説明

試料ホルダー及び荷電粒子線装置

【課題】本発明の目的は、蓋を容易に取付け取外すことができ、かつ、試料を空気にさらすことなく試料室内に導入することを可能にする試料ホルダーを提供する。
【解決手段】開口部を有し内部で試料39を保持する試料台37と、試料台37の開口部を閉塞する蓋36と、試料台37に設けられた蓋押さえ38と、蓋押さえ38に設けられた第一の突合せ部と、前記第一の突合せ部との嵌合により、試料台37に蓋36を押し付け、蓋36と試料台37で囲まれた空間を密閉する蓋36に設けられた第二の突合せ部と、備える試料ホルダー100を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子線装置における、特に電子顕微鏡のガス雰囲気で用いられる試料ホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
荷電粒子線装置、特に電子顕微鏡で観察する試料には空気と反応して変形、変質する試料がある。電子顕微鏡の利点は高分解能観察だが、電子顕微鏡の試料室内に試料を導入する前に試料が空気にさらされると変形し、試料本来の構造を観察ができなくなる。この対策として例えば、特許文献1に示すように、特許文献1に記載のような上下方向に取外し可能な蓋材を備えた試料ホルダーを使用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−67468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、蓋材を試料ホルダーから取外しにくいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、蓋を容易に取付け取外すことができ、かつ、試料を空気にさらすことなく試料室内に導入することを可能にする試料ホルダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば、開口部を有し内部で試料を保持する試料台と、該試料台の前記開口部を閉塞する蓋と、前記試料台に設けられた蓋押さえと、前記蓋押さえに設けられた第一の突合せ部と、前記第一の突合せ部との嵌合により、前記試料台に前記蓋を押し付け、前記蓋と前記試料台で囲まれた空間を密閉する前記蓋に設けられた第二の突合せ部と、備える試料ホルダーを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蓋を容易に取付け取外すことができ、かつ、試料を空気にさらすことなく試料室内に導入することを可能にする試料ホルダーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第一の実施形態として荷電粒子装置としての電子顕微鏡を示す概略図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る雰囲気を遮断可能に構成されている雰囲気遮断型の試料ホルダーの側面図である。
【図3】本発明の図3は、第一の実施形態に係る雰囲気遮断型の試料ホルダーの図2に示したA部の断面拡大図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る雰囲気遮断型の試料ホルダーの使用方法を説明する図である。
【図5】本発明の施例を示す説明図である。
【図6】本発明の第一の実施形態に係る試料ホルダーの変形例としての外観斜視図である。
【図7】本発明の第一の実施形態に係る試料の装着手順を示すフローチャート図である。
【図8】本発明の第二の実施形態に係る試料ホルダーの側面図である。
【図9】本発明の第二の実施形態に係る電子顕微鏡を示す図である。
【図10】本発明の第二の実施形態に係る試料ホルダーが試料室に在地されている際の試料室内と試料ホルダー内との気圧の状態を示している図である。
【図11】本発明の第二の実施形態に係る試料ホルダーを試料室導入および蓋の取外し手順を示すフローチャート図である。
【図12】本発明の第二の実施形態に係る観察後の蓋の試料台への取付け手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第一の実施形態>
以下、図面を参照し、本発明の第一の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明の第一の実施形態として、荷電粒子線を試料室内の試料ホルダーに収納された試料へ照射し試料の状態を観察可能に構成される荷電粒子装置としての電子顕微鏡500を示す概略図である。まず、荷電粒子線としての電子線を試料へ照射する照射部について説明する。陰極1と第一陽極2に印加される電圧V1によって陰極1から放出された一次電子線3は第二陽極4に印加される電圧Vaccにより加速されて、後段の電磁レンズ系に進行する。加速電圧Vaccおよび電圧V1は、高電圧制御回路としての高電圧制御部20で制御されている。一次電子線は第一集束レンズ制御回路としての第一集束レンズ制御部22で制御された第一集束レンズ5で集束される。ここで一次電子線3は対物レンズ絞り6で電子線の試料照射電流が制限されるが、電子線の中心を対物レンズ絞り6の孔中心へ通過させるために、電子線中心軸調整用アライナー28およびアライナー制御回路としてのアライナー制御部21と、対物レンズ絞り6上で電子線を走査するための電子線中心調整用偏向器29が設けられている。さらに、一次電子線3は第二集束レンズ制御回路としての第二集束レンズ制御部23で制御される第二集束レンズ7で再び集束され、対物レンズ制御回路としての対物レンズ制御部25によって制御される対物レンズ10によって試料39に細く絞られ、さらに偏向制御回路としての偏向制御部24が接続された上段偏向コイル8および下段偏向コイル9で試料ホルダー100に収納された試料39上を二次元的に走査される。試料39が収納された試料ホルダー100は試料微動制御回路としての試料微動制御部27によって制御される駆動装置としての試料微動装置14上にある。試料微動装置14は試料ホルダー100を保持する駆動部として機能する。試料ホルダー100及び試料微動装置14等は、試料室550に収納されている。
【0010】
次に検出系について説明する。一次電子線3が試料39に到達した後、試料39から出射される二次電子18を検出する二次電子検出器12が設けられている。二次電子検出器12からの信号を増幅器16により増幅し、該増幅した信号が信号制御回路としての信号制御部26に伝わるように構成されている。高電圧制御部20、アライナー制御部21、第一集束レンズ制御部22、第二集束レンズ制御部23、偏向制御部24、対物レンズ制御部25、信号制御部26、試料微動制御部27は、装置全体を制御するための全体制御部としてのコンピュータ129に電気的に接続されている。コンピュータ129は、画像を表示する画面等の表示装置30、画像を取得する画像取得手段31、画像を処理する画像処理手段32、所定の計算を行う計算手段33、内部メモリとしての記憶手段34、入力手段35に電気的に接続されている。なお、高電圧制御部20、アライナー制御部21、第一集束レンズ制御部22、第二集束レンズ制御部23、偏向制御部24、対物レンズ制御部25、信号制御部26、コンピュータ129、表示装置30、画像取得手段31、画像処理手段32、計算手段33、記憶手段34、入力手段35の全て、若しくは、少なくともそれらの一部を有するもの、または、電子顕微鏡全体を制御する制御部として一つで構成されても良い。
【0011】
図2は第一の実施形態に係る雰囲気を遮断可能に構成されている雰囲気遮断型の試料ホルダー100の側面図であり、図3は、第一の実施形態に係る雰囲気遮断型の試料ホルダーの図2に示したA部の断面拡大図である。また、図4は、第一の実施形態に係る雰囲気遮断型の試料ホルダー100の使用方法を説明する図である。
【0012】
図2に示すように雰囲気遮断型の試料ホルダー100は、開口部を有し内部で試料を保持する試料台37と、試料台37の開口部を閉塞する蓋36と、試料台37に設けられた蓋押さえ38で構成されている。試料台37の下方には、試料微動装置14に保持される試料台座部370が形成されている。なお、蓋押さえ38は、試料台37と一体として形成されていても良いし、別体として形成しボルト等にて接合されるように構成されても良い。
【0013】
図4を用いて雰囲気遮断型の試料ホルダー100の使用方法を説明する。蓋36は試料台37から矢印の方向にスライドして外れる構造になっている。また、蓋36は、矢印と反対の方向にスライドして試料台37に取付け可能な構造になっている。
【0014】
試料台37の上端面には、蓋36との密着面となるように構成されており、試料台37の上端面が真空シール面となるよう、図3に示すように、Oリング溝370および該Oリング溝370内に、Oリング371が設けられている。これにより、試料ホルダー100内外での雰囲気を遮断することができ試料ホルダー100内の真空状態を保持できるようになっている。なお、Oリング溝370及びOリング371を設けることに代えて、真空グリースを塗布するように構成しても同様の効果を奏することができる。
【0015】
図3は、第一の実施形態に係る雰囲気遮断型の試料ホルダーの図2に示したA部の断面拡大図である。図3を用いて蓋押さえ38に設けられた突合せ部と、蓋押さえ38に設けられた突合せ部との嵌合により、試料台37に蓋36を押し付け、蓋36と試料台37で囲まれた空間を密閉する蓋36に設けられた突合せ部について説明する。蓋36の突合せ部として、凸突合せ部366と蓋押さえ38の突合せ部として、凹突合せ部388として設定されている。蓋36の凸突合せ部366は試料台37に取付いている蓋押さえ38の凹突合せ部388と突合せ可能なように構成されている。
【0016】
蓋押さえ38の凹突合せ部388と蓋36の凸突合せ部366は嵌合可能なように構成されている。試料台37の開口部は平坦に形成されており、凸突合せ部366は、蓋36が試料台37の開口部をスライドし凹突合せ部388に嵌合可能に構成されている。また、凹突合せ部388と凸突合せ部366は共にテーパ状に形成されている。蓋押さえ38の凹突合せ部388と蓋36の凸突合せ部366は共に上面が同じ角度同じ方向にテーパ状に形成され、下面が水平状に形成されている。具体的には、凹突合せ部388は、溝状に形成されており、溝深側から溝浅側(図3では左側から右側)にかけて溝幅が大きくなるように形成されている。また、凹突合せ部366は、蓋36の一端側(図3では左側)の上方側の部位が突き出すように形成されており、上面が中央側から先端側(図3では右側から左側)にかけて幅が小さくなるように形成されている。図4に示すように蓋36を矢印と反対の方向にスライドし、蓋押さえ38の凹突合せ部388に蓋36の凸突合せ部366に挿入し、嵌合すると、蓋押さえ38に蓋36が押し付けられ、蓋36に試料台37に密着する方向に力が働く。これにより蓋36が試料台に固定される構造になっている。
【0017】
例えば、減圧した容器としてのグローブボックス内で試料39を作製し、試料39を試料台37に載せる。
【0018】
蓋36を試料台37に装着したあと、グローブボックスに空気を導入すると、蓋36は試料台37に気圧により押さえ付けられる。このとき図5の点線内部(試料ホルダー内部)減圧した状態となる。この状態では、蓋36は試料ホルダー100内部が減圧状態であることと蓋押さえ38により試料台37に押し付けられているため、蓋36は大気中で容易に外れなくなる。このとき、試料ホルダー100内部の真空度を保持するためには、蓋36と蓋押さえ38との突き合わせ状態が正確である必要がある。突き合わせ状態が不十分だと試料ホルダー100内に空気が導入されてしまうため、試料39が空気に暴露して劣化してしまう。また、例えば、特許文献1に記載のような上下方向に取外し可能な蓋材を備えた試料ホルダーでは、蓋材を取外しにくいという問題がある。
【0019】
しかしながら、本実施形態のように、蓋押さえ38の凹突合せ部388と蓋36の凸突合せ部366は嵌合可能なように構成されているので、たとえばグローブボックス内での作業でも再現性良くかつ正確に蓋36を取付けることができる。特に、蓋押さえ38の凹突合せ部388と蓋36の凸突合せ部366は共にテーパ状に形成されている。具体的には、上面が同じ角度同じ方向にテーパ状に形成され、下面が水平状に形成されているので、蓋36を容易にスライドさせることができるので蓋36の取付け取外し作業を容易にし、かつ、再現性良くかつ正確に蓋36を取付けることができる。
【0020】
また、本実施形態によれば、試料39をガス雰囲気と隔離し、試料室550に導入したあとに蓋36を取外すため試料39への空気の暴露を回避できる。
【0021】
また、例えば、試料39を空気に暴露することなく導入するための機構として雰囲気遮断型の試料交換室があるが、電子顕微鏡の試料交換室部分の改造が必要であるため、容易には試料交換室を雰囲気の遮断した仕様とすることができなく、また、このような改造をしていない電子顕微鏡では試料が空気と反応して変形、変質し、観察できなくなってしまうため、試料交換室に改造を施した特定の電子顕微鏡でしか観察することができなかったが、試料交換室がある場合にも、試料交換室を改造しなくても、試料を空気にさらすことなく試料室内に導入することを可能にすることができる。また、試料交換室の改造を必要としないため機械的制約が少なく、汎用性を向上させ、また、雰囲気遮断型の試料交換室と比べて非常に安価で構成することができる。
【0022】
図6は、本発明の第一の実施形態に係る試料ホルダー100の変形例としての外観斜視図である。
【0023】
先に述べた実施形態では、図3に示したように、蓋36の一端としての凸突合せ部366の上面全面をテーパ状に形成するように説明したが、本変形例では、図6に示すように、蓋36の一端としての凸突合せ部366の上面の一部のみをテーパ状に形成した試料ホルダー101である。なお、蓋36の一端としての凸突合せ部366の上面の一部のみをテーパ状に形成したことを除き、それ以外は、先に述べた実施形態と同様である。凸突合せ部366は、凹突合せ部388に対向する位置に溝状に形成されている。図6に示すように、凸突合せ部366の上面の蓋押さえ38の凹突合せ部388に対向する位置に溝367を形成し、溝367をテーパ状に形成し、凸突合せ部366の上面のそれ以外の部位を、テーパ状としないようにする。最も密着するように突合せるためにはテーパ形状に合わせて蓋36を試料台37に装着する必要があるため、図3で示した蓋36の凸突合せ部366に溝367を形成し、この溝367と蓋押さえ38とが合致するようにすると、さらに、溝367の側壁と蓋押さえ38の側壁とが当たることにより水平方向にずれることを抑制することになり、蓋36の位置決めを容易にすることができる。この構造により、たとえばグローブボックス内での作業でも再現性良くかつ正確に蓋36を取付けることができる。
【0024】
図7は、本発明の第一の実施形態に係る試料39の装着手順を示すフローチャート図である。これらの動作は制御部により制御されている。
【0025】
図7に示すように、まず、グローブボックス内を減圧した状態で試料を作成する(S1)。次に、試料台37に試料39を搭載する(S2)。次に、蓋36を試料台37に装着する(S3)。続いて、グローブボックスを大気圧にする(S4)。
【0026】
気圧差により蓋36が試料台37に密着し、試料が真空で隔離される(S5)。
【0027】
蓋36を試料台37から取外すためには蓋36をスライドさせる前に試料台内部の圧力より低い圧力の環境で取外す。例えば電子顕微鏡500の試料室550内などでは蓋36と試料台37で作られた空間よりも十分に減圧してあれば、蓋36をスライドさせて容易に取外すことができる。
【0028】
なお、上述したように、試料39をグローブボックス内で作製し、減圧して封じれば、試料ホルダー100は、簡易の試料保管容器としても使用することができる。
【0029】
<第二の実施形態>
図8は、本発明の第二の実施形態に係る試料ホルダー110の側面図である。図9は、本発明の第二の実施形態に係る電子顕微鏡550であり、第一の実施形態で示した電子顕微鏡500の試料室510に隣接して試料交換室510が設けられている。
【0030】
図8に示すように、第二の実施形態に係る試料ホルダー110と第一の実施形態にかかる試料ホルダー100と異なる点は、蓋365と試料台371にそれぞれ同一形状のフック40、400が取付けられている点と、であり、それ以外の点は同様である。図8に示すように、好適には、試料台37の試料台座部375に設けると良い。
【0031】
また、図9に示すように、本実施形態では、第一の実施形態で示した電子顕微鏡500の試料室550に隣接して試料交換室510が設けられ、試料室550内にある蓋365を試料台550から取付け取外し、かつ試料ホルダー110を試料室550内外へ移動する移動部としての試料交換棒520が設けられるように電子顕微鏡580が構成されている。
【0032】
図8、図9に示すように、試料台371のフック400は、電子顕微鏡580の試料交換室510から試料室550に試料交換棒520を用いて導入する際に用い、蓋365についたフック40は試料台371から蓋365を取外すために用いる。電子顕微鏡580内での蓋365の取外し手順を説明する前に、電子顕微鏡580の試料交換室510を用いた試料導入方法を説明する。電子顕微鏡580の試料室550内は電子を通過させるために真空状態が保たれているため、試料39を試料室550へ導入する際には、試料39を試料ホルダー110に収納、蓋365により閉塞した状態で、試料交換室510に入れる。その後試料交換室510を減圧排気し、試料交換室510と試料室550とを同圧化する。その後、試料交換室510と試料室550間の開口部を開閉するゲートバルブ590を開く。その後、試料交換棒520でフック400にて試料ホルダー110を保持し、試料ホルダー110を試料交換室510から試料室510へ移動させ、試料微動装置14に装着する。このように試料交換室520から試料室550への試料39(試料ホルダー110)の導入は試料交換棒520を用いて行う。図10は、試料ホルダー110が試料室550に在地されている際の試料室550内と試料ホルダー110内との気圧の状態を示している図である。試料室550内の気圧Pscは十分に低いので雰囲気遮断ホルダー内の気圧Piとの関係はPsc≦Pi(参照は図)とすることで、蓋36が容易に外れる状態とすることができる。
【0033】
次に試料交換棒520を用いた蓋365の取外し例を説明する。図11は、本実施形態に係り、試料ホルダー110を試料室550導入および蓋365の取外し手順を示すフローチャート図である。これらの動作は制御部により制御されている。
【0034】
まず、試料39を試料室550に導入するため、試料交換棒520は試料台375のフック40に取付ける(S11)。次に試料交換室510を減圧排気する(S12)。試料交換室510と試料室550間の開口部を開閉するゲートバルブ590を開く。そして、その後、試料交換棒520でフック400にて試料ホルダー110を保持し、試料ホルダー110を試料交換室510から試料室510へ移動させ、試料微動装置14に搭載する(S13)。試料微動装置14への試料ホルダー110の搭載が完了したら、フック400から試料交換棒520を外し、試料交換棒520を試料室550から引き抜く(S14)。このとき、試料室550内の気圧Pscは十分に低いので試料ホルダー110内の気圧Piとの関係はPsc≦Pi(参照は図)となっており、蓋36が容易に外れる状態になっている。その後、試料微動装置14を移動させ、試料交換棒520の位置と蓋365のフック40の高さ位置が一致するように試料微動装置14を移動させ、試料交換棒520にて蓋365をスライドさせて取外す(S15)。その後、試料微動装置14を所定の位置に移動させて、電子線を試料39に照射し、試料39から出射する二次電子を検出することで試料39を観察する(S16)。
【0035】
この手順により試料交換室510部分を改造することなく、雰囲気遮断した試料を電子顕微鏡580で観察することができる。さらに、第一の実施形態で示した試料作製方法を用いれば試料39の作製から試料室550導入まで大気に暴露することなく観察することができる。例えば、本実施形態では、電子顕微鏡580で観察した後に試料室550内で蓋365を試料台371に装着し、密閉して電子顕微鏡580外に取り出すことができる。観察後の蓋365の試料台371への取付け手順を図12のフローチャート図に示す。観察後、試料交換室510の試料交換棒520の位置に試料台371の蓋365の取付け位置が一致するように試料微動装置14を移動させる(S22)。観察時は図11で示したように、蓋365は試料交換棒520に取付いた状態である。試料交換棒520をスライドさせ蓋365を試料台371に取付ける(S23)。その後、試料交換棒520のみを引き抜き、試料台371側のフック400の位置に試料交換棒520の位置が一致するように試料微動装置14を移動させる(S24)。再度試料交換棒520を挿入し試料室550から試料交換室510側に蓋365が装着された試料台371を引き出す(S25)。蓋365と試料台371は減圧状態で閉じたので、試料交換室520に空気を導入すると、気圧により蓋365と試料台371が密閉される。その後、試料交換室520から試料ホルダー110を取外し保管する(S26)。この状態で試料39を空気にさらすことなく保護することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 陰極
2 第一陽極
3 一次電子線
4 第二陽極
5 第一収束レンズ
6 対物レンズ絞り
7 第二収束レンズ
8 上段偏向コイル
9 下段偏向コイル
10 対物レンズ
11 反射電子検出器
12 二次電子検出器
13 直交電磁界装置
14 試料微動装置
16、17 増幅器
18 二次電子
19 透過電子検出器
20 高電圧制御部
21 アライナー制御部
22 第一集束レンズ制御部
23 第二集束レンズ制御部
24 偏向制御部
25 対物レンズ制御部
26 信号制御部
27 試料微動制御部
28 電子線中心軸調整用アライナー
29 電子線中心軸調整用偏向器
30 表示装置
31 画像取得手段
32 画像処理手段
33 計算手段
34 記憶手段
35 入力手段
36 蓋
37 試料台
38 蓋押さえ
39 試料
40 フック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し内部で試料を保持する試料台と、該試料台の前記開口部を閉塞する蓋と、前記試料台に設けられた蓋押さえと、前記蓋押さえに設けられた第一の突合せ部と、前記第一の突合せ部との嵌合により、前記試料台に前記蓋を押し付け、前記蓋と前記試料台で囲まれた空間を密閉する前記蓋に設けられた第二の突合せ部と、備える試料ホルダー。
【請求項2】
前記試料台の開口部が平坦に形成されており、前記第二の突合せ部は、前記蓋が前記開口部をスライドし前記第一の突合せ部に嵌合可能に構成されている請求項1記載の試料ホルダー。
【請求項3】
前記第一の突合せ部と前記第二の突合せ部が共にテーパ状に形成されている請求項2記載の試料ホルダー。
【請求項4】
前記第二の突合せ部は、前記第一の突合せ部に対向する位置に溝状に形成されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の試料ホルダー。
【請求項5】
荷粒子線を試料に照射する照射系と、前記試料から出射する荷電粒子線を検出する検出系と、
開口部を有し内部で試料を保持する試料台と、該試料台の前記開口部を閉塞する蓋と、前記試料台に設けられた蓋押さえと、前記蓋押さえに設けられた第一の突合せ部と、前記第一の突合せ部との嵌合により、前記試料台に前記蓋を押し付け、前記蓋と前記試料台で囲まれた空間を密閉する前記蓋に設けられた第二の突合せ部とを有する試料ホルダーを保持する駆動部と、前記駆動部及び前記試料ホルダーを収納する試料室と、前記蓋を前記試料室から取付け取外し、かつ前記試料ホルダーを前記試料室内外へ移動する移動部と、
前記移動部、前記駆動部、前記照射系及び前記検出系と、を制御する制御部とを有する荷電粒子線装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第一の突合せ部及び前記第二の突合せ部とが取外され、前記蓋が前記試料台から取外された状態で、荷粒子線を試料に照射し、前記試料から出射する荷電粒子線を検出するよう制御する請求項5記載の荷電粒子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−65485(P2013−65485A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204054(P2011−204054)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】