説明

記録装置、記録制御プログラム

【課題】 インターレース記録方式において、バンディングが周期的に発生することを防止し、バンディングの発生による記録画質の低下の虞を少なくする。
【解決手段】 インターレース記録方式において、主走査動作毎に前回の主走査動作時と異なる搬送量P及び使用ノズル数Nを設定して記録を実行する。記録開始時からの主走査動作回数をn、n回目の主走査動作時の搬送量PをP、n回目の主走査動作時の使用ノズル数NをNとして、式(1)及び式(2)を満たす如く搬送量P及び使用ノズル数Nを設定して記録を実行する。
α=k・s−1 …(1)
=(P+Pn+1+Pn+2+…+Pn+α)・D …(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主走査方向に往復動可能に配設され、副走査方向に複数のドット形成要素が一定の間隔で配設されたドット形成要素アレイを有する記録ヘッドと、ドット形成要素を駆動するヘッド駆動手段と、記録ヘッドを被記録材に対して主走査方向に往復動させる主走査駆動手段と、被記録材を副走査方向に記録ヘッドに対して相対的に搬送する副走査駆動手段とを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な記録装置としてのインクジェット式記録装置では、インク滴を噴射する多数のノズル(ドット形成要素)を備えた記録ヘッドが主走査方向に移動しながら各ノズルからインク滴を噴射する動作(以下、主走査動作又は主走査パスと言う)と、主走査方向と直交する副走査方向に印刷用紙(被記録材)を記録ヘッドに対して相対的に搬送する動作とを交互に行うことにより印刷(記録)が行われる。一般的なインクジェット式記録装置の記録ヘッドには、ブラック、濃シアン、淡シアン、濃マゼンタ、淡マゼンタ、及びイエローの各インクを噴射するノズル(ドット形成要素)列がこの順序で主走査方向に等間隔に配置されている。このような記録装置の記録品質(画質)向上を図る記録方式の一例としては、「インターレース方式」と呼ばれる記録方式が公知である(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
この「インターレース方式」による記録では、ラスタ(主走査方向のドット列)を副走査方向に間欠的に形成しつつ、被記録材へ画像等が記録され、隣接するラスタは、必ず異なるノズルによって形成される。それによって、例えば、インクジェット式記録装置の記録ヘッドのヘッド面に形成されているノズルの噴射特性のばらつき(インクの飛行曲がり)によるインク滴の噴射位置のばらつきが分散されて目立たなくなり、記録画質の向上を図ることができる。
【0004】
また、記録装置の画質向上を図るための他の従来技術としては、全てのラスタについて同一ラスタの隣接するドットを異なる主走査パスで異なるノズルによって形成するフルオーバーラップ方式(例えば、特許文献2を参照)が公知である。さらに、オーバーラップ記録方式のメリットを採り入れつつフルオーバーラップ記録方式による記録実行速度の低下を緩和するために、一部のラスタについてのみ同一ラスタの隣接するドットを異なる主走査パスで異なるノズルによって形成する如く被記録材の搬送量を変則送りとした部分オーバーラップ方式(例えば、特許文献3を参照)が公知である。インターレース方式と同様に、インクジェット式記録装置においては、記録ヘッドのヘッド面に形成されているノズル位置のばらつきによるインク滴の噴射位置のばらつきが分散されて目立たなくなり、記録画質の向上を図ることができ、上述したインターレース方式と併用すれば、相乗的にその効果を得ることができる。
【0005】
【特許文献1】特開昭53−2040号公報
【特許文献2】特開平9−11509号公報
【特許文献3】特開2000−52543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したインターレース記録方式においては、隣接するラスタを形成するノズルの組み合わせが、ある一定のパターンで周期的に繰り返されるため、隣接するラスタを形成するノズル同士の組み合わせパターンは一定となる。そのため、その一定のパターンにおけるノズルの組み合わせの中に隣接するラスタを形成するノズル同士のドット形成位置が比較的大きくかつ相反する方向へずれるような組み合わせが存在すると、その部分で主走査方向に筋状の目立った記録画質の劣化(いわゆるバンディング)が生じ、かつその筋状の記録画質の劣化が副走査方向に略一定の間隔で周期的に繰り返し発生して記録画質が大幅に低下してしまうという課題が生じる。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、インターレース記録方式において、隣接するラスタを形成するノズル同士のドット形成位置が比較的大きくかつ相反する方向へずれるような組み合わせにより生じるバンディングが周期的に発生することを防止し、バンディングの発生による記録画質の低下の虞を少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様は、主走査方向に往復動可能に配設され、副走査方向に複数のドット形成要素が一定の間隔で配設されたドット形成要素アレイを有する記録ヘッドと、前記ドット形成要素を駆動するヘッド駆動手段と、前記記録ヘッドを被記録材に対して主走査方向に往復動させる主走査駆動手段と、前記被記録材を副走査方向に前記記録ヘッドに対して相対的に搬送する副走査駆動手段と、前記ヘッド駆動手段、前記主走査駆動手段、及び前記副走査駆動手段を制御して、前記記録ヘッドを主走査方向へ往復動させながら記録データに基づいて、前記被記録材にドットを形成するとともに、所定の搬送量にて前記被記録材を副走査方向へ搬送する記録制御装置とを備えた記録装置であって、前記記録制御装置は、前記ドット形成要素アレイの総ドット形成要素数を総ドット形成要素数M、総ドット形成要素数Mのうち使用するドット形成要素数を使用ドット形成要素数N、被記録材の搬送量を搬送量P、前記ドット形成要素アレイ内の単位距離当たりに存在する前記ドット形成要素の個数をドット形成要素分布密度D、前記ドット形成要素の中心点間距離を副走査方向のドット間隔の倍数で表した値を補間係数k、主走査方向にドットが連続したラインを形成するのに要する主走査動作の回数をスキャン回数sとし、スキャン回数sは、1以上N未満の整数に設定し、補間係数kとN/sとは、互いに素の関係を満たす2以上N未満の整数に設定し、かつ、P=N/(s・D・k)なる関係式を満たす値を選定し、かつ、主走査動作毎に前回の主走査動作時と異なる搬送量P及び使用ドット形成要素数Nを設定して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置である。
【0009】
上述したように、補間係数kとN/sとは、互いに素の関係を満たす2以上N未満の整数に設定し、かつ、P=N/(s・D・k)なる関係式を満たす値を選定して記録を実行する公知のインターレース記録方式においては、使用ノズル数N及び搬送量Pを一定にして記録を実行する、いわゆる定則送りのインターレース記録方式が一般的である。使用ノズル数N及び搬送量Pを一定とした場合、隣接するラスタを形成するノズルの組み合わせが常に一定の組み合わせとなり、前述したようなバンディングが一定の周期で繰り返し発生する虞がある。また、記録解像度に応じて総ノズル数Mのうちの使用ノズル数Nを可能な限り多くすること、或いは、前述した部分オーバーラップ記録を実行することを目的として搬送量Pを変則とするインターレース記録方式も公知であるが、いずれの場合も使用ノズル数Nは常に一定である。そのため、搬送量Pの変則パターンが一定の単調なパターンに限定され、そのパターンの繰り返しとなり、同様に前述したようなバンディングが一定の周期で繰り返し発生する虞が生じる。
【0010】
そこで、このように主走査動作毎に前回の主走査動作時と異なる搬送量P及び使用ドット形成要素数Nを設定したインターレース記録方式の記録を実行することによって、設定可能な搬送量Pのバリエーションが飛躍的に増加し、様々な搬送量Pの組み合わせによる単調でない複雑な変則送りパターンを実現することが可能となる。それによって、隣接するラスタを形成するノズルの組み合わせが、ある一定のパターンで周期的に繰り返されることがなくなるため、隣接するラスタを形成するノズル同士のドット形成位置が比較的大きくかつ相反する方向へずれるような組み合わせにより生じるバンディングが周期的に発生することを防止することができ、バンディングの発生による記録画質の低下の虞を少なくすることができるという作用効果が得られる。
【0011】
本発明の第2の態様は、前述した第1の態様において、前記記録制御装置は、記録開始時からの主走査動作回数をn、n回目の主走査動作時の搬送量PをP、n回目の主走査動作時の使用ドット形成要素数NをNとして、以下の関係式を満たす如く搬送量P及び使用ドット形成要素数Nを設定して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置である。
α=k・s−1 …(1)
=(P+Pn+1+Pn+2+…+Pn+α)・D …(2)
インターレース記録方式において、補間係数kにスキャン回数sを乗じて得られる数は、主走査方向及び副走査方向にドットが隙間無く形成されるのに必要な主走査動作の回数(k・s回)に相当する。そのため、同じドット位置に重複してドットが形成されることなく記録を実行するためには、n回目の主走査動作時の使用ドット形成要素数Nは、n回目の主走査動作後の搬送量Pから、主走査方向及び副走査方向にドットが隙間無く形成されるのに必要な主走査動作の回数(k・s回)分だけ連続する搬送量Pの総和(P+Pn+1+Pn+2+…+Pn+α)に応じて定まることになる。
【0012】
したがって、この搬送量Pの総和にドット形成要素分布密度Dを乗算した値が、総ドット形成要素数Mを超えない整数値となる範囲で、同じドット位置に重複してドットが形成されることのない様々な搬送量Pの組み合わせを設定することができ、それに応じて各主走査動作時の使用ドット形成要素数Nを設定することができる。
【0013】
尚、式(2)は、本来的には以下の式で示される。
【0014】
=s・D・k・(P+Pn+1+Pn+2+…+Pn+α)/(k・s) …(3)
つまり、式(3)の分子と分母に存在する補間係数kとスキャン回数sが互いに相殺されて式(2)となったものである。そして、式(3)は、以下の式(4)と式(5)とから導き出される。
【0015】
=s・D・k・P …(4)
=(P+Pn+1+Pn+2+…+Pn+α)/(k・s) …(5)
式(4)は、P=N/(s・D・k)なるインターレース記録方式の関係式から導き出され、式(5)は、n回目の主走査動作後の搬送量Pが、主走査方向及び副走査方向にドットが隙間無く形成されるのに必要な主走査動作の回数(k・s回)分だけ連続する搬送量Pの総和に基づいて定まることを意味している。
【0016】
本発明の第3の態様は、前述した第2の態様において、前記記録制御装置は、P、Pn+1、Pn+2…Pn+αを全て異なる搬送量に設定して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置である。少なくとも、主走査方向及び副走査方向にドットが隙間無く形成されるのに必要な主走査動作の回数の範囲において、周期的なバンディングが発生することを防止することができる。
【0017】
本発明の第4の態様は、前述した第1の態様〜第3の態様のいずれかにおいて、前記記録制御装置は、使用ドット形成要素数Nを、主走査動作毎に1から総ドット形成要素数Mまで段階的に増加させた後、総ドット形成要素数Mから1まで段階的に減少させることを繰り返して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置である。
このように、使用ドット形成要素数Nを主走査動作毎に段階的に増加又は減少させることによって、設定可能な範囲で搬送量Pを主走査動作毎に段階的に増加又は減少させることができる。それによって、周期的なバンディングの発生による記録画質の低下の虞をより少なくすることができる。
【0018】
本発明の第5の態様は、前述した第1の態様〜第3の態様のいずれかにおいて、前記記録制御装置は、使用ドット形成要素数Nを、主走査動作毎に1〜総ドット形成要素数Mまでの整数の乱数テーブルに基づいて設定して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置である。
このように、主走査動作毎に1〜総ドット形成要素数Mまでの整数の乱数テーブルに基づいて使用ドット形成要素数Nを設定することによって、設定可能な範囲で搬送量Pを主走査動作毎に不規則に増減させることができる。それによって、周期的なバンディングの発生による記録画質の低下の虞をより少なくすることができる。
【0019】
本発明の第6の態様は、主走査方向に往復動可能に配設され、副走査方向に複数のドット形成要素が一定の間隔で配設されたドット形成要素アレイを有する記録ヘッドと、前記ドット形成要素を駆動するヘッド駆動手段と、前記記録ヘッドを被記録材に対して主走査方向に往復動させる主走査駆動手段と、前記被記録材を副走査方向に前記記録ヘッドに対して相対的に搬送する副走査駆動手段と、前記ヘッド駆動手段、前記主走査駆動手段、及び前記副走査駆動手段を制御して、前記記録ヘッドを主走査方向へ往復動させながら記録データに基づいて、前記被記録材にドットを形成するとともに、所定の搬送量にて前記被記録材を副走査方向へ搬送する記録制御装置とを備えた記録装置において、前記ヘッド駆動手段、前記主走査駆動手段、及び前記副走査駆動手段を制御して、前記記録ヘッドを主走査方向へ往復動させながら記録データに基づいて、前記被記録材にドットを形成するとともに、所定の搬送量にて前記被記録材を副走査方向へ搬送する制御をコンピュータに実行させる記録制御プログラムであって、前記ドット形成要素アレイの総ドット形成要素数を総ドット形成要素数M、総ドット形成要素数Mのうち使用するドット形成要素数を使用ドット形成要素数N、被記録材の搬送量を搬送量P、前記ドット形成要素アレイ内の単位距離当たりに存在する前記ドット形成要素の個数をドット形成要素分布密度D、前記ドット形成要素の中心点間距離を副走査方向のドット間隔の倍数で表した値を補間係数k、主走査方向にドットが連続したラインを形成するのに要する主走査動作の回数をスキャン回数sとする手順と、スキャン回数sは、1以上N未満の整数に設定し、補間係数kとN/sとは、互いに素の関係を満たす2以上N未満の整数に設定し、かつ、P=N/(s・D・k)なる関係式を満たす値を選定し、かつ、主走査動作毎に前回の主走査動作時と異なる搬送量P及び使用ドット形成要素数Nを設定して記録を実行する手順とを有する、ことを特徴とした記録制御プログラムである。
【0020】
本願発明の第6の態様に記載の記録制御プログラムによれば、前述した第1の態様に記載の発明と同様の作用効果を得ることができるとともに、この記録制御プログラムを実行することができる任意の記録装置に、前述した第1の態様に記載の発明と同様の作用効果をもたらすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
まず、本発明に係る「記録装置」の一例としてのインクジェット式記録装置の概略構成について説明する。
【0022】
図1は、本発明に係るインクジェット式記録装置の概略の平面図であり、図2はその側面図である。
インクジェット式記録装置50には、記録紙PAにインクを噴射して記録を行う記録ヘッド62を記録紙PAに対して主走査方向Xに走査させる「主走査駆動手段」として、キャリッジガイド軸51に軸支され、主走査方向Xに移動するキャリッジ61が設けられている。キャリッジ61には、記録ヘッド62と、記録ヘッド62から噴射する各色のインクが充填されたインクカートリッジ611とが搭載されている。記録ヘッド62のヘッド面と対向する位置には、記録ヘッド62のヘッド面と記録紙PAとのギャップを規定するプラテン52が設けられている。また、インクジェット式記録装置50には、記録ヘッド62を記録紙PAに対して副走査方向Yに走査させる「副走査駆動手段」として、記録紙PAを副走査方向Yに搬送する搬送駆動ローラ53と搬送従動ローラ54が設けられている。搬送駆動ローラ53は、ステッピング・モータ等の回転駆動力により回転制御され、搬送駆動ローラ53の回転により、記録紙PAは副走査方向Yに搬送される。搬送従動ローラ54は、複数設けられており、それぞれ個々に搬送駆動ローラ53に付勢され、記録紙PAが搬送駆動ローラ53の回転により搬送される際に、記録紙PAに接しながら記録紙PAの搬送に従動して回転する。搬送駆動ローラ53の表面には、高摩擦抵抗を有する皮膜が施されている。搬送従動ローラ54によって、搬送駆動ローラ53の表面に押しつけられた記録紙PAは、その表面の摩擦抵抗によって搬送駆動ローラ53の表面に密着し、搬送駆動ローラ53の回転によって副走査方向に搬送される。キャリッジ61とプラテン52の間に記録紙PAを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する動作と、記録ヘッド62を主走査方向Xに一往復させる間に記録ヘッド62から記録紙PAにインクを噴射する動作とを交互に繰り返すことによって記録紙PAに記録が行われる。
【0023】
搬送駆動ローラ53の副走査方向Yの上流側には、給紙トレイ57が配設されている。給紙トレイ57は、例えば普通紙やフォト紙等の記録紙PAを給紙可能な構成となっている。給紙トレイ57の近傍には、記録紙PAを自動給紙する給紙手段としてのASF(オート・シート・フィーダー)が設けられている。ASFは、給紙トレイ57に設けられた2つの給紙ローラ57b及び図示してない分離パッドを有する自動給紙機構である。この2つの給紙ローラ57bの1つは、給紙トレイ57の一方側に配置され、もう1つの給紙ローラ57bは、記録紙ガイド57aに取り付けられており、記録紙ガイド57aは、記録紙PAの幅に合わせて幅方向に摺動可能に給紙トレイ57に設けられている。そして、給紙ローラ57bの回転駆動力と、分離パッドの摩擦抵抗により、給紙トレイ57に置かれた複数の記録紙PAを給紙する際に、複数の記録紙PAが一度に給紙されることなく1枚ずつ正確に分離されて自動給紙される。
【0024】
また、給紙ローラ57bと搬送駆動ローラ53との間には、公知の技術による紙検出器63が配設されている。紙検出器63は、立位姿勢への自己復帰習性が付与され、かつ記録紙搬送方向にのみ回動し得るよう記録紙PAの搬送経路内に突出する状態で枢支されたレバーを有し、このレバーの先端が記録紙PAに押されることでレバーが回動し、それによって記録紙PAが検出される構成を成す検出器である。紙検出器63は、給紙ローラ57bより給紙された記録紙PAの始端位置、及び終端位置を検出し、その検出位置に合わせて記録領域が決定され、記録が実行される。
【0025】
一方、記録実行後の記録紙PAを排紙する手段として、「排出駆動ローラ」としての排紙駆動ローラ55と排紙従動ローラ56とが設けられている。排紙駆動ローラ55は、ステッピング・モータ等の回転駆動力により回転制御され、排紙駆動ローラ55の回転により、記録実行後の記録紙PAは副走査方向Yに排紙される。排紙従動ローラ56は、周囲に複数の歯を有し、各歯の先端が記録紙PAの記録面に点接触するように鋭角的に尖っている歯付きローラになっている。複数の排紙従動ローラ56は、それぞれ個々に排紙駆動ローラ55に付勢され、記録紙PAが排紙駆動ローラ55の回転により排紙される際に記録紙PAに接して記録紙PAの排紙に従動して回転する。そして、給紙ローラ57bや搬送駆動ローラ53、及び排紙駆動ローラ55を回転駆動する図示していない搬送駆動用モータ、並びにキャリッジ61を主走査方向に駆動する図示していないキャリッジ駆動用モータは、「記録制御装置」としての記録制御部100により駆動制御される。また、記録ヘッド62も同様に、記録制御部100により駆動制御されて記録紙PAの表面にインクを噴射する。
【0026】
図3は、本発明に係るインクジェット記録装置50の概略のブロック図である。
記録制御部100は、システムバスSBを備えており、システムバスSBには、ROM21、RAM22、USBコントローラ23、メモリカードインタフェース24、MPU(マイクロプロセッサ)26、I/O27、及び記録ヘッド62のヘッド面に配設された後述する「ドット形成要素」としてのノズルN1〜NM(図4参照)を駆動する「ヘッド駆動手段」としてのヘッドドライバ28がデータ転送可能に接続されている。MPU26では各種処理の演算処理が行われる。ROM21には、MPU26の演算処理に必要なソフトウェア・プログラム及びデータがあらかじめ記憶されている。RAM22は、ソフトウェア・プログラムの一時的な記憶領域、MPU26の作業領域等として使用される。各種モータ制御部31は、インクジェット式記録装置50の各種モータを駆動制御する駆動制御回路である。各種センサー32は、インクジェット記録装置50の各種状態情報を検出してI/O27に出力する。I/O27は、MPU26における演算処理結果に基づいて、各種モータ制御部31に対して出力制御を行い、かつ各種センサー32からの入力情報等を入力する。
【0027】
USBコントローラ23は、デュアルロールUSBインタフェース機能を備えている。例えば、USBホストコントローラを搭載した情報処理装置200として、パーソナルコンピュータ等のUSBホスト装置が接続された場合には、インクジェット式記録装置50をUSBデバイスとして機能させる。記録実行時に画像データは、情報処理装置200においてRGBデータからYMCデータに色変換された後、2値化処理が行われて2値化されたYMCデータに変換されて記録データが生成される。生成された記録データは、インクジェット式記録装置50を制御するための制御データとともに記録制御データとして情報処理装置200からインクジェット式記録装置50へ送信される。情報処理装置200から送信された記録制御データは、USBコントローラ23が受信した後、RAM22へ格納される。RAM22へ格納された記録制御データは、MPU26にて実行されるプログラム処理によって、コマンド解析、及びデータ圧縮された記録データを展開する処理等が実行されて、制御データと記録データとに分離される。制御データはMPU26へ転送され、展開された記録データはヘッドドライバ28へ転送される。
【0028】
一方、USBコントローラ23は、USBバスインタフェースを搭載したデジタルカメラ等のUSBデバイスが接続された場合には、インクジェット式記録装置50をUSBホスト装置として機能させる。また、メモリカードインタフェース24は、メモリカードスロット25に挿入されたメモリカードに格納されている画像データの読み出しを実行する。USBコントローラ23を介してデジタルカメラ等のUSBデバイスから読み出された画像データ、或いはメモリカードインタフェース24を介してメモリカードから読み出された画像データは、MPU26にて実行されるプログラム処理によってRGBデータからYMCデータに色変換された後、2値化処理が行われて2値化されたYMCデータに変換されて記録データが生成される。生成された記録データは、情報処理装置200から記録データを受信した場合と同様にヘッドドライバ28へ転送される。ヘッドドライバ28は、その記録データに基づいて記録ヘッド62を駆動し、記録ヘッド62のヘッド面から各色のインクが記録紙PAの記録面に噴射されて記録紙PAへの記録が実行される。
【0029】
図4は、記録ヘッド62のヘッド面を模式的に示した平面図である。
記録ヘッド62のヘッド面には、副走査方向YにM個の「ドット形成要素」としてのノズルN1〜NMが一定のノズル分布密度Dで配設された「ドット形成要素アレイ」としてのノズル列62K、62C、62LC、62M、62LM、62Yが主走査方向Xに略平行に図示の如く配設されている。ノズル列62KのノズルN1〜NMからはブラックインクが噴射され、ノズル列62CのノズルN1〜NMからはシアンインクが噴射され、ノズル列62LCのノズルN1〜NMからはライトシアンインクが噴射され、ノズル列62MのノズルN1〜NMからはマゼンダインクが噴射され、ノズル列62LMのノズルN1〜NMからはライトマゼンダインクが噴射され、ノズル列62YのノズルN1〜NMからはイエローインクが噴射される。同じドット形成位置に異なる色のドットを重ねて形成することによって、多彩な色彩表現による記録が実現される。
【0030】
つづいて、本発明に係る変則送りによるインターレース記録方式について説明する。
図5は、インターレース記録方式により主走査動作毎に形成されるドット位置と、主走査動作間の副走査動作による記録紙PAの搬送方向(副走査方向Y)と反対方向へ遷移する記録ヘッド62のノズル位置との位置関係の第1実施例を模式的に示したものである。
【0031】
ここで、ノズル列62Yの総ノズル数を総ノズル数M、総ノズル数Mのうち使用するノズル数を使用ノズル数N、記録紙PAの搬送量を搬送量P、ノズル列62Y内の1インチ(単位距離)当たりに存在するノズル数をノズル分布密度D、ノズル間距離を副走査方向Yの記録解像度(ドット間隔)の倍数で表した値を補間係数k、主走査方向Xにドットが連続したラインを形成するのに要する主走査動作の回数をスキャン回数sとする。スキャン回数sは、1以上N未満の整数に設定し、補間係数kとN/sとは、互いに素の関係を満たす2以上N未満の整数に設定し、かつ、P=N/(s・D・k)なる関係式を満たす値を設定して記録を実行する。
【0032】
尚、記録ヘッド62のヘッド面には、6個のノズル列が配設されているが(図4)、ノズル列62Yを例に説明し、その他のノズル列についてはノズル列62Yと同様なので説明は省略することとする。また、一般的なインクジェット式記録装置50の記録ヘッド62は、本発明をより分かりやすく説明するために、総ノズル数Mを実際のノズル数(例えば180ノズル等)より少ない総ノズル数M=16とし、ノズル分布密度D=180dpi(dpiはドット/インチ)とし、以下同様とする。
【0033】
本発明に係るインターレース記録方式は、上述したインターレース記録方式に加えて、さらに主走査動作毎に前回の主走査動作時と異なる搬送量P及び使用ノズル数Nを設定して記録を実行する。具体的には、記録開始時からの主走査動作回数をn、n回目の主走査動作時の搬送量PをP、n回目の主走査動作時の使用ノズル数NをNとして、前述した式(1)及び式(2)を満たす如く搬送量P及び使用ノズル数Nを設定して記録を実行する。
α=k・s−1 …(1)
=(P+Pn+1+Pn+2+…+Pn+α)・D …(2)
【0034】
前述したように、補間係数kにスキャン回数sを乗じて得られる数は、主走査方向X及び副走査方向Yにドットが隙間無く形成されるのに必要な主走査動作の回数(k・s回)に相当する。そのため、同じドット位置に重複してドットが形成されることなく記録を実行するためには、n回目の主走査動作時の使用ノズル数Nは、n回目の主走査動作後の搬送量Pから、主走査方向X及び副走査方向Yにドットが隙間無く形成されるのに必要な主走査動作の回数(k・s回)分だけ連続する搬送量Pの総和(P+Pn+1+Pn+2+…+Pn+α)に応じて定まることになる。したがって、この搬送量Pの総和にノズル分布密度Dを乗算して補間係数kで除算した値が、総ノズル数Mを超えない整数値となる範囲で、同じドット位置に重複してドットが形成されることのない様々な搬送量Pの組み合わせを設定することができ、それに応じて各主走査動作時の使用ノズル数Nを設定することができる。
【0035】
第1実施例においては、補間係数k=2、スキャン回数s=1に設定されている。したがって、α=k・s−1=1となるので、使用ノズル数Nは、以下の式によって定まることになる。
=(P+Pn+1)・D …(6)
【0036】
1回目の主走査動作X1における使用ノズル数Nは、1回目の主走査動作X1実行後の搬送量Pを13/360inch(インチ)、2回目の主走査動作X2実行後の搬送量Pを17/360inchとして、式(6)に代入して算出すると、N=((13+17)/360)・180=30/2=15となる。したがって、1回目の主走査動作X1においては、ノズルN1〜ノズルN15までの15個のノズルを使用し、ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0037】
2回目の主走査動作X2における使用ノズル数Nは、2回目の主走査動作X2実行後の搬送量Pが17/360inchであり、3回目の主走査動作X3実行後の搬送量Pを11/360inchとして、式(6)に代入して算出すると、N=((17+11)/360)・180=28/2=14となる。したがって、2回目の主走査動作X2においては、ノズルN1〜ノズルN14までの14個のノズルを使用し、ノズルN15とノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0038】
3回目の主走査動作X3における使用ノズル数Nは、3回目の主走査動作X3実行後の搬送量Pが11/360inchであり、4回目の主走査動作X4実行後の搬送量Pを21/360inchとして、式(6)に代入して算出すると、N=((11+21)/360)・180=32/2=16となる。したがって、3回目の主走査動作X3においては、ノズルN1〜ノズルN16までの16個のノズル、つまり全てのノズルを使用する。
【0039】
4回目の主走査動作X4における使用ノズル数Nは、4回目の主走査動作X4実行後の搬送量Pが21/360inchであり、5回目の主走査動作X5実行後の搬送量Pを5/360inchとして、式(6)に代入して算出すると、N=((21+5)/360)・180=26/2=13となる。したがって、4回目の主走査動作X4においては、ノズルN1〜ノズルN13までの13個のノズルを使用し、ノズルN14〜ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0040】
5回目の主走査動作X5における使用ノズル数Nは、5回目の主走査動作X5実行後の搬送量Pが5/360inchであり、6回目の主走査動作X6実行後の搬送量Pを25/360inchとして、式(6)に代入して算出すると、N=((5+25)/360)・180=30/2=15となる。したがって、5回目の主走査動作X5においては、ノズルN1〜ノズルN15までの15個のノズルを使用し、ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0041】
以下、同様の手順で使用ノズル数N及び記録紙PAの搬送量Pが主走査動作毎に設定されて記録が実行されていく。尚、同図においては、単調でない複雑な変則送りパターンを分かりやすく図示するため便宜的に、ノズルN5とノズルN10を黒丸で表し、それ以外のノズルを白丸で表してある。そして、黒丸で表されているドットdは、ノズルN5とノズルN10で形成されるドットdであり、白丸で表されているドットdは、それ以外のノズルで形成されるドットdである。ドットdに付されているノズル番号は、そのドットdを形成するノズルのノズル番号であり、主走査方向Xに連続してドットdが形成されることによって各ラスタが形成される。
【0042】
このように、主走査動作毎に毎回異なる搬送量Pで記録紙PAを搬送してインターレース記録方式による記録を実行することによって、設定可能な搬送量Pのバリエーションが飛躍的に増加し、様々な搬送量Pの組み合わせによる単調でない複雑な変則送りパターンを実現することが可能となる。それによって、図示の如く黒丸で表したノズルN5により形成されるドットdで形成されたラスタ(主走査方向Xのドットdの並び)と、ノズルN10により形成されるドットdで形成されたラスタとの位置関係が不規則に変化しているように、隣接するラスタを形成するノズルの組み合わせが、ある一定のパターンで周期的に繰り返されることがなくなる。そのため、隣接するラスタを形成するノズル同士のドットdの形成位置が比較的大きくかつ相反する方向へずれるような組み合わせにより生じるバンディングが周期的に発生することを防止することができ、バンディングの発生による記録画質の低下の虞を少なくすることができる。
【0043】
また、搬送量P、Pn+1、Pn+2…Pn+αを全て異なる搬送量に設定して記録を実行すると、少なくとも、主走査方向X及び副走査方向Yにドットが隙間無く形成されるのに必要な主走査動作の回数(当該実施例においては2回)の範囲において、周期的なバンディングが発生することを防止することができ、理想的には、上記式(2)に基づいて、可能な限り同じ搬送量Pによる記録紙PAの搬送が生じないように各主走査動作の搬送量Pを様々な値に設定し、設定した各搬送量Pに基づいて使用ノズル数Nを設定することによって、周期的なバンディングの発生をより確実に防止することができる。或いは、使用ノズル数Nを主走査動作毎に1から総ノズル数Mまで段階的に増加させた後、総ノズル数Mから1まで段階的に減少させることを繰り返して記録を実行することで、搬送量Pを段階的に増減させるようにしても良い。それによって、周期的なバンディングの発生による記録画質の低下の虞をより少なくすることができる。或いは、主走査動作毎に1〜総ノズル数Mまでの整数の乱数テーブルに基づいて使用ノズル数Nを設定して記録を実行することで、搬送量Pを段階的に増減させるようにしても良い。それによって、設定可能な範囲で搬送量Pを主走査動作毎に不規則に増減させることができるので、周期的なバンディングの発生による記録画質の低下の虞をより少なくすることができる。
【0044】
図6は、インターレース記録方式により主走査動作毎に形成されるドット位置と、主走査動作間の副走査動作による記録紙PAの搬送方向(副走査方向Y)と反対方向へ遷移する記録ヘッド62のノズル位置との位置関係の第2実施例を模式的に示したものである。
【0045】
第2実施例においては、第1実施例と同様に補間係数k=2、スキャン回数s=1に設定されている。したがって、α=k・s−1=1となるので、使用ノズル数Nは、第1実施例と同様に以下の式によって定まることになる。
=(P+Pn+1)・D …(6)
【0046】
1回目の主走査動作X1における使用ノズル数Nは、1回目の主走査動作X1実行後の搬送量Pを11/360inch、2回目の主走査動作X2実行後の搬送量Pを19/360inchとして、式(6)に代入して算出すると、N=((11+19)/360)・180=30/2=15となる。したがって、1回目の主走査動作X1においては、ノズルN1〜ノズルN15までの15個のノズルを使用し、ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0047】
2回目の主走査動作X2における使用ノズル数Nは、2回目の主走査動作X2実行後の搬送量Pが19/360inchであり、3回目の主走査動作X3実行後の搬送量Pを13/360inchとして、式(6)に代入して算出すると、N=((19+13)/360)・180=32/2=16となる。したがって、2回目の主走査動作X2においては、ノズルN1〜ノズルN16までの16個のノズル、つまり全てのノズルを使用する。
【0048】
3回目の主走査動作X3における使用ノズル数Nは、3回目の主走査動作X3実行後の搬送量Pが13/360inchであり、4回目の主走査動作X4実行後の搬送量Pを15/360inchとして、式(6)に代入して算出すると、N=((13+15)/360)・180=28/2=14となる。したがって、3回目の主走査動作X3においては、ノズルN1〜ノズルN14までの14個のノズルを使用し、ノズルN15とノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0049】
4回目の主走査動作X4における使用ノズル数Nは、4回目の主走査動作X4実行後の搬送量Pが15/360inchであり、5回目の主走査動作X5実行後の搬送量Pを9/360inchとして、式(6)に代入して算出すると、N=((15+9)/360)・180=24/2=12となる。したがって、4回目の主走査動作X4においては、ノズルN1〜ノズルN12までの12個のノズルを使用し、ノズルN13〜ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0050】
5回目の主走査動作X5における使用ノズル数Nは、5回目の主走査動作X5実行後の搬送量Pが9/360inchであり、6回目の主走査動作X6実行後の搬送量Pを7/360inchとして、式(6)に代入して算出すると、N=((9+7)/360)・180=16/2=8となる。したがって、5回目の主走査動作X5においては、ノズルN1〜ノズルN8までの8個のノズルを使用し、ノズルN9〜ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0051】
6回目の主走査動作X6における使用ノズル数Nは、6回目の主走査動作X6実行後の搬送量Pが7/360inchであり、7回目の主走査動作X7実行後の搬送量Pを23/360inchとして、式(6)に代入して算出すると、N=((7+23)/360)・180=30/2=15となる。したがって、6回目の主走査動作X6においては、ノズルN1〜ノズルN15までの15個のノズルを使用し、ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0052】
以下、同様の手順で使用ノズル数N及び記録紙PAの搬送量Pが主走査動作毎に設定されて記録が実行されていく。尚、第1実施例と同様に、ノズルN5とノズルN10を黒丸で表し、それ以外のノズルを白丸で表してある。そして、黒丸で表されているドットdは、ノズルN5とノズルN10で形成されるドットdであり、白丸で表されているドットdは、それ以外のノズルで形成されるドットdである。ドットdに付されているノズル番号は、そのドットdを形成するノズルのノズル番号であり、主走査方向Xに連続してドットdが形成されることによって各ラスタが形成される。
【0053】
図7は、インターレース記録方式により主走査動作毎に形成されるドット位置と、主走査動作間の副走査動作による記録紙PAの搬送方向(副走査方向Y)と反対方向へ遷移する記録ヘッド62のノズル位置との位置関係の第3実施例を模式的に示したものである。
【0054】
第3実施例においては、補間係数k=4、スキャン回数s=1に設定されている。したがって、α=k・s−1=3となるので、使用ノズル数Nは、以下の式によって定まることになる。
=(P+Pn+1+Pn+2+Pn+3)・D …(7)
【0055】
1回目の主走査動作X1における使用ノズル数Nは、1回目の主走査動作X1実行後の搬送量Pを15/720inch、2回目の主走査動作X2実行後の搬送量Pを11/720inch、3回目の主走査動作X3実行後の搬送量Pを19/720inch、4回目の主走査動作X4実行後の搬送量Pを7/720inchとして、式(7)に代入して算出すると、N=((15+11+19+7)/720)・180=52/4=13となる。したがって、1回目の主走査動作X1においては、ノズルN1〜ノズルN13までの13個のノズルを使用し、ノズルN14〜ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0056】
2回目の主走査動作X2における使用ノズル数Nは、2回目の主走査動作X2実行後の搬送量Pが11/720inchであり、3回目の主走査動作X3実行後の搬送量Pが19/720inchであり、4回目の主走査動作X4実行後の搬送量Pが7/720inchであり、5回目の主走査動作X5実行後の搬送量Pを23/720inchとして、式(7)に代入して算出すると、N=((11+19+7+23)/720)・180=60/4=15となる。したがって、2回目の主走査動作X2においては、ノズルN1〜ノズルN15までの15個のノズルを使用し、ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0057】
3回目の主走査動作X3における使用ノズル数Nは、3回目の主走査動作X3実行後の搬送量Pが19/720inchであり、4回目の主走査動作X4実行後の搬送量Pが7/720inchであり、5回目の主走査動作X5実行後の搬送量Pが23/720inchであり、6回目の主走査動作X6実行後の搬送量Pを7/720inchとして、式(7)に代入して算出すると、N=((19+7+23+7)/720)・180=56/4=14となる。したがって、3回目の主走査動作X3においては、ノズルN1〜ノズルN14までの14個のノズルを使用し、ノズルN15及びノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0058】
以下、同様の手順で使用ノズル数N及び記録紙PAの搬送量Pが主走査動作毎に設定されて記録が実行されていく。尚、第1実施例と同様に、ノズルN5とノズルN10を黒丸で表し、それ以外のノズルを白丸で表してある。そして、黒丸で表されているドットdは、ノズルN5とノズルN10で形成されるドットdであり、白丸で表されているドットdは、それ以外のノズルで形成されるドットdである。ドットdに付されているノズル番号は、そのドットdを形成するノズルのノズル番号であり、主走査方向Xに連続してドットdが形成されることによって各ラスタが形成される。
【0059】
図8は、インターレース記録方式により主走査動作毎に形成されるドット位置と、主走査動作間の副走査動作による記録紙PAの搬送方向(副走査方向Y)と反対方向へ遷移する記録ヘッド62のノズル位置との位置関係の第4実施例を模式的に示したものである。
【0060】
第4実施例においては、補間係数k=2、スキャン回数s=2に設定されたFOL(フルオーバーラップ)インターレース記録方式となっている。したがって、α=k・s−1=3となるので、使用ノズル数Nは、第3実施例と同様に、以下の式(7)によって定まる。
=(P+Pn+1+Pn+2+Pn+3)・D …(7)
【0061】
1回目の主走査動作X1における使用ノズル数Nは、1回目の主走査動作X1実行後の搬送量Pを7/360inch、2回目の主走査動作X2実行後の搬送量Pを8/360inch、3回目の主走査動作X3実行後の搬送量Pを9/360inch、4回目の主走査動作X4実行後の搬送量Pを6/360inchとして、式(7)に代入して算出すると、N=((7+8+9+6)/360)・180=30/2=15となる。したがって、1回目の主走査動作X1においては、ノズルN1〜ノズルN15までの15個のノズルを使用し、ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0062】
2回目の主走査動作X2における使用ノズル数Nは、2回目の主走査動作X2実行後の搬送量Pが8/360inchであり、3回目の主走査動作X3実行後の搬送量Pが9/360inchであり、4回目の主走査動作X4実行後の搬送量Pが6/360inchであり、5回目の主走査動作X5実行後の搬送量Pを5/360inchとして、式(7)に代入して算出すると、N=((8+9+6+5)/360)・180=28/2=14となる。したがって、2回目の主走査動作X2においては、ノズルN1〜ノズルN14までの14個のノズルを使用し、ノズルN15及びノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0063】
3回目の主走査動作X3における使用ノズル数Nは、3回目の主走査動作X3実行後の搬送量Pが9/360inchであり、4回目の主走査動作X4実行後の搬送量Pが6/360inchであり、5回目の主走査動作X5実行後の搬送量Pが5/360inchであり、6回目の主走査動作X6実行後の搬送量Pを6/360inchとして、式(7)に代入して算出すると、N=((9+6+5+6)/360)・180=26/2=13となる。したがって、3回目の主走査動作X3においては、ノズルN1〜ノズルN13までの13個のノズルを使用し、ノズルN14〜ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0064】
4回目の主走査動作X4における使用ノズル数Nは、4回目の主走査動作X4実行後の搬送量Pが6/360inchであり、5回目の主走査動作X5実行後の搬送量Pが5/360inchであり、6回目の主走査動作X6実行後の搬送量Pが6/360inchであり、7回目の主走査動作X7実行後の搬送量Pを7/360inchとして、式(7)に代入して算出すると、N=((6+5+6+7)/360)・180=24/2=12となる。したがって、4回目の主走査動作X4においては、ノズルN1〜ノズルN12までの12個のノズルを使用し、ノズルN13〜ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0065】
5回目の主走査動作X5における使用ノズル数Nは、5回目の主走査動作X5実行後の搬送量Pが5/360inchであり、6回目の主走査動作X6実行後の搬送量Pが6/360inchであり、7回目の主走査動作X7実行後の搬送量Pが7/360inchであり、8回目の主走査動作X8実行後の搬送量Pを4/360inchとして、式(7)に代入して算出すると、N=((5+6+7+4)/360)・180=22/2=11となる。したがって、5回目の主走査動作X5においては、ノズルN1〜ノズルN11までの11個のノズルを使用し、ノズルN12〜ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0066】
6回目の主走査動作X6における使用ノズル数Nは、6回目の主走査動作X6実行後の搬送量Pが6/360inchであり、7回目の主走査動作X7実行後の搬送量Pが7/360inchであり、8回目の主走査動作X8実行後の搬送量Pが4/360inchであり、9回目の主走査動作X9実行後の搬送量Pを9/360inchとして、式(7)に代入して算出すると、N=((6+7+4+9)/360)・180=26/2=13となる。したがって、6回目の主走査動作X6においては、ノズルN1〜ノズルN13までの13個のノズルを使用し、ノズルN14〜ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0067】
7回目の主走査動作X7における使用ノズル数Nは、7回目の主走査動作X7実行後の搬送量Pが7/360inchであり、8回目の主走査動作X8実行後の搬送量Pが4/360inchであり、9回目の主走査動作X9実行後の搬送量Pが9/360inchであり、10回目の主走査動作X10実行後の搬送量P10を10/360inchとして、式(7)に代入して算出すると、N=((7+4+9+10)/360)・180=30/2=15となる。したがって、7回目の主走査動作X7においては、ノズルN1〜ノズルN15までの15個のノズルを使用し、ノズルN16は不使用ノズルとなる。
【0068】
8回目の主走査動作X8における使用ノズル数Nは、8回目の主走査動作X8実行後の搬送量Pが4/360inchであり、9回目の主走査動作X9実行後の搬送量Pが9/360inchであり、10回目の主走査動作X10実行後の搬送量P10が10/360inchであり、11回目の主走査動作X11実行後の搬送量P11を9/360inchとして、式(7)に代入して算出すると、N=((4+9+10+9)/360)・180=32/2=16となる。したがって、8回目の主走査動作X8においては、ノズルN1〜ノズルN16までの16個のノズル、つまり全てのノズルを使用する。
【0069】
以下、同様の手順で使用ノズル数N及び記録紙PAの搬送量Pが主走査動作毎に設定されて記録が実行されていく。尚、同図においては、単調でない複雑な変則送りパターンを分かりやすく図示するため便宜的に、ノズルN3、ノズルN7、ノズルN11及びノズルN15を黒丸で表し、それ以外のノズルを白丸で表してある。そして、黒丸で表されているドットdは、ノズルN3、ノズルN7、ノズルN11及びノズルN15で形成されるドットdであり、白丸で表されているドットdは、それ以外のノズルで形成されるドットdである。ドットdに付されているノズル番号は、そのドットdを形成するノズルのノズル番号であり、主走査方向Xに連続してドットdが形成されることによって各ラスタが形成される。
【0070】
このように、FOL(フルオーバーラップ)インターレース記録方式においても主走査動作毎に毎回異なる搬送量Pで記録紙PAを搬送して記録を実行することによって、設定可能な搬送量Pのバリエーションが飛躍的に増加し、様々な搬送量Pの組み合わせによる単調でない複雑な変則送りパターンを実現することが可能となる。それによって、図示の如く黒丸で表したノズルN3、ノズルN7、ノズルN11及びノズルN15により形成されるドットdのそれぞれの位置関係が不規則に変化しているように、隣接するラスタ及び同一ラスタ上の隣接するドットを形成するノズルの組み合わせが、ある一定のパターンで周期的に繰り返されることがなくなる。そのため、隣接するラスタを形成するノズル同士のドットdの形成位置が比較的大きくかつ相反する方向へずれるような組み合わせにより生じるバンディングが周期的に発生することを防止することができ、バンディングの発生による記録画質の低下の虞を少なくすることができる。
【0071】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係るインクジェット式記録装置の概略の平面図である。
【図2】本発明に係るインクジェット式記録装置の概略の側面図である。
【図3】本発明に係るインクジェット記録装置の概略のブロック図である。
【図4】記録ヘッドのヘッド面を模式的に示した平面図である。
【図5】本発明に係るインターレース記録の第1実施例を示したものである。
【図6】本発明に係るインターレース記録の第2実施例を示したものである。
【図7】本発明に係るインターレース記録の第3実施例を示したものである。
【図8】本発明に係るインターレース記録の第4実施例を示したものである。
【符号の説明】
【0073】
21 ROM、22 RAM、23 USBコントローラ、24 メモリカードインタフェース、25 メモリカードスロット、26 MPU、27 I/O、28 ヘッドドライバ、50 インクジェット式記録装置、51 キャリッジガイド軸、52 プラテン、53 搬送駆動ローラ、54 搬送従動ローラ、55 排紙駆動ローラ、56 排紙従動ローラ、57 給紙トレイ、57b 給紙ローラ、61 キャリッジ、62 記録ヘッド、62K、62C、62LC、62M、62LM、62Y ノズル列、63 紙検出器、100 記録制御部、200 情報処理装置、d ドット、N1〜NM ノズル、PA 記録紙、SB システムバス、X 主走査方向、Y 副走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に往復動可能に配設され、副走査方向に複数のドット形成要素が一定の間隔で配設されたドット形成要素アレイを有する記録ヘッドと、前記ドット形成要素を駆動するヘッド駆動手段と、前記記録ヘッドを被記録材に対して主走査方向に往復動させる主走査駆動手段と、前記被記録材を副走査方向に前記記録ヘッドに対して相対的に搬送する副走査駆動手段と、
前記ヘッド駆動手段、前記主走査駆動手段、及び前記副走査駆動手段を制御して、前記記録ヘッドを主走査方向へ往復動させながら記録データに基づいて、前記被記録材にドットを形成するとともに、所定の搬送量にて前記被記録材を副走査方向へ搬送する記録制御装置とを備えた記録装置であって、
前記記録制御装置は、前記ドット形成要素アレイの総ドット形成要素数を総ドット形成要素数M、総ドット形成要素数Mのうち使用するドット形成要素数を使用ドット形成要素数N、被記録材の搬送量を搬送量P、前記ドット形成要素アレイ内の単位距離当たりに存在する前記ドット形成要素の個数をドット形成要素分布密度D、前記ドット形成要素の中心点間距離を副走査方向のドット間隔の倍数で表した値を補間係数k、主走査方向にドットが連続したラインを形成するのに要する主走査動作の回数をスキャン回数sとし、
スキャン回数sは、1以上N未満の整数に設定し、
補間係数kとN/sとは、互いに素の関係を満たす2以上N未満の整数に設定し、
かつ、P=N/(s・D・k)なる関係式を満たす値を選定し、
かつ、主走査動作毎に前回の主走査動作時と異なる搬送量P及び使用ドット形成要素数Nを設定して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項2】
請求項1において、前記記録制御装置は、記録開始時からの主走査動作回数をn、n回目の主走査動作時の搬送量PをP、n回目の主走査動作時の使用ドット形成要素数NをNとして、以下の関係式を満たす如く搬送量P及び使用ドット形成要素数Nを設定して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置。
α=k・s−1
=(P+Pn+1+Pn+2+…+Pn+α)・D
【請求項3】
請求項2において、前記記録制御装置は、P、Pn+1、Pn+2…Pn+αを全て異なる搬送量に設定して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、前記記録制御装置は、使用ドット形成要素数Nを、主走査動作毎に1から総ドット形成要素数Mまで段階的に増加させた後、総ドット形成要素数Mから1まで段階的に減少させることを繰り返して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項において、前記記録制御装置は、使用ドット形成要素数Nを、主走査動作毎に1〜総ドット形成要素数Mまでの整数の乱数テーブルに基づいて設定して記録を実行する、ことを特徴とした記録装置。
【請求項6】
主走査方向に往復動可能に配設され、副走査方向に複数のドット形成要素が一定の間隔で配設されたドット形成要素アレイを有する記録ヘッドと、前記ドット形成要素を駆動するヘッド駆動手段と、前記記録ヘッドを被記録材に対して主走査方向に往復動させる主走査駆動手段と、前記被記録材を副走査方向に前記記録ヘッドに対して相対的に搬送する副走査駆動手段と、前記ヘッド駆動手段、前記主走査駆動手段、及び前記副走査駆動手段を制御して、前記記録ヘッドを主走査方向へ往復動させながら記録データに基づいて、前記被記録材にドットを形成するとともに、所定の搬送量にて前記被記録材を副走査方向へ搬送する記録制御装置とを備えた記録装置において、前記ヘッド駆動手段、前記主走査駆動手段、及び前記副走査駆動手段を制御して、前記記録ヘッドを主走査方向へ往復動させながら記録データに基づいて、前記被記録材にドットを形成するとともに、所定の搬送量にて前記被記録材を副走査方向へ搬送する制御をコンピュータに実行させる記録制御プログラムであって、
前記ドット形成要素アレイの総ドット形成要素数を総ドット形成要素数M、総ドット形成要素数Mのうち使用するドット形成要素数を使用ドット形成要素数N、被記録材の搬送量を搬送量P、前記ドット形成要素アレイ内の単位距離当たりに存在する前記ドット形成要素の個数をドット形成要素分布密度D、前記ドット形成要素の中心点間距離を副走査方向のドット間隔の倍数で表した値を補間係数k、主走査方向にドットが連続したラインを形成するのに要する主走査動作の回数をスキャン回数sとする手順と、
スキャン回数sは、1以上N未満の整数に設定し、補間係数kとN/sとは、互いに素の関係を満たす2以上N未満の整数に設定し、かつ、P=N/(s・D・k)なる関係式を満たす値を選定し、かつ、主走査動作毎に前回の主走査動作時と異なる搬送量P及び使用ドット形成要素数Nを設定して記録を実行する手順とを有する、ことを特徴とした記録制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−27131(P2006−27131A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−210587(P2004−210587)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】