説明

記録装置

【課題】 各種の性質が異なる被記録材であっても、記録品位を損なわずに被記録材を円滑に搬送する。
【解決手段】 プラテン7と巻き取り装置4との間に配置され、被記録材の表面に接触することで被記録材の搬送方向に対する搬送抵抗力を付与するウエイトローラ15と、ウエイトローラ15によって所定の搬送抵抗力を付与する状態と、所定の搬送抵抗力を小さくした状態または所定の搬送抵抗力の付与を解除した状態との切り換えを行う搬送抵抗切換機構と、を備える。ウエイトローラ15による搬送抵抗力は、巻き取り装置4による搬送力と、被記録材を搬送させる所定の搬送力との差よりも大きく、搬送ローラ5による搬送力と巻き取り装置4による搬送力との和よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状の被記録材を画像形成部から排出して搬送する搬送装置および該搬送装置を備えた記録装置に関する。特にインクを加熱して乾燥させるインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、サインアンドディスプレイの分野のインクジェット記録装置では、被記録材としてコート紙、非コート紙、布、塩化ビニル系素材、ポリエステル系素材などが用いられており、幅広い種類の素材に記録可能とされている。また、屋外看板や屋内グラフィック、車両ラッピングなどの、屋内外の様々な用途に用いられている。この種のインクジェット記録装置では、耐水性、耐候性はもとより画質の高精度、高品位、高速記録が要求されている。それを実現するために、ヒータなどの加熱手段を用いて、被記録材を加熱してインクの定着を促進させることや、被記録材に着弾したインクを乾燥させる構成が多く用いられている。
【0003】
従来技術として、特許文献1には、インクの乾燥を早めるために被記録材を印刷ヒータで加熱し、印刷ヒータによる加熱度合を被記録材に応じて制御手段が制御する方法が記載されている。これによれば、被記録材に応じて適切に熱が与えられ、他に影響をほとんど及ぼさずにインクの乾燥が加速されるので、被記録材の歪み、インクの滲みが小さく、また高速でも高品質な印刷が可能にされている。
【0004】
また、特許文献2には、記録を行うインクを吐出する記録ヘッドと、記録前にロール状の被記録材を予め加熱するためのプリヒータと、記録後の被記録材を乾燥させるアフターヒータと、を備える構成が記載されている。また、特許文献2に記載の構成は、記録された被記録材を巻き取る巻き取り装置を備えている。この構成では、被記録材の表面がプリヒータによって予め加熱されているので、記録ヘッドのノズルから噴射されて着弾したインク滴を、被記録材の表面部分で早期に加熱、乾燥することができる。また、この構成では、アフターヒータによって、インク滴が着弾箇所周囲の被記録材に広く浸透するのを防ぐことができ、絵図や文字を滲みなく鮮明に記録することが可能にされている。
【0005】
しかしながら、ヒータによる加熱の影響によって被記録材にシワが発生する場合があり、そのシワの影響によって円滑に搬送できなくなり、記録品位を損なうという問題があった。この対策として、特許文献3には、被記録材に記録ヘッドによって記録が行われる記録動作領域に対して、被記録材の搬送方向の下流側にテンション機構が設けられた構成が記載されている。この構成では、被記録材を加熱するプリヒータとアフターヒータとの間に配置されたテンション機構によって、被記録材に張力を付与して、被記録材101に生じるシワが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3329882号公報
【特許文献2】WO04/094150号公報
【特許文献3】特許第4059899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような巻き取り装置を有する構成において、被記録材の特性により円滑に搬送できない場合や、張力や加熱によって被記録材自体にシワが発生する場合があった。次に、シワの発生原因について説明する。
【0008】
まず、被記録材へ付与する張力による影響について説明する。被記録材に対して搬送方向に張力をかけた場合、被記録材は、搬送方向に対しては伸び、一方、搬送方向に直交する幅方向に対しては縮む。この縮みにより、縮む方向である幅方向に直交する方向に、つまり、被記録材の搬送方向に対してシワが発生する。
【0009】
また、被記録材は、搬送されるとき、搬送ローラとピンチローラとでニップ(拘束)されている状態であるので、搬送ローラ上では、幅方向に縮まないが、搬送方向の下流側になるほど、幅方向に対する縮み量が大きくなる傾向がある。つまり、搬送方向の下流側になるほど縮み量が大きいので、シワの発生が多くなる。一方、搬送ローラ付近では、縮み量が小さいので、シワの発生が少ない。
【0010】
このように、被記録材に生じる伸び縮みがシワの発生原因である。つまり、伸び縮みし難い、つまり剛性が高い被記録材は、シワが発生し難い傾向がある。
【0011】
次に、加熱による影響について説明する。大多数の被記録材は、加熱することで、被記録材が軟化する、つまり剛性が低くなる。したがって、被記録材を加熱した場合には、伸び縮みが生じ易くなる。さらに、被記録材は、体積膨張するので、搬送方向に対しても、幅方向に対してもそれぞれ伸びる。この作用により、加熱したときにシワが発生し易い状況になる。しかしながら、単に加熱するだけでは、ほとんどシワが発生せずに、加熱状態で張力がかかることによって、伸び縮みが大きく発生し、シワが発生することになる。
【0012】
さらに、上述した2つの原因を更に助長する要因として、様々な不均一性が挙げられる。
【0013】
不均一性としては、例えば、被記録材の厚み、繊維密度、表面状態などの被記録材に関する不均一性、あるいは、張力の大きさ、張力の作用の不均一性などが、挙げられる。これらの不均一性によって、縮み量、伸び量が被記録材の長さ方向の位置によって変わり、シワの発生を助長する。
【0014】
このように、被記録材は、伸び縮みによってシワが発生するので、剛性が高い方が、シワが発生し難い傾向にある。
【0015】
インクジェット記録装置では、様々な被記録材に記録が行われる。例えば、屋外ディスプレイ広告用の被記録材としては、フィラメント(長繊維)層に高分子樹脂フィルムが積層されたターポリン(防水布)や塩化ビニル系フィルムが用いられる。このような被記録材において、ターポリンは、剛性が比較的高いので、シワが発生し難い。しかし、ターポリンは、高温加熱した場合に、粘着性を増してプラテン上に貼り付き易くなり、プラテン上を円滑に搬送できない場合があった。そのため、被記録材であるターポリンが粘着力によってプラテンに貼り付く力以上の張力を、例えば巻き取り装置によって被記録材に与えて被記録材を巻き取る必要があった。
【0016】
一方、塩化ビニル系フィルムのような剛性が比較的低い被記録材は、加熱したときに更に軟化し、シワが発生し易くなる。また、巻き取り装置によって張力を与えて被記録材を巻き取ったとき、上述したように、より一層、被記録材にシワが発生してしまう問題があった。このシワは、被記録材の記録面に発生し、記録ヘッドによって記録を行う際に、記録ムラ、寄れや、滲みなどといった記録品位の低下を招く原因となる。そのため、巻き取り装置によって被記録材を巻き取る構成では、被記録材に応じて加熱制御を行っても、ターポリンと塩化ビニル系フィルムの両方において記録品位を満足させることができなかった。
【0017】
そこで、本発明は、上述の課題の認識に基づいてなされたものであり、各種の性質が異なる被記録材であっても被記録材を円滑に搬送することを可能とし、高精細画像、高品質画像を実現できる記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述した目的を達成するため、本発明に係る記録装置は、被記録材を搬送する搬送手段と、搬送手段によって搬送された被記録材に液体を吐出して記録動作領域で記録を行う記録手段と、記録動作領域において記録手段に対向して設けられ、被記録材を支持するプラテンと、記録手段によって記録が行われて記録動作領域を通過した被記録材を巻き取る巻き取り装置と、を備える記録装置において、プラテンと巻き取り装置との間に配置され、被記録材の表面に接触することで被記録材の搬送方向に対する搬送抵抗力を付与する搬送抵抗手段を備える。また、記録装置は、搬送抵抗手段によって所定の搬送抵抗力を付与する状態と、所定の搬送抵抗力を小さくした状態または所定の搬送抵抗力の付与を解除した状態との切り換えを行う搬送抵抗切換機構を備える。搬送抵抗手段による搬送抵抗力は、巻き取り装置による搬送力と、被記録材を搬送させる所定の搬送力との差よりも大きく、搬送手段による搬送力と巻き取り装置による搬送力との和よりも小さい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、搬送抵抗手段による搬送抵抗力の付与状態を切り換え可能に構成することで、性質が異なる被記録材においても円滑に被記録材を搬送することができる。したがって、被記録材の種類や加熱温度、巻き取り装置に関わらず、記録品位を損なわずに被記録材を円滑に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態のプリンタを側面から示す断面図である。
【図2】図1に示した第1の実施形態のプリンタの要部を側面から示す断面図である。
【図3】図1に示した第1の実施形態のプリンタの要部を側面から示す断面図である。
【図4】第2の実施形態のプリンタを側面から示す断面図である。
【図5】図4に示した第2の実施形態のプリンタの要部を示す断面図である。
【図6】図4に示した第2の実施形態のプリンタの要部を示す断面図である。
【図7】第2の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図8】第2の実施形態のブロック図である。
【図9】第2の実施形態のプリンタを側面から示す断面図である。
【図10】第2の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図11】第3の実施形態のプリンタの要部を側面から示す断面図である。
【図12】第3の実施形態のプリンタの要部を示す斜視図である。
【図13】第4の実施形態のプリンタの要部を示す拡大図である。
【図14】第4の実施形態のプリンタの要部を示す拡大図である。
【図15】第4の実施形態のプリンタの要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。ただし、例示する実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲を限定する主旨のものではない。なお、各図面を通して、同一または対応する構成部分には、同一の符号を付している。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態のインクジェット記録装置の要部を示す断面図である。図1に示すように、本実施形態のインクジェット記録装置1(以下、プリンタ1と呼ぶ)は、被記録材としてロール紙2がセットされる。プリンタ1は、このプリンタ1を操作するための操作部(不図示)を備えており、この操作部に設置された各種のスイッチ等によって、ロール紙2の横幅、オンライン/オフライン、コマンドなどの指示が入力される。プリンタ1の底部の前面側には、被記録材Pを巻き取るための巻き取り装置4が設けられている。被記録材Pは、プリンタ1の内部に搬送され、搬送手段としての搬送ローラ5と、ピンチローラ6とで挟持されると共に搬送ローラ5によって搬送され、プラテン7の支持面上に到達する。また、プラテン7の支持面に対向する位置に、液体としてのインクを吐出する記録手段としての記録ヘッド8が配置されている。
【0023】
プラテン7には、被記録材Pをプラテン7に吸着させて被記録材Pが浮き上がるのを防ぐための複数の吸引孔9が形成されている。また、プラテン7の下方には、プラテン7と連通されたダクト10が配置され、さらにまたダクト10の下方には負圧を発生させるための吸引ファン11が配置されている。吸引ファン11によって発生した負圧はダクト10及び吸引孔9を介して被記録材Pに作用し、被記録材Pはプラテン7に吸着される。
【0024】
記録ヘッド8の記録動作領域において、記録ヘッド8は画像情報に基づいてインクを吐出し、プラテン7に載置された被記録材Pに画像が記録される。1ライン分だけ記録した後、被記録材Pを搬送ローラ5によって搬送し、次のラインを記録ヘッド8で記録する。この被記録材Pの搬送中は、記録ヘッド8による記録が行われない。上述したように、被記録材Pに1ライン分だけ記録し、被記録材Pを搬送するという、間欠搬送の動作を繰り返しながら、記録動作が行われる。一方、巻き取り装置4は、記録動作中は常時駆動され、被記録材Pを巻き取っている。
【0025】
また、プラテン7の支持面に対向する位置には、プラテン7の支持面上に支持された被記録材Pを加熱するための第一の加熱手段としての第一のヒータ12が配置されている。すなわち、第一のヒータ12は、プラテン7に支持された被記録材Pに対向する位置に配置されている。第一のヒータ12によって、プラテン7に支持されている被記録材Pを加熱し、被記録材Pの表面(記録面)に着弾したインク滴を早期に定着させる。また第一のヒータ12は被記録材Pを乾燥させている。画像などが記録された被記録材Pは、搬送ローラ5によってプラテン7から排出される。
【0026】
プラテン7の搬送方向下流側には、被記録材Pの記録が行われて記録動作領域を通過した部分を案内する排紙ガイド14が設けられている。排紙ガイド14に対向する位置には、被記録材Pの表面を加熱するための第二の加熱手段としての第二のヒータ13が配置されている。第二のヒータ13によって、被記録材Pの表面のインク滴を早期に乾燥させることができる。そして、被記録材Pは、ターンローラ16を介して巻き取り装置4によって巻き取られる。
【0027】
また、排紙ガイド14に案内されている被記録材Pは、排紙ガイド14と搬送抵抗手段としてのウエイトローラ15とに挟持される。ウエイトローラ15は、ウエイトローラ15の重さ、つまり自重によって被記録材Pに押圧当接し、被記録材Pとウエイトローラ15との間に生じる摩擦力、及び被記録材Pと排紙ガイド14との間に生ずる摩擦力が被記録材に作用する搬送抵抗力となる。したがって、このウエイトローラ15の重さを調整することによって、搬送抵抗力を調整することができる。
【0028】
このウエイトローラ15は、被記録材Pの記録面と当接しているので、被記録材Pからインクが転写し、さらに、被記録材Pへの再転写することで、記録面を汚してしまうことが懸念される。本実施形態では、この対策として、ウエイトローラ15の、被記録材Pとの当接部である周面が、第二のヒータ13の下方近傍に配置され、第二のヒータ13によって周面が加熱されるように構成されている。ウエイトローラ15が第二のヒータ13の下方近傍に配置されることで、被記録材Pからウエイトローラ15へ転写したインクを第二のヒータ13によって加熱することで定着させ、ウエイトローラ15から被記録材Pへ再転写されるのを防いでいる。これにより、被記録材Pの汚れを抑制することが可能となる。そして、ウエイトローラ15は、金属材料によって形成することで耐熱性が確保されている。なお、本実施形態において、ウエイトローラ15は、円筒形状のローラを一例に説明するが、これに限らず、被記録材Pに搬送抵抗力を付与する形状であれば、四角形状や、板状の平面形状等の他の形状であっても良い。
【0029】
また、プリンタ1は、被記録材Pに対するウエイトローラ15の押圧力を弱め、または、ウエイトローラ15を被記録材Pから離間させる搬送抵抗切換機構を備えている。この搬送抵抗切換機構は、ウエイトローラ15に押圧力を弱める方向の力を作用させ、または、ウエイトローラ15を被記録材Pから離間させることで、ウエイトローラ15が被記録材Pへ付与する押圧力調整する。その結果、ウエイトローラ15による搬送抵抗力を小さくする、あるいは、搬送抵抗力を解除するように作用する。つまり、ウエイトローラ15と被記録材Pは、当接したままであっても良く、ウエイトローラ15による押圧力を弱めるようにするだけでも良い。
【0030】
その搬送抵抗切換機構の構成を説明する。ウエイトローラ15は、軸線方向の両端部が軸受20に回転自在に支持されており、その軸受20が解除レバー21の一端部に取り付けられている。解除レバー21の中央部は、プリンタ1内の支持部(不図示)に回転自在に支持されている。また、解除レバー21の他端部の近傍には、解除カム22が回転可能に設けられている。
【0031】
駆動源(不図示)によって解除カム22を回転させることで、解除カム22のカム面が解除レバー21の他端部と当接し、押圧する。解除カム22のカム面が解除レバー21の他端部を押圧することによって、ウエイトローラ15が被記録材Pに付与する押圧力が小さくなる。さらに解除カム22を回転させると解除レバー21が回動支点21aを中心に回動し、解除レバー21の一端部に支持されたウエイトローラ15が上方に持ち上げられる。これによって、被記録材Pに対するウエイトローラ15の押圧当接状態が解除され、ウエイトローラ15による搬送抵抗力が「0」になる。
【0032】
一方、被記録材Pに搬送抵抗力を付与する場合も、動作としては上述と同様に、駆動源によって解除カム22を回転させることで、ウエイトローラ15の重さによって解除レバー21を回動させ、ウエイトローラ15を被記録材Pに押圧当接させる。そして、解除カム22を回転させて解除レバー21を更に回動させることで、ウエイトローラ15が付与する押圧力を調整し、所定の搬送抵抗力を付与する位置で解除カム22の回転を停止するように制御する。
【0033】
図2は、プリンタ1の要部を側面から示す断面図である。図2中に破線で示している被記録材P2の状態が、被記録材P2に張力を付与しながら搬送ローラ5と巻き取り装置4によって搬送されている状態を示している。この状態の場合、ウエイトローラ15は、上述した動作によって搬送抵抗力の付与状態が解除されており、被記録材Pに搬送抵抗力を付与していない状態にある。
【0034】
この状態では、被記録材P2には、巻き取り装置4による搬送力によって張力T1がかけられており、プラテン7の支持面上に位置する被記録材Pにも張力T2が生じる。そのため、プラテン7の支持面上から被記録材Pを引き剥がす方向に力が働くので、被記録材P2がプラテン7に貼り付くのを抑えることができる。つまり、本実施形態は、例えばターポリンのような加熱されることによってプラテン7の支持面上に貼り付き、搬送ローラ5単体で搬送することが困難になるような粘着性を有する被記録材を用いる場合であっても、円滑に搬送することができる。
【0035】
次に、図3に示すように、ウエイトローラ15によって被記録材Pに搬送抵抗力が付与された状態について説明する。ウエイトローラ15により搬送抵抗力が付与された被記録材P1の状態を図3中に実線で示す。搬送抵抗力の付与動作は、上述したとおりである。ここで、ウエイトローラ15による搬送抵抗力をFr、巻き取り装置4による搬送力(巻き取り力)をFm、搬送ローラ5による搬送力をFlfとする。ガイド、プラテン、ロールの支持部などから被記録材Pに作用する搬送抵抗に抗して被記録材Pを搬送するのに必要な搬送力をFαとする。すなわちFαはウエイトローラ15による搬送抵抗力Frが被記録媒体Pに作用しない状態で被記録媒体Pを搬送するために必要な搬送力である。
【0036】
ウエイトローラ15による搬送抵抗力Frは、巻き取り装置4による搬送力Fmと、被記録材を搬送するための所定の搬送力Fαとの差よりも大きい。すなわち、巻き取り装置4による搬送力Fmだけではウエイトローラ15による搬送抵抗力Frが作用している被記録材Pを搬送することができない。言い換えると、巻取り装置4による搬送力Fmは、ウエイトローラによる搬送抵抗力Frが作用している被記録媒体を搬送するために必要な搬送力よりも小さい。搬送抵抗力Frは、ウエイトローラ15による搬送力Flfと巻き取り装置4による搬送力Fmとの和よりも小さく設定されている。
【0037】
つまり、次式のように表せる。
【0038】
Fm+Flf>Fr>Fm−Fα・・・式1
このような関係を満たすように設定するためには、各搬送力Fr、Fm、Flf、Fαが所定値になるよう設定すれば良い。ここで、所定の搬送力Fαは、プラテン7とウエイトローラ15との間の被記録材Pの部分に与えることができる最大張力を意味しており、被記録材Pに応じて変化する値である。この所定の搬送力Fαが大きすぎた場合、プラテン7とウエイトローラ15との間で被記録材Pにシワが発生することになる。また、この所定の搬送力Fαの値は、本願の発明者らが、実験によって導き出した値が採用されている。
【0039】
次に、各搬送力Fr、Fm、Flfの設定について説明する。
まず、ウエイトローラ15による搬送抵抗力Frについて説明する。ウエイトローラ15は、ウエイトローラ15の自重の作用によって被記録材P1に対して押圧当接することで、被記録材Pの搬送抵抗力Frを発生している。したがって、ウエイトローラ15の重さの大小に比例して、搬送抵抗力Frの大小が変化する。つまり、ウエイトローラ15を例えば、ステンレス、鉄等の比重が比較的大きい材料で形成する、あるいは、体積を大きくするなどによって重量を大きくすることで、押圧力が大きくなるように、搬送抵抗力Frを調整可能である。
【0040】
続いて、巻き取り装置4による搬送力Fmについて説明する。巻き取り装置4には、トルクリミッタ(不図示)が設けられており、トルクリミッタによって制限されたトルク値以上の巻き取り力(搬送力)が発生しないように構成されている。したがって、そのトルクリミッタによる抗力を調整することによって、巻き取り装置4による搬送力Fmを調整することができる。
【0041】
次に、搬送ローラ5による搬送力Flfについて説明する。上述したように搬送ローラ5は、ピンチローラ6との間に被記録材P1を挟んでグリップした状態で搬送ローラ5を回転させて、搬送力Flfを発生している。したがって、その搬送ローラ5とピンチローラ6による挟持力(グリップ力)を調整することによって、搬送力Flfを調整することができる。つまり、搬送ローラ5による搬送力Flfを調整するためには、その挟持力を調整すれば良い。
【0042】
このように、各搬送力Fr、Fm、Flf、Fαは、それぞれ個別に調整ができる構成であるので、式1に示した関係を満たすように調整することが可能である。また、巻き取り装置4において被記録材Pが巻き取られたロールの巻き取り径に応じて、搬送力Fmは変化する。しかし、搬送力Fmの最大値(Fm_max)、最小値(Fm_min)において、式1が成り立つように予め設定しておけば良い。
【0043】
つまり、搬送力Fm_min、Fm_maxの両者を考慮すれば良い。
一例を挙げると、
Fm_max=19.6N、Fm_min=9.8N、Flf=39.2N、Fr=29.4N、Fα=4.9N
になるように設定することで、式1が成立する。
【0044】
次に、被記録材Pの搬送時の間欠動作について説明する。
上述したように、搬送ローラ5は、被記録材Pの間欠送りを行うために、記録動作中には、搬送ローラ5による搬送力Flfが有る状態と無い状態がある。搬送ローラ5による搬送力Flfが無い状態と、搬送力Flfが有る状態とに分けて、図3を参照して説明する。
【0045】
まず、搬送ローラ5による搬送力Flfが無い状態、つまり搬送ローラ5の非動作状態について説明する。
【0046】
巻き取り装置4は、連続動作しているので、常に搬送力Fmが被記録材Pに作用している。この状態は、式1における右辺式のFr>Fm−Fαで表され、ウエイトローラ15による搬送抵抗力Frが、巻き取り装置4による搬送力Fmと所定の搬送力Fαとの差よりも大きくなるように設定されている。このため、ウエイトローラ15の上流側の位置では、被記録材Pに張力がかからない、あるいは、シワにならない程度の小さな張力しか付与されない。その結果、プラテン7とウエイトローラ15との間では、被記録材Pに生じる搬送方向の伸びと幅方向の縮みが小さくなり、被記録材P1の搬送ローラ5とウエイトローラ15との間の部分、特にプラテン7に支持された部分におけるシワの発生を防ぐことができる。
【0047】
ウエイトローラ15の上流側では被記録媒体に生じる搬送方向の張力は弱まるが、ウエイトローラ15と巻き取り装置4との間の被記録材Pの部分には、張力が付与されている。従って搬送ローラ5による搬送力Flfが作用すると被記録材Pは応答性良く搬送され、正常な巻き取りを行うことができる。このように、被記録媒体に巻き取り装置4による搬送力とウエイトローラ15による搬送抵抗力を付与することによってシワの発生の抑制と、応答性の良い搬送の両立が可能となる。
【0048】
次に、搬送ローラ5による搬送力Flfが有る状態、つまり搬送ローラ5の動作状態について説明する。搬送ローラ5による搬送が開始したとき、つまり被記録材Pに搬送力Flfが加わったとき、プラテン7の上において被記録材Pが搬送される。プラテン7とウエイトローラ15との間の被記録材Pの部分は、ウエイトローラ15による搬送抵抗力Frによって、一瞬だけ少し撓むが、ウエイトローラ15の直下の部分にも直ぐに被記録材Pを通じて搬送力Flfが伝達される。したがって、ウエイトローラ15の直下の部分における搬送力は、Fm+Flfとなる。
【0049】
この場合は、式1における左辺式のFm+Flf>Frに設定されているので、搬送抵抗力Frよりも搬送力Fm+Flfが大きい。このため、被記録材P1は搬送方向に沿って搬送される。このとき、搬送ローラ5による搬送力Flfは、被記録材Pにとっては、圧縮力として作用するので、プラテン7とウエイトローラ15との間の被記録材Pの部分に張力がかからない。また、ウエイトローラ15と巻き取り装置4との間の被記録材Pの部分には、張力がかかるので、巻き取り装置4によって正常に巻き取りを行うことができる。
【0050】
このような動作により、例えば塩化ビニル系フィルムのような加熱されて軟化し、軟化した状態で張力が加わった場合にシワが発生し易い被記録材であっても、記録動作中は、プラテン7とウエイトローラ15との間の被記録材P自体に生じる張力が解消される。このため、記録動作領域におけるシワの発生を抑制することができる。したがって、記録ムラ、寄れ、滲みなどの発生が抑えられ、記録品位の改善ができる。
【0051】
このように、搬送抵抗力Frを付与するウエイトローラ15が設けられ、その搬送抵抗力Frの付与状態と解除状態とを切り換え可能に構成することで、性質が異なる被記録材を用いるときにおいても、加熱された被記録材を円滑に搬送することができる。
【0052】
また、ウエイトローラ15による搬送抵抗力Frを解除する場合は、ウエイトローラ15が被記録材Pに当接した状態のままで行われても良い。また、この場合は、被記録材Pを押圧するウエイトローラ15の押圧力を弱めることで、搬送抵抗力Frを小さくし、式1が不成立となる搬送抵抗力Frである状態に調整するだけで良い。
【0053】
上述したように、本実施形態によれば、ウエイトローラ15による搬送抵抗力の付与状態を切り換え可能に構成することで、性質が異なる被記録材においても被記録材を円滑に搬送することができる。
【0054】
例えば、ターポリンのような高温加熱した場合にプラテン7上に貼り付き易い粘着性を有する被記録材は、ウエイトローラ15による搬送抵抗力を解除することで、被記録材に対して張力を付与することで、プラテン7から剥がし易くなる。
【0055】
一方、塩化ビニル系フィルムのような被記録材は、ウエイトローラ15による搬送抵抗力Frを付与することで、記録ヘッド8による記録動作中は、記録動作領域において被記録材Pに張力を生じさせないので、被記録材P自体にシワが発生するのを抑制できる。
【0056】
したがって、記録品位を損なうことなく被記録材Pを搬送することができる。つまり、高温に加熱された被記録材であっても、シワの発生原因となる巻き取り装置による張力の影響を避けることができる。
【0057】
したがって、本実施形態によれば、被記録材の種類や加熱温度、巻き取り装置に関わらず、記録品位を損なわずに被記録材を円滑に搬送することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態について、特にウエイトローラ跡の抑制の構成、制御について説明する。
図4は、記録終了直後の記録された画像領域とウエイトローラ15の位置関係を表した図である。図4で示すように、印字終了直後は、ウエイトローラ15は画像領域Xに接触している。
【0059】
図5は、ウエイトローラ15周辺の断面拡大図を示し、被記録材Pがたるんでいる状態(テンションがかかってない状態)である。
【0060】
図6は、ウエイトローラ15周辺の断面拡大図を示し、被記録材Pにテンションがかかった状態である。
【0061】
ウエイトローラ15は両端に軸部15aを備え、その軸部15aを回転自在に軸支する軸受30が本体に備えられている。また、軸受30は、上下方向の長穴30aになっている。つまり、ウエイトローラ15は、軸受30に対して、上下方向に移動可能である。それから、ウエイトローラ15は、長穴30aの最下部で軸支された場合でも、排紙ガイド14に対して若干の隙間dを有するように構成している。
【0062】
このような構成で、被記録材Pがたるんでいる状態では、被記録材Pは排紙ガイド14に沿っており、ウエイトローラ15と被記録材Pは当接しない(図5)。
【0063】
被記録材Pにテンションがかかったり、あるいは、被記録材Pのシワにより浮いてくるとウエイトローラ15と当接し、ウエイトローラ15を持ち上げる。ウエイトローラ15と被記録材Pが当接すると、ウエイトローラ15による搬送抵抗力が付与されることになる。
【0064】
図4の記録終了直後の状態では被記録材Pにテンションがかかった図6の状態なので、そのまま放置されると被記録材Pの画像領域にウエイトローラ15の跡が付いてしまう。その抑制のためのシーケンス(フローチャート)を図7に、ブロック図を図8に示す。
【0065】
図8において、101はCPU、103は記憶装置(記憶手段)である。102は温度センサー、4Mは巻取り装置4を駆動するための巻取り用モータ、5Mは搬送ローラ5を駆動する搬送用モータである。
【0066】
また、ウエイトローラ跡は、被記録材Pの紙面温度が高いほど、また、当接圧が高いほど跡になりやすい。
【0067】
図7、図8において、印字が終了すると、本体のCPU101は温度センサー102により、被記録材Pの表面温度を測定するよう制御する(ステップS1)。この温度センサー102は、ヒータ12、13a、13bの制御用の温度センサーを使用し、非接触型の温度センサーである。
【0068】
温度センサー102の出力を受けて、CPU101は所定温度T℃以上かを比較する(ステップS2)。T℃以下であれば、巻き取り装置4を停止し、搬送ローラ5を駆動して、被記録媒体Pを送り量L2だけ搬送する(ステップS4)。巻き取り装置4を停止した状態で、搬送ローラ5によって被記録媒体Pを送り量L2だけ搬送すると、被記録材Pは、ウエイトローラ15の上流側からテンションが抜けて、たるみ始める。ウエイトローラ15の下流側は、ウエイトローラ15の搬送抵抗作用で動かないため、最初はたるまないが、被記録材Pがウエイトローラ15から離間するとたるみ始める。この送り量L2は、予め、被記録材Pがウエイトローラ15から離間するまでの量に設定されている。つまり、被記録材Pは、ウエイトローラ15の下流側は動かさないで、上流側だけを動かし、たるませる送り量L2に設定されている。この時の送り量L2を記憶手段(送り量記憶手段)103に記憶させる。
【0069】
このようにして、巻き取り装置を停止し、搬送ローラ5を駆動して、送り量L2だけ送ることで、テンションを抜き、ウエイトローラ15と被記録材Pの当接を解除することができる。
【0070】
次に温度センサーの出力がT℃以上の場合の動作について説明する。
温度センサーの出力がT℃以上であれば、ウエイトローラ15の跡がかなり付き易い状態である。画像領域の保護のため、まず、ウエイトローラ15の直下の被記録材Pが印字領域外になるまで、被記録材Pを送り、その後、上述したウエイトローラ15と被記録材Pの当接解除動作(ステップS4)を行う。その動作について、説明する。
【0071】
CPUは、まず、巻き取り駆動用ドライバーにより巻き取り装置4を駆動し、同時に、搬送ローラ駆動用ドライバーにより搬送ローラ5を駆動し、送り量L1だけ被記録材Pを搬送する(ステップS3)。L1だけ搬送すると図9に示すように被記録媒体Pのウエイトローラ15と接触している部分は画像領域Xではなく余白部になる。この送り量L1は、印字ヘッドからウエイトローラ15の距離で決まり、予め、この長さに設定してある。
【0072】
被記録材PをL1搬送した直後は、図4、図6に示した印字直後のように、印字媒体Pはウエイトローラ15に接触している。この状態から、ステップS4に移行し、搬送ローラ5による距離L2の搬送を行う。被記録媒体Pのテンションは消え、ウエイトローラ15は被記録材Pから離間する。そして、この時の送り量L1+L2を、記憶手段103に記憶させる。
【0073】
このように、先に、ウエイトローラ15が画像領域に接触しなくなるまで被記録媒体Pを搬送し、その後、被記録媒体Pをウエイトローラ15から離間させるため、確実に画像は保護されることになる。
【0074】
上述した温度Tは、被記録材によって異なるが、本発明者らの実験によると50〜70℃に設定すれば良い。
【0075】
また、上記した一連のシーケンスは、複数のページを連続して記録する場合は、ページ間においては、待機時間が短いため省略する。最後のページの画像の記録が終了した後で、ステップS1以降のシーケンスをスタートさせる。これにより、ページ間時間の増加を抑制できる。また、連続印字のページ間であっても、吸引回復などの処理が入る場合は行う。この場合、吸引回復処理と並行して行えば、ページ間時間の増加を抑制できる。
【0076】
次に印字開始動作について説明する。
図10は、印字開始のシーケンスを表すフローチャートである。
CPUは、まず、送り量記憶手段に記憶された送り量を呼び出し(ステップS5)、呼び出した送り量だけ搬送ローラ5を逆転させ、被記録材Pを戻す。そうすると、被記録材Pは印字終了位置まで、戻ることになる(ステップS6)。この状態から、印字を開始すれば、被記録材Pを無駄なく使用できるようになる。
【0077】
この戻しシーケンスにおける、画像領域がウエイトローラ15と当接する場合は、T℃以上の印字終了シーケンスをした場合のみであるため、印字領域とウエイトローラ15の当接は極力少なくできることになる。
【0078】
これにより、画像領域とウエイトローラ15の当接が何回も行われることによるダメージを抑えることができる。
【0079】
また、この印字開始のシーケンスは、印字開始前にプレヒート処理(被記録材を温めるなどのヒータによる暖気処理)を行う場合、プレヒート中の被記録材Pとウエイトローラ15の当接をさけるため、プレヒート処理が終了した後、行うようにする。
【0080】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態の要部を示す断面図である。なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部には、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
ウエイトローラ15の付勢手段としての付勢バネ40が、ウエイトローラ15の近傍に配置されており、付勢バネ40の付勢力によってウエイトローラ15が重力方向の下方に付勢される。付勢バネ40の付勢力と、ウエイトローラ15の重さとによって、搬送抵抗力Frを発生させる。これにより、ウエイトローラ15の重さと付勢バネ40の付勢力とを設定することで、搬送抵抗力Frを自在に設定可能となる。付勢手段の具体例としては、バネなどの弾性体が一般的である。また、搬送抵抗力の付与状態と解除状態との切り換え動作については、第1の実施形態と同様に行われる。
【0082】
また、図12に示すように、ウエイトローラ15は、被記録材Pに対して、被記録材Pの搬送方向に直交する幅方向の全体にわたって接するように配置されている。このように構成することで、被記録材Pの幅方向に対して均一に搬送抵抗力をかけることができ、シワの発生を更に効果的に抑制することができる。
【0083】
(第4の実施形態)
図13〜図15に、第4の実施形態における、ウエイトローラ15及び搬送抵抗切換機構を示す。図13に要部の斜視図を示し、図14及び図15に断面図を示す。
【0084】
第4の実施形態は、ウエイトローラ15が被記録材の搬送経路から着脱可能に構成されており、ウエイトローラ15を着脱することで、搬送抵抗力の付与状態と解除状態との切り換えが行われる。ウエイトローラ15を着脱可能にする構成について説明する。
【0085】
図13に示すように、一組の軸受20が、ウエイトローラ15の両端部に配置されている。軸受20は、ウエイトローラ15を回転自在に支持する受部20aと、受部20aの上部に形成されたスリット20bとを有している。ウエイトローラ15は、両端がスリット20bから受部20aに挿入され、受部20aによって回転自在に軸支されている。
【0086】
また、図13及び図14に示すように、ウエイトローラ15の両端部には、一組の引張り軸25が設けられている。引張り軸25は、小径部である小軸部25aと大軸部25bからなる2段付きの軸である。通常、引張り軸25は、圧縮バネ26の付勢力によって、図14に示すように、ウエイトローラ15の軸方向の内側に片寄せされている。また、引張り軸25の小軸部25aの直径は、上述した軸受20のスリット20bの幅よりも小さく形成されており、小軸部25aがスリット20bを通ることが可能にされている。
【0087】
このように構成されたウエイトローラ15を軸受20から取り外す場合には、引張り軸25を、圧縮バネ26の付勢力に抗して図14に示す矢印Q方向である軸方向に引っ張り、小軸部25aをウエイトローラ15の内部から露出させる。ウエイトローラ15から小軸部25aが露出された状態で、スリット20bに沿って小軸部25aを通すことで、受部20aから大軸部25bが外される。そして、上述した引張り軸25の移動操作をウエイトローラ15の両端部においてそれぞれ行うことで、ウエイトローラ15を軸受20から取り外すことができる。
【0088】
また、ウエイトローラ15を軸受20に装着する場合にも、上述と同様に、引張り軸25を軸方向に引っ張り、小軸部25aをスリット20bに沿って通すことで、大軸部25bが受部20aに支持される。引張り軸25の引張り操作をやめることで、圧縮バネ26の付勢力によって引張り軸25がウエイトローラ15の軸方向の内側に戻され、大軸部25bが受部20aに嵌合する。これによって、ウエイトローラ15は軸受20に回転自在に軸支される。また、このとき、ウエイトローラ15は、被記録材Pと接する位置にあり、被記録材Pに搬送抵抗力を付与する。このようにウエイトローラ15は記録装置に着脱可能に装着される。
【0089】
本実施形態は、使用する被記録材の種類に応じて、ウエイトローラ15の着脱操作をユーザが簡単に行えるように構成されており、この着脱操作により、被記録材に対する搬送抵抗力の付与状態と解除状態との切り換えを任意に行うことができる。
【0090】
例えば、被記録材として塩化ビニル系フィルムを用いる場合は、ウエイトローラ15を取り外し、被記録材としてターポリンを用いる場合は、ウエイトローラ15を取り付ければ良い。このように、必要に応じて、ユーザがウエイトローラ15を着脱することで、搬送抵抗力の付与状態と解除状態とを切り換えても良い。
【符号の説明】
【0091】
1 インクジェット記録装置
2 ロール紙
4 巻き取り装置
5 搬送ローラ
6 ピンチローラ
7 プラテン
8 記録ヘッド
15 ウエイトローラ
21 解除レバー
22 解除カム
30 軸受
P 被記録材
P1 被記録材
P2 被記録材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送された被記録材に液体を吐出して記録動作領域で記録を行う記録手段と、前記記録動作領域において前記記録手段に対向して設けられ、前記被記録材を支持するプラテンと、前記記録手段によって記録が行われて前記記録動作領域を通過した前記被記録材を巻き取る巻き取り装置と、を備える記録装置であって、
前記プラテンと前記巻き取り装置との間に配置され、前記被記録材の表面に接触し、前記被記録材の搬送方向に対する搬送抵抗力を付与する搬送抵抗手段を備え、
前記搬送抵抗手段による搬送抵抗力は、前記巻き取り装置による搬送力よりも大きいことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記搬送抵抗手段による搬送抵抗力は、前記巻き取り装置による搬送力と前記搬送手段による搬送力の和よりも小さい請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記巻き取り装置による搬送力は、前記搬送抵抗手段による搬送抵抗力が作用している前記被記録材を搬送するために必要な搬送力よりも小さい請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記搬送抵抗手段による搬送抵抗力は、前記搬送抵抗手段の重さを変えることによって調整可能である請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
前記搬送抵抗手段を前記被記録材に付勢する付勢手段を備え、前記搬送抵抗手段による搬送抵抗力は、前記付勢手段による付勢力を変えることによって調整可能である請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
前記付勢手段は、弾性体であり、付勢力が重力方向の下方に作用するように設けられている、請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記搬送抵抗手段は、前記搬送方向に直交する前記被記録材の幅方向の全体にわたって搬送抵抗力を付与する、請求項1に記載の記録装置。
【請求項8】
前記プラテンに支持された前記被記録材に対向する位置に配置され、前記被記録材を加熱する第一の加熱手段と、前記記録動作領域よりも前記被記録材の搬送方向の下流側に配置され、前記被記録材を加熱する第二の加熱手段と、を有する、請求項1に記載の記録装置。
【請求項9】
前記搬送抵抗手段は前記第二の加熱手段よりも被記録媒体の搬送方向の下流の位置において被記録材と接触する請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
前記搬送抵抗手段が被記録材と接触する部分は金属材料によって構成されている請求項9に記載の記録装置。
【請求項11】
前記搬送抵抗手段は、前記記録装置に着脱可能に装着されている請求項1に記載の記録装置。
【請求項12】
前記搬送抵抗手段は小径部を備えた軸部を有し、前記記録装置は前記軸部を支持し、スリットを備えた軸受を有し、前記小径部が前記スリットを通過することによって前記搬送抵抗手段は前記軸受に対して着脱可能である請求項9に記載の記録装置。
【請求項13】
前記搬送抵抗手段は円筒形状のローラである請求項1に記載の記録装置。
【請求項14】
被記録材を搬送する搬送手段と、搬送された被記録材に記録を行う記録手段と、前記記録手段に対向して設けられ被記録材を支持するプラテンと、プラテンから排出された部分を巻き取る巻き取り装置と、前記被記録材を乾燥させる加熱手段を備え、前記プラテンと前記巻き取り装置の間に前記被記録材の搬送方向に対し前記被記録材の表面に当接して搬送抵抗を付与する搬送抵抗手段を設けた記録装置であって、
前記被記録材の温度を測定する手段と送り量を記憶する記憶手段とを有し、記録が終了した後は、前記被記録材の温度を測定し、被記録材を測定された温度に応じた送り量を送り、前記送り量を前記記憶手段により記憶し、次の記録を開始するときに、前記記憶手段で記憶した送り量だけ前記被記録材を戻すよう制御することを特徴とする記録装置。
【請求項15】
測定された温度が所定温度より低い場合、巻き取り装置を停止させた状態で前記搬送手段を駆動し、前記搬送抵抗手段の上流の被記録材のテンションを緩めることを特徴とする請求項14に記載の記録装置。
【請求項16】
測定された温度が所定温度より高い場合、記録された画像領域が前記搬送抵抗手段を通過する位置まで被記録材を搬送した後、前記送り量を前記記憶手段により記憶し、次の記録を開始するときに、前記記憶手段で記憶した送り量だけ、前記被記録材を戻すよう制御する請求項14に記載の記録装置。
【請求項17】
次の記録を開始するときに行うプレヒートが終了した後に、前記被記録材を前記送り量だけ戻すよう制御することを特徴とする請求項14に記載の記録装置。
【請求項18】
複数のページの画像を連続して記録する場合は、最後のページの記録が終了した後で被記録材を測定された温度に応じた送り量を送る請求項14に記載の記録装置。
【請求項19】
記録が終了した後に、吸引回復処理が行われる場合、吸引回復処理と並行して被記録材を測定された温度に応じた送り量を送ることを特徴とする請求項14に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−71589(P2012−71589A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181543(P2011−181543)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】