説明

記録装置

【課題】キャリッジがY軸レールに沿って移動するとき、キャリッジの上位支持部に搭載された重量物の振動を防止しヘッド部が走行中、振動しないようにする。
【解決手段】キャリッジ10は、Y軸レール8のキャリッジ案内部に走行可能に連結される。印字時、キャリッジ10は、Y軸レール8に沿ってY軸方向に移動する一方、印字媒体がキャリッジ10に対してX軸方向に相対移動し、ヘッド部12によって印字媒体に印字が行われる。Y軸レール8の上面にはその長手方向に沿ってローラ走行面8aが設けられ、キャリッジ10の上位支持部10bの下面に1個又は複数個の補助ローラ66が回転自在に取り付けられる。補助ローラ66はY軸レール8の上面のローラ走行面8aに載置され、キャリッジ10の走行時、上位支持部10b側の重量が補助ローラ66を介してY軸レール8のローラ走行面8aに支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタなどの記録装置に関し、特にY軸レール体に沿って移動するキャリッジの走行補助構造を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインクジェットプリンタのヘッドは、高解像度の詳細画像に対応できるように、また印字範囲の大型化、印字時間の短縮、その他の対応のため多数のヘッドを用いるものが開発されている。そのような装置においてはいろいろな構造があるが、ヘッドキャリッジにインクのサブタンクや電子回路が組み込まれた基盤その他の重量物を設けているタイプの製品がある。そのような場合、当然キャリッジのヘッド側の部分だけではこのような重量物を設置する場所がないため、キャリッジをY軸レール体の上面方向にまで延ばして設置場所を設けこの上位支持部にいろいろな重量物を取り付けている。またヘッド側にインクタンクを持っていない場合、当然別の場所にあるインクタンクからインクをチューブでヘッドまで持ってくる必要があり、そのインクチューブやヘッドを駆動するケーブル類など多数のものがヘッドキャリッジに連結している(例えば特許文献1,2参照)。またインクタンクなどを別部材に搭載しこの別部材を別のレールにてキャリッジに連動させて移動させキャリッジへの負担を軽減させているものもある(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2003−192194号公報
【特許文献2】特開2002−240316号公報
【特許文献3】特開平7−47693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
キャリッジのY軸レール体の上面方向にまで延ばした設置場所に多数の部品を載せたり結合すると、キャリッジが移動する際に、これらの部品や付加物の重量により、キャリッジの上位支持部が振動し、ヘッドの部分に悪影響を及ぼしてしまう。インクタンクなどを別部材に搭載しこの別部材を別のレールにてキャリッジに連動させて移動させキャリッジへの負担を軽減させればこの問題は解決するが、このような構成を採用すると機構が複雑となり、コストアップの原因となる。
本発明は上記問題点を解決することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため本発明は、下位支持部とY軸レールの上面に延びる上位支持部とを有し下位支持部に印字用のヘッド部を取り付け上位支持部に印字に必要な重量物を取り付けたキャリッジの下位支持部側を前記Y軸レールに走行可能に連結し、前記キャリッジを前記Y軸レールに沿ってY軸方向に移動する一方、印字媒体を前記キャリッジに対してX軸方向に相対移動させ、該印字媒体に印字を行うようにした記録装置において、前記Y軸レールの上面にその長手方向に沿ってローラ走行面を設け、前記キャリッジの上位支持部の下面に1個又は複数個の補助ローラを回転自在に取り付け、該補助ローラを前記Y軸レールの上面のローラ走行面に載置し、前記上位支持部側の重量が前記補助ローラを介して前記Y軸レールのローラ走行面にかかるようにしたものである。
また本発明は、前記補助ローラの支持部にダンパ機構を設けたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、ヘッド部に対する振動を無くすことができるため、良好な印字結果が得られる。また、キャリッジをスムーズにY軸レール体に沿って走行させることができ、更に、既存のY軸レールの上面に走行面を設けるので複雑な構造もまた変更も必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に本発明の構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
まず、図3を参照して、本発明に係る大型のインクジェット型プリンタなどの記録装置の構成の概略を説明する。
記録装置2には、キャスタを介して床面上に載置された台板4上に脚台6が立設され、脚台6の上部には、基台(図示省略)が架設されている。前記基台には、図3中、紙面垂直方向に延びる長尺状のY軸レール8が架設されている。
【0007】
前記Y軸レール8にはヘッドキャリッジ10が走行自在に取り付けられ、該キャリッジの下位支持部10aに、複数のインクジェット型印字ヘッドを装備したヘッド部12が取り付けられている。前記Y軸レール8には、支持アームを介して加圧ローラ14が昇降可能に取り付けられ、該加圧ローラ14と、前記基台に支持されたプラテン(用紙案内部材)16に配置された駆動ローラ16とで、プラテン18上の用紙21を挟持し、駆動ローラ16の回転によって、プラテン18上の用紙21を、図3中、右方向(X軸方向)に搬送可能な構成となっている。
【0008】
前記キャリッジ10の上位支持部10bには、インク用のサブタンク20や、電子回路が組み込まれた基盤22その他ヘッドを駆動するためのケーブルやインクチューブ24等が取り付けられている。
上記した構成において、記録装置2の印字動作がスタートすると、コントローラの制御により、ヘッド部12は、キャリッジ10の移動により、Y軸レール8に沿ってY軸方向に往復駆動される。一方、プラテン18上の用紙21は、駆動ローラ16の間欠回転により、プラテン18上をX軸方向に間欠的に搬送され、ヘッド部12の印字ヘッドから吐出されるインク滴により用紙21に印字作画が行われる。
【0009】
次に、本発明の要部であるY軸レール8の構成について、図4乃至図7を参照して説明する。
図4において、8Aはキャリッジ10側の重量に十分耐えうる強度を有する長尺状の主Y軸レールであり、その一側部に、その長手方向全長にわたって、一対の同一構造の第1と第2の溝26,28と、該溝26,28間に位置して、第3の溝30が形成され、それぞれ、主Y軸レール8Aの一側部に開口している。前記一対の溝26,28は、それぞれ板ナットを係止するのに適したT溝部26a,28aと、該T溝部26a,28aの幅狭部と連通し、これより幅広の凹溝部26b,28bと、T溝部26a,26bの幅広部と連通し、これより幅狭の凹溝部26c,28cとから構成されている。
【0010】
前記第3の溝30は、断面形状が矩形に形成され、一方が、主Y軸レール8Aの側面に開口している。32は短尺部材からなる調整部材であり、前記主Y軸レール8Aの一側面に対面して配置されている。前記調整部材32は、前記主Y軸レール8Aの長手方向全長に亘ってその複数箇所に配置されている。各調整部材32は、図7に示すように、その上下位置に、ねじ挿入孔34,36が穿設され、該ねじ挿入孔34,36にボルト38の軸部がガタを存して遊嵌し、該ボルト38の軸部のねじ部が、前記T溝部26a,28a内に配置された板ナット40にねじ込まれている。
【0011】
前記ボルト38の軸部には、コイルスプリング42が嵌挿され、該コイルスプリング42は、調整部材32の一側面と主Y軸レール8Aの一側面に開口する凹溝部26b,28bの底面間に圧縮配置され、主Y軸レール8Aと調整部材32とを、ボルト38の軸方向に沿って、互いに離反する方向に弾発している。44は四角形状の板材であり、前記主Y軸レール8Aの第3の溝30に嵌合配置され、該板材44に穿設された円孔46に円柱体48が回転自在に嵌合配置されている。前記円柱体48の偏心位置には、軸穴が穿設され、該軸穴に円柱体49の中心に突設された軸体49aが固着されている。
【0012】
前記円柱体49は、前記調整部材32の中間部に穿設された円孔50に回転自在に嵌合している。前記円柱体49の一方の端側面には回転工具用の溝49bが形成されている。52,54は金属製の一対の丸棒からなる副Y軸レールであり、前記主Y軸レール8Aの全長にわたってその側部に対向配置され、各副Y軸レール52,54は、互いに平行となるように、ねじ55によって、各調整部材32の上下位置に形成された突部に固定されている。上記主Y軸レール8A、調整部材32、副Y軸レール52,54は、全体として、Y軸レール8を構成している。
【0013】
次に、副Y軸レール52,54の主Y軸レール8Aに対する位置調整作業について説明する。
副Y軸レール52,54の主Y軸レール8Aに対する位置調整は、調整部材32と主Y軸レール8A間に構成された位置調整機構を操作して、調整部材32を主Y軸レール8Aに対して変位させることにより行われる。調整部材32を円柱体49を支点として、図4中、主Y軸レール8Aの長手方向に垂直な平面内で回転する方向あるいは左右方向(接離方向)に調整するには、ボルト38,38を回転する。
【0014】
上方のボルト38を回転し、該ボルト38を板ナット40に対して、右方向に移動させると、コイルスプリング42の弾発力により、調整部材32は、円柱体49を支点として、時計方向に傾く。上方のボルト38を逆回転させ、これを板ナット40に対して左方向に移動させると、コイルスプリング42の弾発力に抗して、調整部材32は、円柱体49を支点として、反時計方向に傾く。
【0015】
同様に、下方のボルト38を回転し、該ボルト38を板ナット40に対して、右方向に移動させると、コイルスプリング42の弾発力により、調整部材32は、円柱体49を支点として、反時計方向に傾く。下方のボルト38を逆回転させ、これを板ナット40に対して左方向に移動させると、コイルスプリング42の弾発力に抗して、調整部材32は、円柱体49を支点として、時計方向に傾く。
【0016】
また、上下両方のボルト38,38を適宜回転させることで、調整部材32を、主Y軸レール8Aの側面に対して、左右方向即ち、接離する方向に平行移動させることができる。また、円柱体49を回転工具を用いて回転させると、円柱体48が回転し、該円柱体48に対して偏心した軸体49aが主Y軸レール8Aに対して上下動し、この軸体49aと一体的な円柱体49が板材44を支点として上下動して、調整部材32が円柱体48を支点として、主Y軸レール8Aに対して、上下方向に移動する。この上下方向の調整のとき、板材44は溝30に沿って若干スライドする。
【0017】
以上の各調整部材32の、主Y軸レール8Aに対する、傾き方向(回転方向)、接離方向(前後方向)、上下方向の移動により、副Y軸レール52,54を、記録装置2の機械的に設定されたY座標軸に正確に一致させることができる。
【0018】
調整部材32の位置調整が完了した後は、調整位置がずれないように、止めねじ56で円柱体48を板材44の円孔46の内周面に脱着可能に固定し、また、調整部材32を止めねじ58(図8参照)により、主Y軸レール8A側に脱着可能に固定する。前記キャリッジ10は、図2に示すように、これに回転自在に軸支された複数のローラ60A,60B,60C,60Dを介して、副Y軸レール52,54に走行自在に取り付けられている。
【0019】
短尺部材からなるキャリッジ10は、図2中、紙面垂直方向に延びる垂直部10cを有し、これの上部と下部にそれぞれ複数個のローラ60A,60Bが横向きに回転自在に軸支され、該各ローラ60A,60Bの表面が、副Y軸レール52,54の側部に当接している。前記キャリッジ10の垂直部10cの上部には、前記ローラ60Aに対して、反時計方向に略135度の間隔を存して、1個又は複数個の傾斜ローラ60cが回転自在に軸支され、該傾斜ローラ60cの表面が副Y軸レール52の斜め上部に当接している。
【0020】
キャリッジ10の垂直部10cの下部には、1個又は複数個の支持アーム62が軸64を中心として回転自在に軸支され、それぞれ圧縮ばね66により時計方向に付勢されている。前記支持アーム62には、前記ローラ60Bに対して、時計方向に、略135度の間隔を存して、傾斜ローラ60Dが回転自在に軸支され、該傾斜ローラ60Dの表面が副Y軸レール54の斜め下部に、圧縮ばね66の弾発力により圧接している。前記キャリッジ10と副Y軸レール52,54間のガタは、前記傾斜ローラ60Dの弾接力により除去される。
【0021】
更に、副Y軸レール52,54に密着する横向きローラ60A,60Bと傾斜ローラ60C,60Dにより、キャリッジ10は、Y軸に対して垂直な平面内における回転方向の変位が阻止され、副Y軸レール52,54の長手方向に沿って、高精度に案内されるように構成されている。キャリッジ10の上位支持部10bは、図2中、紙面垂直方向に所定の長さを有し、主Y軸レール8Aの上方にこれに対して水平に延びている。前記上位支持部10bの下面のY軸方向の両端近傍位置には、それぞれダンパを備えたローラ支持具70が取り付けられこれに縦向きの補助ローラ66が回転自在に軸支されている。
【0022】
前記補助ローラ66は、主Y軸レール8Aの上面にその全長にわたって形成されたローラ案内面8aに載置され、上位支持部10bの重量によって、該ローラ案内面8aに圧接している。前記ローラ60A,60B,60C,60Dは、それぞれ、回転走行方向が副Y軸レール52,54の長手方向と同一となるように向きが設定され、補助ローラ66は、回転走行方向がローラ案内面8aの長手方向と同一となるようにその向きがそれぞれ設定されている。
【0023】
上記した構成において、キャリッジ10がY軸レール8に沿って移動すると、キャリッジ10の下位支持部10aは、副Y軸レール52,54に規制されて、Y軸方向に精確に案内されるとともに、補助ローラ66は、キャリッジ10の上位支持部10bの重量をローラ支持面8aを支点として支えながら、主Y軸レール8Aに沿って移動する。これにより、キャリッジ10の上位支持部10bは、これに搭載した重量物の重さによって振動することなく、スムーズに主Y軸レール8Aに沿って走行する。尚、図2中、68はキャリッジ10の移動量をディジタル信号に変換するエンコーダである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】キャリッジの外観図である。
【図2】本発明に係る記録装置のキャリッジ案内部の断面説明図である。
【図3】本発明に係る記録装置の全体説明図である。
【図4】調整機構の説明図である。
【図5】調整機構の説明図である。
【図6】主Y軸レールの断面図である。
【図7】調整部材の説明図である。
【図8】本発明に係る記録装置の一部の正面図である。
【符号の説明】
【0025】
2 記録装置
4 台板
6 脚台
8 Y軸レール
10 キャリッジ
10a 下位支持部
10b 上位支持部
12 ヘッド部
14 加圧ローラ
16 駆動ローラ
18 プラテン
20 サブタンク
21 用紙
22 基盤
24 ケーブル
26 溝
26a T溝部
26b 凹溝部
28 溝
28a T溝部
28b 凹溝部
30 溝
32 調整部材
34 ねじ挿入孔
36 ねじ挿入孔
38 ボルト
40 板ナット
42 コイルスプリング
44 板材
46 円孔
48 円柱体
49 円柱体
50 円孔
52 副Y軸レール
54 副Y軸レール
55 ねじ
56 止めねじ
58 止めねじ
60A ローラ
60B ローラ
60C ローラ
60D ローラ
62 支持アーム
64 軸
66 補助ローラ
68 エンコーダ
70 ローラ支持具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下位支持部とY軸レールの上面に延びる上位支持部とを有し下位支持部に印字用のヘッド部を取り付け上位支持部に印字に必要な重量物を取り付けたキャリッジの下位支持部側を前記Y軸レールに走行可能に連結し、前記キャリッジを前記Y軸レールに沿ってY軸方向に移動する一方、印字媒体を前記キャリッジに対してX軸方向に相対移動させ、該印字媒体に印字を行うようにした記録装置において、前記Y軸レールの上面にその長手方向に沿ってローラ走行面を設け、前記キャリッジの上位支持部の下面に1個又は複数個の補助ローラを回転自在に取り付け、該補助ローラを前記Y軸レールの上面のローラ走行面に載置し、前記上位支持部側の重量が前記補助ローラを介して前記Y軸レールのローラ走行面にかかるようにしたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記補助ローラの支持部にダンパ機構を設けたことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−90587(P2007−90587A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281186(P2005−281186)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000238566)武藤工業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】