説明

記録装置

【課題】複雑な機構を用いることなく、記録ヘッドと媒体支持台との間の隙間を調節することができる記録装置を提供する。
【解決手段】用紙の被記録面に対して記録を行う記録ヘッド25を支持するヘッド支持部24と、用紙を記録ヘッドと対向した状態に支持する媒体支持台と、ヘッド支持部を記録ヘッドと媒体支持台との距離が変動する上下方向において移動可能に保持するとともに、媒体支持台に支持された用紙の被記録面に沿う左右方向に移動するキャリッジ23と、ヘッド支持部とキャリッジとの間に介在して上下方向の隙間を形成しつつ、ヘッド支持部およびキャリッジの少なくとも一方に対して上下方向に沿う軸線を回動中心とする回動可能に取り付けられる隙間形成部材26と、を備え、隙間形成部材は、ヘッド支持部とキャリッジとに挟まれた状態になることで隙間を規定する上下方向での板厚が回動方向において変化するように形成された厚み変化部位を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被記録媒体に液体を付着させて記録を行う記録装置の一種として、記録ヘッドから用紙(被記録媒体)にインク(液体)を噴射して印刷(記録)を行うインクジェット式のプリンターが知られている。このプリンターでは、記録ヘッドと対向する位置に設けられた媒体支持台によって支持された用紙の被記録面との間に僅かな隙間を保持した状態で記録ヘッドが用紙の幅方向(走査方向)に往復移動させられる。そして、この往復移動時に記録ヘッドのノズルからインクを用紙に向けて噴射することで印刷が行われる。
【0003】
このようなプリンターにおいて、例えば、媒体支持台に支持された用紙の厚さが異なる場合、記録ヘッドと用紙との間の隙間が変化(減少)し、記録ヘッドが用紙の被記録面に接触して擦れが生じるために印刷が正しく行われないことがある。そこで、この擦れを抑制するために、用紙を支持する媒体支持台と記録ヘッドとの間の距離を調節することで、記録ヘッドと用紙の被記録面との間の隙間を適切な隙間に調節する機構が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には記録ヘッドと媒体支持台との距離が調節可能な記録装置が開示されている。すなわち、この特許文献1の記録装置では、記録ヘッドが備えられたキャリッジを主副両ガイド部によって往復移動可能に支持するとともに、主副両ガイド部を同時に上下に移動させてキャリッジの高さを調節することで、キャリッジに備えられた記録ヘッドと媒体支持台との間の距離を調節する機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−279835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された機構は、主ガイド部側および副ガイド部側それぞれを、リンクバーとカムを介して上下動させることによってキャリッジを上下に移動させ、記録ヘッドと媒体支持台との間の距離の切り替えを実現する構成である。従って、リンクバーやカムなどの複雑な機構を構成する部品を介して記録ヘッドを上下動させるために、記録装置において、部品点数の増加によるコストアップやサイズの増大などの課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主な目的は、複雑な機構を用いることなく、記録ヘッドと媒体支持台との間の隙間を調節することができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、被記録媒体の被記録面に対して記録を行う記録ヘッドを支持するヘッド支持部と、前記被記録媒体を前記記録ヘッドと対向した状態に支持する媒体支持台と、前記ヘッド支持部を前記記録ヘッドと前記媒体支持台との距離が変動する第1方向において移動可能に保持するとともに、前記媒体支持台に支持された前記被記録媒体の被記録面に沿う第2方向に移動するキャリッジと、前記ヘッド支持部と前記キャリッジとの間に介在して前記第1方向の隙間を形成しつつ前記ヘッド支持部および前記キャリッジの少なくとも一方に対して前記第1方向に沿う軸線を回動中心とする回動可能に取り付けられる隙間形成部材と、を備え、前記隙間形成部材は、前記ヘッド支持部と前記キャリッジとに挟まれた状態になることで前記隙間を規定する前記第1方向での厚みが回動方向において変化するように形成された厚み変化部位を有する。
【0009】
この構成によれば、隙間形成部材を第1方向に沿う軸線を中心として回動させることで、ヘッド支持部がキャリッジに対して第1方向で相対移動するため、第1方向において対向する記録ヘッドと媒体支持台との間の隙間を調節することができる。従って、被記録面に沿う第2方向に移動するキャリッジを、記録ヘッドと媒体支持台とが対向する第1方向に移動させることなく、記録ヘッドと媒体支持台との間の隙間を調節することができる。この結果、例えばキャリッジの第2方向への移動を案内する案内部材などを上下させるといった複雑な機構を用いることなく、記録ヘッドと媒体支持台との間の隙間、すなわち記録ヘッドと媒体支持台に支持される被記録媒体の被記録面との間の隙間を調節することができる。
【0010】
本発明の記録装置において、前記隙間形成部材に前記厚み変化部位が複数あって、各々の前記厚み変化部位における前記第1方向での厚み変化が同一である。
厚み形成部材が1箇所だけの場合は、第1方向にヘッド支持部を動かした際にヘッド支持部が傾くことがあるが、この構成によれば、厚み変化部位を複数設け、それらが同じ厚みで変化するので、複数箇所にてヘッド支持部を同じように動かすことができる。従って、移動に際してヘッド支持部の傾きを押さえられる。
【0011】
本発明の記録装置において、前記ヘッド支持部を前記第1方向と平行に移動させる。
この構成によれば、ヘッド支持部を第1方向と平行に移動させるため、記録ヘッドによる記録精度への影響が抑制される。
【0012】
本発明の記録装置において、前記厚み変化部位が3つあることを特徴とする。
この構成によれば、厚み変化部位が3つあるのでヘッド支持部を最も少ない3点で傾くことなく安定して支持しつつ移動させることができる。
【0013】
本発明の記録装置において、前記隙間形成部材を回動させる際に力が付与される回動力被付与部位を備えた。
この構成によれば、回動力被付与部位に回転力を与えることで容易に隙間形成部材を回転させることができる。
【0014】
本発明の記録装置において、前記隙間形成部材における前記厚み変化部位は、前記第1方向と交差する方向において前記記録ヘッドを挟む両側に設けられている。
この構成によれば、記録ヘッドの両側でヘッド支持部とキャリッジとの間に厚み変化部位が介在するので、隙間形成部材の回動によって、記録ヘッドは傾きが抑制された状態で、媒体支持台に対して第1方向での対向姿勢を変化させることなく移動する。
【0015】
本発明の記録装置において、前記隙間形成部材は、前記第1方向と交差する方向において前記記録ヘッドを挟む両側の少なくとも一方側に、前記回動力被付与部位と、当該回動力被付与部位を挟んだ前記回動方向の両側に前記厚み変化部位と、が設けられる。
【0016】
この構成によれば、隙間形成部材に対して回動力が付与される位置に対して回動方向の両側でヘッド支持部とキャリッジとの間に厚み変化部位が介在するので、隙間形成部材は、回動力被付与部位に付与される力によって捩じられることなく回動方向に円滑に回動する。
【0017】
本発明の記録装置において、前記第1方向と交差する方向において前記記録ヘッドを挟む両側に、前記キャリッジの前記移動を案内する第1案内部と第2案内部とがそれぞれ備えられ、前記キャリッジには、前記移動する際に力が付与される移動力被付与部位が前記記録ヘッドの前記第1案内部側に設けられ、前記隙間形成部材には、前記回動力被付与部位が、前記記録ヘッドの前記第1案内部側に設けられている。
【0018】
この構成によれば、記録ヘッドに対して、移動力が付与される側と隙間形成部材に対して回転力が付与される側とは同じ側になるので、キャリッジを回転させる力の発生が抑制される。従って、キャリッジは傾きが抑制された状態で第2方向へ移動する。
【0019】
本発明の記録装置において、前記記録ヘッドによる記録領域外で、前記回動力被付与部位に当接可能な回動力付与部材が設けられている。
この構成によれば、記録ヘッドと媒体支持台との間の隙間を記録領域外で調節したのち、直ちに記録ヘッドを記録領域に移動させて記録を行うことができる。
【0020】
本発明の記録装置において、前記隙間形成部材は、前記厚み変化部位が前記キャリッジと対向する片側の板面に設けられる。
この構成によれば、隙間形成部材の板厚方向から見たキャリッジの形状はヘッド支持部に比べて通常大きくなっているので、隙間形成部材において厚み変化部位を形成する位置に対する自由度が大きくなる。従って、記録ヘッドを挟む両側に厚み変化部位を形成できる確率が高くなる。
【0021】
本発明の記録装置において、前記隙間形成部材は、前記厚み変化部位が前記ヘッド支持部と対向する片側の板面に設けられる。
この構成によれば、キャリッジが隙間形成部材よりも重力方向側に位置し、記録ヘッドが最も重力方向側に位置する場合、キャリッジと隙間形成部材との間は隙間形成部材の板厚方向において隙間が形成されないので、キャリッジから埃などの異物が記録ヘッド側に進入することが抑制される。
【0022】
本発明の記録装置において、前記隙間形成部材は、前記厚み変化部位が前記キャリッジおよび前記ヘッド支持部と対向する両側の板面に設けられる。
この構成によれば、少ない回転角で所望する板厚変化を得ることができるので、隙間形成部材の少ない回転範囲によって記録ヘッドと媒体支持台との間の隙間を調節することができる。
【0023】
本発明の記録装置において、前記回動力被付与部位が前記キャリッジに設けられている。
この構成によれば、回動力被付与部位を隙間形成部材に設けられない場合であっても、キャリッジに設けられた回動力被付与部位の回動を伝達して隙間形成部材を回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる一実施形態としての記録装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】実施形態の記録装置におけるキャリッジとヘッド支持部、および隙間形成部材に関連する構成を説明するための側面図。
【図3】実施形態の記録装置におけるキャリッジと隙間形成部材とを示す平面図。
【図4】(a)は隙間形成部材の斜視図、(b)は(a)における4b−4b線矢視断面図。
【図5】隙間形成部材の回転状態を媒体支持台側から見た平面図。
【図6】隙間形成部材の回転状態に応じた記録ヘッドと媒体支持台との間の隙間を示す図で、(a)は基準隙間の状態、(b)(c)は基準隙間よりそれぞれ大きな隙間に調節された状態を示す状態図。
【図7】(a)〜(c)は、隙間形成部材に形成された厚み変化部位の変形例を示す模式図。
【図8】キャリッジとヘッド支持部の構成の変形例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、単に「プリンター」ともいう)に具体化した一実施形態について図を参照して説明する。なお、以降の説明で参照する各図において示す方向は、例えば図1に示したように、上方向が鉛直方向における反重力方向である。また、前方向は、鉛直方向と交差する方向であって、被記録媒体の一例としての用紙Pが画像の形成時において搬送される搬送方向である。さらに右方向は、鉛直方向および搬送方向の双方と交差する方向であって、キャリッジ23が用紙Pと対向する位置からメンテナンス装置29におけるキャップ28に対向する位置へ移動する方向である。
【0026】
図1に示すように、プリンター11における略矩形箱状をなすフレーム12内の下部には、その長手方向である左右方向に沿って媒体支持台13が延設されるとともに、フレーム12の後方面の下部には紙送りモーター14が設けられている。そして、この紙送りモーター14の駆動を通じて図示しない紙送り機構により、用紙Pがその後方側から給送されて媒体支持台13上を通過するように搬送される。
【0027】
この搬送される用紙Pに対して、搬送方向と交差する幅方向に移動可能なキャリッジ23が備えられている。すなわち、フレーム12内における媒体支持台13の上方には、該媒体支持台13の長手方向である左右方向に沿って軸線を有する第1案内部としてのガイド軸15、および左右方向に沿って平坦面が所定幅で細長く延在する第2案内部としてのガイド板16が架設されている。そして、キャリッジ23の後方においてキャリッジ23を左右方向に貫通するように形成された支持孔に円柱あるいは円筒状のガイド軸15が挿通されている。また、キャリッジ23の前方下部において前面から突出するように突出部23aが形成されるとともに、この突出部23aを下方から支持するようにガイド板16が配設されている。従って、キャリッジ23は、このガイド軸15とガイド板16に支持されながら案内され、用紙Pの被記録面SPに沿う第2方向としての左右方向に往復移動可能とされている。
【0028】
フレーム12の後壁内面において上記ガイド軸15の両端の近傍にあたる位置には、駆動プーリー17aと従動プーリー17bとがそれぞれ回転自在に支持されている。駆動プーリー17aにはキャリッジモーター18の出力軸が連結されるとともに、駆動プーリー17aと従動プーリー17bとの間には一部がキャリッジ23に連結された無端状のタイミングベルト17が巻き掛けられている。タイミングベルト17はキャリッジ23の後方側面において表面から後方に突出形成された突出部23b(図2参照)に一部が固定されている。従って、キャリッジモーター18を駆動することにより、タイミングベルト17を介してキャリッジ23がガイド軸15およびガイド板16に案内されながら左右方向に往復移動する構造とされている。この結果、突出部23bは、キャリッジ23が移動する際に力が付与される移動力被付与部位として機能する。
【0029】
キャリッジ23には、用紙Pの被記録面SPに対してインクを噴射して記録を行う記録ヘッド25を下面側に支持したヘッド支持部24が、記録ヘッド25と媒体支持台13とが対向する第1方向としての上下方向において移動可能に組み込まれている。また、キャリッジ23には、隙間形成部材26(図4(a)参照)が上下方向においてキャリッジ23とヘッド支持部24との間に介在するように組み込まれている。そして、プリンター11には、フレーム12の後壁面から前方に飛び出すことによって隙間形成部材26と係合して、隙間形成部材26を軸線が上下方向に沿う回転軸を中心に回動させるための回動力付与部材としての係止部27が、記録ヘッド25による記録領域外に備えられている。なお、本実施形態では係止部27は用紙Pが搬送される領域(記録領域)よりも左側の位置に備えられている。
【0030】
また、フレーム12の後方外側には、プリンター11の動作を司る信号を生成する回路基板と、記録ヘッド25へ供給するインクを収容したインクカートリッジと、を収納した収納部20を備えている。この収納部20とキャリッジ23もしくはヘッド支持部24との間を連結するようにフレキシブル基板21とインク供給チューブ22とが配設され、記録ヘッド25からのインクの噴射動作に際して必要な電気信号およびインクを、収納部20から記録ヘッド25に対して供給する。
【0031】
また、フレーム12の内部における媒体支持台13よりも右側の領域、すなわち印刷時において使用されない領域(ホームポジション領域)には、記録ヘッド25のクリーニング等のメンテナンスを行うためのキャップ28を備えたメンテナンス装置29が設けられている。プリンター11では、記録ヘッド25をホームポジション領域に移動させることによってキャップ28と対峙させ、ノズルからキャップ28内にインクを強制的に噴射させるフラッシング処理を行う。あるいは、ノズルを囲うようにキャップ28を当接させるとともにメンテナンス装置29を作動させることによって、ノズルを介して記録ヘッド25内のインクを吸引してクリーニングするクリーニング処理も行われる。
【0032】
さて、本実施形態のプリンター11では、キャリッジ23を上下移動させることなく、記録ヘッド25が支持されたヘッド支持部24を、記録ヘッド25と媒体支持台13との距離が変動する方向すなわち上下方向に移動して、記録ヘッド25と媒体支持台13との間の距離を調節させる構成を有している。この構成について、図2および図3を参照して詳しく説明する。なお、図3では、説明の都合上ヘッド支持部24をキャリッジ23から取り外した状態で図示している。また、本実施形態では、ヘッド支持部24は、その自重によって常に下方に力が作用された状態でキャリッジ23に組み込まれている。
【0033】
図2および図3に示すように、キャリッジ23は略箱形状を有し、そのキャリッジ23におけるガイド軸15よりも上方であって突出部23bよりも下方となる位置には、平板形状の隙間形成部材26が、その板面を前後左右方向に延在させる略水平となる状態で組み込まれている。そして、キャリッジ23における隙間形成部材26の上方側となる位置には、その少なくとも一部が隙間形成部材26と当接するヘッド支持部24が配設されている。
【0034】
隙間形成部材26の後端部には、キャリッジ23に組み込まれた状態において、キャリッジ23の後面よりも後方側に先端が突出する凸部26pが形成されている。この凸部26pは、回転軸27aを中心に回転(揺動)してフレーム12の後壁面から前方に飛び出した状態(図2において二点鎖線で示した状態)にある係止部27に対して、キャリッジ23が左右方向(例えば左から右方向)に移動する際に係合することで、隙間形成部材26を回動させるように配置されている。この点で、凸部26pは隙間形成部材26を回動させる際に力を付与する回動力被付与部位として機能する。たとえば、ユーザーが用紙Pの厚みが異なるものを指定した場合やメンテナンス時などに係止部27が飛び出して凸部26pと係合して回動力を伝達する。
【0035】
また、隙間形成部材26は、図3に示すように上から見て内側が貫通孔26Hとなった輪形状を有し、貫通孔26Hを挟んだ対角位置に、それぞれ所定幅を有して湾曲する湾曲部位26Mと湾曲部位26Uとが形成されている。凸部26pは湾曲部位26Uに形成されている。また、湾曲部位26Mと湾曲部位26Uとをそれぞれの両端において連結するように中間部分が屈曲した屈曲部位26e,26fが貫通孔26Hを挟んだ対角位置に形成されている。本実施形態では、隙間形成部材26は、キャリッジ23に組み込まれた状態で、貫通孔26Hの前方に湾曲部位26Mが、貫通孔26Hの後方に湾曲部位26Uが配設される。また、屈曲部位26eは、その両端がそれぞれ湾曲部位26Mの右端部と湾曲部位26Uの右端部とに繋がり、屈曲部位26fは、その両端が湾曲部位26Mの左端部と湾曲部位26Uの左端部とに繋がる。
【0036】
キャリッジ23には、湾曲部位26M,26Uにおいて貫通孔26H側の側壁である内側壁26sと水平方向において隣接し、その内側壁26sに沿う湾曲形状を有するガイドリブ23pが、貫通孔26H内に2箇所設けられている。従って、隙間形成部材26は、湾曲部位26M,26Uの内側壁26sがガイドリブ23pに摺接しながら回動する。すなわち、隙間形成部材26は、媒体支持台13と記録ヘッド25とが対向する方向(ここでは上下方向)に沿う軸線を中心として回動可能にキャリッジ23に取り付けられている。
【0037】
本実施形態では、ガイドリブ23pは、隙間形成部材26が記録ヘッド25と媒体支持台13との間の隙間を調節可能な所定の角度範囲で回動可能とする長さで湾曲形状が設けられている。また、隙間形成部材26は、この所定の角度範囲内の回動において、上から見てキャリッジ23の外形から飛び出さない形状とされている。換言すれば、隙間形成部材26は、上から見て、その外形がキャリッジ23から飛び出さない範囲で回転(回動)可能とされている。
【0038】
ヘッド支持部24は、上から見た形状がキャリッジ23よりも小さい矩形形状を有し、キャリッジ23内に挿入された本体部24aと、本体部24aから略その中央位置において下方に延設された略直方体形状の延設部24cと、を有している。本体部24aは、その下面の少なくとも一部が隙間形成部材26の上面と当接する。一方、延設部24cは、隙間形成部材26の貫通孔26H内に位置するとともに、キャリッジ23の下面から下方に飛び出すように設けられ、記録ヘッド25は、この飛び出した延設部24cの下端に取り付けられている。この結果、記録ヘッド25は、媒体支持台13と所定の距離を有して対向配置された状態で、キャリッジ23の移動とともに左右方向に移動する。
【0039】
また、ヘッド支持部24は、キャリッジ23に設けられたガイドリブ23pがそれぞれ挿入されるとともに、ガイドリブ23pの側壁面に沿って上下移動可能な溝部24hが設けられている。そして、ヘッド支持部24(溝部24h)が、ガイドリブ23pに沿って上下移動することによって、記録ヘッド25は媒体支持台13に対して離れたり近づいたりする(図2、白抜き矢印参照)。
【0040】
本実施形態では、キャリッジ23を支持するガイド軸15およびガイド板16は、プリンター11において、記録ヘッド25を前後方向で挟む位置にそれぞれ架設されている。すなわち、ガイド軸15は記録ヘッド25に対して突出部23b(図2参照)と同じキャリッジ23の後方側に位置し、ガイド板16は、記録ヘッド25に対して突出部23b(図2参照)と反対側のキャリッジ23の前方側に位置する。
【0041】
そして、キャリッジ23には、ガイド軸15が位置する後方側において、湾曲部位26Uと上下方向で重なる位置に、周囲よりも上方へ突出する凸条部23A,23Bが形成されている。同じく、キャリッジ23には、ガイド板16が位置する前方側において、湾曲部位26Mと上下方向で重なる位置に、周囲よりも上方へ突出する凸条部23Cが形成されている。そして、本実施形態では、キャリッジ23に設けられた3つの凸条部23A,23B,23Cは、キャリッジ23とヘッド支持部24との間に介在する隙間形成部材26に対して、湾曲部位26M,26Uの下面側と当接する位置および形状で形成されている。ちなみに、本実施形態では、凸条部23A,23B,23Cは、所定の突出高さを有し、上から見て矩形形状で形成されている。
【0042】
さて、隙間形成部材26は、湾曲部位26M,26Uにおいて、キャリッジ23に設けられた凸条部23A,23B,23Cのそれぞれと上下方向において当接する位置に、回動に伴ってヘッド支持部24との間に介在する厚み(板厚)が変化する厚み変化部位BPが設けられている。この厚み変化部位BPについて、図4(a),(b)を参照して説明する。
【0043】
図4(a)に示すように、隙間形成部材26の湾曲部位26M,26Uは、その各内側壁26sが、貫通孔26Hの形状の中心Gから半径R1の円弧形状で形成され、その外側壁26tが、貫通孔26Hの中心Gから半径R2の円弧形状で形成されている。従って、湾曲部位26M,26Uは、径方向において半径R2と半径R1との寸法差分の幅を有して湾曲する形状で形成されている。そして、隙間形成部材26は、上面側は全面が平坦な平坦面26Fで形成される一方、その下面側は、段差を有した面で形成される。すなわち、下面側は、主面となる平坦な第1面26aと、湾曲部位26M,26Uにおいて径方向となる幅方向全体に渡って形成される平坦面であって第1面26aよりも下方に突出する第2面26bと、第2面26bよりも下方に突出する第3面26cとが設けられている。
【0044】
従って、図4(b)に示すように、隙間形成部材26は、キャリッジ23と対向する片側の板面である下面において、上面の平坦面26Fとの間での板厚が、板厚Taの第1面26a、板厚Tbの第2面26b、板厚Tcの第3面26cがそれぞれ設けられる。すなわち、これらの面によって板厚が変化する厚み変化部位BPが形成される。本実施形態では、板厚Taが最も薄く、板厚Tcが最も厚く、板厚Tbがその中間の板厚となっている。また、図4(a),(b)に示すように、第1面26aと第2面26bとの間、および第2面26bと第3面26cとの間は、それぞれ隙間形成部材26の板厚が緩やかに変化する傾斜面26dが形成されている。傾斜面26dは、第2面26bあるいは第3面26cとの間に形成される稜線の方向が貫通孔26Hの中心Gに向くように形成されている。なお、本実施形態では、第2面26bおよび第3面26cは、上下方向を軸として隙間形成部材26が回転したとき、その回転方向において、回転バラツキを含めて凸条部23A,23B,23Cと確実に当接できる範囲で極力短い長さで設けられている。
【0045】
また、本実施形態の隙間形成部材26は、3つの同一な厚み変化部位BPが設けられている。具体的には、凸部26pが設けられた後方の湾曲部位26Uにおいて、凸部26pを挟んだ回転方向の両側の2箇所に厚み変化部位BPが設けられる。そして、凸部26pが設けられない前方の湾曲部位26Mにおいて、1箇所に厚み変化部位BPが設けられる。このように設けられた各厚み変化部位BPと、各厚み変化部位BPに対応して位置する凸条部23A,23B,23Cとによって、キャリッジ23とヘッド支持部24との間に介在する隙間形成部材26の板厚(厚み)を同一に変化させる。これにより、ヘッド支持部24を上下方向と平行に移動させることで、記録ヘッド25と媒体支持台13との上下方向における隙間を調節する。
【0046】
次に、このプリンター11における作用に関して、特に記録ヘッド25と媒体支持台13との隙間の調節作用について、図5および図6を参照して説明する。なお、説明を容易にするため、図5ではキャリッジ23を取り外した状態で図示している。また、図6では、凸条部23Aおよび記録ヘッド25のそれぞれの周辺のみを図示している。
【0047】
図5において実線で示すように、隙間形成部材26は、上面側においてヘッド支持部24がその自重によって当接するとともに、最初に、下面側の各厚み変化部位BPにおいて、各凸条部23A,23B,23Cが第1面26aと上下方向でそれぞれ当接した状態にあるものとする。この状態では、一例として凸条部23Aについて図6(a)に示すように、キャリッジ23とヘッド支持部24(詳しくは本体部24a)との間に介在する隙間形成部材26は最も薄い板厚Taとなる。このとき、記録ヘッド25と媒体支持台13との間は隙間GP1となる。本実施形態では、この状態を「基準隙間状態」とも呼ぶ。もとより、この基準隙間状態において凸条部23A,23B,23Cは、キャリッジ23が第3面26cと当接しない所定の高さで突出形成されている。
【0048】
この基準隙間状態から、図5において白抜き矢印で示すように、キャリッジ23が用紙Pの左側に移動したのち、左から右に移動することによって、係止部27が凸部26pに力を作用させ、凸部26pを左方向に所定量移動させる。すなわち、係止部27は、キャリッジ23が左から右に移動する際にフレーム12から前方に飛び出し凸部26pに当接する。その後キャリッジ23がさらに所定量右に移動することによって、係止部27は凸部26pに対して力(回転力)を付与し、凸部26pが図中破線で示した位置になるまで隙間形成部材26を回転させる。
【0049】
隙間形成部材26は、この回転によって、それぞれの第2面26bが図中破線で示した位置へ回転移動して、各厚み変化部位BPにおいて各凸条部23A,23B,23Cが、第1面26aから第2面26bと上下方向において当接した状態に変わる。この状態では、一例として凸条部23Aについて図6(b)に示すように、キャリッジ23とヘッド支持部24との間に介在する隙間形成部材26の板厚は板厚Taから板厚Tbとなる。従って、隙間形成部材26の上面に当接するヘッド支持部24は、板厚Tbと板厚Taとの差分△T1上昇し、記録ヘッド25と媒体支持台13との間は隙間GP1から板厚の差分△T1大きくなった隙間GP2となる。本実施形態では、この状態を「第1隙間状態」とも呼ぶ。なお、この第1隙間状態を維持する場合は、隙間形成部材26が回転された後は、係止部27は凸部26pと左右方向で係合しないようにフレーム12から前方に飛び出さない状態に退く。
【0050】
次に、この第1隙間状態から、図5において白抜き矢印で示すように、キャリッジ23が左から右に移動することによって再びフレーム12から前方に飛び出した係止部27に対して、凸部26pを当接させる。そして、キャリッジ23をさらに所定量右に移動させることによって、凸部26pに対して力(回転力)を付与し、凸部26pが図中破線で示した位置から図中二点鎖線で示した位置になるまで隙間形成部材26を回転させる。
【0051】
この回転によって、隙間形成部材26は、それぞれの第2面26bが図中二点鎖線で示した位置へ移動して、各厚み変化部位BPにおいて、第2面26bから第3面26cと上下方向において当接した状態に変わる。この状態では、一例として凸条部23Aについて図6(c)に示すように、キャリッジ23とヘッド支持部24との間に介在する隙間形成部材26は板厚Tcとなる。従って、隙間形成部材26の上面に当接するヘッド支持部24は、板厚Tcと板厚Tbとの差分△T2上昇し、記録ヘッド25と媒体支持台13との間は隙間GP2から差分△T2大きくなった隙間GP3となる。本実施形態では、この状態を「第2隙間状態」とも呼ぶ。また、この第2隙間状態を維持する場合は、隙間形成部材26が回転された後は、係止部27は凸部26pと左右方向で係合しないようにフレーム12から前方に飛び出さない状態に退く。
【0052】
なお、隙間GP3は、基準隙間状態における隙間GP1に対しては、△T1と△T2の加算分大きな隙間となる。本実施形態では、2つの傾斜面26dは同形状で形成され、△T1と△T2は同じ値である。もとより、2つの傾斜面26dは△T1と△T2の値が異なるように形成してもよい。
【0053】
また、隙間形成部材26は、上記説明から明らかなように、キャリッジ23の左右方向への移動によって凸部26pが係止部27によって移動させられることで、基準隙間状態、第1隙間状態、および第2隙間状態のうちの任意の隙間状態になるように回転可能である。例えば、第2隙間状態から第1隙間状態にする場合は、図5において白抜き矢印とは反対の方向、つまりキャリッジ23が右から左方向へ移動する際に、係止部27をフレーム12から前方に飛び出させて凸部26pに当接させ、図中二点鎖線で示した位置から図中破線で示した位置へ凸部26pを移動させる。あるいは、第2隙間状態から基準隙間状態にする場合は、キャリッジ23が右から左方向へ移動する際に、係止部27をフレーム12から前方に飛び出させて凸部26pに当接させ、図中二点鎖線で示した位置から図中破線で示した位置へ凸部26pを移動させる。また、第2隙間状態から基準隙間状態にする場合は、キャリッジ23が右から左方向へ移動する際に、係止部27をフレーム12から前方に飛び出させて凸部26pに当接させ、図中二点鎖線で示した位置から図中実線で示した位置まで凸部26pを移動させる。
【0054】
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)隙間形成部材26を回動させることで、ヘッド支持部24がキャリッジ23に対して対向する上下方向で相対移動するため、上下方向において対向する記録ヘッド25と媒体支持台13との間の隙間を調節することができる。従って、被記録面SPに沿う左右方向に移動するキャリッジ23を、記録ヘッド25と媒体支持台13とが対向する上下方向に移動させることなく、記録ヘッド25と媒体支持台13との間の隙間を調節することができる。この結果、例えば左右方向へ移動するキャリッジ23を案内するガイド軸15などを上下させるといった複雑な機構を用いることなく、記録ヘッド25と媒体支持台13との間の隙間、すなわち記録ヘッド25と媒体支持台13に支持される用紙Pの被記録面SPとの間の隙間を調節することができる。
【0055】
(2)厚み形成部材が1箇所だけの場合は、上下方向にヘッド支持部24を動かした際にヘッド支持部24が傾くことがあるが、厚み変化部位BPを複数設け、それらが同じ厚みで変化するので、複数箇所にてヘッド支持部24を同じように動かすことができる。従って、移動に際してヘッド支持部24の傾きを押さえられる。
【0056】
(3)ヘッド支持部を上下方向と平行に移動させるため、移動に際して被記録面に対する記録ヘッド25の傾きが抑制され、記録ヘッド25による記録(印字)精度への影響が抑制される。
【0057】
(4)厚み変化部位BPが3つあるのでヘッド支持部24を最も少ない3点で傾くことなく安定して支持しつつ移動させることができる。また、最も少ない数の厚み変化部位BPを隙間形成部材26に形成すればよいので、隙間形成部材26を容易に形成することができる。
【0058】
(5)隙間形成部材26に凸部26pを備えたので、凸部26pに回転力を与えることで容易に隙間形成部材26を回転させることができる。
(6)記録ヘッド25の両側でヘッド支持部24とキャリッジ23との間に厚み変化部位BPが介在するので、隙間形成部材26の回動によって、記録ヘッド25は傾きが抑制された状態で、媒体支持台13に対して第1方向となる上下方向での対向姿勢を変化させることなく移動する。
【0059】
(7)隙間形成部材26に対して回動力が付与される位置に対して回動方向の両側でヘッド支持部24とキャリッジ23との間に厚み変化部位BPが介在するので、隙間形成部材26は、凸部26pに付与される力によって捩じられることなく回動方向に円滑に回動する。
【0060】
(8)記録ヘッド25に対して、タイミングベルト17によって移動力が付与される突出部23bが設けられた側と、隙間形成部材26に対して回転力が付与される側とは同じ側になるので、キャリッジ23を回転させる力の発生が抑制される。従って、キャリッジ23は傾きが抑制された状態で左右方向に移動する。
【0061】
(9)凸部26pに当接して回動力を付与する係止部27が、記録ヘッド25による記録領域外に設けられているので、記録ヘッド25と媒体支持台13との間の隙間を記録領域外で調節したのち、直ちに記録ヘッド25を記録領域に移動させて記録を行うことができる。
【0062】
(10)隙間形成部材26の板厚方向つまり上下方向から見たキャリッジ23の形状はヘッド支持部24に比べて通常大きくなっているので、隙間形成部材26において厚み変化部位BPを形成する位置に対する自由度が大きくなる。従って、記録ヘッド25を挟む両側に厚み変化部位BPを形成できる確率が高くなる。
【0063】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、厚み変化部位BPは、第1面26a、第2面26b、第3面26cが必ずしもキャリッジ23と対向する板面(下面)に設けられなくてもよい。本変形例について図7(a)を参照して説明する。
【0064】
図7(a)に示すように、隙間形成部材26の上面側、すなわちヘッド支持部24と対向する面側に第1面26a、第2面26b、第3面26cを設け、キャリッジ23と対向する下面側は平坦面とすることによって厚み変化部位BPを形成する。もとより、厚み変化部位BPをこのように形成した場合は、例えば凸条部23Aに替えて、ヘッド支持部24側に凸条部24Aを形成するなど、各厚み変化部位BPに対向するヘッド支持部24の部位に凸条部を形成する。
【0065】
この変形例によれば、上記実施形態の効果(1)〜(9)に加えて次の効果を奏する。
(11)キャリッジ23が隙間形成部材26よりも重力方向側に位置し、記録ヘッド25が最も重力方向側に位置する場合、キャリッジ23と隙間形成部材26との間は隙間形成部材26の板厚方向(上下方向)において隙間が形成されないので、キャリッジ23から埃などの異物が記録ヘッド25側に進入することが抑制される。
【0066】
・上記実施形態において、厚み変化部位BPは、第1面26a、第2面26b、第3面26cが必ずしもキャリッジ23と対向する板面(下面)のみに設けられなくてもよい。本変形例について図7(b)を参照して説明する。
【0067】
図7(b)に示すように、隙間形成部材26の上面側と下面側の両面、すなわちヘッド支持部24と対向する板面側およびキャリッジ23と対向する板面側の双方に第1面26a、第2面26b、第3面26cを設けることによって厚み変化部位BPを形成する。もとより、厚み変化部位BPをこのように形成した場合は、キャリッジ23側の凸条部23A(23B,23C)に加えて、ヘッド支持部24側にも各凸条部(例えば凸条部24A)を形成する。
【0068】
このように両側に第1面26a、第2面26b、第3面26cを設けた場合は、第1面26aと第2面26bとの間、及び第2面26bと第3面26cとの間の傾斜面26dは、その傾斜角が上記実施形態における傾斜角と同じ場合は、原理的に回転方向における長さが短くなる。従って、例えば、傾斜面26dを含んで第2面26bと第3面26cとが回転方向において占有する長さL2は、これらの面を片側に形成したときの長さL1(図7(a)参照)よりも短くなる。従って、本変形例における厚み変化部位BPは、上記実施形態に比べて、隙間形成部材26の回転方向において少ない角度範囲で形成される。
【0069】
この変形例によれば、上記実施形態の効果(1)〜(9)に加えて次の効果を奏する。
(12)少ない回転角で所望する板厚変化を得ることができるので、隙間形成部材26の少ない回転範囲によって記録ヘッド25と媒体支持台13との間の隙間を調節することができる。
【0070】
・上記実施形態において、厚み変化部位BPは、第1面26a、第2面26b、第3面26cと傾斜面26dとで形成された面でなくてもよい。換言すれば、上記実施形態において、隙間形成部材26の厚み変化部位BPは変化する板厚が3種類でなくても良い。例えば2種類であってもよいし、4種類以上の複数種類であってもよい。一例として複数種類の隙間を調節可能な構成について、図7(c)を参照して説明する。
【0071】
図7(c)に示すように、隙間形成部材26の下面側に板厚が板厚Taから板厚Tdまで連続して変化する傾斜面26Kを設ける。そして、この傾斜面26Kにおいて、上記実施形態における板厚Tbと板厚Tcとなる斜面部位が設けられる。従って、隙間形成部材26が回転することで、凸条部23Aと当接する傾斜面26Kにおける斜面部位での板厚が連続的に変化する。
【0072】
この結果、ヘッド支持部24とキャリッジ23との間に介在する隙間形成部材26の板厚を連続して変更できるので、記録ヘッド25と媒体支持台13との間の隙間を、隙間GP1,GP2,GP3のいずれかの隙間になるように調節することができるとともに、隙間GP1〜GP3の間で連続して調節することができる。
【0073】
・上記実施形態では、隙間形成部材26は、ヘッド支持部24の自重を利用して上面にヘッド支持部24を常に当接させながらヘッド支持部24を上下方向に移動させ、記録ヘッド25と媒体支持台13との間の隙間を調節する構成としたが、これと異なる構成でも差しつかえない。本変形例について、図8を参照して説明する。なお、図8において上記実施形態と同じ構成部材については同符号を付し、それらの説明は省略する。
【0074】
図8に示すように、記録ヘッド25を支持するヘッド支持部24は、その本体部24aの下部から水平方向に鍔状に張り出した張出部位24Hが、上記実施形態とは逆に、隙間形成部材26の下側の板面と対向して配設される。また、隙間形成部材26の上側の板面はキャリッジ23が対向して配設される。そして、キャリッジ23から下側に突出して形成され、隙間形成部材26の内側壁26sを案内するとともに、張出部位24Hを上下方向に移動可能な状態で貫通するガイドリブ23pが設けられている。従って、隙間形成部材26は上記実施形態と同様に回転可能であるとともに、ヘッド支持部24はキャリッジ23に対してガイドリブ23pに沿って上下方向に移動可能である。
【0075】
そして、ヘッド支持部24は、キャリッジ23との間に設けられた付勢手段(例えば引張りばね)30によって、常に反重力方向となる上側に付勢されている。この付勢によって、いずれも図示を省略しているが、ヘッド支持部24に形成された凸条部が、隙間形成部材26に形成された厚み変化部位BPにおける第1面26a、第2面26b、第3面26cのいずれかと常に当接する。
【0076】
したがって、ここでは詳細な説明を省略するが、隙間形成部材26が回転することによって、凸条部が当接する厚み変化部位BPの面が、第1面、第2面、第3面のいずれかによって、ヘッド支持部24は下方向に押し下げられて移動したり、付勢手段30によって上方に引っ張られて移動したりする。この結果、記録ヘッド25と媒体支持台13との間の隙間が、隙間GP1,GP2,GP3のいずれかの隙間になるように調節することができる。また、ヘッド支持部24の自重と付勢手段30との差分の力を隙間形成部材26に作用させることができるので、隙間形成部材26の回動に際して凸部26pに加える力を抑制することができる。
【0077】
・上記実施形態において、隙間形成部材26は内側が貫通孔26Hとなった輪形状を有することとしたが、必ずしもこれに限定されない。例えば、隙間形成部材26は、輪形状でなく輪の一部が分断された所謂Cリング形状であってもよい。また、隙間形成部材26は、複数の部材によって形成され、それらが同時に回動可能とされてもよい。さらに、隙間形成部材26が複数の部材で形成される場合、それぞれの部材に少なくとも一つの厚み変化部位BPが形成されていてもよい。また、それぞれの部材に回動力被付与部位が設けられていてもよい。
【0078】
・上記実施形態において、隙間形成部材26は平板形状でなく帯状部材が丸められたベルト形状であってもよい。この場合、ベルトの幅方向を記録ヘッド25と媒体支持台13との距離が変動する上下方向とするとともに、隙間形成部材26において上下方向と交差するベルト端面を上記実施形態における板面とし、この板面に厚み変化部位を形成してもよい。
【0079】
・上記実施形態において、隙間形成部材26における厚み変化部位BPは、上下方向と交差する方向において、必ずしも記録ヘッド25を挟む両側に設けられていなくてもよい。例えば、隙間形成部材26において、凸条部23Aと凸条部23Bとに応じた位置のみに厚み変化部位BPが形成されていることとしてもよい。あるいは、凸条部23Cに応じた位置のみに厚み変化部位BPが形成されていることとしてもよい。例えば、ヘッド支持部24が、ガイドリブ23pによって抉られることなく円滑に上下移動する構成とされ、湾曲部位の少なくとも一方において板厚が変化すれば、ヘッド支持部24を上下方向へ移動させることが可能な場合は、このような構成が採用できる。
【0080】
・上記実施形態において、隙間形成部材26を回動させる際に力が付与される凸部26pを挟んだ回動方向の両側に、厚み変化部位BPが必ずしも設けられなくてもよい。例えば、図3において凸部26pは凸条部23Cと対応する湾曲部位26Mに設けられることとしてもよい。
【0081】
・上記実施形態において、隙間形成部材26を回動させる際に力が付与される凸部26pが、キャリッジ23を移動させる移動力が加わる突出部23b側に必ずしも設けられなくてもよい。例えば、図3において凸部26pは凸条部23Cと対応する湾曲部位26Mに設けられることとしてもよい。キャリッジ23が左右方向に移動する場合において、例えばガイド軸15との間での隙間が少なく隙間形成部材26に回転力を与えても傾きが少ない状態でキャリッジ23が移動する場合は、このような構成が採用できる。
【0082】
・上記実施形態において、回動力被付与部位が隙間形成部材26ではなくキャリッジ23に設けられていてもよい。プリンター11において、例えば、回動力付与部材である係止部27が、隙間形成部材26に設けられた回動力被付与部位として機能する凸部26pに当接しない位置に配設される場合がある。このような場合であっても、隙間形成部材26に比較して上下方向において広い領域を有するキャリッジ23において、移動に際して係止部27と当接する回動力被付与部位を配設することが可能である。もとより、キャリッジ23に回動力被付与部位を形成した場合は、キャリッジ23において伝達機構を構成し、構成した伝達機構によってキャリッジ23に設けられた回動力被付与部位の回動を、隙間形成部材26に伝達して回動させるようにすればよい。従って、回動力被付与部位を隙間形成部材26に設けられない場合でも、キャリッジ23に設けられた回動力被付与部位の回動を伝達して隙間形成部材26を回動させることができる。
【0083】
・上記実施形態において、必ずしも、凸部26p及び厚み変化部位BPはガイド軸15側に設けられ、他方の厚み変化部位BPはガイド板16側に設けられなくてもよい。例えば、図3においてキャリッジ23の移動方向が左右方向でなく前後方向に移動するようにガイド軸およびガイド板が配設される構成の場合、厚み変化部位を形成する湾曲部位はキャリッジ23の移動を案内するガイド軸およびガイド板のいずれの側でもない側に設けられることが好ましい。またこの場合は、凸部26pは前後方向に移動するキャリッジ23に応じて、左右方向(例えば屈曲部位26eないし屈曲部位26f)に設けることが好ましい。
【0084】
・上記実施形態において、係止部27は、用紙Pの左側でなく、用紙Pの右側すなわちメンテナンス装置29側に設けられていてもよい。こうすれば、記録ヘッド25と媒体支持台13との間の隙間調節をホームポジション領域で行うことができるので、隙間調節に際して移動するキャリッジ23の距離を抑制することができる。
【0085】
・上記実施形態において、係止部27は、キャリッジ23が左から右に移動する際にフレーム12から前方に飛び出して凸部26pに当接する構成に限定されない。例えば、フレーム12の左右方向の側壁からキャリッジ23の移動方向である左右方向に突出して凸部26pに当接する構成であってもよい。要は、左右方向に移動する回動力被付与部位(凸部26p)に対して当接して回動させる構成であれば、係止部27として採用できる。
【0086】
・上記実施形態において、隙間形成部材26はキャリッジ23において回動可能に取り付けられたが、これに限定されず、ヘッド支持部24およびキャリッジ23の少なくとも一方に対して上下方向に沿う軸線を回動中心とする回動可能に取り付けられればよい。要は、ヘッド支持部24とキャリッジ23との間で隙間形成部材26が回動可能であれば、どのように取り付けられてもよい。
【0087】
・上記実施形態において、プリンター11は、キャリッジ23にインクを収容したインクカートリッジが搭載される所謂オンキャリッジタイプのプリンターであってもよい。
・上記実施形態において、被記録媒体は、用紙Pに限らず、プラスチックフィルムや布、あるいは金属箔など、被記録面SPに記録が施される媒体であれば採用可能である。
【0088】
・上記実施形態では、記録装置を、インクを噴射する記録ヘッドを備えたインクジェット式のプリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置に具体化してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置を流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置がある。あるいは、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
11…記録装置としてのプリンター、13…媒体支持台、15…第1案内部としてのガイド軸、16…第2案内部としてのガイド板、23…キャリッジ、24…ヘッド支持部、25…記録ヘッド、26…隙間形成部材、26p…回動力被付与部位としての凸部、27…回動力付与部材としての係止部27、BP…厚み変化部位、SP…被記録面、Ta,Tb,Tc,Td…板厚、GP1,GP2,GP3…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体の被記録面に対して記録を行う記録ヘッドを支持するヘッド支持部と、
前記被記録媒体を前記記録ヘッドと対向した状態に支持する媒体支持台と、
前記ヘッド支持部を前記記録ヘッドと前記媒体支持台との距離が変動する第1方向において移動可能に保持するとともに、前記媒体支持台に支持された前記被記録媒体の被記録面に沿う第2方向に移動するキャリッジと、
前記ヘッド支持部と前記キャリッジとの間に介在して前記第1方向の隙間を形成しつつ前記ヘッド支持部および前記キャリッジの少なくとも一方に対して前記第1方向に沿う軸線を回動中心とする回動可能に取り付けられる隙間形成部材と、
を備え、
前記隙間形成部材は、前記ヘッド支持部と前記キャリッジとに挟まれた状態になることで前記隙間を規定する前記第1方向での厚みが回動方向において変化するように形成された厚み変化部位を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記隙間形成部材に前記厚み変化部位が複数あって、各々の前記厚み変化部位における前記第1方向での厚み変化が同一であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記ヘッド支持部を前記第1方向と平行に移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記厚み変化部位が3つあることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記隙間形成部材を回動させる際に力が付与される回動力被付与部位を備えたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記隙間形成部材における前記厚み変化部位は、前記第1方向と交差する方向において前記記録ヘッドを挟む両側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記隙間形成部材は、前記第1方向と交差する方向において前記記録ヘッドを挟む両側の少なくとも一方側に、
前記回動力被付与部位と、当該回動力被付与部位を挟んだ前記回動方向の両側に前記厚み変化部位と、が設けられることを特徴とする請求項5または6のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記第1方向と交差する方向において前記記録ヘッドを挟む両側に、前記キャリッジの前記移動を案内する第1案内部と第2案内部とがそれぞれ備えられ、
前記キャリッジには、前記移動する際に力が付与される移動力被付与部位が前記記録ヘッドの前記第1案内部側に設けられ、
前記隙間形成部材には、前記回動力被付与部位が、前記記録ヘッドの前記第1案内部側に設けられていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記記録ヘッドによる記録領域外で、前記回動力被付与部位に当接可能な回動力付与部材が設けられていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記隙間形成部材は、前記厚み変化部位が前記キャリッジと対向する片側の板面に設けられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記隙間形成部材は、前記厚み変化部位が前記ヘッド支持部と対向する片側の板面に設けられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項12】
前記隙間形成部材は、前記厚み変化部位が前記キャリッジおよび前記ヘッド支持部と対向する両側の板面に設けられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項13】
前記回動力被付与部位が、前記キャリッジに設けられていることを特徴とする請求項5乃至12のいずれか一項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−95107(P2013−95107A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241992(P2011−241992)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】