説明

記録方法

【課題】従来の記録方法では、画像の品位を向上させることが困難である。
【解決手段】描画パターン形成工程S21と、描画パターン硬化工程S22とを含む記録方法であって、描画パターン形成工程S21は、光の照射を受けて硬化が促進する性質である光硬化性を有する塗料を記録媒体に塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に、前記記録媒体に付着した前記塗料に前記光を照射する光照射工程と、前記光の照射を受けた前記塗料である被照射塗料に、新たな前記塗料を重ねて塗布する重畳塗布工程と、を含み、前記光照射工程では、前記被照射塗料における硬化率を40%未満にする、ことを特徴とする記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、紫外光の照射を受けることによって硬化が促進する液状体で記録媒体に記録を行う方法(記録方法)が知られている。
このような記録方法では、従来、1回目に紫外光を照射したときの液状体の硬化度(重合率)を40〜70%にする記録方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4147943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外光の照射を受けることによって硬化が促進する液状体を用いた記録では、記録を行う対象である記録媒体は、紙に限られない。記録媒体としては、液状体が付着することによって画像を形成することができれば、布や不織布などの繊維シート、プラスチックや樹脂、ガラスなどの基板等の種々の材質及び形態が適用され得る。
液状体の組成と記録媒体の材質や形態との組み合わせにより、液状体が記録媒体に浸透しにくい場合がある。このような場合、記録媒体に付着した液状体は、記録媒体の表面から突出した状態で固化する。
【0005】
階調や色を表現する場合には、複数の液状体を重畳させることがある。そして、上記特許文献1に記載された記録方法では、液状体が記録媒体に浸透しにくい場合において、画像に凹凸が発生することがある。画像に発生する凹凸は、意図しないスジ状の模様として視認されることがある。このため、画像に発生する凹凸は、画像の品位を低下させやすい。
つまり、従来の記録方法では、画像の品位を向上させることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現され得る。
【0007】
[適用例1]光の照射を受けて硬化が促進する性質である光硬化性を有する塗料を記録媒体に塗布する塗布工程と、前記塗布工程の後に、前記記録媒体に付着した前記塗料に前記光を照射する光照射工程と、前記光の照射を受けた前記塗料である被照射塗料に、新たな前記塗料を重ねて塗布する重畳塗布工程と、を含み、前記光照射工程では、前記被照射塗料における硬化率を40%未満にする、ことを特徴とする記録方法。
【0008】
この適用例の記録方法は、塗布工程と、光照射工程と、重畳塗布工程と、を含む。
塗布工程では、塗料を記録媒体に塗布する。塗料は、光硬化性を有する。光硬化性は、光の照射を受けて硬化が促進する性質である。
塗布工程の後に、光照射工程では、記録媒体に付着した塗料に光を照射する。これにより、記録媒体に付着した塗料の硬化が促進する。
重畳塗布工程では、被照射塗料に、新たな塗料を重ねて塗布する。被照射塗料は、光の照射を受けた塗料である。
この記録方法では、光照射工程において、記録媒体に付着した塗料における硬化率を40%未満にする。硬化率は、塗料の反応部位において、重合した塗料の割合である。硬化率は、例えば、光の照射を受けて重合が促進する塗料である場合には、重合率に等しい。
この記録方法では、40%未満の硬化率である被照射塗料に、新たな塗料を重ねて塗布するので、40%未満の硬化率である被照射塗料と新たな塗料とが互いになじみやすい。このため、40%未満の硬化率である被照射塗料と新たな塗料との間の境界部が滑らかになりやすい。この結果、塗料によって表現される画像において、凹凸の発生を抑えやすくすることができるので、画像の品位を向上させやすくすることができる。
【0009】
[適用例2]上記の記録方法であって、前記新たな塗料と前記被照射塗料とが、互いに同じ種類の色であるときに、前記光照射工程では、前記被照射塗料における硬化率を5%以上にする、ことを特徴とする記録方法。
【0010】
この適用例では、新たな塗料と被照射塗料とが、互いに同じ種類の色であるときに、光照射工程において、被照射塗料における硬化率を5%以上にするので、被照射塗料を定着させやすくすることができる。
【0011】
[適用例3]上記の記録方法であって、前記新たな塗料と前記被照射塗料とが、互いに異なる種類の色であるときに、前記光照射工程では、前記被照射塗料における硬化率を20%以上にする、ことを特徴とする記録方法。
【0012】
この適用例では、新たな塗料と被照射塗料とが、互いに異なる種類の色であるときに、光照射工程において、被照射塗料における硬化率を20%以上にするので、新たな塗料と被照射塗料との混色を低く抑えやすくすることができる。
【0013】
[適用例4]上記の記録方法であって、前記塗布工程では、前記塗料をインクジェット法で前記記録媒体に吐出することによって、前記塗料を前記記録媒体に塗布する、ことを特徴とする記録方法。
【0014】
この適用例では、塗布工程において、塗料をインクジェット法で記録媒体に吐出するので、塗料を記録媒体に塗布することができる。
【0015】
[適用例5]上記の記録方法であって、前記重畳塗布工程では、前記新たな塗料をインクジェット法で吐出することによって、前記新たな塗料を前記塗料に重ねて塗布する、ことを特徴とする記録方法。
【0016】
この適用例では、重畳塗布工程において、新たな塗料をインクジェット法で吐出するので、新たな塗料を塗料に重ねて塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態におけるキャリッジを図1中のA視方向に見たときの正面図。
【図3】本実施形態におけるヘッドユニットの底面図。
【図4】図2中のB−B線における断面図。
【図5】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示すブロック図。
【図6】本実施形態における描画処理の流れを示す図。
【図7】本実施形態における記録方法の流れを示す図。
【図8】本実施例における描画パターンを模式的に示す断面図。
【図9】本実施例における描画パターンの形成の流れを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照しながら、記録装置の1つである液滴吐出装置を例に、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
【0019】
実施形態における液滴吐出装置1は、概略の構成を示す斜視図である図1に示すように、ワーク搬送装置3と、キャリッジ7と、キャリッジ搬送装置9と、メンテナンス装置11と、を有している。
キャリッジ7には、ヘッドユニット13と、2個の照射装置15と、が設けられている。
液滴吐出装置1では、ヘッドユニット13と基板などのワークWとの平面視での相対位置を変化させつつ、ヘッドユニット13から液状体を液滴として吐出させることによって、ワークWに液状体で所望のパターンを描画することができる。なお、図中のY方向はワークWの移動方向を示し、X方向は平面視でY方向とは直交する方向を示している。また、X方向及びY方向によって規定されるXY平面と直交する方向は、Z方向として規定される。
【0020】
このような液滴吐出装置1は、例えば、液晶表示パネル等に用いられるカラーフィルターの製造や、有機EL装置の製造などに適用され得る。
赤、緑及び青の3色のフィルターエレメントを有するカラーフィルターの場合、液滴吐出装置1は、例えば、基板に赤、緑及び青の各着色層を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各着色層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれのフィルターエレメントのパターンが描画される。
また、有機EL装置の製造では、例えば、赤、緑及び青の画素ごとに、各色に対応する機能層(有機層)を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各色の機能層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれの機能層のパターンが描画される。
【0021】
ここで、液滴吐出装置1の各構成について、詳細を説明する。
ワーク搬送装置3は、図1に示すように、定盤21と、ガイドレール23aと、ガイドレール23bと、ワークテーブル25と、テーブル位置検出装置27と、を有している。
定盤21は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、Y方向に沿って延びるように据えられている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、定盤21の上面21a上に配設されている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール23aとガイドレール23bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
【0022】
ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bを挟んで定盤21の上面21aに対向した状態で設けられている。ワークテーブル25は、定盤21から浮いた状態でガイドレール23a及びガイドレール23b上に載置されている。ワークテーブル25は、ワークWが載置される面である載置面25aを有している。載置面25aは、定盤21側とは反対側(上側)に向けられている。ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bによってY方向に沿って案内され、定盤21上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
テーブル位置検出装置27は、定盤21の上面21aに設けられており、Y方向に延在している。テーブル位置検出装置27は、ガイドレール23aとガイドレール23bとの間に設けられている。テーブル位置検出装置27は、ワークテーブル25のY方向における位置を検出する。
【0023】
ワークテーブル25は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、ワークテーブル25をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するワーク搬送モーターが採用されている。ワーク搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
ワーク搬送モーターからの動力は、移動機構を介してワークテーブル25に伝達される。これにより、ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。つまり、ワーク搬送装置3は、ワークテーブル25の載置面25aに載置されたワークWを、Y方向に沿って往復移動させることができる。
【0024】
ヘッドユニット13は、キャリッジ7を図1中のA視方向に見たときの正面図である図2に示すように、ヘッドプレート31と、吐出ヘッド33と、を有している。
吐出ヘッド33は、底面図である図3に示すように、ノズル面35を有している。ノズル面35には、複数のノズル37が形成されている。なお、図3では、ノズル37をわかりやすく示すため、ノズル37が誇張され、且つノズル37の個数が減じられている。
吐出ヘッド33において、複数のノズル37は、Y方向に沿って配列する12本のノズル列39を構成している。12本のノズル列39は、X方向に互いに隙間をあけた状態で並んでいる。各ノズル列39において、複数のノズル37は、Y方向に沿って所定のノズル間隔Pで形成されている。
【0025】
以下において、12本のノズル列39のそれぞれが識別される場合に、ノズル列39a、ノズル列39b、ノズル列39c、ノズル列39d、ノズル列39e、ノズル列39f、ノズル列39g、ノズル列39h、ノズル列39i、ノズル列39j、ノズル列39k、及びノズル列39mという表記が用いられる。
吐出ヘッド33において、ノズル列39aとノズル列39bとは、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。ノズル列39c及びノズル列39dも、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。同様に、ノズル列39e及びノズル列39fも、互いにY方向にP/2の距離だけずれており、ノズル列39g及びノズル列39hも、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。同様に、ノズル列39i及びノズル列39jも、互いにY方向にP/2の距離だけずれており、ノズル列39k及びノズル列39mも、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。
【0026】
2個の照射装置15は、図2に示すように、それぞれ、X方向にヘッドユニット13を挟んで互いに対峙する位置に設けられている。以下において、2個の照射装置15のそれぞれを識別する場合に、照射装置15a及び照射装置15bという表記が用いられる。
照射装置15a及び照射装置15bは、それぞれ、紫外光41を発する光源43を有している。光源43からの紫外光41は、吐出ヘッド33から吐出された液状体45の硬化を促進させる。液状体45は、紫外光41の照射を受けると、硬化が促進する。
光源43としては、例えば、LED、LD、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の種々の光源43が採用され得る。
【0027】
吐出ヘッド33は、図2中のB−B線における断面図である図4に示すように、ノズルプレート46と、キャビティープレート47と、振動板48と、複数の圧電素子49と、を有している。
ノズルプレート46は、ノズル面35を有している。複数のノズル37は、ノズルプレート46に設けられている。
キャビティープレート47は、ノズルプレート46のノズル面35とは反対側の面に設けられている。キャビティープレート47には、複数のキャビティー51が形成されている。各キャビティー51は、各ノズル37に対応して設けられており、対応する各ノズル37に連通している。各キャビティー51には、図示しないタンクから機能液53が供給される。
【0028】
振動板48は、キャビティープレート47のノズルプレート46側とは反対側の面に設けられている。振動板48は、Z方向に振動(縦振動)することによって、キャビティー51内の容積を拡大したり、縮小したりする。
複数の圧電素子49は、それぞれ、振動板48のキャビティープレート47側とは反対側の面に設けられている。各圧電素子49は、各キャビティー51に対応して設けられており、振動板48を挟んで各キャビティー51に対向している。各圧電素子49は、駆動信号に基づいて、伸張する。これにより、振動板48がキャビティー51内の容積を縮小する。このとき、キャビティー51内の機能液53に圧力が付与される。その結果、ノズル37から、機能液53が液滴55として吐出される。吐出ヘッド33による液滴55の吐出法は、インクジェット法の1つである。インクジェット法は、塗布法の1つである。
【0029】
上記の構成を有する吐出ヘッド33は、図2に示すように、ノズル面35がヘッドプレート31から突出した状態で、ヘッドプレート31に支持されている。
キャリッジ7は、図2に示すように、ヘッドユニット13を支持している。ここで、ヘッドユニット13は、ノズル面35がZ方向の下方に向けられた状態でキャリッジ7に支持されている。
なお、本実施形態では、縦振動型の圧電素子49が採用されているが、機能液53に圧力を付与するための加圧手段は、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子も採用され得る。また、加圧手段としては、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなども採用され得る。さらに、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液に圧力を付与する構成も採用され得る。
【0030】
本実施形態では、機能液53として、光の照射を受けることによって硬化が促進する液状体45が採用されている。本実施形態では、液状体45の硬化を促進させる光として紫外光41(図2)が採用されている。
液状体45は、樹脂材料、光重合開始剤及び溶媒を、成分として含んでいる。これらの成分に、顔料や染料等の色素や、親液性や撥液性等の表面改質材料などの機能性材料を添加することによって固有の機能を有する液状体45を生成することができる。顔料や染料等の色素を含有する液状体45は、例えば、ワークWに描画する画像を形成するための機能液53として採用され得る。以下において、ワークWに描画する画像を形成するための機能液53としての液状体45は、画像塗料と呼ばれる。
【0031】
また、液状体45の成分としての樹脂材料に、例えば、アクリル系の樹脂材料などの光透過性を有する樹脂材料を採用することによって、光透過性を有する機能液53を構成することができる。このような光透過性を有する機能液53は、例えば、クリアインクとしての用途が考えられる。以下において、光透過性を有する機能液53は、透光塗料と呼ばれる。
クリアインクの用途としては、例えば、画像を被覆するオーバーコート層としての用途や、画像を形成する前の下地層としての用途などが考えられる。以下において、下地層として適用される機能液53は、下地塗料と呼ばれる。
下地塗料としては、透光塗料だけでなく、透光塗料に種々の顔料を添加した機能液53を採用することもできる。
液状体45における樹脂材料は、樹脂膜を形成する材料である。このような樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによってポリマーとなる材料であれば特に限定されない。樹脂材料としては、粘性が小さいものが好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。さらに、樹脂材料としては、モノマーの形態であることが一層好ましい。
光重合開始剤は、ポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤である。光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが採用され得る。本実施形態では、光重合開始剤として、ラジカル型の光重合開始剤が採用されている。ラジカル型の光重合開始剤としては、例えば、チバ・ジャパン(株)社製のイルガキュア819などが採用され得る。
溶媒は、樹脂材料の粘度を調整するためのものである。
【0032】
本実施形態では、機能液53として、相互に色が異なる5種類の画像塗料と、1種類の透光塗料とが採用されている。5種類の画像塗料において、相互に異なる色は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)及びホワイト(W)である。
なお、以下において、5種類の機能液53を色ごとに識別する場合に、機能液53Y、機能液53M、機能液53C、機能液53K、及び機能液53Wという表記が用いられる。また、透光塗料に対応する機能液53は、機能液53Tという表記が用いられる。
本実施形態では、異なる5色の画像塗料(機能液53)が採用されているので、画像におけるカラー表示が実現され得る。
吐出ヘッド33において、前述した12本のノズル列39(図3)は、機能液53の色ごとに区分されている。本実施形態では、ノズル列39a及びノズル列39bに属するノズル37は、機能液53Kを液滴55として吐出する。ノズル列39c及びノズル列39dに属するノズル37は、機能液53Cを液滴55として吐出する。ノズル列39e及びノズル列39fに属するノズル37は、機能液53Mを液滴55として吐出する。ノズル列39g及びノズル列39hに属するノズル37は、機能液53Yを液滴55として吐出する。ノズル列39i及びノズル列39jに属するノズル37は、機能液53Wを液滴55として吐出する。ノズル列39k及びノズル列39mに属するノズル37は、機能液53Tを液滴55として吐出する。
【0033】
キャリッジ搬送装置9は、図1に示すように、架台61と、ガイドレール63と、キャリッジ位置検出装置65と、を有している。
架台61は、X方向に延在しており、ワーク搬送装置3及びメンテナンス装置11をX方向にまたいでいる。架台61は、ワークテーブル25の定盤21側とは反対側で、ワーク搬送装置3及びメンテナンス装置11のそれぞれに対向している。架台61は、支柱67aと支柱67bとによって支持されている。支柱67a及び支柱67bは、定盤21を挟んでX方向に互いに対峙する位置に設けられている。支柱67a及び支柱67bは、それぞれ、ワークテーブル25よりもZ方向の上方に突出している。これにより、架台61とワークテーブル25との間、及び架台61とメンテナンス装置11との間には、それぞれ隙間が保たれている。
【0034】
ガイドレール63は、架台61の定盤21側に設けられている。ガイドレール63は、X方向に沿って延在しており、架台61のX方向における幅にわたって設けられている。
前述したキャリッジ7は、ガイドレール63に支持されている。キャリッジ7がガイドレール63に支持された状態において、吐出ヘッド33のノズル面35は、Z方向においてワークテーブル25側に向いている。キャリッジ7は、ガイドレール63によってX方向に沿って案内され、X方向に往復動可能な状態でガイドレール63に支持されている。なお、平面視で、キャリッジ7がワークテーブル25に重なっている状態において、ノズル面35とワークテーブル25の載置面25aとは、互いに隙間を保った状態で対向する。
キャリッジ位置検出装置65は、架台61とキャリッジ7との間に設けられており、X方向に延在している。キャリッジ位置検出装置65は、キャリッジ7のX方向における位置を検出する。
【0035】
キャリッジ7は、図示しない移動機構及び動力源によって、X方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、キャリッジ7をX方向に沿って移動させるための動力源として、後述するキャリッジ搬送モーターが採用されている。キャリッジ搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
キャリッジ搬送モーターからの動力は、移動機構を介してキャリッジ7に伝達される。これにより、キャリッジ7は、ガイドレール63に沿って、すなわちX方向に沿って往復移動することができる。つまり、キャリッジ搬送装置9は、キャリッジ7に支持されたヘッドユニット13を、X方向に沿って往復移動させることができる。
【0036】
メンテナンス装置11は、図1に示すように、定盤71と、ガイドレール73aと、ガイドレール73bと、保守テーブル75と、キャッピングユニット76と、フラッシングユニット77と、ワイピングユニット79と、を有している。
定盤71は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、X方向に支柱67aを挟んで定盤21と対峙する位置に設けられている。
ガイドレール73a及びガイドレール73bは、定盤71の上面71a上に配設されている。ガイドレール73a及びガイドレール73bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール73aとガイドレール73bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bを挟んで定盤71の上面71aに対向した状態で設けられている。保守テーブル75は、定盤71から浮いた状態でガイドレール73a及びガイドレール73b上に載置されている。
【0037】
保守テーブル75には、キャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットが載置される。本実施形態では、保守ユニットは、キャッピングユニット76と、フラッシングユニット77と、ワイピングユニット79と、を含んでいる。
保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bによってY方向に沿って案内され、定盤71上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
フラッシングユニット77は、保守テーブル75の定盤71側とは反対側に設けられている。
ここで、ワークWへのパターンの描画とは無関係に、吐出ヘッド33から液状体を吐出させる動作は、フラッシング動作と呼ばれる。フラッシング動作には、例えば、ノズル37内に滞留する液状体がノズル37内で固化してしまうことを予防する効果がある。フラッシングユニット77は、フラッシング動作のときに、吐出ヘッド33から吐出される液状体を受ける装置である。
【0038】
キャッピングユニット76は、吐出ヘッド33に蓋をする装置である。吐出ヘッド33から吐出される液状体では、液体成分が蒸発することがある。一般的に、液状体における液体成分が蒸発すると、液状体の粘度が高くなる。吐出ヘッド33内の液状体の粘度が高くなると、ノズル37における液滴55を吐出する性能(以下、吐出性能と呼ぶ)が低下することがある。吐出性能の低下としては、例えば、ノズル37から吐出された液滴55の進行方向が曲がってしまったり(飛行曲がり)、ノズル37から液滴55が吐出されなかったり(不吐出)することなどが挙げられる。なお、キャッピングユニット76で吐出ヘッド33に蓋をする動作は、キャッピング動作と呼ばれる。
【0039】
キャッピングユニット76は、吐出ヘッド33に蓋をすることで、液状体における液体成分がノズルから蒸発することを低く抑える。これにより、吐出ヘッド33における吐出性能を維持しやすくすることができる。
ワイピングユニット79は、吐出ヘッド33のノズル面35を拭く装置である。液滴吐出装置1では、ノズル面35に液状体が付着することがある。ノズル面35に液状体が付着すると、吐出ヘッド33における吐出性能が低下することがある。ワイピングユニット79は、ノズル面35を拭くことによって、ノズル面35に付着している液状体を払拭する。これにより、吐出ヘッド33における吐出性能を維持しやすくすることができる。なお、ワイピングユニット79でノズル面35を拭く動作は、ワイピング動作と呼ばれる。
【0040】
保守テーブル75は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、保守テーブル75をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するテーブル搬送モーターが採用されている。テーブル搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
テーブル搬送モーターからの動力は、移動機構を介して保守テーブル75に伝達される。これにより、保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。
つまり、メンテナンス装置11は、キャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットを、Y方向に沿って往復移動させることができる。これにより、平面視で吐出ヘッド33がメンテナンス装置11に重なっている状態において、吐出ヘッド33をキャッピングユニット76、フラッシングユニット77及びワイピングユニット79のそれぞれに対向させることができる。
【0041】
液滴吐出装置1は、図5に示すように、上記の各構成の動作を制御する制御部111を有している。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)113と、駆動制御部115と、メモリー部117と、を有している。駆動制御部115及びメモリー部117は、バス119を介してCPU113に接続されている。
また、液滴吐出装置1は、キャリッジ搬送モーター121と、ワーク搬送モーター123と、テーブル搬送モーター125と、入力装置129と、表示装置131と、を有している。
キャリッジ搬送モーター121、ワーク搬送モーター123、及びテーブル搬送モーター125は、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、入力装置129及び表示装置131も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0042】
キャリッジ搬送モーター121は、キャリッジ7を駆動するための動力を発生させる。ワーク搬送モーター123は、ワークテーブル25を駆動するための動力を発生させる。テーブル搬送モーター125は、保守テーブル75を駆動するための動力を発生させる。入力装置129は、各種の加工条件を入力する装置である。表示装置131は、加工条件や、作業状況を表示する装置である。液滴吐出装置1を操作するオペレーターは、表示装置131に表示される情報を確認しながら、入力装置129を介して種々の情報を入力することができる。
なお、キャリッジ位置検出装置65、テーブル位置検出装置27及び吐出ヘッド33も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、2個の照射装置15、及びメンテナンス装置11も、それぞれ、入出力インターフェース133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0043】
CPU113は、プロセッサーとして各種の演算処理を行う。駆動制御部115は、各構成の駆動を制御する。メモリー部117は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read-Only Memory)などを含んでいる。メモリー部117には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト135を記憶する領域や、各種のデータを一時的に展開する領域であるデータ展開部137などが設定されている。データ展開部137に展開されるデータとしては、例えば、描画すべきパターンが示される描画データや、描画処理等のプログラムデータなどが挙げられる。
駆動制御部115は、モーター制御部141と、位置検出制御部143と、吐出制御部145と、照射制御部147と、保守制御部149と、表示制御部151と、を有している。
【0044】
モーター制御部141は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ搬送モーター121の駆動と、ワーク搬送モーター123の駆動と、テーブル搬送モーター125の駆動とを、個別に制御する。
位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ位置検出装置65と、テーブル位置検出装置27とを、個別に制御する。
位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ位置検出装置65にキャリッジ7のX方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
また、位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、テーブル位置検出装置27にワークテーブル25のY方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
【0045】
吐出制御部145は、CPU113からの指令に基づいて、吐出ヘッド33の駆動を制御する。
照射制御部147は、CPU113からの指令に基づいて、照射装置15a及び照射装置15bのそれぞれにおける光源43の発光状態を個別に制御する。
保守制御部149は、CPU113からの指令に基づいて、メンテナンス装置11におけるキャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットの駆動を個別に制御する。
表示制御部151は、CPU113からの指令に基づいて、表示装置131の駆動を制御する。
【0046】
ここで、液滴吐出装置1における描画処理について説明する。
液滴吐出装置1では、制御部111が入力装置129から入出力インターフェース133及びバス119を介して描画データを受け取ると、CPU113によって図6に示す描画処理が開始される。
ここで、描画データは、機能液53(液状体)でワークWに描画すべきパターンを指示するものであり、描画すべきパターンがビットマップ状に表現されている。ワークWへのパターンの描画は、吐出ヘッド33をワークWに対向させた状態で、吐出ヘッド33とワークWとを相対的に往復移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を所定周期で吐出させることによって行われる。
【0047】
描画処理では、CPU113は、まず、ステップS1において、キャリッジ搬送指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7を描画エリアの往路開始位置に移動させる。ここで、描画エリアは、図1に示すワークテーブル25によってY方向に沿って描かれる軌跡と、吐出ヘッド33によってX方向に沿って描かれる軌跡とが重なり合う領域である。往路開始位置は、キャリッジ7を往復移動させるときの往路が開始する位置である。本実施形態では、往路開始位置は、X方向において、メンテナンス装置11とワークテーブル25との間に位置している。往路開始位置は、平面視で、ワークテーブル25の外側に位置している。
次いで、ステップS2において、CPU113は、ワーク搬送指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWを描画エリアに移動させる。
【0048】
次いで、ステップS3において、CPU113は、キャリッジ走査指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の往復移動を開始させる。
ここで、キャリッジ7の往復移動では、キャリッジ7は、上述した往路開始位置と復路開始位置との間を往復移動する。つまり、往路開始位置から復路開始位置で折り返して往路開始位置に戻る経路がキャリッジ7の1往復である。このため、本実施形態では、往路開始位置から復路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の往路である。他方で、復路開始位置から往路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の復路である。
なお、復路開始位置は、X方向にワークテーブル25(図1)を挟んで往路開始位置に対峙する位置である。復路開始位置は、平面視で、ワークテーブル25の外側に位置している。このため、往路開始位置と復路開始位置とは、平面視で、ワークテーブル25をX方向に挟んで互いに対峙している。
次いで、ステップS4において、CPU113は、照射装置15aに対する照射指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15aの光源43の駆動を制御して、照射装置15aの光源43を点灯させる。
【0049】
次いで、ステップS5において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、描画データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、往路での描画が行われる。
次いで、ステップS6において、CPU113は、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS7に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0050】
ステップS7において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、往路での描画が終了する。
次いで、ステップS8において、CPU113は、照射装置15aに対する停止指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15aの光源43の駆動を制御して、照射装置15aの光源43を消灯させる。
次いで、ステップS9において、CPU113は、重畳データがあるか否かを判定する。重畳データは、直前に終了した往路での描画における描画パターンに重畳させる新たな描画パターンを示すデータである。このとき、重畳データがある(Yes)と判定されると、処理がステップS11に移行する。他方で、重畳データがない(No)と判定されると、処理がステップS10に移行する。
ステップS10では、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図5)に出力してから、処理をステップS11に移行させる。このとき、改行指令を受けたモーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY方向に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを描画すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
【0051】
ステップS11では、CPU113は、照射装置15bに対する照射指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15bの光源43の駆動を制御して、照射装置15bの光源43を点灯させる。
次いで、ステップS12において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、描画データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、復路での描画が行われる。
次いで、ステップS13において、CPU113は、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS14に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0052】
ステップS14において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、復路での描画が終了する。
次いで、ステップS15において、CPU113は、照射装置15bに対する停止指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15bの光源43の駆動を制御して、照射装置15bの光源43を消灯させる。
次いで、ステップS16において、CPU113は、重畳データがあるか否かを判定する。重畳データは、直前に終了した復路での描画における描画パターンに重畳させる新たな描画パターンを示すデータである。このとき、重畳データがある(Yes)と判定されると、処理がステップS4に移行する。他方で、重畳データがない(No)と判定されると、処理がステップS17に移行する。
【0053】
ステップS17では、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図5)に出力してから、処理をステップS18に移行させる。このとき、改行指令を受けたモーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY方向に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを描画すべき新たな領域を描画エリアに移動させる。
ステップS18では、CPU113は、描画データが終了したか否かを判定する。このとき、描画データが終了した(Yes)と判定されると、処理が終了する。他方で、描画データが終了していない(No)と判定されると、処理がステップS4に移行する。
【0054】
(実施例)
上述した液滴吐出装置1を用いて、アクリル系の樹脂を含有する画像塗料で画像を作成した結果について説明する。
ここで、本実施例における記録方法について説明する。
本実施例における記録方法は、図7に示すように、描画パターン形成工程S21と、描画パターン硬化工程S22と、を有している。
描画パターン形成工程S21では、前述した描画処理(図6)に基づいて、ワークWに画像のパターン(以下、描画パターンと呼ぶ)を形成する。
描画パターン形成工程S21の後に、描画パターン硬化工程S22では、描画パターンを構成する膜を硬化させる。本実施例では、液滴吐出装置1とは異なる露光装置で、描画パターンを構成する膜に紫外光を照射させる方法を採用した。
【0055】
なお、本実施例では、描画パターン形成工程S21において、図8に示すように、4つの描画パターン161を重畳させた。以下において、4つの描画パターン161を識別する場合に、4つの描画パターン161は、それぞれ、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dと表記される。
1つ目の描画パターン161aに2つ目の描画パターン161bを重畳させるとき、2つ目の描画パターン161bは、図9(a)に示すように、1つ目の描画パターン161aの一部に重畳する。このとき、1つ目の描画パターン161aを構成する塗料163には、紫外光41が既に照射されている。以下において、紫外光41の照射を受けた塗料163は、被照射塗料163aと呼ばれる。
【0056】
2つ目の描画パターン161bに3つ目の描画パターン161cを重畳させるとき、3つ目の描画パターン161cは、図9(b)に示すように、2つ目の描画パターン161bの一部に重畳する。このとき、2つ目の描画パターン161bを構成する塗料163には、紫外光41が既に照射されている。つまり、3つ目の描画パターン161cを構成する塗料163は、被照射塗料163aに重ねて塗布される。
同様に、3つ目の描画パターン161cに4つ目の描画パターン161dを重畳させるとき、4つ目の描画パターン161dは、図9(c)に示すように、3つ目の描画パターン161cの一部に重畳する。このとき、3つ目の描画パターン161cを構成する塗料163には、紫外光41が既に照射されている。つまり、4つ目の描画パターン161dを構成する塗料163は、被照射塗料163aに重ねて塗布される。
【0057】
(実施例1)
描画パターン形成工程S21において、機能液53Wで4つの描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dを形成した。
このとき、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を5%に設定した。ここで、重合率は、描画パターンの反応部位において、重合している割合である。重合率の測定は、FT−IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)を用いたATR(Attenuated Total Reflection)法によって測定した。
次いで、描画パターン硬化工程S22において、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dのそれぞれを硬化させた。
【0058】
(実施例2)
描画パターン形成工程S21において、機能液53Wで4つの描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dを形成した。
このとき、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を20%に設定した。なお、重合率の測定は、実施例1に準じる。
次いで、描画パターン硬化工程S22において、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dのそれぞれを硬化させた。
【0059】
(実施例3)
描画パターン形成工程S21において、機能液53Wで4つの描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dを形成した。
このとき、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を35%に設定した。なお、重合率の測定は、実施例1に準じる。
次いで、描画パターン硬化工程S22において、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dのそれぞれを硬化させた。
【0060】
(比較例1)
描画パターン形成工程S21において、機能液53Wで4つの描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dを形成した。
このとき、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を3%に設定した。なお、重合率の測定は、実施例1に準じる。
次いで、描画パターン硬化工程S22において、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dのそれぞれを硬化させた。
【0061】
(比較例2)
描画パターン形成工程S21において、機能液53Wで4つの描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dを形成した。
このとき、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を40%に設定した。なお、重合率の測定は、実施例1に準じる。
次いで、描画パターン硬化工程S22において、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dのそれぞれを硬化させた。
【0062】
(比較例3)
描画パターン形成工程S21において、機能液53Wで4つの描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dを形成した。
このとき、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を50%に設定した。なお、重合率の測定は、実施例1に準じる。
次いで、描画パターン硬化工程S22において、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dのそれぞれを硬化させた。
実施例1〜実施例3、及び、比較例1〜比較例3の画像の品位を評価した結果を下記表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
なお、表1の画像品位の評価結果において、「○」は、均一で高い画像品位が得られたことを示している。評価結果の「△」は、「○」よりも画像品位が劣ることを示している。評価結果の「×」は、「△」よりも画像品位が劣ることを示している。評価結果の「△」、及び「×」については、表中に判定理由を記載した。
表1に示す結果から、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率が40%以上(比較例2及び比較例3)では、画像にスジが発生しやすくなる。従って、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を、40%未満に設定することによって、高い画像品位が得られることが理解される。
他方で、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率が5%未満(比較例1)では、塗料の流動性が高く、塗料を定着させることが困難となる。従って、塗料163の色が単色(本例では白)の場合、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を、5%以上に設定することによって、高い画像品位が得られることが理解される。
【0065】
(実施例4)
描画パターン形成工程S21において、機能液53Y、機能液53M、機能液53C、及び機能液53Kで4つの描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dを形成した。本実施例では、機能液53Yで描画パターン161aを形成し、機能液53Mで描画パターン161bを形成し、機能液53Cで描画パターン161cを形成し、機能液53Kで描画パターン161dを形成した。
このとき、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を20%に設定した。なお、重合率の測定は、実施例1に準じる。
次いで、描画パターン硬化工程S22において、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dのそれぞれを硬化させた。
【0066】
(実施例5)
描画パターン形成工程S21において、機能液53Y、機能液53M、機能液53C、及び機能液53Kで4つの描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dを形成した。本実施例では、機能液53Yで描画パターン161aを形成し、機能液53Mで描画パターン161bを形成し、機能液53Cで描画パターン161cを形成し、機能液53Kで描画パターン161dを形成した。
このとき、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を35%に設定した。なお、重合率の測定は、実施例1に準じる。
次いで、描画パターン硬化工程S22において、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dのそれぞれを硬化させた。
【0067】
(比較例4)
描画パターン形成工程S21において、機能液53Y、機能液53M、機能液53C、及び機能液53Kで4つの描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dを形成した。本実施例では、機能液53Yで描画パターン161aを形成し、機能液53Mで描画パターン161bを形成し、機能液53Cで描画パターン161cを形成し、機能液53Kで描画パターン161dを形成した。
このとき、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を3%に設定した。なお、重合率の測定は、実施例1に準じる。
次いで、描画パターン硬化工程S22において、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dのそれぞれを硬化させた。
【0068】
(比較例5)
描画パターン形成工程S21において、機能液53Y、機能液53M、機能液53C、及び機能液53Kで4つの描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dを形成した。本実施例では、機能液53Yで描画パターン161aを形成し、機能液53Mで描画パターン161bを形成し、機能液53Cで描画パターン161cを形成し、機能液53Kで描画パターン161dを形成した。
このとき、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を5%に設定した。なお、重合率の測定は、実施例1に準じる。
次いで、描画パターン硬化工程S22において、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dのそれぞれを硬化させた。
【0069】
(比較例6)
描画パターン形成工程S21において、機能液53Y、機能液53M、機能液53C、及び機能液53Kで4つの描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dを形成した。本実施例では、機能液53Yで描画パターン161aを形成し、機能液53Mで描画パターン161bを形成し、機能液53Cで描画パターン161cを形成し、機能液53Kで描画パターン161dを形成した。
このとき、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を40%に設定した。なお、重合率の測定は、実施例1に準じる。
次いで、描画パターン硬化工程S22において、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dのそれぞれを硬化させた。
【0070】
(比較例7)
描画パターン形成工程S21において、機能液53Y、機能液53M、機能液53C、及び機能液53Kで4つの描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dを形成した。本実施例では、機能液53Yで描画パターン161aを形成し、機能液53Mで描画パターン161bを形成し、機能液53Cで描画パターン161cを形成し、機能液53Kで描画パターン161dを形成した。
このとき、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を50%に設定した。なお、重合率の測定は、実施例1に準じる。
次いで、描画パターン硬化工程S22において、描画パターン161a、描画パターン161b、描画パターン161c、及び描画パターン161dのそれぞれを硬化させた。
実施例4及び実施例5、並びに、比較例4〜比較例7の画像の品位を評価した結果を下記表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
なお、表2の画像品位の評価結果において、「○」は、均一で高い画像品位が得られたことを示している。評価結果の「△」は、「○」よりも画像品位が劣ることを示している。評価結果の「×」は、「△」よりも画像品位が劣ることを示している。評価結果の「△」、及び「×」については、表中に判定理由を記載した。
表2に示す結果から、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率が40%以上(比較例6及び比較例7)では、画像にスジが発生しやすくなる。従って、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を、40%未満に設定することによって、高い画像品位が得られることが理解される。
【0073】
他方で、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率が5%未満(比較例4)では、塗料の流動性が高く、塗料を定着させることが困難となる。従って、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を、5%以上に設定することによって、高い画像品位が得られることが理解される。
ここで、相互に色が異なる複数の塗料163(本例では4種類の塗料163)では、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率が5%であるとき(比較例5)、複数の塗料163間での混色が発生した。このため、相互に色が異なる複数の塗料163では、被照射塗料163aに塗料163を重ねて塗布する直前における被照射塗料163aの重合率を20%以上に設定することによって、高い画像品位が得られることが理解される。
【0074】
本実施形態において、ワークWが記録媒体に対応している。また、描画パターン形成工程S21の描画処理において、ステップS5及びステップS12の処理が塗布工程に対応し、ステップS4及びステップS11の処理が光照射工程に対応し、ステップS9及びステップS16の処理が重畳塗布工程に対応している。
なお、本実施形態では、描画パターン形成工程S21において、機能液53を塗布する方法として、塗布法の1つであるインクジェット法が採用されている。しかしながら、塗布法は、インクジェット法に限定されず、ディスペンス法や、印刷法なども採用され得る。しかしながら、インクジェット法を採用することは、ワークWの任意の箇所に任意の量の機能液53を塗布しやすい点で好ましい。
なお、本実施形態では、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック及びホワイトの5種類の画像塗料が採用されている。しかしながら、画像塗料の色は、これらの5種類に限定されない。画像塗料の色としては、例えば、これらの5種類にライトシアンやライトマゼンタなどを加えた7種類等、1種類以上の任意の種類の画像塗料が採用され得る。
【符号の説明】
【0075】
1…液滴吐出装置、13…ヘッドユニット、15…照射装置、15a,15b…照射装置、31…ヘッドプレート、33…吐出ヘッド、35…ノズル面、37…ノズル、39,39a,39b,39c,39d,39e,39f,39g,39h…ノズル列、41…紫外光、43…光源、53,53Y,53M,53C,53K,53W…機能液、55…液滴、161,161a,161b,161c,161d…描画パターン、163…塗料、163a…被照射塗料、W…ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射を受けて硬化が促進する性質である光硬化性を有する塗料を記録媒体に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に、前記記録媒体に付着した前記塗料に前記光を照射する光照射工程と、
前記光の照射を受けた前記塗料である被照射塗料に、新たな前記塗料を重ねて塗布する重畳塗布工程と、を含み、
前記光照射工程では、前記被照射塗料における硬化率を40%未満にする、
ことを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記新たな塗料と前記被照射塗料とが、互いに同じ種類の色であるときに、前記光照射工程では、前記被照射塗料における硬化率を5%以上にする、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
前記新たな塗料と前記被照射塗料とが、互いに異なる種類の色であるときに、前記光照射工程では、前記被照射塗料における硬化率を20%以上にする、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録方法。
【請求項4】
前記塗布工程では、前記塗料をインクジェット法で前記記録媒体に吐出することによって、前記塗料を前記記録媒体に塗布する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の記録方法。
【請求項5】
前記重畳塗布工程では、前記新たな塗料をインクジェット法で吐出することによって、前記新たな塗料を前記塗料に重ねて塗布する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の記録方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−152521(P2011−152521A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−16395(P2010−16395)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】