説明

記録装置

【課題】記録装置の周囲温度によらず、中間転写体上に安定的に硬化性溶液層が形成できる記録装置を提供する。
【解決手段】記録装置100によれば、温度調整装置12による硬化性溶液12Aの温度調整によって、中間転写ベルト10へ塗布されるときの硬化性溶液12Aの温度が調整され、硬化性溶液12Aの粘度が50mPa以上2000mPa以下の範囲に調整される。このため、中間転写ベルト10に塗布された硬化性溶液12Aによる硬化性溶液層12Bが均一な層厚の温度調整装置12形成が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを利用した記録方式として、多様な記録媒体に対し記録を行うために、中間体に記録した後、記録媒体に転写する方式が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、吸水性の異なるポリマー、サイズの異なる吸水ポリマー、架橋度の異なる吸水ポリマー等、複数種の粉末混合体を中間体上に供給しつつ記録を行う方式が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、中間体上にインクとの接触でインクを増粘させる固体粒子(多糖高分子、アルギン酸、カラギーナン等の粒子)を供給しつつ記録を行う方式が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、中間体上に疎水性樹脂粒子層を形成し、疎水性樹脂粒子層の空隙にインク(例はSD型染料インク(Slow Dry型))を保持させて記録媒体に転写する方式が提案されている。
【0006】
また、特許文献4には、中間体(シート)に湿式で無機粒子、親水性ポリマー等を塗布した空隙型インク吸収層を設け、そこに染料インクを噴射し、記録媒体に転写する方式が提案されている。
【0007】
また、特許文献5には、熱可塑性樹脂粒子と非熱可塑性粒子とを含有し、熱可塑性樹脂粒子の最低造膜温度(MFT)以下の温度で乾燥されて形成された多孔質インク吸収層を有するインクジェット中間転写媒体が提案されている。
【0008】
また、塗布液を層状に供給して、該塗布液による層を形成する際に、塗布対象の塗布液の粘度を塗布液の組成で調整する技術も提案されている(特許文献6〜特許文献8)。
【特許文献1】特開2000−343808号公報
【特許文献2】特開2000−94654号公報
【特許文献3】特開2003−57967号公報
【特許文献4】特開2002−370347号公報
【特許文献5】特開2002−321443号公報
【特許文献6】特開2002−229217号公報
【特許文献7】特開2005−223323号公報
【特許文献8】特開2005−229109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、記録装置の周囲温度によらず、中間転写体上に安定的に硬化性溶液層が形成できる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の手段より解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、中間転写体と、外部からの刺激により硬化する硬化性材料及び吸液性材料を少なくとも含む硬化性溶液を前記中間転写体上に供給する供給手段と、前記硬化性溶液の温度情報を取得する第1の温度情報取得手段と、前記中間転写体上に供給される前記硬化性溶液の温度を予め定められた温度範囲に調整する温度調整手段と、前記中間転写体上に形成された硬化性溶液層にインクを付与するインク付与手段と、前記インクの付与された前記硬化性溶液層を記録媒体に接触させ、前記中間転写体から該記録媒体へ前記硬化性溶液層を転写する転写手段と、前記硬化性溶液層を硬化させる前記刺激を前記硬化性溶液層に付与する刺激付与手段と、を備えた記録装置である。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記供給手段は、前記硬化性溶液を貯留する貯留手段を備え、該貯留手段に貯留された該硬化性溶液を前記中間転写体へ供給し、前記温度調整手段は、前記貯留手段に貯留された前記硬化性溶液を加熱または冷却する加熱冷却手段と、前記硬化性溶液の温度と粘度との関係を示す粘度特性情報を予め記憶する記憶手段と、前記第1の温度情報取得手段によって取得された温度情報と前記粘度特性情報に基づいて、前記硬化性溶液を予め定められた範囲の粘度とするための温度範囲を算出し、該算出した温度範囲となるように前記加熱冷却手段を制御する制御手段と、を有する請求項1に記載の記録装置である。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記温度調整手段は、前記中間転写体の温度を取得する第2の温度情報取得手段を有し、前記制御手段は、前記第2の温度情報取得手段によって取得された温度情報に基づいて、前記中間転写体上に供給された前記硬化性溶液の粘度が前記予め定められた範囲の粘度となるように、前記第1の温度取得手段によって取得された温度情報と前記粘度特性情報とに基づいて算出された温度範囲を補正し、該補正された温度範囲となるように前記加熱冷却手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の記録装置である。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記硬化性溶液の予め定められた範囲の粘度が、50mPa・s以上2000mPa・s以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の記録装置である。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記粘度調整手段は、前記貯留部材中に貯留された前記硬化性溶液を撹拌する撹拌部材を備えた請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の記録装置である。
【0015】
請求項6に係る発明は、前記供給手段によって前記中間転写体上に供給されるときの前記硬化性溶液の粘度は、前記インク付与手段によってインクを付与されるときの前記硬化性溶液層の粘度より高いことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の記録装置である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、本発明の構成を有さない場合と比べて、記録装置の周囲温度によらず、中間転写体上に安定して硬化性溶液層が形成される、という効果を奏する。
【0017】
請求項2および4に係る発明によれば、本発明の構成を有さない場合と比べて、硬化性溶液層の厚みのばらつきが抑制される、という効果を奏する。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、本発明の構成を有さない場合と比べて、中間転写体の温度が変化しても、画像ムラの発生が抑制される、という効果を奏する。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、本発明の効果を有さない場合と比べて、中間転写体上に安定して硬化性溶液層が形成される、という効果を奏する。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、本発明の構成を有さない場合と比べて、線画像の局所的な太りが抑制される、という効果を奏する。
【0021】
請求項6に係る発明によれば、インクを付与されるときの硬化性溶液層の粘度が中間転写体上に供給されるときの硬化性溶液層の粘度に比べて低い場合に比べて、更に高画質の画像が形成される、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同じ機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0023】
本実施形態に係る記録装置100には、図1に示すように、無端ベルト状の中間転写ベルト10(中間転写体)が設けられている。この中間転写ベルト10の周囲には、該中間転写ベルト10の移動方向(図1中、矢印X方向)における上流側から順に、温度調整装置12、供給装置13、冷却装置15、記録ヘッド14、転写装置16、及びクリーニング装置20が配置されている。
【0024】
なお、記録装置100が、本発明の記録装置に相当し、中間転写ベルト10が、本発明の記録装置の中間転写体に相当する。また、供給装置13が本発明の記録装置の供給手段に相当し、温度調整装置12が本発明の記録装置の温度調整手段に相当する。また、記録ヘッド14が、本発明の記録装置のインク付与手段に相当し、転写装置16が転写手段に相当し、刺激付与装置18が刺激付与手段に相当する。
【0025】
供給装置13は、中間転写ベルト10上に硬化性溶液12Aを供給して、該中間転写ベルト10上に硬化性溶液層12Bを形成する。硬化性溶液12Aは、詳細は後述するが、外部からの刺激により硬化する硬化性材料と、記録ヘッド14から吐出されるインクに対して吸液性を有する吸液性材料と、を含んで構成されている。
【0026】
記録ヘッド14は、中間転写ベルト10上に形成された硬化性溶液層12Bにインク滴14Aを付与して、該硬化性溶液層12B上に画像Tを形成する。転写装置16は、画像Tの形成された硬化性溶液層12Bを記録媒体Pに接触させて圧力を加えることにより記録媒体P上に転写する。クリーニング装置20は、中間転写ベルト10表面に残留する硬化性溶液層12Bの残留物や付着した異物(記録媒体Pの紙粉等)等を除去する。
【0027】
供給装置13には、供給装置13中に貯留されている硬化性溶液12Aの温度を調整する、詳細を後述する温度調整装置12が設けられている。
【0028】
中間転写ベルト10の内側には、硬化性溶液層12B及び記録媒体Pの接触中に硬化性溶液層12Bを硬化させる刺激を硬化性溶液層12Bに供給する刺激付与装置18が設けられている。すなわち、刺激付与装置18は、中間転写ベルト10を介して、硬化性溶液層12Bの記録媒体Pと接触している領域に対向して配置されている。
【0029】
硬化性溶液12A及びこの硬化性溶液12Aにより形成された硬化性溶液層12Bは、詳細は後述するが、刺激として熱や紫外線等を付与されることにより硬化する。このため、刺激付与装置18は、硬化性溶液層12Bを構成する硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料の種類に応じた(すなわち、硬化性材料を硬化させる刺激に応じた)刺激を付与する構成とされている。例えば、硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料が、紫外線により硬化する材料であれば、刺激付与装置18としては紫外線を照射する紫外照射装置が挙げられ、熱により硬化する材料であれば、熱を付与する熱照射装置が挙げられる。
【0030】
中間転写ベルト10は、3つの支持ロール10A、支持ロール10B、支持ロール10C、及び加圧ロール16Bにより内周面側から張力を掛けつつ回転されるように支持されている。また中間転写ベルト10は、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
【0031】
中間転写ベルト10の材料としては、例えば、各種の樹脂(例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、フッ素系樹脂等)、各種のゴム(例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)等、ステンレス等の金属材料等が挙げられる。中間転写ベルト10は、単層構成でもよいし、積層構成でもよい。
【0032】
上記の通り、本実施形態においては、刺激付与装置18が中間転写ベルト10の内側に設けられているため、刺激は中間転写ベルト10を透過した後に硬化性溶液層12Bに供給される。したがって、中間転写ベルト10は、硬化性溶液層12Bに効率よく刺激を供給させるため、刺激透過性を有する材料で構成される。また、中間転写ベルト10は、耐刺激性の高い材料で構成される。
【0033】
例えば、刺激付与装置18が紫外線照射装置である場合、中間転写ベルト10を形成する材料としては、具体的には、例えば、フッ素系樹脂であるETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、ポリオレフィン系樹脂であるポリメチルペンテン等が挙げられる。
【0034】
さらに、刺激付与装置18が熱照射装置である場合、中間転写ベルト10を形成する材料としては、具体的には、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、4フッ化エチレンパーフルオロアルコキシ樹脂等に熱伝導性フィラーを添加した樹脂材料、シリコーンゴム、フッ素ゴム等に熱伝導性フィラーを添加した材料、ステンレス等の金属材料等が挙げられる。
【0035】
また、硬化性溶液層12Bに接する中間転写ベルト10の表面に表面離型層を設けてもよい。
表面離型層に用いられる材料としては、例えば、フッ素系樹脂材料等が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素樹脂、フッ素変性ウレタン及びシリコーン樹脂、共重合フッ素ゴム、フッ素樹脂−共重合ビニルエーテル、PFA(4フッ化エチレンパーフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合塗料)などの粉体塗料または樹脂チューブ、PTFE(4フッ化エチレン)塗料、PTFE分散ウレタン塗料、さらにETFE(ポリテトラフルオロエチレン)チューブ、PVdF(ポリビニリデンフルオライド)、PHV(ポリテトラフルオロビニリデン)樹脂材料等が挙げられる。
【0036】
中間転写ベルト10の表面自由エネルギー(γ)の値を低くするために、中間転写ベルト10の移動方向における供給装置13の上流側に、硬化性溶液層12Bの形成される前に中間転写ベルト10の硬化性溶液層12Bの形成される側にシリコーン系オイル、フッ素系オイル、ポリアルキレングリコールなどの離型剤を塗布する離型剤塗布装置を設けてもよい。離型剤塗布装置は特に限定されるものではなく、公知の塗布法(例えば、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布等)などを利用した装置が適用される。
【0037】
供給装置13は、硬化性溶液12Aを収納する筐体13Bと、該筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aを中間転写ベルト10へ供給する供給ローラ13Aと、供給された硬化性溶液12Aにより形成された硬化性溶液層12Bの層厚を規定するブレード13Cと、を含んで構成されている。
【0038】
供給装置13は、その供給ローラ13Aが中間転写ベルト10に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写ベルト10から離間する構成としてもよい。また、供給装置13は、独立した溶液供給システム(図示せず)より硬化性溶液12Aを筐体13Bへ供給させ、硬化性溶液12Aの供給がとぎれないようにしてもよい。硬化性溶液12Aの詳細については後述する。
【0039】
供給装置13は、上記構成に限られず、公知の供給法(塗布法:例えば、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布等)などを利用した装置が適用される。
【0040】
本実施の形態の記録装置100では、更に、温度調整装置12が設けられている。温度調整装置12は、温度センサ12G、撹拌部12C、駆動部12D、加熱冷却装置12E、メモリ12H、温度センサ12I、及び温度調整制御部12Fを含んで構成されている。これらの温度センサ12G、駆動部12D、メモリ12H、温度センサ12I、及び加熱冷却装置12Eは、温度調整制御部12Fに信号授受可能に接続されている。
【0041】
なお、加熱冷却装置12Eが本発明の記録装置の加熱冷却手段に相当し、メモリHは、記憶手段に相当し、温度調整制御部12Fが制御手段に相当する。また、撹拌部12Cが撹拌手段に相当し、温度センサ12Gが第1の温度情報取得手段に相当し、温度センサ12Iが第2の温度情報取得手段に相当する。
【0042】
温度調整装置12は、供給装置13の筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの温度を調整する装置である。温度センサ12Gは、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの温度を測定する。なお、温度センサ12Gは、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの温度を測定可能な位置に設けられていれば良いが、詳細には、供給ローラ13Aによって硬化性溶液12Aが中間転写ベルト10へ供給されるときの該硬化性溶液12Aの温度を測定可能な位置に設けられていればよい。撹拌部12Cは筐体13B内の硬化性溶液12Aを撹拌する部材であって駆動部12Dの駆動力により筐体13B内の硬化性溶液12Aを撹拌する。加熱冷却装置12Eは、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aを加熱または冷却する装置である。本実施の形態では、加熱冷却装置12Eは、筐体13Bの外側に接触配置されているとして説明するが、筐体13B内の硬化性溶液12Aを加熱または冷却可能な位置に設けられていれば良く、このような形態に限られない。
【0043】
また、温度センサ12Iは、中間転写ベルト10の温度を測定する。なお、温度センサ12Iは、中間転写ベルト10の温度を測定可能な位置を設けられていれば良いが、中間転写ベルト10の表面(硬化性溶液12Aを供給される側の表面)の温度を測定可能な位置に設けられていることが好ましい。
【0044】
上述のように、これらの温度センサ12G、駆動部12D、及び加熱冷却装置12Eは、温度調整制御部12Fに信号授受可能に接続されており、温度調整制御部12Fの制御によって制御される。
【0045】
上記温度調整制御部12Fは、記録装置100の装置各部を制御するための制御部11に信号授受可能に接続されており、例えば、制御部11から入力される信号に応じて、筐体13B内の硬化性溶液12Aを所望の温度に加熱または冷却する。
【0046】
この温度調整装置12によって筐体13B内の硬化性溶液12Aが加熱または冷却されることで、硬化性溶液12Aの温度が所望の温度に調整され、該温度調整された硬化性溶液12Aが供給装置13の供給ローラ13Aによって中間転写ベルト10へ供給される。すなわち、供給ローラ13Aによって中間転写ベルト10へ供給されるときの硬化性溶液12Aの粘度は、温度調整装置12によって調整される。
【0047】
本実施の形態では、温度調整装置12によって、筐体13B内の硬化性溶液12Aの粘度が予め定められた範囲になるように調整されて、供給装置13によって中間転写ベルト10へ供給される。ここでいう予め定められた範囲の粘度とは、せん断速度1000s−1以上で安定して測定できる条件での値を意味している。
【0048】
記録ヘッド14は、例えば、中間転写ベルト10の移動方向上流側から、ブラックインクを付与するための記録ヘッド14Kと、シアンインクを付与するための記録ヘッド14Cと、マゼンタインクを付与するための記録ヘッド14Mと、イエローインクを付与するための記録ヘッド14Yと、の各色の記録ヘッドを含んで構成されている。無論、記録ヘッド14の構成は上記構成に限られず、例えば、記録ヘッド14Kのみで構成してもよいし、記録ヘッド14C、記録ヘッド14M、及び記録ヘッド14Yのみで構成してもよい。
【0049】
各記録ヘッド14は、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルト10における非屈曲領域上で、且つ中間転写ベルト10表面と記録ヘッド14のノズル面との距離が例えば0.7から1.5mmに調整して配置されている。
【0050】
また、各記録ヘッド14は、例えば、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅を持つライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、従来のスキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いてもよい。
各記録ヘッド14のインク付与方式は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インク付与可能な方式であれば制限はない。なお、インクの詳細については後述する。
【0051】
転写装置16は、以下のように構成されている。具体的には、例えば、加圧ロール16B及び支持ロール10Cにより中間転写ベルト10を張架し、非屈曲領域を形成している。中間転写ベルト10の非屈曲領域において、加圧ロール16B及び支持ロール10Cに対向する位置には、記録媒体Pを支持する支持体22が設けられている。また、加圧ロール16Aは、中間転写ベルト10を介して加圧ロール16Bと対向する位置に配置され、支持体22に設けられた開口部(図示せず)を通して記録媒体Pに接触する。
すなわち、中間転写ベルト10及び記録媒体Pが加圧ロール16A及び加圧ロール16Bにより挟み込まれた位置(以下、「接触開始位置」と称する場合がある)から、支持ロール10C及び支持体22により挟み込まれた位置(以下、「剥離位置」と称する場合がある)までの転写領域においては、硬化性溶液層12Bは中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態となっている。
【0052】
刺激付与装置18は、中間転写ベルト10の内側に設けられ、転写領域の中間転写ベルト10を介して、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の硬化性溶液層12Bに刺激を供給する。
【0053】
刺激付与装置18の種類は、適用する硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料の種類に応じて選択される。具体的には、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化性材料を適用する場合、刺激付与装置18としては硬化性溶液12A(これにより形成された硬化性溶液層12B)に紫外線を照射する紫外線照射装置を適用する。また、熱の付与により硬化する熱硬化性材料を適用する場合、刺激付与装置18として硬化性溶液12A(これにより形成された硬化性溶液層12B)に熱を付与する熱付与装置を適用する。
【0054】
ここで、紫外線照射装置としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザー、キセノンランプ、UV−LEDなどが適用される。
【0055】
ここで、紫外線の照射条件としては、特に制限はなく、紫外線硬化性材料種、硬化性溶液層12Bの厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、メタルハライドランプを用いた場合で、積算光量10mJ/cmから1000mJ/cm等である。
【0056】
また、熱付与装置としては、例えば、ハロゲンランプ、セラミックヒータ、ニクロム線ヒータ、マイクロ波加熱、赤外線ランプなどが適用される。また、熱付与装置としては、電磁誘導方式の加熱装置も適用される。
【0057】
ここで、熱の付与条件としては、特に制限はなく、熱硬化性材料種、硬化性溶液層12Bの厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、空気中において、200℃環境で5min等である。
【0058】
記録媒体Pとしては、浸透媒体(例えば、普通紙や、コート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用される。記録媒体Pは、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品も含まれる。
【0059】
本実施形態に係る記録装置100では、中間転写ベルト10が回転駆動され、まず、供給装置13により中間転写ベルト10表面に硬化性溶液12Aが供給されて、中間転写ベルト10上に硬化性溶液層12Bが形成される。
【0060】
硬化性溶液層12Bの層厚(平均膜厚)は、特に制限はないが、画像形成性と転写性とを両立させる観点、コスト面での有利さの観点、及び硬化反応が速やかに進行する観点から、0.5μm以上100μm以下になるように形成される。
【0061】
また、硬化性溶液層12Bの厚みをインク滴14Aが硬化性溶液層12Bの最下層まで到達しない程度とすれば、記録媒体Pへの転写後では硬化性溶液層12Bのうちインク滴14Aが存在する領域が露出せず、インク滴14Aが存在しない領域が硬化後には保護層として機能する。
【0062】
次に、記録ヘッド14によりインク滴14Aを付与し、中間転写ベルト10上に供給された硬化性溶液層12Bに当該インク滴14Aを付与する。記録ヘッド14は所定の画像情報に基づき、硬化性溶液層12Bの所定の位置にインク滴14Aを付与する。
硬化性溶液層12Bは、インク滴14Aを付与された時、インク色材を固定化する特性を有する事が好ましい。
【0063】
この際、記録ヘッド14によるインク滴14Aの付与は、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルト10における非屈曲領域上で行われる。つまり、ベルト表面がたわみのない状態で硬化性溶液層12Bにインク滴14Aの付与がなされる。
【0064】
次に、転写装置16の加圧ロール16A及び加圧ロール16Bにより記録媒体Pと中間転写ベルト10とを挟み込んで圧力をかける。このとき、中間転写ベルト10上の硬化性溶液層12Bが記録媒体Pに接触する。その後、支持ロール10C及び支持体22によって挟まれた位置(剥離位置)までは、硬化性溶液層12Bが中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態が維持される。
【0065】
ここで、加圧ロール16A及び加圧ロール16Bによって硬化性溶液層12Bに加えられる圧力は、0.001mpA以上2mpA以下の範囲で制御される。
【0066】
次に、刺激付与装置18によって、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の(接触中の)硬化性溶液層12Bに、中間転写ベルト10を介して刺激が供給されることで、硬化性溶液層12Bが硬化する。具体的には、中間転写ベルト10上の硬化性溶液層12Bが記録媒体Pに接触した後(接触開始位置を通過した後)に刺激供給を開始し、硬化性溶液層12Bが中間転写ベルト10から剥離される前(剥離位置に到達する前)に刺激供給を終了する。
【0067】
刺激供給量としては、硬化性溶液層12Bが、中間転写ベルト10から剥離しやすくなる程度に硬化する量であることが望ましい。具体的には、例えば刺激が紫外線である場合、積算光量で10mJ/cm以上1000mJ/cm以下の範囲で制御される。
【0068】
次に、剥離位置において硬化性溶液層12Bが中間転写ベルト10から剥離されることにより、インク滴14Aによる画像Tが含まれる硬化性樹脂層(画像層)が記録媒体Pに形成される。
【0069】
硬化性溶液層12Bが記録媒体Pへ転写された後の中間転写ベルト10表面に残った硬化性溶液層12Bの残留物や異物はクリーニング装置20により除去され、再び、中間転写ベルト10上に、供給装置13により硬化性溶液12Aを供給して硬化性溶液層12Bを形成し、画像記録プロセスが繰り返される。
【0070】
以上のようにして、本実施形態に係る記録装置100では、画像記録が行われる。
【0071】
温度調整装置12では、中間転写ベルト10に硬化性溶液12Aが供給されたときの粘度が予め定められた範囲の粘度となるように、筐体13B中に貯留されている硬化性溶液12Aが該範囲の粘度を示すときの温度となるように加熱または冷却するように、温度調整を行う。
【0072】
この硬化性溶液12A及び硬化性溶液層12Bの粘度は、モジュール型粘度、粘弾性測定装置MARSII(Thermo Haake社)を用い、せん断速度1500s−1で測定したものを示した。
【0073】
この温度調整制御部12Fには、メモリ12Hが信号授受可能に接続されている。メモリ12Hには筐体13Bに貯留される対象の硬化性溶液12Aを識別するための硬化性溶液情報と、該硬化性溶液情報の硬化性溶液12Aの粘度と温度との関係を示す粘度特性情報と、が対応づけて記憶されている。
【0074】
この粘度特性情報とは、硬化性溶液12A及び硬化性溶液層12Bについて、せん断速度1500s−1で粘度を測定したときの、温度(℃)と粘度(mPa)との関係を示している。具体的には、この粘度特性情報は、例えば、図2のような関係を示し、せん断速度1000s−1を粘度測定条件として設定したときの、測定温度と測定された粘度との関係を示している。図2に示す例では、硬化性溶液12Aの粘度の範囲を、例えば、50mPa以上2000mPa以下の範囲と定めた場合に対応する温度条件は、10℃〜48℃の範囲内である。このため、図2に示す粘度特性を示す硬化性溶液12Aを用いる場合、温度調整装置12は、10℃〜48℃の温度となるように硬化性溶液12Aを加熱することで、粘度を50mPa以上2000mPa以下の範囲に調整する。
【0075】
このメモリ12Hには、供給対象の互いに粘度特性の異なる複数種類の硬化性溶液12Aを識別するための硬化性溶液情報と、各硬化性溶液に対応する粘度特性を示す粘度特性情報と、が対応づけて予め記憶されているものとする。
【0076】
以下に、温度調整装置12の温度調整制御部12Fで実行される処理を説明する。
【0077】
記録装置100の制御部11では、記録装置100の図示を省略する電源スイッチが操作されることで記録装置100の装置各部に電力が供給されると、供給装置13の筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aを識別するための硬化性溶液情報を、温度調整制御部12Fへ出力する。この硬化性溶液情報は、例えば、記録装置100の図示を省略する入出力部がユーザ等によって操作指示されることによって硬化性溶液情報が制御部11に入力され、入力された該硬化性溶液情報を温度調整制御部12Fへ出力することによって、温度調整制御部12Fに入力される。
【0078】
温度調整制御部12Fでは、記録装置100の図示を省略する電源スイッチが操作されることで記録装置100の装置各部に電力が供給されるに伴い、温度調整装置12にも電力が供給されることで、図3に示す処理ルーチンが実行される。
【0079】
ステップ100では、制御部11から硬化性溶液情報を取得したか否かを判別し、否定されると本ルーリンを終了し、肯定されるとステップ102へ進む。
【0080】
ステップ102では、上記ステップ100で取得した硬化性溶液情報に対応する粘度特性情報をメモリ12Hから読取り、次のステップ104において、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの粘度特性を示す粘度特性情報としてメモリ13Hに記憶する。
【0081】
ステップ106では、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの温度を検知する温度センサ12Gによる温度検知結果を読取る。
【0082】
次のステップ108では、上記ステップ102でメモリ13Hに記憶した粘度特性情報に基づいて、上記ステップ106で読み取った温度検知結果の温度情報に対応する粘度情報を読み取る。ステップ108の処理は、具体的には、例えば、粘度特性情報が図2に示す粘度特性を示す粘度特性情報である場合に、上記ステップ106で温度検知結果として30℃を示す情報を読み取った場合には、30℃に対応する粘度である410mPaを示す情報が粘度情報として読み取られる。
【0083】
次のステップ109では、上記ステップ108で読み取った粘度情報の粘度が、規定範囲内であるか否かを判別する。ステップ109におけるこの規定範囲としては、予め50mPa以上2000mPa以下の範囲を規定範囲としてメモリ13Hに記憶しておいて、この規定範囲内であるか否かを判別し、肯定されるとステップ120へ進み、否定されるとステップ110へ進む。
【0084】
上記ステップ109で否定されて、上記ステップ108で読み取った粘度情報の粘度が規定範囲外である場合には、ステップ110へ進み、ステップ110では、該規定範囲内の粘度情報に対応する温度情報を、上記ステップ104でメモリ13Hに記憶した粘度特性情報から読み取る。
【0085】
ステップ109では、例えば、上記ステップ104でメモリ13Hに記憶した粘度特性情報が図2に示す粘度特性を示す粘度特性情報である場合に、上記ステップ108で読み取った粘度情報が20mPaである場合には、規定範囲である50mPa以上2000mPa以下の範囲に対応する温度として、10℃〜48℃の範囲内の温度を読み取る。
【0086】
次のステップ112では、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの温度が上記ステップ110で読み取った温度となるように、加熱冷却装置12Eへ加熱または冷却を示す指示信号を出力する。
温度調整制御部12Fから加熱または冷却を示す指示信号を受け付けた加熱冷却装置12Eでは、受け付けた指示信号に含まれる温度に発熱または冷却されることで、該加熱冷却装置12Eに接して設けられた筐体13Bを介して内部に貯留されている硬化性溶液12Aを加熱または冷却する。
【0087】
次のステップ114では、駆動部12Dへ撹拌部12Cの撹拌開始を示す撹拌開始信号を出力する。撹拌開始信号を受け付けた駆動部12Dでは、撹拌部12Cを回転駆動させる。この撹拌部12Cの回転によって、硬化性溶液12Aが撹拌され、硬化性溶液12Aに含まれる吸液材料及び硬化性材料が硬化性溶液12A中で均一に分散される。
【0088】
次のステップ116では、温度センサ12Gによる温度検知結果を読取る。次のステップ118では、ステップ116で読み取った温度検知結果が、上記ステップ110で読み取った温度情報の温度と一致するか否かを判別し、否定されるとステップ116へ戻り、肯定されると、ステップ120へ進む。
【0089】
ステップ120では、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの粘度が規定範囲内の粘度に調整済であることを示す温度調整済情報を制御部11へ出力する。
【0090】
温度調整済情報を受け付けた制御部11では、記録装置100における画像形成処理を開始し、画像形成処理が終了したときに、温度調整制御部12Fへ画像形成終了信号を出力する。
【0091】
次のステップ122では、画像形成終了を示す画像形成終了信号が制御部11から入力されるまで否定判断を繰り返し、否定されると、上記ステップ106へ戻り、上記の温度調整処理を再度実行し、肯定されると、ステップ124へ進む。
【0092】
ステップ124では、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの加熱及び冷却の終了を示す加熱冷却終了信号を加熱冷却装置12Eへ出力する。加熱冷却終了信号を受け付けた加熱冷却装置12Eでは、硬化性溶液12Aの加熱及び冷却を終了する。
【0093】
次のステップ126では、駆動部12Dへ撹拌部12Cによる撹拌の停止を示す撹拌終了信号を出力した後に、本ルーチンを終了する。撹拌停止信号を受け付けた駆動部12Dでは、撹拌部12Cの撹拌駆動を停止する。
【0094】
上記ステップ100〜ステップ126の処理が実行されることによって、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aが、温度調整制御部12Fによる加熱冷却装置12E等の制御によって50mPa以上2000mPa以下の範囲の粘度を示すときの温度に加熱または冷却される。このため、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの粘度は、50mPa以上2000mPa以下の範囲内に調整され、該範囲内に温度調整された状態の硬化性溶液12Aが中間転写ベルト10へ供給されることとなる。
【0095】
このため、供給装置13から中間転写ベルト10への塗布時の粘度が50mPa以上2000mPa以下の範囲に調整された硬化性溶液12Aが、該中間転写ベルト10へ供給されることとなる。
【0096】
以上説明したように、本実施の形態の記録装置100によれば、温度調整装置12による硬化性溶液12Aの温度調整によって、中間転写ベルト10へ塗布されるときの硬化性溶液12Aの粘度が50mPa以上2000mPa以下の範囲に調整される。このため、中間転写ベルト10に塗布されたとき、所望の速度で塗布を行っても均一な薄層が得られる。一方、硬化性溶液保管時は塗布時よりも高粘度状態である為、吸液粒子の沈降が緩和され均一な分散状態を保つことが出来ると考えられる。
このように、中間転写ベルト10上に形成された硬化性溶液層12Bにおける吸液材料及び硬化性材料が均一に分散され、且つ均一で且つ薄い層厚の硬化性溶液層12Bが中間転写ベルト10上に形成されるので、記録ヘッド14によって付与されるインク滴14Aの滲みや流れ等が抑制され、高画質の画像形成が可能となると考えられる。
【0097】
なお、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの種類にもよるが、20℃以上60℃以下の範囲外の温度に硬化性溶液12Aを加熱または冷却することで、硬化性溶液12Aの変質が生じる場合がある。この硬化性溶液12Aの変質とは、変色や部分的に硬化反応が進むことによる粘度変動等を示している。
【0098】
このような硬化性溶液12Aの変質を避けるために、上記ステップ110〜ステップ118において硬化性溶液12Aの加熱または冷却温度は、20℃以上60℃以下の範囲内で且つ上記粘度が規定範囲内となる温度とすることが好ましい。
【0099】
なお、上記ステップ100〜ステップ126の処理において、撹拌部12Cによる筐体13B内の硬化性溶液12Aの撹拌は、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの粘度が規定範囲外である場合にのみ行う場合を説明したが、このような形態に限られず、記録装置100に電力が供給されたときに撹拌を開始するようにしてもよい。この場合には、例えば、上記ステップ100で肯定されて硬化性溶液情報を取得した後に、撹拌開始指示信号を駆動部12Dへ出力した後に、上記ステップ102の処理を行うようにすればよい。
【0100】
このようにすれば、筐体13B内に貯留された硬化性溶液12Aに含まれる吸液材料や硬化性材料等の各種材料が該硬化性溶液12A内において良好に分散され、中間転写ベルト10上に形成された硬化性溶液層12Bの硬化の度合い及びインクの吸収度合いが均一となり、更なる画質向上につながると考えられる。
【0101】
なお、温度調整装置12によって温度調整された硬化性溶液12Aの中間転写ベルト10への塗布時の粘度に比べて、記録ヘッド14によってインク滴14Aが付与されるときの硬化性溶液層12Bの粘度が高い事が好ましい。
【0102】
このように、記録ヘッド14によってインク滴14Aが付与されるときの硬化性溶液層12Bの粘度が、中間転写ベルト10に供給されたときの硬化性溶液12A(硬化性溶液層12B)の粘度より低くなるように記録装置100を構成するためには、例えば、記録装置100を下記構成とすればよい。
【0103】
具体的には、例えば、供給装置13と記録ヘッド14との距離を、供給装置13によって中間転写ベルト10上に塗布された直後の硬化性溶液12A(硬化性溶液層12B)の温度が、中間転写ベルト10の搬送により記録ヘッド14によってインク滴14Aを吐出されうる領域にまで搬送されるまでの間に、室温にまで温度低下するために十分な距離を隔てて、供給装置13と記録ヘッド14を配置すればよい。また、例えば、供給装置13によって中間転写ベルト10上に供給された硬化性溶液12Aによる硬化性溶液層12Bを冷却するための冷却装置15を記録ヘッド14と供給装置13との間に設ければよい。冷却装置15を設けることで、供給装置13によって中間転写ベルト10上に形成された硬化性溶液層12Bは、中間転写ベルト10の搬送によって冷却装置15の設けられた位置に達することで冷却されて粘度上昇した状態となる。このため、記録ヘッド14によってインク滴14Aの吐出される領域に達した硬化性溶液層12Bの粘度は、供給装置13によって中間転写ベルト10に塗布された直後の12Bの粘度より高く調整される。
【0104】
このようにすれば、中間転写ベルト10への供給時の硬化性溶液12Aの粘度が上記規定範囲(50mPa以上2000mPa以下)に調整されると共に、記録ヘッド14によりインク滴14Aの吐出される領域に到ったときには該供給時の粘度より高い粘度に調整される。このため、中間転写ベルト10に塗布されたときの硬化性溶液層12Bの層厚の均一化、含まれる硬化性材料及び吸液材料の均一な分散性が実現されると共に、インク滴が所望の領域を超えて拡散することによる画像流れが抑制され、更なる画質向上が図れる。
【0105】
なお、本実施の形態では、供給装置13の筐体13B内に硬化性溶液12Aを貯留し、この筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの温度調整を温度調整装置12によって行う場合を説明したが、筐体13Bを複数用意した形態であってもよい。
【0106】
この場合には、例えば、供給ローラ13Aを介して中間転写ベルト10に硬化性溶液12Aを直接供給するための硬化性溶液12Aを貯留する筐体(第1の筐体とする)と、該筐体に硬化性溶液12Aを供給するための筐体(第2の筐体とする)と、を別体として設ける。そして、第1の筐体の硬化性溶液12Aの最大貯留可能容量を、第2の筐体の硬化性溶液12Aの最大貯留可能容量に比べて少ない構成とし、より供給ローラ13Aの近傍に設けられている第1の筐体に上記温度調整装置12を設けるようにすればよい。
【0107】
このような構成とすれば、第2の筐体に比べて最大貯留可能容量の小さい第1の筐体内に貯留された硬化性溶液12Aの粘度が効率よく上記規定範囲内に調整される。
【0108】
なお、上記ステップ100〜ステップ126の処理において、さらに、中間転写ベルト10の温度に応じて、該中間転写ベルト10へ供給する硬化性溶液12Aの温度として算出した温度情報を補正し、補正した温度に硬化性溶液12Aを調整してもよい。
【0109】
この場合には、上記ステップ110で読み取った、規定範囲内粘度情報に対応する温度情報を、中間転写ベルト10の温度等に応じて補正し、補正した温度に硬化性溶液12Aの温度を調整すればよい。
【0110】
この場合には、温度調整装置12の温度調整制御部12Fでは、図6に示す処理を実行すればよい。なお、図3で示した処理ルーチンと同じ処理には同じ番号を付与して詳細な説明を省略する。
【0111】
温度調整制御部12Fでは、記録装置100の図示を省略する電源スイッチが操作されることで記録装置100の装置各部に電力が供給されるに伴い、温度調整装置12にも電力が供給されることで、図6に示す処理ルーチンが実行されて、ステップ100〜ステップ109の処理が実行される。
【0112】
ステップ100〜ステップ109の処理が実行されることで、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの温度を検知する温度センサ12Gによる温度検知結果が読み取られ、読み取った温度検知結果の温度情報に対応する粘度情報が粘度特性情報に基づいて読み取られる。そして、読み取った粘度情報の粘度が、規定範囲内(本実施の形態では、50mPa以上2000mPa以下の範囲)であるか否かが判別され、肯定されると、上記ステップ120〜ステップ126の処理が実行された後に本ルーチンを終了する。
【0113】
一方、上記ステップ109で否定されて、該読み取った粘度情報の粘度が規定範囲外である場合には、ステップ110へ進み、上記ステップ104でメモリ13Hに記憶した粘度特性情報から、該規定範囲内の粘度情報に対応する温度情報を読み取る。そして、ステップ200へ進む。
【0114】
次のステップ200では、中間転写ベルト10の温度を読み取る。ステップ200の処理は、中間転写ベルト10の温度を検知する温度センサ12Iによる温度検知結果を読み取ることによって可能とされる。
【0115】
次のステップ202では、上記ステップ110で読み取った温度情報の温度を補正する必要があるか否かを判断する。ステップ202の判断は、上記ステップ110で読み取った温度情報の温度に調整されることで上記規定範囲(本実施の形態では、50mPa以上2000mPa以下の範囲)の粘度に調整された状態の硬化性溶液12Aが、中間転写ベルト10に供給された後に、該中間転写ベルト10上において上記規定範囲外の粘度となるか否かを、判断する処理である。すなわち、該規定範囲外の粘度となる場合には、補正の必要有りと判別し、該規定範囲内の粘度となる場合には、補正の必要無し、と判別する。
【0116】
ステップ202における補正の必要が有るか否かの判別は、例えば、上記ステップ102で読み取った粘度特性情報における、ステップ200で読み取った中間転写ベルト10の温度に対応する粘度が、上記規定範囲内の粘度であるか否かを判別する。そして、規定範囲内の粘度である場合には、中間転写ベルト10上に供給された後の硬化性溶液12Aの粘度が中間転写ベルト10上で上記規定範囲外となる可能性が低いため、補正の必要無し、と判別すればよい。
一方、該粘度特性情報における、ステップ200で読み取った中間転写ベルト10の温度に対応する粘度が、上記規定範囲外の粘度である場合には、中間転写ベルト10上に供給された後の硬化性溶液12Aの粘度は、中間転写ベルト10上で上記規定範囲外の粘度となる可能性が高い。このため、この場合には、補正の必要有り、と判別すればよい。
【0117】
上記ステップ202で否定されて、上記ステップ110で読み取った温度情報の温度の補正の必要が無い場合には、上記ステップ112へ進む。そして、図3で説明したように、ステップ112〜ステップ126の処理が実行されて、ステップ110で読み取った温度情報の温度に調整された硬化性溶液12Aが中間転写ベルト10へ供給されて、画像形成処理が行われた後に本ルーチンを終了する。
【0118】
一方、上記ステップ202で肯定されて、上記ステップ110で読み取った温度情報の温度の補正の必要がある場合には、上記ステップ204へ進み、上記ステップ110で読み取った温度情報を補正する。
【0119】
ステップ202では、上記ステップ110で読み取った温度情報の温度に調整された硬化性溶液12Aが、少なくとも、上記ステップ200で読み取った温度の中間転写ベルト10上に供給されてから、中間転写ベルト10の搬送に伴って搬送されて記録ヘッド14によってインク滴14Aを吐出されて画像形成されるまでの間、上記規定範囲内の粘度を維持するように、上記ステップ110で読み取った温度情報を補正する。
【0120】
この補正は、上記ステップ200で読み取った中間転写ベルト10の温度、硬化性溶液12Aが中間転写ベルト10に供給されてから記録ヘッド14によってインク滴14Aを吐出されて画像形成されるまでの時間、及び上記ステップ110で読みとった温度情報(硬化性溶液12Aの調整対象の温度情報)等に応じて行われる。
【0121】
例えば、上記ステップ200で読み取った中間転写ベルト10の温度が、上記規定範囲内の粘度に対応する温度範囲より低温である場合には、該温度の中間転写ベルト10上に供給された硬化性溶液12Aの粘度が上記規定範囲内の粘度を維持するように、上記ステップ200で読み取った中間転写ベルト10の温度、硬化性溶液12Aが中間転写ベルト10に供給されてから記録ヘッド14によってインク滴14Aを吐出されて画像形成されるまでの時間、及び上記ステップ110で読みとった温度情報に基づいて、上記ステップ110で読み取った温度情報の温度が該温度より高くなるように補正する。
【0122】
反対に、中間転写ベルト10の温度が、上記規定範囲内の粘度に対応する温度範囲より高温である場合には、該温度の中間転写ベルト10上に供給された硬化性溶液12Aの粘度が該規定範囲内の粘度を維持するように、上記ステップ200で読み取った中間転写ベルト10の温度、硬化性溶液12Aが中間転写ベルト10に供給されてから記録ヘッド14によってインク滴14Aを吐出されて画像形成されるまでの時間、及び上記ステップ110で読みとった温度情報に基づいて、上記ステップ110で読み取った温度情報の温度が該温度より低くなるように補正する。
【0123】
次のステップ206では、筐体13B内に貯留されている硬化性溶液12Aの温度が、上記ステップ204で補正された補正後の温度情報の温度となるように、加熱冷却装置12Eへ加熱または冷却を示す指示信号を出力した後に、上記ステップ114へ進む。
【0124】
そして、上記ステップ114〜ステップ126の処理が実行された後に、本ルーチンを終了する。
【0125】
上述のように、上記ステップ110で読み取った、規定範囲内粘度情報に対応する温度情報を、中間転写ベルト10の温度に応じて補正し、補正した温度に硬化性溶液12Aの温度を調整すると、中間転写ベルト10の温度が変化しても、中間転写ベルト10上に供給された硬化性溶液12Aの粘度は上記規定範囲内の粘度に維持され、画像ムラの発生が抑制される。
【0126】
なお、本実施の形態では、記録ヘッド14は、ブラックインクを付与するための記録ヘッド14Kと、シアンインクを付与するための記録ヘッド14Cと、マゼンタインクを付与するための記録ヘッド14Mと、イエローインクを付与するための記録ヘッド14Yと、の各色の記録ヘッドを含んだ構成とされている場合を説明したが、図4に示すように、さらに、色材を含まない透明液を付与する透明液付与ヘッド17を設けた構成としてもよい。
【0127】
この透明液付与ヘッド17は、使用するインクの溶媒成分と同じ成分(例えば水)となる透明液を中間転写ベルト10上の硬化性溶液層12Bにおける非画像部に付与する。これにより、各記録ヘッド14K、記録ヘッド14C、記録ヘッド14M、及び記録ヘッド14Yからインクが付与されない非画像部も含めて硬化性溶液層12B全体が粘着性を発現し、押圧により硬化性溶液層12Bを記録媒体P上に全て転写(全面転写)することが可能となる。
【0128】
この透明液付与ヘッド17は、図4に示すように、記録ヘッド14より中間転写ベルト10の搬送方向上流側で且つ冷却装置15より該搬送方向下流側に配置されていてもよいし、図5に示すように、記録ヘッド14より中間転写ベルト10の搬送方向下流側で且つ転写装置16より該搬送方向上流側に配置された構成であってもよい。
【0129】
以下、硬化性溶液12Aの詳細について説明する。
【0130】
硬化性溶液12Aは、外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料と吸液性材料とを少なくとも含んでいる。ここで、硬化性溶液12Aに含有される「外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料」とは、外部からの刺激によって硬化し、「硬化性樹脂」となる材料を意味する。具体的には、例えば、硬化性のモノマー、硬化性のマクロマー、硬化性のオリゴマー、硬化性のプレポリマー等が挙げられる。
【0131】
硬化性材料としては、例えば、紫外線硬化性材料、熱硬化性材料等が挙げられる。紫外線硬化性材料は、硬化がし易く、他のものに比べ硬化速度も速く、取り扱いやすいため、最も望ましい。熱硬化性材料は、大掛りな装置を必要とすることなく硬化できる。なお、硬化性材料は、これらに限られず、例えば湿気、酸素等により硬化する硬化性材料を適用することもできる。
【0132】
紫外線硬化性材料を硬化することにより得られる「紫外線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂などが挙げられる。この場合の硬化性溶液12Aは、紫外線硬化性のモノマー、紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、及び紫外線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また、硬化性溶液12Aは、紫外線硬化反応を進行させるための紫外線重合開始剤を含んでいることが望ましい。さらに硬化性溶液12Aは、必要に応じて、重合反応をより進行させるための、反応助剤、重合促進剤等を含んでいてもよい。
【0133】
熱硬化性材料を硬化することにより得られる「熱硬化性樹脂」としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。この場合の硬化性溶液12Aは、熱硬化性のモノマー、熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、及び熱硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また重合の際に硬化剤を添加してもよい。また、硬化性溶液12Aは、熱硬化反応を進行させるための熱重合開始剤を含んでもよい。
【0134】
熱重合開始剤としては、例えば、プロトン酸/ルイス酸等の酸、アルカリ触媒、金属触媒などが挙げられる。
【0135】
以上のように、硬化性材料は、紫外線、熱等の外部エネルギーにより硬化(例えば、重合反応が進行することによる硬化)するものであれば何でもよい。
上記硬化性材料の中でも、画像記録の高速化という観点を考慮すると、硬化速度の速い材料(例えば、重合の反応速度が速い材料)が望ましい。このような硬化性材料としては、例えば、放射線硬化型の硬化性材料(上記紫外線硬化性材料等)が挙げられる。
【0136】
硬化性溶液の粘度は、記録ヘッド14によってインク滴14Aが塗布される領域に到ったときには、塗布されるインク滴14Aのインクの粘度よりも高いことがよい。
【0137】
上記硬化性溶液12Aは、インク中の着色剤を固定化する材料を含むことが望ましい。
着色剤を固定化する材料としては、インクに対して吸液性を有する材料(吸液性材料)が好ましい。吸液性材料とは、吸液性材料とインクを重量比30:100で24時間混合した後、混合液中からフィルターにより吸液性材料を取り出した時、吸液性材料の重量がインク混合前に対して5%以上増加するものである。
【0138】
吸液性材料は、例えば樹脂(以下、吸液樹脂と称する場合がある)や、表面親インク性を持たせた無機粒子(例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトなど)等があげられ、用いるインクに応じて適宜選択される。
具体的には、インクとして水性インクを用いる場合は、吸液性材料として吸水材料を用いることが望ましい。また、インクとして油性インクを用いる場合は、吸液性材料として吸油材料を用いることが望ましい。
【0139】
吸水材料としては、具体的には、例えば、ポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸及びその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、ポリマレイン酸およびその塩、スチレン−マレイン酸及びその塩から構成される共重合体等、前記それぞれの樹脂のスルホン酸変性体、それぞれの樹脂のリン酸変性体等、等が挙げられ、望ましくは、ポリアクリル酸およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、が挙げられる。これら樹脂は、未架橋でも架橋されていてもよい。
【0140】
また吸油材料としては、具体的には、例えば、ヒドロキシステアリン酸、コレステロール誘導体、ベンジリデンソルビトールといった低分子ゲル化剤や、ポリノルボルネン、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種ロジン類等が挙げられ、望ましくは、ポリノルボルネン、ポリプロピレン、ロジン類が挙げられる。
【0141】
吸液性材料が粒子状である場合には、体積平均粒径が0.05μm以上25μmの範囲で用いられる。
【0142】
この吸液性材料は硬化性溶液12A全体に対する比率で質量比で10%以上で用いられる。
【0143】
次に、硬化性溶液12Aに含まれる、その他の添加剤について説明する。
硬化性溶液12Aは、インクの成分を凝集又は増粘させる成分を含んでもよい。
【0144】
この機能を有する成分は、上記吸液樹脂粒子を構成する樹脂(吸水性樹脂)の官能基として含んでもよいし、化合物として含んでもよい。当該官能基としては、例えば、カルボン酸、多価金属カチオン、ポリアミン類等が挙げられる。
【0145】
また、当該化合物としては、無機電解質、有機酸、無機酸、有機アミンなどの凝集剤が挙げられる。
【0146】
凝集剤は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、凝集剤の含有量としては、0.01質量%以上の範囲で使用される。
【0147】
以下、記録装置100で用いられるインクの詳細について説明する。
【0148】
インクとしては、溶媒として水性溶媒を含む水性インク、溶媒として油性溶媒を含む油性インク、紫外線硬化型インク、相変化型ワックスインクなどが挙げられる。本実施形態においては、水性インク又は油性インクを用い、記録媒体として非浸透媒体を用いた場合でも、ヒーター等により溶媒を揮発させることなく良い画像定着性が得られる。
【0149】
水性インクとしては、例えば、記録材として水溶性染料又は顔料を水性溶媒に分散又は溶解したインクが挙げられる。また、油性インクとしては、例えば、記録材として油溶性染料を油性溶媒に溶解したインク、記録材として染料又は顔料を逆ミセル化して分散したインクが挙げられる。
【0150】
本実施形態においては、インクとして水性インクを用いることが望ましい。水性インクを用いる事で、油性インクや紫外線硬化型インクなどに比べ、インクジェットヘッドを含むシステムの長期信頼性を向上する事が出来る。この場合、上記硬化性溶液12Aに含まれる吸液性材料としては、吸水材料を用いることが望ましい。
【0151】
まず、記録材について説明する。記録材としては、主に色材が挙げられる。色材としては、染料、顔料のいずれも用いられるが、耐久性の点で顔料であること望ましい。顔料としては有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料ではファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。また、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
【0152】
また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等を顔料として使用する方法もある。
【0153】
黒色顔料の具体例としては、Raven7000(コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R(キャボット社製)、Color Black FW1(以上デグッサ社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく市販の黒色顔料が使用される。
【0154】
シアン色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Blue−1が挙げられるが、これに限定されるものではない。
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red−5等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
黄色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow−1等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0155】
ここで、色材として顔料を使用した場合には、併せて顔料分散剤を用いることが望ましい。使用される顔料分散剤としては、高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0156】
これら顔料分散剤は、単独で用いても、二種類以上を併用しても構わない。顔料分散剤の添加量は、顔料により大きく異なるため一概には言えないが、一般に顔料に対し、合計で0.1乃至100質量%が挙げられる。
【0157】
色材として水に自己分散可能な顔料も用いられる。水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
【0158】
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200等の市販の自己分散顔料等も使用される。
【0159】
記録材としては、その他、親水性のアニオン染料、直接染料、カチオン染料、反応性染料、高分子染料等や油溶性染料等の染料類、染料で着色したワックス粉・樹脂粉類やエマルション類、蛍光染料や蛍光顔料、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フェライトやマグネタイトに代表される強磁性体等の磁性体類、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される半導体や光触媒類、その他有機、無機の電子材料粒子類などが挙げられる。
【0160】
記録材の含有量(濃度)は、例えばインクに対して5乃至30質量%の範囲が挙げられる。記録材の体積平均粒径は、例えば10nm以上1000nm以下の範囲が挙げられる。
【0161】
次に水性溶媒について説明する。水性溶媒としては、水が挙げられ、特にイオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することがよい。また、水性溶媒と共に、水溶性有機溶媒を用いてもよい。水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
【0162】
水溶性有機溶媒としては、その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等も用いられる。
【0163】
水溶性有機溶媒は、1種単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。水溶性有機溶媒の含有量としては、例えば1質量%以上70質量%以下の範囲が挙げられる。
【0164】
次に、油性溶媒について説明する。油性溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、グリコール類、含窒素溶媒、植物油等の有機溶媒が使用される。上記溶媒は単独もしくは二種以上併用しても良い。
【0165】
次に、その他の添加剤について説明する。インクには、その他、必要に応じて、界面活性剤が添加される。
【0166】
これら界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、望ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が用いられる。
【0167】
また、インクには、その他、浸透性を調整する目的で浸透剤、インク吐出性改善等の特性制御を目的でポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等や、導電率、pHを調整するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属類の化合物等、その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤等も添加される。
【0168】
次に、インクの好適な特性について説明する。まず、インクの表面張力(ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定)は、20乃至45mN/mの範囲で制御される。
【0169】
インクは粘度(モジュール型粘度、粘弾性測定装置MARSII(Thermo Haake社)を用い、測定温度23℃、せん断速度1000s−1の条件で測定)が1.5mPa・s以上30mPa・s以下で用いられる。
【0170】
なお、インクは、上記構成に限定されるものではない。記録材以外に、例えば、液晶材料、電子材料など機能性材料を含むものであってもよい。
【実施例】
【0171】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
上記実施形態と同様な構成の記録装置(図1参照)を用いて、温度調整装置により温度調整した硬化性溶液を供給装置により中間転写ベルトに供給して、硬化性溶液層を形成し、その硬化性溶液層に記録ヘッドにより各色インクを付与して被硬化層上に画像を形成した。次いで、転写装置により記録媒体へ硬化性溶液層を接触させながら刺激付与装置により刺激を供給し、硬化性溶液層を硬化させて中間転写ベルトから剥離して記録媒体上に画像を形成した。実施例1における記録装置等の条件は以下の通りである。下記紫外線照射強度及び積算光量は、中間転写ベルトを透過した後の紫外線照射強度及び積算光量である。
【0172】
・中間転写ベルト:厚さ0.1mm、ベルト幅350mm、外径Φ168mmのETFE製無端ベルトにフッ素系樹脂を被覆したもの(プロセス速度:125mm/s)
・供給装置:リバースコーター
・温度調整装置:図1に示す構成の温度調整装置12を用い、図3に示す処理ルーチンを実行するべく、該処理ルーチンを示すプログラムを予めメモリに記憶した。
・各記録ヘッド:ピエゾ方式の記録ヘッド(解像度解像度1200×1200dpi(dpi:1インチ当たりのドット数、以下同様である)、ドロップサイズ2pL)
・転写装置(加圧ロール):径30mmの鋼製パイプにフッ素系樹脂を被覆したもの(中間転写ベルトに対する押し当て力:線圧2kgf/cm)
・刺激付与装置:メタルハライドランプ(紫外線照射強度240W/cmを積算光量で100mJ/cm照射)
・記録媒体:アート紙(OK金藤 王子製紙社製)
【0173】
また、硬化性溶液、及び各色のインクは、以下のように作製したものを用いた。
【0174】
−硬化性溶液−
(硬化性材料)
・ウレタンアクリレート(3官能) :60質量部
・アクロイルモルフィリンアクリレート :40質量部
(吸液材料)
・架橋ポリアクリル酸ナトリウム(体積平均粒子系3.0μm) :35質量部
(添加剤)
・界面活性剤 :2.0質量部
(光重合開始剤)
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン :2質量部
上記成分を、ボールミルを用いて50時間撹拌、混合を行うことで、硬化性溶液を調整した。
【0175】
調整した硬化性溶液について、モジュール型粘度、粘弾性測定装置MARSII(Thermo Haake社)を用い、せん断速度を1500s−1とし、22℃の測定温度で測定したところ、2120mPa・sであった。また、同条件で測定温度を32℃にしたところ、1520mPa・sであった。
【0176】
−ブラックインク−
カーボンブラック30質量部に顔料分散剤を3質量部加え、さらに、イオン交換水を加えて、総量を300質量部とした。この液を超音波ホモジナイザーを用いて分散した。この液を遠心分離装置で、遠心分離処理(8000rpm×30分)を施し、残渣部分100質量部を除去した。この液を1μmのフィルターを通過させることにより、顔料分散液を得た。
【0177】
次に、下記の各成分を十分混合し、1μmフィルターで加圧ろ過し、ブラックインクを調製した。インクの粘度は3.1mPas、表面張力は32mN/mであった。
・上記顔料分散液 ・・・40質量部
・グリセリン ・・・20質量部
・アセチレングリコールエチレンオキサイド付加物 ・・1.5質量部
・純水:35質量部
【0178】
−シアンインク−
・C.I.ピグメントブルー15:3 ・・・4質量部
・顔料分散剤 ・・・1.5質量部
・ジエチレングリコール ・・・・12質量部
・グリセリン ・・・・13質量部
・ブチルカルビトール ・・・・・5質量部
・1,3−ブタンジオール ・・・・・2質量部
上記組成を混合し、さらに純水およびNaOHを加えて調整したのち、2μmフィルターでろ過しシアンインクを得た。インクの粘度は3.9mPas、表面張力は28mN/mであった。
【0179】
−マゼンタインク−
・C.I.ピグメントレッド122 ・・・・5質量部
・顔料分散剤 ・・・3.5質量部
・プロピレングリコール ・・・10質量部
・グリセリン ・・・15質量部
・ジプロピレングリコール ・・・・4質量部
・テトラメチルデシンジオールオキシエチレン付加物 ・・1.5質量部
上記組成を混合し、さらに純水およびNaOHを加えて調整したのち、2μmフィルターでろ過し、マゼンタインクを得た。インクの粘度は4.1mPas、表面張力は32mN/mであった。
【0180】
−イエローインク−
・C.I.ピグメントイエロー74 ・・・・5質量部
・顔料分散剤 ・・・・3質量部
・ジエチレングリコール ・・・18質量部
・トリエチレングリコール ・・・10質量部
・1,2−ヘキサンジオール ・・・・3質量部
・オキシエチレンラウリルエーテル ・・0.5質量部
上記組成を混合し、さらに純水およびNaOHを加えて調整し、2μmフィルターでろ過し、イエローインクを得た。インクの粘度は4.1mPas、表面張力は35mN/mであった。
【0181】
なお、上記ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローの粘度の測定は、モジュール型粘度、粘弾性測定装置MARSII(Thermo Haake社)を用い、せん断速度を1000s−1とし、22℃の測定温度で測定した。
【0182】
<評価>
本実施例1で調整した硬化性溶液を、図1に示す構成の記録装置100における供給装置13の筐体13B内に充填し、温度調整装置12のメモリ12Hに、該硬化性溶液12Aを示す情報に対応する粘度特性情報として、22℃の温度情報に対応する粘度2120mPa・sを示す粘度情報を対応づけ、32℃の温度情報に対応する粘度1520mPa・sを示す粘度情報を対応づけて記憶した。
そして、記録装置100を22℃の環境下に設置した。このとき、温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃であった。このため、図3のステップ106で温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃を示す温度情報である。また、図3のステップ110において規定範囲内粘度情報に対応する温度情報としては、1520mPa・sを示す粘度情報に対応する温度情報である50℃を示す温度情報を読み取るものとした。
【0183】
上記条件の記録装置において、中間転写ベルト上に形成された硬化性溶液層の層厚の均一性について評価を行った。
【0184】
(層厚均一性)
―層厚均一性評価―
液供給装置により硬化性溶液を中間転写ベルトに供給して被硬化層を形成し、その被硬化層上に記録ヘッドにより各インクを吐出して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ被硬化層を転写した後、刺激供給装置により刺激を供給し被硬化層を硬化させて、画像を形成した。
中間転写ベルト上に形成された被硬化層に画像のカバレッジ50%の150mm×150mmの画像を印字し装置を停止、目視にて画像を観察した。
下記評価基準で評価を行った。評価は10回行い判定し評価結果を表1に示した。
【0185】
―評価基準―
以下の評価基準で評価を行った。
G1:(目視で筋、ムラが見られない。)
G2:(目視により筋は無し。ムラはかすかに見られる。)
G3:(目視により筋またはムラが明らかに見られる。)
【0186】
[実施例2]
実施例2では、実施例1で用いた硬化性溶液に変えて、下記硬化性溶液を用いた。
・ウレタンアクリレート(6官能) :40質量部
・ポリエステルアクリレート(4官能) :30質量部
・アクロイルモルフィリンアクリレート :30質量部
(吸液材料)
・架橋ポリアクリル酸ナトリウム(体積平均粒子系3.0μm) :35質量部
(添加剤)
・界面活性剤 :2.0質量部
(光重合開始剤)
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン :2質量部
上記成分を、ボールミルを用いて50時間撹拌、混合を行うことで、硬化性溶液を調整した。
【0187】
調整した硬化性溶液について、モジュール型粘度、粘弾性測定装置MARSII(Thermo Haake社)を用い、せん断速度を1500s−1とし、22℃の測定温度で測定したところ、3500mPa・sであった。また、同条件で測定温度を55℃にしたところ、1750mPa・sであった。
【0188】
なお、上記硬化性溶液以外のインク等の材料としては、実施例1で用いた材料と同じ材料を用いた。
【0189】
<評価>
実施例2で調整した硬化性溶液を、図1に示す構成の記録装置100における供給装置13の筐体13B内に充填し、温度調整装置12のメモリ12Hに、該硬化性溶液12Aを示す情報に対応する粘度特性情報として、22℃の温度情報に対応する粘度3500mPa・sを示す粘度情報を対応づけ、55℃の温度情報に対応する粘度1750mPa・sを示す粘度情報を対応づけて記憶した。
そして、記録装置100を22℃の環境下に設置した。このとき、温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃であった。このため、図3のステップ106で温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃を示す温度情報である。また、図3のステップ110において規定範囲内粘度情報に対応する温度情報としては、1430mPa・sを示す粘度情報に対応する温度情報である55℃を示す温度情報を読み取るものとした。
【0190】
上記条件の記録装置において、中間転写ベルト上に形成された硬化性溶液層の層厚の均一性について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0191】
[実施例3]
実施例3では、実施例1で用いた硬化性溶液に変えて、下記硬化性溶液を用いた。
・ウレタンアクリレート(3官能):15質量部
・ポリエステルアクリレート(2官能) 35質量部
・アクロイルモルフィリンアクリレート :50質量部
(吸液材料)
・架橋ポリアクリル酸ナトリウム(体積平均粒子系3.0μm) :35質量部
(添加剤)
・界面活性剤 :2.0質量部
(光重合開始剤)
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン :2質量部
上記成分を、ボールミルを用いて50時間撹拌、混合を行うことで、硬化性溶液を調整した。
【0192】
調整した硬化性溶液について、モジュール型粘度、粘弾性測定装置MARSII(Thermo Haake社)を用い、せん断速度を1500s−1とし、22℃の測定温度で測定したところ、2100mPa・sであった。また、同条件で測定温度を55℃にしたところ、50mPa・sであった。
【0193】
なお、上記硬化性溶液以外のインク等の材料としては、実施例1で用いた材料と同じ材料を用いた。
【0194】
<評価>
実施例3で調整した硬化性溶液を、図1に示す構成の記録装置100における供給装置13の筐体13B内に充填し、温度調整装置12のメモリ12Hに、該硬化性溶液12Aを示す情報に対応する粘度特性情報として、22℃の温度情報に対応する粘度2100mPa・sを示す粘度情報を対応づけ、55℃の温度情報に対応する粘度50mPa・sを示す粘度情報を対応づけて記憶した。
そして、記録装置100を22℃の環境下に設置した。このとき、温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃であった。このため、図3のステップ106で温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃を示す温度情報である。また、図3のステップ110において規定範囲内粘度情報に対応する温度情報としては、50mPa・sを示す粘度情報に対応する温度情報である55℃を示す温度情報を読み取るものとした。
【0195】
上記条件の記録装置において、中間転写ベルト上に形成された硬化性溶液層の層厚の均一性について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0196】
[実施例4]
実施例4では、実施例1で用いた硬化性溶液に変えて、下記硬化性溶液を用いた。
・ウレタンアクリレート(4官能) :50質量部
・ポリエステルアクリレート(2官能) :30質量部
・アクロイルモルフィリンアクリレート :20質量部
(吸液材料)
・架橋ポリアクリル酸ナトリウム(体積平均粒子系3.0μm) :35質量部
(添加剤)
・界面活性剤 :2.0質量部
(光重合開始剤)
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン :2質量部
上記成分を、ボールミルを用いて50時間撹拌、混合を行うことで、硬化性溶液を調整した。
【0197】
調整した硬化性溶液について、モジュール型粘度、粘弾性測定装置MARSII(Thermo Haake社)を用い、せん断速度を1500s−1とし、22℃の測定温度で測定したところ、3500mPa・sであった。また、同条件で測定温度を48℃にしたところ、2000mPa・sであった。
【0198】
なお、上記硬化性溶液以外のインク等の材料としては、実施例1で用いた材料と同じ材料を用いた。
【0199】
<評価>
実施例4で調整した硬化性溶液を、図1に示す構成の記録装置100における供給装置13の筐体13B内に充填し、温度調整装置12のメモリ12Hに、該硬化性溶液12Aを示す情報に対応する粘度特性情報として、22℃の温度情報に対応する粘度3500mPa・sを示す粘度情報を対応づけ、48℃の温度情報に対応する粘度2000mPa・sを示す粘度情報を対応づけて記憶した。
そして、記録装置100を22℃の環境下に設置した。このとき、温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃であった。このため、図3のステップ106で温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃を示す温度情報である。また、図3のステップ110において規定範囲内粘度情報に対応する温度情報としては、2000mPa・sを示す粘度情報に対応する温度情報である48℃を示す温度情報を読み取るものとした。
【0200】
上記条件の記録装置において、中間転写ベルト上に形成された硬化性溶液層の層厚の均一性について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0201】
[実施例5]
実施例5では、実施例1で用いた硬化性溶液に変えて、下記硬化性溶液を用いた。
・ウレタンアクリレート(4官能) :40質量部
・ポリエステルアクリレート(4官能) :10質量部
・アクロイルモルフィリンアクリレート :50質量部
(吸液材料)
・架橋ポリアクリル酸ナトリウム(体積平均粒子系3.0μm) :35質量部
(添加剤)
・界面活性剤 :2.0質量部
(光重合開始剤)
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン :2質量部
上記成分を、ボールミルを用いて50時間撹拌、混合を行うことで、硬化性溶液を調整した。
【0202】
調整した硬化性溶液について、モジュール型粘度、粘弾性測定装置MARSII(Thermo Haake社)を用い、せん断速度を1500s−1とし、22℃の測定温度で測定したところ、2600mPa・sであった。また、同条件で測定温度を45℃にしたところ、500mPa・sであった。
【0203】
なお、上記硬化性溶液以外のインク等の材料としては、実施例1で用いた材料と同じ材料を用いた。
【0204】
<評価>
実施例3で調整した硬化性溶液を、図1に示す構成の記録装置100における供給装置13の筐体13B内に充填し、温度調整装置12のメモリ12Hに、該硬化性溶液12Aを示す情報に対応する粘度特性情報として、22℃の温度情報に対応する粘度2600mPa・sを示す粘度情報を対応づけ、45℃の温度情報に対応する粘度500mPa・sを示す粘度情報を対応づけて記憶した。
そして、記録装置100を22℃の環境下に設置した。このとき、温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃であった。このため、図3のステップ106で温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃を示す温度情報である。また、図3のステップ110において規定範囲内粘度情報に対応する温度情報としては、500mPa・sを示す粘度情報に対応する温度情報である45℃を示す温度情報を読み取るものとした。
【0205】
上記条件の記録装置において、中間転写ベルト上に形成された硬化性溶液層の層厚の均一性、硬化性溶液層における吸液性材料及び硬化性材料の分散安定性、及び画質について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0206】
[実施例6]
実施例6では、実施例1の硬化性液を用いた。調整した硬化性溶液について、モジュール型粘度、粘弾性測定装置MARSII(Thermo Haake社)を用い、せん断速度を1500s−1とし、22℃の測定温度で測定したところ、2120mPa・sであった。また、同条件で測定温度を44℃にしたところ、1000mPa・sであった。
【0207】
なお、上記硬化性溶液以外のインク等の材料としては、実施例1で用いた材料と同じ材料を用いた。
【0208】
<評価>
実施例6で調整した硬化性溶液を、図1に示す構成の記録装置100における供給装置13の筐体13B内に充填し、温度調整装置12のメモリ12Hに、該硬化性溶液12Aを示す情報に対応する粘度特性情報として、22℃の温度情報に対応する粘度2120mPa・sを示す粘度情報を対応づけ、44℃の温度情報に対応する粘度1000mPa・sを示す粘度情報を対応づけて記憶した。
そして、記録装置100を22℃の環境下に設置した。このとき、温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃であった。このため、図3のステップ106で温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃を示す温度情報である。また、図3のステップ110において規定範囲内粘度情報に対応する温度情報としては、1000mPa・sを示す粘度情報に対応する温度情報である44℃を示す温度情報を読み取るものとした。
【0209】
上記条件の記録装置において、中間転写ベルト上に形成された硬化性溶液層の層厚の均一性、硬化性溶液層における吸液性材料及び硬化性材料の分散安定性、及び画質について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0210】
[実施例7]
実施例7では、実施例1の硬化性溶液を用いると共に、硬化性溶液以外のインク等の材料としては、実施例1で用いた材料と同じ材料を用いた。
【0211】
<評価>
実施例1の評価条件において、図3のステップ114における撹拌部12Cの撹拌開始を示す撹拌開始信号出力処理を行わず、撹拌部12Cによる回転を行わなかった以外は、実施例1と同じ評価条件で、中間転写ベルト上に形成された硬化性溶液層の層厚の均一性について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示した。
また、実施例1および実施例7について、以下の画質評価条件において、画質評価を行った。評価結果を表2に示した。
【0212】
―画質評価―
液供給装置により硬化性溶液を中間転写ベルトに供給して被硬化層を形成し、その被硬化層上に記録ヘッドにより各インクを吐出して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ被硬化層を転写した後、刺激供給装置により刺激を供給し被硬化層を硬化させて、画像を形成した。
中間転写ベルト上に形成された被硬化層に2ポイントから10ポイントまでの文字を印字し、転写装置により記録媒体へ被硬化層を転写した。記録媒体に100枚連続で印字する印字テストを実施した。100枚目の印刷画像について、評価を行った。
【0213】
―評価基準―
以下の評価基準で評価を行った。
G1:線画像に、局地的な太りが見られ、文字が鮮明である。
G2:線画像に、局地的な太りが見られて、つぶれた文字が確認される。
【0214】
[実施例8]
実施例8では、実施例1の硬化性溶液を用いると共に、硬化性溶液以外のインク等の材料としては、実施例1で用いた材料と同じ材料を用いた。
【0215】
<評価>
実施例1の評価条件において、図3の処理ルーチンに替えて、図6の処理ルーチンを実行した以外は、実施例1と同じ評価条件で、中間転写ベルト上に形成された硬化性溶液層の層厚の均一性について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0216】
[比較例1]
比較例1では、実施例1で用いた硬化性溶液に変えて、下記硬化性溶液を用いた。
−硬化性溶液−
(硬化性材料)
・シリコーン変性アクリルHC1101 :20質量部
・アクロイルモルフィリンアクリレート :80質量部
(吸液材料)
・架橋ポリアクリル酸ナトリウム(体積平均粒子系3.0μm) :35質量部
(添加剤)
・界面活性剤 :2.0質量部
(光重合開始剤)
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン :2質量部
【0217】
調整した硬化性溶液について、モジュール型粘度、粘弾性測定装置MARSII(Thermo Haake社)を用い、せん断速度を1500s−1とし、22℃の測定温度で測定したところ、2120mPa・sであった。また、同条件で測定温度を65℃にしたところ、40mPa・sであった。
【0218】
なお、上記硬化性溶液以外のインク等の材料としては、実施例1で用いた材料と同じ材料を用いた。
【0219】
<評価>
比較例1で調整した硬化性溶液を、図1に示す構成の記録装置100における供給装置13の筐体13B内に充填し、温度調整装置12のメモリ12Hに、該硬化性溶液12Aを示す情報に対応する粘度特性情報として、22℃の温度情報に対応する粘度2120mPa・sを示す粘度情報を対応づけ、65℃の温度情報に対応する粘度40mPa・sを示す粘度情報を対応づけて記憶した。
そして、記録装置100を22℃の環境下に設置した。このとき、温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃であった。このため、図3のステップ106で温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は22℃を示す温度情報である。また、図3のステップ110において規定範囲内粘度情報に対応する温度情報としては、40mPa・sを示す粘度情報に対応する温度情報である65℃を示す温度情報を読み取るものとした。
【0220】
上記条件の記録装置において、中間転写ベルト上に形成された硬化性溶液層の層厚の均一性について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0221】
[比較例2]
比較例2では、実施例1で用いた硬化性溶液に変えて、下記硬化性溶液を用いた。
−硬化性溶液−
(硬化性材料)
・シリコーン変性アクリルHC1101 :70質量部
・アクロイルモルフィリンアクリレート :30質量部
(吸液材料)
・架橋ポリアクリル酸ナトリウム(体積平均粒子系3.0μm) :35質量部
(添加剤)
・界面活性剤 :2.0質量部
(光重合開始剤)
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン :2質量部
【0222】
調整した硬化性溶液について、モジュール型粘度、粘弾性測定装置MARSII(Thermo Haake社)を用い、せん断速度を1500s−1とし、22℃の測定温度で測定したところ、2120mPa・sであった。また、同条件で測定温度を40℃にしたところ、1512mPa・sであった。
【0223】
なお、上記硬化性溶液以外のインク等の材料としては、実施例1で用いた材料と同じ材料を用いた。
【0224】
<評価>
比較例1で調整した硬化性溶液を、図1に示す構成の記録装置100における供給装置13の筐体13B内に充填し、温度調整装置12のメモリ12Hに、該硬化性溶液12Aを示す情報に対応する粘度特性情報として、22℃の温度情報に対応する粘度2120mPa・sを示す粘度情報を対応づけ、40℃の温度情報に対応する粘度1512mPa・sを示す粘度情報を対応づけて記憶した。
そして、記録装置100を40℃の環境下に設置した。このとき、温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は40℃であった。このため、図3のステップ106で温度センサ12Gによって読み取られる筐体13B内の硬化性溶液12Aの温度は40℃を示す温度情報である。また、図3のステップ110において規定範囲内粘度情報に対応する温度情報としては、1512mPa・sを示す粘度情報に対応する温度情報である40℃を示す温度情報を読み取るものとした。
【0225】
上記条件の記録装置において、中間転写ベルト上に形成された硬化性溶液層の層厚の均一性について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0226】
【表1】

【0227】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0228】
【図1】本実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【図2】本実施形態において用いられる硬化性溶液の粘度特性の一例を示す線図である。
【図3】温度調整装置の温度調整制御部で実行される処理を示すフローチャートである。
【図4】本実施形態における記録装置の図1とは異なる形態を示す模式図である。
【図5】本実施形態における記録装置の図1及び図4とは異なる形態を示す模式図である。
【図6】温度調整装置の温度調整制御部で実行される処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0229】
100 記録装置
10 中間転写ベルト
12G 温度センサ
12E 加熱冷却装置
12C 撹拌部
12 温度調整装置
12F 温度調整制御部
12I 温度センサ
13 供給装置
14 記録ヘッド
16 転写装置
18 刺激付与装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間転写体と、
外部からの刺激により硬化する硬化性材料及び吸液性材料を少なくとも含む硬化性溶液を前記中間転写体上に供給する供給手段と、
前記硬化性溶液の温度情報を取得する第1の温度情報取得手段と、
前記中間転写体上に供給される前記硬化性溶液の温度を予め定められた温度範囲に調整する温度調整手段と、
前記中間転写体上に形成された硬化性溶液層にインクを付与するインク付与手段と、
前記インクの付与された前記硬化性溶液層を記録媒体に接触させ、前記中間転写体から該記録媒体へ前記硬化性溶液層を転写する転写手段と、
前記硬化性溶液層を硬化させる前記刺激を前記硬化性溶液層に付与する刺激付与手段と、を備えた記録装置。
【請求項2】
前記供給手段は、前記硬化性溶液を貯留する貯留手段を備え、該貯留手段に貯留された該硬化性溶液を前記中間転写体へ供給し、
前記温度調整手段は、
前記貯留手段に貯留された前記硬化性溶液を加熱または冷却する加熱冷却手段と、
前記硬化性溶液の温度と粘度との関係を示す粘度特性情報を予め記憶する記憶手段と、
前記第1の温度情報取得手段によって取得された温度情報と前記粘度特性情報に基づいて、前記硬化性溶液を予め定められた範囲の粘度とするための温度範囲を算出し、該算出した温度範囲となるように前記加熱冷却手段を制御する制御手段と、
を有する請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記温度調整手段は、
前記中間転写体の温度情報を取得する第2の温度情報取得手段を有し、
前記制御手段は、前記第2の温度情報取得手段によって取得された温度に基づいて、前記中間転写体上に供給された前記硬化性溶液の粘度が前記予め定められた範囲の粘度となるように、前記第1の温度情報取得手段によって取得された温度情報と前記粘度特性情報とに基づいて算出された温度範囲を補正し、該補正された温度範囲となるように前記加熱冷却手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記硬化性溶液の予め定められた範囲の粘度が、50mPa・s以上2000mPa・s以下であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記粘度調整手段は、前記貯留部材中に貯留された前記硬化性溶液を撹拌する撹拌部材を備えた請求項2〜請求項4の何れか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記供給手段によって前記中間転写体上に供給されるときの前記硬化性溶液の粘度は、前記インク付与手段によってインクを付与されるときの前記硬化性溶液層の粘度より高いことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−76152(P2010−76152A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−244824(P2008−244824)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】