説明

記録装置

【課題】紫外線照射部の故障に基く被記録材及びUVインクの無駄を防止すると共に、更に未硬化のUVインクによる装置構成部材の汚染を防止する。
【解決手段】被記録材にUVインクを吐出する記録ヘッドと、前記吐出されたUVインクに紫外線を照射して該UVインクを硬化させる紫外線照射部とを備える記録装置であって、前記紫外線照射部の故障状況を診断する故障診断部と、前記記録ヘッド、前記紫外線照射部及び前記故障診断部の各動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記故障診断部において故障と診断されたときに該記録装置の動作モードを故障時モードに変えるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材に紫外線(UV)で硬化するUVインクを吐出する記録ヘッドと、前記吐出されたUVインクに紫外線を照射して該UVインクを硬化させる紫外線照射部とを備える記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種、UVインクを硬化させる紫外線照射部を備える記録装置の従来技術として、下記の特許文献1に記載のものがある。
この記録装置は、被記録材にUVインクを吐出する記録ヘッドと、前記吐出されたUVインクに紫外線を照射して該UVインクを硬化させる紫外線照射部を備えている。紫外線照射部として、メタルハライドランプや発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−234818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
紫外線照射部は、設計上は耐久性の良いものが選定されて使用されるので、故障発生の虞は少ないと言える。しかしそれでも故障の発生を完全に防止することは困難である。
【0005】
故障発生は稀であっても、紫外線照射部が故障している状態で、記録ヘッドからUVインクが被記録材に吐出されて記録動作が実行されると、前記吐出されたUVインクに紫外線が照射されないので、該UVインクは未硬化のままである。その結果、被記録材及びUVインクが無駄になるばかりか、記録装置の被記録材搬送経路や記録実行領域を成す各構成部材が未硬化のUVインクで汚染され、前記被記録材を記録装置から抜き出すだけでは済まない大きな問題につながる。すなわち、前記汚染された各部材を全て洗浄する作業を余儀なくされ、通常は分解を伴う大掛りな洗浄作業となることが予想できる。
【0006】
紫外線照射部が複数のLEDを用いた構造である場合、LEDの一つが故障しても該故障箇所に対応するUVインクは未硬化のままとなるので、他の正常なLEDに対応するUVインクが硬化されても記録物としては使い物にならず、被記録材及びUVインクが無駄になる前記問題が同様に発生する。また、未硬化のUVインクによって汚染される範囲は小さいとは言え、汚染された前記部材を洗浄する作業は避けられない問題がある。
【0007】
また、紫外線照射部が単一の例えば前記メタルハライドランプで構成されている場合はその故障の発生をユーザーが認識し易いが、紫外線照射部が複数のLEDを用いた構造である場合は、複数のLEDの一つが故障したときに、その故障発生をユーザーは認識しにくい。そのため、前記故障に基く問題が発生する虞が大きいと言える。
【0008】
本発明の目的は、紫外線照射部の故障に基く被記録材及びUVインクの無駄を防止すると共に、更に未硬化のUVインクによる装置構成部材の汚染の問題を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る記録装置は、被記録材にUVインクを吐出する記録ヘッドと、前記吐出されたUVインクに紫外線を照射して該UVインクを硬化させる紫外線照射部とを備える記録装置であって、前記紫外線照射部の故障状況を診断する故障診断部と、前記記録ヘッド、前記紫外線照射部及び前記故障診断部の各動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記故障診断部において故障と診断されたときに該記録装置の動作モードを故障時モードに変えるように構成されていることを特徴とするものである。
ここで、「故障状況を診断する」とは、紫外線照射部がUVインクを照射硬化できない状態になったかどうかを検出して判断することを意味する。
また、「故障時モード」とは、紫外線照射部が故障した場合に、前記無駄や汚染の問題が生じないように記録装置の状態を移行する、予め設定されている故障時用の動作モードを意味する。
【0010】
本態様によれば、故障診断部によって紫外線照射部の故障状態が診断され、前記故障診断部において故障と診断されたときに該記録装置の動作モードを故障時モードに変えるように構成されている。
従って、紫外線照射部が故障した状態でそのまま記録動作が実行されないようにすることができ、以って紫外線照射部の故障に基く被記録材及びUVインクの無駄を防止することができると共に、未硬化のUVインクによる装置構成部材の汚染の問題を防止することができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る記録装置において、前記故障診断部は、前記記録ヘッドによる記録実行動作の開始前に故障診断を実行し、前記制御部は、前記故障診断部において故障と診断されたときは記録装置の動作モードを故障時第1モードに変えるように構成されていることを特徴とするものである。
ここで、「故障時第1モード」とは、前記故障時モードの内、記録ヘッドによる記録実行動作の開始前に故障診断を実行し、紫外線照射部が故障していると診断された場合に記録装置の状態を移行する故障時用の動作モードを意味する。
【0012】
本態様によれば、記録実行動作の開始前に故障診断を実行するので、紫外線照射部の故障に基く被記録材及びUVインクの無駄を効果的に防止することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記第2の態様に係る記録装置において、前記故障時第1モードは、記録動作を開始せずに故障情報を知らせる動作モードであることを特徴とするものである。
【0014】
本態様によれば、ユーザーが故障発生を容易に認識することができるので、第2の態様と同様の作用効果が得られると共に、その後の処置を直ちに始めることができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、前記第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る記録装置において、前記故障診断部は、前記記録ヘッドによる記録実行動作中に故障診断を実行し、前記制御部は、前記故障診断部において故障と診断されたときは記録装置の動作モードを故障時第2モードに変えるように構成されていることを特徴とするものである。
ここで、「故障時第2モード」とは、前記故障時モードの内、記録ヘッドによる記録実行動作中に故障診断を実行し、紫外線照射部が故障していると診断された場合に記録装置の状態を移行する故障時用の動作モードを意味する。
【0016】
本態様によれば、記録実行動作中に故障診断を実行するので、UVインク未硬化記録の発生を効果的に防止できる。そして直ちに故障に対して対応することが可能となる。従って、紫外線照射部の故障に基く被記録材及びUVインクの無駄を効果的に防止することができると共に、未硬化のUVインクによる装置構成部材の汚染の問題を効果的に防止することができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、前記第4の態様に係る記録装置において、前記故障時第2モードは、
(1)実行中の記録動作を代替記録モードに代えて記録を継続する動作モード
(2)実行中の記録動作を停止する動作モード
(3)ユーザーの選択によって予め決定される前記(1)又は(2)の動作モード
のいずれかであることを特徴とするものである。
ここで、「代替記録モード」とは、故障前の記録動作モードに代えて該故障発生前の記録品質と同等の品質又は次善品質の動作状態で記録を継続し、記録完了を優先する動作モードを意味する。
【0018】
本態様によれば、記録実行動作中に故障診断を実行し、故障と診断されたときに、代替記録モードで記録を継続する構成(前記(1)の動作モード)の場合、紫外線照射部に前記故障が発生しても、記録完了品を得ることができる。従って、記録完了を優先する記録の実行が可能となり、記録装置としての使い勝手が向上する。
また、記録実行動作中に故障診断を実行し、故障と診断されたときに前記(2)の動作モードに移行する構成の場合は、紫外線照射部の記録動作実行中に発生した故障に基く被記録材及びUVインクの無駄を効果的に防止することができる。
また、前記ユーザーの選択によって予め決定される構成(前記(3)の動作モード)の場合、ユーザーの意向に沿った動作モードになるので、ユーザーの使い勝手が向上する。
【0019】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様に係る記録装置において、前記被記録材を前記記録ヘッドによる記録実行領域を通るように搬送する搬送装置と、前記記録ヘッド及び前記紫外線照射部を搭載し前記搬送方向と交差する方向に往復移動するキャリッジとを備え、前記紫外線照射部は複数のLEDが前記搬送方向に並んだ列を一列以上有するものであることを特徴とするものである。
【0020】
紫外線照射部が複数のLEDを用いた構造である場合は、複数のLEDの一つが故障したときに、その故障発生をユーザーは認識しにくい。
本態様によれば、故障診断部が紫外線照射部の故障状況の診断を行うので、複数のLEDの一つが故障したときであっても、故障の発生を簡単に把握することができる。従って、紫外線照射部が複数のLEDを用いた構造である場合においても、該LEDの故障に基く被記録材及びUVインクの無駄を効果的に防止することができると共に、未硬化のUVインクによる装置構成部材の汚染の問題を効果的に防止することができる。
【0021】
本発明の第7の態様は、前記第4の態様から第6態様のいずれか一つに係る記録装置において、前記故障診断部は、前記記録ヘッドの記録実行動作中におけるメンテナンス動作の際に故障診断を実行するように構成されていることを特徴とするものである。
本態様によれば、効果的に紫外線照射部の故障状況の診断を装置構造を変更することなく簡単に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1、2に係る記録装置の内部構造の概略構成を示す要部正面図。
【図2】本発明の実施例1、2に係る記録装置の内部構造の概略構成を示す要部平面図。
【図3】本発明の実施例3に係る記録装置の内部構造の概略構成を示す要部正面図。
【図4】本発明の実施例1、2に係る記録装置の作用を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1及び図2に示す実施例1、2と、図3に示す実施例3を例にとって、本発明の記録装置の構成と、該記録装置の作用について具体的に説明する。
【0024】
[実施例1] (図1、図2、図4参照)
図示の記録装置1は、インクジェットプリンター1(「記録装置」と同じ符号を使用する)である。このインクジェットプリンター1は、被記録材(以下、「用紙」ともいう)PにUVインクを吐出する記録ヘッド2と、前記吐出されたUVインクに紫外線を照射して該UVインクを硬化させる紫外線照射部3とを備えている。更に、前記紫外線照射部3の故障状況を診断する故障診断部12と、前記記録ヘッド2、前記紫外線照射部3及び前記故障診断部12の各動作を制御する制御部10とを備えている。
更に本実施例では、前記被記録材Pを前記記録ヘッド2による記録実行領域を通るように搬送方向Aに搬送する搬送装置4と、前記記録ヘッド2及び前記紫外線照射部3を搭載し、前記搬送方向Aと交差する方向Bに往復移動するキャリッジ5とを備えている。そして、前記制御部10は、前記搬送装置4及びキャリッジ5の各動作も制御するように構成されている。
【0025】
搬送装置4は、搬送方向Aにおける記録実行領域6の上流位置に設けられる一対のニップローラーによって構成されている搬送用ローラー7と、前記記録実行領域6の下流位置に設けられる同じく一対のニップローラーによって構成されている排出用ローラー8と、を備えることによって一例として構成されている。
そして、前記搬送用ローラー7と排出用ローラー8を駆動するモーター9(図1)には、制御部10から所定送り量の搬送を指令する送り信号31が送信されて、用紙Pが前記送り量ずつ間欠的に送られるように構成されている。
【0026】
尚、当該搬送装置4は、高速記録実行の観点から被記録材Pをバンド送り量ずつ間欠的に搬送すること、及び高画質記録実行の観点から前記バンド送り量よりも小さい送り量で搬送することの両方を切り換えて行えるようになっている。
【0027】
ここで本明細書中において「バンド」とは、被記録材Pの搬送方向Aに沿って並ぶノズル列13のノズル列長に対応した幅を前記搬送方向に持った記録実行領域或いは記録実行されたものを意味する。
また、「バンド送り量」とは、前記バンドごとの記録を実行するにあたって被記録材Pを実際に搬送する送り量を意味する。
【0028】
記録ヘッド2は、本実施例では、下地用UVインクを吐出する第1の記録ヘッド2Aと、画像形成用UVインクを吐出する第2の記録ヘッド2Bの二つが設けられており、一例として図1、図2中の左方に第1の記録ヘッド2Aが配設されていて、同図中の右方に第2の記録ヘッド2Bが配設されている。
【0029】
尚、このうち第1の記録ヘッド2Aには、例えばホワイト(W)、ゴールド(G)、シルバー(S)等の下地用インクを噴射するノズル列13Wが設けられている。また、第2の記録ヘッド15Bには、一例としてシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色の画像形成用インクを個別に噴射する4つのノズル列13C、13M、13Y、13Kが移動方向Bに所定の間隔を隔てて並設されている。図2において、符号14はノズル列13を成すインク吐出用のノズルを示す。
ここで、「画像形成用UVインク」における「画像」とは、本明細書においては、絵、文字を含む記録情報と言った広い意味で使われている。
【0030】
そして、これらの各ノズル列13W、13C、13M、13Y、13Kには、制御部10からインク吐出量を指令するインク吐出信号32、33が送信されてインク吐出量の調整が行えるようになっている。
また、図示のインクジェットプリンター1では、前記ノズル列5W、5C、5M、5Y、5Kの各ノズル7から吐出されるインクは、UV光(紫外線)の照射を受けて硬化する「UVインク」である。
【0031】
「UVインク」は、UV光(紫外線)を照射することによって硬化、定着する速硬性に優れたインクで、ヒーター加熱によって溶媒を蒸発させることによって乾燥、定着する従来の顔料インクに比べて硬化後の体積収縮率が格段に小さいという特長を有している。
また、「UVインク」は、溶解成分を含んでいないため環境に優しく、UV光(紫外線)を照射することによって瞬時に硬化するためインク吸収性の低いフィルム系の被記録材Pに好適なインクである。
【0032】
キャリッジ5は、移動方向Bに延びるキャリッジガイド軸18に沿って該移動方向Bに往復移動する前記記録ヘッド2の往復搬送装置である。
キャリッジ5を往復移動するための動力は、正逆転可能で単位ステップ毎の精密な送り制御が可能なモーター16から受けており、該モーター16の回転が図示しない歯付きベルトを介してキャリッジ5に伝達されるようになっている。モーター16は制御部10からモーター制御信号38が送られて回転する。
図において、符号19は被記録材Pの支持部材を示す。
【0033】
紫外線照射部3は、第1紫外線照射部3Aと第2紫外線照射部3Bを備えている。第1紫外線照射部3Aは、第1の記録ヘッド2Aから被記録材P上に吐出された前記下地用UVインクを硬化させることを主たる役割とするもので、第1の記録ヘッド2Aの図中左側傍に配置されている。また、第2紫外線照射部3Bは、第2の記録ヘッド2Bから吐出された前記画像形成用UVインクを硬化させることを主たる役割とするもので、第2の記録ヘッド2Bの図中右側傍に配置されている。
更に本実施例では、紫外線照射部3は第3紫外線照射部3Cと第4紫外線照射部3Dを備えている。第3紫外線照射部3Cは第1紫外線照射部3Aの予備として設けられており、第4紫外線照射部3Dは第2紫外線照射部3Bの予備として設けられている。
【0034】
また、前記4基の第1紫外線照射部3A、第2紫外線照射部3B、第3紫外線照射部3C及び第4紫外線照射部3Dには、前記二つの記録ヘッド2A、2Bにおけるノズル列13W、ノズル列13C、13M、13Y、13Kのノズル14の配列に対応した配列の複数のLED15が設けられている。LED15の配置とノズル14の配置は図の複雑化を避けるため概略で記載されているが、実際は一つのLED15が一例としてノズル14の一連の30個から50個に紫外線を照射する位置関係で設けられている。本実施例では、複数の前記LED15は前記搬送方向Aに並んだ列を一列有するものが示されているが、一列以上有するものにすることは勿論可能である。
そして、これらの各LED15には、制御部10からLED15の位置に対応したUV光(紫外線)の照射量を指令するUV光照射信号34、35が送信されてUV光(紫外線)の照射量の調整が行えるようになっている。
【0035】
故障診断部12は、前記紫外線照射部3の故障状況を診断するものである。本実施例では、記録ヘッド2の往復移動方向における両側にそれぞれ設けられた第1故障診断部12Aと第2故障診断部12Bによって構成されている。これらの第1故障診断部12A及び第2故障診断部12Bは、紫外線照射部3の各LED15に対向する位置に設けられる各受光部20を備えている。各受光部20は前記LEDから個別に照射される紫外線の照射量を検出し、所定の照射量以下である場合に、そのLEDは「故障」であると診断するようになっている。そして、その診断結果である故障診断信号36、37が制御部10に送信される。
尚、故障診断部12の具体的構造として、前記受光部20による構造に限定されず、例えば紫外線照射部3の電圧と電流値の変動を検出することで前記「故障」の有無を診断することもできる。
【0036】
そして、前記制御部10は、第1故障診断部12A又は第2故障診断部12Bにおいて故障と診断されたときに、インクジェットプリンター1の動作モードを故障時モードに変えるように構成されている。ここで、「故障時モード」は、既述のように、紫外線照射部3が故障した場合に、インクや被記録材の無駄の発生を抑え、更に未硬化のUVインクによる搬送装置4の汚染の問題が生じないように記録装置の動作状態を移行する、予め設定されている故障時用の動作モードである。
更に、制御部10には故障報せ部17が接続されており、該故障報せ部17によってユーザーに故障情報を知らせるようになっている。
【0037】
次に、図4のフローチャートを用いて本実施例の作用を説明する。
先ずステップS1で、記録実行動作の開始前であるか否かが判断される。記録実行動作の開始前であると判断されたときはステップS2に進んで記録実行動作開始前の故障診断が故障診断部12で実行される。そして、ステップS3に進んで診断結果が故障である場合はステップS4に進んで、当該記録装置1は故障時第1モードに移行される。尚、ステップS3で故障でない場合はステップS2に戻る。
【0038】
ここで、「故障時第1モード」とは、前記故障時モードの内、記録ヘッド2による記録実行動作の開始前に故障診断を実行し、紫外線照射部3が故障していると診断された場合に記録装置1の状態を移行する故障時用の動作モードを意味する。そして、ここでは、故障時第1モードは、記録動作を開始せずに故障情報を前記故障報せ部17でユーザーに知らせる動作モードが採用されている。
【0039】
本実施例によれば、紫外線照射部3が故障した状態でそのまま記録動作が実行されないようにすることができ、以って紫外線照射部3の故障に基く被記録材P及びUVインクの無駄を防止することができると共に、未硬化のUVインクによる装置構成部材の汚染の問題を防止することができる。
また、記録実行動作の開始前に故障診断を実行するので、紫外線照射部3の故障に基く被記録材及びUVインクの無駄を効果的に防止することができる。更に、故障報せ部17によってユーザーが故障発生を容易に認識することができるので、その後の処置を直ちに始めることができる。
【0040】
[実施例2] (図1、図2、図4参照)
本実施例では、前記故障診断部12は、前記記録ヘッド2による記録実行動作中に故障診断を実行し、前記制御部10は、前記故障診断部12において故障と診断されたときは記録装置1の動作モードを故障時第2モードに変えるように構成されている。
ここで、「故障時第2モード」とは、既述の通り、前記故障時モードの内、記録ヘッド2による記録実行動作中に故障診断を実行し、紫外線照射部3が故障していると診断された場合に記録装置1の状態を移行する故障時用の動作モードを意味する。
【0041】
そして、ここでは、前記故障時第2モードは、
(1)実行中の記録動作を代替記録モードに代えて記録を継続する動作モード
(2)実行中の記録動作を停止する動作モード
(3)ユーザーの選択によって予め決定される前記(1)又は(2)の動作モード
のいずれかであるようになっている。
ここで、「代替記録モード」とは、既述の通り、故障前の記録動作モードに代えて該故障発生前の記録品質と同等の品質又は次善品質の動作状態で記録を継続し、記録完了を優先する動作モードを意味する。
【0042】
具体的には、第1紫外線照射部3Aが故障した場合は、該第1紫外線照射部3Aは使わずに第3紫外線照射部3Cに変えて記録を継続する。また、第2紫外線照射部3Bが故障した場合は、該第2紫外線照射部3Bは使わずに第4紫外線照射部3Dに変えて記録を継続する。これにより故障前の記録品質と同等に品質で記録を継続することができる。
また、LEDのいずれか一つが故障した場合は、その故障LEDを境にして正常なLEDの多い側の一連のLEDだけを使った送りモードに変え、更にインク吐出もそれに合わせることで、記録を継続することができる。この場合は記録品質は故障前の記録品質と同等ではなく次善品質となるが、ユーザーの記録品質に対する要求を満たしていれば、この形の記録を継続することが可能である。
【0043】
次に、図4のフローチャートを用いて本実施例の作用を説明する。
先ずステップS1で、記録動作開始前ではなく、記録実行動作中であると判断されるとステップS5に進んで、記録実行動作中における故障診断が故障診断部12で実行される。そして、ステップS6に進んで診断結果が故障である場合はステップS7に進んで、当該記録装置1は故障時第2モードに移行される。尚、ステップS6で故障でない場合はステップS5に戻る。
【0044】
「故障時第2モード」で、前記代替記録モードで記録を継続する場合、紫外線照射部3に前記故障が発生しても、記録完了品を故障前と同等の品質で又は次善品質で得ることができる。従って、記録完了を優先する記録の実行が可能となり、記録装置としての使い勝手が向上する。
また、記録実行動作中に故障診断を実行し、故障と診断されたときに前記(2)の記録動作を停止する動作モードに移行する場合は、記録完了品を得ることはできないが、紫外線照射部3の記録動作実行中に発生した故障に基く被記録材及びUVインクのそれ以上の無駄を防止することができる。
【0045】
また、紫外線照射部3が複数のLED15を用いた構造である場合は、複数のLED15の一つが故障したときに、その故障発生をユーザーは認識しにくい。
上記各実施例によれば、故障診断部12が紫外線照射部3の故障状況の診断を行うので、複数のLED15の一つが故障したときであっても、故障の発生を簡単に把握することができる。従って、紫外線照射部3が複数のLED15を用いた構造である場合においても、該LED15の故障に基く被記録材P及びUVインクの無駄を効果的に防止することができると共に、未硬化のUVインクによる装置構成部材の汚染の問題を効果的に防止することができる。
【0046】
また、前記故障診断部12は、前記記録ヘッド2の記録実行動作中におけるノズル回復処理等を行うメンテナンス動作の際に故障診断を実行するように構成されていると、紫外線照射部3の故障状況の診断を装置構造を変更することなく簡単に実行することができる。
【0047】
[実施例3] (図3参照)
本発明にかかる記録装置1と、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
例えば、図3に示したように、記録ヘッド2が画像形成用UVインクを吐出する第2の記録ヘッド2Bだけで構成されているものであってもよい。この構造の場合は、前記実施例のように、下地記録(下地形成)を行えないが、被記録材が下地記録を必要としないものである場合に対応できる。
【符号の説明】
【0048】
1 インクジェットプリンター(記録装置)、2 記録ヘッド、3 紫外線照射部、
4 搬送装置、5 キャリッジ、6 記録実行領域、7 搬送用ローラー、
8 排出用ローラー、9 モーター、10 制御部、12 故障診断部、
13 ノズル列、14 ノズル、15 LED、17 故障報せ部、20受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材にUVインクを吐出する記録ヘッドと、
前記吐出されたUVインクに紫外線を照射して該UVインクを硬化させる紫外線照射部とを備える記録装置であって、
前記紫外線照射部の故障状況を診断する故障診断部と、
前記記録ヘッド、前記紫外線照射部及び前記故障診断部の各動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記故障診断部において故障と診断されたときに該記録装置の動作モードを故障時モードに変えるように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載された記録装置において、
前記故障診断部は、前記記録ヘッドによる記録実行動作の開始前に故障診断を実行し、前記制御部は、前記故障診断部において故障と診断されたときは記録装置の動作モードを故障時第1モードに変えるように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載された記録装置において、
前記故障時第1モードは、記録動作を開始せずに故障情報を知らせる動作モードであることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記故障診断部は、前記記録ヘッドによる記録実行動作中に故障診断を実行し、
前記制御部は、前記故障診断部において故障と診断されたときは記録装置の動作モードを故障時第2モードに変えるように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載された記録装置において、
前記故障時第2モードは、
(1)実行中の記録動作を代替記録モードに代えて記録を継続する動作モード
(2)実行中の記録動作を停止する動作モード
(3)ユーザーの選択によって予め決定される前記(1)又は(2)の動作モード
のいずれかであることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項5に記載された記録装置において、
前記被記録材を前記記録ヘッドによる記録実行領域を通るように搬送する搬送装置と、
前記記録ヘッド及び前記紫外線照射部を搭載し、前記搬送方向と交差する方向に往復移動するキャリッジと、を備え、
前記紫外線照射部は複数のLEDが前記搬送方向に並んだ列を一列以上有するものであることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記故障診断部は、前記記録ヘッドの記録実行動作中におけるメンテナンス動作の際に故障診断を実行するように構成されていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−116141(P2012−116141A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269428(P2010−269428)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】