説明

記録装置

【課題】エネルギーの環境問題を意識してエネルギー消費量を考慮した記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置は、記録データ(D1〜D4)を送信可能な送信装置から記録データ(D1〜D4)を受信する一の記録装置であって、前記送信装置から送信された記録データ(D1〜D4)および記録完了要求時刻(t1〜t4)のデータを受信する受信部と、被記録媒体に対して記録する記録部と、制御部と、を備え、該制御部は、前記受信部が一の記録データを受信してもすぐに記録を開始させず、前記受信部で受信した複数の記録データ(D1〜D4)のうち、記録完了要求時刻が一番早い前記記録データ(例えばD3)を前記記録部に記録させる際、他の記録データ(D1、D2、D4)をも纏めて記録させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録データを送信可能な送信装置から記録データを受信して被記録媒体に記録する記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ワイヤドットプリンター、レーザープリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、ネットワーク上の複数の印刷装置に印刷ジョブを割り振って印刷効率を向上させる印刷制御システムがあった。また、分割印刷ジョブを印刷先の印刷装置に分配し、分割印刷ジョブの処理状況および分割印刷ジョブ以外の他の印刷ジョブの処理状況を監視し、監視結果に基づいて印刷完了予測時刻の再演算を行うように構成されていた。そして、演算結果が印刷完了要求時刻を上回ると、再度、受付印刷ジョブの再分割スケジューリングを行うように設けられていた。
その結果、目標時刻により一層確実に印刷させて、利用性を向上させることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−123147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記ネットワークは、印刷装置が複数あることを前提とする構成であり、一つの印刷装置に対してユーザーがそれぞれの要求として印刷ジョブを送る構成ではなかった。
ここで、一の印刷装置に対して例えばコンピューターから印刷ジョブが送られる構成について検討する。一の印刷装置は、通常、受信した順にただ単に印刷ジョブを印刷する構成である。また、印刷装置は、内部に温度条件を一定に保つ機構や、インクヘッド・インク供給回路を印刷条件に設定するような機構を持つのが一般的である。通常、これらの機構は、非動作状態が一定時間以上続くとエネルギー消費を抑えるため、また装置の寿命を延ばすため休止状態に切り替わるように制御されている。そして、一定の間隔を空けて印刷ジョブを受信すると、その都度、休止状態から印刷駆動状態へ切り替わるように制御されている。
【0005】
しかしながら、休止状態から印刷駆動状態への遷移には、大きなエネルギーが使用される。また、印刷ジョブを受信する度に休止状態から印刷駆動状態への遷移が繰り返されると、遷移回数が多くなり、エネルギー消費量が大きくなる。これでは、環境によくない。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、エネルギーの環境問題を意識してエネルギー消費量を考慮した記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、記録データを送信可能な送信装置から記録データを受信する一の記録装置であって、前記送信装置から送信された記録データおよび該記録データについての記録完了要求時刻のデータを受信する受信部と、被記録媒体に対して記録する記録部と、該記録部を制御する制御部と、を備え、該制御部は、前記受信部が一の記録データを受信してもすぐに記録を開始させず、前記受信部で受信した複数の記録データのうち、記録完了要求時刻が一番早い前記記録データを前記記録部に記録させる際、他の記録データをも纏めて記録させることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、不定期に受信した複数の記録データを、纏めて記録することができる。具体的には、前記受信部が一の記録データを受信してもすぐに記録を開始せず、記録完了要求時刻のスケジュールが遅いものを、一番早いものにスケジュールを合わせて、纏めて記録することができる。従って、エネルギー消費を押さえた所謂、休止状態から記録駆動状態への遷移回数を、記録データを受信する度にすぐ記録する構成と比較して、少なくすることができる。その結果、休止状態から記録駆動状態への遷移によるエネルギーの消費を低減でき、環境にやさしい。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記受信部は、複数の前記送信装置から記録データを受信する構成であることを特徴とする。
本態様によれば、複数の前記送信装置と一の記録装置とが通信可能に接続されている場合、一の送信装置のユーザーは、他の送信装置のユーザーが該他の送信装置から送信した記録データの内容を知らない。係る場合、休止状態から記録駆動状態への遷移回数が多くなることによるエネルギー消費量の問題が必ず生じるので、すぐに記録を実行せず、纏めて記録を実行する構成は、特に有効である。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、複数の所定の温度設定条件を有しており、被記録媒体に対して熱を加える加熱手段をさらに備えており、前記受信部は、記録データに対応する温度設定条件のデータをも前記送信装置から受信する構成であり、前記制御部は、同じ温度設定条件の前記記録データがある場合、同じ温度設定条件毎に前記記録データを纏め、温度設定条件に応じて前記加熱手段を制御し、同じ温度設定条件毎に纏めた記録データに基づいて前記記録部に記録させることを特徴とする。
本態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、温度設定の切り換え回数を、同じ温度設定条件毎に纏めずに記録する構成と比較して、少なくすることができ、エネルギーロスを低減することができる。その結果、エネルギーの消費をより低減でき、より環境にやさしい。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、所定時間経過する毎に前記記録データの受付を締め切る構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、例えば、所定時間を3時間、3日間、1週間等に設定することができる。係る場合、3時間、3日間、1週間等の所定期間(所定時間)における休止状態から記録駆動状態への遷移回数を、所定回数以下にすることができ、より一層環境にやさしい。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、所定の時刻に前記記録データの受付を締め切り、該締め切った時刻において、前記一番早い前記記録データを特定し、一番早い前記記録データを記録する際に、他の記録データをも纏めて記録する第1受付記録モードと、既に受け付けている記録データの全ての記録が完了する時刻を基準に前記記録データの受付を締め切る第2受付記録モードと、を有することを特徴とする。
【0013】
本態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、第1受付記録モードでは、例えば、所定の時刻を3日後の所定の時刻、1週間後の所定の時刻、1ヶ月後の所定の時刻等に設定することができる。係る場合、所定の時刻までの期間(所定時間)における休止状態から記録駆動状態への遷移回数を、所定回数以下にすることができ、より一層環境にやさしい。また、第2受付記録モードでは、受付を締め切る時刻が変動するので、要求(需要)に柔軟に対応することができる。つまり、環境にもユーザーにもやさしい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例のプリンター全体の概略を示す側面図。
【図2】本実施例のプリンターを含むネットワークの概略を示す図。
【図3】本実施例のプリンターの制御を示す図。
【図4】(A)(B)は本実施例における第1受付記録モードの例を示す図。
【図5】(A)(B)は他の実施例1の第2受付記録モードの例を示す図。
【図6】(A)(B)は他の実施例2の記録データの並べ替えの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明に係る記録装置の一例であるプリンター1の概略を示す側面図である。
図1に示す如く、プリンター1は、媒体送り手段2と、記録部4と、加熱手段18と、排出手段の一例である巻き取り手段12と、を備えている。このうち、媒体送り手段2は、被記録媒体および被送り媒体の一例であるロール媒体としてのロール紙Pを送り方向下流側(Y軸の矢印方向)へ送ることができるように設けられている。
【0016】
具体的には、送り出し手段3と、ローラー対14とを備えている。このうち、送り出し手段3は、ロール状に巻かれたロール紙Pを解いて送り方向下流側へ送り出すことができるように構成されている。また、ローラー対14は、解かれたロール紙Pをさらに下流側の記録部4へ送ることができるように構成されている。
また、記録部4は、媒体送り手段2より下流側において、ロール紙Pに対してインクを吐出して記録を実行することができるように設けられている。具体的には、記録部4は、キャリッジ7と、記録ヘッド5と、ノズル6と、媒体支持部9と、を備えている。このうち、キャリッジ7は、ガイド軸13および図示しない駆動モーターの動力によって、ロール紙Pの幅方向Xへ移動可能に構成されている。
【0017】
また、記録ヘッド5は、キャリッジ7に設けられている。またさらに、インクを吐出するノズル6は、記録ヘッド5における媒体支持部9と対向する面に形成されている。また、媒体支持部9は、ロール紙Pを支持し、ロール紙Pと記録ヘッド5との間の距離を所定の距離に保つことができるように設けられている。尚、Z軸方向は、媒体支持部9と記録ヘッド5とが対向する方向である。また、鉛直方向でもある。
【0018】
また、加熱手段18は、ロール紙Pに対して加熱し、ロール紙Pに着弾したインクの乾燥を促進することができるように構成されている。具体的には、媒体支持部9に設けられたヒーター19である。ヒーター19は、例えば、電熱線等によって構成することができる。また、ヒーター19は、被記録媒体の種類や記録条件に応じて、複数の温度設定を有しており、制御部11(図2参照)によって設定が切り換えられるように設けられている。
尚、加熱手段18は、記録後において、ロール紙Pに対して温度設定可能な温風を送ってインクを乾燥させる乾燥炉でもよい。また、記録の前段階で予め被記録媒体を加熱するプレヒーターでもよい。
【0019】
また、巻き取り手段12は、記録部4より下流側において、記録されたロール紙Pを巻き取ることができるように設けられている。
尚、ロール媒体の一例としてロール紙Pについて説明するが、紙に限らない。布(反物)やフィルム媒体でもよいのは勿論である。また、被記録媒体および被送り媒体は、ロール状のものに限らない。シート状の所謂、単票紙でもよい。
【0020】
図2に示すのは、本実施例のプリンター1を含むネットワークの概略を示す図である。
図2に示す如く、本実施例のプリンター1は、記録データを送信する送信機としてのコンピューターと接続されている。具体的には、三台のコンピューターとしての第1コンピューター15〜第3コンピューター17が、一台のプリンター1と接続されている。尚、コンピューターの数は、三台に限らないのは勿論である。
【0021】
また、プリンター1は、受信部8と、読み取り部10と、記録部4と、制御部11と、を有している。
このうち、受信部8は、第1コンピューター15〜第3コンピューター17から送信された記録データ(D1、D2…(図4参照))および該記録データについての記録完了要求時刻(t1、t2…(図4参照))の情報データを受信することができるように設けられている。ここで、「記録データ」とは、画像や文字が実際に記録されるためのデータをいう。一方、「記録完了要求時刻の情報データ」とは、記録が完了していてほしい時間についてのデータをいう。
【0022】
また、通信方法は、有線通信、無線通信のいずれでもよい。さらに、受信部8は、受信した記録データを記憶することができるメモリーを有している。例えば、RAM(Random Access Memory)等を挙げることができる。これにより、所定時間、複数の記録データを記憶しておくことができる。
【0023】
また、読み取り部10は、受信部8で受信した記録完了要求時刻の情報データから記録完了要求時刻(t1、t2…)を読み取ることができるように設けられている。仮に、記録完了要求時刻(t1、t2…)の情報データが無い場合は、読み取り部10は、記録データを解析し、記録データについての記録開始時刻のデータまたは記録開始可能な時刻から記録開始した場合に記録が完了する予定時刻を推定してもよい。また、記録完了要求時刻(t1、t2…)の情報データが無い場合、前記予定時刻を推定せずに、記録する順番を、機械的に記録完了要求時刻(t1、t2…)の情報データがある記録データの後にしてもよい。
尚、読み取り部10は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成することができる。
【0024】
また、記録部4は、制御部11の制御により、前述したようにロール紙Pに対して記録を実行することができるように構成されている。
またさらに、制御部11は、所定の時刻t0(図4参照)までに受信した複数の記録データ(D1、D2…)の中から、記録完了要求時刻(t1、t2…)が最も早いものを特定するように構成されている。また、記録完了要求時刻が最も早い記録データが先頭となるように記録データの並べ替えを行う。そして、記録完了要求時刻が最も早い記録データ(例えばD3(図4参照))について記録を実行する際、その他の記録データ(例えばD1、D2、D4(図4参照))をも纏めて記録を実行するように記録部4を制御する(第1受付記録モード)。
【0025】
尚、記録完了要求時刻(t1、t2…)の情報データが無い場合は、記録が完了する予定時刻が最も早いものを特定する。記録が完了する予定時刻が最も早い記録データが先頭になるように記録データの並べ替えを行う。そして、記録が完了する予定時刻が最も早い記録データについて記録を実行する際、その他の記録データをも纏めて記録を実行する。
【0026】
続いて、具体的な制御について説明する。
図3に示すのは、本実施例のプリンター1の第1受付記録モードにおける制御を示す図である。また、図4(A)(B)に示すのは、本実施例の第1受付記録モードにおける記録データの並べ替えの例を示す図である。このうち、図4(A)は受付締め切り時刻t0までに受信した記録データを示す。一方、図4(B)は受付締め切り時刻t0後に記録される記録データのスケジュールを示す。
【0027】
図3に示す如く、ステップS1では、所定の時刻として受付締め切り時刻t0になったか否かを判定する。例えば、図4(A)に示す受付締め切り時刻t0になったか否かを判定する。そして、受付締め切り時刻t0になったと判定した場合、複数の記録データを既に受信していることが推測され、纏めて記録を実行するべく、ステップS2へ進む。一方、まだ、受付締め切り時刻t0になっていないと判定した場合は、受付締め切り時刻t0になるまで、ステップS1を繰り返す。複数の記録データを出来るだけ多く纏めて記録するためである。
【0028】
ステップS2では、受信した記録データが複数か否かを判定する。受信した記録データが複数である場合、記録完了要求時刻(t1、t2…)が最も早い記録データが先頭になるように記録データの並べ替えを行う必要があるが、受信した記録データが単数および受信した記録データがない場合は、前記記録データの並べ替えを行う必要がないからである。例えば、図4(A)に示す如く、受信した記録データが四つ(複数)であると判定した場合、前記記録データの並べ替えを行うべくステップS3へ進む。一方、複数ではないと判定した場合、受信した記録データが単数か、受信した記録データがないのかを判定するべく、ステップS6へ進む。
【0029】
ステップS3では、先ず、読み取り部10が複数の記録データについて、記録完了要求時刻の情報データから記録完了要求時刻(t1、t2…)を読み取る。前述したように、記録完了要求時刻の情報データが無い場合は、記録が完了する予定時刻を推定する。次に、制御部11が、記録完了要求時刻(t1、t2…)(予定時刻)の先後を比較する。そして、記録完了要求時刻が最も早い記録データが先頭になるように記録データの並べ替えを行うべく、ステップS4へ進む。
【0030】
ステップS4では、記録完了要求時刻が最も早い記録データにあわせて記録実行スケジュールを変更する。具体的には、記録完了要求時刻(t1、t2…)(予定時刻)の先後の比較結果より、記録完了要求時刻が最も早い記録データが先頭になるように記録データの並べ替えを行う。そして、その他の記録データと、記録完了要求時刻が最も早い記録データとを纏める。ここで、並べ替えの例について具体的に説明する。
【0031】
図4(A)に示す如く、例えば、所定の時刻t0までに四つの記録データ(D1〜D4)を受信していたとする。一番目に受信した第1記録データD1の記録完了要求時刻はt3であるとする。また、二番目に受信した第2記録データD2の記録完了要求時刻はt4であるとする。またさらに、三番目に受信した第3記録データD3の記録完了要求時刻はt1であるとする。また、四番目に受信した第4記録データD4の記録完了要求時刻はt2であるとする。またさらに、時刻t0に記録データの受信の受付が締め切られるものとする。ここで、時刻は、t0、t1、t2、t3、t4の順におとずれるものとする。
【0032】
制御部11は、受付締め切り時刻t0になったとき、複数の記録データの記録完了要求時刻(t1、t2…)を比較して、最も早い時刻を特定する。図4(A)では、第3記録データD3の記録完了要求時刻t1が最も早い。
そして、図4(B)に示す如く、第3記録データD3が先頭になるように並べ替える。ここで、第3記録データD3の記録完了時刻がt1となるようにスケジュールを組む。また、その他の第1記録データD1、第2記録データD2および第4記録データD4が、第3記録データD3の後に続くようにスケジュールを組む。さらに、四つの記録データ(D1〜D4)のスケジュールの間隔をできるだけ詰めて、連続して纏めて記録を実行するようにスケジュールを組む。
【0033】
ここで、第1記録データD1、第2記録データD2および第4記録データD4について、それぞれの記録完了要求時刻より前に記録が完了する場合、順番は問わない。そのままの順番で、一つでも、記録完了要求時刻より前に記録が完了しないようであれば、全ての記録データが記録完了要求時刻より前に記録が完了するように、第1記録データD1、第2記録データD2および第4記録データD4の順番を並べ替えるものとする。
【0034】
図3に戻って説明を続ける。
ステップS4のスケジュール変更からステップS5の記録実行へ進む。ステップS5では、並べ替えられたデータに基づいて、制御部11に制御されて記録部4がロール紙Pに対して記録を実行する。そして、シーケンスを終了する。
ステップS6では、受付締め切り時刻t0までに受信した記録データが一つであるか無であるかを判定する。一つである場合、記録完了要求時刻にあわせて記録を実行するべく、ステップS5へ進む。一方、無である場合、シーケンスを終了する。
【0035】
以上、説明したように、プリンター1は、コンピューター(15〜17)から記録データを受信してもすぐに記録を実行しない。受付締め切り時刻t0まで待って、記録データが複数集まった場合、記録完了要求時刻が最も早い記録データが先頭になるように記録データを並べ替えて、連続して纏めて記録を実行するように構成されている。従って、エネルギー消費を押さえた所謂、スリープ状態である休止状態から記録駆動状態への遷移回数を、一の記録データを受信してすぐに記録を実行する構成と比較して、少なくすることができる。その結果、休止状態から記録駆動状態への遷移によるエネルギーの消費を低減でき、環境にやさしい。
【0036】
尚、本実施例では、複数のコンピューター(15〜17)から一のプリンター1に対して記録データが送られるネットワークとして説明したが、これに限らない。コンピューターの数が一つでも本発明は成立する。一のプリンター1に対してコンピューターが一台だけ接続されている構成でも、コンピューターのユーザーが交代した場合、一のユーザーが送信した記録データの内容を、他のユーザーは把握していない。そのため、休止状態から記録駆動状態への遷移回数が多くなることによるエネルギー消費量の問題が生じるからである。
【0037】
尚、所定の時刻として受付締め切り時刻t0を定めたが、所定時間経過する毎に受付を締め切る構成としてもよい。同様の効果を得ることができるからである。
また、技術的思想として、休止状態から記録駆動状態への遷移回数を少なくすることによりエネルギー消費量を低減する作用効果を得ることに関しては、一の記録データを受信してもすぐに記録を実行せず、所定時間内に集まった複数の記録データ(D1〜D4)を纏めて記録する構成であればよい。本実施例において、記録完了要求時刻が最も早い記録データについて記録を実行する際、その他の記録データをも纏めて記録を実行することとした理由は、全ての記録データについて、記録完了要求時刻までに記録を完了させるためである。その他の記録データについては、記録完了要求時刻より早い時刻に完了するが、早い分には問題はない。
【0038】
本実施例の記録装置であるプリンター1は、記録データを送信可能な送信装置としてのコンピューター(15〜17)から記録データを受信する一のプリンター1であって、コンピューター(15〜17)から送信された記録データ(D1、D2…)および該記録データについての記録完了要求時刻(t1、t2…)のデータを受信する受信部8と、被記録媒体の一例であるロール紙Pに対して記録する記録部4と、記録部4を制御する制御部11と、を備え、制御部11は、受信部8が一の記録データを受信してもすぐに記録を開始させず、受信部8で受信した複数の記録データ(D1、D2…)のうち、記録完了要求時刻が一番早い記録データ(例えばD3)を記録部4に記録させる際、他の記録データ(例えばD1、D2、D4)をも纏めて記録させることを特徴とする。
【0039】
また、本実施例において、受信部8は、複数のコンピューター(15〜17)から記録データ(D1、D2…)を受信する構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、所定時間経過する毎に記録データ(D1、D2…)の受付を締め切る構成であることを特徴とする。
【0040】
[他の実施例1]
他の実施例1では、制御部11は、前述した第1受付記録モードに加えて、第2受付記録モードを切り換え可能に有している。前述した第1受付記録モードと共通する内容の説明は省略し、異なる内容のみ説明する。前述した第1受付記録モードでは、所定の時刻を受付締め切り時刻t0としていたが、第2受付記録モードでは、既に受信した記録データの全ての記録が完了する時刻まで、記録データを受け付けるように構成されている。
尚、前述した構成と同様であるものについては、同じ符号を用いることとし、その説明は省略する。
【0041】
図5(A)(B)に示すのは、他の実施例1の記録データの受付締め切り時刻txを示す図である。
図5(A)(B)に示す如く、第2受付記録モードでは、既に受信した記録データの全ての記録が完了する時刻を受付締め切り時刻txとする。図5(B)に示す如く、第4記録データD4の記録が完了する時刻が受付締め切り時刻txとなる。ただし、受付締め切り時刻txまでに、さらに記録データを受け付けた場合、第4記録データD4の後に追加され、連続して記録が実行される内容のスケジュールが組まれることとなる。つまり、受付締め切り時刻txが変動する構成である。記録実行中にさらに記録データを受け付けた場合は、受け付けた記録データの全ての記録が完了するまで、停止しない。
【0042】
その結果、前述した実施例(第1受付記録モード)と同様、エネルギー消費を押さえた所謂、スリープ状態である休止状態から記録駆動状態への遷移回数を、一の記録データを受信してすぐに記録を実行する構成と比較して、少なくすることができる。
また、第2受付記録モードでは、第1受付記録モードと比較して、ユーザーが送信した記録データに対して受付締め切り時刻txを変動させて柔軟に対応することができる。従って、エネルギー環境問題だけでなく、ユーザーに対してもやさしい。
【0043】
他の実施例1において、所定の時刻(t0)に記録データ(D1、D2…)の受付を締め切り、締め切った時刻(t0)において、一番早い記録データ(例えばD3)を特定し、一番早い記録データ(例えばD3)を記録する際に、他の記録データ(例えばD1、D2、D4)をも纏めて記録する第1受付記録モードと、既に受け付けている記録データ(D1、D2…)の全ての記録が完了する時刻(tx)を基準に記録データの受付を締め切る第2受付記録モードと、を有することを特徴とする。
【0044】
[他の実施例2]
他の実施例2では、読み取り部10(図2参照)は、前述した実施例に加え、受信部8で受信した記録データに対応する温度設定条件のデータをも読み取ることができるように設けられている。ここで、「温度設定条件」とは、記録データに基づいて記録を実行する際の温度設定の条件をいう。
尚、温度設定の条件のデータは、記録データと同様にコンピューター(15〜17)から送られる構成でもよいし、記録データに含まれている構成でもよい。また、記録データに含まれておらず、記録データと同様にコンピューター(15〜17)から送られない場合は、記録データに含まれている被記録媒体の種類についての情報や記録設定の情報から温度設定の条件を判定してもよい。
また、前述した構成と同様であるものについては、同じ符号を用いることとし、その説明は省略する。
【0045】
例えば、ヒーター19(図1参照)の設定が高温設定および低温設定の二つの設定が設けられているとする。係る場合、読み取り部10は、受信した記録データについて、ヒーター19が高温である条件で記録されるものであるか、低温である条件で記録されるものであるかを読み取る。温度設定の条件は、三種類以上あってもよいのは勿論である。
そして、前述したステップS4(図4参照)に加えて、読み取り結果より、さらに複数の記録データを並べ替えて温度設定条件毎に纏める。ここで、並べ替えの例について具体的に説明する。
【0046】
図6(A)(B)に示すのは、他の実施例2における記録データの並べ替えの例を示す図である。このうち、図6(A)は記録完了要求時刻が最も早い記録データにあわせて記録実行スケジュールが変更された後であって、温度設定条件毎による並べ替え前である。一方、図6(B)は温度設定条件毎によるさらなる並べ替えをした後である。
図6(A)に示す如く、例えば、四つの記録データ(D1〜D4)について、前述した図4および図5と同様、記録完了要求時刻が最も早い記録データにあわせて記録実行スケジュールが変更されたとする。
【0047】
ここで、第3記録データD3の温度設定条件について、読み取り部10が低温設定であると読み取ったとする。また、第1記録データD1の温度設定条件について、読み取り部10が高温設定であると読み取ったとする。またさらに、第2記録データD2の温度設定条件について、読み取り部10が低温設定であると読み取ったとする。また、第4記録データD4の温度設定条件について、読み取り部10が高温設定であると読み取ったとする。
【0048】
図6(B)に示す如く、読み取り結果より、制御部11は、複数の記録データ(D1〜D4)を同じ温度設定条件毎に纏める。他の実施例2では、第1記録データD1および第3記録データD3が低温設定であるので、第1記録データD1および第3記録データD3を第一群G1として纏める。また、第2記録データD2および第4記録データD4が高温設定であるので、第2記録データD2および第4記録データD4を第二群G2として纏める。さらに、記録完了要求時刻が最も早い記録データが先となる順番に第一群G1および第二群G2を並べ替える。
【0049】
このように、記録データ(D1〜D4)を並べ替えて同じ温度設定条件毎に纏めることにより、温度設定切り換えの回数を、記録データを並べ替えない構成と比較して、少なくすることができる。これにより、エネルギーロスをさらに低減することができる。
【0050】
他の実施例2において、複数の所定の温度設定条件を有しており、ロール紙Pに対して熱を加える加熱手段18をさらに備えており、受信部8は、記録データ(D1、D2…)に対応する温度設定条件のデータをもコンピューター(15〜17)から受信する構成であり、制御部11は、同じ温度設定条件の記録データがある場合、同じ温度設定条件毎に記録データ(D1、D2…)を纏め(例えばG1(D3、D2)、G2(D1、D4))、温度設定条件に応じて加熱手段18を制御し、同じ温度設定条件毎に纏めた記録データ(例えばG1(D3、D2)、G2(D1、D4))に基づいて記録部4に記録させることを特徴とする。
【0051】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 プリンター、2 媒体送り手段、3 送り出し手段、4 記録部、5 記録ヘッド、
6 ノズル、7 キャリッジ、8 受信部、9 媒体支持部、10 読み取り部、
11 制御部、12 巻き取り手段、13 ガイド軸、14 ローラー対、
15 第1コンピューター、16 第2コンピューター、17 第3コンピューター、
18 加熱手段、19 ヒーター、D1 一番目に受信した第1記録データ、
D2 二番目に受信した第2記録データ、D3 三番目に受信した第3記録データ、
D4 四番目に受信した第4記録データ、G1 第一群の記録データ、
G2 第二群の記録データ、t0 (第1受付記録モードの)受付締め切り時刻、
t1〜t4 記録完了要求時刻、tx (第2受付記録モードの)受付締め切り時刻、
P ロール紙、X 幅方向、Y 送り方向、Z 鉛直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録データを送信可能な送信装置から記録データを受信する一の記録装置であって、
前記送信装置から送信された記録データおよび該記録データについての記録完了要求時刻のデータを受信する受信部と、
被記録媒体に対して記録する記録部と、
該記録部を制御する制御部と、を備え、
該制御部は、前記受信部が一の記録データを受信してもすぐに記録を開始させず、前記受信部で受信した複数の記録データのうち、記録完了要求時刻が一番早い前記記録データを前記記録部に記録させる際、他の記録データをも纏めて記録させることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記受信部は、複数の前記送信装置から記録データを受信する構成である記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、
複数の所定の温度設定条件を有しており、被記録媒体に対して熱を加える加熱手段をさらに備えており、
前記受信部は、記録データに対応する温度設定条件のデータをも前記送信装置から受信する構成であり、
前記制御部は、同じ温度設定条件の前記記録データがある場合、同じ温度設定条件毎に前記記録データを纏め、温度設定条件に応じて前記加熱手段を制御し、同じ温度設定条件毎に纏めた記録データに基づいて前記記録部に記録させることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置において、所定時間経過する毎に前記記録データの受付を締め切る構成である記録装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置において、
所定の時刻に前記記録データの受付を締め切り、該締め切った時刻において、前記一番早い前記記録データを特定し、一番早い前記記録データを記録する際に、他の記録データをも纏めて記録する第1受付記録モードと、
既に受け付けている記録データの全ての記録が完了する時刻を基準に前記記録データの受付を締め切る第2受付記録モードと、を有する記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−116142(P2012−116142A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269434(P2010−269434)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】