説明

試料カラムからの充填物取出し装置

【課題】細管状の分析用試料カラムから活性炭などの充填物を円滑に且つより確実に取り出すことが出来、充填物を分析装置へ供給する場合などに好適な試料カラムからの充填物取出し装置を提供する。
【解決手段】充填物取出し装置は、所定位置にある試料カラム(9)に対して同心状に且つ接近離間可能に配置された取出し装置本体(4)と、当該取出し装置本体の先端に進退自在に取り付けられ且つ試料カラム(9)側に向けて付勢されたカラム位置決めハブ(5)と、取出し装置本体(4)及びカラム位置決めハブ(5)の略中心線に沿ってこれらに挿通され且つカラム位置決めハブ(5)の後退により相対的に突出する押出ピン(6)とを備えている。そして、押出ピン(6)が突出した際に当該押出ピンを振動させる振動発生手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料カラムからの充填物取出し装置に関するものであり、詳しくは、細管状の分析用試料カラムに充填された活性炭などの充填物を取り出して分析装置に供給する充填物取出し装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、河川水、湖沼水などの環境水や各種の工場排水に含まれる全有機ハロゲンの分析においては、全有機ハロゲン吸着装置を使用し、活性炭が充填された細管状の試料カラムに液体試料を流通させて当該液体試料中の全有機ハロゲン化合物を活性炭に吸着させた後、有機ハロゲン分析装置を使用して分析する。分析においては、試料カラム内の活性炭を分析装置の反応管に収容し、当該反応管を加熱して試料中の全有機ハロゲン化合物をハロゲン化水素に変換し、そして、電量滴定法により全有機ハロゲン濃度を測定する。
【0003】
【非特許文献1】株式会社ダイヤインスツルメンツ、“塩素の測定方法”、[online]、[平成18年10月27日検索]、インターネット〈http://www.dins.co.jp/dins_j/3seihin/genri/gts300cl.htm〉,〈http://www.dins.co.jp/dins_j/3seihin/kklabop/aqf100option.htm#asc120s〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の様な分析では、分析作業を効率的に行うため、分析装置として、縦型構造の反応管が備えられた分析装置を使用すると共に、試料カラムからの活性炭の取出し及び分析装置の反応管への活性炭の挿入においては、ターンテーブルにより複数の試料カラムを反応管の試料投入口へ逐次供給し、押出ピンの上下動により各試料カラムから活性炭を反応管へ順次に押し出すいわゆるオートサンプルチェンジャー(試料自動供給装置)の利用が望まれる。
【0005】
しかしながら、上記の試料カラムは、通常、内径が3mm程度の石英ガラス製の細管であり、しかも、活性炭の前後をアルミナ繊維などで封止されているため、水などの試料を吸着させた場合、カラム内壁に活性炭やアルミナ繊維が水分によって強固に付着した状態となる。そのため、上記の様なオートサンプルチェンジャーを使用した場合には、アルミナ繊維および活性炭が押出ピン先端に絡むことがあり、その結果、押出ピンを上下動させても、試料カラムから分析装置の反応管へ円滑に排出できないと言う問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、分析用の試料カラムに充填された活性炭などの充填物を取り出して分析装置へ供給する場合などに好適な試料カラムからの充填物取出し装置であって、分析用試料カラムから円滑に且つより確実に充填物を取り出すことが出来る充填物取出し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る試料カラムからの充填物取出し装置は、細管状の試料カラムに充填された充填物を取り出すための充填物取出し装置であって、試料カラム保持機構により所定位置に保持される試料カラムに対して同心状に且つ接近離間可能に配置された筒状の取出し装置本体と、当該取出し装置本体の試料カラム側の先端に進退自在に取り付けられ且つ試料カラム側に向けて付勢されたカラム位置決めハブと、前記取出し装置本体および前記カラム位置決めハブの中心線に略沿ってこれらに挿通され且つ前記カラム位置決めハブの後退により当該カラム位置決めハブの先端側に相対的に突出する押出ピンとを備え、かつ、前記押出ピンが突出した際に当該押出ピンを振動させる振動発生手段を備えていることを特徴とする。
【0008】
すなわち、上記の充填物取出し装置においては、所定位置に保持された細管状の試料カラムに対して取出し装置本体を接近させ、取出し装置本体先端側のカラム位置決めハブを試料カラムの先端に押し付けて試料カラムの正確な位置決めを行うと共に、試料カラムへの押し付けによりカラム位置決めハブを相対的に後退さることにより、取出し装置本体およびカラム位置決めハブの内部に挿通された押出ピンを試料カラム内部へ挿入して充填物を押し出す。そして、充填物を押し出す際、押出ピンを振動させながら充填物に接触させ、充填物に振動を与えることにより、試料カラム内壁への充填物の付着力を低減し、かつ、押出ピンへの充填物の絡み付きを防止する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の充填物取出し装置によれば、押出ピンによって試料カラム内の充填物を押し出す際、押出ピンを振動させて充填物に振動を与えつつ押し出すため、試料カラム内壁への充填物の付着力を低減でき、かつ、押出ピンへの充填物の絡み付きを防止でき、その結果、試料カラムから円滑に且つより確実に充填物を取り出すことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る試料カラムからの充填物取出し装置の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る充填物取出し装置の主要部の構造を示す縦断面図であり、図2は、本発明に係る充填物取出し装置を作動させた際の図1の主要部の構造を示す縦断面図である。また、図3は、本発明に係る充填物取出し装置の全体構造を示す側面図である。
【0011】
本発明の充填物取出し装置は、図3に示す様に、細管状の試料カラム(9)に充填された充填物を取り出し、これを例えば分析装置に供給すために使用される。分析装置としては、上端に試料投入口(82)(図3参照)が設けられた縦型構造の反応管を備え、水に含まれる全有機ハロゲン化合物の濃度測定を行う有機ハロゲン分析装置などが挙げられる。全有機ハロゲンの分析などに使用される試料カラム(9)は、外径13mm、内径3mm、長さ50mm程度の石英ガラスで作製された細管であり、内部に活性炭を充填し且つ細管の両端側をアルミナ繊維で封止して構成される。
【0012】
上記の全有機ハロゲン分析においては、活性炭が充填された試料カラム(9)に液体試料を流通させて当該液体試料中の全有機ハロゲン化合物を活性炭に吸着させた後、試料カラム(9)内の充填物である活性炭およびアルミナ繊維を分析装置の反応管(図示省略)に収容し、当該反応管を加熱して試料中の全有機ハロゲン化合物をハロゲン化水素に変換して電量滴定法により全有機ハロゲン濃度を測定する。斯かる分析においては、試料カラム保持機構としてのターンテーブル(81)(一部のみ図示)により複数の試料カラム(9)が分析装置の反応管の試料投入口(82)の直近へ順次供給される(図3においては1個の試料カラムを図示)。本発明の充填物取出し装置は、試料カラム(9)からの充填物(活性炭およびアルミナ繊維)の取出し及び反応管の試料投入口(82)への挿入に適用される。
【0013】
なお、ターンテーブル(81)は、円盤状の支持テーブルの上方に円環状の2枚のガイドテーブルを一定間隔、例えば試料カラム(9)の高さの略1/4〜1/3に相当する間隔で同軸状に積み重ねた構造を備えている。支持テーブルの外周部には、試料カラム(9)の外径よりも小径で且つ試料カラム(9)の内径よりも大径の試料落下穴が一定ピッチで多数設けられ、各ガイドテーブルには、試料カラム(9)が緩く嵌合するカラム保持穴が前記の試料落下穴と重畳する位置に設けられている。そして、ターンテーブル(81)は、上記の各試料落下穴が試料投入口(82)の直上へ順次に位置する様に、充填物取出し装置に同期して一定角度で漸次回転可能に構成されている。
【0014】
本発明の充填物取出し装置は、図3に示す様に、試料カラム保持機構であるターンテーブル(81)により所定位置、すなわち、上記の様な分析装置に適用する場合は試料投入口(82)に近接した位置に保持される試料カラム(9)に対して同心状に且つ接近離間可能に配置された筒状の取出し装置本体(4)と、取出し装置本体(4)の試料カラム(9)側の先端に進退自在に取り付けられ且つ試料カラム(9)側に向けて付勢されたカラム位置決めハブ(5)と、取出し装置本体(4)及びカラム位置決めハブ(5)の中心線に略沿ってこれらに挿通され且つカラム位置決めハブ(5)の後退により当該カラム位置決めハブの先端側に相対的に突出する押出ピン(6)とを備えている。
【0015】
本発明の充填物取出し装置は、分析装置の反応管が例えば鉛直に配置されている場合、ターンテーブル(81)と同様に分析装置のケーシング上部に設置される。そして、取出し装置本体(4)は、ターンテーブル(81)によって垂直に保持された試料カラム(9)に対し、昇降することにより前記の試料カラム(9)に接近離間する様になされている。取出し装置本体(4)を昇降させる昇降機構としては、図3に示す様なベルト駆動のものが挙げられる。
【0016】
具体的には、上記の昇降機構は、分析装置のケーシング上部に取り付けられ且つターンテーブル(81)よりも幾分高く設計された架台(10)を利用して構成されている。架台(10)の上面には、略鉛直に立設されたモーター取付板(12)を介してDCサーボモーター等のモーター(20)が配置され、水平に突出するモーター(20)の回転軸には、プーリー(21)が取り付けられている。また、プーリー(21)と反対側のモーター(20)の後方には、上端に張出板を有する支持板(11)が立設され、前記の張出板の下面側には、プーリー取付板(13)を介してプーリー(23)が前記のプーリー(21)に対応して取り付けられている。そして、プーリー(21)とプーリー(23)には、タイミングベルト(22)が巻回され、斯かるタイミングベルト(22)は、モーター(20)の正逆回転により、上下方向に往復動する様になされている。
【0017】
更に、タイミングベルト(22)の側方の架台(10)の上面には、当該架台から前記の支持板(11)の張出板に向けてガイド棒(30)が垂直に立設され、斯かるガイド棒(30)には、縦断面形状が略コ字状の昇降板(31)がその上下の2辺部に付設されたベアリングを介して摺動自在に取り付けられている。また、昇降板(31)のタイミングベルト(22)と反対側の側面には、当該側面に屏風状に直交して張り出された板状のベース取付金物(33)を介し、平板状の取出し装置本体取付ベース(34)が垂直な状態で取り付けられている。他方、昇降板(31)の上記のタイミングベルト(22)側の側面には、当該側面に屏風状に直交して板状のベルト掛止金具(32)が張り出され、斯かるベルト掛止金具(32)の先端部は、タイミングベルト(22)に固定されている。
【0018】
取出し装置本体取付ベース(34)は、前述の取出し装置本体(4)を鉛直に支持するための金物であり、取出し装置本体(4)は、取出し装置本体取付ベース(34)の上下端縁に係合する固定金物(35)、(35)により当該取出し装置本体取付ベースに装着されている。すなわち、取出し装置本体(4)は、モーター(20)の正転、逆転により、一定の範囲を垂直方向に昇降する様になされている。なお、図示しないが、タイミングベルト(22)の側方には、タイミングベルト(22)の移動端を検出してモーター(20)の回転を制御する位置検出用のセンサーが付設され、取出し装置本体(4)は、モーター(20)の制御により、前進端(下降端)及び後退端(上昇端)が規定される様になされている。
【0019】
取出し装置本体(4)は、図1に示す様に、例えば逆有底円筒状に形成され、上記の昇降機構の取出し装置本体取付ベース(34)に装着されることにより、試料投入口(82)の直上に鉛直に配置されている。取出し装置本体(4)の先端(下端)は、当該取出し装置本体の内径よりも幾分小径に絞られて開放されている。そして、取出し装置本体(4)の内部は、後述するばね(62)を収容し且つ当該ばねを下方へ付勢するため、上部に配置された仕切板(41)により2室に仕切られている。
【0020】
カラム位置決めハブ(5)は、内径部を小さくする絞り部(51)が下部に設けられた略円筒状に形成されている。カラム位置決めハブ(5)の後端部(上端部)を除く外径部は、取出し装置本体(4)の先端開口部(下端開口部)に収まる大きさの直径に設定され、カラム位置決めハブ(5)の後端部(上端部)は、取出し装置本体(4)の内径部に嵌合する大きさに拡径されている。すなわち、カラム位置決めハブ(5)は、取出し装置本体(4)に対し、その先端開口部から脱落することなく且つ先端開口部から出没する様に収容されている。なお、カラム位置決めハブ(5)の絞り部(51)は、押出ピン(6)が緩く嵌合する大きさに設定され、押出ピン(6)の遊動を規制する機能を有している。
【0021】
上記のカラム位置決めハブ(5)は、ターンテーブル(81)に保持された試料カラム(9)側に向けて付勢されている。すなわち、取出し装置本体(4)の内部には、圧縮コイルばねであるばね(62)が収容されており、斯かるばね(62)の後端(上端)は、取出し装置本体(4)の仕切板(41)に突き当てられ、ばね(62)の先端(下端)は、カラム位置決めハブ(5)内の絞り部(51)突き当てられている。これにより、カラム位置決めハブ(5)は、常時試料カラム(9)側へ付勢され、取出し装置本体(4)の先端から突出した状態に保持されている。
【0022】
押出ピン(6)は、取出し装置本体(4)及びカラム位置決めハブ(5)の中心線に略沿ってこれら及び上記のばね(62)に挿通されている。押出ピン(6)の後端部(上端部)は、取出し装置本体(4)内の仕切板(41)を貫通しており、押出ピン(6)は、取出し装置本体(4)内の後端側空間(上部空間)において付設された押出ピン支持カラー(61)により、先端側(下方)に落下しない様に構成されている。一方、押出ピン(6)の先端部(下端部)は、装置の待機状態において、カラム位置決めハブ(5)の絞り部(51)まで伸長されている。これにより、図2に示す様に、押出ピン(6)は、カラム位置決めハブ(5)が取出し装置本体(4)の内部に後退した場合にカラム位置決めハブ(5)の先端側に相対的に突出する様になされている。なお、押出ピン(6)の先端(下端)は、当該押出ピンを試料カラム(9)へ挿入する際、接触により試料カラム(9)先端を損傷することのない様に、面取加工が施されている。
【0023】
また、カラム位置決めハブ(5)は、例えばターンテーブル(81)で移送されてきた試料カラム(9)を処理する際、カラム位置決めハブ(5)に対してより正確に試料カラム(9)を同心状に位置させるための位置決め構造を備えている。具体的には、図1に示す様に、カラム位置決めハブ(5)の先端部(下端部)には、試料カラム(9)の先端(上端)に嵌合し且つ当該カラム位置決めハブの後端側(上端側)に向かうに従い直径が漸次小さくなる円錘台状のカラム嵌合穴(52)が設けられている。
【0024】
すなわち、カラム位置決めハブ(5)は、図2に示す様に、当該カラム位置決めハブの先端(下端)を試料カラム(9)に押し当てた際、カラム嵌合穴(52)への試料カラム(9)先端(上端)の相対的な進入により、当該カラム位置決めハブの中心線と同心状に試料カラム(9)を位置させる自動調芯機能を備えている。これにより、試料カラム(9)に損傷を与えることなく、より一層確実に押出ピン(6)を試料カラム(9)に挿入できる。
【0025】
本発明の充填物取出し装置は、試料カラム(9)から活性炭およびアルミナ繊維などの充填物を取り出す際、試料カラム(9)内壁への充填物の付着力を低減し、また、押出ピン(6)への充填物の絡み付きを防止するため、カラム位置決めハブ(5)から押出ピン(6)が突出した際に当該押出ピンを振動させる振動発生手段を備えている。本発明においては、押出ピン(6)を振動させることにより、試料カラム(9)から充填物を確実に取り出すことが出来る。
【0026】
上記の振動発生手段としては、各種の方式の小型バイブレーターを使用することが出来る。例えば、振動発生手段は、図1に示す様に、取出し装置本体(4)の後端部(上端部)に配置されたモーター(7)と、当該モーターの回転軸(70)に対して押出ピン(6)の後端(上端)を偏心した状態で結合する偏心継ぎ手(71)とから構成されている。モーター(7)としては、通常、回転数2000〜4000rpm程度のDCモーターが使用される。
【0027】
偏心継ぎ手(71)は、略円柱状のブロックによって構成されており、偏心継ぎ手(71)の後端面(上端面)の中心には、モーター(7)の回転軸(70)を挿入する回転軸挿入穴が設けられている。そして、偏心継ぎ手(71)は、上記の回転軸挿入穴に挿入されたモーター(7)の回転軸(70)に止めねじにより固定されている。また、偏心継ぎ手(71)の先端面(下端面)の中心からずれた位置には、押出ピン支持カラー(61)から上方に突出した押出ピン(6)の後端部(上端部)を挿入する押出ピン挿入穴が設けられている。そして、押出ピン(6)は、上記の押出ピン挿入穴に対して摺動自在に挿入されている。
【0028】
偏心継ぎ手(71)において、上記の回転軸挿入穴と押出ピン挿入穴とのずれ量は、0.4〜1.2mm程度に設定されている。換言すれば、押出ピン(6)は、モーター(7)の回転軸(70)に対して上記の量だけ偏心している。従って、押出ピン(6)は、その後端側(上端側)から平面視した場合、モーター(7)の回転に伴って半径0.4〜1.2mm程度の円周を描く状態に高速で微小旋回する。
【0029】
一方、図2に示す様に、カラム位置決めハブ(5)を後退させて押出ピン(6)を突出させた状態においては、カラム位置決めハブ(5)の絞り部(51)によって押出ピン(6)の略中央部の振れが制限される様に構成されている。これにより、モーター(7)を作動させた場合、押出ピン(6)の先端(下端)は、絞り部(51)を中心に押出ピン(6)の後端(上端)と略対称的に高速で微小旋回し、その結果、振動した状態となる。なお、モーター(7)は、前述したタイミングベルト(22)の移動端を検出する位置検出用のセンサーにより、取出し装置本体(4)が前進(下降)し始めた際に回転を開始し、取出し装置本体(4)が前進端(下降端)に達した際に回転を停止する様になされている。
【0030】
本発明の充填物取出し装置は、試料カラム(9)からの充填物の取出し処理において次の様に作動する。例えば上記の全有機ハロゲンの分析において、試料カラム(9)は、図3に示す様に、ターンテーブル(81)の回転により、分析装置の反応管の試料投入口(82)の直上に移送される。試料カラム(9)が所定位置に保持されると、充填物取出し装置のモーター(20)が作動する。
【0031】
充填物取出し装置においては、モーター(20)の回転によりタイミングベルト(22)が走行すると、取出し装置本体取付ベース(34)に取り付けられた取出し装置本体(4)が前進(下降)する。これにより、上記の試料カラム(9)に取出し装置本体(4)を接近させ、その先端側のカラム位置決めハブ(5)を試料カラム(9)の先端(上端)に押し付ける。その際、カラム位置決めハブ(5)の先端部には、後端側に向かうに従い直径が漸次小さくなる嵌合穴(52)が設けられているため、カラム位置決めハブ(5)先端を試料カラム(9)に押し付けることにより、ターンテーブル(81)のカラム保持穴に緩く嵌合している試料カラム(9)をカラム位置決めハブ(5)に対して同心状に正確に位置決めすることが出来る。
【0032】
次いで、図2に示す様に、取出し装置本体(4)は、その先端(下端)がターンテーブル(81)の上面に近接する位置まで更に前進(下降)すると、モーター(20)の回転が停止しする。カラム位置決めハブ(5)先端の嵌合穴(52)に試料カラム(9)の先端(上端)が接触した位置から、取出し装置本体(4)の先端がターンテーブル(81)に近接する位置まで前進(下降)させた場合、カラム位置決めハブ(5)は、試料カラム(9)への押し付けにより相対的に取出し装置本体(4)内部へ後退する。そして、カラム位置決めハブ(5)の後退により、押出ピン(6)がカラム位置決めハブ(5)の先端から突出し、押出ピン(6)が試料カラム(9)内部へ進入して充填物(活性炭およびアルミナ繊維)を押し出す。
【0033】
本発明においては、上記の充填物を押し出す際、換言すれば、押出ピン(6)がカラム位置決めハブ(5)から突出して試料カラム(9)の内部に進入する際、振動発生手段としてのモーター(7)を回転させ、押出ピン(6)を振動させる。すなわち、取出し装置本体(4)に付設されたモーター(7)の回転軸(70)と押出ピン(6)とは偏心継ぎ手(71)を介して接続されているため、モーター(7)の回転により、押出ピン(6)の後端(上端)を高速で微小旋回させ、カラム位置決めハブ(5)の絞り部(51)を中心に、押出ピン(6)の先端(下端)を後端と略対称的に高速で微小旋回させ、押出ピン(6)の先端を振動させることが出来る。
【0034】
上記の様に、本発明の充填物取出し装置は、押出ピン(6)によって試料カラム(9)から充填物を押し出す際、押出ピン(6)を振動させながら充填物に接触させ、充填物に振動を与えつつ押し出す。本発明においては、押出ピン(6)によって充填物に振動を与えることにより、水分を吸収している充填物の試料カラム(9)内壁への付着力を低減でき、また、押出ピン(6)自体への充填物、特にアルミナ繊維の絡み付きを防止できる。従って、本発明の充填物取出し装置によれば、試料カラム(9)から円滑に且つより確実に充填物を取り出し、これを分析装置の反応管へ供給することが出来る。
【0035】
なお、本発明の充填物取出し装置は、分析装置へ試料カラム(9)から充填物を供給する場合に限らず、試料カラム(9)に光を直接照射して分析を行う分析システム等において、分析後に充填物を排出してカラムを回収する場合にも使用することが出来る。また、図示した例は、反応管が垂直に配置された分析装置への適用例であるが、本発明の充填物取出し装置は、水平または他の角度で保持された試料カラム(9)から充填物を取り出す場合も、取出し装置本体(4)を試料カラム(9)の中心線に沿わせて作動させることにより、簡単に適用できる。
【0036】
因に、活性炭およびアルミナ繊維が充填物として充填され且つ当該充填物に水を吸収させた試料カラム(9)を100本準備し、これらをターンテーブル(81)に逐次供給し、本発明の充填物取出し装置を使用して試料カラム(9)から充填物をターンテーブル(81)の下方へ落下させる試験を行った結果、100本全ての試料カラム(9)から円滑に充填物を取り出すことが出来た。これに対し、振動発生手段であるモーター(7)を駆動させることなく、押出ピン(6)の突出操作だけで試料カラム(9)からの充填物の取出しを行ったところ、100本のうち、8本の試料カラム(9)については、押出ピン(6)の先端が充填物に突き刺さった状態となったり、あるいは、充填物が押出ピン(6)の先端に絡み付いて出ピン(6)の復帰動作に伴って再び試料カラム(9)内に引き戻され、充填物を取り出すことが出来なかった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る充填物取出し装置の主要部の構造を示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る充填物取出し装置を作動させた際の図1の主要部の構造を示す縦断面図である。
【図3】本発明に係る充填物取出し装置の全体構造を示す側面図である。
【符号の説明】
【0038】
10:架台
11:支持板
20:モーター
21:プーリー
22:タイミングベルト
23:プーリー
30:ガイド棒
31:昇降板
34:取出し装置本体取付ベース
4 :取出し装置本体
5 :カラム位置決めハブ
51:絞り部
52:カラム嵌合穴
6 :押出ピン
62:ばね
7 :モーター(振動発生手段)
70:回転軸
71:偏心継ぎ手(振動発生手段)
81:ターンテーブル(試料カラム保持機構)
82:試料投入口
9 :試料カラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細管状の試料カラムに充填された充填物を取り出すための充填物取出し装置であって、試料カラム保持機構により所定位置に保持される試料カラムに対して同心状に且つ接近離間可能に配置された筒状の取出し装置本体と、当該取出し装置本体の試料カラム側の先端に進退自在に取り付けられ且つ試料カラム側に向けて付勢されたカラム位置決めハブと、前記取出し装置本体および前記カラム位置決めハブの中心線に略沿ってこれらに挿通され且つ前記カラム位置決めハブの後退により当該カラム位置決めハブの先端側に相対的に突出する押出ピンとを備え、かつ、前記押出ピンが突出した際に当該押出ピンを振動させる振動発生手段を備えていることを特徴とする試料カラムからの充填物取出し装置。
【請求項2】
振動発生手段は、取出し装置本体の後端部に配置されたモーターと、当該モーターの回転軸に対して押出ピンの後端を偏心した状態で結合する偏心継ぎ手とから構成されている請求項1に記載の充填物取出し装置。
【請求項3】
カラム位置決めハブの先端部には、当該カラム位置決めハブの後端側に向かうに従い直径が漸次小さくなるカラム嵌合穴が設けられている請求項1又は2の何れかに記載の充填物取出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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