説明

記録装置

【課題】記録装置の内部で発生する全周波数領域の騒音の低減を行うことができる記録装置を提供する。
【解決手段】記録用紙Pに記録を施す記録装置11は、記録用紙Pに記録を施す際に騒音を発生する騒音源と、騒音源を内部に収容した本体ケース16と、本体ケース16の内部に騒音源の収容空間部30とは別に独立したスキャナー空間部28を仕切り形成する仕切り壁31と、収容空間部30とスキャナー空間部28とを連通する連通管部32と、を備え、スキャナー空間部28の内面において連通管部32の軸方向と交差する内面部位は、当該スキャナー空間部28の内面において他の内面部位を形成する壁面材料よりも面密度の高い原稿台ガラス26により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体に印刷処理(記録処理)を施す記録装置として、例えばインクを記録用紙(記録媒体)に噴射するインクジェット式記録装置が広く知られている。こうした記録装置では、例えば記録用紙の搬送機構や記録機構などが作動時に騒音を放出するため、近時は様々な騒音抑制策を施した記録装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の記録装置では、記録装置内で発生した騒音を低減させるために、記録装置内のデッドスペースに共鳴管と反射面を形成している。すなわち、記録装置から発生した騒音の1/2波長の遅延音を共鳴管により発生させ、その遅延音を反射面により反射させることで増幅させた遅延伝播音と、記録装置から発生した騒音の直接伝播音とを干渉させることにより、騒音の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−307890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の共鳴管を用いた従来の記録装置では、特定周波数の音のみが騒音抑制の対象音とされる。しかしながら、記録装置においては、特定周波数の音のみでなく、全周波数領域の音が騒音になり得る。そのため、従来の記録装置では、特定周波数以外の音が騒音となって記録装置の内部から外部へ透過する虞があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録装置の内部で発生する全周波数領域の騒音の低減を行うことができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、記録媒体に記録を施す際に騒音を発生する騒音源と、当該騒音源を内部に収容した本体ケースと、前記本体ケースの内部に前記騒音源の収容空間部とは別に独立した部分空間部を仕切り形成する仕切り部と、前記収容空間部と前記部分空間部とを連通する連通管部と、を備え、前記部分空間部の内面において前記連通管部の軸方向と交差する内面部位は、当該部分空間部の内面において他の内面部位を形成する壁面材料よりも面密度の高い高密度体により形成されている。
【0008】
この構成によれば、騒音源の収容空間部から連通管部を通過して部分空間部内に伝搬した特定周波数以外の騒音を、その部分空間部の内面において連通管部の軸方向と交差する高密度体の内面部位により反射して遮音することができる。したがって、そうした騒音が記録装置外に漏れ出ることを抑制でき、記録装置の内部で発生する全周波数領域の騒音の低減ができる。
【0009】
また、本発明の記録装置は、前記連通管部の開口を覆蓋する多孔質材からなる吸音材をさらに備えている。
この構成によれば、記録装置内で発生した騒音が連通管部を通過するときに、特定周波数以外の騒音を吸音材により吸音できる。したがって、騒音を効果的に低減することができる。
【0010】
また、本発明の記録装置において、前記吸音材は、前記連通管部における前記部分空間部側の開口を覆蓋する。
この構成によれば、部分空間部の高密度体により形成された内面部位に当たった後に連通管部側に向けて反射した騒音を吸音材により吸音することができる。したがって、さらに騒音を効果的に低減できる。
【0011】
また、本発明の記録装置は、前記収容空間部内で前記騒音源が発生させた騒音を前記連通管部の方向に誘導する誘導部材をさらに備えている。
この構成によれば、誘導部材により騒音を連通管部に導くため、収容空間部内で発生した騒音の拡散を抑制して、効果的に吸音及び遮音することができる。
【0012】
また、本発明の記録装置は、原稿内容を読み取る画像読取部を備え、当該画像読取部において、前記原稿内容を読み取って画像データを取得するために画像データ取得手段を往復移動させる移動空間が前記部分空間部により構成されると共に、前記原稿内容を読み取られる前記原稿を保持する原稿台が前記高密度体により構成されている。
【0013】
この構成によれば、騒音を吸音及び遮音するための共鳴空間として機能する部分空間部及びその高密度体からなる内面を、既存の画像読込部における画像データ取得手段の移動空間及び原稿台にて兼用できるので、部品数の増加や更なる共鳴空間のためのスペース確保が必要でなくなる。したがって、装置の大型化を抑制しつつ、騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態における記録装置の斜視図。
【図2】実施形態における記録装置の概略正断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式記録装置に具体化した実施形態を図1及び図2に従って説明する。なお、本実施形態のインクジェット式記録装置(以下、「記録装置」と略記する)11は、印刷処理(記録処理)と原稿に記載された画像(テキストや図形等の原稿内容)を読み取り、それぞれの画像に対応する形式の電子データを生成する画像読取処理を実行可能な複合機である。
【0016】
図1に示すように、記録装置11は、その下部に印刷処理を行うプリンター部12を備えると共に、その上部に画像読取処理を行う画像読取部としてのスキャナー部13を備えている。プリンター部12は樹脂材料からなる有底略箱体形状の下部ケース14を有する一方、スキャナー部13は下部ケース14よりも上下方向の寸法が小さい樹脂材料からなる有底略箱体形状の上部ケース15を有している。そして、下部ケース14の上側に上部ケース15が積み重ねられることにより、記録装置11の外郭形状を規定する本体ケース16が構成されている。
【0017】
また、記録装置11における本体ケース16の後面(図2では右面)側には、記録媒体としての記録用紙Pが積層状態でセットされるサポート17aを有する自動給紙機構17が設けられている。そして、本体ケース16の前面側において、その上部には操作パネル18が設けられるとともに、その下部には本体ケース16内から本体ケース16外に排出される記録用紙Pを支持可能な排紙部19aを有する排紙口19が開口している。
【0018】
図2に示すように、プリンター部12の下部ケース14内には、記録を施されるために搬送される記録用紙Pを下方から支持する支持面20aを有したプラテン20が下部ケース14の底壁14a上に設けられている。プラテン20の支持面20a上には、図示しない紙送りモーターの駆動に基づきプラテン20よりも記録用紙Pの搬送方向の上流側となる位置に設けられた上流側ローラー21が回転することにより、記録用紙Pが一枚ずつ後方側から給紙口17bを通過して給紙されるようになっている。そして、上流側ローラー21の回転によってプラテン20の支持面20a上に給紙された記録用紙Pは、プラテン20よりも記録用紙Pの搬送方向の下流側に設けられた下流側ローラー22の回転に伴って前方に搬送されることにより、排紙口19から記録装置11の本体ケース16外に排紙されるようになっている。
【0019】
また、プラテン20の上方には、記録用紙Pの搬送方向と直交する左右方向に延びるガイド軸23が架設されている。ガイド軸23にはキャリッジ24が、ガイド軸23の軸線方向に沿って往復移動可能に支持されている。そして、キャリッジ24は、例えば駆動モーター及び駆動ベルトなどによって構成される図示しない駆動機構によって、ガイド軸23の軸線方向に沿って往復移動される。また、キャリッジ24の下面には、記録用紙Pに向かってインクを噴射する記録ヘッド25が設けられている。
【0020】
図2に示すように、スキャナー部13の外郭形状を規定する上部ケース15の開口部15aには、原稿Gを載置するための四角形状の透明ガラス板等で形成された原稿台ガラス26が開口部15aを閉塞するように固定されている。また、スキャナー部13の上部ケース15には、原稿を読み取る際や不使用時に原稿台ガラス26を覆う開閉可能な原稿台カバー27が後面側に形成されたヒンジによって開閉可能に設けられている。
【0021】
また、スキャナー部13の上部ケース15及び原稿台ガラス26により形成されるスキャナー空間部28の短手方向(記録装置11の前後方向であって図2では左右方向)における一端部には、原稿台ガラス26と平行であって、且つスキャナー空間部28の長手方向(記録装置11の左右方向であって図2の紙面と直交する方向)に沿って延びる図示しないスキャナーガイド軸が架設されている。そして、このスキャナーガイド軸には、原稿台ガラス26の短手方向に対応する長さの図示しないスキャナーキャリッジがスキャナーガイド軸と直交する水平方向に延びるように支持されるとともに、スキャナーガイド軸に沿って往復移動可能に設けられている。
【0022】
なお、スキャナーキャリッジは、例えば駆動モーター及び駆動ベルトなどによって構成される図示しない駆動機構によって、スキャナーガイド軸の軸線方向に沿って往復移動される。また、スキャナーキャリッジには、原稿内容を光学的に読み取るための図示しない画像入力部が搭載されている。画像入力部は、光源、レンズ、ミラー及びスキャナーキャリッジの長手方向に沿って直線的に配置された光電変換素子(CCD)により構成されている。そして、スキャナーキャリッジに搭載された画像入力部の光源により原稿台ガラス26に載置された原稿に原稿台ガラス26を通して光を照射して、原稿による反射光を光電変換素子により検出することにより原稿の画像を読み取るようになっている。この点で、スキャナーキャリッジは画像データ取得手段として機能し、スキャナー空間部28は画像データ取得手段の移動空間として機能する。
【0023】
さらに、図2に示すように、スキャナー部13における上部ケース15の底壁部は、記録装置11の本体ケース16内を、キャリッジ24及びプラテン20等が収容される収容空間部30と、スキャナーキャリッジを往復移動させるスキャナー空間部28とに仕切る仕切り壁31となっている。すなわち、このスキャナー部13の上部ケース15の底壁部により構成される仕切り壁31は、本体ケース16内の上部に下部の収容空間部30とは別の独立した部分空間部(スキャナー空間部28)を仕切り形成する仕切り部として機能する。
【0024】
そして、この本体ケース16の仕切り壁31には、プリンター部12の内部空間になる収容空間部30とスキャナー部13の内部空間になるスキャナー空間部28とを連通する断面円形状の複数(図2では9つ図示)の連通管部32が規則的に配列されて形成されている。すなわち、連通管部32は仕切り壁31において収容空間部30側となる下面31a側及びスキャナー空間部28側となる上面31b側にそれぞれ開口するように形成される。そして、これらの連通管部32は、スキャナー空間部28を部分空間部として、共鳴現象により特定周波数の騒音を減音する機能を有する。
【0025】
すなわち、本実施形態では、ガイド軸23に沿って往復移動する際に摺動音を発生するキャリッジ24や、搬送される記録用紙Pを支持面20aに摺接させることにより摺接音(紙送り音)を発生するプラテン20などが騒音源とされる。そして、連通管部32とスキャナー空間部28とにより、スキャナー空間部28を背後空気層とした共鳴器が形成され、収容空間部30内で発生した特定周波数の騒音が減音されるようになっている。なお、仕切り壁31のほぼ全域に形成された複数の連通管部32の開口径は全て等しくなっており、連通管部32の形状は、減音させたい騒音の特定周波数に基づいて下記の式により算出される。
【0026】
f=(c/2π)√S/V・L
ここで、fは減音させたい騒音の周波数、cは音速、Sは連通管部32の開口断面積、Vは連通管部32の背後空気層(スキャナー空間部28)の容積、Lは連通管部32の長さである。例えば、本実施形態では、減音させたい騒音であるキャリッジ24の移動に伴い発生するキャリッジ摺動音等の周波数に基づいて連通管部32の形状が算出される。
【0027】
また、仕切り壁31における連通管部32のスキャナー空間部28側の開口は、グラスウール等の繊維系やポリウレタンフォーム等の連続気泡を有する多孔質材料からなり全周波数領域の騒音を吸音する吸音材33により覆蓋されている。吸音材33は、その寸法が仕切り壁31における連通管部32が形成された領域の寸法に対応しており、その領域上に載置された状態では、全ての連通管部32の開口を覆うようになっている。
【0028】
また、図2に示すように、本体ケース16における仕切り壁31の下面31aには、本体ケース16(下部ケース14、上部ケース15)と同じ樹脂材料からなる断面形状が縦長矩形状の第1誘導部材34が収容空間部30内に垂下するように支持されている。具体的には、仕切り壁31に配列形成された連通管部32の下方空間域に隣接して且つ上下方向でガイド軸23に対応する位置から垂下した状態にてキャリッジ24の往復移動領域に沿うように延設されている。
【0029】
また、図2に示すように、第1誘導部材34の突出方向の長さ(すなわち、仕切り壁31の下面31aから第1誘導部材34の下端面34aまでの長さ)L1は、仕切り壁31の下面31aから該下面31aと対向するキャリッジ24の上側面24aまでの長さL0よりも僅かに小さくなるように形成されている。すなわち、第1誘導部材34は、キャリッジ24の上方空間域を上下方向に縦断する垂下態様で前後に遮断するが、キャリッジ24の上側面24aがキャリッジ24の往復移動時に第1誘導部材34の下端面34aに接触しないようになっている。
【0030】
さらに、図2に示すように、本体ケース16における仕切り壁31の下面31aには、第1誘導部材34と同じ樹脂材料からなる断面形状が下向きの略直角三角形状をなし且つその斜辺が湾曲した凹状をなす第2誘導部材35が収容空間部30内に垂下するように支持されている。具体的には、仕切り壁31に配列形成された連通管部32の下方空間域に隣接して且つプリンター部12の排紙口19の上方となる位置に第1誘導部材34と平行に延びるように設けられている。すなわち、第2誘導部材35は、本体ケース16における下部ケース14の前側壁部14bと仕切り壁31の下面31aとを直角に交わる二辺の接合面として収容空間部30内に支持されている。そして、その凹状に湾曲した斜辺により構成される湾曲面35aと第1誘導部材34の側面34bとにより、収容空間部30内で発生した騒音を仕切り壁31に配列形成された連通管部32に向けてガイドする上側ほど空間断面積が小さくなるガイド空間域を形成している。
【0031】
次に、以上のように構成された記録装置11の作用について、特に記録装置11の内部において発生する騒音を抑制する際の作用について説明する。
さて、例えばプリンター部12において印刷が開始されると、自動給紙機構17が駆動してサポート17aから記録用紙Pが送り出され、サポート17aから送り出された用紙Pは上流側ローラー21によってプラテン20上の印刷位置に搬送される。このとき、プリンター部12の内部空間である収容空間部30では、図示しない紙送りモーターの駆動音やプラテン20の支持面20aに記録用紙Pが摺接することによる摺接音等の騒音が発生する。そして次に、プラテン20上の印刷位置に搬送された記録用紙Pに対して、キャリッジ24がガイド軸23に沿って往復移動しながらインクを噴射して印刷が行われる。このとき、キャリッジモーターの駆動音や記録用紙Pの摺接音、キャリッジ24の移動に伴う摺動音等の騒音が発生する。そして、記録用紙Pへの印刷が終了すると、記録用紙Pは排紙口19に搬送されて排紙口19から記録装置11外に排出される。このとき、収容空間部30では、再び図示しない紙送りモーターの駆動音や記録用紙Pのプラテン20に対する摺接音等の騒音が発生する。
【0032】
このように、記録装置11において印刷処理が行われる際には、収容空間部30で様々な騒音が発生する。そして、印刷処理時に収容空間部30で発生した騒音は、伝播して収容空間部30内を拡散する。このとき、キャリッジ24の上方空間域に設けられた第1誘導部材34により、収容空間部30内でのキャリッジ24の後方への騒音の拡散が抑制されて、騒音は仕切り壁31に形成された連通管部32に向けて誘導される。さらに、排紙口19の上方空間域に設けられた第2誘導部材35により、排紙口19に向かう騒音の拡散が抑制されて、騒音は連通管部32に向けて誘導される。
【0033】
第1誘導部材34及び第2誘導部材により収容空間部30内を連通管部32に向けて誘導された騒音は、連通管部32に到達すると、該連通管部32の下側の開口から連通管部32の内部に進入する。連通管部32では、該連通管部32内で音が共鳴して摩擦が生じるため、連通管部32内の空気が激しく振動する。そして、連通管部32内で特定周波数の騒音が熱エネルギーに変換されて減音される。
【0034】
そして次に、連通管部32により減音されなかった特定周波数以外の周波数の騒音は、連通管部32を通過した後、連通管部32のスキャナー空間部28側となる上側の開口を覆蓋する吸音材33により吸音される。
【0035】
さらに、連通管部32及び吸音材33により減音及び吸音されずにスキャナー空間部28内に進入した騒音は、連通管部32の軸方向において仕切り壁31と対向するように配置された原稿台ガラス26に到達する。ここで、原稿台ガラス26は、連通管部32の軸方向と直交(交差)する内面部位であると共に、スキャナー空間部28の他の内面を形成する壁面材料よりも面密度の高い高密度体で形成されている。そして、原稿台ガラス26は音の透過損失が大きいため、原稿台ガラス26に到達した騒音の大部分は透過せずに反射して仕切り壁31に向かって戻る。そして、反射した騒音は再び仕切り壁31の吸音材33により吸音されて、騒音が収容空間部30に再進入するのを抑制される。
【0036】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の記録装置11では、収容空間部30で発生した騒音は、仕切り壁31に形成された連通管部32の共鳴作用により特定周波数の騒音が減音される。そして、連通管部32を通過した特定周波数以外の騒音はスキャナー空間部28内において仕切り壁31と対向する面に配置されている原稿台ガラス26により反射して遮音される。したがって、騒音が記録装置11外に漏れ出ることを抑制でき、記録装置11の内部で発生した全周波数領域の騒音の低減ができる。
【0037】
(2)本実施形態の記録装置11では、連通管部32の開口に配置された吸音材33により、騒音が連通管部32を通過するときに全周波数領域の騒音が吸音される。したがって、特定周波数以外の騒音を吸音材33により吸音できるため、騒音を効果的に低減することができる。
【0038】
(3)本実施形態の記録装置11では、連通管部32の開口のうちスキャナー空間部28側となる上側の開口を覆蓋する吸音材33により、スキャナー空間部28内において原稿台ガラス26に当たった後に連通管部32に向かって反射した騒音が再び吸音されるので更に騒音を効果的に低減できる。
【0039】
(4)本実施形態の記録装置11では、収容空間部30に設けられた第1誘導部材34及び第2誘導部材35により、キャリッジ24の後方及び排紙口19への騒音の拡散が抑制されるとともに、騒音が連通管部32に向けて導かれる。したがって、記録装置11の排紙口19から放出される騒音の割合が減少して、騒音を効果的に吸音及び遮音することができる。
【0040】
(5)本実施形態の記録装置11では、騒音を吸音及び遮音するための共鳴空間として機能する部分空間部及びその高密度体からなる内面を、既存のスキャナー部13内におけるスキャナーキャリッジが往復移動するスキャナー空間部28及び原稿台ガラス26にて兼用できる。そのため、記録装置11の部品数の増加や更なる共鳴空間のためのスペース確保が必要でなくなる。したがって、装置の大型化を抑制しつつ騒音を低減することができる。
【0041】
(6)本実施形態の記録装置11では、キャリッジ24の移動方向に沿って連通管部32が設けられているので、印刷時にキャリッジ24が発生する騒音を効果的に低減することができる。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・様々な孔径の連通管部32を混在して形成してもよい。この場合、連通管部32では特定周波数の音に偏ることなく均等に騒音を減音させることができる。
【0043】
・第1誘導部材34をキャリッジ24の上側面24aから仕切り壁31の下面31aに対して垂直となる方向(図2では鉛直上方向)に突設させてもよい。
・第1誘導部材34は断面形状が縦長矩形状をなすように形成し、第2誘導部材35は下向きの略直角三角形状をなし且つその斜辺が湾曲した凹状をなすように形成したが、例えば、第1誘導部材34を第2誘導部材35と同じ形状に形成するなど、異なる形状に形成してもよい。
【0044】
・収容空間部30に第1誘導部材34及び第2誘導部材35の2つの誘導部材を設けたが、2つの誘導部材のうちどちらか一方だけでもよい。また、収容空間部30に誘導部材を設けなくてもよい。
【0045】
・騒音を減音する共鳴器の背後空間及び騒音を遮音するための高密度体として、スキャナー空間部28及び原稿台ガラス26を用いずに、収容空間部30に高密度体を備えた共鳴器を設けてもよい。
【0046】
・吸音材33を連通管部32の収容空間部30側の開口に配置しても良い。また、連通管部32の開口に吸音材33を設けなくても良い。
・上記実施形態では、記録装置をインクジェット式記録装置11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。記録装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する記録装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する記録装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する記録装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する記録装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する記録装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する記録装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の記録装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
11…記録装置、12…プリンター部、13…画像読取部としてのスキャナー部、16…本体ケース、26…高密度体としての原稿台ガラス、28…部分空間部としてのスキャナー空間部、30…収容空間部、31…仕切り部としての仕切り壁、32…連通管部、33…吸音材、34…第1誘導部材、35…第2誘導部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録を施す際に騒音を発生する騒音源と、
当該騒音源を内部に収容した本体ケースと、
前記本体ケースの内部に前記騒音源の収容空間部とは別に独立した部分空間部を仕切り形成する仕切り部と、
前記収容空間部と前記部分空間部とを連通する連通管部と、
を備え、
前記部分空間部の内面において前記連通管部の軸方向と交差する内面部位は、当該部分空間部の内面において他の内面部位を形成する壁面材料よりも面密度の高い高密度体により形成されている
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記連通管部の開口を覆蓋する多孔質材からなる吸音材をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記吸音材は、前記連通管部における前記部分空間部側の開口を覆蓋する
ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記収容空間部内で前記騒音源が発生させた騒音を前記連通管部の方向に誘導する誘導部材をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
原稿内容を読み取る画像読取部を備え、当該画像読取部において、前記原稿内容を読み取って画像データを取得するために画像データ取得手段を往復移動させる移動空間が前記部分空間部により構成されると共に、前記原稿内容を読み取られる前記原稿を保持する原稿台が前記高密度体により構成されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−156670(P2011−156670A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17825(P2010−17825)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】