説明

記録装置

【課題】中間転写ベルト12に残留したインク受容性粒子16を除去する除去性能を向上させる。
【解決手段】転写後の中間転写ベルト12の表面には、粘着性低減液付与装置24から粘着性低減液付与装置24が吐出され、中間転写ベルト12に残留したインク受容性粒子16に粘着性低減液24Dが付与される。これにより、インク受容性粒子16の中間転写ベルト12への付着力が低下し、インク受容性粒子16が中間転写ベルト12から剥離しやすくなる。次に、クリーニング装置28が、粘着性低減液24Dの付与によって中間転写ベルト12から剥離しやすくなったインク受容性粒子16を除去する。このため、中間転写ベルト12に残留したインク受容性粒子16を除去する除去性能が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置としては、特許文献1に開示される記録装置が公知である。特許文献1に開示される記録装置では、中間転写体21上に予めインクにより溶解または膨潤可能でかつ該インクの粘度を上昇させることができる材料11を形成する工程と、爾後インクを該材料に接触させ中間転写体上に画像を形成する工程と、ついで前記画像を記録体上に転写する工程と、転写する工程の後、インクと接触することで増粘する性質を有する液体を中間転写体上に残存した材料に付与し、中間転写体上に残存する材料を全て付着して除去する工程により、画像記録が行われる。
【特許文献1】特開2001−010224号公報(図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、中間転写体に残留した液体受容性粒子を除去する除去性能を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の請求項1に係る記録装置は、中間転写体と、前記中間転写体の表面に液体を受容する液体受容性粒子を供給する粒子供給装置と、前記粒子供給装置によって供給された前記液体受容性粒子に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドによって液体が吐出された前記液体受容性粒子を記録媒体に転写する転写部材と、前記転写部材によって前記液体受容性粒子が転写された後に前記中間転写体の表面に残留する前記液体受容性粒子にその粘着性を低減させる低減物質を付与する低減物質付与手段と、前記低減物質付与手段によって低減物質が付与された前記液体受容性粒子を除去する除去手段と、を備える。
【0005】
本発明の請求項2に係る記録装置は、中間転写体と、前記中間転写体の表面に液体を受容する液体受容性粒子を供給する粒子供給装置と、前記粒子供給装置によって供給された前記液体受容性粒子に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドによって液体が吐出された前記液体受容性粒子を記録媒体に転写する転写部材と、前記転写部材によって前記液体受容性粒子が転写された後に前記中間転写体の表面に残留する前記液体受容性粒子にその粘着性を低減させる低減物質を付与すると共に該液体受容性粒子を除去する除去手段と、を備える。
【0006】
本発明の請求項3に係る記録装置は、請求項2の構成において、前記除去手段は、前記液体受容性粒子が残留する前記中間転写体の表面を払拭する払拭部材と、前記払拭部材が前記中間転写体を払拭する前に前記払拭部材へ前記低減物質を付与する低減物質付与手段と、を有する。
【0007】
本発明の請求項4に係る記録装置は、請求項2の構成において、前記除去手段は、予め前記低減物質が付与され、前記液体受容性粒子が残留する前記中間転写体の表面を払拭する払拭部材を有する。
【0008】
本発明の請求項5に係る記録装置は、請求項1〜4のいずれか1項の構成において、前記低減物質が、前記液体受容性粒子に架橋構造を形成させる物質である。
【0009】
本発明の請求項6に係る記録装置は、請求項5の構成において、前記液体受容性粒子がアニオン性極性基を有する有機樹脂を含有し、前記低減物質がカチオン性物質を含有する。
【0010】
本発明の請求項7に係る記録装置は、請求項6の構成において、前記アニオン性極性基がカルボン酸基であり、前記カチオン性物質が多価金属塩および多価アミン塩から選択される少なくとも1種である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の構成によれば、中間転写体に残留する液体受容性粒子にその粘着性を低減させる低減物質を付与しない場合に比べ、中間転写体に残留した液体受容性粒子を除去する除去性能が向上する。
【0012】
本発明の請求項2の構成によれば、中間転写体に残留する液体受容性粒子にその粘着性を低減させる低減物質を付与しない場合に比べ、中間転写体に残留した液体受容性粒子を除去する除去性能が向上する。
【0013】
本発明の請求項3の構成によれば、払拭部材が中間転写体を払拭する前に払拭部材へ低減物質を付与する低減物質付与手段を有さない場合に比較して、中間転写体に残留した液体受容性粒子を除去する除去性能が向上する。
【0014】
本発明の請求項4の構成によれば、予め低減物質が付与され、液体受容性粒子が残留する中間転写体の表面を払拭する払拭部材を有さない場合と比較して、中間転写体に残留した液体受容性粒子を除去する除去性能が向上する。
【0015】
本発明の請求項5の構成によれば、低減物質が架橋構造を形成させる物質でない場合に比べ、中間転写体に残留した液体受容性粒子を除去する除去性能が向上する。
【0016】
本発明の請求項6の構成によれば、液体受容性粒子がアニオン性極性基を有する有機樹脂を含有する構成において、低減物質がカチオン性物質を含有しない場合に比べ、中間転写体に残留した液体受容性粒子を除去する除去性能が向上する。
【0017】
本発明の請求項7の構成によれば、アニオン性極性基がカルボン酸基である構成において、カチオン性物質が多価金属塩および多価アミン塩から選択される少なくとも1種でない場合に比べ、中間転写体に残留した液体受容性粒子を除去する除去性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
(本実施形態に係る記録装置の全体構成)
まず、本実施形態に係る記録装置の全体構成を説明する。図1は、本実施形態に係る記録装置の全体構成を示す概略図である。
【0019】
本実施形態に係る記録装置10は、図1に示すように、中間転写体の一例として、一方(図1におけるA方向)へ回転する(循環移動する)中間転写ベルト12を備えている。
【0020】
この中間転写ベルト12の外周側には、中間転写ベルト12の表面を帯電させる帯電装置14が、中間転写ベルト12の外周側に配置されている。
【0021】
帯電装置14から見て中間転写ベルト12の回転方向下流側には、中間転写体の表面に液体受容性粒子を供給する粒子供給装置の一例として、中間転写ベルト12の表面にインク受容性粒子16を供給する粒子供給装置18が、中間転写ベルト12の外周側に配置されている。
【0022】
この粒子供給装置18から見て中間転写ベルト12の回転方向下流側には、粒子供給装置によって供給された液体受容性粒子に液体を吐出する液体吐出ヘッドの一例として、粒子供給装置18によって供給されたインク受容性粒子16にインク滴を吐出して画像を形成するインクジェット記録ヘッド20が、中間転写ベルト12の外周側に配置されている。
【0023】
インクジェット記録ヘッド20から見て中間転写ベルト12の回転方向下流側には、液体吐出ヘッドによって液体が吐出された液体受容性粒子を記録媒体に転写する転写部材の一例として、記録媒体Pを中間転写ベルト12と重ね合わせて圧力等を加えることにより、インク滴が吐出されたインク受容性粒子16を記録媒体Pに転写する転写部材22が配置されている。
【0024】
この転写部材22から見て中間転写ベルト12の回転方向下流側には、転写部材によって液体受容性粒子が転写された後に中間転写体の表面に残留する液体受容性粒子にその粘着性を低減させる低減物質を付与する低減物質付与手段の一例として、転写部材22によってインク受容性粒子16が転写された後に中間転写ベルト12の表面に残留するインク受容性粒子16にその粘着性を低減させる粘着性低減液24Dを付与する粘着性低減液付与装置24が設けられている。
【0025】
この粘着性低減液付与装置24から見て中間転写ベルト12の回転方向下流側には、低減物質付与手段によって低減物質が付与された液体受容性粒子を除去する除去手段の一例として、粘着性低減液付与装置24によって粘着性低減液24Dが付与されたインク受容性粒子16を除去するクリーニング装置28が、中間転写ベルト12の外周側に配置されている。
【0026】
また、本実施形態に係る記録装置10は、記録媒体Pを収容する記録媒体収容部(図示省略)と、この記録媒体収容部に収容された記録媒体Pを転写部材22に搬送する搬送部(図示省略)と、転写部材22によって記録媒体Pに転写されたインク受容性粒子16を記録媒体Pに定着させる定着装置64と、この定着装置64によってインク受容性粒子16が定着された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部(図示省略)とを備えている。
【0027】
定着装置64は、加熱源を内蔵する加熱ロール64Aと、加熱ロール64Aに対して対向して設けられる加圧ロール64Bとを備えている。なお、記録装置10は、定着装置64を有しない構成であってもよい。
【0028】
また、記録媒体Pとしては、浸透媒体(例えば、普通紙や、インクジェットコート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用することができる。また、記録媒体Pは、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品であってもよい。
【0029】
(中間転写ベルトの構成)
次に、中間転写ベルト12の構成について説明する。
【0030】
中間転写ベルト12は、環状に形成されており、例えば、無端ベルトで構成されている。中間転写ベルト12は、例えば、厚さ100μmのポリイミドフィルムのベース層の上に厚さ400μmのエチレンプロピレンゴム(EPDM)の表面層が形成されており、回転駆動する駆動ロール30及び従動回転する従動ロール34、35及び後述する従動加圧ロール22Bに巻き掛けられ、回転するようになっている。
【0031】
なお、中間転写ベルト12の材料としては、上記の材料に限られず、ゴム材料(ウレタン、CR、NBR)、樹脂材料(PET、ETFE、PAI、PFA、PVDF) などを使用してもよく、できる限り低表面エネルギーの材料を用いるのが好ましい。
【0032】
また、中間転写ベルト12は、インク受容性粒子16が中間転写ベルト12から離型しやすいように、界面活性剤が含浸された弾性体を用いたり、その表面に離型層を形成したりする構成であってもよい(特開2000−355125・特開平11−320865参照)。
【0033】
また、中間転写体としては、中間転写ベルト12に限られず、中間転写ドラムであっても良い。
【0034】
(帯電装置の構成)
次に、帯電装置14の構成について説明する。
【0035】
帯電装置14は、インク受容性粒子16が持つ電荷と逆帯電の電荷を中間転写ベルト12表面に付与することにより、中間転写ベルト12表面を正の電荷に帯電させる構成となっている。
【0036】
本実施形態においては、帯電装置14を用いて、帯電装置14とで中間転写ベルト12を挟んで配置されている従動ロール34との間に電圧を印加し、中間転写ベルト12表面を帯電させる構成としている。
【0037】
なお、粒子供給装置18の供給ロール18Aと中間転写ベルト12表面とで形成しうる電界による静電力により、インク受容性粒子16が中間転写ベルト12表面に供給/吸着可能な電位を形成すればよい。
【0038】
帯電装置14は、例えば、ステンレスを材料とする棒状の外周面に、導電性付与材を分散させた弾性層(発泡ウレタン樹脂)を形成し、体積抵抗率10Ω・cm以上10Ω・cm以下程度に調整したロール形状の部材とする。さらに、弾性層の表面を厚さ5μm以上100μm以下の撥水撥油性の被覆層(例えば四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)で構成)で被覆する。
【0039】
帯電装置14には高圧電源が接続され、従動ロール34はグランドに電気的に接続されている。帯電装置14は、従動ロール34との間で中間転写ベルト12を挟みつつ従動し、接触位置では、接地された従動ロール34との間に所定の電位差が生じるため、中間転写ベルト12の表面に電荷を与えることができる。
【0040】
ここでは帯電装置14により中間転写ベルト12表面に例えば表面電位が1kvとなるように電圧を印加し、中間転写ベルト12表面を帯電させる。なお、帯電装置14は、コロトロン等の非接触帯電装置で構成されていてもよい。
【0041】
(粒子供給装置の構成)
次に、粒子供給装置18の構成について説明する。
【0042】
粒子供給装置18は、中間転写ベルト12の表面にインク受容性粒子16を供給し、中間転写ベルト12表面にインク受容性粒子層16Aを形成させる装置である。
【0043】
粒子供給装置18には、中間転写ベルト12と対向する部分に供給ロール18Aが設けられており、さらに、供給ロール18Aの表面にインク受容性粒子16を押圧する帯電ブレード18Bが設けられている。この帯電ブレード18Bは、供給ロール18Aの表面に供給するインク受容性粒子16の層厚を規制する機能も併せ持つようになっている。
【0044】
供給ロール18A(導電性ロール)にインク受容性粒子16を供給し、帯電ブレード18B(導電性ブレード)でインク受容性粒子層16Aを規制するとともに中間転写ベルト12表面の電荷と逆極性である負に帯電する。
【0045】
これにより、粒子供給装置18内のインク受容性粒子16は、帯電ブレード18Bによって帯電される静電力により、中間転写ベルト12へ供給される量(すなわち、中間転写ベルト12上に層状に供給されたときの層厚)が調整される。
【0046】
この供給ロール18Aには、アルミ製の中実ロール、帯電ブレード18Bには、圧力をかけるためにウレタンゴムが貼り付けられた金属板(SUSなど)が用いられる。
【0047】
また、記録媒体Pの表面に移動せずに供給ロール18Aの表面に残留した残留粒子を、供給ロール18Aと従動回転しながら清掃する清掃ロール18Cが供給ロール18Aに隣接して設けられている。
【0048】
(インクジェット記録ヘッドの構成)
次に、インクジェット記録ヘッド20の構成について説明する。
【0049】
インクジェット記録ヘッド20は、ノズルからイエロー色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド20Y、ノズルからマゼンタ色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド20M、ノズルからシアン色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド20C及びノズルから黒色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド20K、透明な液滴を吐出するインクジェット記録ヘッド20Fを含んで構成されている。インクジェット記録ヘッド20Fは、中間転写ベルト12上に形成されたインク受容性粒子16のうち、前記インクジェット記録ヘッド20Y,20M,20C,20Kによってインク滴を吐出せず、画像が形成されない非画像部に透明な液滴を吐出させ、非画像部のインク受容性粒子層16に粘着性を付与する。これらのインクジェット記録ヘッド20は、圧電式(ピエゾ)、サーマル式などにより駆動される。
【0050】
インクジェット記録ヘッド20は、記録幅が被記録領域以上とされると共に中間転写ベルト12の搬送方向と交差する方向に移動せずに中間転写ベルト12上のインク受容性粒子16に液滴を吐出して画像を記録する記録ヘッドでもよく、また、中間転写ベルト12の搬送方向と交差する方向に移動しながら中間転写ベルト12上のインク受容性粒子16に液滴を吐出して画像を記録する記録ヘッドであってもよい。
【0051】
また、インクジェット記録ヘッド20が吐出するインクは、水性インク、油性インク共に使用することができるが、環境性の点で水性インクが好適に使用される。水性インクは、色材等の記録材に加え、インク溶媒(例えば、水、水溶性有機溶媒)を含んでいる。また、必要に応じて、その他、添加剤を含んでいてもよい。
【0052】
(転写部材の構成)
次に、転写部材22の構成について説明する。
【0053】
転写部材22は、中間転写ベルト12に対向して配置され中間転写ベルト12とで記録媒体Pを挟んで記録媒体Pを搬送する搬送ロール22Aと、中間転写ベルト12の内周から搬送ロール22A側へ加圧する従動加圧ロール22Bとを備えて構成されている。
【0054】
搬送ロール22A及び従動加圧ロール22Bには、例えば、アルミコアの外表面にシリコーンゴムを被覆し、更にその上をPFAチューブにて被覆されたロールが用いられる。
【0055】
転写部材22では、従動加圧ロール22Bが搬送ロール22A側へ圧力を加えた状態で記録媒体Pを中間転写ベルト12と搬送ロール22Aとの間に挟んで搬送することで、インク受容性粒子層16Aを記録媒体Pへ付着させる。これによって、中間転写ベルト12表面のインク受容性粒子層16Aは、記録媒体Pへと転写される。
【0056】
なお、搬送ロール22Aは、加熱源を内蔵する加熱ロールで構成されていてもよい。この構成では、加熱ロールたる搬送ロール22Aが、中間転写ベルト12表面のインク受容性粒子層16Aに熱を加えることによってインク受容性粒子層16Aの粘度を増加させ、インク受容性粒子層16Aを記録媒体Pへ付着させる。
【0057】
(インク受容性粒子)
次に、インク受容性粒子16について説明する。
【0058】
本実施形態におけるインク受容性粒子16は、インクがインク受容性粒子16と接触したとき、インク成分を受容するものである。ここで、インク受容性とは、インク成分の少なくとも一部(少なくとも液体成分)を保持することを示す。
【0059】
これにより、インク受容性粒子16は、種々のインクを受容可能であるとともに、吸液性を向上させたインク受容性粒子となる。
【0060】
インク受容性粒子16は、後述の粘着性低減液24Dによって、その粘着性が低減させる。なお、特に限定されるものではないが、インク受容性粒子16の粘着性が低減される態様としては、粘着性低減液24Dによってインク受容性粒子16に架橋構造が形成される態様が挙げられる。
【0061】
インク受容性粒子16に架橋構造を形成させる観点から、本実施形態におけるインク受容性粒子16は、少なくとも下記(1)の要件を満たす有機樹脂を含有し、さらに、下記(1)〜(3)の要件を満たす有機樹脂を含有することが好ましい。
(1)極性基を有する
(2)該極性基として少なくとも中和された極性基を有する(即ち、上記(1)の極性基の内の少なくとも一部が中和されている)
(3)全単量体成分に対する極性基を有する単量体成分の比率が10mol%以上90mol%以下である
上記(1)の極性基がアニオン性極性基である場合には、例えば、後述の粘着性低減液24Dとしてカチオン性物質を含有する粘着性低減液体がインク受容性粒子16に作用し、2つ以上のアニオン性極性基がカチオン性物質から供給されるカチオンによってイオン架橋構造を形成すると推測される。一方、上記(1)の極性基がカチオン性極性基である場合には、例えば、後述の粘着性低減液24Dとしてアニオン性物質を含有する粘着性低減液体がインク受容性粒子16に作用し、2つ以上のカチオン性極性基がアニオン性物質から供給されるアニオンによってイオン架橋構造を形成すると推測される。なお、極性基は極性単量体に含まれている。
【0062】
また、有機樹脂において極性基を中和させる際には、中和剤が使用される。該中和剤としては、アルカリ性の中和剤として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。
【0063】
一方、極性基を含む極性単量体とは、例えば、極性基として、エチレンオキサイド基、カルボン酸基、スルホン酸基、置換若しくは未置換のアミノ基、アンモニウム基、水酸基を含む単量体である。
【0064】
例えば、アニオン性極性基としては、カルボン酸基あることが望ましい。
【0065】
極性基を含む極性単量体とは、例えば、極性基として、エチレンオキサイド基、カルボン酸、スルホン酸、置換若しくは未置換のアミノ基、又は水酸基を含む単量体である。例えば、正帯電性付与の場合、例えば(置換)アミノ基、(置換)ピリジン基を含む単量体であることが望ましい。負帯電付与の場合、カルボン酸、スルホン酸等を含む有機酸の単量体であることが望ましい。特にカルボン酸は、未中和の場合(塩構造を持たない場合)、空気中の湿度では解離し難く、インク(弱アルカリ性の液体)で解離することから、保存安定性に有利である。また、カルボン酸は、インク中のイオンで架橋(擬似架橋)し、系全体(インク+インク受容性粒子)が固定化されて易くなり、定着性に有利である。
【0066】
なお、前記(2)に記載の通り中和された極性基を有することにより、インクがインク受容性粒子と接触したときに、塩を形成していた極性基が解離し、逆極性イオンと架橋構造を創りやすくなる。
【0067】
また、前記(3)に記載の通り、インク受容性粒子に含有される前記有機樹脂において、全単量体成分に対する極性基を有する単量体成分の比率が10mol%以上であることにより、インク受容性粒子の吸液能力を阻害することなく、画像形成できる。
【0068】
上記全単量体成分に対する極性基を有する単量体成分(以下、「極性単量体」とも称す)の比率は、更に20mol%以上90mol%以下であることがより好ましい。
【0069】
なお、極性単量体の比率は、次のようにして求める。まず質量分析、NMR(核磁気共鳴),IR(赤外吸収スペクトル)などの分析手法から有機成分の構成を特定する。その後、JIS K0070またはJIS K2501に準拠して、有機成分の酸価、塩基価を測定する。有機成分の構成、および、酸価/塩基価から極性単量体の比率を計算で求めることができる。以下同様である。
【0070】
また、極性基の内の少なくとも一部が中和されているか否かは、中和されている極性基の全極性単量体(極性基を有する単量体)に対する比率を求めることにより確認される。具体的には、まず、極性基の未中和部分に関しては、粒子を水または有機溶剤に溶解または分散させ、アルカリを用いて中和滴定することで、極性官能基の濃度が定量される。
【0071】
(粘着性低減液付与装置の構成)
次に、粘着性低減液付与装置24の構成について説明する。
【0072】
粘着性低減液付与装置24は、粘着性低減液24Dを中間転写ベルト12へ向けて吐出する吐出ヘッドで構成されている。
【0073】
なお、粘着性低減液付与装置24は、吐出ヘッドに限られず、粘着性低減液24Dを中間転写ベルト12に付与できるものであればよい。粘着性低減液付与装置24としては、中間転写ベルト12に接触する接触式のものとして、例えば、粘着性低減液24Dを供給する供給ロール及び粘着性低減液24Dを供給する供給ブレードなどがある。
【0074】
また、中間転写ベルト12に接触しない非接触式のものとして、例えば、吐出ヘッドのほかに、スプレー装置、超音波噴霧器などがある。
【0075】
(粘着性低減液24D)
次に、粘着性低減液24Dについて説明する。
【0076】
粘着性低減液24Dは、インク受容性粒子16の粘着性を低減するものである。具体的には、インク受容性粒子16の中間転写ベルト12との界面側に架橋構造を形成させることにより、インク受容性粒子16の粘着性を低減し、インク受容性粒子16の中間転写ベルト12への付着力を低減する。
【0077】
インク受容性粒子16がアニオン性極性基を備える有機樹脂を含有する場合には、カチオン性物質を含有する粘着性低減液24Dが用いられる。これにより、上述のように、カチオン性物質を含有する粘着性低減液24Dがインク受容性粒子16に作用し、2つ以上のアニオン性極性基がカチオン性物質から供給されるカチオンによってイオン架橋構造を形成すると推測される。
【0078】
また、インク受容性粒子16がカチオン性極性基を備える有機樹脂を含有する場合には、アニオン性物質を含有する粘着性低減液24Dが用いられる。これにより、上述のように、アニオン性物質を含有する粘着性低減液24Dがインク受容性粒子16に作用し、2つ以上のカチオン性極性基がアニオン性物質から供給されるアニオンによってイオン架橋構造を形成すると推測される。
【0079】
粘着性低減液24Dに含有されるカチオン性物質としては、例えば、多価金属塩や多価アミン塩等が挙げられ、上記アニオン性物質としては、例えば、多価アニオンの塩が挙げられる。
【0080】
多価アミン塩としては、例えば、有機アミンとして、2級アミン、3級アミン、4級アミンの塩などが挙げられる。
【0081】
また、本実施形態における粘着性低減液24Dには、インク受容性粒子16の粘着性を低減するための物質以外にも添加剤を添加してもよい。該添加剤としては、例えば、界面活性剤が用いられる。
【0082】
界面活性剤としては、例えば、粘着性低減液24Dに含有されるカチオン性物質又はアニオン性物質と同極性の界面活性剤が用いられる。
【0083】
従って、粘着性低減液24Dにカチオン性物質が含有される場合には、カチオン性界面活性剤が用いられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムなどが用いられる。
【0084】
粘着性低減液24Dにアニオン性物質が含有される場合には、アニオン性界面活性剤が用いられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩およびスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などが用いられる。
【0085】
なお、多価のイオンではなく、1価のイオンであっても、粘着性低減のためのイオン架橋構造を形成することは可能である。
【0086】
(クリーニング装置28の構成)
クリーニング装置28は、中間転写ベルト12に接触してインク受容性粒子16を除去する接触部材の一例として、中間転写ベルト12に残留したインク受容性粒子16をかき取るクリーニングブレード28Aを備えている。
【0087】
クリーニングブレード28Aは、例えば、ポリウレタンなどのゴム材料でできた板状のブレードで構成されている。クリーニングブレード28Aの先端部が中間転写ベルト12に接触し、中間転写ベルト12が回転することでクリーニングブレード28Aが中間転写ベルト12に対して摩擦してインク受容性粒子16がかき取られる。なお、このとき、中間転写ベルト12の表面に付着した余剰の粘着性低減液24Dや粒子以外の異物(記録媒体Pの粉等)も、インク受容性粒子16と共にかき取られて除去される。
【0088】
クリーニングブレード28Aは、常時に中間転写ベルト12に接触している構成に限られず、中間転写ベルト12に対して接離可能とされる構成であってもよい。この構成では、例えば、画像記録された記録媒体Pの枚数に応じて、定期的にクリーニングブレード28Aを中間転写ベルト12に接触させて、インク受容性粒子16を除去する構成としてもよい。なお、クリーニングブレード28Aが中間転写ベルト12から離間して、除去動作を行わない場合には、粘着性低減液付与装置24の粘着性低減液24Dの付与も停止させることが望ましい。
【0089】
また、クリーニング装置28は、クリーニングブレード28Aがかき取ったインク受容性粒子16を収容する収容部28Bを備えている。
【0090】
収容部28Bは、上部が開放された箱体で構成され、クリーニングブレード28Aがかき取って落下したインク受容性粒子16及び粘着性低減液24Dを受ける受け部となっている。
【0091】
(本実施形態に係る記録装置の作用)
次に、本実施形態に係る記録装置の作用を説明する。
【0092】
本実施形態に係る記録装置10では、まず、中間転写ベルト12が駆動ロール30の駆動力によって回転し、粒子供給装置18の供給ロール18Aから中間転写ベルト12の表面にインク受容性粒子16が供給され、インク受容性粒子層16Aが形成される。
【0093】
次に、インク受容性粒子層16Aは、各色のインクジェット記録ヘッド20に対向する位置へ搬送され、インクジェット記録ヘッド20K、20C、20M、20Y、20Fから画像情報に基づいた各色のインク滴が吐出される。これにより、インク受容性粒子層16Aがインクを吸収し、中間転写ベルト12表面にカラー画像が形成される。
【0094】
次に、インク受容性粒子層16Aは、転写部材22によって記録媒体Pに加圧転写される。このとき、インクを受容した粒子は、変形して記録媒体Pに粘着する。
【0095】
記録媒体Pに転写されたインク受容性粒子層16Aは、定着装置64により、記録媒体Pに加熱加圧定着されて、均一な層に形成される。
【0096】
ここで、転写部材22によってインク受容性粒子16が転写された後の中間転写ベルト12の表面には、インク受容性粒子16が転写されずに残留する場合がある。
【0097】
本実施形態では、転写後の中間転写ベルト12の表面には、粘着性低減液付与装置24から粘着性低減液付与装置24が吐出され、中間転写ベルト12に残留したインク受容性粒子16に粘着性低減液24Dが付与される。
【0098】
これにより、インク受容性粒子16の中間転写ベルト12への付着力が低下し、インク受容性粒子16が中間転写ベルト12から剥離しやすくなる。
【0099】
次に、クリーニング装置28が、粘着性低減液24Dの付与によって中間転写ベルト12から剥離しやすくなったインク受容性粒子16を除去する。
【0100】
なお、中間転写ベルト12に残留したインク受容性粒子16を除去する除去手段としては、上記のクリーニング装置28に限られず、以下に示すクリーニング装置を用いてもよい。
【0101】
(クリーニング装置の変形例)
変形例に係るクリーニング装置38は、図2に示すように、中間転写ベルト12の表面を払拭してインク受容性粒子16を除去する払拭部材の一例としてのクリーニングウェブ38Aを備えている。
【0102】
クリーニングウェブ38Aとしては、例えば、ポリエステルやレーヨン、ナイロンなどの繊維で構成された不織布・織物・編物などの布体が用いられる。この中でも、粘着性低減液24Dを吸収・保持可能で、拭取り性良好なものが好適である。
【0103】
クリーニングウェブ38Aの一端部には、クリーニングウェブ38Aを巻き出す巻出部38Bが配置され、クリーニングウェブ38Aの他端部には、クリーニングウェブ38Aを巻き取る巻取部38Cが配置されている。
【0104】
クリーニングウェブ38Aの一端部は、巻出部38Bに巻き掛けられ、クリーニングウェブ38Aの他端部は、巻取部38Cに巻き掛けられており、巻出部38Bがクリーニングウェブ38Aを巻き出すと共に巻取部38Cがクリーニングウェブ38Aを巻き取ることにより、クリーニングウェブ38Aが巻出部38Bから巻取部38Cへ移動する。
【0105】
巻出部38Bから巻取部38Cへ移動するクリーニングウェブ38Aの移動経路上には、クリーニングウェブ38Aが外周一部に巻き掛けられる巻掛ロール38Dが配置されている。
【0106】
本変形例では、巻掛ロール38Dが、巻出部38Bと中間転写ベルト12との間及び中間転写ベルト12と巻取部38Cとの間に配置されており、巻掛ロール38Dが複数設けられている。
【0107】
巻掛ロール38Dは、巻き掛けられるクリーニングウェブ38Aに張力を付与すると共にクリーニングウェブ38Aの移動経路を規定する。これにより、クリーニングウェブ38Aの中間転写ベルト12への接触位置や接触量が規定される。
【0108】
クリーニングウェブ38Aが中間転写ベルト12に接触する接触位置よりも上流側には、クリーニングウェブ38Aに粘着性低減液24Dを付与する粘着性低減液付与装置24が配置されている。
【0109】
本変形例においては、粘着性低減液付与装置24は、中間転写ベルト12に粘着性低減液24Dを付与する装置としてではなく、クリーニングウェブ38Aに粘着性低減液24Dを付与する装置として用いられる。
【0110】
これにより、粘着性低減液24Dが付与されたクリーニングウェブ38Aが、中間転写ベルト12に対して相対移動して中間転写ベルト12を払拭する。すなわち、クリーニングウェブ38Aが、中間転写ベルト12に残留したインク受容性粒子16に粘着性低減液24Dを付与すると共にインク受容性粒子16の除去を行う。
【0111】
なお、クリーニングウェブ38Aは、間欠送りや微小送りにしてもよく、このようにすることにより、粘着性低減液24Dの使用効率が向上する。
【0112】
この変形例は、巻出部38Bから巻き出されたクリーニングウェブ38Aに粘着性低減液24Dを付与する構成であるが、図3に示すように、装置内で粘着性低減液24Dを付与するのではなく、予め粘着性低減物質を含有させたクリーニングウェブ38Aを用いる構成であってもよい。
【0113】
予め粘着性低減物質を含有させたクリーニングウェブ38Aは、粘着性低減液体をクリーニングウェブ38Aに含浸させた後に自然乾燥や強制乾燥等により作成される。
【0114】
クリーニングウェブ38Aが含有する粘着性低減物質は、空気中に含まれる水分及びインク受容性粒子16が持つ水分により、イオン化可能となる。また、図3に示すように、イオン化を促進させるために、クリーニングウェブ38Aに加湿する加湿装置39を用いて、クリーニングウェブ38Aを湿らせても良い。加湿装置39としては、噴霧装置や液体吐出用ヘッドを用いても良い。
【0115】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】図2は、変形例に係るクリーニング装置の構成を示す概略図である。
【図3】図3は、変形例に係るクリーニング装置の構成において、予め粘着性低減物質を含有させたクリーニングウェブを用いた構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0117】
10 記録装置
12 中間転写ベルト(中間転写体)
16 インク受容性粒子(液体受容性粒子)
18 粒子供給装置
20 インクジェット記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
22 転写部材
24 粘着性低減液付与装置(低減物質付与手段)
28 クリーニング装置(除去手段)
38A クリーニングウェブ(払拭部材)
38 クリーニング装置(除去手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写体と、
前記中間転写体の表面に液体を受容する液体受容性粒子を供給する粒子供給装置と、
前記粒子供給装置によって供給された前記液体受容性粒子に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドによって液体が吐出された前記液体受容性粒子を記録媒体に転写する転写部材と、
前記転写部材によって前記液体受容性粒子が転写された後に前記中間転写体の表面に残留する前記液体受容性粒子にその粘着性を低減させる低減物質を付与する低減物質付与手段と、
前記低減物質付与手段によって低減物質が付与された前記液体受容性粒子を除去する除去手段と、
を備える記録装置。
【請求項2】
中間転写体と、
前記中間転写体の表面に液体を受容する液体受容性粒子を供給する粒子供給装置と、
前記粒子供給装置によって供給された前記液体受容性粒子に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドによって液体が吐出された前記液体受容性粒子を記録媒体に転写する転写部材と、
前記転写部材によって前記液体受容性粒子が転写された後に前記中間転写体の表面に残留する前記液体受容性粒子にその粘着性を低減させる低減物質を付与すると共に該液体受容性粒子を除去する除去手段と、
を備える記録装置。
【請求項3】
前記除去手段は、
前記液体受容性粒子が残留する前記中間転写体の表面を払拭する払拭部材と、
前記払拭部材が前記中間転写体を払拭する前に前記払拭部材へ前記低減物質を付与する低減物質付与手段と、を有する請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記除去手段は、
予め前記低減物質が付与され、前記液体受容性粒子が残留する前記中間転写体の表面を払拭する払拭部材を有する請求項2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記低減物質が、前記液体受容性粒子に架橋構造を形成させる物質である請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記液体受容性粒子がアニオン性極性基を有する有機樹脂を含有し、
前記低減物質がカチオン性物質を含有する請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記アニオン性極性基がカルボン酸基であり、
前記カチオン性物質が多価金属塩および多価アミン塩から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−100012(P2010−100012A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275820(P2008−275820)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】