説明

記録装置、およびその記録装置におけるロール紙管理方法

【課題】ロール紙の未使用分の量を容易に管理する記録装置を提供する。
【解決手段】ロール紙が記録装置に設置されると、ロール紙の使用履歴を表す履歴テーブルに基づいてロール紙の未使用分の長さを取得して、記録装置に設置されたロール紙に記録する。履歴テーブルは、履歴ロール紙を識別するための識別情報とロール紙の未使用分の長さとを対応付けており、記録が行われると、未使用分の長さから記録された分のロール紙の長さを引いた値を新たに、履歴テーブルにおける未使用分の長さとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙に印刷する記録装置およびその記録装置におけるロール紙管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロール紙に印刷することが可能な記録装置においては、通常、巻かれたロール紙の途中まで印刷されると、カッター等を用いて切断される。また、ロール紙には光沢紙、コート紙などの様々な種類の用紙があり、用途に応じて途中まで使用したロール紙を取り替える場合もある。このような記録装置において、次に印刷しようとしている画像を印刷しきれるかを判断するためにロール紙の残量を管理することが行われる。
【0003】
特許文献1では、ロール紙に残量を直接記録しておいて、一度取り外したロール紙を再度取り付けた際に記録された残量の情報を読み取り、ロール紙の残量を適切に管理する方法について記載されている。また、特許文献2では、ロール紙に非接触型のICメモリを設け、このICメモリ内にロール紙の情報を記録する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−208464号公報
【特許文献2】特開2005−219406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロール紙に残量を直接印刷する方法では、残量(未使用分の量)を印刷した分だけ実際の印刷に使用できるロール紙の量が減ってしまう。また、ロール紙にICメモリを設ける方法では、ロール紙の製造過程でICメモリを取り付ける必要があるが、全てのロール紙メーカが同じ規格のICメモリを取り付けることは極めて困難である。また、必ずしも全ての種類のロール紙で残量を管理することができない。
【0006】
本発明の目的は、このような従来の問題点を解決することにある。そこで、上記の点に鑑み、本発明は、ロール紙の未使用分の量を容易に管理する記録装置およびその記録装置におけるロール紙管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る記録装置は、ロール紙に記録する記録装置であって、
前記ロール紙が前記記録装置に設置されると、前記ロール紙の使用履歴に基づいて前記ロール紙の未使用分の長さを取得する取得手段と、
前記記録装置に設置された前記ロール紙に記録する記録手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、ロール紙の未使用分の量を容易に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】記録装置の記録ヘッド周辺の構成の一例を示す図である。
【図2】記録装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】記録装置にロール紙を設置した際の処理の手順を示した図である。
【図4】ロール紙の使用履歴が表された履歴テーブルの一例を示す図である。
【図5】ロール紙を選択するための画面の一例を示す図である。
【図6】他の記録装置からロール紙情報を受信する処理の手順を示す図である。
【図7】他の記録装置にロール紙情報を送信する処理の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施例を詳しく説明する。尚、以下の実施例は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施例で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明に係る記録装置の記録ヘッド周辺の構成の一例を示す図である。記録装置は、記録ヘッド102を搭載したキャリッジ103、不図示のキャリッジモータ、ロール紙有無検出センサ107、ロール紙幅検出センサ108を少なくとも含む。また、記録装置は、ロール紙101を保持する不図示のロール紙保持構成、搬送ローラ105、従動ローラ106を含む。キャリッジモータは、不図示の駆動ベルトを介してキャリッジ103をレール104に沿ってロール紙の搬送方向に対しておよそ直角の方向に駆動させる。ロール紙101は、ロール紙保持構成によって保持されており、搬送ローラ105によってキャリッジ103下に搬送されて、記録ヘッド102により印刷される。印刷が終わったロール紙は、適切な長さ分だけ搬送された後、カッター109によりカットされる。ロール紙有無検出センサ107によりロール紙が操作者によって挿入されたことを検出すると、引き込みローラ110、搬送ローラ105が駆動されてロール紙が設置される。さらに、印刷中もしくは印刷後のカット動作時などに、ロール紙が巻き芯から外れて使用し尽くされたことも検出することができる。また、ロール紙幅検出センサ108は、キャリッジ103と一体に動作するように取り付けられており、ロール紙を設置した際などに、キャリッジ103が移動することによりロール紙の幅を検出することができる。
【0012】
図2は、記録装置のシステム構成を示すブロック図である。バスライン201は、記録装置内部のアドレス信号、制御信号、データを伝送する。CPU202は、ROM203からRAM204に展開された各種プログラムに基づいて記録装置全体を制御する。ROM203は、エラー処理プログラム、記録動作プログラム、CPU202を動作させるためのプログラム、さらに後述のロール紙情報や記録装置の状態等を格納している。センサ制御部205は、ロール紙幅検出センサ211やロール紙有無検出センサ212を接続している。センサ制御部205は、それら各センサの出力をA/D変換する機能を有している。表示部206は、CPU202からの指示に基づき、また不図示の操作部の入力に基づき、操作者に次の操作を指示し、またエラーを通知する。画像処理部207は、外部I/F216から通信制御部210を介して入力された画像データを処理する。処理後のデータは、ヘッド制御部208により記録ヘッド213に送られ印刷が行われる。その際、CPU202によってモータ制御部209に適宜指示がなされ、搬送モータ214、キャリッジモータ215がその指示に同期して駆動される。また外部I/F216および通信制御部210は、後述のロール紙情報を他の記録装置から受信する際、また他の記録装置に送信する際にも用いられる。
【0013】
図3は、記録装置にロール紙を設置した際のロール紙管理の処理の手順を示したフローチャートである。図3に示す各処理は、例えば、記録装置のCPU202により実行される。以下、図1を参照しながら、図3の各処理を説明する。ロール紙が挿入されたことをロール紙有無検出センサ107が検出すると(S301)、引き込みローラ110が駆動してロール紙を引き込む(S302)。さらに搬送ローラ105が駆動してロール紙をキャリッジ103下まで引き込む(S303)。その後、キャリッジモータが駆動して(S304)、ロール紙幅検出センサ108によりロール紙の幅が検出される(S305)。次に、検出したロール紙の幅の情報を基に、記憶してあるロール紙情報からロール紙の幅の一致するものを決定する(S306)。
【0014】
ここで、記憶しておくロール紙情報について説明する。一般的にロール紙は用途に応じて、光沢紙、コート紙、普通紙など異なった素材のものがあり、また、24インチ幅、36インチ幅、42インチ幅など幅の異なったものもある。さらに、30メートル巻き、50メートル巻き、180メートル巻きなど巻き長の異なったものもある。未使用のロール紙を記録装置に設置してから使用し尽くすまで、一度もロール紙を取り外さない場合もあるが、用途に応じて種類、幅の異なったものを使用することが多い。そのため、未使用時のロール紙の巻き長から記録装置が使用したロール紙の長さを減算し、ロール紙残量を記憶しておくことで、次にロール紙を取り付けた際にロール紙の残量を管理することができるようになる。図4は、本実施例における記録装置において記憶されている、ロール紙の未使用分の残量を使用履歴として表された履歴テーブルの一例を示す図である。未使用時に最初に設置した記録装置番号と、記録装置内部で用いるID番号と、ロール紙の種類と幅と残量とが対応付けられてROM203等の記憶領域に記憶されている。即ち、履歴テーブルは、ロール紙を識別するための識別情報とロール紙の未使用分の残量とを対応付けている。
【0015】
再び図3を用いて説明する。S306においてロール紙の幅の一致するものをロール紙情報から決定するとは例えば、以下のことを意味する。記録装置が図4に示すロール紙情報を記憶しておき、S305で検出されたロール紙幅が24インチであったとする。その場合には、図4の「記録装置番号A0000、ID番号0」と「記録装置番号A0001、ID番号1」のロール紙情報のみが24インチの幅であるためそれらが決定される。ここで、本実施例においては、ロール紙情報にいずれの記録装置に設置されているのかがわかる情報を付加しておいても良い。そのようにすれば、他の記録装置に設置されているロール紙を取り付けることはありえないので、そのようなロール紙情報を決定対象から除くことができる。S307ではS306で決定された複数のロール紙情報と、新規のロール紙であることの指示とを図5に示すように表示部に表示し、ユーザにそれらの選択を促す。また、その表示は、選択指示の他に新規のロール紙であることの指示も含んでいる。S308において、図5の画面上で新規のロール紙であることが指示されたか否かが判定される。新規のロール紙であることを指示されたと判定された場合には、不図示のロール紙種類を選択する選択画面を表示する(S309)。そして、その画面で選択されたロール紙種類を受信し(S310)、ロール紙巻き長入力画面を表示し(S311)、その画面で入力された巻き長を受け付ける(S312)。以上の新たに入力された情報に基づいて、新規のロール紙情報をROMに記憶するとともに(S313)、RAM上の現在設置されているロール紙情報の領域に設定する(S314)。S314の処理の理由は、ロール紙情報には、ロール紙残量のように記録装置がロール紙を使用するたびに値が変化する情報や、ロール紙種類のように記録装置が制御を変化させるためにしばしば参照する必要がある情報が含まれているためである。一方、S308において、新規のロール紙であることを指示されなかったと判定された場合には、即ち図5において例えば光沢紙を選択した場合には、選択されたロール紙に応じたロール紙情報を取得する(S315)。その後、RAM上の現在設置されているロール紙情報の領域にその選択されたロール紙情報を設定する(S314)。
【0016】
次に図6を用いて、本実施例の記録装置と通信可能に接続された他の記録装置からロール紙情報を受信する方法について説明する。図6に示す各処理は、例えば、記録装置のCPU202により実行される。まず他の記録装置に対してブロードキャストパケットを送出し(S601)、応答信号を受信したら(S602)、応答信号を発信した記録装置に対して、記録装置番号の要求を送信する(S603)。ここで、記録装置番号でなくとも、記録装置の個体を識別できる情報であれば良い。記録装置番号を受信したら(S604)、ロール紙情報の最終更新日時の要求を送信する(S605)。ここで、最終更新日時ではなく、更新されたことを識別可能な情報であれば、例えば更新するたびに値が増えるカウンタであってもよい。ロール紙情報最終更新日時を受信したら(S606)、記録装置番号が自記録装置に記憶されているリストになかった場合や、受信した最終更新日時が新しいものである場合には(S607)、ロール紙情報の要求を送信する(S608)。ロール紙情報を受信したら(S609)、自記録装置内のロール紙情報を更新し、さらに先に受信したロール紙情報の最終更新日時情報も記憶する(S610)。その後、通信終了要求を送信し(S611)、通信終了応答を受信したら(S612)通信を終了する。また、S607にて最終更新日時が新しくなっていない場合は、そのまま通信終了要求を送信し(S611)、通信終了応答を受信したら(S612)通信を終了する。これら記録装置間の通信においては、受信待ちの際に何らかの問題によって通信ができなくなる場合を考慮して、各判定処理(S602、S604、S606、S609、S612)においてタイムアウト処理を行う。各タイムアウト処理においてタイムアウトと判定された場合には、本処理を終了する。一方、各タイムアウト処理においてタイムアウトと判定されなかった場合には、上記各判定処理を繰り返す。
【0017】
次に図7を用いて、本実施例の記録装置と通信可能に接続された他の記録装置にロール紙情報を送信する方法について説明する。図7に示す各処理は、例えば、記録装置のCPU202により実行される。ホストコンピュータとの通信を要求された場合、例えば画像データを受信した場合などは、それらの処理を優先するために、ロール紙情報送信処理を抜けるようにする(S701)。画像データを受信しなかった場合には、他の記録装置からのブロードキャストパケットを受信し(S702)、応答信号を送信した(S703)後に、記録装置番号要求を受信したら(S704)、自記録装置番号を送信する(S705)。その後、ロール紙情報最終更新日時要求を受信したら(S706)、最終更新日時を送信する(S707)。
【0018】
ここで、もし最終更新日時要求の送信元の記録装置側でロール紙情報を要求する必要がないと判定された場合は(図6のS607:No)、通信終了要求を送信してくるため、通信終了要求を受信する(S709)。その後、通信終了応答を送信して(S710)、本処理を終了する。一方、ロール紙情報要求を受信した場合は(S708)、ロール紙情報を送信し(S711)、その後、通信終了要求を受信し(S712)、通信終了応答を送信して(S713)、本処理を終了する。これら記録装置間の通信においては、受信待ちの際に何らかの問題によって通信ができなくなる場合を考慮して、各判定処理(S704、S706、S709、S712)においてタイムアウト処理を行う。各タイムアウト処理においてタイムアウトと判定された場合には、本処理を終了する。一方、各タイムアウト処理においてタイムアウトと判定されなかった場合には、上記各判定処理を繰り返す。
【0019】
他の記録装置から受信するロール紙情報は、自記録装置に取り付け可能な情報のみに限定してもよい。例えば、自記録装置が36インチ幅以下のロール紙しか設置できない場合は、36インチより大きな幅のロール紙情報は受信しないか又は記憶しないようにしても良い。また、他の記録装置のロール紙情報を受信するのは、記録装置の起動時、ロール紙設置時であり、それらの後、一定間隔で行う構成にしてもよい。さらに、他の記録装置にロール紙情報を送信するのは、ロール紙を取り外された時に行うようにしても良い。記録装置がロール紙を記録する度にロール紙の残量は変化するが、その際にRAM上の現在設置されているロール紙情報の領域の値を更新し、適切なタイミングでRAM上のロール紙残量をROM上の履歴テーブル内の残量に上書きする(テーブル変更の一例)。また、ロール紙を使用し尽くした場合にはロール紙情報を削除するようにしても良い。若しくは、使用し尽くしたことがわかる情報を付加して、一定期間もしくはロール紙情報の記憶領域が全て満たされるまで保持しておき、他の記録装置がそのロール紙情報を受信した際に使用し尽くされたことを認識できるようにしてもよい。
【0020】
(その他の実施例)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙に記録する記録装置であって、
前記ロール紙が前記記録装置に設置されると、前記ロール紙の使用履歴に基づいて前記ロール紙の未使用分の長さを取得する取得手段と、
前記記録装置に設置された前記ロール紙に記録する記録手段と
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記取得手段は、前記ロール紙の使用履歴が示された履歴テーブルを参照して前記ロール紙の未使用分の長さを取得し、
前記履歴テーブルは、ロール紙を識別するための識別情報とロール紙の未使用分の長さとを対応付けていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記識別情報は、前記ロール紙の幅を含むことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記ロール紙の幅を検出する検出手段をさらに備え、
前記検出手段により前記ロール紙の幅が検出されると、前記取得手段は、前記履歴テーブルを参照して、当該検出された幅を有するロール紙の未使用分の長さを取得することを特徴とする請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記未使用分の長さから、前記記録手段により記録された分の前記ロール紙の長さを引いた値を新たに、前記履歴テーブルにおける前記未使用分の長さとするテーブル変更手段をさらに備えることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記履歴テーブルにおいて前記検出手段により検出された幅を有するロール紙が複数ある場合に、当該複数のロール紙のいずれかをユーザに選択させるための画面を表示する表示手段をさらに備え、
前記取得手段は、前記表示手段により表示された画面上で選択された前記複数のロール紙のいずれかの未使用分の長さを取得することを特徴とする請求項4又は5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記履歴テーブルを、前記記録装置と通信可能な他の記録装置に送信する送信手段をさらに備えることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記送信手段は、前記記録手段により記録された前記ロール紙が前記記録装置から取り外されると、前記履歴テーブルを前記記録装置と通信可能な他の記録装置に送信することを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
ロール紙に記録する記録装置において実行されるロール紙管理方法であって、
前記記録装置の取得手段が、前記ロール紙が前記記録装置に設置されると、前記ロール紙の使用履歴に基づいて前記ロール紙の未使用分の長さを取得する取得工程と、
前記記録装置の記録手段が、前記記録装置に設置された前記ロール紙に記録する記録工程と
を有することを特徴とするロール紙管理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−171198(P2012−171198A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35179(P2011−35179)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】