説明

記録方法

【課題】従来の記録方法では、画像の品位を向上させることが困難である。
【解決手段】光硬化性を有する液状体を液滴として吐出する吐出ヘッドとワークWとを相対的に変位させながら、前記吐出ヘッドから前記液滴をワークWに向けて吐出することによってワークWに前記液状体で記録を行う記録方法であって、ワークWの領域のうち、少なくとも前記吐出ヘッドに重なる範囲内の同一領域に向けて前記吐出ヘッドから前記液滴を吐出させながら、前記吐出ヘッドを前記同一領域に対して交差させる交差ステップと、前記交差ステップの後に、前記同一領域に向けて前記光を照射する照射ステップと、を前記同一領域に対してn(nは、2以上の整数)回実施することによって、前記同一領域に対する前記記録を完成させるときに、n回目の前記交差ステップにおける記録率を、100%/nよりも低くする、ことを特徴とする記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
液状体を液滴として吐出することができる液滴吐出装置の1つとして、インクジェット装置が知られている。インクジェット装置では、インクなどの液状体を吐出ヘッドから液滴として吐出することによって、記録媒体にドットを形成することができる。このようなインクジェット装置を利用することによって、種々の画像を記録することができる。
インクジェット装置を利用した記録では、従来から、紫外光を受けて硬化するインク(以下、UVインクと呼ぶ)で記録を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−188984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、UVインクを用いた記録では、記録媒体に形成されたドットは、記録媒体の表面から突出した状態で固化することがある。さらに、階調や色を表現する場合には、複数のドットを重畳させることがある。これらのことに起因して、画像に凹凸が発生することがある。画像に発生する凹凸は、意図しないスジ状の模様として視認されることがある。このため、画像に発生する凹凸は、画像の品位を低下させやすい。
このように、従来の記録方法では、画像の品位を向上させることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]光の照射を受けることによって硬化が促進する性質である光硬化性を有する液状体を液滴として吐出する吐出ヘッドと記録媒体とを相対的に変位させながら、前記吐出ヘッドから前記液滴を前記記録媒体に向けて吐出することによって前記記録媒体に前記液状体で記録を行う記録方法であって、前記記録媒体の領域のうち、前記吐出ヘッドに重なる範囲内の同一領域に向けて前記吐出ヘッドから前記液滴を吐出させながら、前記吐出ヘッドを前記同一領域に対して交差させる交差ステップと、前記交差ステップの後に、前記同一領域に向けて前記光を照射する照射ステップと、を前記同一領域に対してn(nは、2以上の整数)回実施することによって、前記同一領域に対する前記記録を完成させるときに、n回目の前記交差ステップにおける記録率を、100%/nよりも低くする、ことを特徴とする記録方法。
【0007】
この適用例の記録方法は、光硬化性を有する液状体を液滴として吐出する吐出ヘッドと記録媒体とを相対的に変位させながら、吐出ヘッドから液滴を記録媒体に向けて吐出することによって記録媒体に液状体で記録を行う記録方法である。光硬化性は、光の照射を受けることによって硬化が促進する性質である。
この記録方法では、交差ステップと、照射ステップと、を記録媒体の同一領域に対してn回実施することによって、同一領域に対する記録を完成させる。同一領域は、記録媒体の領域のうち、吐出ヘッドに重なる範囲内の領域である。
交差ステップでは、記録媒体の同一領域に向けて吐出ヘッドから液滴を吐出させながら、吐出ヘッドを同一領域に対して交差させる。
交差ステップの後に照射ステップでは、同一領域に向けて光を照射する。これにより、同一領域における液状体の硬化が促進する。
この記録方法では、交差ステップと照射ステップとを記録媒体の同一領域に対してn回実施することによって、同一領域に対する記録が完成する。このとき、n回目の交差ステップにおける記録率を、100%/nよりも低くする。これにより、画像におけるスジ状の模様の発生を軽減しやすくすることができる。
なお、記録率とは、1つの完成した画像を表現するドットの数を100としたとき、記録において形成するドットの数の割合をさす。
【0008】
[適用例2]上記の記録方法であって、前記光が紫外光である、ことを特徴とする記録方法。
【0009】
この適用例では、紫外光の照射を受けることによって硬化が促進する液状体で記録媒体に記録を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態におけるキャリッジを図1中のA視方向に見たときの正面図。
【図3】本実施形態における吐出ヘッドの底面図。
【図4】図2中のB−B線における断面図。
【図5】本実施形態における液滴吐出装置の概略の構成を示すブロック図。
【図6】本実施形態における記録処理の流れを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、記録装置の1つである液滴吐出装置を例に、実施形態について説明する。なお、各図面において、それぞれの構成を認識可能な程度の大きさにするために、構成や部材の縮尺が異なっていることがある。
【0012】
本実施形態における液滴吐出装置1は、概略の構成を示す斜視図である図1に示すように、ワーク搬送装置3と、キャリッジ7と、キャリッジ搬送装置11と、を有している。
キャリッジ7には、ヘッドユニット13と、2個の照射装置15と、が設けられている。
液滴吐出装置1では、ヘッドユニット13と基板などのワークWとの平面視での相対位置を変化させつつ、ヘッドユニット13から液状体を液滴として吐出させることによって、ワークWに液状体で所望のパターンを描画(記録)することができる。なお、図中のY方向はワークWの移動方向を示し、X方向は平面視でY方向とは直交する方向を示している。また、X方向及びY方向によって規定されるXY平面と直交する方向は、Z方向として規定される。
【0013】
このような液滴吐出装置1は、例えば、樹脂フィルムなどのように、液状体が浸透しにくいワークWへの描画(記録)に適用され得る。
また、液滴吐出装置1は、例えば、液晶表示パネル等に用いられるカラーフィルターの製造や、有機EL装置の製造などにも適用され得る。
赤、緑及び青の3色のフィルターエレメントを有するカラーフィルターの場合、液滴吐出装置1は、例えば、基板に赤、緑及び青の各着色層を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各着色層に対応する各液体を、ワークWに液滴として吐出させることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれのフィルターエレメントのパターンが描画される。
また、有機EL装置の製造では、例えば、赤、緑及び青の画素ごとに、各色に対応する機能層(有機層)を形成する工程で好適に使用され得る。この場合、ヘッドユニット13から各色の機能層に対応する各液状体を、ワークWに液滴として吐出されることによって、ワークWに赤、緑及び青のそれぞれの機能層のパターンが描画される。
【0014】
ここで、液滴吐出装置1の各構成について、詳細を説明する。
ワーク搬送装置3は、図1に示すように、定盤21と、ガイドレール23aと、ガイドレール23bと、ワークテーブル25と、を有している。
定盤21は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、Y方向に沿って延びるように据えられている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、定盤21の上面21a上に配設されている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール23aとガイドレール23bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
【0015】
ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bを挟んで定盤21の上面21aに対向した状態で設けられている。ワークテーブル25は、定盤21から浮いた状態でガイドレール23a及びガイドレール23b上に載置されている。ワークテーブル25は、ワークWが載置される面である載置面25aを有している。載置面25aは、定盤21側とは反対側(上側)に向けられている。ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bによってY方向に沿って案内され、定盤21上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。
【0016】
ワークテーブル25は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、ワークテーブル25をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するワーク搬送モーターが採用されている。ワーク搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
ワーク搬送モーターからの動力は、移動機構を介してワークテーブル25に伝達される。これにより、ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。つまり、ワーク搬送装置3は、ワークテーブル25の載置面25aに載置されたワークWを、Y方向に沿って往復移動させることができる。
【0017】
ヘッドユニット13は、キャリッジ7を図1中のA視方向に見たときの正面図である図2に示すように、ヘッドプレート31と、吐出ヘッド33と、を有している。
吐出ヘッド33は、底面図である図3に示すように、ノズル面35を有している。ノズル面35には、複数のノズル37が形成されている。なお、図3では、ノズル37をわかりやすく示すため、ノズル37が誇張され、且つノズル37の個数が減じられている。
吐出ヘッド33において、複数のノズル37は、Y方向に沿って配列する4本のノズル列39を構成している。4本のノズル列39は、X方向に互いに隙間をあけた状態で並んでいる。各ノズル列39において、複数のノズル37は、Y方向に沿って所定のノズル間隔Pで形成されている。
以下において、4本のノズル列39のそれぞれが識別される場合に、ノズル列39a、ノズル列39b、ノズル列39c及びノズル列39dという表記が用いられる。
吐出ヘッド33において、ノズル列39aとノズル列39bとは、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。ノズル列39c及びノズル列39dも、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。
【0018】
2個の照射装置15は、図2に示すように、それぞれ、X方向にヘッドユニット13を挟んで互いに対峙する位置に設けられている。以下において、2個の照射装置15のそれぞれを識別する場合に、照射装置15a及び照射装置15bという表記が用いられる。
照射装置15a及び照射装置15bは、それぞれ、紫外光41を発する光源43を有している。光源43からの紫外光41は、吐出ヘッド33から吐出された機能液53(液状体)の硬化を促進させる。機能液53は、紫外光41の照射を受けると、硬化が促進する。
光源43としては、例えば、LED、LD、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の種々の光源43が採用され得る。
なお、本実施形態では、光源43のY方向における長さは、吐出ヘッド33のノズル列39を網羅する長さに設定されている。
なお、照射装置15aの光源43と、照射装置15bの光源43とは、それぞれ、吐出ヘッド33のノズル面35がX方向に沿って描く軌跡に、平面視で重なっている。
【0019】
吐出ヘッド33は、図2中のB−B線における断面図である図4に示すように、ノズルプレート46と、キャビティープレート47と、振動板48と、複数の圧電素子49と、を有している。
ノズルプレート46は、ノズル面35を有している。複数のノズル37は、ノズルプレート46に設けられている。
キャビティープレート47は、ノズルプレート46のノズル面35とは反対側の面に設けられている。キャビティープレート47には、複数のキャビティー51が形成されている。各キャビティー51は、各ノズル37に対応して設けられており、対応する各ノズル37に連通している。各キャビティー51には、図示しないタンクから機能液53が供給される。
【0020】
振動板48は、キャビティープレート47のノズルプレート46側とは反対側の面に設けられている。振動板48は、Z方向に振動(縦振動)することによって、キャビティー51内の容積を拡大したり、縮小したりする。
複数の圧電素子49は、それぞれ、振動板48のキャビティープレート47側とは反対側の面に設けられている。各圧電素子49は、各キャビティー51に対応して設けられており、振動板48を挟んで各キャビティー51に対向している。各圧電素子49は、駆動信号に基づいて、伸長する。これにより、振動板48がキャビティー51内の容積を縮小させる。このとき、キャビティー51内の機能液53に圧力が付与される。その結果、ノズル37から、機能液53が液滴55として吐出される。吐出ヘッド33による液滴55の吐出法は、インクジェット法の1つである。インクジェット法は、塗布法の1つである。
【0021】
上記の構成を有する吐出ヘッド33は、図2に示すように、ノズル面35がヘッドプレート31から突出した状態で、ヘッドプレート31に支持されている。
キャリッジ7は、図2に示すように、ヘッドユニット13を支持している。ここで、ヘッドユニット13は、ノズル面35がZ方向の下方に向けられた状態でキャリッジ7に支持されている。
上記により、ワークWには、吐出ヘッド33から機能液53が塗布され得る。
なお、本実施形態では、縦振動型の圧電素子49が採用されているが、機能液53に圧力を付与するための加圧手段は、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子も採用され得る。また、加圧手段としては、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなども採用され得る。さらに、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液に圧力を付与する構成も採用され得る。
【0022】
本実施形態では、機能液53として、光の照射を受けることによって硬化が促進する機能液53が採用されている。本実施形態では、機能液53の硬化を促進させる光として紫外光41が採用されている。
機能液53は、樹脂材料、光重合開始剤及び溶媒を、成分として含んでいる。これらの成分に、顔料や染料等の色素や、親液性や撥液性等の表面改質材料などの機能性材料を添加することによって固有の機能を有する機能液53を生成することができる。顔料や染料等の色素を含有する機能液53は、例えば、ワークWに記録する画像を形成するための機能液53として採用され得る。以下において、ワークWに記録する画像を形成するための機能液53は、画像塗料と呼ばれる。
【0023】
また、機能液53の成分としての樹脂材料に、例えば、アクリル系の樹脂材料などの光透過性を有する樹脂材料を採用することによって、光透過性を有する機能液53を構成することができる。このような光透過性を有する機能液53は、例えば、クリアインクとしての用途が考えられる。以下において、光透過性を有する機能液53は、透光塗料と呼ばれる。
クリアインクの用途としては、例えば、画像を被覆するオーバーコート層としての用途や、画像を形成する前の下地層としての用途などが考えられる。以下において、下地層として適用される機能液53は、下地塗料と呼ばれる。
下地塗料としては、透光塗料だけでなく、透光塗料に種々の顔料を添加した機能液53を採用することもできる。例えば、白色を呈する機能液53や、金属的な光沢(メタリック)を示す機能液53なども、下地塗料として採用され得る。
【0024】
機能液53における樹脂材料は、樹脂膜を形成する材料である。このような樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによってポリマーとなる材料であれば特に限定されない。樹脂材料としては、粘性が小さいものが好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。さらに、樹脂材料としては、モノマーの形態であることが一層好ましい。
光重合開始剤は、ポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤である。光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが採用され得る。本実施形態では、光重合開始剤として、ラジカル型の光重合開始剤が採用されている。ラジカル型の光重合開始剤としては、例えば、チバ・ジャパン(株)社製のイルガキュア819などが採用され得る。
溶媒は、樹脂材料の粘度を調整するためのものである。
【0025】
キャリッジ搬送装置11は、図1に示すように、架台101と、ガイドレール103と、を有している。
架台101は、X方向に延在しており、ワーク搬送装置3をX方向にまたいでいる。架台101は、ワークテーブル25の定盤21側とは反対側で、ワーク搬送装置3に対向している。架台101は、一対の支柱107によって支持されている。一対の支柱107は、定盤21を挟んでX方向に互いに対峙する位置に設けられている。
なお、以下においては、一対の支柱107のそれぞれを識別する場合に、支柱107a及び支柱107bという表記が用いられる。支柱107a及び支柱107bは、それぞれ、ワークテーブル25よりもZ方向の上方に突出している。これにより、架台101とワークテーブル25との間には、隙間が保たれている。
【0026】
ガイドレール103は、架台101の定盤21側に設けられている。ガイドレール103は、X方向に沿って延在しており、架台101のX方向における幅にわたって設けられている。
前述したキャリッジ7は、ガイドレール103に支持されている。キャリッジ7がガイドレール103に支持された状態において、吐出ヘッド33のノズル面35は、Z方向においてワークテーブル25側に向いている。キャリッジ7は、ガイドレール103によってX方向に沿って案内され、X方向に往復動可能な状態でガイドレール103に支持されている。なお、平面視で、キャリッジ7がワークテーブル25に重なっている状態において、ノズル面35とワークテーブル25の載置面25aとは、互いに隙間を保った状態で対向する。
【0027】
キャリッジ7は、図示しない移動機構及び動力源によって、X方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、キャリッジ7をX方向に沿って移動させるための動力源として、図示しないキャリッジ搬送モーターが採用されている。キャリッジ搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーポモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。
キャリッジ搬送モーターからの動力は、移動機構を介してキャリッジ7に伝達される。これにより、キャリッジ7は、ガイドレール103に沿って、すなわちX方向に沿って往復移動することができる。つまり、キャリッジ搬送装置11は、キャリッジ7に支持されたヘッドユニット13を、X方向に沿って往復移動させることができる。
上記の構成を有する液滴吐出装置1では、吐出ヘッド33をワークWに対向させた状態で、吐出ヘッド33とワークWとを相対的に往復移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を吐出させることによって、ワークWへのパターンの記録(描画)が行われる。
【0028】
液滴吐出装置1は、図5に示すように、上記の各構成の動作を制御する制御部111を有している。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)113と、駆動制御部115と、メモリー部117と、を有している。駆動制御部115及びメモリー部117は、バス119を介してCPU113に接続されている。
また、液滴吐出装置1は、キャリッジ搬送モーター121と、ワーク搬送モーター123と、入力装置129と、表示装置131と、を有している。
キャリッジ搬送モーター121及びワーク搬送モーター123は、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、入力装置129及び表示装置131も、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0029】
キャリッジ搬送モーター121は、キャリッジ7を駆動するための動力を発生させる。ワーク搬送モーター123は、ワークテーブル25を駆動するための動力を発生させる。
入力装置129は、各種の加工条件を入力する装置である。表示装置131は、加工条件や、作業状況を表示する装置である。液滴吐出装置1を操作するオペレーターは、表示装置131に表示される情報を確認しながら、入力装置129を介して種々の情報を入力することができる。
なお、吐出ヘッド33、照射装置15a及び照射装置15bも、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
入力装置129は、各種の加工条件を入力する装置である。入力装置129を介して種々の情報を入力することができる。
【0030】
CPU113は、プロセッサーとして各種の演算処理を行う。駆動制御部115は、各構成の駆動を制御する。メモリー部117は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)などを含んでいる。メモリー部117には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト135を記憶する領域や、各種のデータを一時的に展開する領域であるデータ展開部137などが設定されている。データ展開部137に展開されるデータとしては、例えば、記録すべきパターンが示される記録データや、記録処理等のプログラムデータなどが挙げられる。
駆動制御部115は、モーター制御部141と、吐出制御部145と、照射制御部147と、表示制御部151と、を有している。
【0031】
モーター制御部141は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ搬送モーター121の駆動と、ワーク搬送モーター123の駆動とを、個別に制御する。
吐出制御部145は、CPU113からの指令に基づいて、吐出ヘッド33の駆動を制御する。
照射制御部147は、CPU113からの指令に基づいて、照射装置15a及び照射装置15bのそれぞれにおける光源43の発光状態を個別に制御する。
表示制御部151は、CPU113からの指令に基づいて、表示装置131の駆動を制御する。
【0032】
液滴吐出装置1における記録処理について説明する。
液滴吐出装置1では、制御部111が入力装置129から入出力インターフェイス133及びバス119を介して記録データを受け取ると、CPU113によって図6に示す記録処理が開始される。
ここで、記録データは、機能液53(液状体)でワークWに記録すべきパターンを指示するものであり、液滴55で形成すべきドットがビットマップ状に表現されている。ワークWに記録されるパターンは、液滴55で形成される複数のドットの集合として表現される。ワークWへのパターンの記録は、吐出ヘッド33をワークWに対向させた状態で、吐出ヘッド33とワークWとを相対的に往復移動させながら、吐出ヘッド33から液滴55を所定周期で吐出させることによって行われる。
【0033】
記録処理では、CPU113は、まず、ステップS1において、キャリッジ搬送指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7を描画エリアの往路開始位置に移動させる。
ここで、液滴吐出装置1では、記録エリアが設定されている。記録エリアは、図1に示すワークテーブル25によってY方向に沿って描かれる軌跡と、吐出ヘッド33によってX方向に沿って描かれる軌跡とが重なり合う領域である。
そして、往路開始位置は、キャリッジ7を往復移動させるときの往路が開始する位置である。本実施形態では、往路開始位置は、平面視で、記録エリアの外側に位置している。本実施形態では、往路開始位置は、平面視で、記録エリアの支柱107a側に位置している。
次いで、ステップS2において、CPU113は、ワーク搬送指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWを記録エリアに移動させる。
【0034】
次いで、ステップS3において、CPU113は、キャリッジ走査指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、モーター制御部141は、キャリッジ搬送モーター121の駆動を制御して、キャリッジ7の往復移動を開始させる。
ここで、キャリッジ7の往復移動では、キャリッジ7は、上述した往路開始位置と復路開始位置との間を往復移動する。つまり、往路開始位置から復路開始位置で折り返して往路開始位置に戻る経路がキャリッジ7の1往復である。このため、本実施形態では、往路開始位置から復路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の往路である。他方で、復路開始位置から往路開始位置に向かう経路がキャリッジ7の復路である。
なお、復路開始位置は、X方向に記録エリアを挟んで往路開始位置に対峙する位置である。復路開始位置は、平面視で、記録エリアの外側に位置している。このため、往路開始位置と復路開始位置とは、平面視で、記録エリアをX方向に挟んで互いに対峙している。本実施形態では、復路開始位置は、平面視で、記録エリアの支柱107b側に位置している。
【0035】
次いで、ステップS4において、CPU113は、照射装置15aに対する照射指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15aの光源43の駆動を制御して、照射装置15aの光源43を点灯させる。
次いで、ステップS5において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が往路における記録開始位置に到達したか否かを判定する。
ここで、記録開始位置は、記録エリア内で吐出ヘッド33から液滴55の吐出を開始させる位置である。
このとき、吐出ヘッド33の位置が記録開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS6に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が記録開始位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が記録開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0036】
次いで、ステップS6において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、記録データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、往路での記録が開始される。
次いで、ステップS7において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が往路における記録停止位置に到達したか否かを判定する。
ここで、記録停止位置は、記録エリア内で吐出ヘッド33から液滴55の吐出を停止させる位置である。
このとき、吐出ヘッド33の位置が記録停止位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS8に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が記録停止位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が記録停止位置に到達するまで処理が待機される。
【0037】
次いで、ステップS8において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、往路での記録が終了する。
次いで、ステップS9において、CPU113は、照射装置15aに対する照射停止指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15aの光源43の駆動を制御して、照射装置15aの光源43を消灯させる。
【0038】
次いで、ステップS10において、CPU113、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS11に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ7の位置が復路開始位置に到達するまでの処理が待機される。
次いで、ステップS11において、CPU113は、重畳データがあるか否かを判定する。重畳データは、直前に終了した往路での記録における記録パターンに重畳させる新たな記録パターンを示すデータである。このとき、重畳データがある(Yes)と判定されると、処理がステップS13に移行する。他方で、重畳データがない(No)と判定されると、処理がステップS12に移行する。
ステップS12では、、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、改行指令を受けたモーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY方向に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを記録すべき新たな領域を記録エリアに移動させる。
【0039】
ステップS13では、CPU113は、照射装置15bに対する照射指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15bの光源43の駆動を制御して、照射装置15bの光源43を点灯させる。
次いで、ステップS14において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が復路における記録開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、吐出ヘッド33の位置が記録開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS15に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が記録開始位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が記録開始位置に到達するまで処理が待機される。
【0040】
次いで、ステップS15において、CPU113は、吐出指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を制御して、記録データに基づいて、各ノズル37から液滴55を吐出させる。これにより、復路での記録が開始される。
ここで、ステップS11からステップS12を経ずにステップS13に移行した場合、ワークWを改行させずに復路での記録が行われる。これにより、往路での記録パターンに復路での記録パターンを重畳させることができる。以下において、複数の記録パターンを重畳させる記録を重畳記録と呼ぶ。
【0041】
ステップS15に次いで、ステップS16において、CPU113は、吐出ヘッド33の位置が復路における記録停止位置に到達したか否かを判定する。このとき、吐出ヘッド33の位置が記録停止位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS17に移行する。他方で、吐出ヘッド33の位置が記録停止位置に到達していない(No)と判定されると、吐出ヘッド33の位置が記録停止位置に到達するまで処理が待機される。
次いで、ステップS17において、CPU113は、吐出停止指令を吐出制御部145(図5)に出力する。このとき、吐出制御部145は、吐出ヘッド33の駆動を停止して、各ノズル37からの液滴55の吐出を停止させる。これにより、復路での記録が終了する。
次いで、ステップS18において、CPU113は、照射装置15bに対する照射停止指令を照射制御部147(図5)に出力する。このとき、照射制御部147は、照射装置15bの光源43の駆動を制御して、照射装置15bの光源43を消灯させる。
次いで、ステップS19において、CPU113は、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達したか否かを判定する。このとき、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達した(Yes)と判定されると、処理がステップS20に移行する。他方で、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達していない(No)と判定されると、キャリッジ7の位置が往路開始位置に到達するまで処理が待機される。
次いで、ステップS20において、CPU113は、重畳データがあるか否かを判定する。重畳データは、直前に終了した往路での記録における記録パターンに重畳させる新たな記録パターンを示すデータである。このとき、重畳データがある(Yes)と判定されると、処理がステップS4に移行する。他方で、重畳データがない(No)と判定されると、処理がステップS21に移行する。
【0042】
ステップS21では、CPU113は、改行指令をモーター制御部141(図5)に出力する。このとき、改行指令を受けたモーター制御部141は、ワーク搬送モーター123の駆動を制御して、ワークWをY方向に移動(改行)させ、ワークWにおいてパターンを記録すべき新たな領域を記録エリアに移動させる。
次いで、ステップS22において、CPU113は、記録データが終了したか否かを判定する。このとき、記録データが終了した(Yes)と判定されると、処理が終了する。他方で、記録データが終了していない(No)と判定されると、処理がステップS4に移行する。
ここで、ステップS20からステップS4に移行した場合、ワークWを改行させずに往路での記録が行われる。つまり、ステップS20からステップS4に移行した場合、重畳記録が行われることになる。
【0043】
記録領域のうちで、平面視で吐出ヘッド33に重なる範囲内の所定の同一領域に着目すると、重畳記録では、同一領域と吐出ヘッド33とが複数回にわたって互いに交差する。同一領域においては、吐出ヘッド33が交差するたびに記録パターンの記録が行われる。これにより、同一領域に対する重畳記録が行われ得る。
このような重畳記録は、例えば、複数の記録パターンを重畳させることによって1つのパターンを完成させるときなどに適用され得る。ここで、同一領域と吐出ヘッド33とを交差させる回数をn(nは、2以上の整数)回とすれば、n回の交差のそれぞれにおいて同一領域に記録することによって、同一領域における1つのパターンが完成する。このような重畳記録は、nパスで1つのパターンを記録する方法であるとも表現され得る。例えば、2回の交差で1つのパターンを完成させる方法は、2パスで1つのパターンを記録する方法である。
【0044】
本実施形態では、n回の交差で1つのパターンを完成させるということは、n回の交差でパターンにおける記録率を100%にするということを意味する。
ここで、記録率とは、完成したパターンを表現する複数のドットの単位面積当たりの数を100としたときに、その単位面積当たりのドットの数の割合である。
そして、本実施形態では、n回の交差で1つのパターンを完成させる重畳記録において、100%の記録率が、n回の交差のそれぞれに配分される。n回の交差のそれぞれに配分される記録率を合算すると100%になる。例えば、2回の交差で1つのパターンを完成させる場合、1回目の交差での記録率を50%とし、2回目の交差での記録率を50%とすれば、記録率が100%のパターンを完成させることができる。
【0045】
上述した液滴吐出装置1を用いて、2回の交差で1つのパターンを完成させる重畳記録を実施した実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、1回目の交差での記録率を80%とし、2回目の交差での記録率を20%とした。
【0046】
(比較例1)
液滴吐出装置1を用いて、2回の交差で1つのパターンを完成させる重畳記録を実施した比較例1について説明する。
比較例1では、1回目の交差での記録率を20%とし、2回目の交差での記録率を80%とした。
【0047】
(比較例2)
液滴吐出装置1を用いて、1回の交差で1つのパターンを完成させる記録を実施した比較例2について説明する。
比較例2では、1回の交差での記録率を100%とした。
【0048】
なお、実施例、比較例1及び比較例2のいずれにおいても、完成させるべきパターンとして、相互に同一のパターンを採用した。
実施例、比較例1及び比較例2のそれぞれの記録画像における画像品位の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
なお、表1の画像品位の評価結果において、「○」は、凹凸によって発生するスジが視認されなかった、すなわち画像の全体において高い品位が得られたことを示している。
「△」は、「○」に比べてスジが視認されやすかったことを示している。
「×」は、「△」に比べてスジが視認されやすかったことを示している。
表1に示す結果から、実施例における画像品位が比較例1や比較例2よりも良好であることが理解される。
ドットの疎密の程度は、記録率が低くなるほど疎になりやすい。つまり、記録率が低くなるほど、その記録でのドット同士が重なりにくくなるので、その記録での画像においては、凹凸が発生しにくくなる。そして、凹凸が発生しにくい画像の形成をn回目の交差ステップで実施することによって、最終的な画像における凹凸の発生が軽減し、スジ状の模様の発生が抑えられやすくなるものと考えられる。
【0051】
以上のことから、本実施形態における重畳記録では、画像におけるスジ状の模様の発生を軽減しやすくすることができる。つまり、n回の交差で1つのパターンを完成させる重畳記録において、n回目の交差ステップにおける記録率を、100%/nよりも低くすることによって、画像品位を向上させやすくすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…液滴吐出装置、7…キャリッジ、13…ヘッドユニット、15…照射装置、33…吐出ヘッド、37…ノズル、41…紫外光、43…光源、53…機能液、55…液滴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射を受けることによって硬化が促進する性質である光硬化性を有する液状体を液滴として吐出する吐出ヘッドと記録媒体とを相対的に変位させながら、前記吐出ヘッドから前記液滴を前記記録媒体に向けて吐出することによって前記記録媒体に前記液状体で記録を行う記録方法であって、
前記記録媒体の領域のうち、少なくとも前記吐出ヘッドに重なる範囲内の同一領域に向けて前記吐出ヘッドから前記液滴を吐出させながら、前記吐出ヘッドを前記同一領域に対して交差させる交差ステップと、
前記交差ステップの後に、前記同一領域に向けて前記光を照射する照射ステップと、
を前記同一領域に対してn(nは、2以上の整数)回実施することによって、前記同一領域に対する前記記録を完成させるときに、n回目の前記交差ステップにおける記録率を、100%/nよりも低くする、
ことを特徴とする記録方法。
【請求項2】
前記光が紫外光である、
ことを特徴とする請求項1に記載の記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−161920(P2012−161920A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21457(P2011−21457)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】