説明

記録装置

【課題】 記録ヘッドの移動による大きな振動を防止することができる記録装置を提供すること。
【解決手段】 記録装置(1)は、被記録媒体(P)を支持する媒体支持部(48)と、該媒体支持部(48)と対向して設けられ、該媒体支持部(48)に支持された被記録媒体(P)に対してインクを吐出することにより記録を実行する記録ヘッド(44、45)を有し、前記媒体支持部(48)と前記記録ヘッド(44、45)とが対向する方向Zを支点軸(42)として一の方向へ回転する回転ヘッドユニット41と、を備え、該回転ヘッドユニット41の重心の位置は前記支点軸(42)上に位置する構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体を支持する媒体支持部と、該媒体支持部と対向して設けられ、該媒体支持部に支持された被記録媒体に対してインクを吐出することにより記録を実行する記録ヘッドと、を備えた記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ワイヤドットプリンター、レーザープリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1および特許文献2に示す如く、記録装置であるプリンターは、記録ヘッドと、支柱と、支軸とを備えていた。このうち、前記記録ヘッドは、用紙に対してインクを吐出することにより記録を実行することができるように構成されていた。また、前記支柱は、前記支軸を支点に揺動することができるように設けられると共に、自由端側に前記記録ヘッドを備えていた。
【0003】
図14に示すのは、従来技術のプリンターの一例を示す概略平面図である。
図14に示す如く、従来技術のプリンター200は、記録ヘッド201と、前記支柱としてのアーム部202と、前記支軸としての軸部203とを備えていた。従って、記録ヘッド201が用紙204の幅方向Xへ移動する際、軸部203を支点に揺動することができた。そして、記録ヘッド201は揺動しながら、送り方向Yに送られる用紙204に対して記録を実行することができた。言い換えると、記録ヘッド201は、自動車の窓のワイパーのような往復移動をする構成だった。これにより、幅方向Xにおける減速、加速する領域を、幅方向Xに一直線に往復移動する構成と比較して、狭くすることができた。その結果、プリンター200全体として小型化することができた。
【特許文献1】特開2003−118099号公報
【特許文献2】特開2000−218886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記録ヘッド201が、軸部203を支点とした円の弧上を往復移動する構成であった。従って、記録ヘッド201が減速、停止、方向を反転して加速する際の反動により、プリンター200全体が幅方向Xに大きく振動する。該振動によって用紙204に対する記録精度が低下する虞がある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、記録ヘッドの移動による大きな振動を防止することができる記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、被記録媒体を支持する媒体支持部と、該媒体支持部と対向して設けられ、該媒体支持部に支持された被記録媒体に対してインクを吐出することにより記録を実行する記録ヘッドを有し、前記媒体支持部と前記記録ヘッドとが対向する方向を支点軸として一の方向へ回転する回転ヘッドユニットと、を備え、該回転ヘッドユニットの重心の位置は前記支点軸上に位置する構成であることを特徴とする。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、前記記録装置は、前記回転ヘッドユニットを備えている。即ち、幅方向の往復運動をしない構成である。従って、従来の幅方向に往復することによる幅方向の振動が生じる虞がない。
また、前記回転ヘッドユニットの重心の位置は前記支点軸上に位置するので、前記回転ヘッドユニットが回転することによる振動も生じる虞がない。
【0008】
本発明の第2の態様の態様は、第1の態様において、前記回転ヘッドユニットは、前記記録ヘッドを複数有しており、該複数の記録ヘッドは、回転するときの周方向に、360度÷記録ヘッドの数となる角度間隔に配設されていることを特徴とする。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記回転ヘッドユニットの周方向における重量バランスを良くすることができる。その結果、容易に前記回転ヘッドユニットの重心の位置が前記支点軸上に位置する構成とすることができる。
尚、前記複数の記録ヘッドは、同じ型のものを複数設けるのは言うまでもない。即ち、同じ重量のものを複数設けるのは言うまでもない。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記回転ヘッドユニットは、インクを収容すると共に、前記記録ヘッドにインクを供給するインク収容部を備え、該インク収容部の位置は、前記記録ヘッドより前記支点軸側であることを特徴とする。
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、前記回転ヘッドユニットの回転中における遠心力を利用することができる。具体的には、前記インク収容部内のインクを、該遠心力を利用して回転支点を基準とした前記インク収容部より外側の前記記録ヘッドへ容易に供給することができる。
【0010】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記回転ヘッドユニットは、前記記録ヘッドを複数有しており、前記インク収容部は、複数種類のインクを収容すると共に、前記複数の記録ヘッドの数に対応して前記複数の記録ヘッドの前記支点軸側にそれぞれ複数設けられ、前記複数の記録ヘッドは、それぞれ前記複数種類のインクを吐出する構成であることを特徴とする。
本発明の第4の態様によれば、第3の態様と同様の作用効果に加え、各インク収容部におけるインクの残量が変化した場合であっても、前記重量バランスを安定させることができる。
【0011】
具体的には、前記複数のうちの一の記録ヘッドが被記録媒体に対して記録する箇所は、他の記録ヘッドが記録する箇所と同じ箇所またはその近傍の箇所とすることができる。
【0012】
従って、前記一の記録ヘッドが吐出するインクの量や種類を、前記他の記録ヘッドが吐出するインクの量や種類と同様にすることができる。即ち、それぞれの前記インク収容部におけるインクの種類毎の残量を同様にすることができる。その結果、前記回転ヘッドユニットの重量バランスが偏る虞がない。即ち、各インク収容部におけるインクの残量が変化した場合であっても、前記重量バランスを安定させることができる。
【0013】
本発明の第5の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記回転ヘッドユニットは、前記記録ヘッドを複数有しており、前記複数の記録ヘッドは、記録ヘッド毎に一の種類のインクを吐出し、該吐出するインクの種類は、記録ヘッド毎に異なる構成であることを特徴とする。
本発明の第5の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、種類の異なるインクが混ざり合って「にじみ」となり記録画質の低下となる虞がない。
【0014】
ここで、仮に、一の記録ヘッドから複数種類のインクが吐出される構成であるとした場合について考える。係る場合、被記録媒体上において一の種類のインクが着弾した直後に、該着弾したインク上に他の種類のインクが重ねて吐出される。このとき、一の種類のインクが十分に乾燥する前に他の種類のインクと接触する。そして、種類の異なるインク同士が混ざり合って「にじみ」となり記録画質の低下となる虞がある。
【0015】
そこで、本態様では、一の記録ヘッドからは一の種類のインクのみが吐出される構成とする。従って、被記録媒体上において一の種類のインクが着弾した直後に、該着弾したインク上または近傍に同一の種類のインクのみが重ねて吐出される。このとき、インクの種類は同一であるため、前記種類の異なるインク同士が混ざり合う「にじみ」とはならない。従って、該「にじみ」によって記録画質の低下となる虞がない。
【0016】
また、被記録媒体上において一の記録ヘッドから吐出された一の種類のインクが着弾したときから、該着弾したインク上に他の記録ヘッドから他の種類のインクが重ねて吐出されるまでのタイムラグを比較的長くすることができる。具体的には、前述した一の記録ヘッドから複数種類のインクが吐出される構成であるとした場合と比較して長くすることができる。従って、長くしたタイムラグの分、被記録媒体上における前記一の種類のインクの乾燥を進めることができる。その結果、より前記「にじみ」によって記録画質の低下となる虞がない。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか一の態様において、前記回転ヘッドユニットは、偶数設けられ、該偶数のうちの半数が一の方向へ回転し、残りの半数が前記一の方向と逆方向へ回転する構成であることを特徴とする。
本発明の第6の態様によれば、第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記回転ヘッドユニットの回転によって生じる回転モーメントを相殺させることができる。
【0018】
具体的には、一の前記回転ヘッドユニットが前記一の方向に回転することによって記録装置全体に生じる回転モーメントと、他の一の回転ヘッドユニットが前記逆方向に回転することによって記録装置全体に生じる回転モーメントとを相殺させることができる。そして、前記一の方向に回転する前記回転ヘッドユニットの数と、前記逆方向へ回転する前記回転ヘッドユニットの数は同じである。
その結果、全体として、回転モーメントを相殺させることができ、記録精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明に係る「記録装置」或いは「液体噴射装置」の一例としてのインクジェットプリンター(以下「プリンター」と言う)1の全体の概略を示す側面図である。
ここで、液体噴射装置とは、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドから記録紙等の被記録材へインクを噴射して被記録材への記録を実行するインクジェット式記録装置、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えて特定の用途に対応する液体を前述した記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから、被記録材に相当する被噴射材に噴射して、液体を被噴射材に付着させる装置を含む意味で用いる。
【0020】
またさらに、液体噴射ヘッドとしては、前述した記録ヘッド以外に、液晶ディスプレイ等のカラーフィルター製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料を噴射する試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【0021】
図1に示す如く、プリンター1は、給送部10と、紙揃え部20と、プレヒート部39と、記録部40と、ポストヒート部60と、排出部70とを備えている。このうち、給送部10は、ローラーおよびベルトを備え、用紙Pを送り方向下流側(矢印Yの方向)へ給送することができるように構成されている。また、紙揃え部20は、ローラーと、ベルトと、用紙Pの側端と当接するガイド部(図示せず)とを備えている。そして、給送された用紙Pの姿勢を正しながら用紙Pを送り方向下流側へ送ることができるように構成されている。
尚、本実施形態では、被記録媒体の一例として単票紙である用紙Pについて説明するが、これに限られない。ロール紙でもよいのは勿論である。
【0022】
また、プレヒート部39は、紙揃え部20から送られた用紙Pを、記録部40へ送る前の段階において、予め熱を加えて温めてから送り方向下流側の記録部40へ送ることができるように構成されている。予め熱を加えるのは、後に用紙Pに着弾するインクの乾燥を促進するためである。具体的には、プレヒート部39は、記録部40まで延設された搬送部30としての第1サクションベルト機構31と、予備加熱時用紙支持部32と、後述する予備加熱手段33とを有している。搬送部30は、用紙Pを送り方向下流側へ送ることができるように構成されている。
【0023】
このうち、第1サクションベルト機構31は、三つのローラー34、34、34aと、該三つのローラー34、34、34aに巻回された複数の穴を有するベルト35と、該複数の穴を介して空気を吸引する吸引手段(図示せず)とを有する。そして、送り方向下流側のローラー34aが搬送用モーター(図示せず)の動力によって駆動することにより、ベルト35が駆動し用紙Pを送ることができるように構成されている。また、第1サクションベルト機構31の上面側に形成される予備加熱時用紙支持部32が、用紙Pを裏面から支持することができるように設けられている。また、予備加熱時用紙支持部32には、熱伝導式の予備加熱手段33が設けられている。
【0024】
ここで、「熱伝導式」とは、物体の内部を通って高温部から低温部へ熱を伝える方式をいう。即ち、物体が用紙Pと接触することにより熱を伝導する方式である。
例えば、予備加熱手段33の一例としてニクロム線を用いる手段がある。該ニクロム線を通電させることにより、ニクロム線自体が発熱し、予備加熱時用紙支持部32を介して用紙Pの裏面に熱を伝導することができる。また、前述した吸引手段は、ベルト35の複数の穴を介して予備加熱時用紙支持部32の上方の空気を下方へ吸引するように構成されている。
【0025】
従って、吸引手段は、予備加熱時用紙支持部32上の用紙Pを、予備加熱時用紙支持部32にぴったりと吸着させることができる。その結果、用紙Pを加熱することができる。
またさらに、記録部40は、プレヒート部39から送られた用紙Pの表面に対して、インクを吐出して記録を実行することができるように設けられている。具体的には、記録部40は、プレヒート部39から延設された第1サクションベルト機構31と、記録時用紙支持部48と、回転ヘッドユニット41とを有している。
【0026】
また、記録時用紙支持部48は、第1サクションベルト機構31の上面側に形成され、ベルト35を介して用紙Pを裏面から支持することができるように設けられている。そして、記録時用紙支持部48には、前述した予備加熱手段33と同様に、熱伝導式の記録時加熱手段49が設けられている。またさらに、回転ヘッドユニット41は、複数の記録ヘッドを有している。そして、回転ヘッドユニット41は、記録時用紙支持部48の上方に、用紙Pの送り方向Yおよび幅方向Xが成す面内で、用紙Pと記録ヘッド44、45が対向する方向であるZ軸を支点に回転することができるように設けられている。
【0027】
詳しくは後述するように、Z軸方向に設けられた回転支軸42を支点に、ヘッド回転用モーター(図示せず)の動力によって回転するように構成されている。
尚、回転ヘッドユニットは、Z軸を支軸に回転できればよく、回転中心に必ずしも回転支軸を設けることを要しない。例えば、Oリング状のガイドに沿って第1記録ヘッドおよび第2記録ヘッドが回転する構成でもよい。
【0028】
そして、記録ヘッド44、45が回転支軸42を支点に回転しながらノズル列80からインクを用紙Pの表面に対して吐出することにより、記録が実行されるように構成されている。
記録が実行された後、用紙Pは、第1サクションベルト機構31によって送り方向下流側のポストヒート部60へ送られる。
【0029】
また、ポストヒート部60は、記録された用紙P上のインクを乾燥することができるように構成されている。具体的には、ポストヒート部60は、第2サクションベルト機構62と、乾燥時用紙支持部63と、乾燥機構としての対流式の温風ヘッド61とを有している。
ここで、「対流式」とは、気体や液体などの流体によって熱を伝える方式をいう。
【0030】
第2サクションベルト機構62は、前述した第1サクションベルト機構31の構成と同様である。その説明は省略する。
また、乾燥時用紙支持部63は、第2サクションベルト機構62の上面側に形成され、ベルトを介して用紙Pを裏面から支持することができるように設けられている。
【0031】
またさらに、温風ヘッド61は、温めた風を吹出すことができるように構成されている。そして、用紙Pの表面に対して温風を吹出すことによって、用紙Pの表面に着弾したインクを乾燥させることができる。
【0032】
尚、温風ヘッド61の内部構造は、ニクロム線等の熱発生手段と、ファン等の風力発生手段とから構成されているものとする。
また、乾燥された用紙Pは、第2サクションベルト機構62によって送り方向下流側の排出部70へ送られる。
排出部70は、ローラーおよびベルトを備え、用紙Pを送り方向下流側へ排出することができるように構成されている。
【0033】
続いて、回転ヘッドユニット41について説明する。
図2に示すのは、本発明に係る回転ヘッドユニットの概略を示す平面図である。また、図3に示すのは、本発明に係る回転ヘッドユニットの概略を示す側面図である。
図2および図3に示す如く、回転ヘッドユニット41は、回転支軸42と、ユニット基体部43と、回転接続部50と、第1記録ヘッド44と、第2記録ヘッド45と、第1インクタンクユニット46と、第2インクタンクユニット47とを有している。
【0034】
このうち、回転支軸42は、Z軸の上方から記録時用紙支持部48と対向するように下方に延設されている。また、ユニット基体部43は、回転支軸42の下方に回転接続部50を介して取り付けられ、回転支軸42を支点にヘッド回転用モーター(図示せず)の動力によって回転することができるように設けられている。またさらに、回転接続部50は、詳しくは後述するが、停止している回転支軸42と、回転するユニット基体部43との間において、記録ヘッドへの電気信号や電力を送ることができるように構成されている。即ち、配線等が絡まることなく、ユニット基体部43が回転することができるように構成されている。
【0035】
また、第1記録ヘッド44と第2記録ヘッド45とは、同じ型である。そして、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45は、回転支軸42を中心として、360度÷記録ヘッドの数となる角度間隔に配設されている。即ち、回転支軸42を中心とした周方向に等間隔に配設されている。
またさらに、第1インクタンクユニット46と第2インクタンクユニット47とは、同じ型である。
【0036】
そして、第1インクタンクユニット46および第2インクタンクユニット47は、それぞれブラックインクタンク46k、シアンインクタンク46c、マゼンタインクタンク46mおよびイエローインクタンク46yを有している。
尚、本実施例では所謂、CMYKの4色インクの構成とするが、これに限られるものではない。8色インクの構成、10色インクの構成等でもよいのは勿論である。
【0037】
第1インクタンクユニット46は、第1記録ヘッド44より回転支軸42側に配設されている。そして、第1インクタンクユニット46は、第1記録ヘッド44へインクを供給することができるように設けられている。
同様に、第2インクタンクユニット47は、第2記録ヘッド45より回転支軸42側に配設されている。そして、第2インクタンクユニット47は、第2記録ヘッド45へインクを供給することができるように設けられている。
【0038】
従って、回転ヘッドユニット41の重心バランスをよくすることができる。即ち、回転ヘッドユニット41の重心の位置を、X軸およびY軸方向において、回転支軸42の位置と重ねることができる。その結果、回転ヘッドユニット41が回転している最中において、従来技術において生じていた幅方向Xの大きな振動を無にすることができる。また、該大きな振動による騒音を防止することができる。
【0039】
また、第1インクタンクユニット46および第2インクタンクユニット47は、前述したように、それぞれ第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45より回転支軸42側に配設されている。従って、回転ヘッドユニット41が回転することによって生じる遠心力によって、第1インクタンクユニット46および第2インクタンクユニット47のインクを、それぞれ第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45へ供給することができる。即ち、遠心力によって圧力をかけて送る所謂、圧送と同様の効果を得ることができるため、スムーズにインクを供給することができる。
尚、インクタンクユニットは、取り外して交換可能なタイプ、固定であってインクを補充するタイプのいずれでもよい。
【0040】
図4に示すのは、本発明に係る記録ヘッドの概略を示す下方からみた底面図である。
図4に示す如く、本発明の第1記録ヘッド44は、ブラックヘッド44kと、シアンヘッド44cと、マゼンタヘッド44m、イエローヘッド44yとを有している。
尚、第2記録ヘッド45も同様である。従って、第1記録ヘッド44について以下に説明するものとし、第2記録ヘッド45についての説明は省略する。
【0041】
このうち、ブラックヘッド44kは、ブラックインクタンク46kからブラックインクの供給を受けてブラックヘッド44kに形成されたノズル列80kからブラックインクを用紙Pに対して吐出することができるように構成されている。同様にシアンヘッド44c、マゼンタヘッド44mおよびイエローヘッド44yにもノズル列80c、80m、80yが形成されている。
【0042】
また、ブラックヘッド44k、シアンヘッド44c、マゼンタヘッド44mおよびイエローヘッド44yのそれぞれのノズル列80k、80c、80m、80yは、回転支軸42を基準に放射方向に延設されている。従って、ブラックヘッド44k、シアンヘッド44c、マゼンタヘッド44mおよびイエローヘッド44yのそれぞれのノズル列80k、80c、80m、80yは、第1記録ヘッド44が回転して位相がずれた際、重ねて同じ箇所にインクを吐出することができる。所謂、重ね打ちをすることができる。
【0043】
ここで、仮に、それぞれのヘッドの姿勢を平行に設けた場合、記録ヘッドが回転してシアンヘッド44cがあった位置にブラックヘッド44kが位置したとき、回転前のシアンヘッド44cの姿勢と、回転後のブラックヘッド44kの姿勢が異なる。そのため、一部の箇所のみにおいてインクを重ねて吐出することができるが、他の箇所においては、重ね打ちをすることができない。
【0044】
そこで、本実施形態では、それぞれのノズル列80k、80c、80m、80yは、回転支軸42を基準に放射方向に延設されている。従って、回転ヘッドユニット41を回転させて次に吐出するヘッドの姿勢を先行するヘッドが吐出したときの姿勢と同じ姿勢にすることによって、重ね打ちを実行することができる。その結果、高画質な記録を実行することができる。
【0045】
図5に示すのは、本発明に係る回転接続部を示す斜視図である。
図5に示す如く、公知技術(特開平9−102375号)である回転接続部50は、第1部材51と、第2部材55とを有する。このうち、第1部材51は、中心に設けられた開口部52と、異なる径で周方向に環状に設けられた複数の溝部53、53…とを有する。溝部53、53…は導電体で形成され、線材59を介して第1コネクター54と接続されている。
【0046】
一方、第2部材55は、中心に設けられた凸部56と、溝部53、53…と対応して周方向に配設された複数の突起部57、57…とを有している。凸部56は、第1部材51の開口部52と回動自在に係合することができるように設けられている。突起部57、57…は、第1部材51の溝部53、53…と電気的に接触することができるように形成されている。また、接触状態を確実にするために、同じ溝部53を複数の突起部57、57…が周方向に等間隔に複数配設されている。またさらに、接触状態をより確実にするために、突起部57、57…はばね(図示せず)によって付勢されている。また、突起部57、57…は、線材59を介して第2コネクター58と接続されている。
【0047】
第1部材51は、回転支軸42側に設けられている。一方、第2部材55は、ユニット基体部43側に設けられている。そして、第2部材55は、第1部材51に対して相対的に回転することができるように構成されている。また、回転中において、前述した突起部57、57…の構成によって、確実に電気的に接触した状態を保つことができる。即ち、配線が絡む虞がない。
第1コネクター54は、プリンター1の図示しない制御部側と接続されている。一方、第2コネクター58は、記録ヘッド側と接続されている。従って、制御部からの電気信号を第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45へ送ることができる。また、インクの吐出に必要な電力も送ることができる。
【0048】
図6に示すのは、本発明に係る記録ヘッドのノズルとドットとの関係を示す図である。
図6に示す如く、本発明の回転ヘッドユニット41の第1記録ヘッド44は、前述したように回転しながらインクを吐出する構成である。また、第1記録ヘッド44におけるブラックヘッド44k、シアンヘッド44c、マゼンタヘッド44mおよびイエローヘッド44yのそれぞれのノズル列80k、80c、80m、80yは、前述したように回転支軸42を基準に放射方向に延設されている。
【0049】
ここで、それぞれのノズル列80k、80c、80m、80yにおける回転支軸42側である回転中心側のノズルと、回転支軸42より遠方側のノズルとを同じタイミングでインクの吐出を実行すると、X軸方向およびY軸方向において、用紙P上に吐出されたインクのドットが揃わない。
そこで、本実施形態では、遠方側のノズルが吐出する時間間隔を短く、回転中心側のノズルが吐出する時間間隔を、遠方側より長く構成している。
【0050】
即ち、遠方側のノズルのヘッド駆動周波数が、回転中心側のノズルのヘッド駆動周波数より大である。
ここで、ヘッド駆動周波数とは、制御部(図示せず)から送られた電気信号によってそれぞれのノズルの素子を駆動させる周波数をいう。
その結果、扇形の範囲において、X軸およびY軸方向に直交するマトリクス上にドットを記録することができる。
尚、扇形の範囲のデータに並び替えることについては、従来技術文献である特開2003−118099号に開示されたものと同様である。従って、詳しい説明は省略する。
【0051】
図7(A)(B)に示すのは、回転ヘッドユニットによる記録動作を説明する概略図である。また、図8(A)(B)に示すのも、回転ヘッドユニットによる記録動作を説明する概略図である。このうち、図7(A)は回転ヘッドユニットの1回転目の前半と1回転目の後半を示す。また、図7(B)は2回転目の前半を示す。またさらに、図8(A)は4回転目の後半を示す。また、図8(B)は5回転目の前半を示す。
【0052】
ここで、前半とは、360度回転するうちの前半180度の範囲内の回転をいう。具体的には、回転中において第1記録ヘッド44が送り方向上流側、第2記録ヘッド45が送り方向下流側に位置する状態である。一方、後半とは、360度回転するうちの後半180度の範囲内の回転をいう。具体的には、回転中において第1記録ヘッド44が送り方向下流側、第2記録ヘッド45が送り方向上流側に位置する状態である。
【0053】
図7(A)に示す如く、本実施形態では、放射方向におけるノズル列80の長さNとしたとき、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45が回転する際の外周円の半径は3Nとなるように構成されている。即ち、ノズル列80の長さNと外周半径との比は1:3となるように構成されている。
そして、回転ヘッドユニット41の1回転目の前半において、第1記録ヘッド44は送り方向上流側、第2記録ヘッド45は送り方向下流側において、用紙Pに対してインクを吐出して記録を実行する。
【0054】
周方向におけるインクを吐出する範囲は、角度約90度の範囲である。このとき、放射方向におけるノズル列80の長さNにわたる範囲において記録が実行される。
ここで、1回転目の前半の送り方向上流側における記録範囲をH1a、下流側のおける記録範囲をL1aとする。
そして、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45が用紙Pと対向しない領域に入ったとき、用紙Pは、送り方向下流側へ距離N/2だけ送られる。
【0055】
その後、回転ヘッドユニット41の1回転目の後半において、第1記録ヘッド44は、送り方向下流側、第2記録ヘッド45は送り方向上流側において、用紙Pに対してインクを吐出して記録を実行する。
ここで、1回転目の後半の送り方向上流側における記録範囲をH1b、下流側のおける記録範囲をL1bとする。
【0056】
このとき、1回転目の前半の記録範囲H1a、L1aのうちの送り方向上流側N/2にわたる範囲において重ね打ちが実行され該範囲における記録が完了する。所謂、ハーフオーバーラップ記録である。これにより、各ノズルのバラツキによる画質低下を低減することができる。
そして、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45が用紙Pと対向しない領域に入ったとき、用紙Pは、さらに送り方向下流側へ距離N/2だけ送られる。
【0057】
図7(B)に示す如く、回転ヘッドユニット41の2回転目の前半において、再び第1記録ヘッド44は送り方向上流側、第2記録ヘッド45は送り方向下流側に戻る。そして、1回転目の前半と同様に、用紙Pに対してインクを吐出して記録を実行する。
ここで、2回転目の前半の送り方向上流側における記録範囲をH2a、下流側のおける記録範囲をL2aとする。
このとき、1回転目の後半の記録範囲H1b、L1bのうちの送り方向上流側N/2にわたる範囲において重ね打ちが実行され該範囲における記録が完了する。
【0058】
尚、2回転目の前半の記録範囲H2a、L2aにおいて、1回転目の前半の記録範囲H1a、L1aのうちの送り方向上流側N/2にわたる範囲である既に1回転目の後半で記録が完了した範囲と、オーバーラップする範囲Wは記録しないようにデータの調整が行われるものとする。
その後、用紙Pの送り方向下流側へのN/2距離だけの送りと、半回転における記録とを繰り返す。
【0059】
図8(A)に示す如く、回転ヘッドユニット41の4回転目の後半において、第1記録ヘッド44は送り方向下流側、第2記録ヘッド45は送り方向上流側において、用紙Pに対してインクを吐出して記録を実行する。
ここで、4回転目の後半の送り方向上流側における記録範囲をH4b、下流側のおける記録範囲をL4bとする。
このとき、4回転目の後半の記録範囲L4bは、未だ、1回転目の前半における記録範囲H1aと重ならない。
そして、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45が用紙Pと対向しない領域に入ったとき、用紙Pは、さらに送り方向下流側へ距離N/2だけ送られる。
【0060】
図8(B)に示す如く、回転ヘッドユニット41の5回転目の前半において、第1記録ヘッド44は送り方向上流側、第2記録ヘッド45は送り方向下流側において、用紙Pに対してインクを吐出して記録を実行する。
ここで、5回転目の前半の送り方向上流側における記録範囲をH5a、下流側のおける記録範囲をL5aとする。
このとき、4回転目の後半の記録範囲H4b、L4bのうちの送り方向上流側N/2にわたる範囲において重ね打ちが実行され該範囲における記録が完了する。
そして、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45が用紙Pと対向しない領域に入ったとき、用紙Pは、さらに送り方向下流側へ距離N/2だけ送られる。
【0061】
その後、回転ヘッドユニット41の5回転目の後半において、第1記録ヘッド44は送り方向下流側、第2記録ヘッド45は送り方向上流側において、用紙Pに対してインクを吐出して記録を実行する。
このとき、送り方向下流側の5回転目の後半の記録範囲L5bは、1回転目の前半における送り方向上流側の記録範囲H1aにおける内側(H1…の送り方向下流側)N/2にわたる範囲と重なる。そして、記録範囲H1aにおける内側(H1…の送り方向下流側)N/2にわたる範囲の記録を完成させる。
【0062】
尚、既に記録が完了した範囲と、オーバーラップする範囲R1、R2は記録しないようにデータの調整が行われるものとする。
その後、直径6Nより僅かに短い距離だけ用紙Pを一気に送り方向下流側へ送る。そして既に記録が完了した範囲とオーバーラップする範囲は記録しないようにデータを調整しながら記録を続行する。
【0063】
尚、送り方向上流側(H1…)の記録範囲における外側(H1…の送り方向上流側)と、送り方向下流側(L1…)の記録範囲における外側(L1…の送り方向下流側)とのオーバーラップする範囲のデータの調整が複雑になる場合、回転ヘッドユニット41が回転する際、送り方向上流側または下流側の一方のみにおいて記録を実行するように構成してもよい。
また、上記実記形態では、一の回転ヘッドユニット41に記録ヘッド(44、45)を複数設けたが、記録ヘッドの数は一でもよい。係る場合、回転支軸42を基準として記録ヘッドの位置と点対称となる位置に錘(図示せず)を設けることにより、回転ヘッドユニット41の重心の位置が回転支軸上に位置するように構成することができる。さらに、後述する他の実施形態4(図12参照)と同様のインクタンク(121〜124)を設けることにより、インク残量が変化した場合でも、回転ヘッドユニット41の重心の位置を回転支軸上に保つことができる。
【0064】
本実施形態の記録装置としてのプリンター1は、被記録媒体の一例である用紙Pを支持する媒体支持部としての記録時用紙支持部48と、記録時用紙支持部48と対向して設けられ、記録時用紙支持部48に支持された用紙Pに対してインクを吐出することにより記録を実行する記録ヘッドとして第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45を有し、記録時用紙支持部48と前記記録ヘッドとが対向する方向に延設された回転支軸42を支点軸として一の方向へ回転する回転ヘッドユニット41と、を備え、回転ヘッドユニット41の重心の位置は回転支軸42上に位置する構成であることを特徴とする。
【0065】
また、回転ヘッドユニット41は、複数の記録ヘッドとして第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45を有しており、回転ヘッドユニット41における第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45は、回転するときの周方向に、360度÷記録ヘッドの数となる角度間隔に配設されていることを特徴とする。
尚、本実施形態では、記録ヘッドの数は2であるため、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45は周方向に180度間隔で配設されている。
【0066】
また、本実施形態において、回転ヘッドユニット41は、インクを収容すると共に、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45にインクを供給するインク収容部としての第1インクタンクユニット46および第2インクタンクユニット47を備え、第1インクタンクユニット46および第2インクタンクユニット47の位置は、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45より回転支軸42側であることを特徴とする。
【0067】
またさらに、本実施形態において、第1インクタンクユニット46および第2インクタンクユニット47は、複数種類のインクとしてシアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクをそれぞれ収容するシアンインクタンク46c、マゼンタインクタンク46m、イエローインクタンク46yおよびブラックインクタンク46kを有すると共に、前記複数の記録ヘッドの数に対応して第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45の回転支軸42側にそれぞれ設けられ、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45は、それぞれ複数種類のインクとしてシアンインク、マゼンタインク、イエローインクおよびブラックインクを吐出する構成であることを特徴とする。
【0068】
[他の実施形態1]
図9に示すのは、他の実施形態1に係る回転ヘッドユニットの概略を示す平面図である。
図9に示す如く、他の実施形態1の回転ヘッドユニット90は、第1記録ヘッド91と、第2記録ヘッド92と、第3記録ヘッド93と、第4記録ヘッド94と、第1インクタンクユニット95と、第2インクタンクユニット96と、第3インクタンクユニット97と、第4インクタンクユニット98とを備えている。
尚、特に説明する部材以外は、前述した実施形態と同様であるので、同じ符号を用いると共にその説明は省略する。
【0069】
このうち、第1記録ヘッド91、第2記録ヘッド92、第3記録ヘッド93および第4記録ヘッド94は、回転支軸42を中心として、360度÷記録ヘッドの数となる角度間隔に配設されている。具体的には、90度間隔となるように配設されている。また、第1インクタンクユニット95、第2インクタンクユニット96、第3インクタンクユニット97および第4インクタンクユニット98も同様である。
そして、第1インクタンクユニット95にはシアンインクが収容されている。また、第2インクタンクユニット96にはマゼンタインクが収容されている。またさらに、第3インクタンクユニット97にはイエローインクが収容されている。また、第4インクタンクユニット98にはブラックインクが収容されている。
【0070】
第1インクタンクユニット95は、第1記録ヘッド91にシアンインクを供給するように構成されている。また、第2インクタンクユニット96は、第2記録ヘッド92にマゼンタインクを供給するように構成されている。またさらに、第3インクタンクユニット97は、第3記録ヘッド93にイエローインクを供給するように構成されている。また、第4インクタンクユニット98は、第4記録ヘッド94にブラックインクを供給するように構成されている。
【0071】
即ち、一の記録ヘッドからは同種のインクのみが吐出される構成である。従って、記録実行する際、一の種類のインクが記録されてから、同じ箇所に種類が異なるインクが重ね打ちされるまでの間の時間を、一の記録ヘッドから複数のインクが吐出される構成と比較して、長くすることができる。そして、種類が異なるインクが重ね打ちされるまでに、先に記録された前記一の種類のインクの乾燥を進めることができる。その結果、重ね打ちされる種類が異なるインクが、先に記録された一の種類のインクと混ざり合ってにじむ虞がない。「にじみ」がない分、記録画質を向上させることができる。
【0072】
具体的には、マゼンタインクが記録されてから、同じ箇所にシアンインクが重ね打ちされるまでの時間を、一の記録ヘッドからマゼンタインクおよびシアンインクが吐出される構成と比較して、長くすることができる。従って、シアンインクが重ね打ちされるまでに、先に記録されたマゼンタインクの乾燥を進めることができる。その結果、マゼンタインクとシアンインクとが混ざり合うことによる「にじみ」が生じる虞がない。
尚、インク色の数に応じて、記録ヘッドの数を増減させることができるのは勿論である。
【0073】
他の実施形態1において、第1記録ヘッド91、第2記録ヘッド92、第3記録ヘッド93および第4記録ヘッド94は、記録ヘッド毎に一の種類のインクを吐出し、該吐出するインクの種類は、記録ヘッド毎に異なる構成であることを特徴とする。
尚、他の実施形態1では、第1記録ヘッド91はシアンインク、第2記録ヘッド92はマゼンタインク、第3記録ヘッド93はイエローインク、第4記録ヘッド94はブラックインクを吐出する構成である。
【0074】
[他の実施形態2]
図10に示すのは、他の実施形態2に係る回転ヘッドユニットの概略を示す平面図である。
図10に示す如く、他の実施形態2のプリンター100は、第1回転ヘッドユニット101と、第2回転ヘッドユニット102とを備えている。また、第1回転ヘッドユニット101および第2回転ヘッドユニット102は、送り方向Yに並んで配設されている。そして、第2回転ヘッドユニット102は、第1回転ヘッドユニット101より送り方向下流側に設けられている。
尚、特に説明する部材以外は、前述した実施形態と同様であるので、同じ符号を用いると共にその説明は省略する。
【0075】
さらに、第1回転ヘッドユニット101は、図10における反時計方向へ回転する構成である。一方、第2回転ヘッドユニット102は、第1回転ヘッドユニット101の回転方向と逆方向である時計方向へ回転する構成である。
従って、第1回転ヘッドユニット101の回転によってプリンター100に生じる回転モーメントを、第2回転ヘッドユニット102の回転によってプリンター100に生じる回転モーメントと相殺させることができる。
【0076】
その結果、プリンター100全体における振動や騒音をより低減することができる。また、振動低減により、記録精度を向上させることができる。
尚、回転ヘッドユニットの数は二つに限られない。偶数であればよい。そのうち、半数が一の方向へ回転し、残りの半数が逆方向へ回転する構成にすることにより、全ての回転モーメントを相殺することができる。
【0077】
他の実施形態2において、回転ヘッドユニットは、偶数である第1回転ヘッドユニット101および第2回転ヘッドユニット102の二つ設けられ、該偶数のうちの半数が一の方向へ回転し、残りの半数が逆方向へ回転する構成であることを特徴とする。
尚、他の実施形態2では、第1回転ヘッドユニット101は、図10における反時計方向へ回転する。一方、第2回転ヘッドユニット102は、時計方向へ回転する構成である。
【0078】
[他の実施形態3]
図11に示すのは、他の実施形態3に係る回転ヘッドユニットの概略を示す平面図である。
図11に示す如く、他の実施形態3のプリンター110は、第1回転ヘッドユニット111と、第2回転ヘッドユニット112と、一対の第1サクション機構31、31とを備えている。また、第1回転ヘッドユニット111および第2回転ヘッドユニット112は、幅方向Xに並んで配設されている。
【0079】
また、第1回転ヘッドユニット111および第2回転ヘッドユニット112は、一対の第1サクション機構31、31と対向する位置に設けられている。即ち、他の実施形態3のプリンター110は、一対の用紙搬送路を平行に備えている。
尚、特に説明する部材以外は、前述した実施形態と同様であるので、同じ符号を用いると共にその説明は省略する。
【0080】
さらに、第1回転ヘッドユニット111は、図11における時計方向へ回転する構成である。一方、第2回転ヘッドユニット112は、第1回転ヘッドユニット111の回転方向と逆方向である反時計方向へ回転する構成である。
従って、他の実施形態2の作用効果と同様に、第1回転ヘッドユニット111の回転によってプリンター110に生じる回転モーメントを、第2回転ヘッドユニット112の回転によってプリンター110に生じる回転モーメントと相殺させることができる。
その結果、プリンター110全体における振動や騒音をより低減することができる。また、振動低減により、記録精度を向上させることができる。
【0081】
他の実施形態3において、回転ヘッドユニットは、偶数である第1回転ヘッドユニット111および第2回転ヘッドユニット112の二つ設けられ、該偶数のうちの半数が一の方向へ回転し、残りの半数が逆方向へ回転する構成であることを特徴とする。
尚、他の実施形態3では、第1回転ヘッドユニット111は、図11における時計方向へ回転する。一方、第2回転ヘッドユニット112は、反時計方向へ回転する構成である。
【0082】
[他の実施形態4]
図12(A)(B)に示すのは、他の実施形態4の回転ヘッドユニットの概略図である。このうち、図12(A)は平面図である。一方、図12(B)は側面図である。
図12(A)(B)に示す如く、他の実施形態4の回転ヘッドユニット120は、回転支軸42の周囲のユニット基体部43上にブラックインクタンク121、シアンインクタンク122、マゼンタインクタンク123およびイエローインクタンク124を備えている。
【0083】
即ち、前述した実施形態と異なる点は、ブラックインクタンク121、シアンインクタンク122、マゼンタインクタンク123およびイエローインクタンク124を、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45に対して共通に一組設けている点である。さらに言い換えると、それぞれの記録ヘッド毎における回転支軸42側に設けていない点である。
尚、特に説明する部材以外は、前述した実施形態と同様であるので、同じ符号を用いると共にその説明は省略する。
【0084】
そして、一組のブラックインクタンク121、シアンインクタンク122、マゼンタインクタンク123およびイエローインクタンク124によって、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45へ各色のインクを供給する構成である。インクの供給は、ユニット基体部43に設けられたインク流路(図示せず)を介して供給するのは言うまでもない。
また、ブラックインクタンク121、シアンインクタンク122、マゼンタインクタンク123およびイエローインクタンク124のそれぞれが、所謂ドーナツ型に形成されている。
【0085】
係る場合も、前述した実施形態と同様に、回転ヘッドユニット120の重心の位置を、X軸およびY軸方向において、回転支軸42の位置と重ねることができる。その結果、回転ヘッドユニット120が回転している最中において、従来技術において生じていた幅方向Xの大きな振動を無にすることができる。また、該大きな振動による騒音を防止することができる。
【0086】
他の実施形態4において、回転ヘッドユニット120は、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45にインクを供給するインク収容部としてのシアンインクタンク122、マゼンタインクタンク123、イエローインクタンク124およびブラックインクタンク121を備え、シアンインクタンク122、マゼンタインクタンク123、イエローインクタンク124およびブラックインクタンク121の位置は、第1記録ヘッド44および第2記録ヘッド45より回転支軸42側であることを特徴とする。
【0087】
[他の実施形態5]
図13に示すのは、他の実施形態5に係る回転ヘッドユニットの概略を示す平面図である。
図13に示す如く、他の実施形態5のプリンター130の回転ヘッドユニット131は、第1記録ヘッド132aと、第2記録ヘッド132bと、第3記録ヘッド133aと、第4記録ヘッド133bとを有している。
【0088】
このうち、第1記録ヘッド132aおよび第2記録ヘッド132bは、第1ヘッドユニット132を構成する。そして、第1記録ヘッド132aおよび第2記録ヘッド132bは、第1ヘッドユニット132中において360度÷第1ヘッドユニット132中の記録ヘッドの数となる角度間隔に周方向に配設されている。他の実施形態5では、第1ヘッドユニット132中において、180度の角度間隔で配設されている。
即ち、一群の記録ヘッドとしての第1記録ヘッド132aおよび第2記録ヘッド132bが、重心バランスがとれた第1ヘッドユニット132を構成する。
尚、第1ヘッドユニット132中の記録ヘッドの数が3つであれば、120度間隔となるのは言うまでもない。
【0089】
また、第3記録ヘッド133aおよび第4記録ヘッド133bは、第2ヘッドユニット133を構成する。そして、第3記録ヘッド133aおよび第4記録ヘッド133bは、第2ヘッドユニット133中において360度÷第2ヘッドユニット133中の記録ヘッドの数となる角度間隔に周方向に配設されている。他の実施形態5では、第2ヘッドユニット133中において、180度の角度間隔で配設されている。
即ち、他の一群の記録ヘッドとしての第3記録ヘッド133aおよび第4記録ヘッド133bが、重心バランスがとれた第2ヘッドユニット133を構成する。
【0090】
そして、重心バランスがとれた複数のヘッドユニットを一体に形成した場合も、全体として重心バランスをとることができる。即ち、全体の重心の位置を、X軸およびY軸方向において、回転支軸42の位置と重ねることができる。
その結果、前述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。具体的には、回転ヘッドユニット131が回転している最中において、従来技術において生じていた幅方向Xの大きな振動を無にすることができる。また、該大きな振動による騒音を防止することができる。
【0091】
他の実施形態5の概念について、さらに詳しく説明すると、他の実施形態5では、第1ヘッドユニット132と、第2ヘッドユニット133とを例えば60度ずらして設けているが、これに限られない。即ち、第1記録ヘッド132a、第2記録ヘッド132b、第3記録ヘッド133aおよび第4記録ヘッド133bが、周方向において必ずしも等角度間隔に配設されていることを要しない。
【0092】
他の実施形態5では、一群の記録ヘッドとして二つの記録ヘッドが、一のヘッドユニットを構成するものと説明したが、二つに限られないのは勿論である。一のヘッドユニットの構成のなかで、回転支軸42を中心として、360度÷一のヘッドユニット中の記録ヘッドの数となる角度間隔に配設されていればよい。例えば、三つの記録ヘッドで一群として、一のヘッドユニットを構成する場合、120度間隔で記録ヘッドを配設する。そして、同様の他のヘッドユニットと一体に形成してもよい。
【0093】
他の実施形態5の記録装置としてのプリンター130は、用紙Pを支持する記録時用紙支持部48と、記録時用紙支持部48と対向して設けられ、記録時用紙支持部48に支持された用紙Pに対してインクを吐出することにより記録を実行する複数の記録ヘッドとして第1記録ヘッド132aおよび第2記録ヘッド132b(第3記録ヘッド133aおよび第4記録ヘッド133b)を有し、記録時用紙支持部48と前記記録ヘッドとが対向する方向Zに延設された回転支軸42を支点軸として一の方向へ回転するヘッドユニットである第1ヘッドユニット132(第2ヘッドユニット133)と、第1ヘッドユニット132および第2ヘッドユニット133を有し、同軸である回転支軸42を支点に一体に前記回転する回転ヘッドユニット131と、を備えている。
【0094】
さらに、前記複数のそれぞれの第1ヘッドユニット132(第2ヘッドユニット133)毎における第1記録ヘッド132aおよび第2記録ヘッド132b(第3記録ヘッド133aおよび第4記録ヘッド133b)は、回転するときの周方向に、第1ヘッドユニット132(第2ヘッドユニット133)中において、360度÷前記一のヘッドユニット中における記録ヘッドの数となる角度間隔に配設されていることを特徴とする。
【0095】
尚、他の実施形態5では、一のヘッドユニット中における記録ヘッドの数は二つである。従って、第1ヘッドユニット132中において、前述したように第1記録ヘッド132aおよび第2記録ヘッド132bは周方向に180度間隔で配設されている。同様に、第2ヘッドユニット133中において、第3記録ヘッド133aおよび第4記録ヘッド133bは周方向に180度間隔で配設されている。
また、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係るプリンターの全体の概略を示す側面図。
【図2】本発明に係る回転ヘッドユニットの概略を示す平面図。
【図3】本発明に係る回転ヘッドユニットの概略を示す側面図。
【図4】本発明に係る記録ヘッドの概略を示す底面図。
【図5】本発明に係る回転接続部を示す斜視図。
【図6】本発明に係る記録ヘッドのノズルとドットとの関係を示す図。
【図7】(A)(B)は回転ヘッドユニットによる記録動作を説明する概略図。
【図8】(A)(B)は回転ヘッドユニットによる記録動作を説明する概略図。
【図9】他の実施形態1に係る回転ヘッドユニットの概略を示す平面図。
【図10】他の実施形態2に係る回転ヘッドユニットの概略を示す平面図。
【図11】他の実施形態3に係る回転ヘッドユニットの概略を示す平面図。
【図12】(A)(B)は他の実施形態4の回転ヘッドユニットの概略図。
【図13】他の実施形態5に係る回転ヘッドユニットの概略を示す平面図。
【図14】従来技術における記録ヘッドの移動を示す平面図。
【符号の説明】
【0097】
1 プリンター、10 給送部、20 紙揃え部、30 搬送部、
31 第1サクションベルト機構、32 予備加熱時用紙支持部、33 予備加熱手段、
34 ローラー、35 ベルト、39 プレヒート部、40 記録部、
41 回転ヘッドユニット、42 回転支軸、43 ユニット基体部、
44 第1記録ヘッド、44c シアンヘッド、44k ブラックヘッド、
44m マゼンタヘッド、44y イエローヘッド、45 第2記録ヘッド、
46 第1インクタンクユニット、46c シアンインクタンク、
46k ブラックインクタンク、46m マゼンタインクタンク、
46y イエローインクタンク、47 第2インクタンクユニット、
48 記録時用紙支持部、49 記録時加熱手段、50 回転接続部、51 第1部材、
52 開口部、53 溝部、54 第1コネクター、55 第2部材、56 凸部、
57 突起部、58 第2コネクター、59 線材、60 ポストヒート部、
61 温風ヘッド、62 第2サクションベルト機構、63 乾燥時用紙支持部、
70 排出部、80 ノズル列、90 (他の実施形態1の)回転ヘッドユニット、
91 第1記録ヘッド、92 第2記録ヘッド、93 第3記録ヘッド、
94 第4記録ヘッド、95 第1インクタンクユニット、
96 第2インクタンクユニット、97 第3インクタンクユニット、
98 第4インクタンクユニット、100 (他の実施形態2の)プリンター、
101 第1回転ヘッドユニット、102 第2回転ヘッドユニット、
110 (他の実施形態3の)プリンター、111 第1回転ヘッドユニット、
112 第2回転ヘッドユニット、120 (他の実施形態4の)回転ヘッドユニット、
121 ブラックインクタンク、122 シアンインクタンク、
123 マゼンタインクタンク、124 イエローインクタンク、
130 (他の実施形態5の)プリンター、131 回転ヘッドユニット、
132 第1ヘッドユニット、132a 第1記録ヘッド、132b 第2記録ヘッド、
133 第2ヘッドユニット、133a 第3記録ヘッド、133b 第4記録ヘッド、
200 従来技術のプリンター、201 記録ヘッド、202 アーム部、
203 軸部、204 用紙、N ノズル列の長さP 用紙、X 幅方向、
Y 送り方向、Z 記録ヘッドと搬送部とが対向する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を支持する媒体支持部と、
該媒体支持部と対向して設けられ、該媒体支持部に支持された被記録媒体に対してインクを吐出することにより記録を実行する記録ヘッドを有し、前記媒体支持部と前記記録ヘッドとが対向する方向を支点軸として一の方向へ回転する回転ヘッドユニットと、を備え、
該回転ヘッドユニットの重心の位置は前記支点軸上に位置する構成である記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記回転ヘッドユニットは、前記記録ヘッドを複数有しており、該複数の記録ヘッドは、回転するときの周方向に、
360度÷記録ヘッドの数となる角度間隔に配設されている記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、前記回転ヘッドユニットは、インクを収容すると共に、前記記録ヘッドにインクを供給するインク収容部を備え、
該インク収容部の位置は、前記記録ヘッドより前記支点軸側である記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、前記回転ヘッドユニットは、前記記録ヘッドを複数有しており、
前記インク収容部は、複数種類のインクを収容すると共に、前記複数の記録ヘッドの数に対応して前記複数の記録ヘッドの前記支点軸側にそれぞれ複数設けられ、
前記複数の記録ヘッドは、それぞれ前記複数種類のインクを吐出する構成である記録装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置において、前記回転ヘッドユニットは、前記記録ヘッドを複数有しており、
前記複数の記録ヘッドは、記録ヘッド毎に一の種類のインクを吐出し、
該吐出するインクの種類は、記録ヘッド毎に異なる構成である記録装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の記録装置において、前記回転ヘッドユニットは、偶数設けられ、該偶数のうちの半数が一の方向へ回転し、残りの半数が前記一の方向と逆方向へ回転する構成である記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−167619(P2010−167619A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−10947(P2009−10947)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】