説明

診断用のテープカセット

【課題】使い捨て利用のためのテープカセットをさらに改良して、簡単な製造可能性で、高い保管安定性と使用安定性を提供する。
【解決手段】体液を調べるための多数の検査領域を備える検査テープと、前記検査テープを収容するためのハウジングとを備える、特に血糖検査のための診断用のテープカセットに関する。前記ハウジングが、機能部材が統合された、アウトサート技術により金属支持体と成形プラスチックで構成された1つのハウジング部品を有していることによって、製造時と使用時に利点が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液を調べるための多数の検査領域を備える検査テープと、検査テープを収容するためのハウジングとを備える、特に血糖検査のための診断用のテープカセットに関する。このようなテープカセットの製造方法も、本発明の対象である。
【背景技術】
【0002】
糖尿病患者の自己診断のために、従来、実際にいくつかの検査ストリップが用いられており、このような検査ストリップは、試料(血液ないし組織液)中のブドウ糖含有量を可能な限り正確かつ確実に判定するために、わずかな量の試料が与えられた後に、測光式または電気化学式に調べられる。利用者の利便性を改善するために、テープカセット形態の検査テープを使って、多数回の検査を行うことがすでに提案されている。このようなテープカセットは、必要なすべての調査工程を自動的かつ迅速に実行できるようにするために、使い捨て部品としてコンパクトな携帯型装置へ挿入できるのが望ましい。このとき消費部品は信頼性が求められるので、高い要求事項が課せられる大量生産品であることに留意しなくてはならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上を前提とする本発明の課題は、従来技術で提案されている使い捨て利用のためのテープカセットをさらに改良して、簡単な製造可能性で、高い保管安定性と使用安定性を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、請求項1および18に記載された構成要件の組み合わせが提案される。本発明の有利な実施態様および発展例は、従属請求項に記載されている。
【0005】
本発明は、できる限り少ない個別の構成部品で、テープカセットの機能性を保証するという思想を前提としている。したがって本発明では、ハウジングは、アウトサート技術で金属支持体と成形プラスチックから構成されたアウトサート成形部品を有していることが提案される。アウトサート(成形)技術は、金属・プラスチック複合部品の低コストの製造を可能にするものであり、材料ブリッジとアンダーカットとが堅固な結合を保証する。診断用テープカセットの観点からは、このようにして、特別な目的のためにハウジングに統合される機能部材を金属支持体に設けることも可能であり、別個の構成部品を製作して取り扱う必要がない。単なるプラスチック部品で発生するような変形は、特に金属支持体のおかげで、在庫備蓄ないし装置使用期間が長く続いた場合であっても回避され、壁厚がわずかであっても高いハウジング強度が実現される。それにより、検査の高い収納密度で、コンパクトな設計形態を生産工学の面から容易に具体化することができる。
【0006】
特別に好適なカセット構成のために、アウトサート成形部品に統合される機能部材は、ばね部材、結合部材、および/または案内部材を含んでいるのが好ましい。
【0007】
機能部材が、金属支持体に構成された少なくとも1つのばね部材を含んでいることによって、テープ走行機能の調節にかかわる格別な利点が得られる。そうすればばね部材を別途ハウジングに挿入する必要がなくなり、むしろ、1回の作業工程でアウトサート成形部品へ所望の位置に統合することができる。
【0008】
別の有利な実施形態は、薄くても支持能力のあるハウジング壁部を具体化できるように、金属支持体が薄板裁断片から予備成形されていることを意図している。
【0009】
薄板裁断片の裁断片の一部は、弾性的に復帰可能なばね部材として曲げられているのが好ましい。この場合、検査テープに対する密封機能のために、板ばねの形態の機能部材が設けられていると格別に好ましい。
【0010】
いっそうの簡素化は、板ばねが一方の自由端で、成形プラスチックからなる壁部により初期応力をかけられた位置で取外し可能に保持されており、場合により、最終組立の過程で初めて所定の機能位置へと動くことを意図している。
【0011】
テープリールをばね付勢するために、渦巻ばねの形態の機能部材が設けられているのも好ましい。この場合、渦巻ばねが金属支持体の平面に比べて低い位置にあり、ハウジング内部へ螺旋状に引き伸ばされていると好都合である。渦巻ばねが、成形プラスチックからなるカバーによって、外部からの作用に対してカバーされていることにより、汚れに対してハウジング内部空間を保護するための別の利点も得られる。
【0012】
ばね機能や位置決めの操作をできるようにするために、成形プラスチックがばね部材の領域に、ばね部材に作用するエジェクタおよび/またはセンタリングピンのための少なくとも1つの壁破断部を有していると好ましい。
【0013】
さらに別の有利な実施形態は、機能部材がアウトサート成形部品のための少なくとも1つの定着部材を含んでいることを意図している。これは、金属支持体に屹立する支持フックが係止部材の形態のプラスチックで押出被覆されることによって、格別に容易に具体化することができる。
【0014】
機能部材が、2つのテープリールのあいだで搬送される検査テープのためのカバーを含んでいることによって、さらに別の有利なハウジング機能が得られる。カバーは、プラスチックで押出被覆された、好ましくはアンダーカットのある金属支持体のラグとして構成されているのが好ましい。
【0015】
できる限り少ない摩擦損失でテープ走行を保証するために、機能部材が、検査テープを摺動案内するためのテープ方向転換部を含んでいると好ましい。
【0016】
アウトサート成形部品は、テープカセットのためのハウジング部品、特にカセット蓋またはカセット本体を構成しているのが好ましい。
【0017】
冒頭に述べた課題は、方法の観点からは、金属支持体を有利には薄板裁断片として予備成形し、アウトサート技術の射出成形によって成形プラスチック部品を備え付け、こうして形成されたアウトサート成形部品にテープカセットのための機能部材を統合することによって解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、図面に模式的に示されている実施例を参照しながら、本発明について詳しく説明する。
【0019】
図面に示しているテープカセット10は、その場で患者自身により採取された血液試料を用いて、複数回のブドウ糖検査を実施することを可能にする。この目的のために、アプリケーション先端部18で連続的に血液を供給することができる多数の検査領域16が設けられた検査テープ14を収容するためのハウジング12が構成されている。このときテープ搬送は、ハウジング12に挿入された2つのテープリール20、22を介して行われる。原理的な検査手順は、たとえば国際公開第2004/056269号パンフレットに記載されており、ここで明文をもって同文献を援用する。
【0020】
ハウジング12は、蓋部分として構成されたアウトサート成形部品24と、これと接合可能なカセット本体26とを含んでいる。アウトサート成形部品24は、図2に示す金属支持体28と、これに射出成形された図3に示すプラスチック30とで、アウトサート技術で作製されている。このようにして、さまざまな機能部品32を生産工学的、応用工学的に有利に完成部品へ統合することができる。アウトサート技術では、金属支持体28が、閉止可能な金型の成形キャビティへ挿入され、有利には射出成形によって、硬化可能なプラスチック素材で包囲される。このときプラスチックは、アンダーカットや破断部によって金属支持体に堅固に定着する。この方法それ自体は当業者には周知なので、これ以上の方法の詳細については、ここに記載する必要をみない。
【0021】
図2は、打抜と折曲によって金属薄板裁断片34として形成された金属支持体28を示している。この裁断部品34は平坦な底面36を有しており、この底面から、さまざまな機能部品、特にばね部材38、40や支持部材42、44が折り曲げられている。
【0022】
面取りされた側面には、図示しないシール部を介してそばを通過する検査テープ14に対する改善された密閉機能のために、板ばね38が設けられている。巻取テープ22をばね力で付勢するために、底面36の領域には渦巻ばね40が配置されており、一体成形されたばね端部は円形に深絞りされており、自由なばね端部はハウジング内部に向って螺旋状に引き伸ばされている。
【0023】
射出成形された定着部材を安定化させるために、複数の折曲された、アンダーカットのある側方の支持フック42が底面36に配分されて配置されている。底面36の縁部側には、側方の支持部材としてのラグ44が設けられている。
【0024】
完成したアウトサート成形部品24は、図3では、ラグ44によって支持される側壁46を有しており、この側壁は、アプリケーション先端部18の領域を除き、検査テープ14を外方に向って覆っている。カセット本体26との係止のために、係止フック48が支持フック42の上にプラスチックで射出成形されている。渦巻ばね40は底面36の平面で、プラスチックでできた蓋50により外部から介入に対してカバーされている。この蓋は、底面36の内側にある向かい合う成形点52によって、金属支持体28と堅固に結合された状態に保たれる。
【0025】
射出成形金型の中で、板ばね38は隣接する側壁46の領域で初期応力をかけられ、硬化したプラスチックがその収縮挙動に基づいて保持機能を担うようになるまで、そこでセンタリングピンにより固定される。このときセンタリングピンは、図1の蓋部品24の外面に見られるように、プラスチックの破断部54を形成する。そして最終組立のときに、破断部54に挿通されたエジェクタによって、ばね38を内方に向って作用位置へ押し出すことができる。これに対応する破断部56は、渦巻ばね40のカバー50の領域にもある。
【0026】
カセット10の他の部品をアウトサート技術で構成することも、原則として可能である。特に、カセット本体26は、検査テープ14のためのテープ方向転換部が成形された金属支持体を有していてよい。このテープ方向転換部は、プラスチックで形成される本体部品が射出成形された後、外側で自由な状態に保たれ、それにより、リール20、22のあいだで先端部18を介して案内される検査テープは、金属のテープ方向転換部の上を少ない摩擦で摺動することになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】血糖検査のためのテープカセットを示す斜視図である。
【図2】テープカセットの蓋部分の金属支持体を示す斜視図である。
【図3】アウトサート技術で形成された蓋部分を示す図2に対応する図である。
【符号の説明】
【0028】
10 テープカセット
12 ハウジング
14 検査テープ
16 検査区域
22 リール
24 アウトサート成形部
26 カセット本体
28 金属支持体
30 成形プラスチック
36 機能部材
38 板ばね
40 渦巻ばね
42 支持フック
46、48、50 成形プラスチック部品(カバー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を調べるための多数の検査領域(16)を備える検査テープ(14)と、前記検査テープ(14)を収容するためのハウジング(12)とを備える、特に血糖検査のための診断用のテープカセットにおいて、前記ハウジング(12)は、金属支持体(28)と成形プラスチック(30)で構成された少なくとも1つのアウトサート成形部品(24)を有していることを特徴とするテープカセット。
【請求項2】
前記アウトサート成形部品(24)は統合された機能部材(36)を有することを特徴とする請求項1記載のテープカセット。
【請求項3】
前記機能部材(36)は前記金属支持体(28)に構成された少なくとも1つのばね部材(38、40)を含んでいることを特徴とする請求項2記載のテープカセット。
【請求項4】
前記金属支持体(28)は薄板裁断片(34)から予備成形されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のテープカセット。
【請求項5】
前記薄板裁断片(34)の裁断片の一部が弾性的に復帰可能なばね部材(38、40)として曲げられていることを特徴とする請求項4記載のテープカセット。
【請求項6】
前記検査テープ(14)に対する密閉機能のための板ばね(38)の形態の機能部材(36)が設けられていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載のテープカセット。
【請求項7】
前記板ばね(38)は自由端で成形プラスチック(30)からなる壁部(46)により初期応力をかけられた位置で取外し可能に保持されていることを特徴とする請求項6記載のテープカセット。
【請求項8】
テープリール(22)をばね付勢するための渦巻ばね(40)の形態の機能部材(36)が設けられていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載のテープカセット。
【請求項9】
前記渦巻ばね(40)は前記金属支持体(28)の平面に比べて低い位置にあり、ハウジング内部へと螺旋状に引き伸ばされていることを特徴とする請求項8記載のテープカセット。
【請求項10】
前記渦巻ばね(40)は成形プラスチック(30)からなる蓋(50)によって外部からの介入に対してカバーされていることを特徴とする請求項8または9記載のテープカセット。
【請求項11】
前記成形プラスチック(30)は前記機能部材(38、40)の領域に、前記ばね部材(38、40)に作用するエジェクタおよび/またはセンタリングピンのための少なくとも1つの壁破断部(54、56)を有していることを特徴とする請求項3〜10のいずれか1項に記載のテープカセット。
【請求項12】
前記機能部材(36)は前記ハウジング部品(24)のための少なくとも1つの定着部材(48)を含んでいることを特徴とする請求項2〜11のいずれか1項に記載のテープカセット。
【請求項13】
前記金属支持体(28)に屹立する支持フック(42)が係止部材の形態のプラスチックで押出被覆されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のテープカセット。
【請求項14】
前記機能部材(36)は2つのテープリールのあいだで搬送される前記検査テープ(14)のためのカバー(46)を含んでいることを特徴とする請求項2〜13のいずれか1項に記載のテープカセット。
【請求項15】
前記カバー(46)は、プラスチック(30)で押出被覆された有利にはアンダーカットのある前記金属支持体(28)のラグ(44)によって構成されていることを特徴とする請求項14記載のテープカセット。
【請求項16】
前記機能部材(36)は前記検査テープ(14)を摺動案内するためのテープ方向転換部を含んでいることを特徴とする請求項2〜15のいずれか1項に記載のテープカセット。
【請求項17】
前記アウトサート成形部品(24)はハウジング部品、特にカセット蓋(24)またはカセット本体(26)を構成することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載のテープカセット。
【請求項18】
前記請求項のうちいずれか1項に記載の血糖検査のためのテープカセット(10)を製造する方法において、特に金属支持体(28)を有利には薄板裁断片(34)として予備成形し、アウトサート技術の射出成形によって成形プラスチック部品(46、48、50)を備え付け、こうして形成されたアウトサート成形部品(24)に前記テープカセット(10)のための機能部材(36)を統合する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−20444(P2008−20444A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−168251(P2007−168251)
【出願日】平成19年6月26日(2007.6.26)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】