説明

記録装置、駆動装置及びモータ寿命の判定方法

【課題】コストアップを抑制しながら、モータ軸受の摩耗によるモータの寿命を判定すること。
【解決手段】本発明の記録装置は、記録ヘッドを搭載し往復移動するキャリッジと、駆動源としてモータを備え、前記キャリッジを移動する駆動手段と、前記キャリッジの位置を検出する第1の検出手段と、前記モータのステータ側に設けられ、前記モータのロータの回転位置を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段の検出結果と、前記第2の検出手段の検出結果とに基づいて、モータの交換を促す報知を行うか否かを判定する判定手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ等に用いられるモータの寿命判定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の耐久性向上の要求が高まるなか、使用されている各部品の長寿命化が望まれている。インクジェットプリンタでは、その寿命に影響する主要な部品のひとつとしてキャリッジモータが挙げられる。キャリッジモータは、インクを吐出して画像を記録する記録ヘッドを移動するためのモータである。キャリッジモータの寿命を左右する主要な要因としては、ブラシ摩耗とロータ軸の軸受の摩耗が挙げられる。このうち、ブラシ摩耗については、ブラシレスモータを採用してブラシ自体を無くすことにより完全に解決される。しかし、軸受については、これを無くすことができない。
【0003】
キャリッジモータでは含油焼結軸受が使用される場合が多いが、この含油焼結軸受の摩耗寿命がキャリッジモータの寿命に強く影響している。軸受の摩耗が進行するとロータ軸と軸受との間のガタつきが大きくなる。ガタつきによりロータが振れながら回転することになり、この振れが大きくなると異音や画像劣化を生じるだけでなく、モータの故障に至ってプリンタが使用不能となる。
【0004】
通常、プリンタの保証寿命はこのような軸受の摩耗等も考慮して定められるため、保証寿命の間に軸受の摩耗によってモータの故障が発生する可能性は低い。しかし、近年では保証寿命を超えてプリンタを使用するユーザが増えており、プリンタが使用不能となる前にその交換を促すことが望ましい。そこで、軸受の摩耗状況を検出することが必要となる。モータの軸受の摩耗を検出する技術としては、例えば、特許文献1乃至3に記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−233769号公報
【特許文献2】特開平10−174374号公報
【特許文献3】特開2001−309614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1乃至3に記載の技術では、軸受の摩耗状況を検出するためにハードウエアの変更を伴うものであり、コストアップを招く。
【0007】
本発明の目的は、コストアップを抑制しながら、モータ軸受の摩耗によるモータの寿命を判定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、記録ヘッドを搭載し往復移動するキャリッジと、駆動源としてモータを備え、前記キャリッジを移動する駆動手段と、前記キャリッジの位置を検出する第1の検出手段と、前記モータのステータ側に設けられ、前記モータのロータの回転位置を検出する第2の検出手段と、前記第1の検出手段の検出結果と、前記第2の検出手段の検出結果とに基づいて、モータの交換を促す報知を行うか否かを判定する判定手段と、を有することを特徴とする記録装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コストアップを抑制しながら、モータ軸受の摩耗によるモータの寿命を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る記録装置Aの説明図。
【図2】上記記録装置のブロック図。
【図3】(a)及び(b)はモータの構造及び軸受の摩耗の説明図。
【図4】(a)及び(b)はモータの軸受の摩耗の説明図。
【図5】(a)及び(b)は軸受の摩耗によるホール素子とマグネットとの位置変化の説明図。
【図6】モータのロータの回転角度に対する、各ホール素子の出力及び各信号処理回路の出力の例を示す図。
【図7】(a)はキャリッジの1回の往復動作におけるホール素子、エンコーダセンサの出力例、(b)及び(c)は図7(a)の部分拡大図。
【図8】(a)は軸受の摩耗前のホール素子の出力の反転タイミングの例を示す図、(b)は軸受の摩耗後のホール素子の出力の反転タイミングの例を示す図。
【図9】(a)及び(b)はMPUが実行する処理例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<全体構成>
図1は本実施形態にかかる記録装置Aの説明図であり、その構成の一部を破断して表示している。本実施形態では、インクジェット記録装置に本発明を適用した場合について説明するが、本発明は他の形式の記録装置にも適用可能である。
【0012】
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、「記録媒体」には、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも含まれる。
【0013】
記録装置Aは、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ2を備える。キャリッジ2は、メインガイドレール3、サブガイドレール4に支持されている。メインガイドレール3、サブガイドレール4は、キャリッジ2を記録媒体15の搬送方向に対して交差する方向へ往復移動自在に支持する。また、メインガイドレール3、サブガイドレール4は、記録ヘッド1が記録媒体15に対してほぼ一定間隔となるように筐体12に支持されている。記録ヘッド1はインクタンクからインクが供給され、インクを記録媒体15に吐出する。これにより画像が形成される。
【0014】
搬送ローラ10は、モータを駆動源とした駆動ユニット(不図示)によって駆動され、記録媒体15を搬送する。排出ローラ11は、画像記録された記録媒体を装置外へ排出する。
【0015】
記録装置Aは駆動ユニットDMを備える。駆動ユニットDMはキャリッジ2を移動する。駆動ユニットDMは、駆動源としてモータ7を備える。本実施形態ではモータ7として直流ブラシレスモータを想定している。駆動ユニットDMは、モータ7の駆動力をキャリッジ2に伝達する動力伝達機構として、プーリ8、9及びこれらに巻きまわされた、無端のタイミングベルト6を備える。本実施形態では動力伝達機構としてベルト伝動機構を採用したが、他の機構も採用可能である。
【0016】
プーリ8はモータ7に連結された駆動プーリである。プーリ9は、キャリッジ1の移動方向で見て、プーリ8の反対側に配置された従動プーリである。タイミングベルト6はその走行方向がガイドレール3及び4と平行であり、その一部にキャリッジ2が固定されている。モータ7を駆動することでタイミングベルト6が走行し、これによりキャリッジ2が移動する。
【0017】
係る構成からなる記録装置Aでは、記録の際、搬送ローラ10により搬送された記録媒体15上をキャリッジ2が移動(走査)する。キャリッジ2の移動中に、記録ヘッド1からインク滴を吐出する。キャリッジ2が記録媒体15の側端まで移動すると、搬送ローラ10により記録媒体15が一定量搬送される。この動作の繰り返しにより記録媒体15に画像が記録される。
【0018】
<制御部>
図2は記録装置Aのブロック図であり、特にモータ7の制御及びモータ7の交換の報知に関わる部分を示したものである。MPU21は記憶部22に記憶されたプログラムを読み込んで実行する。記憶部22は、例えば、ROM及びRAMから構成されるが、各種の記憶装置が利用可能である。MPU21で行う処理は、画像処理、I/F(インターフェース)24を介したホストコンピュータとの通信、記録ヘッド1の吐出制御、キャリッジ2の移動制御、記録媒体15の搬送制御である。
【0019】
報知部23は、例えば、LCD等の画像表示装置や、音声出力装置であり、ユーザに対する各種の報知を行う。
【0020】
キャリッジ2にはエンコーダセンサ13が取り付けられている。エンコーダスケール14はキャリッジ2の移動方向に平行に設けられており、エンコーダセンサ13はエンコーダスケール14を読み取ることで、キャリッジ2の走査方向の位置を検出する第1の検出センサである。なお、キャリッジ2の位置を検出可能であれば他の種類のセンサでもよい。
【0021】
エンコーダセンサ13から出力される位置検出信号は、信号処理回路25で2値化され、MPU21へ送られる。MPU21では、位置検出信号に基づき、エンコーダスケール14のパルスカウントを行うことでキャリッジ2の走査方向の位置及び移動速度を演算できる。
【0022】
モータ7はドライバ26を介してMPU21に制御される。本実施形態の場合、モータ7として3相モータを想定しており、ステータコイルCu、Cv、Cw(以下、総称する場合はステータコイルCという。)を備える。ホール素子Hu、Hv、Hw(以下、総称する場合はホール素子Hという。)は、モータ7のステータ側に設けられ、モータ7のロータの回転位置を検出する第2の検出センサである。各ホール素子Hu、Hv、Hwの2つの出力信号力は、信号処理回路27で二値化される。本実施形態の場合、信号処理回路27は差動アンプである。
【0023】
各信号処理回路27から出力される信号はドライバ26に入力され、ドライバ26は入力信号の組合せにより、通電すべきステータコイルCu、Cv、Cwの組み合わせを決定して、決定したステータコイルに通電する。これによりモータ7が回転する。
【0024】
本実施形態の場合、各信号処理回路27から出力される信号はMPU21にも入力される。MPU21は入力信号をモータ7の寿命判定に用いる。このモータ寿命の判定について、まず、モータ7の構造及び軸受の摩耗について説明する。
【0025】
<モータの構造及び軸受の摩耗>
図3(a)及び(b)はモータ7の構造及び軸受76の摩耗の説明図、図4(a)及び(b)はモータ7の軸受76の摩耗の説明図である。まず、図3(a)を参照してモータ7の構造について説明する。
【0026】
モータ7は、回転軸72と回転軸72に固定されたマグネット73とを備え、これらがモータ7のロータを構成している。回転軸72の端部にはプーリ8が固定されている。回転軸72は、軸受75、76により回転自在に支持されている。軸受75、76はハウジング71に支持されている。ステータコイルCはアマチュアコア74に巻きまわされており、ホール素子Hはハウジング71に支持されている。
【0027】
回転軸72には、ベルト6の張力が作用する。そこで、プーリ8に近い軸受75にはボールベアリングを使用し、駆動プーリ8側の耐側圧性を向上させている。一方、軸受76には、ボールベアリングよりも安価な含油焼結軸受を使用している。
【0028】
ここで、ベルト6の張力により、回転軸72のプーリ8側の端部は、従動プーリ9側に常時引っ張られる。軸受76の孔76aと回転軸72との間には機械的なガタがある。このため、軸受75を中心として、回転軸72は僅かに傾き、孔76aと回転軸72とは、図4(a)に誇張して示すように偏って互いに接触した状態にある。
【0029】
回転軸72が回転している場合には軸受76の孔76aには油膜が形成されており、回転軸72と孔76a内面では金属接触することはない。しかし、本実施形態のように、キャリッジ2の往復運動を繰り返す用途では、モータ7の回転方向が頻繁に変わるため、速度がゼロになる瞬間が頻繁に発生している。これは、回転軸72と孔76a内面との金属接触が頻繁に発生することを意味する。モータ7が回転し始める瞬間には、回転軸72と孔76a内面とが金属接触するため、図3(b)や図4(b)に示すように、孔76a内面の摩耗が進行する。
【0030】
孔76a内面の摩耗が進行すると、回転軸72の傾きが大きくなり、マグネット73とアマチュアコア74とが接触する場合がある。マグネット73とアマチュアコア74とが接触すると異音や画像劣化の原因となる。また、モータ7の故障に至る。よって、軸受76の摩耗によるモータ7の寿命を検出してユーザに交換を促す必要がある。以下、その検出原理について説明する。
【0031】
<摩耗の検出>
本実施形態では、ホール素子Hの出力と、キャリッジ2の位置検出結果との関係の変化から、軸受76の摩耗によるモータ7のモータ寿命を判定する。図5(a)及び(b)は軸受76の摩耗によるホール素子Hとマグネット73との位置変化の説明図である。図5(a)は摩耗前を示し、図5(b)は摩耗後を示す。
【0032】
摩耗前の初期の状態(例えば出荷時等)では、図5(a)に示すように、各ホール素子Hu、Hv、Hwとマグネット73の回転中心との距離はほぼ等しくなるようにこれらが配設されている。同図の例では、ロータの15°の回転ごとに、3つのホール素子Hu、Hv、Hwの出力の組み合わせが切り替わっていくことになる。
【0033】
図6はモータ7のロータ(72、73)の回転角度に対する、各ホール素子Hu、Hv、Hwの出力及び各信号処理回路27の出力の例を示す。実線(細線)及び破線はホール素子Hの出力波形を示し、実線(太線)は信号処理回路27の出力波形を示す。モータ7内蔵の3個のホール素子Hu、Hv、Hwの出力は電気角で120°の位相になるように、モータ7内に配設されている。
【0034】
軸受76に摩耗が無い場合、駆動ユニットDMの構成上、モータ7のロータ(72、73)の回転角度と、キャリッジ2の移動量とは一定の関係にある。つまり、ロータ(72、73)の回転角度に対して、信号処理回路25から出力されるパルス信号の数は一定値となる。その結果、モータ7のロータの累積回転角度と、キャリッジ2の位置とは一定の関係にある。
【0035】
しかし、軸受76の摩耗が進むと図5(b)のように、ロータ(72、73)の回転中心がずれた状態になる。すると、モータ7のロータ(72、73)の回転角度と、キャリッジ2の移動量との当初の関係が崩れる。例えば、マグネット73の半径をrmmとし、回転中心のずれをΔXとすると、ホール素子Hvの検出上のずれ角は、θ=arctan(Δx/r)となる。r=6.0mm、Δx=0.3mmとすると、θ=2.9度に相当する。これは設計上、信号処理回路25から出力されるパルス信号の数で、例えば、3.6パルスの変化になる。よって、このずれを検出することで、軸受76の摩耗が進行している否かを判定することができることになる。
【0036】
図7(a)はキャリッジ2の1回の往復動作におけるホール素子H、エンコーダセンサ13の出力例を示す。図7(b)及び(c)は図7(a)の部分拡大図であり、軸受76の摩耗を判定する判定区間T1、T2を例示している。各図において、ホール素子H及びエンコーダセンサ13の出力は、信号処理回路27、25による二値化後のパルス信号を示している。また、ホール素子Hの出力は、3つのホール素子Hu、Hv、Hwのうちの一つを示している。
【0037】
図7(a)に示すキャリッジ2の動作について説明する。同図の例では往路走行時に、約100msecまで加速し、その後300msecまで一定速が続き、その後減速して400msecまで一旦停止する。次に、復路走行となり、500msecまで、加速し、700msecまで一定速となり、その後減速して800msecまで停止している(初期位置に戻る)。
【0038】
記録装置Aによる画像の記録時には、この一連の往復動作が繰り返される。そして、キャリッジ2の速度が一定速の区間で、インクが吐出されて画像が記録される。図7(a)に示すように、キャリッジ2の移動と同期的にホール素子H、エンコーダセンサ13のパルス信号が出力されるが、同図からは詳細が分かりにくいので、図7(b)及び図7(c)を参照する。
【0039】
図7(b)は往路走行時の加速区間の一部である判定区間T1を、図7(c)は往路走行時の減速区間の一部である判定区間T2を、それぞれ示しており、横軸はモータ7のロータの累積回転角度としている。
【0040】
図7(b)においては、モータ7の累積回転角度が5°を過ぎたあたりで、ホール素子Hの出力がLowからHighに変化していることを示している。このときのエンコーダセンサ13の出力パルス数(クロックカウント値)は、8パルス目ということである。また、図7(c)においては、モータ7の累積回転角度が9410°付近で、ホール素子HはHighからLowに変化している。このときのエンコーダセンサ13の出力パルス数は、11691目ということである。
【0041】
このような判定区間T1、T2において、ホール素子Hの出力の反転タイミングを、初期状態の反転タイミングと比較することで、軸受76の摩耗が進行している否かを判定する。図8(a)は軸受76の摩耗前のホール素子Hの出力の反転タイミングの例を示す図、(b)は軸受76の摩耗後のホール素子Hの出力の反転タイミングの例を示す図である。同図の例では、軸受76の摩耗前後で、反転タイミングが、ロータ角度Dだけずれている。
【0042】
ロータ角度Dに相当するエンコーダセンサ13の出力パルス数は約2パルスである。よって、エンコーダセンサ13の出力パルス数で閾値を設定し、反転タイミングのずれ量が閾値を超えた場合に軸受76の摩耗が進んでモータ7が寿命であると判定することができる。また、ホール素子H、エンコーダセンサ13を利用することで、軸受76の摩耗状況を検出する専用のハードウエアを追加する必要がなく、コストアップを抑制することができる。
【0043】
判定区間T1、T2はエンコーダセンサ13の出力パルスのカウント数で管理することができる。例えば、図7(b)の例では、出力パルスのカウント数が0〜13の区間を判定区間T1とし、図7(c)の例では、出力パルス数が11684〜11697の区間を判定区間T2としている。なお、出力パルスのカウントは例えば往路では加算し、復路では減算される。
【0044】
判定区間は、キャリッジ2の移動範囲のうちの、任意の区間とすることができるが、ホール素子Hの出力の反転タイミングのずれが特徴的に表れる区間が好ましい。例えば、キャリッジ2の加速区間、減速区間、移動方向の切り替わり区間等、タイミングベルト6の張力が大きくなる区間が好ましい。このような区間においては、タイミングベルト6の伸びを考慮しても、軸受76の摩耗によるホール素子Hの出力の反転タイミングのずれの再現性が高くなる。
【0045】
<処理例>
軸受76の摩耗によるモータ7の交換をユーザに促す報知に関するMPU21の処理例について図9(a)及び(b)を参照して説明する。図9(a)は、軸受72の摩耗前のホール素子Hの出力の反転タイミングを計測する処理を示す。同図の処理は例えば記録装置Aの出荷時に行うか、或いは、ユーザが最初に使用するときに自動的に行う。
【0046】
S1ではキャリッジ2のテスト移動を開始する。キャリッジ2のテスト移動は、画像記録時のキャリッジ2の移動パターン(例えば図7(a))と同じ移動パターンで行う。
【0047】
S2ではエンコーダセンサ13の出力パルスのカウント数に基づいて、最初の判定区間(例えば上記の判定区間T1)をキャリッジ2が移動中かを判定する。移動中であれば3つのホール素子Hの中から予め定めた一つのホール素子H(以下、特定ホール素子Hという。)の出力の反転タイミングを計測し、その時のエンコーダセンサ13の出力パルスのカウント数を第1基準値として記憶部22に記憶する。
【0048】
S3ではエンコーダセンサ13の出力パルスのカウント数に基づいて、次の判定区間(例えば上記の判定区間T2)をキャリッジ2が移動中かを判定する。移動中であれば特定ホール素子Hの出力の反転タイミングを計測し、その時のエンコーダセンサ13の出力パルスのカウント数を第2基準値として記憶部22に記憶する。S4ではキャリッジ2のテスト移動を終了する。以上により一単位の処理が終了する。
【0049】
図9(b)は、記録装置Aの使用が開始された後、軸受76の摩耗を検出する処理である。この処理は、画像記録中に並行して行われる場合を想定しているが、画像記録前に単独で行ってもよい。また、この処理は定期的に行ってもよい。例えば、キャリッジ2の往復移動回数の累積値を記録しておき、該累積値が所定値に達する度に行ってもよい。或いは、該累積値が所定値に達した後、定期的に行ってもよい。
【0050】
S11ではエンコーダセンサ13の出力パルスのカウント数に基づいて、最初の判定区間(例えば上記の判定区間T1)をキャリッジ2が移動中かを判定する。該当する場合はS13へ進み、該当しない場合はS12へ進む。S12ではエンコーダセンサ13の出力パルスのカウント数に基づいて、次の判定区間(例えば上記の判定区間T2)をキャリッジ2が移動中かを判定する。該当する場合はS13へ進み、該当しない場合は一単位の処理を終了する。
【0051】
S13では、特定ホール素子Hの出力の反転タイミングを計測し、その時のエンコーダセンサ13の出力パルスのカウント数を記憶部22に記憶する。S14ではS13で記憶したカウント数と、S2又はS3で記憶した基準値との差分を求める。最初の区間をキャリッジ2が移動中の場合(S11)はS2で記憶した第1基準値との差分を求め、次の区間をキャリッジ2が移動中の場合(S12)はS3で記憶した第2基準値との差分を求める。そして、求めた差分からモータ7の交換を促す報知を行うか否かを判定する。求めた差分が予め定めた閾値(例えば2パルス)を超えた場合は報知を行うと判定し、超えていない場合は報知を行わないと判定する。このようにホール素子Hの検出結果と、エンコーダセンサ13との検出結果とに基づいて、モータ7の交換を促す報知を行うか否かを判定する。
【0052】
S15ではS14の判定の結果が、報知を行うであればS16へ進み、報知を行わないであれば一単位の処理を終了する。S16では報知処理を行う。ここでは、例えば、報知部23によって、モータ7の交換を促すメッセージを表示したり、或いは、モータ7の交換を促す音声を出力する。或いは、I/F24を介してホストコンピュータに報知指示を行う。これによって、ホストコンピュータにおいてユーザに対する報知が行われる。無論、報知部23とホストコンピュータとの双方において報知を行ってもよい。このような報知により、ユーザはモータ7の交換時期を知ることができる。
【0053】
<他の実施形態>
上記実施形態では、複数の判定区間(T1、T2)において、軸受76の摩耗に関する判定を行ったが、判定区間は1つでもよい。この場合、キャリッジ2がモータ2に最も引き寄せられた位置(例えば、上記の判定区間T1か判定区間T2)であることが望ましい。
【0054】
キャリッジ2がモータ7に最も引く寄せられた状態では、駆動プーリ8からキャリッジ2までのタイミングベルト6の長さは最短になる。よって、タイミングベルト6の伸びはエンコーダセンサ13の分解能に対して無視できるレベルとなる。そのため、判定区間を1つとしても精度よく軸受76の摩耗を検出できる。
【0055】
また、上記実施形態では3つのホール素子Hのうちの一つを軸受76の摩耗に関する判定に用いたが、3つ全部用いてもよい。
【0056】
また、上記各実施形態では、記録装置を対象としたが本発明の適用分野はこれに限られず、移動体を、モータを駆動源とする駆動ユニットによって移動する各種の駆動装置に適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを搭載し往復移動するキャリッジと、
駆動源としてモータを備え、前記キャリッジを移動する駆動手段と、
前記キャリッジの位置を検出する第1の検出手段と、
前記モータのステータ側に設けられ、前記モータのロータの回転位置を検出する第2の検出手段と、
前記第1の検出手段の検出結果と、前記第2の検出手段の検出結果とに基づいて、モータの交換を促す報知を行うか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記キャリッジの移動範囲のうちの、複数の区間における前記第1の検出手段の検出結果と、前記第2の検出手段の検出結果とに基づいて前記報知を行うか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記区間が、前記キャリッジの加速区間及び減速区間の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記モータが軸受を有するブラシレスモータであり、
前記第2の検出手段がホール素子であり、
前記ホール素子の出力信号を二値化する信号処理回路を備え、
前記判定手段は、
前記第2の検出手段の検出結果に基づく前記キャリッジの位置に対する、前記信号処理回路から出力される信号が反転するタイミングにより前記報知を行うか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
駆動源としてモータを備え、移動体を移動させる駆動手段と、
前記移動体の位置を検出する第1の検出手段と、
前記モータのステータ側に設けられ、前記モータのロータの回転位置を検出する第2の検出手段と、
前記第1の検出手段の検出結果と、前記第2の検出手段の検出結果とに基づいて、前記モータの寿命を判定する判定手段と、
を有することを特徴とする駆動装置。
【請求項6】
モータにより駆動される移動体の位置を検出する第1工程と、
前記モータのステータ側に設けられた検出手段により、前記モータのロータの回転位置を検出する第2工程と、
前記第1工程の検出結果と、前記第2工程の検出結果とに基づいて、前記モータの寿命を判定する第3工程と、
を有することを特徴とするモータ寿命の判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−86484(P2013−86484A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232118(P2011−232118)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】