説明

診療用インスツルメント

【課題】簡単な構造で、作用媒体の接続部分からの漏洩を防止できる診療用インスツルメントを提供する。
【解決手段】筒状体の第1部分1及び第2部分6が、軸方向に沿った抜差しによって着脱自在に接続されてなる診療用インスツルメント10において、前記第1部分及び第2部分が接続されたとき、両者間を通過する作用媒体の当該接続部分における両者間の軸方向の隙間bから径方向外部への漏洩を阻止する封止部材16を、前記第1部分及び第2部分のいずれか一方の外装部材60(40)の接続端部内側に備え、前記封止部材は、前記軸方向に伸縮する環状の伸縮部17と、該伸縮部の伸縮動作に連動して前記軸方向にスライドする環状の遮蔽部18とよりなり、前記第1部分及び第2部分が接続されたとき、前記伸縮部が軸方向に弾性圧縮され、前記遮蔽部が伸縮部の圧縮反力を受けて前記漏洩を阻止する位置に維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診療用インスツルメント、例えば、回転切削工具を回転自在に備えたハンドピースと、前記回転切削工具の回転動力用モータを内蔵するモータユニットとが着脱自在に接続され、接続状態で両者間に媒体が通過するよう構成される診療用インスツルメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
診療用インスツルメントの代表例として、歯科診療用インスツルメントを挙げることができる。特許文献1,2及び特許文献3には、このような歯科診療用インスツルメントの例が示されている。特許文献1には、歯科用のタービンハンドピースと回転継手との接続部の構造が開示されている。また、特許文献2には、歯科用ハンドピースにおけるハンドピース本体と、モータケースとの接続部の構造が開示されている。
【0003】
近時、先端ヘッド部に回転切削工具を回転自在に備えたハンドピースと、前記回転切削工具の回転動力用モータを内蔵するモータユニットとが軸方向に沿った抜差しによって着脱自在に接続されてなる診療用インスツルメントも多用されている。このような診療用インスツルメントの場合、例えば、特許文献3に開示されている医療用ハンドピースのように、モータユニット内のモータの周辺部に冷却用空気が導入されてモータの発熱を抑えるように構成される。さらに、この冷却用空気は、接続部を介してハンドピース内に導入され、ハンドピース内の駆動伝達機構や照明光用の導光路の発熱を抑えるように構成される場合もある。また、モータユニットのハンドピースとの接続端部にLED等の光源を配し、ハンドピース内に配設された前記導光路を経て、前記回転切削工具の先端部を照射するように構成される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−36646号公報
【特許文献2】実用新案登録第3103624号公報
【特許文献3】特許第3750790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような診療用インスツルメントの場合、ハンドピースとモータユニットとの接続は、その軸方向に沿った抜差しによってなされる。そして、接続状態を維持すると共に接続を解除するために、フック式のロック・アンロック手段が両者間に設けられる。この場合、ロック・アンロック手段のフック部は、相手側のフック受容部に収まり、被掛止部に確実に掛止される必要がある。一方、ハンドピースの外装部材(外装カバー)とモータユニットの外装部材(外装カバー)とは、突合せ状態で接続される。両者の加工公差の関係で、フック部がフック受容部に収まる前に、両外装カバーが当接すると、ロックが確実になされなくなり、使用中にハンドピースがモータユニットから脱落する恐れが生じる。そのため、加工公差を考慮して、接続状態で両外装カバー間に若干の隙間が生じるように設計される。前記冷却用空気は、モータユニットの外装カバーとモータの周辺部との間から、ハンドピースの外装カバーと駆動伝達機構等の周辺部との間を通過するよう構成されるから、冷却用空気が前記隙間から漏洩し、患者や術者に不快感を与えることがある。また、前記光源は、モータユニット内でのモータとの配置レイアウトとの関係から、モータユニット内の外周部側の接続端部であって、ハンドピース内の導光路の受光端に対向するよう配置される。そのため、ハンドピースとの接続状態において前記隙間より光が漏洩し、術者の作業の障害となったり、或いは、歯科用のインスツルメント場合には、患者が眩しさで不快な思いをしたりすることもある。
【0006】
特許文献1においては、歯科用タービンハンドピースのスリーブ(外装カバー)の接続部側端部に形成されたばね弾性を有する押込み成形部と、回転継手に形成された環状つば部とによって構成される掛け止め装置が開示されている。しかし、この押込み成形部と環状つば部とは、ハンドピースと回転継手とを軸方向に保持且つ固定するべく機能するものであっても、両者間を通過する前記媒体(空気、光等)の当該接続部分における外部への漏洩を積極的に阻止する機能を奏するものではない。また、特許文献2においては、モータケース側に設けられる圧縮水や圧縮空気の各管路の出口を、ハンドピース本体の軸穴に嵌合される円柱状のインサート部の周面に開口させている。これら出口は、インサート部をハンドピース本体の軸部に嵌合させたときに、ハンドピース本体側のそれぞれの穴に対応するよう形成されている。そして、各出口間のインサート部周体にはリング状のシール材が装着され、前記嵌合状態で各流体の漏れが防止されるように構成されている。しかし、管路を介さずにハンドピース本体内及びモータケース内を流通する冷却空気のような媒体が、接続部から外部へ漏洩することを防止する技術思想は、特許文献2にはない。このような技術思想は、特許文献1にも存在しない。
特許文献3においては、ブラシレスモータを小型化し且つ効率的な冷却を行うよう、コアユニットと外ケースの間、或いはコアユニットとコイルユニットの間に冷却用空気を流通させる構成とされている。しかし、特許文献1,2と同様、前記媒体が装着部から外部へ漏洩することを防止する技術思想は、特許文献にもない。
【0007】
而して、前記のようにハンドピースの外装カバーとモータユニットの外装カバーとの間に若干の隙間が不可避的に生じるような接続構造において、この隙間を塞ぐためにOリング等を用いることは構造上難しく、また、この部分が嵩高くなりハンドリング性を悪くすることにもなる。従来、一方の外装カバーの接続端部にゴムを焼付け塗装し、接続時に両外装カバー間にこのゴムを介在させることによって隙間を塞ぐこともなされていたが、このような焼付け塗装作業は大変煩わしく、実用的ではなかった。前記診療用インスツルメントにおいては、なお上述の問題点が内在し、その抜本的な改良が望まれていた。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みなされたもので、簡単な構造で、接続対象部分間を通過する作用媒体の接続部分からの漏洩を防止することができる診療用インスツルメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
筒状体の第1部分及び第2部分が、軸方向に沿った抜差しによって着脱自在に接続されてなる診療用インスツルメントにおいて、前記第1部分及び第2部分が接続されたとき、両者間を通過する作用媒体の当該接続部分における両者間の軸方向の隙間から径方向外部への漏洩を阻止する封止部材を、前記第1部分及び第2部分のいずれか一方の外装部材の接続端部内側に備え、前記封止部材は、前記軸方向に伸縮する環状の伸縮部と、該伸縮部の伸縮動作に連動して前記軸方向にスライドする環状の遮蔽部とよりなり、前記第1部分及び第2部分が接続されたとき、前記伸縮部が軸方向に弾性圧縮され、前記遮蔽部が伸縮部の圧縮反力を受けて前記漏洩を阻止する位置に維持されるよう構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の診療用インスツルメントにおいて、前記伸縮部及び遮蔽部が、伸縮部材及び遮蔽部材の互いに別個の部材からなり、両部材が前記軸方向に近接状態で並設されているものとしても良い。
【0011】
また、本発明の診療用インスツルメントにおいて、前記伸縮部が、軸方向に沿って小間隙を隔て配列された薄肉及び細幅且つ同径の複数の金属製環状部と、隣接する環状部同士を繋ぐ繋ぎ部とよりなり、前記繋ぎ部は、軸方向に隣接する部分の繋ぎ部と、周方向に互いに所定の位相差を以って位置するように形成されているのとしても良い。
【0012】
さらに、本発明の診療用インスツルメントにおいて、前記第1部分が、回転切削工具を回転自在且つ着脱自在に保持する先端ヘッド部と、該先端ヘッド部に連なり手指によって把持される把持部とを備えたハンドピースであり、前記第2部分が、前記ハンドピースの基部に着脱自在に接続され、前記回転切削工具の動力源としてのモータを内蔵するモータユニットであっても良い。また、前記作用媒体が、気体及び/又は光であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、筒状体の第1部分及び第2部分が、軸方向に沿った抜差しによって着脱自在に接続されて診療用インスツルメントが構成される。前記第1部分及び第2部分が接続されたとき、両者間を通過する作用媒体の当該接続部分から外部への漏洩が、封止部材によって阻止される。このとき、封止部材を構成する伸縮部が軸方向に弾性圧縮され、封止部材を構成するスライド可能な遮蔽部が伸縮部の圧縮反力を受けて前記漏洩を阻止する位置に維持される。従って、第1部分及び第2部分の接続操作だけで、前記作用媒体の外部漏洩阻止状態が簡易に達成される。しかも、封止部材は、前記第1部分及び第2部分のいずれか一方の外装部材の接続端部内側に備えられるから、接続部分が嵩張ることがなく、ハンドリング性が悪くなる懸念がない。
【0014】
また、前記伸縮部及び遮蔽部が、伸縮部材及び遮蔽部材の互いに別個の部材からなり、両部材が前記軸方向に近接状態で並設されているものとすれば、遮蔽部材を簡易に作成することができる。特に、伸縮部材をばね鋼により作製することができるから、伸縮の繰り返しによる伸縮部材のへたり(圧縮永久歪)が生じ難く、製品の長寿命化に寄与する。
【0015】
さらに、前記伸縮部が、軸方向に沿って小間隙を隔て配列された同径の複数の金属製環状部と、隣接する環状部同士を繋ぐ繋ぎ部とよりなり、前記繋ぎ部は、軸方向に隣接する部分の繋ぎ部と、周方向に互いに所定の位相差を以って位置するように形成されているものとした場合、伸縮部を簡易に調製することができる。特に、金属製環状部が薄肉及び細幅とされるから、伸縮部を一方の外装部材の接続端部内側における限られたスペースに、遮蔽部と共にコンパクトに収めることができる。
【0016】
また、前記第1部分を、回転切削工具を回転自在に保持する先端ヘッド部と、手指によって把持される把持部とを備えたハンドピースとすれば、把持部を把持し、ヘッド部の回転切削工具を回転させることにより、例えば、歯牙の切削治療等を実施することができる。しかも、回転切削工具は、先端ヘッド部に着脱自在に保持されるから、診療態様に応じた交換やメンテナンスを簡易に実施することができる。また、前記第2部分を、前記ハンドピースの基部に着脱自在に接続され、前記回転切削工具の動力源としてのモータを内蔵するモータユニットとすれば、モータユニットを共通化し、種類の異なるハンドピースを選択装着して、多様な治療態様に適用させることができる。また、オートクレイブによるハンドピースのみの滅菌消毒も容易に行うことができる。さらに、前記作用媒体が、気体及び/又は光である場合、気体及び/又は光の漏洩による前記不快感等の不具合が生じる懸念がない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る診療用インスツルメントの一例としての歯科診療用インスツルメントの全体構成を示す断面図である。
【図2】同歯科診療用インスツルメントにおいて、ハンドピースに対してモータユニットを差込み装着させる過程を示す断面図である。
【図3】図1におけるX部の拡大図である。
【図4】図2におけるY部の拡大図である。
【図5】同歯科用インスツルメントにおいて、ハンドピースとモータユニットとを分離した状態の斜視図である。
【図6】同歯科診療用インスツルメントの接続部分の図3及び図4とは異なる破断位置における断面図である。
【図7】同歯科診療用インスツルメントに組み込まれる封止部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の診療用インスツルメントの一例としての歯科診療用インスツルメントについて図面に基づき説明する。本実施形態の歯科診療用インスツルメント10は、先端ヘッド部2と、該先端ヘッド部2に連接される細径のネック部3と、該ネック部3に連接され手指によって把持される把持部4とを備えたハンドピース(第1部分及び第2部分の一方)1と、把持部4の基部に、軸方向に沿って抜差しによって着脱自在に接続されるモータユニット(第1部分及び第2部分の他方)6とによって構成される。モータユニット6は、前記先端ヘッド部2に着脱自在に装着される切削回転工具5を回転駆動させるためのマイクロモータ7を内蔵する。このモータユニット6には、該モータユニット6に内蔵されるマイクロモータ7への電源供給用リード線、チップエア用の給水管路及び圧縮空気供給管路、後記する患部照射用光源の電力供給用リード線、冷却空気の供給管路を内装するホース8が連結されている。
【0019】
ハンドピース1の把持部4は、前半部が合成樹脂の成型体からなる筒状の把持部外装カバー(外装部材)40を有している。ハンドピース1は、把持部4の先側にネック部3を介して合成樹脂の成型体からなるヘッドハウジング2aが連なって、コントラアングル形に形成されている。把持部4内には、把持部4の基部にモータユニット6が接続されたときに、マイクロモータ7の出力軸71にカップリング部9aを介して連結される第1駆動伝達軸9が軸回転可能に内装されている。第1駆動伝達軸9の先端のネック部3に至る部分には、屈折部分のギヤ機構11aを介して第2駆動伝達軸11が軸回転可能に連設されさらに、第2駆動伝達軸11の先端部にはベベルギヤ11bが固設されている。ヘッド部2のヘッドハウジング2aには、前記切削回転工具5を前記第2駆動伝達軸11の軸心に直交する軸心回りに回転自在且つ着脱自在に保持する工具保持機構部2bが内装されている。前記ベベルギヤ11bは該工具保持機構部2bを構成するロータ2cのギヤに噛合っている。
【0020】
前記把持部4には、モータユニット6に設けられた後記する光源(例えば、LED)12からの光を導光し、ネック部3において、前記切削回転工具5の先端部に向けて照射するよう構成された導光体13が内装されている。また、把持部4には、図示を省略するが、チップエア用の水管路及び圧縮空気管路が内装され、ネック部3において水と圧縮空気を合流させて、切削回転工具5の先端部に向けてチップエアとして噴出させるようになされている。
【0021】
モータユニット6は、軸方向に沿ってスライド可能な筒状のモータ部外装カバー(外装部材)60を有している。該モータユニット6には、前記マイクロモータ7及び前記光源12が内蔵されると共に、マイクロモータ7用のリード線(不図示)及び光源12用のリード線12a、制御基板12bが内装されている。マイクロモータ7は、モータ部外装カバー60と同心的に設置され、光源12は、モータ7より遠心側で、ハンドピース1との接続端部6Aに発光部が露出するよう、モータ部外装カバー60の内側に設けられる。また、モータユニット6には、ハンドピース1に接続されたとき、ハンドピース1内の前記チップエア用水管路及び圧縮空気管路にそれぞれ連結される連通管路(図での符号の図示省略)が配設されている。モータユニット6の基部には、前記ホース8が連結ソケット80を介して着脱自在に連結される。該ホース8が連結されると、ホース8に内装される前記各供給管路がモータユニット6内の前記連通管路と水密的及び気密的に連結されると共に、前記各電力供給用リード線がモータ7用のリード線(不図示)及び光源12用のリード線12aに電気的導通状態に連結される。また、ホース8には、冷却空気の供給管路81が内装されており、該ホース8が連結されると、この供給管路81からの冷却空気は、モータユニット6内においてマイクロモータ7及び光源12の周辺の空間部分を流通し、ハンドピース1が接続された場合には、接続部を通過してハンドピース1内の前記各駆動伝達機構及び導光体13の周辺空間部にも及ぶように構成される。このような冷却空気の流通によって、モータユニット6内のマイクロモータ7及び光源12、ハンドピース1内の前記各駆動伝達機構及び導光体13の発熱が抑えられる。
【0022】
次に、ハンドピース1とモータユニット6との接続部の構造について詳細に説明する。モータユニット6の接続端部6Aには、前記モータ出力軸71を同心に内装する差込円筒部61が突設されている。該差込円筒部61は、前記第1駆動伝達軸9及びカップリング部9aを同心に内装し、ハンドピース1の接続端部1Aに開口するようハンドピース1の基部側に形成された断面円形の中空部41に相互軸回転可能に嵌挿される。この嵌挿によって、モータ出力軸71が、カップリング部9aを介して第1駆動伝達軸に9に連結され、これによって、マイクロモータ7から回転切削工具5に至る回転駆動伝達系が確立される。前記差込円筒部61の周体には、前記連通管路の下流側出口(図での符号の図示省略)が設けられ、該出口は、差込円筒部61が前記中空部41に嵌挿されたときには、該中空部41の内周部に形成された周溝41a,41bに整合するように形成されている。この周溝41a,41bは、ハンドピース1内に配設される前記チップエア用水管路及び圧縮空気管路にそれぞれ連通する。そして、差込円筒部61における、前記各周溝41a,41bを軸方向に挟む位置にOリング61a…が装着され、前記連通管路から各周溝41a,41bに連通する部分の気密性及び水密性が図られている。これによって、ネック部3における前記不図示のチップエア噴出口に至るチップエア用作用媒体の管路系が確立される。このような管路系の確立手法は、この種のハンドピースにおいて汎用化されている手法である。
【0023】
前記ハンドピース1における把持部4の接続端部1A側には、圧縮ばね43によってモータケース6側に付勢された位置決用ピン部材42が、ハンドピース1の軸方向に沿って変位可能且つ抜出不能で、先側部が接続端部1Aより突出するよう設けられている。一方、モータユニット6の接続端部6Aには、前記ピン部材42の先側部を受容する凹部62が形成されている。前記差込円筒部61は、前記中空部41に相互軸回転可能に嵌挿されるが、両者を相互軸回転させながらの嵌挿を伴う接続過程で、その相互の周方向位置において、ピン部材42と凹部62とが整合すると、前記圧縮ばね43の付勢力を受けてピン部材42が凹部62に嵌り込み、前記相互軸回転が不能とされる。即ち、ピン部材42が凹部62に嵌り込むことによって、ハンドピース1とモータユニット6とが、相互の所定の位置に位置決めされた接続状態とされる。この相互の所定の位置に位置決めされた接続状態では、前記光源12の発光面が、前記ハンドピース1の接続端部1Aに露出する前記導光体13の受光端13aに整合する。これによって、光源12からの光が導光体13を経てネック部3から回転切削工具5の先端部に向けての照射が可能とされる。ピン部材42の先側部の一面は傾斜面とされ、これによって、前記凹部62に対する嵌り込みが円滑になされる。このようなハンドピース1と、モータユニット6との接続状態は、後記するロック・アンロック手段によって維持される。
【0024】
次に、前記ロック・アンロック手段について説明する。図6は、図3及び図4とは異なる破断位置における接続部の断面図である。図3、図4は、ヘッド部2に装着される回転切削工具5の軸心に沿った面を破断面とする断面図であるが、図6はこれと略90°異なる破断位置での断面図を示している。図6において、モータユニット6には、接続端部6Aから軸方向に沿ったアーム部14b、14bを介して突出する掛止フック部14a,14aを有する1対のロック部材14,14が、軸対象、且つ、圧縮ばね15によって遠心方向に付勢された状態で内装されている。また、モータユニット6のモータ部外装カバー60は、不図示の圧縮ばねによって、矢印a方向(ハンドピース1側)に付勢されており、この付勢力に抗して反a方向に操作することにより反a方向にスライド移動が可能とされている。外装カバー60の内側内面であって、前記ロック部材14,14に対応する位置には、先側(ハンドピース1側)に傾斜したカム面63aを有する凹所63が形成されている。ロック部材14,14は、頭部がカムフォロア面となる傾斜面14c、14cを有する山形に形成され、常時は頭部の傾斜面14c、14cがカム面63aに接した状態で凹所63内に収まっている。前記外装カバー60を、外装カバー60を付勢する前記不図示の圧縮ばねの付勢力に抗して反a方向に操作すると、カム面63aが、前記頭部の傾斜面14c、14cに作用して、ロック部材14,14が前記圧縮ばね15,15の付勢力に抗して求心方向に変位する。これに伴い、掛止フック部14a,14aも求心方向に変位する。
【0025】
前記把持部4の把持部外装カバー40の接続端部1A側内には、接続端部1Aに露出する環状基体45が固設され、該環状基体45の内周部には、被掛止突起45a及びそのヘッド部2側に隣接するフック受容部45bが形成されている。ハンドピース1とモータユニット6との接続状態では、前記掛止フック部14a,14aが、フック受容部45bに受容されると共に被掛止突起45aに掛止され、これによって、ハンドピース1とモータユニット6とが分離不能にロックされた接続状態に維持される。そして、前記のようにモータユニット6側のモータ部外装カバー60を反a方向に操作することによって、掛止フック部14a,14aを求心方向に変位させると、掛止フック部14a,14aの被掛止突起45aに対する掛止を解除させることができる。これによって、ハンドピース1とモータユニット6との相互の分離が可能とされる。モータユニット6の前記差込円筒部61をハンドピース1の中空部41に強く差込むようにして嵌挿すると、嵌挿過程で、掛止フック部14a,14aが被掛止突起45aの作用を受けて、前記圧縮ばね15,15の付勢力に抗して求心方向に変位する。掛止フック部14a,14aが被掛止突起45aを超えると、圧縮ばね15,15の付勢力によって、掛止フック部14a,14aが遠心方向に変位し、フック受容部45bに受容されて被掛止突起45aに対して掛止された状態となる。これによって、ハンドピース1とモータユニット6とが接続される。この接続状態は、前記のように、ピン部材42が凹部62に嵌まり込むことによって、ハンドピース1とモータユニット6との周方向の相互の位置決めがなされた上で確立される。
【0026】
前記ロック・アンロック手段を構成するロック部材14の掛止フック部14aは、フック受容部45bに受容され被掛止突起45aに確実に掛止される必要がある。一方、ハンドピース1とモータユニット6との接続の際、両者の接続端部1A,6Aは突合せ状態とされる。掛止フック部14aが前記フック受容部45bに受容される前に、接続端部1A,6A同士が当接してしまうと、前記掛止によるロック状態が達成されなくなる。そこで、掛止フック部14aを余裕をもって被掛止突起45aに掛止し得るよう、接続状態における接続端部1A,6A間に、両者の加工公差も考慮して、小さい隙間b(図3参照)を形成している。そして、この隙間bを封止する封止部材16を、モータユニット6のモーター部外装カバー60に設けている。以下、この封止部材16について説明する。
【0027】
封止部材16は、伸縮部と遮蔽部とよりなり、本実施形態では、当該伸縮部と遮蔽部が伸縮部材17及び遮蔽部材18の互いに別個の部材からなる例が示されているが、これらは一体のものであっても良い。伸縮部材17は、ばね鋼による円環状部材からなり、軸方向に沿って小間隙を隔て配列された薄肉及び細幅且つ同径の3個の環状部17aと、隣接する環状部17a同士を繋ぐ繋ぎ部17bとより構成される。前記繋ぎ部17bは、隣接する環状部17a間では、周方向で180°の間隔で2個設けられ、軸方向に隣接する部分の繋ぎ部17bと、周方向に互いに90°の位相差を以って位置するように形成されている。即ち、第1列の環状部17a及び第2列の環状部17a間の繋ぎ部17bと、第2列の環状部17a及び第3列の環状部17a間の繋ぎ部17bとは、周方向に90°の位相差を以って形成されている。このような伸縮部材17の作製は、円環状部材を図7に示すように所定位置を刳抜くことによってなされる。該伸縮部材17は、この刳抜部17cの存在と繋ぎ部17bの位置関係とにより、ばね鋼からなることとも相俟って、軸方向に弾性的に伸縮する機能を保有することになる。
【0028】
遮蔽部材18は、前記伸縮部材17と略同径の薄肉鋼板(例えば、ステンレス鋼等)製円環状部材からなり、その軸方向片側に周方向に90°のピッチで4個の押当片18a…が、切欠部17b…を介して形成されている。各押当片18aは、その両側の切欠部17b,17bによって舌片状に形成され、これによってその自由端側が径方向に撓み性を保有する。舌片状の各押当片18aの自由端部には遠心方向に突出する爪部18cが形成されている。前記伸縮部材17と遮蔽部材18とは、押当片18aが伸縮部材17に当接する状態で、且つ、遮蔽部材18がハンドピース1側に位置するよう、前記モータ部外装カバー60における接続端部6A側の内側部分に組付けられる。前記把持部外装カバー40における接続端部1A側の部分には、押当リング部材44が螺合によって固定されている。そして、この押当リング部材44は、接続端部1Aに露出する部分であって、ハンドピース1とモータユニット6との接続の際に前記遮蔽部材18のハンドピース1側の端部18dと対向する位置に、環状の押当面44aを有している。
【0029】
モータ部外装カバー60の前記内側部分には、伸縮部材17及び遮蔽部材18を収容するよう段差状に形成された環状の凹部64を有している。この収容状態において、伸縮部材17は、当該凹部64を構成するホース8側に位置する段壁部分64aに接するよう配置され、遮蔽部材18は、伸縮部材17とは反対側の端部18d及びその近傍部分がモータ部外装カバー60よりハンドピース1側に突出するように配置される。また、前記凹部64の底面には、前記爪部18cが係止し得る小段部64bが形成され、該爪部18cが小段部64bに係止することにより、遮蔽部材18のモータ部外装カバー60からの抜出が阻止される。従って、遮蔽部材18は、伸縮部材17の最大収縮位置とこの小段部64bの形成位置との間で軸方向に沿ってスライド可能とされる。遮蔽部材18は、前記押当片18a…を求心方向に撓ませるようにして、モータ部外装カバー60に対し接続端部6A側から、爪部18cが小段部64bと伸縮部材17との間に至るように挿入される。このように挿入した後、押当片18a…の復元により、前記モータ部外装カバー60からの抜出が阻止されると共に、スライド可能な状態で前記凹部64に保持される。
【0030】
ハンドピース1とモータユニット6とは、前記のように接続されるが、この接続の過程で、モータユニット6に備えられた遮蔽部材18の端部18dに、前記押当リング部材44の押当面44aが当接する。そして、前記ロック・アンロック手段を構成する掛止フック部14aが前記被掛止突起45aに掛止される過程では、押当面44aが端部18dに押当され、この押当力は遮蔽部材18を介して伸縮部材17に作用する。伸縮部材17は、軸方向に沿って伸縮可能とされているから、この押当作用を受けて弾性的に圧縮される。掛止フック部14aが受容部45bに受容され、前記被掛止突起45aに掛止されることによって、ハンドピース1とモータユニット6との接続が完了したときには、封止部材16が、前記凹部64の段壁部分64aと押当面44aとの間に伸縮部材17の圧縮反力を伴った状態で弾装される。従って、この接続状態では、遮蔽部材18が伸縮部材17の弾性的圧縮反力によって常時押当リング部材44側に付勢され、端部18dが押当面44aに弾接した状態に維持される。これによって、前記隙間bが封止され、モータユニット6と、ハンドピース1との接続部を通過する冷却空気或いは光源12からの光の、この隙間bから径方向外部への漏洩が阻止される。
【0031】
このように封止部材16は、コンパクトに構成されるから、前記隙間bを塞ぐためにOリング等を用いる場合のような困難性はなく、また、この部分が嵩高くなってハンドリング性が悪くなるようなこともない。さらに、接続端部の一方にゴムを焼付け塗装し、接続時に両接続端部間にこのゴムを介在させる場合のような大変煩わしい事前調製も不要とされる。そして、ハンドピース1は、前記ロック・アンロック手段の簡単な操作でモータユニット6から分離することができるから、オートクレーブでの滅菌消毒も容易に行うことができる。
【0032】
尚、前記実施形態では、封止部材16を、モータユニット6側に設けた例を示したが、ハンドピース1側に設けても良い。この場合、伸縮部材17と遮蔽部材18の位置関係が逆となり、凹部64に相当するものがハンドピース1側に設けられ、押当リング部材44に相当するものがモータユニット6側に設けられることになる。また、封止部材16によって漏洩が阻止される作用媒体が冷却空気及び光源12からの光である例について述べたが、これらのいずれか一方であっても良く、或いはその他の作用媒体であっても良い。さらに、歯科診療用インスツルメントを例に採ったが、接続部の外装カバー間に不可避的に隙間が生じ、この隙間からの作用媒体の漏洩を阻止する必要があるような接続部を備えた他の診療用インスツルメントにも本発明を適用し得ることは言うまでもない。加えて、モータユニット6に内蔵されるモータ7を電動式のマイクロモータとしたが、エア式モータであっても良い。また、回転切削工具5を備える診療用インスツルメントを例示したが、例えば、歯科用のスケーラであっても良く、この場合は、第2部分としてのモータユニット6に代え、エア式或いは電動式(超音波)による発振ユニットとすることができる。
【符号の説明】
【0033】
1 ハンドピース(第1部分)
1A 接続端部
6A 接続端部
10 歯科診療用インスツルメント
16 封止部材
17 伸縮部材(伸縮部)
17a 環状部
17b 繋ぎ部
18 遮蔽部材(遮蔽部)
2 ヘッド部
4 把持部
5 切削回転工具
6 モータユニット(第2部分)
7 マイクロモータ(モータ)
40 把持部外装カバー(外装部材)
60 モータ部外装カバー(外装部材)
b 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体の第1部分及び第2部分が、軸方向に沿った抜差しによって着脱自在に接続されてなる診療用インスツルメントにおいて、
前記第1部分及び第2部分が接続されたとき、両者間を通過する作用媒体の当該接続部分における両者間の軸方向の隙間から径方向外部への漏洩を阻止する封止部材を、前記第1部分及び第2部分のいずれか一方の外装部材の接続端部内側に備え、
前記封止部材は、前記軸方向に伸縮する環状の伸縮部と、該伸縮部の伸縮動作に連動して前記軸方向にスライドする環状の遮蔽部とよりなり、
前記第1部分及び第2部分が接続されたとき、前記伸縮部が軸方向に弾性圧縮され、前記遮蔽部が伸縮部の圧縮反力を受けて前記漏洩を阻止する位置に維持されるよう構成されていることを特徴とする診療用インスツルメント。
【請求項2】
請求項1に記載の診療用インスツルメントにおいて、
前記伸縮部及び遮蔽部が、伸縮部材及び遮蔽部材の互いに別個の部材からなり、両部材が前記軸方向に近接状態で並設されていることを特徴とする診療用インスツルメント。
【請求項3】
請求項1または2に記載の診療用インスツルメントにおいて、
前記伸縮部が、軸方向に沿って小間隙を隔て配列された薄肉及び細幅且つ同径の複数の金属製環状部と、隣接する環状部同士を繋ぐ繋ぎ部とよりなり、
前記繋ぎ部は、軸方向に隣接する部分の繋ぎ部と、周方向に互いに所定の位相差を以って位置するように形成されていることを特徴とする診療用インスツルメント。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の診療用インスツルメントにおいて、
前記第1部分が、回転切削工具を回転自在且つ着脱自在に保持する先端ヘッド部と、該先端ヘッド部に連なり手指によって把持される把持部とを備えたハンドピースであり、
前記第2部分が、前記ハンドピースの基部に着脱自在に接続され、前記回転切削工具の動力源としてのモータを内蔵するモータユニットであることを特徴とする診療用インスツルメント。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の診療用インスツルメントにおいて、
前記作用媒体が、気体及び/又は光であることを特徴とする診療用インスツルメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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