000、レーザーテクニクス製)により、波長:10.6μmで記録材料の保護層表面でのエネルギーが40mJ/mmとなるように印字した。
【0119】
[実施例2]
実施例1の<保護層用塗布液の調製>において、保護層用顔料分散液(固形分濃度:18.5%)、ジ−2−エチルヘキシルスルフォコハク酸のアンモニウム塩(日本油脂(株)製の商品名「ニッサンエレクトールSAL1」)の75%水溶液を使用せず、水の使用量を83gから125gに変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2の記録材料を得た。更に実施例1と同様にして、得られた記録材料の保護層の上から炭酸ガスレーザーを用いて印字した。
【0120】
[実施例3]
実施例1の<保護層用塗布液の調製>において、保護層用顔料分散液(固形分濃度:18.5%)、ジ−2−エチルヘキシルスルフォコハク酸のアンモニウム塩(日本油脂(株)製の商品名「ニッサンエレクトールSAL1」)の75%水溶液を使用せず、水の使用量を83gから125gに変更し、更に、実施例1の<マイクロカプセル含有塗布液の調整>において、カプセル壁材(武田薬品工業(株)製の商品名「タケネートD110N」)に代えて、カプセル壁剤(「タケネートD140N」、武田薬品工業(株)製、イソホロンジイソシアネートの3量体を50%以上含有する。)を使用したこと以外は実施例1と同様にして実施例3の記録材料を得た。更に実施例1と同様にして、得られた記録材料の保護層の上から炭酸ガスレーザーを用いて印字した。
【0121】
[実施例4]
実施例3の<マイクロカプセル含有塗布液の調製>において、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオランの代わりにクリスタルバイオレットラクトンを使用した以外は実施例3と同様にして実施例4の記録材料を得た。更に実施例1と同様にして、得られた記録材料の保護層の上から炭酸ガスレーザーを用いて印字した。
【0122】
[実施例5]
実施例3の<記録層の作製>において、厚み60μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の代わりに、厚み60μmのポリプロピレンを用いたこと以外は実施例3と同様にして実施例5の記録材料を得た。更に実施例1と同様にして、得られた記録材料の保護層の上から炭酸ガスレーザーを用いて印字した。
【0123】
[実施例6]
実施例3の<記録層の作製>において、厚み60μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)支持体の代わりに、厚み60μmの白色発泡PETを用いたこと以外は実施例3と同様にして実施例6の記録材料を得た。更に実施例1と同様にして、得られた記録材料の保護層の上から炭酸ガスレーザーを用いて印字した。
【0124】
[実施例7]
実施例1において、保護層用塗布液を以下のように調製した保護層用塗布液Bに変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例7の記録材料を得た。更に実施例1と同様にして、得られた記録材料の保護層の上から炭酸ガスレーザーを用いて印字した。
【0125】
<保護層用塗布液Bの調製>
水83gに、8%ポリビニルアルコール水溶液((株)クラレ製の商品名「PVA124C」)90g、4%ホウ酸水溶液10g、前記保護層用顔料分散液(固形分濃度:18.5%)61.6g、10%ドデシルベンゼンスルフォン酸Na塩水溶液6.5g、ジ−2−エチルヘキシルスルフォコハク酸のアンモニウム塩(日本油脂(株)製の商品名「ニッサンエレクトールSAL1」)の75%水溶液3.28g、6%スチレン−マレイン酸共重合体アンモニウム塩水溶液(荒川化学(株)製の商品名「ポリマロン385」)17.5g、20%コロイダルシリカ(日産化学(株)製の商品名「スノーテックス」)水溶液14g、10%「サーフロンS131S」(旭ガラス(株)製)水溶液16g、「プライサーフA217E」(第一工業製薬(株)製)1.1g、2%酢酸水溶液8gを混合して保護層用塗布液Bを調製した。
【0126】
[比較例1]
実施例2で得られた記録材料の保護層の上から、GaAs接合レーザーにより、波長780nmで、記録材料の保護層表面でのエネルギーが40mJ/mmとなるように印字した。
【0127】
[レーザー印字濃度の評価]
炭酸ガス(CO)レーザーで印字した実施例1〜7、及びGaAs接合レーザーで印字した比較例1のレーザー印字濃度を下記基準で目視評価した。その結果を表1に示す。
・評価基準
×:マークが不明瞭。
△:明瞭なマークが得られたものの塗膜の白濁により発色濃度が薄く見える。
○:明瞭なマークが得られ発色濃度が濃い。
◎:明瞭なマークが得られ発色濃度が非常に濃い。
【0128】
[耐溶剤性の評価]
実施例1〜7及び比較例1で得られた記録材料の印字部の保護層の上に、メチルエチルケトン100μlを滴下し、25℃50%環境下で自然乾燥し、下記基準で耐溶剤性を目視評価した。その結果を表1に示す。
・評価基準
×:メチルエチルケトン滴下部が着色、または白濁し、印字が読み取れなくなった。
△:メチルエチルケトン滴下部が着色、または白濁したが、印字は読み取れた。
○:僅かにメチルエチルケトン滴下部が着色、または白濁したが問題ないレベルであった

◎:メチルエチルケトン滴下部に着色、白濁ともに認められなかった。
【0129】
[耐熱性の評価]
実施例1〜7及び比較例1で得られた記録材料を、120℃の環境下で30分間放置し、放置後の光学反射濃度をマクベス反射濃度計(RD−918、マクベス社製)で測定した。その結果を表1に示す。尚、光学反射濃度が低いほど耐熱性が高く良好であることを示す。
【0130】
【表1】

【0131】
表1より、実施例1〜7は、レーザー印字濃度が高く、耐溶剤性が良好であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、塩基性染料前駆体を内包するマイクロカプセルを少なくとも含有する記録層と、バインダーを含有する保護層と、を順次有する記録材料に、波長が9〜11μmのCOレーザーを照射して画像を記録することを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記バインダーの含有量が保護層の総固形分の50質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記保護層が無機顔料を含み、該無機顔料の含有量が保護層の総固形分の20質量%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録方法。
【請求項4】
前記マイクロカプセルの壁剤がイソホロンジイソシアネート化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の記録方法。
【請求項5】
前記支持体が発泡ポリエチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の記録方法。

【公開番号】特開2007−152686(P2007−152686A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−349537(P2005−349537)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】