説明

記録装置

【課題】ガイドピンとガイド穴の壁部との干渉を防ぎつつ、ガイド穴とガイドピンとの係合による位置決め精度を確保する。
【解決手段】プリンタは、ガイドピン4,5が形成された支持部60を保持する下筐体と、ガイド穴12,13が形成された記録部9を保持する上筐体と、上筐体の下筐体に対する回動を規制するロック機構70と、ロック機構70に連動してガイドピン4,5を移動させる連動機構15とを有している。連動機構15は、ロック機構70が規制を解除する解除位置を取るときに、ガイドピン4,5とガイド穴12,13とを係合させない非係合位置をとる。また、連動機構15は、ロック機構70が規制を行う規制位置を取るときに、ガイドピン4,5とガイド穴12,13とを係合させる係合位置をとる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を記録する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、所定の方向に沿って延出されるガイドピン(位置決めピン)と、ガイドピンと係合可能なガイド穴(ガイド部)とを含む位置決め機構を有し、ガイドピン及びガイド穴の係合により記録部(記録ユニット)と記録媒体を支持する支持部(搬送装置)の相対位置を位置決めすることが可能な記録装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−231719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の記録装置において、記録部と支持部の間にユーザによる保守作業が行われるための空間を確保するために、所定の軸を中心に、記録部が支持部に対して回動する構成を採用しようとすると、以下の問題が生じる。つまり、ガイドピンとガイド穴とが係合している状態において記録部を支持部に対して回動させようとすると、ガイドピンとガイド穴を構成する壁とが干渉する。このため、ガイドピン及びガイド穴が磨耗したり、記録部を支持部に対して回動させることができないという問題が生じ得る。ガイドピンとガイド穴を構成する壁との干渉を避けつつ記録部を支持部に対して回動させる構成とすると、ガイドピンの移動領域をさけるようにガイド穴を大きくしなければならず、位置決め精度が低下するという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ガイドピンとガイド穴の壁部との干渉を防ぎつつ、ガイド穴とガイドピンとの係合による位置決め精度を確保する記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録装置は、記録媒体を支持する支持部と、前記支持部に支持された記録媒体に画像を記録する記録部と、前記支持部を保持する第1筐体と、前記第1筐体に軸を介して連結され当該軸を中心として前記第1筐体に対して回動可能であり、当該回動によって前記第1筐体に近接した近接位置と前記近接位置のときよりも前記第1筐体から離隔した離隔位置とを取り得ると共に、前記近接位置において前記支持部と前記記録部とが対向するように前記記録部を保持する第2筐体と、所定方向に沿って延出するガイドピン、及び、前記第2筐体の回動に伴って前記ガイドピンに対して相対移動するガイド穴を含み、前記第2筐体が前記近接位置にあるときに前記ガイドピンと前記ガイド穴とが係合することによって前記記録部と前記支持部の相対位置を位置決めする位置決め機構と、前記第2筐体が前記近接位置に位置する場合において、前記第2筐体の回動を規制する規制位置と、前記第2筐体の規制を解除する解除位置とを取り得る規制機構と、前記規制機構に連動して前記ガイドピン及び前記ガイド穴のうちの一方を前記所定方向に移動させる連動機構であって、前記規制機構が前記規制位置にあるときに前記ガイドピンと前記ガイド穴とを係合させる係合位置と、前記規制機構が前記解除位置にあるときに前記ガイドピンと前記ガイド穴とを係合させない非係合位置とを取り得る前記連動機構とを備えている。
【0007】
これによると、規制機構が解除位置を取るときに、ガイドピンとガイド穴とが非係合状態となるので、第2筐体を回動させても、ガイドピンとガイド穴の壁部の干渉を防ぐことが可能となる。また、ガイド穴とガイドピンとの係合による位置決め精度を確保することが可能となる。
【0008】
本発明において、前記規制機構は、前記第1及び第2筐体の一方に回動可能に支持された引掛部材と、前記第1及び第2筐体の他方に支持され前記引掛部材によって係止可能な係止部材とを有しており、前記係止部材が前記引掛部材によって係止される位置が前記規制位置であり、前記係止部材が前記引掛部材によって係止されない位置が前記解除位置であることが好ましい。これにより、規制機構の構成が簡単になる。
【0009】
また、本発明において、前記連動機構は、前記引掛部材と係合し、前記ガイドピン及び前記ガイド穴のうちの前記一方とともに前記引掛部材の回動に伴って移動する移動部と、前記移動部を前記係合位置に向けて付勢する付勢部とを有しており、前記付勢部は、前記移動部を介して前記引掛部材を前記規制位置に向けて付勢することが好ましい。これにより、規制機構が、引掛部材を規制位置に付勢する付勢機構を別に有する必要がなくなり、その構成がより簡単になる。
【0010】
また、本発明において、第1位置と、前記近接位置での前記記録部と前記支持部との離隔距離が前記第1位置におけるよりも大きい第2位置とを取り得るように、前記記録部及び前記支持部の少なくとも一方を前記所定方向に移動させる移動機構をさらに備えていることが好ましい。これにより、第2筐体を回動させなくても、記録部と支持部とを離接可能な構成となる。
【0011】
また、本発明において、前記移動機構は、前記記録部及び前記支持部のうちの一方を移動させ、前記記録部及び前記支持部のうちの前記一方には、前記ガイドピン及び前記ガイド穴のうちの他方が形成されることが好ましい。これにより、連動機構の構成が簡単になる。また、連動機構を介して規制機構を操作する際の負荷を小さくできる。
【0012】
また、本発明において、前記第1位置は、前記記録部によって記録媒体に画像が記録される記録位置であることが好ましい。これにより、記録位置と第2位置との間において、記録部と支持部とを離接可能な構成となる。
【0013】
また、本発明において、前記記録部と対向可能な対向部と、前記記録部における前記対向部と対向する記録面を取り囲むように前記記録部の周囲に配設された環状部材を有し、前記対向部と前記環状部材とが当接して前記記録面を封止するキャピング機構とをさらに備えている。そして、前記第1位置は、前記記録部を封止するキャッピング位置であることが好ましい。これにより、第1位置において記録面をキャッピングすることが可能となり、装置の小型化に寄与する。また、キャッピング時にユーザが第2筐体を離隔位置に回動することが可能となる。
【0014】
また、本発明において、前記移動機構は、前記第1位置と前記第2位置との間の第3位置を、さらに取り得るように、前記記録部及び前記支持部の少なくとも一方を移動させることが好ましい。これにより、例えば、第1位置と第3位置とのそれぞれを、記録部により記録媒体に画像を記録する記録位置とした場合に、記録媒体の厚みに応じて記録部及び支持部との間を変化させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の記録装置によると、規制機構が解除位置を取るときに、ガイドピンとガイド穴とが非係合状態となるので、第2筐体を回動させても、ガイドピンとガイド穴の壁部の干渉を防ぐことが可能となる。また、ガイド穴とガイドピンとの係合による位置決め精度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態によるインクジェットプリンタを示す外観斜視図である。
【図2】プリンタの内部を示す概略側面図である。
【図3】図2に示す上筐体を回動させたときの状況を示す説明図である。
【図4】図2に示す支持部の概略斜視図である。
【図5】ロック機構の動作状況を示す説明図である。
【図6】ロック機構及び連動機構の動作状況を示す説明図である。
【図7】ヘッド及び環状部材を示す概略図である。
【図8】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】プリンタの制御装置が実行する内容を示すフローチャートである。
【図10】パージ動作、及び、ワイピング動作を説明するための動作状況図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
先ず、図1〜図3を参照し、本発明に係る記録装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
【0019】
プリンタ1は、共に直方体形状で且つサイズが略等しい上筐体1a及び下筐体1bを有する。上筐体(第2筐体)1aは下面が開口し、下筐体(第1筐体)1bは上面が開口している。上筐体1aは、骨組みとなるフレーム1a1と、フレーム1a1の外側を覆う化粧カバー1a2とを有している。下筐体1bも、骨組みとなるフレーム1b1と、フレーム1b1の外側を覆う化粧カバー1b2とを有している。上筐体1aが下筐体1b上に重なり、互いの開口面を封止することで、プリンタ1内部の空間が画定される(図2参照)。上筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。上及び下筐体1a,1bにより画定される空間には、後述の給紙ユニット1cから排紙部31に向けて、図2に示す太矢印に沿って、用紙Pが搬送される用紙搬送経路が形成されている。
【0020】
上筐体1aは、図2及び図3に示すように、上筐体1aにおける副走査方向の一端部(図中右端部)の鉛直方向略中央において、主走査方向に延在する軸1hを介して下筐体1bに連結されている。そして、上筐体1aは、当該軸1hを中心として、下筐体1bに対して回動可能となっている。上筐体1aは、回動することで、下筐体1bに近接した近接位置(図2に示す位置及び図3中実線で示す位置)と、近接位置のときよりも下筐体1bから離隔した離隔位置(図3中二点鎖線で示す位置)とを取り得る。上筐体1aが離隔位置にあるとき、近接位置にある上筐体1a及び下筐体1bによって形成されている用紙搬送経路の一部が外部に露出され、用紙搬送経路上にユーザの作業空間が確保される。上筐体1aが離隔位置に位置することで、作業空間が確保されると、ユーザは、用紙搬送経路においてジャムした用紙Pを除去したり、記録部9や支持部60の保守作業を行うことができる。記録部9や支持部60の保守作業とは、例えば、吐出面10aや、支持面61a、対向面62aに付着した汚れを除去する作業である。軸1hには、上筐体1aを開放する方向に(近接位置から離隔位置に向けて)付勢するバネ(不図示)が設けられている。本実施形態において、上筐体1aは、水平面に対して略35度の傾斜角度まで開くことができる。
【0021】
下筐体1bのカバー1b2の側面(図1の紙面右手前側の面)には、開口1b3が形成されている。そして、近接位置にある上筐体1aの回動を規制するロック機構(規制機構)70の操作部71が、開口1b3から露出している。ロック機構70の構成については後に詳述する。
【0022】
上筐体1aは、2つのヘッド10(図2に太矢印で示す用紙搬送方向上流側から順に、前処理液を吐出するプレコートヘッド10及びブラックインクを吐出するインクジェットヘッド10)、これら2つのヘッド10及び送りローラ対24のうちの上側のローラを支持するフレーム3、フレーム3を鉛直方向に沿って昇降させるヘッド昇降機構33(図8参照)、ヘッド10にそれぞれ対応する2つのカートリッジ(不図示)、プリンタ1各部の動作を制御する制御装置1p(図2参照)を収容している。本実施形態においては、2つのヘッド10とフレーム3とによって、用紙Pに画像を記録する記録部9が構成されている。記録部9は、ヘッド昇降機構33を介して上筐体1aに保持されている。
【0023】
さらに、上筐体1aは、送りローラ対25,26のうちの上側のローラ、これらローラ対25,26間のガイド29のうちの上側のガイド、送りローラ対27,28及び用紙搬送方向に沿って送りローラ対26,28間の2組のガイド29も収容している。つまり、上筐体1aが近接位置から離隔位置に回動することで、これらの収容部品がすべて上筐体1aとともに移動する。
【0024】
下筐体1bは、支持部60、ワイパユニット、2つの廃液トレイ65及び給紙ユニット1cを収容(保持)している。さらに下筐体1bは、用紙センサ32、送りローラ対22,23及び用紙搬送方向に沿って給紙ユニット1cと送りローラ対23との間の2組のガイド29も収容している。
【0025】
各カートリッジは、対応するヘッド10に供給される前処理液又はブラックインク(以下、これらを「液体」と総称する。)を貯留している。前処理液は、インクの滲みや裏抜けを防止する機能、インクの発色性や速乾性を向上させる機能等を有する液体である。各カートリッジは、対応するヘッド10にチューブ(不図示)及びポンプ34(図8参照)を介して接続されている。なお、各ポンプ34は、対応するヘッド10に液体を強制的に送るとき(すなわち、パージ動作や液体の初期導入が行われるとき)だけ制御装置1pによって駆動される。また、画像記録時におけるヘッド10には、流路内に負圧が生じるため、カートリッジ内の液体が自動的にヘッド10に供給される。
【0026】
各ヘッド10は、主走査方向に長尺なライン式であり、略直方体の外形形状を有する。2つのヘッド10は、副走査方向に互いに離隔してフレーム3に支持されている。各ヘッド10において、上面には、チューブが取り付けられるジョイントが設けられ、下面の吐出面10aには、多数の吐出口が開口し、内部には、カートリッジから供給された液体が吐出口に至るまでの流路が形成されている。フレーム3には、各ヘッド10の下端外周を囲む環状部材40が設けられている。環状部材40の構成については後に詳述する。
【0027】
ヘッド昇降機構33は、上筐体1aが近接位置にあるときにフレーム3を鉛直方向(所定方向)に沿って昇降させ、2つのヘッド10を記録位置と退避位置(第2位置)の間で移動させる。記録位置では、2つのヘッド10が支持部60(後述する第1状態における支持面61a)と記録に適した間隔で対向する。なお、記録位置には、普通紙など比較的厚みの薄い用紙Pに対応した第1記録位置(第1位置)と、厚紙などの用紙Pに対応し第1記録位置よりも支持面61aから離れた第2記録位置(第3位置)とがある。そして、制御装置1pの制御により、画像を記録する用紙Pの種類に応じて、ヘッド10が適宜の記録位置に配置されるように、ヘッド昇降機構33が制御される(図10参照)。退避位置では、2つのヘッド10が支持部60(後述する第2状態における対向面62a)から第2記録位置以上の間隔で離隔する。
【0028】
給紙ユニット1cは、給紙トレイ20及び給紙ローラ21を有する。このうち給紙トレイ20が下筐体1bに対して副走査方向に着脱可能である。給紙トレイ20は、上方に開口する箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収容可能である。給紙ローラ21は、制御装置1pの制御により回転し、給紙トレイ20の最も上方にある用紙Pを送り出す。給紙ローラ21によって送り出された用紙Pは、ガイド29によりガイドされ且つ送りローラ対22,23によって順次挟持されつつ支持部60へと送られる。
【0029】
支持部60は、記録部9に鉛直方向に対向して配置されている。支持部60は、ヘッド10とそれぞれ対向する2つの回転体63と、回転体63の周面に固定された2つのプラテン61及び2つの対向部材(対向部)62と、2つの回転体63を回転可能に支持するフレーム11とを有している。回転体63は、主走査方向の軸を有し且つ制御装置1pの制御により当該軸を中心として回転する。また、フレーム11は、下側の送りローラ24も回転可能に支持している。
【0030】
プラテン61及び対向部材62は、共に主走査方向及び副走査方向に関して吐出面10aより一回り大きなサイズを有し、且つ、鉛直方向に互いに対向して配置されている。
【0031】
プラテン61の表面は、吐出面10aに対向しつつ用紙Pを支持する支持面61aであり、用紙Pを保持できるように材料や加工に工夫が施されている。例えば支持面61aに、弱粘着性のシリコン層を形成したり、副走査方向に沿ったリブを多数形成したりすることで、支持面61a上に載置された用紙Pの浮き等が防止される。また、プラテン61は、樹脂により構成されている。
【0032】
対向部材62は、水分を透過しない又は透過し難い材料から構成されている。対向部材62の表面は、平滑であって、吐出面10aに対向する対向面62aである。
【0033】
回転体63の回転により、支持面61aが吐出面10aに対向し且つ対向面62aが吐出面10aに対向しない第1状態(図2参照)と、支持面61aが吐出面10aに対向せず且つ対向面62aが吐出面10aに対向する第2状態(図7及び図10参照)とが切り換わる。本実施形態において、制御装置1pは、用紙Pに向けて吐出口から液体を吐出して用紙Pに画像を記録するときは第1状態、パージ動作やワイピング動作が行われるとき及びキャッピング状態においては第2状態となるように、回転体63の駆動を制御する。
【0034】
各廃液トレイ65は、回転体63等の下方に配置されており、廃液タンク(図示せず)に連通している。パージ動作やワイピング動作の際に上方から落下してきた液体は、廃液トレイ65に受容され、廃液タンクに排出される。
【0035】
ワイパユニットは、ワイパ67a(図10参照)と、ワイパ67aを主走査方向に往復移動させるワイパ移動機構68(図8参照)とを有している。ワイパ67aは、回転体63等に対して図2の紙面奥側の位置を待機位置として、制御装置1pによってワイパ移動機構68が制御されることで、主走査方向に移動可能である。ワイパ67aは、ゴム等の弾性材料からなり、副走査方向に延在する板状部材である。ヘッド10がワイピング位置(後述する)にあるときにワイパ67aが主走査方向へ移動する際、ワイパ67aの上端が吐出面10aに、ワイパ67aの下端が対向面62aに接触するように、ワイパ67aはワイパ移動機構68に支持されている。これにより、吐出面10a及び対向面62aに付着した液体がワイパ67aによって除去される(すなわち、吐出面10a及び対向面62aの清掃が行われる)。
【0036】
次いで、図2及び図4を参照し、フレーム11について説明する。
【0037】
フレーム11は、図4に示すように、環状に形成され、鉛直方向に貫通した貫通部11aを有している。そして、フレーム11は、貫通部11a内において、2つの回転体63及び送りローラ対24のうちの下側のローラを回転可能に支持している。フレーム11には、凹部14が形成されている。凹部14の開口14aは、フレーム11の上面に形成されている。そして、凹部14は、フレーム11の主走査方向の一端部(図4中紙面右手前側の端部)において、副走査方向に沿って延在して形成されている。凹部14内には、ロック機構70の動作に伴って連動する連動機構15が設けられている。
【0038】
連動機構15は、凹部14内において鉛直方向に移動可能な移動部16と、移動部16を上方に向かって付勢する2つのバネ(付勢部)17とを有している。2つのバネ17は、副走査方向に沿って互いに離隔して配置されている。本実施形態においては、付勢部としてコイルバネ17が採用されているが、移動部16を同方向に付勢することが可能であれば、コイルバネ以外の弾性部材から構成されていてもよい。
【0039】
移動部16は、凹部14の開口14aとほぼ同じ平面サイズの直方体形状を有している。移動部16の上面には、鉛直方向上方(所定方向:吐出面10aに対して垂直な方向)に沿って延出したガイドピン4,5が形成されている。これら2つのガイドピン4,5は、移動部16の副走査方向の両端部(フレーム11の角部近傍)に配置されており、後述のガイド穴12,13と鉛直方向に沿って対向する。これらガイドピン4,5は、先細りの円柱部材からなる。
【0040】
フレーム11の側面(図4中手前右側の側面)には、凹部14に通じる長孔11bが形成されている。長孔11bは、鉛直方向に沿って長く形成されている。移動部16の側面には、突出部16aが形成されている。突出部16aは、長孔11bと対向する位置に配置されており、主走査方向に沿って長孔11bから突出する長さを有している。突出部16aの先端部が、ロック機構70の動作に伴って鉛直方向に移動することで、移動部16も鉛直方向に沿って移動する。これにより、ガイドピン4,5も鉛直方向に沿って移動する。より具体的には、突出部16aが長孔11bの上端と接触する位置にあるときに、移動部16は、ガイドピン4,5とガイド穴12,13とが係合する係合位置に配置され、突出部16aが長孔11bの途中部位(図6(b)に示す位置)から長孔11bの下端と接触する位置との間にあるときに、移動部16は、ガイドピン4,5とがガイド穴12,13とが係合しない非係合位置に配置される。つまり、移動部16は、ガイドピン4、5とガイド穴12、13とが係合する係合位置と、ガイドピン4、5とガイド穴12、13とが係合しない非係合位置とを取り得る。
【0041】
次いで、図2、図3及び図6を参照し、フレーム3について説明する。
【0042】
フレーム3は、環状に形成され、2つのヘッド10及び送りローラ対24のうちの上側のローラを支持する。さらに、フレーム3は、環状部材40が昇降可能なように環状部材40を支持している。フレーム3の下面には、ガイドピン4、5のそれぞれと係合可能な2つのガイド穴12、13が形成されている。ガイド穴12、13には、上筐体1aが近接位置にあってヘッド10(記録部9)が記録位置(第1及び第2記録位置)にあるときにガイドピン4,5が挿入される。ガイド穴12、13にガイドピン4、5が挿入されることで、ガイドピン4、5とガイド穴12、13とが係合する。これらガイドピン4,5及びガイド穴12,13によって記録部9と支持部60との水平方向の位置決め行う位置決め機構が構成されている。つまり、ガイドピン4,5は、上筐体1aが近接位置、ヘッド10が記録位置にあってロック機構70が規制位置(後述する)にあるときに、ガイド穴12,13と係合可能(挿入可能)な長さを有している。また、ガイドピン4,5は、上筐体1aが近接位置、ヘッド10が記録位置にあってロック機構70が規制位置から解除位置(後述する)に至る途中に(図6(b)参照)、ガイド穴12,13と係合しなくなる長さとなっている。
【0043】
2つのガイド穴12,13は、副走査方向に沿って並んで配置され、上筐体1aが近接位置にあってヘッド10が記録位置にあるときにガイドピン4,5と鉛直方向に沿って対向する。ガイド穴12は、平面視において円形状を有しており、その内径はガイドピン4の外径とほぼ同じ又は若干大きめに形成されている。また、ガイド穴12の開口近傍にはすり鉢状のテーパ部が形成されている。これにより、ガイドピン4がガイド穴12に挿入されやすくなる。
【0044】
ガイド穴13は、ガイド穴12と同様であり、平面視において円形状を有しており、その内径はガイドピン5の外径とほぼ同じ又は若干大きめに形成されている。また、ガイド穴13の開口近傍にはすり鉢状のテーパ部が形成されている。これにより、ガイドピン5がガイド穴13に挿入されやすくなる。
【0045】
このように、ガイド穴12,13とガイドピン4,5とが係合することで、フレーム3とフレーム11の主走査方向及び副走査方向の相対位置が位置決めされる。つまり、フレーム3またはフレーム11は、ガイド穴12、13とガイド穴4、5とが係合するときに、僅かに水平方向に移動することにより主走査方向及び副走査方向の相対位置が位置決めされる。また、ガイドピン4,5及びガイド穴12,13の対となる各組が2組設けられていることで、フレーム3とフレーム11の水平面に沿った相対的な回転角度が位置決めされる。
【0046】
次いで、図1、図5及び図6を参照し、ロック機構70の構成について説明する。
【0047】
ロック機構70は、図5に示すように、引掛部材72と、係止ピン(係止部材)73とを有している。引掛部材72は、図5に示すように、先端が曲がった鉤状を有している。また、引掛部材72は、基端部72aが主走査方向に延在する軸72bを介してフレーム1b1に連結されており、この軸72bを中心として下筐体1bに対して回動可能に支持されている。引掛部材72の一側面には、操作部71が突出して形成されている。操作部71は、カバー1b2の開口1b3から突出している。そして、この操作部71を、ユーザが図1中矢印方向に回動させることで、引掛部材72が規制位置(図5(a)に示す位置)から解除位置(図5(b)に示す位置)に回動する。また、引掛部材72は、フレーム1b1とカバー1b2との間の空間に配置されている。係止ピン73は、上筐体1aのフレーム1a1から突出し、フレーム1a1とカバー1a2との間の空間に配置されている。また、係止ピン73は、図5(a)に示すように、引掛部材72が規制位置に配置されているときに、引掛部材72の凹部72cと当接する位置(引掛部材72によって係止される位置)に配置されている。
【0048】
なお、ここでいうロック機構70における解除位置は、上筐体1aが近接位置にあって、係止ピン73が引掛部材72によって係止されない位置(すなわち、上筐体1aを近接位置から離隔位置に移動させることができる位置)である。上筐体1aが近接位置にあって、係止ピン73が引掛部材72によって係止されない位置とは、図5(b)に示すように、係止ピン73が引掛部材72の凹部72cに当接しない位置である。係止ピン73が引掛部材72の凹部72cに当接しないとき、係止ピン73の鉛直方向上方には引掛部材72が存在しないため、係止ピン73が鉛直方向上方に移動可能である。そのため、係止ピン73を保持する上筐体1aを近接位置から離隔位置に移動させることができる。一方、ロック機構70における規制位置は、上筐体1aが近接位置にあって、係止ピン73が引掛部材72によって係止される位置(すなわち、近接位置にある上筐体1aの移動が規制される位置)である。上筐体1aが近接位置にあって、係止ピン73が引掛部材72によって係止される位置とは、図5(a)に示すように、係止ピン73が引掛部材72の凹部72cに当接する位置である。係止ピン73が引掛部材72の凹部72cに当接するとき、係止ピン73の鉛直方向上方には引掛部材72が存在するため、係止ピン73が鉛直方向上方に移動できない。そのため、係止ピン73を保持する上筐体1aを近接位置から離隔位置に移動させることができない。なお、図5(c)では、ロック機構70は規制位置にあるが、上筐体1aが近接位置におらず、係止ピン73が引掛部材72の凹部72cに当接していないため、上筐体1aは回動自在である。
【0049】
また、引掛部材72の下側面は、突出部16aと係合(常に当接)している。これにより、引掛部材72は、連動機構15のバネ17によって、規制位置に向けて付勢される構成となる。換言すると、引掛部材72に連動して、突出部16a及び移動部16が昇降する。つまり、移動部16が引掛部材72に連動して、係合位置と非係合位置との間を移動することにより、ガイドピン4、5とガイド穴12、13とが係合状態と非係合状態との間を移動する。
【0050】
この構成において、上筐体1aが近接位置、ヘッド10が記録位置にある場合に、ユーザが操作部71を操作し、図5(a)に示す規制位置から図5(b)に示す解除位置に引掛部材72を回動させると、引掛部材72と係止ピン73との係止が解除される。つまり、上筐体1aの回動規制が解除され、この状態で上筐体1aを近接位置から離隔位置に回動させることが可能となる。このときのロック機構70の動作に伴って、連動機構15が連動する。つまり、図6(a)に示すように、引掛部材72が規制位置にあるときは、移動部16が係合位置に配置されている。そして、引掛部材72が解除位置に向けて回動すると、引掛部材72に連動して、突出部16a(移動部16)が下方に移動する。引掛部材72が図6(b)に示す位置(解除位置に到達する手前の位置)まで回動すると、ガイドピン4,5がガイド穴12,13からちょうど抜ける。すなわち、移動部16が非係合位置に移動する。その後、引掛部材72が、図6(c)に示すように、解除位置に到達すると、移動部16の下方への移動も停止する。このときも、移動部16が非係合位置に配置される。
【0051】
このように、ロック機構70による上筐体1aの回動規制を解除したときには、移動部16が非係合位置に配置される。したがって、この状態で上筐体1aを近接位置から離隔位置に回動させても、ガイドピン4,5とガイド穴12,13との係合が解除されているため、ガイドピン4,5とガイド穴12,13の壁部との干渉を防ぐことが可能となる。本実施形態においては、上筐体1aを近接位置から離隔位置に回動させると、図3に示すように、ガイド穴12,13はその移動軌跡が円弧状となるように、移動する。つまり、ガイド穴12の移動領域は、図中2点鎖線で示す円弧L3a,L4a間の領域であり、ガイド穴13の移動領域は図中2点鎖線で示す円弧L1a,L1a間の領域である。仮に、移動部16を非係合位置に配置せずに上筐体1aを近接位置から離隔位置に回動させようとすると、ガイド穴12、13の移動領域とガイドピン4、5とが重なることで、ガイドピン4,5とガイド穴12,13の壁部とが干渉する。しかしながら、本発明においては、上筐体1aを近接位置から離隔位置に回動させるためには、ロック機構70を解除位置に移動させる必要があり、ロック機構70が解除位置に移動すると、移動部16が非係合位置に配置される。このため、上述のようにガイドピン4,5とガイド穴12,13の壁部との干渉を防ぐことが可能となる。
【0052】
また、上筐体1aが離隔位置にあって、ユーザが操作部71から手を離すと、バネ17の付勢力によって、移動部16が上昇し係合位置に復帰する。このとき、突出部16aを介して引掛部材72がバネ17によって規制位置に付勢される。つまり、引掛部材72が自動的に解除位置から規制位置に復帰する。この後、ユーザが離隔位置にある上筐体1aを近接位置に回動させるように、上筐体1aを操作すると、図5(c)に示すように、係止ピン73と引掛部材72の上側面とが当接する。そして、上筐体1aの近接位置への回動に伴って、係止ピン73が引掛部材72を押圧し、引掛部材72が図中時計回りに回動する。このとき、係止ピン73が引掛部材72の先端を乗り越える位置(解除位置)まで引掛部材72が回動するとともに、この位置(解除位置)に到達するまでに、移動部16が非係合位置に配置される。このため、上筐体1aが近接位置に配置されても、ガイドピン4,5とガイド穴12,13の壁部との干渉を防ぐことが可能となる。そして、係止ピン73が引掛部材72の先端を乗り越え、上筐体1aが近接位置に近づくに連れて、引掛部材72が規制位置に復帰する。こうして、上筐体1aが近接位置に配置されるときには、引掛部材72によって係止ピン73が係止され、ロック機構70による上筐体1aの回動規制が行われる。
【0053】
次いで、図7を参照し、環状部材40の構成について説明する。
【0054】
環状部材40は、ゴム等の弾性材料からなり、平面視で吐出面10aの外周を囲む環状形状を有する。環状部材40の下端には、断面視逆三角形状の突出部40aが形成されている。
【0055】
環状部材40は、キャップ昇降機構41により上下に昇降可能である。キャップ昇降機構41は、複数のギア41Gと、これらギア41Gを駆動する駆動モータ41M(図8参照)とを有しており、これらのギア41Gの駆動により環状部材40が鉛直方向(所定方向)に昇降する。この昇降によって、環状部材40は、突出部40aが吐出面10aよりも上方に位置する上昇位置(図2及び図10参照)と、突出部40aが吐出面10aよりも下方に位置し対向面62aと当接する下降位置(図7参照)とを取り得る。なお、環状部材40の昇降可能な距離は、ヘッド10が第1及び第2記録位置のいずれに配置されているときでも、環状部材40が対向面62aと当接することが可能な距離となっている。つまり、ヘッド10の記録位置は、環状部材40を下降位置に移動させることで、後述のように吐出面10aを封止可能なキャッピング位置でもある。このため、キャッピングするために、記録部9又は支持部60を大きく移動させる必要がなくなり、このときの退避スペースを装置内に設ける必要がなくなって、プリンタ1の小型化が図れる。
【0056】
制御装置1pは、キャッピング中には環状部材40が下降位置を取り、それ以外の時には環状部材40が上昇位置を取るように、キャップ昇降機構41(駆動モータ41M)を制御してギア41Gを駆動する。キャッピング中、図7に示すように、対向面62aに突出部40aの先端が当接することによって吐出面10aを封止する、すなわち、吐出面10aと対向面62aとの間に形成される吐出空間V1が、外部空間V2から隔離される。これにより、吐出面10aの吐出口近傍の液体の乾燥が抑制される。このように環状部材40及びキャップ昇降機構41によって、キャッピング機構が構成されている。
【0057】
次に、図8を参照し、プリンタ1の電気的構成について説明する。
【0058】
制御装置1pは、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)101に加えて、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)103、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )104、I/F(Interface)105、I/O(Input/Output Port)106等を有する。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータが一時的に記憶される。ASIC104では、画像データの書き換え、並び替え等(例えば、信号処理や画像処理)が行われる。I/F105は、外部装置(プリンタ1に接続されたPC等)とのデータ送受信を行う。I/O106は、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。
【0059】
制御装置1pは、各モータ21M,22M〜28M、用紙センサ32、ヘッド昇降機構33、ワイパ移動機構68、ヘッド10の制御基板等に接続されている。制御装置1pはさらに、ポンプ34、回転モータ63M及び駆動モータ41Mに接続されている。なお、これらポンプ34、回転モータ63M及び駆動モータ41Mは、ヘッド10毎に設けられているが、図8では、1のヘッド10に対応するもののみ示し、簡略化している。
【0060】
次に、図9及び図10を参照し、制御装置1pが実行する制御内容について説明する。
【0061】
制御装置1pは、図9に示すように、先ず、パージ指令の受信の有無を判断する(ステップ1:F1)。パージ指令は、例えば、搬送経路内での紙ジャム(詰まり)時、所定時間以上継続した非吐出後等に受信される。
【0062】
制御装置1pは、パージ指令を受信すると(F1:YES)、第2状態であるか否かを判定する(ステップ2:F2)。ステップ2において、第1状態のときはステップ3(F3)に進み、第2状態のときはステップ4(F4)に進む。ステップ3においては、制御装置1pが回転モータ63Mを駆動し、回転体63を回転させて第2状態にする。
【0063】
ステップ4においては、制御装置1pが各ポンプ34を駆動し、図10(a)に示すように、すべての吐出口から対向面62a上に所定量の液体を排出する(パージ動作)。その後、制御装置1pは、ヘッド昇降機構33を制御して、図10(b)に示すように、ヘッド10を記録位置からワイピング位置に移動させる(ステップ5:F5)。ワイピング位置(第2位置)は、退避位置と第2記録位置との間であってガイドピン4,5がガイド穴12,13と係合しない位置であり、ワイパ67aを主走査方向に移動すると、ワイパ67aの上端と吐出面10aとが接触する位置である。また、当該ワイピング位置において、ワイパ67aが主走査方向に移動すると、ワイパ67aの下面と対向面62aとが接触する。なお、ヘッド10が退避位置にあるときは、ワイパ67aが主走査方向に移動して吐出面10aと対向する位置を通過しても、ワイパ67aと吐出面10aとは接触しない。
【0064】
ステップ5の後、制御装置1pは、ワイパ移動機構68を制御して、ワイパ67aを待機位置から主走査方向に沿って移動させて吐出面10a及び対向面62aをワイピングする(ワイピング動作:ステップ6(F6))。こうして、吐出面10a及び対向面62aに付着した液体を除去することができる。
【0065】
ステップ6の後、制御装置1pは、ヘッド昇降機構33を制御して、ヘッド10をワイピング位置から退避位置に移動させる(ステップ7:F7)。そして、制御装置1pが、ワイパ移動機構68を制御して、ワイパ67aを待機位置に戻す(ステップ8:F8)。このとき、ワイパ67aで対向面62aだけを再度ワイピングする。ステップ8の後、制御装置1pは、ヘッド昇降機構33を制御して、図10(c)に示すように、ヘッド10を退避位置から記録位置に移動させる(ステップ9:F9)。このとき、通常は、第1記録位置にヘッド10を移動させるが、ヘッド10を第1記録位置に移動させるまでに、記録指令を受信し、その記録指令において、用紙Pの設定が厚紙である場合は、ヘッド10を第2記録位置に配置させる。
【0066】
この後、制御装置1pは、所定時間が経過するまでに記録指令を受信したか否かを判定する。このとき、所定時間が経過するまでに記録指令を受信しない場合、キャピング動作を行う。つまり、制御装置1pが駆動モータ41Mを駆動し、環状部材40を上昇位置から下降位置に移動させる。これにより、吐出空間V1が外部空間V2から隔離されたキャッピング状態(吐出面10aの吐出口近傍の液体の乾燥が抑制された状態)となる。制御装置1pは、次に記録指令やパージ指令を受信するまで、キャッピング状態を維持する。
【0067】
上記のように、キャッピング状態にあるときには、ヘッド10はキャッピング位置にあるため、ガイドピン4、5とガイド穴12、13とは係合している。このときに、例えば、ユーザによって、上筐体1aを近接位置から離隔位置に移動されても、ロック機構70の動作に伴う連動機構15の連動によって、移動部16が非係合位置に移動する。このため、記録部9と支持部60との主走査方向及び副走査方向の位置決めが可能な構成を有しつつ、ガイド穴12,13の壁部とガイドピン4,5との干渉を防ぐことが可能となる。
【0068】
一方、所定時間が経過するまでに記録指令を受信した場合、制御装置1pが、第1状態であるか否かを判定する。そして、第2状態のときは、制御装置1pが回転モータ63Mを駆動し、回転体63を回転させて第1状態にする。一方、第1状態のときはそのままとなる。そして、制御装置1pは、受信した記録指令に基づいて、画像記録動作を行う。
【0069】
画像記録動作において、制御装置1pは、外部装置から受信した記録指令に基づいて、ヘッド10を適宜の記録位置(第1又は第2記録位置)に配置させるようにヘッド昇降機構33を制御するとともに、給紙ローラ21用の給紙モータ21M(図8参照)、各送りローラ対22〜28用の送りモータ22M〜28M(図8参照)等を駆動する。給紙トレイ20から送り出された用紙Pは、ガイド29を通って支持部60に送られる。支持部60へと送られた用紙Pは、支持面61aに支持され且つ回転する送りローラ対23,24,25に挟持されつつ搬送される。用紙Pが2つのヘッド10の真下を順次通過する際に、制御装置1pの制御により各ヘッド10が駆動され、各吐出面10aの吐出口から用紙Pの表面に向けて液体が吐出されることで、用紙P上に画像が形成される。吐出口からの液体吐出動作は、用紙センサ32からの検出信号に基づき、制御装置1pによる制御の下で行われる。用紙Pは、その後ガイド29によりガイドされ且つ送りローラ対26,27,28によって挟持されつつ上方に搬送され、上筐体1a上部に形成された開口30から排紙部31へと排出される。
【0070】
上記のように、記録指令に基づいて用紙Pを搬送しているとき、及び、記録指令に基づいて用紙Pを搬送している最中に用紙Pがジャムしたときには、ヘッド10は記録位置にあるため、ガイドピン4、5とガイド穴12、13とは係合している。これらのときに、例えば、ユーザによって、上筐体1aが近接位置から離隔位置に移動されても、ロック機構70の動作に伴う連動機構15の連動によって、移動部16が非係合位置に移動する。このため、記録部9と支持部60との主走査方向及び副走査方向の位置決めが可能な構成を有しつつ、ガイド穴12,13の壁部とガイドピン4,5との干渉を防ぐことが可能となる。
【0071】
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1によると、ロック機構70が解除位置を取るときに、ガイドピン4,5とガイド穴12,13とが非係合状態となるので、上筐体1aを回動させても、ガイドピン4,5とガイド穴12,13の壁部の干渉を防ぐことが可能となる。また、ガイド穴12,13とガイドピン4,5との係合による位置決め精度を確保することが可能となる。
【0072】
位置決め機構が、上述のガイドピン4,5及びガイド穴12,13によって構成されることで、記録部9と支持部60の主走査方向及び副走査方向の相対位置、並びに記録部9と支持部60の水平面に沿った相対的な回転角度の位置決めが可能となる。仮に、ロック機構70に連動する連動機構15を設けず、上筐体1aを離隔位置に回動させる際に、ガイドピン4,5とガイド穴12,13とが干渉しないように、ガイド穴12,13を副走査方向に長い長穴形状に構成にすると、記録部9及び支持部60の副走査方向の位置決めが行えない。このように副走査方向の相対位置の位置決めが行えないと、記録部9と支持部60に副走査方向の相対位置に位置ずれが生じ、ヘッド10と対向面62aとがずれる。すると、用紙Pに対する画像の位置ずれが生じたり、ヘッド10を環状部材40でキャッピングする際に、キャッピングできない虞が生じる。又は、副走査方向の相対位置に位置ずれが生じていてもキャッピング可能なように対向面62aを大きくする必要が生じ、この場合はプリンタ自体が大きくなる。しかしながら、本発明においては、上筐体1aを近接位置から離隔位置に回動させる際には、ロック機構70に連動する連動機構15によってガイドピン4,5とガイド穴12,13とが係合しない非係合状態となる。このため、上述のような問題が生じない。
【0073】
上筐体1aの回動を規制及び解除するロック機構70が、引掛部材72と係止ピン73とから構成されている。このため、ロック機構70の構成が簡単になる。また、連動機構15が、移動部16とバネ17とから構成され、バネ17が移動部16を介して引掛部材72を規制位置に向けて付勢している。このため、ロック機構70、引掛部材72を規制位置に付勢する付勢機構を別に有する必要がなくなり、その構成がより簡単になる。
【0074】
また、ヘッド昇降機構33を有しているため、上筐体1aを回動させなくても、記録位置と退避位置(ワイピング位置)との間において、記録部9と支持部60とを離接可能な構成となる。加えて、ヘッド昇降機構33が、記録部9を第1及び第2記録位置に移動させることが可能であるため、用紙Pの厚みに応じてヘッド10の位置を変化させることが可能となる。また、キャッピング機構を有しているため、記録位置において吐出面10aをキャッピングすることが可能となる。このため、キャッピングするために、記録部9又は支持部60を大きく移動させる必要がなくなり、このときの退避スペースを装置内に設ける必要がなくなって、プリンタ1の小型化が図れる。また、キャッピング時にもユーザが上筐体1aを自由に離隔位置に回動することが可能となる。
【0075】
また、ガイドピン4,5は、ヘッド昇降機構33によって昇降されない支持部60側に形成されており、当該ガイドピン4,5を連動機構15が移動させる。仮に、ヘッド昇降機構33が支持部60(ガイドピン含む)を昇降させる場合は、連動機構がヘッド昇降機構33を含めて移動させる必要が生じ、その構成が複雑になる。しかしながら、本発明はヘッド昇降機構33によって昇降されない支持部60側に形成されたガイドピン4,5を連動機構15が移動させるため、連動機構15の構成が簡単になる。また、ヘッド昇降機構33を含めて移動させる必要がないため、連動機構15を介してロック機構70を操作する際の負荷を小さくできる。
【0076】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、位置決め機構を構成するガイドピンとガイド穴は、1組だけ設けられていてもよい。また、ガイドピン4,5及びガイド穴12,13の対となる2組が、副走査方向及び主走査方向と交差する方向に並んで配置されていてもよいし、軸1hとの距離が互い同じになる位置であって、主走査方向に並んで配置されていてもよい。また、ガイドピン及びガイド穴の対となる組が3以上設けられていてもよい。また、ガイドピンは、上筐体1aが近接位置にある場合、ヘッド10がワイピング位置にあるときでもガイド穴と係合する長さを有していてもよい。また、ガイド穴12,13が支持部60に、ガイドピン4,5が記録部9に設けられていてもよい。また、ガイド穴12,13は、貫通していてもよい。また、記録部はヘッド10のみから構成されていてもよい。この場合、ガイドピン又はガイド穴は、ヘッド10に直接、形成される。
【0077】
連動機構は、ガイドピン4,5に代えて、ガイド穴12,13をガイドピン4,5の延在方向に沿って移動させてもよい。この場合、移動部16にガイド穴12,13を形成し、フレーム3にガイドピン4,5を形成すればよい。また、連動機構は、記録部9側にあるガイドピン又はガイド穴を移動させてもよい。このとき、ヘッド昇降機構33は、支持部60側を昇降させることが好ましい。また、連動機構は、ヘッド昇降機構33が昇降させる記録部9又は支持部60側にあるガイドピン又はガイド穴を、ヘッド昇降機構33を含めて移動させてもよい。また、連動機構15は、移動部16を介して引掛部材72を規制位置に付勢していなくてもよい。この場合、ロック機構70が、引掛部材72を規制位置に付勢する付勢機構を有すればよい。
【0078】
また、ヘッド昇降機構33が設けられていなくてもよい。また、ヘッド昇降機構33が、支持部60を昇降させてもよいし、記録部9及び支持部60の両方を昇降させてもよい。また、記録位置が第1記録位置だけでもよい。また、キャッピング機構は、環状部材40を支持面61aに当接させることで、吐出面10aを封止してもよい。また、キャッピング機構が設けられていなくてもよい。
【0079】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う記録装置にも適用可能である。本発明は、インクジェット式に限定されず、例えばレーザー式、サーマル式等の記録装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。
【符号の説明】
【0080】
1 インクジェットプリンタ(記録装置)
1a 上筐体(第2筐体)
1b 下筐体(第1筐体)
1h 軸
4,5 ガイドピン
9 記録部
10 ヘッド
12,13 ガイド穴
15 連動機構
16 移動部
17 バネ(付勢部)
33 ヘッド昇降機構(移動機構)
40 環状部材
60 支持部
62 対向部材(対向部)
70 ロック機構(規制機構)
72 引掛部材
73 係止ピン(係止部材)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を支持する支持部と、
前記支持部に支持された記録媒体に画像を記録する記録部と、
前記支持部を保持する第1筐体と、
前記第1筐体に軸を介して連結され当該軸を中心として前記第1筐体に対して回動可能であり、当該回動によって前記第1筐体に近接した近接位置と前記近接位置のときよりも前記第1筐体から離隔した離隔位置とを取り得ると共に、前記近接位置において前記支持部と前記記録部とが対向するように前記記録部を保持する第2筐体と、
所定方向に沿って延出するガイドピン、及び、前記第2筐体の回動に伴って前記ガイドピンに対して相対移動するガイド穴を含み、前記第2筐体が前記近接位置にあるときに前記ガイドピンと前記ガイド穴とが係合することによって前記記録部と前記支持部の相対位置を位置決めする位置決め機構と、
前記第2筐体が前記近接位置に位置する場合において、前記第2筐体の回動を規制する規制位置と、前記第2筐体の規制を解除する解除位置とを取り得る規制機構と、
前記規制機構に連動して前記ガイドピン及び前記ガイド穴のうちの一方を前記所定方向に移動させる連動機構であって、前記規制機構が前記規制位置にあるときに前記ガイドピンと前記ガイド穴とを係合させる係合位置と、前記規制機構が前記解除位置にあるときに前記ガイドピンと前記ガイド穴とを係合させない非係合位置とを取り得る前記連動機構とを備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記規制機構は、前記第1及び第2筐体の一方に回動可能に支持された引掛部材と、前記第1及び第2筐体の他方に支持され前記引掛部材によって係止可能な係止部材とを有しており、
前記係止部材が前記引掛部材によって係止される位置が前記規制位置であり、前記係止部材が前記引掛部材によって係止されない位置が前記解除位置であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記連動機構は、前記引掛部材と係合し、前記ガイドピン及び前記ガイド穴のうちの前記一方とともに前記引掛部材の回動に伴って移動する移動部と、前記移動部を前記係合位置に向けて付勢する付勢部とを有しており、
前記付勢部は、前記移動部を介して前記引掛部材を前記規制位置に向けて付勢することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
第1位置と、前記近接位置での前記記録部と前記支持部との離隔距離が前記第1位置におけるよりも大きい第2位置とを取り得るように、前記記録部及び前記支持部の少なくとも一方を前記所定方向に移動させる移動機構をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記移動機構は、前記記録部及び前記支持部のうちの一方を移動させ、
前記記録部及び前記支持部のうちの前記一方には、前記ガイドピン及び前記ガイド穴のうちの他方が形成されることを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
【請求項6】
前記第1位置は、前記記録部によって記録媒体に画像が記録される記録位置であることを特徴とする請求項4又は5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録部と対向可能な対向部と、
前記記録部における前記対向部と対向する記録面を取り囲むように前記記録部の周囲に配設された環状部材を有し、前記対向部と前記環状部材とが当接して前記記録面を封止するキャピング機構とをさらに備えており、
前記第1位置は、前記記録部を封止するキャッピング位置であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記移動機構は、前記第1位置と前記第2位置との間の第3位置を、さらに取り得るように、前記記録部及び前記支持部の少なくとも一方を移動させることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−213879(P2012−213879A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79594(P2011−79594)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】