試料濃度検出方法、装置およびプログラム
【課題】試料濃度に依存しない蛍光強度変動要因の影響を防止する試料濃度検出方法、装置およびプログラムの提供。
【解決手段】CCDカメラ50から得た輝度値と励起光反射部位置との関係から反射励起光輝度データE(Xn,Yn)と蛍光輝度との理論上の検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値データC(Xn,Yn)を演算する(S24)。次に、蛍光の画像輝度値を蛍光用CCDカメラ70で取得する(S26)。比較補正演算手段85はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段84から送られた全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値C(Xn,Yn)と比較し、その比較結果に基づいて実際の蛍光の輝度値データを補正し、その補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度データO(Xn,Yn)を演算する(S30)。
【解決手段】CCDカメラ50から得た輝度値と励起光反射部位置との関係から反射励起光輝度データE(Xn,Yn)と蛍光輝度との理論上の検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値データC(Xn,Yn)を演算する(S24)。次に、蛍光の画像輝度値を蛍光用CCDカメラ70で取得する(S26)。比較補正演算手段85はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段84から送られた全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値C(Xn,Yn)と比較し、その比較結果に基づいて実際の蛍光の輝度値データを補正し、その補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度データO(Xn,Yn)を演算する(S30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料濃度検出方法、装置およびプログラムに関し、特に試料雰囲気中のワーク表面に蛍光塗料を塗布し、この蛍光塗料面に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法、装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
励起光を照射した際、試料濃度に応じて消光、発光する蛍光塗料を利用し、ワーク表面の試料濃度を検出する装置および方法が提案されている。
【0003】
特許文献1(特開平9−113450号公報)には、TPP(テトラ・ポリ・フィリン)を含むマトリクスポリマを塗布してなる検知材に、光を照射した状態で混合ガスを接触させ、TPPの色の変化を特定波長の透過光または反射光のスペクトル変化として測定してガス濃度を測定するガス濃度検知方法が開示されている。
【0004】
特許文献2(特表2002−529682号公報)および特許文献3(特表平9−506166号公報)には、酸素消光性を有する蛍光塗料を、光ファイバ端面に塗布して光ファイバ先端部の酸素濃度を計測可能とするガス濃度検知方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献4(特開平6−34545号公報)には、励起光源と試料の間に励起光照射用光ファイバ束を配して、励起光の照射位置を変えたり、2次元的な面分析をする場合に光学系や試料の移動を不要にする光物性評価方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−113450号公報
【特許文献2】特表2002−529682号公報
【特許文献3】特表平9−506166号公報
【特許文献4】特開平6−34545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような蛍光塗料面に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することによりガス濃度を検出する方法においては、ガス濃度に依存しない要因による蛍光強度の変動が問題となる場合がある。蛍光強度の変動が生じると、その蛍光強度の変動が蛍光によるガス濃度の検出ノイズとなり、高精度な蛍光強度の取得の妨げとなる。このような蛍光強度変動要因としては、ガス濃度非依存の蛍光強度変動要因一般であるが、特に「励起光源の明暗変化」、「励起光の照射ムラ」、「蛍光塗料の膜厚ムラ」を挙げることができる。「励起光源の明暗変化」とは、励起光源を継続使用していると励起光源自体の明暗が変化する経時的変化によって、励起光のワーク表面への照射量が変化することである。「励起光の照射ムラ」とは、励起光を照射されたワーク表面の部位的な励起光の照射量の差が生じることをいい、ワークが平面形状でなく曲面形状であるなど表面形状や励起光源の照射角度等などに起因する場合が多い。「蛍光塗料の膜厚ムラ」とは、蛍光塗料膜がワーク表面に均一に塗布されていなく、蛍光塗料の膜厚によって部位的に蛍光強度が変化してしまうことをいう。
【0008】
本発明は、上記課題等に鑑みてなされたものであり、試料濃度に依存しない蛍光強度変動要因による影響を防止し、より高精度にワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法、装置およびプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法であって、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算工程と、この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正工程と、補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定工程と、を有し、前記変動要因演算工程は、前記ワークの前記蛍光塗料面上に前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層を部分的に塗布する塗布工程と、前記接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、この蛍光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
さらに、この影響演算工程は、前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合工程と、前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定工程と、この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算工程と、この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算工程と、この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する比較工程と、を有し、この比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算すると好適である。
【0011】
本発明はまた、試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法であって、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算工程と、この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正工程と、補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定工程と、を有し、前記変動要因演算工程は、前記ワークの前記蛍光塗料面上に前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層を部分的に塗布する第1の塗布工程と、前記ワークの前記蛍光塗料面下に前記励起光を反射する励起光反射層を部分的に塗布する第2の塗布工程と、前記接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、蛍光塗料層を通じて前記励起光反射層により反射した励起光の励起光強度を取得する励起光強度取得工程と、この蛍光強度および反射した励起光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
さらに、この影響演算工程は、前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合工程と、前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定工程と、この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算工程と、この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算工程と、この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第1の比較工程と、を有し、さらに、励起光反射層の位置と反射した励起光の励起光強度の関係を整合する整合工程と、励起光反射層相互間を内挿補間してワーク表面全体の励起光を推定する推定工程と、この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算工程と、この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第2の比較工程と、を有し、この第1の比較工程および第2の比較工程による比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算すると好適である。
【0013】
本発明はまた、試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出装置であって、励起光を前記蛍光塗料面上へ照射することにより発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算手段と、この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正手段と、補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定手段と、を有し、前記変動要因演算手段は、前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、この蛍光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
さらに、この影響演算手段は、前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合手段と、前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定手段と、この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算手段と、この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算手段と、この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する比較手段と、を有し、この比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算すると好適である。
【0015】
また、本発明は、試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出装置であって、励起光を前記蛍光塗料面上へ照射することにより発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算手段と、この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正手段と、補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定手段と、を有し、前記変動要因演算手段は、前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、前記ワークの前記蛍光塗料面下に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面を通じた前記励起光を反射する励起光反射層により反射した励起光の励起光強度を取得する励起光強度取得手段と、この蛍光強度および反射した励起光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
さらに、この影響演算工程は、前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合手段と、前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定手段と、この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算手段と、この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算手段と、この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第1の比較手段と、有し、さらに、励起光反射層の位置と反射した励起光の励起光強度の関係を整合する整合手段と、励起光反射層相互間を内挿補間してワーク表面全体の励起光を推定する推定手段と、この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算手段と、この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第2の比較手段と、を有し、この第1の比較手段および第2の比較手段による比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算すると好適である。
【0017】
また、本発明は、試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度をコンピュータによって検出する試料濃度検出プログラムであって、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、この蛍光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算し、この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正し、補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度をコンピュータによって検出する試料濃度検出プログラムであって、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、蛍光塗料層を通じて前記ワークの前記蛍光塗料面下に部分的に塗布された、前記励起光を反射する励起光反射層により反射した励起光の励起光強度を取得し、この蛍光強度および反射した励起光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算し、この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正し、補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、試料濃度に依存しない蛍光強度変動要因の影響を防止し、より高精度にワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法、装置およびプログラムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態では、ワーク(基板)として燃料電池のMEAに使用されるセパレータ板、検出の対象となる試料ガスとして酸素ガス、蛍光塗料としてルテニウム錯体塗料(酸素消光性)、励起光源として波長470nmの青色光を励起光として照射できる励起光源を用い、セパレータ板の表面の酸素ガス濃度分布を検出する。なお、このような状況下で発生する蛍光は約600nmである。また、光の強度として輝度値の強度を用いている。このような構成を用いて燃料電池電極に用いられるセパレータ板に燃料電池で用いられる酸素ガスがどのようにセパレータ板上で分布するのかを検出する。
【0022】
[参考形態1]
「装置の全体構成」
図1には参考形態1に係る酸素ガス濃度検出装置100の構成図が示される。表面ガス濃度の分布の検出対象となるセパレータ12を基板とする検知材10がある。検知材10は励起光および蛍光を通過できる透過窓を有したケース18内に設置されている。検知材10とこの透過窓の間は空間19を有しており、この空間19が検知材10の表面に拡散される酸素ガスを通じるガス流路19となる。検知材10に励起光を照射可能となるように励起光源20が設置される。検知材10で反射した励起光および発生した蛍光を2方向へ分割する光分割手段としてのハーフプリズム30が検知材10の正面に設置される。ハーフプリズム30で分割された光が進行する2方向のうち1方向には、励起光の波長(約470nm)の光線を選択して通過させる励起光波長通過手段としての励起光透過フィルタ40が備えられている。フィルタ40の背後にはフィルタ40を通過した励起光の輝度値を検知する励起光検知手段としての励起光用CCDカメラ50が備えられている。ハーフプリズム30で分割された光が進行する2方向のうち残りのもう1つの方向には、蛍光の波長(約600nm)の光線を選択して通過させる蛍光波長通過手段としての蛍光透過フィルタ60が備えられている。フィルタ60の背後にはフィルタ60を通過した蛍光の輝度値を検知する蛍光検知手段としての蛍光用CCDカメラ70が備えられている。CCDカメラ50およびCCDカメラ70は、コンピュータ80と電気通信接続されている。コンピュータ80は、それぞれのCCDカメラからのデータを取得し、その取得データに基づいて内部で演算し、画像出力手段に画像データを送信する演算手段である。コンピュータ80から受け取った画像データを出力する画像出力手段としてはディスプレイ90を有している。
【0023】
「検知材の構成」
図1Aには測定対象となる検知材10のハーフプリズム30側から見た上面図が示される。図1Bには図1Aの検知材10をX−Y面で切断した場合の断面図が示される。セパレータ12に蛍光塗料が全面に塗布され、蛍光塗料層14が形成されている。蛍光塗料層14上には、励起光を反射する励起光反射層16が部分的に塗布されている。励起光反射層は白色塗料等、励起光を反射できる一般的塗料でよい。
【0024】
部分的に励起光反射層16を塗布するとは、蛍光塗料層14面の全面ではないという態様を示し、励起光を反射させて励起光により蛍光輝度値変動要因の影響を演算し、補正できるデータを採取できる態様であればよい。例えば、縞状、マトリックス状、まだら状等、蛍光塗料層14に励起光反射層16を散在させて塗布することが挙げられる。参考形態においては、蛍光塗料層14上に直径1mm程度の円形状の多数の励起光反射層16を、等間隔に散在させて塗布して、この円形状の励起光反射層それぞれを励起光反射部領域としている(図1A)。塗布手段はスクリーン印刷手段等を用いて塗布するなど一般的な塗布手段であればよい。
【0025】
励起光反射部領域の数が多く、相互間の距離が短いほど後述の内挿補間による全箇所の励起光輝度値の演算制度が向上するので励起反射部の数が多く、相互間距離を短くする方が好適である。また、蛍光データの取得阻害を防止するためにも励起光反射部領域各々の面積は小さい方が好適である。
【0026】
「コンピュータの内部構成」
図1Cにはコンピュータ80の内部構成を示すブロック図が示される。位置輝度演算手段81は、励起光用CCDカメラ50と電気通信接続され、CCDカメラ50から励起光の輝度値データを得る。また、位置輝度演算手段81は、位置記憶手段81Rと電気通信接続されている。位置記憶手段81Rには予め記憶されたCCDカメラ50の撮影箇所に対する励起光反射部領域の位置関係が予め記憶されている。位置輝度演算手段81は、位置記憶手段81Rから位置関係のデータを読み出し、反射励起光の輝度値データと位置関係から、検知材10のどの励起光反射部領域から反射されて来た励起光であるかという輝度値と位置関係を演算して整合させる。また、位置輝度演算手段81は、その演算結果を平均輝度演算手段82に送信する。平均輝度演算手段82は位置輝度演算手段81からのデータに基づき、励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均を演算する。また、平均輝度演算手段82は内挿補間演算手段83に励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均のデータを送信する。内挿補間演算手段83は平均輝度演算手段82からのデータに基づき、励起光反射部領域間の内挿補間を行い、CCDカメラ50で撮影した全箇所の励起光輝度値を演算する。内挿補間演算手段83は撮影した全箇所と励起光輝度値の関係データを理論輝度値演算手段84に送信する。理論輝度値演算手段84は、内挿補間演算手段83と、検定線記憶手段84Rと電気通信接続されている。検定線記憶手段84Rは励起光輝度と蛍光輝度との理論上の検定線が予め記憶されている。理論輝度値演算手段84は内挿補間演算手段83からの撮影した全箇所と励起光輝度値の関係をデータに基づいて、検定線記憶手段84Rから検定線を呼び出し、その検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値を演算する。理論輝度値演算手段84は全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値を比較補正演算手段85へ送信する。比較補正演算手段85は理論輝度値演算手段84と、蛍光用CCDカメラ70と、補正関係記憶手段85Rと電気通信接続されている。補正関係記憶手段85Rには理論蛍光輝度値と実際の蛍光輝度値とのずれに対して実際の蛍光輝度値をいくらに補正すべきかという補正関係が予め記憶されている。比較補正演算手段85はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段84から送られた理論上の理論蛍光輝度値と比較する。その比較結果に基づいて、補正関係記憶手段85Rから実際の蛍光輝度値をいくらに補正すべきかという補正関係を読み出し、その補正関係に基づいて実際の蛍光輝度値データを補正する。その補正処理を行った後の蛍光輝度値データを濃度演算手段86へ送信する。濃度演算手段86は比較補正演算手段85と、蛍光輝度値と酸素ガス濃度の関係を記憶した輝度濃度記憶手段86Rと接続されている。濃度演算手段86は輝度濃度記憶手段86Rから蛍光輝度値と酸素ガス濃度の関係を読み出し、比較補正演算手段85からの補正した蛍光輝度値データに基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度を演算し、その濃度に応じて色を分けた画像データをディスプレイ90へと送信する。なお、上記一連の処理は上記通常は1つのコンピュータ内でなされる。通常、演算手段はCPU(Central Processing Unit)、記憶手段はメモリなどを用いる。予め記憶手段に記憶されている検定線等の相関関係は当業者であれば容易に測定できるものである。
【0027】
「酸素ガス濃度分布の検出方法」
図1Dに示されるフローチャートに基づいて、図1の酸素ガス濃度検出装置を用いた酸素ガス濃度分布の検出の方法について説明する。セパレータを基板12として、その上に蛍光塗料14に励起光反射層16を部分的に塗布した検知材10上に、ガス流路19を通じて酸素ガスを表面拡散させる(S10)。酸素ガスを拡散させると共に、励起光源20により、励起光を検知材10に照射して励起光反射部16で励起光を反射させる。励起光反射部16では、励起光は蛍光塗料の励起に用いられることなく、反射する。反射励起光は酸素濃度ガスに依存することがないので、反射励起光を検知することでガス濃度非依存の蛍光強度変動要因である励起光の照射ムラや励起光源の経時的な明暗変化の影響等を検知して、その影響を除去することが可能となる。また、励起光反射部16が塗布されておらず、蛍光塗料層14が表面に露出している箇所においては、励起光により蛍光を発生させる。酸素ガス濃度が濃い箇所においては酸素ガスにより蛍光が消光される。反射した励起光と発生した蛍光は混合し、これらが混合した混合光となる(S12)。混合光をハーフプリズム30によって、2方向に分離する(S14)。1方向は、励起光透過フィルタ40を通じる方向へ、残りの1方向は蛍光透過フィルタ60を通じる方向へと分離する。励起光透過フィルタ40を通じる方向へ進行する混合光を励起光透過フィルタ40を用い、励起光波長のみを選択して取り出す。取り出した反射励起光の画像輝度値を励起光用CCDカメラ50で取得する(S16)。反射励起光の画像輝度値はコンピュータ80によって処理する。
【0028】
すなわち、CCDカメラ50から励起光の輝度値データを得た位置輝度演算手段81は、励起光の輝度値データとCCDカメラ50の撮影箇所の位置関係から、検知材10のどの励起光反射部領域から反射されて来た励起光であるかを演算し、位置と輝度値の関係を整合させたデータP(Xn,Yn)を得る(S18)。次に平均輝度演算手段82は位置輝度演算手段81からの輝度データP(Xn,Yn)に基づき、励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均を演算し、励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均のデータA(Xn,Yn)を得る(S20)。これにより、さらに内挿補間演算手段83は平均輝度演算手段82からの輝度データA(Xn,Yn)に基づき、励起光反射部領域相互間の内挿補間を行い、CCDカメラ50で撮影した全箇所の励起光輝度値のデータE(Xn,Yn)を得る(S22)。ここで内挿補間の方法としては、例えば線形内挿、多項式補間、スプライン補間などを用いることができる。次に理論輝度値演算手段84により内挿補間演算手段83からの反射励起光輝度データE(Xn,Yn)と蛍光輝度との理論上の検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値データC(Xn,Yn)を演算する(S24)。
【0029】
次に、蛍光透過フィルタ60を通じる方向へ進行する混合光を、蛍光透過フィルタ60を用い、蛍光波長のみを選択して取り出す。取り出した蛍光の画像輝度値を蛍光用CCDカメラ70で取得する(S26)。比較補正演算手段85はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段84から送られた全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値C(Xn,Yn)と比較し、その比較結果に基づいて実際の蛍光の輝度値データを補正し、その補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)を得る(S28)。次に濃度演算手段86は比較補正演算手段85からの補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)に基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度データO(Xn,Yn)を演算し、その濃度に応じて色を分けた画像データをディスプレイ90へと送信する(S30)。ディスプレイ90には、酸素ガス濃度O(Xn,Yn)に応じて色を分けた画像データを出力させる。これによりセパレータ上の酸素ガス濃度の分布を精度良く色により可視化して認識できる(S32)。
【0030】
以上の方法により、励起光の照射ムラや励起光源の経時的な明暗変化の検出ノイズの影響を除去して正確にセパレータ上の酸素ガス濃度分布を測定できる。また、本方法では、ガス濃度に依存しない蛍光強度変動要因の検定補正を、ガス濃度検出時に同時に行うことができ、ガス濃度の検出前において、事前にこれら蛍光強度変動要因の検定補正を行う必要がない。よって工程数を削減できる。
【0031】
[実施形態1]
「装置の全体構成」
図2には実施形態1に係る酸素ガス濃度検出装置200の構成図が示される。表面ガス濃度の分布の検出対象となるセパレータ12を基板とする検知材110がある。検知材110は励起光および蛍光を通過できる透過窓を有したケース18内に設置されている。検知材110とこの透過窓の間は空間19を有しており、この空間19が検知材110の表面に拡散される酸素ガスを通じるガス流路19となる。検知材110に励起光を照射可能となるように励起光源20が設置される。検知材110で発生した蛍光の波長(約600nm)の光線を選択して通過させる蛍光波長通過手段としての蛍光透過フィルタ60が検知材110の正面に備えられている。フィルタ60の背後にはフィルタ60を通過した蛍光の輝度値を検知する蛍光検知手段としての蛍光用CCDカメラ70が備えられている。CCDカメラ70は、コンピュータ180と電気通信接続されている。コンピュータ180は、CCDカメラ70からのデータを取得し、その取得データに基づいて内部で演算し、画像出力手段に画像データを送信する演算手段である。コンピュータ180から受け取った画像データを出力する画像出力手段としてはディスプレイ90を有している。
【0032】
「検知材の構成」
図2Aには測定対象となる検知材110のカメラ70から見た上面図が示される。図2Bには図2Aの検知材110をX−Y面で切断した場合の断面図が示される。図1Aおよび図1Bの検知材10とは蛍光塗料層14上に形成されるのが励起光反射層16でなく、酸素不透過層116である点が主に相違する。すなわち、セパレータ12に蛍光塗料が全面に塗布され、蛍光塗料層14が形成されている。蛍光塗料層14上には、酸素ガスが蛍光反応層14と接触することを防止する酸素不透過層116が部分的に塗布されている。酸素不透過層116は600nm程度の蛍光を発しなく、蛍光反応層14と酸素ガスが接触できるのを防止できるものでよい。
【0033】
部分的に酸素不透過層116を塗布するとは、蛍光塗料層14面の全面ではないという態様を示し、励起光を反射させて励起光により蛍光輝度値変動要因の影響を演算し、補正できるデータを採取できる態様であればよい。例えば、縞状、マトリックス状、まだら状等、蛍光塗料層14に酸素不透過層116を散在させて塗布することが挙げられる。実施形態においては、蛍光塗料層14上に直径1mm程度の円形状の多数の酸素不透過層116を、等間隔に散在させて塗布して、この円形状の励起光反射層それぞれを酸素不透過部領域としている(図2A)。塗布手段はスクリーン印刷手段等を用いて塗布するなど一般的な塗布手段であればよい。
【0034】
酸素不透過部領域の数が多く、相互間の距離が短いほど後述の内挿補間による全箇所の励起光輝度値の演算制度が向上するので酸素不透過部の数が多く、相互距離間を短くする方が好適である。また、蛍光データの取得阻害を防止するためにも酸素不透過部領域各々の面積は小さい方が好適である。
【0035】
「コンピュータの内部構成」
図2Cにはコンピュータ180の内部構成を示すブロック図が示される。位置輝度演算手段181は、蛍光用CCDカメラ70と電気通信接続され、CCDカメラ70から蛍光の輝度値データを得る。また、位置輝度演算手段181は、位置記憶手段181Rと電気通信接続されている。位置記憶手段181Rには予め記憶されたCCDカメラ50の撮影箇所に対する酸素不透過部領域の位置関係が予め記憶されている。位置輝度演算手段181は、位置記憶手段181Rから位置関係のデータを読み出し、酸素不透過部の輝度値データと位置関係から、検知材110のどの酸素不透過部領域から反射されて来た蛍光であるかという輝度値と位置関係を演算して整合させる。また、位置輝度演算手段181は、その演算結果を平均輝度演算手段182に送信する。平均輝度演算手段182は位置輝度演算手段181からのデータに基づき、酸素不透過部領域各々の蛍光の輝度値平均を演算する。また、平均輝度演算手段182は内挿補間演算手段183に酸素不透過部領域各々の蛍光の輝度値平均データを送信する。内挿補間演算手段183は平均輝度演算手段182からのデータに基づき、酸素不透過部領域間の内挿補間を行い、CCDカメラ70で撮影した全箇所の蛍光輝度値を演算する。内挿補間演算手段183は撮影した全箇所と蛍光輝度値の関係データを励起光演算手段187へ送信する。励起光演算手段187は、内挿補間演算手段183と、検定線記憶手段187Rと電気通信接続されている。検定線記憶手段187Rには酸素不透過部領域で得られた蛍光輝度と励起光輝度の関係が予め記憶されている。励起光演算手段187は内挿補間演算手段183からの撮影した全箇所と蛍光輝度値の関係データに基づいて、検定線記憶手段187Rから蛍光輝度と励起光輝度の検定線を呼び出し、その検定線により全撮影箇所の励起光輝度データを演算する。また、励起光演算手段187Rは、全撮影箇所の励起光輝度データを理論輝度値演算手段184に送信する。理論輝度値演算手段184は、励起光演算手段187と、検定線記憶手段184Rと電気通信接続されている。検定線記憶手段184Rは励起光輝度と蛍光輝度との理論上の検定線が予め記憶されている。理論輝度値演算手段184は励起光演算手段187からの撮影した全箇所と励起光輝度値の関係をデータに基づいて、検定線記憶手段184Rから検定線を呼び出し、その検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値を演算する。理論輝度値演算手段184は全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値を比較補正演算手段185へ送信する。比較補正演算手段185は理論輝度値演算手段184と、蛍光用CCDカメラ70と、補正関係記憶手段185Rと電気通信接続されている。補正関係記憶手段85Rには理論蛍光輝度値と実際の蛍光輝度値とのずれに対して実際の蛍光輝度値をいくらに補正すべきかという補正関係が予め記憶されている。比較補正演算手段185はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段184から送られた理論上の理論蛍光輝度値と比較する。その比較結果に基づいて、補正関係記憶手段185Rから実際の蛍光輝度値をいくらに補正すべきかという補正関係を読み出し、その補正関係に基づいて実際の蛍光輝度値データを補正する。その補正処理を行った後の蛍光輝度値データを濃度演算手段186へ送信する。濃度演算手段186は比較補正演算手段185と、蛍光輝度値と酸素ガス濃度の関係を記憶した輝度濃度記憶手段186Rと接続されている。濃度演算手段86は輝度濃度記憶手段186から蛍光輝度値と酸素ガス濃度の関係を読み出し、比較補正演算手段185からの補正した蛍光輝度値データに基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度を演算し、その濃度に応じて色を分けた画像データをディスプレイ90へと送信する。なお、上記一連の処理は上記通常は1つのコンピュータ内でなされる。通常、演算手段はCPU、記憶手段はメモリなどを用い、記憶手段はメモリなどを用いる。予め記憶手段に記憶されている検定線等の相関関係は当業者であれば容易に測定できるものであるのは参考形態1と同様である。
【0036】
「酸素ガス濃度分布の検出方法」
図2Dに示されるフローチャートに基づいて、図2の酸素ガス濃度検出装置を用いた酸素ガス濃度分布の検出の方法について説明する。セパレータを基板12として、その上に蛍光塗料14に酸素不透過部層116を部分的に塗布した検知材110上に、ガス流路19を通じて酸素ガスを表面拡散させる。酸素ガスを拡散させると共に、酸素不透過部領域116から発せられる蛍光を取得する。励起光源20により、励起光を検知材110に照射して(S110)、酸素不透過部層116下の蛍光塗料層14により、蛍光を発生させる(S112)。この部位で発生する蛍光は酸素不透過部層116によって酸素が介在しない状況で発生する蛍光であり、酸素ガス濃度に非依存である。よって、この部位で発生する蛍光を測定することにより励起光の照射ムラや励起光源の経時的な明暗変化の検出ノイズの影響を検知して、そのノイズを除去することが可能となる。酸素不透過部領域116の下層の蛍光塗料14で発生した蛍光を蛍光透過フィルタ60で蛍光波長のみを選択して取り出す。取り出した蛍光の画像輝度値を蛍光用CCDカメラ70で取得する(S114)。蛍光の画像輝度値はコンピュータ180によって処理する。
【0037】
すなわち、CCDカメラ70から蛍光の輝度値データを得た位置輝度演算手段181は、蛍光の輝度値データとCCDカメラ70の撮影箇所との位置関係から、検知材10のどの酸素不透過部領域116を通じて発せられた蛍光であるかを演算し、位置と輝度値の関係を整合させたデータP(Xn,Yn)を得る(S116)。次に平均輝度演算手段182は位置輝度演算手段181からの輝度データP(Xn,Yn)に基づき、酸素不透過部領域各々の蛍光の輝度値平均を演算し、酸素不透過部領域各々の励起光の輝度値平均データA(Xn,Yn)を得る(S118)。これにより、さらに内挿補間演算手段183は平均輝度演算手段182からの輝度データA(Xn,Yn)に基づき、酸素不透過部領域相互間の内挿補間を行い、CCDカメラ70で撮影した全箇所の蛍光輝度値データM(Xn,Yn)を得る(S120)。次に励起光演算手段187により内挿補間演算手段183からの蛍光輝度データM(Xn,Yn)と励起光輝度との検定線により全撮影箇所の蛍光輝度値データE(Xn,Yn)を演算する(S122)。次に理論輝度値演算手段184により励起光演算手段187からの励起光輝度データE(Xn,Yn)と蛍光輝度との理論上の検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値データC(Xn,Yn)を演算する(S124)。
【0038】
次に酸素不透過部領域116以外から発せられる蛍光、すなわち、輝度が酸素濃度に依存している蛍光を蛍光透過フィルタ70を用い、蛍光波長のみを選択して取り出す。取り出した蛍光の画像輝度値を蛍光用CCDカメラ70で取得する(S126)。比較補正演算手段185はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段184から送られた全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値C(Xn,Yn)と比較する。その比較結果に基づいて、比較補正演算手段185は実際の蛍光の輝度値データを補正し、その補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)を得る(S128)。次に濃度演算手段186は比較補正演算手段185からの補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)に基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度データO(Xn,Yn)を演算し、その濃度に応じて色を分けた画像データをディスプレイ90へと送信する(S130)。次に参考形態1と同様に、ディスプレイ90には、酸素ガス濃度O(Xn,Yn)に応じて色を分けた画像データを出力させる(S132)。
【0039】
以上によりセパレータ上の酸素ガス濃度の分布を精度良く色により可視化して認識できる。以上の方法により、参考形態1と同様に励起光の照射ムラや励起光源の経時的な明暗変化の検出ノイズの影響を除去して正確にセパレータ上の酸素ガス濃度分布を測定できる。また、本方法では、ガス濃度に依存しない蛍光強度変動要因の検定補正を、ガス濃度検出時に同時に行うことができ、ガス濃度の検出前において、事前にこれら蛍光強度変動要因の検定補正を行う必要がない。よって工程数を削減できる。さらに実施形態1においては、蛍光の画像輝度値を検知する蛍光検知手段(蛍光用CCDカメラ)のみで検定補正を行うことができ、励起光検知手段や光分割手段を検定補正に必要としないという利点がある。
【0040】
[参考形態2]
「装置の全体構成」
図3には参考形態2に係る酸素ガス濃度検出装置300の構成図が示される。基本的な構成は参考形態1と同様である。表面ガス濃度の分布の検出対象となるセパレータ12を基板とする検知材210がある。検知材210は励起光および蛍光を通過できる透過窓を有したケース18内に設置されている。検知材210とこの透過窓の間は空間19を有しており、この空間19が検知材210の表面に拡散される酸素ガスを通じるガス流路19となる。検知材210に励起光を照射可能となるように励起光源20が設置される。検知材210で反射した励起光および発生した蛍光を2方向へ分割する光分割手段としてのハーフプリズム30が検知材210の正面に設置される。ハーフプリズム30で分割された光が進行する2方向のうち1方向には、励起光の波長の光線を選択して通過させる励起光波長通過手段としての励起光透過フィルタ40が備えられている。フィルタ40の背後にはフィルタ40を通過した励起光の輝度値を検知する励起光検知手段としての励起光用CCDカメラ50が備えられている。ハーフプリズム30で分割された光が進行する2方向のうち残りのもう1つの方向には、蛍光の波長の光線を選択して通過させる蛍光波長通過手段としての蛍光透過フィルタ60が備えられている。フィルタ60の背後にはフィルタ60を通過した蛍光の輝度値を検知する蛍光検知手段としての蛍光用CCDカメラ70が備えられている。CCDカメラ50およびCCDカメラ70は、コンピュータ280と電気通信接続されている。コンピュータ280は、それぞれのCCDカメラからのデータを取得し、その取得データに基づいて内部で演算し、画像出力手段に画像データを送信する演算手段である。コンピュータ280から受け取った画像データを出力する画像出力手段としてはディスプレイ90を有している。
【0041】
「検知材の構成」
図3Aには測定対象となる検知材210ののハーフプリズム30側から見た上面図が示される。図3Bには図3Aの検知材210をX−Y面で切断した場合の断面図が示される。セパレータ12に励起光を反射する励起光反射層16が部分的に塗布されている。塗布の態様は参考形態1と同様である。励起光反射層16上には蛍光塗料層14が塗布され、励起光反射層16は蛍光塗料層14に埋め込まれており、検知材210の表面は蛍光塗料層14で全面が覆われている。
【0042】
励起光反射部領域16の数が多く、相互間の距離が短いほど後述の内挿補間による全箇所の励起光輝度値の演算制度が向上するので励起反射部の数が多く、相互間距離を短くする方が好適である等は参考形態1と同様である。
【0043】
「コンピュータの内部構成」
図3Cにはコンピュータ280の内部構成を示すブロック図が示される。位置輝度演算手段281は、励起光用CCDカメラ50と電気通信接続され、CCDカメラ50から励起光の輝度値データを得る。また、位置輝度演算手段281は、位置記憶手段281Rと電気通信接続されている。位置記憶手段281Rには予め記憶されたCCDカメラ50の撮影箇所に対する励起光反射部領域の位置関係が予め記憶されている。位置輝度演算手段281は、位置記憶手段281Rから位置関係のデータを読み出し、反射励起光の輝度値データと位置関係から、検知材10のどの励起光反射部領域から反射されて来た励起光であるかという輝度値と位置関係を演算して整合させる。また、位置輝度演算手段281は、その演算結果を平均輝度演算手段282に送信する。平均輝度演算手段282は位置輝度演算手段281からの輝度値データに基づき、励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均を演算する。また、平均輝度演算手段282は内挿補間演算手段283に励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均のデータを送信する。内挿補間演算手段283は平均輝度演算手段282からのデータに基づき、励起光反射部領域間の内挿補間を行い、CCDカメラ50で撮影した全箇所の励起光輝度値を演算する。内挿補間演算手段283は撮影した全箇所と励起光輝度値の関係データを膜厚演算手段288に送信する。膜厚演算手段288は、内挿補間演算手段283と、検定線記憶手段288Rと電気通信接続されている。検定線記憶手段288Rは励起光輝度と蛍光輝度との理論上の検定線が予め記憶されている。膜厚演算手段288は内挿補間演算手段283からの撮影した全箇所と励起光輝度値の関係をデータに基づいて、検定線記憶手段288Rから検定線を呼び出し、その検定線により全撮影箇所の蛍光塗料膜厚を演算する。また、膜厚演算手段288は全撮影箇所の蛍光塗料膜厚のデータを理論輝度値演算手段284に送信する。理論輝度値演算手段284は、膜厚演算手段288と、検定線記憶手段284Rと電気通信接続されている。検定線記憶手段284Rは塗料膜厚と蛍光輝度との理論上の検定線が予め記憶されている。理論輝度値演算手段284は膜厚演算手段288からの膜厚データに基づいて、検定線記憶手段284Rから検定線を呼び出し、その検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値を演算する。理論輝度値演算手段284は全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値を比較補正演算手段285へ送信する。
【0044】
比較補正演算手段285は理論輝度値演算手段284と、蛍光用CCDカメラ70と、補正関係記憶手段285Rと電気通信接続されている。補正関係記憶手段285Rには理論蛍光輝度値と実際の蛍光輝度値とのずれに対して実際の蛍光輝度値をいくらに補正すべきかという補正関係が予め記憶されている。比較補正演算手段285はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段284から送られた理論上の理論蛍光輝度値と比較する。その比較結果に基づいて、補正関係記憶手段285Rから実際の蛍光輝度値をいくらに補正すべきかという補正関係を読み出し、その補正関係に基づいて実際の蛍光輝度値データを補正する。その補正処理を行った後の蛍光輝度値データを濃度演算手段286へ送信する。濃度演算手段286は比較補正演算手段285と、蛍光輝度値と酸素ガス濃度の関係を記憶した輝度濃度記憶手段286Rと接続されている。濃度演算手段286は輝度濃度記憶手段286Rから蛍光輝度値と酸素ガス濃度の関係を読み出し、比較補正演算手段285からの補正した蛍光輝度値データに基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度を演算し、その濃度に応じて色を分けた画像データをディスプレイ90へと送信する。なお、上記一連の処理は上記通常は1つのコンピュータ内でなされる。通常、演算手段はCPU、記憶手段はメモリなどを用いる。予め記憶手段に記憶されている検定線等の相関関係は当業者であれば容易に測定できるものである等は参考形態1と同様である。
【0045】
「酸素ガス濃度分布の検出方法」
図3Dに示されるフローチャートに基づいて、図3の酸素ガス濃度検出装置を用いた酸素ガス濃度分布の検出の方法について説明する。セパレータを基板12として、その上に励起光反射層16を部分的に塗布し、蛍光塗料層14をその上に被覆させた検知材210上に、ガス流路19を通じて酸素ガスを表面拡散させる。酸素ガスを拡散させると共に、励起光源20により、励起光を検知材210に照射して(S210)、蛍光塗料層14を通じて、励起光反射部16で励起光を反射させる。蛍光塗料膜が厚いほど励起光反射部16に届く、励起光量は減衰し、また、励起光反射層16で反射した反射励起光も減衰する。よって、反射励起光の減衰と蛍光塗料膜厚14には相関関係があり、反射励起光を検知することでガス濃度非依存の蛍光強度変動要因である塗料膜厚のムラを検知して、その影響を除去することが可能となる。
【0046】
励起光を検知材210全体に照射して蛍光を発生させる。酸素ガス濃度が濃い箇所においては酸素ガスにより蛍光が消光される。励起光反射層16で反射した励起光と発生した蛍光は混合し、これらが混合した混合光となる(S212)。混合光をハーフプリズム30によって、2方向に分離する。1方向は、励起光透過フィルタ40を通じる方向へ、残りの1方向は蛍光透過フィルタ60を通じる方向へと分離する(S214)。励起光透過フィルタ40を通じる方向へ進行する混合光を励起光透過フィルタ40を用い、励起光波長のみを選択して取り出す。取り出した反射励起光の画像輝度値を励起光用CCDカメラ50で取得する(S216)。反射励起光の画像輝度値はコンピュータ280によって処理する。
【0047】
すなわち、CCDカメラ50から励起光の輝度値データを得た位置輝度演算手段281は、励起光の輝度値データとCCDカメラ50の撮影箇所の位置関係から、検知材210のどの励起光反射部領域から反射されて来た励起光であるかを演算し、位置と輝度値の関係を整合させたデータP(Xn,Yn)を得る(S218)。次に平均輝度演算手段282は位置輝度演算手段281からの輝度データP(Xn,Yn)に基づき、励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均を演算し、励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均のデータA(Xn,Yn)を得る(S220)。これにより、さらに内挿補間演算手段283は平均輝度演算手段282からの輝度データA(Xn,Yn)に基づき、励起光反射部領域相互間の内挿補間を行い、CCDカメラ50で撮影した全箇所の励起光輝度値のデータE(Xn,Yn)を得る(S222)。
【0048】
次に膜厚演算手段288により内挿補間演算手段283からの反射励起光輝度データE(Xn,Yn)と蛍光塗料膜厚との理論上の検定線により全撮影箇所の蛍光塗料膜厚データD(Xn,Yn)を演算する(S224)。次に理論輝度値演算手段284により膜厚演算手段288からの膜厚データD(Xn,Yn)と蛍光輝度との理論上の検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値データC(Xn,Yn)を演算する(S226)。
【0049】
次に、蛍光透過フィルタ60を通じる方向へ進行する混合光を蛍光透過フィルタ60を用い、蛍光波長のみを選択して取り出す。取り出した蛍光の画像輝度値を蛍光用CCDカメラ70で取得する(S228)。比較補正演算手段285はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段284から送られた全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値C(Xn,Yn)と比較し、その比較結果に基づいて実際の蛍光の輝度値データを補正し、その補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)を得る(S230)。次に濃度演算手段286は比較補正演算手段285からの補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)に基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度データO(Xn,Yn)を演算し、その濃度に応じて色を分けた画像データをディスプレイ90へと送信する(S232)。ディスプレイ90には、酸素ガス濃度O(Xn,Yn)に応じて色を分けた画像データを出力させる(S234)。
【0050】
以上によりセパレータ上の酸素ガス濃度の分布を精度良く色により可視化して認識できる。以上の方法により、蛍光塗料の膜厚のムラを除去して正確にセパレータ上の酸素ガス濃度分布を測定できる。
【0051】
[実施形態2]
実施形態2は、実施形態1と、参考形態2の装置を組み合わせる構成である。検知材は参考形態2の蛍光塗料層14の上に実施形態1の酸素不透過部層116を部分的に塗布する。
【0052】
実施形態2では、実施形態1の励起光の照射ムラや励起光源の経時的な明暗変化による蛍光強度変動要因の補正と、参考形態2の蛍光塗料の膜厚のムラによる蛍光強度変動要因の補正を同時に行うことができる利点がある。
【0053】
[その他]
上記はガス濃度検出装置について実施形態を示したが同様のガス濃度検出方法およびガス濃度検出プログラムの提供も可能であり、当業者であれば上記実施形態に基づいて十分に実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、試料濃度を検出する必要があるワーク全般に適用できる。試料濃度とはガス濃度に限られるものではなく、液体濃度、固体密度であっても適用できる場合がある。例えば、燃料電池の電極セルを流れるガス濃度の検出測定に適用できる。また、ワークの溶接の際のシールドガスのガス濃度の分布測定などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】参考形態1のガス濃度検出装置の構成図である。
【図1A】参考形態1の検知材の上面図である。
【図1B】参考形態1の検知材の断面図である。
【図1C】参考形態1のコンピュータの内部構成を示すブロック図である。
【図1D】参考形態1に係るガス濃度検出フローチャートである。
【図2】実施形態1のガス濃度検出装置の構成図である。
【図2A】実施形態1の検知材の上面図である。
【図2B】実施形態1の検知材の断面図である。
【図2C】実施形態1のコンピュータの内部構成を示すブロック図である。
【図2D】実施形態1に係るガス濃度検出フローチャートである。
【図3】参考形態2のガス濃度検出装置の構成図である。
【図3A】参考形態2の検知材の上面図である。
【図3B】参考形態2の検知材の断面図である。
【図3C】参考形態2のコンピュータの内部構成を示すブロック図である。
【図3D】参考形態2に係るガス濃度検出フローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
10,110,210 検知材、12 セパレータ、14 蛍光塗料層、16 励起光反射層、18 ケース、19 ガス流路(空間)、116 酸素不透過層、20 励起光源、30 ハーフプリズム、40,60 フィルタ、50,70 CCDカメラ、80,180,280 コンピュータ、90 ディスプレイ、100,200,300 ガス濃度検出装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料濃度検出方法、装置およびプログラムに関し、特に試料雰囲気中のワーク表面に蛍光塗料を塗布し、この蛍光塗料面に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法、装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
励起光を照射した際、試料濃度に応じて消光、発光する蛍光塗料を利用し、ワーク表面の試料濃度を検出する装置および方法が提案されている。
【0003】
特許文献1(特開平9−113450号公報)には、TPP(テトラ・ポリ・フィリン)を含むマトリクスポリマを塗布してなる検知材に、光を照射した状態で混合ガスを接触させ、TPPの色の変化を特定波長の透過光または反射光のスペクトル変化として測定してガス濃度を測定するガス濃度検知方法が開示されている。
【0004】
特許文献2(特表2002−529682号公報)および特許文献3(特表平9−506166号公報)には、酸素消光性を有する蛍光塗料を、光ファイバ端面に塗布して光ファイバ先端部の酸素濃度を計測可能とするガス濃度検知方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献4(特開平6−34545号公報)には、励起光源と試料の間に励起光照射用光ファイバ束を配して、励起光の照射位置を変えたり、2次元的な面分析をする場合に光学系や試料の移動を不要にする光物性評価方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−113450号公報
【特許文献2】特表2002−529682号公報
【特許文献3】特表平9−506166号公報
【特許文献4】特開平6−34545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような蛍光塗料面に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することによりガス濃度を検出する方法においては、ガス濃度に依存しない要因による蛍光強度の変動が問題となる場合がある。蛍光強度の変動が生じると、その蛍光強度の変動が蛍光によるガス濃度の検出ノイズとなり、高精度な蛍光強度の取得の妨げとなる。このような蛍光強度変動要因としては、ガス濃度非依存の蛍光強度変動要因一般であるが、特に「励起光源の明暗変化」、「励起光の照射ムラ」、「蛍光塗料の膜厚ムラ」を挙げることができる。「励起光源の明暗変化」とは、励起光源を継続使用していると励起光源自体の明暗が変化する経時的変化によって、励起光のワーク表面への照射量が変化することである。「励起光の照射ムラ」とは、励起光を照射されたワーク表面の部位的な励起光の照射量の差が生じることをいい、ワークが平面形状でなく曲面形状であるなど表面形状や励起光源の照射角度等などに起因する場合が多い。「蛍光塗料の膜厚ムラ」とは、蛍光塗料膜がワーク表面に均一に塗布されていなく、蛍光塗料の膜厚によって部位的に蛍光強度が変化してしまうことをいう。
【0008】
本発明は、上記課題等に鑑みてなされたものであり、試料濃度に依存しない蛍光強度変動要因による影響を防止し、より高精度にワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法、装置およびプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法であって、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算工程と、この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正工程と、補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定工程と、を有し、前記変動要因演算工程は、前記ワークの前記蛍光塗料面上に前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層を部分的に塗布する塗布工程と、前記接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、この蛍光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
さらに、この影響演算工程は、前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合工程と、前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定工程と、この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算工程と、この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算工程と、この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する比較工程と、を有し、この比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算すると好適である。
【0011】
本発明はまた、試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法であって、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算工程と、この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正工程と、補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定工程と、を有し、前記変動要因演算工程は、前記ワークの前記蛍光塗料面上に前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層を部分的に塗布する第1の塗布工程と、前記ワークの前記蛍光塗料面下に前記励起光を反射する励起光反射層を部分的に塗布する第2の塗布工程と、前記接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、蛍光塗料層を通じて前記励起光反射層により反射した励起光の励起光強度を取得する励起光強度取得工程と、この蛍光強度および反射した励起光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
さらに、この影響演算工程は、前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合工程と、前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定工程と、この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算工程と、この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算工程と、この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第1の比較工程と、を有し、さらに、励起光反射層の位置と反射した励起光の励起光強度の関係を整合する整合工程と、励起光反射層相互間を内挿補間してワーク表面全体の励起光を推定する推定工程と、この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算工程と、この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第2の比較工程と、を有し、この第1の比較工程および第2の比較工程による比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算すると好適である。
【0013】
本発明はまた、試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出装置であって、励起光を前記蛍光塗料面上へ照射することにより発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算手段と、この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正手段と、補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定手段と、を有し、前記変動要因演算手段は、前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、この蛍光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
さらに、この影響演算手段は、前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合手段と、前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定手段と、この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算手段と、この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算手段と、この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する比較手段と、を有し、この比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算すると好適である。
【0015】
また、本発明は、試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出装置であって、励起光を前記蛍光塗料面上へ照射することにより発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算手段と、この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正手段と、補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定手段と、を有し、前記変動要因演算手段は、前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、前記ワークの前記蛍光塗料面下に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面を通じた前記励起光を反射する励起光反射層により反射した励起光の励起光強度を取得する励起光強度取得手段と、この蛍光強度および反射した励起光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算手段と、を有することを特徴とする。
【0016】
さらに、この影響演算工程は、前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合手段と、前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定手段と、この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算手段と、この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算手段と、この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第1の比較手段と、有し、さらに、励起光反射層の位置と反射した励起光の励起光強度の関係を整合する整合手段と、励起光反射層相互間を内挿補間してワーク表面全体の励起光を推定する推定手段と、この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算手段と、この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第2の比較手段と、を有し、この第1の比較手段および第2の比較手段による比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算すると好適である。
【0017】
また、本発明は、試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度をコンピュータによって検出する試料濃度検出プログラムであって、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、この蛍光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算し、この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正し、補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度をコンピュータによって検出する試料濃度検出プログラムであって、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、蛍光塗料層を通じて前記ワークの前記蛍光塗料面下に部分的に塗布された、前記励起光を反射する励起光反射層により反射した励起光の励起光強度を取得し、この蛍光強度および反射した励起光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算し、この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正し、補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、試料濃度に依存しない蛍光強度変動要因の影響を防止し、より高精度にワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法、装置およびプログラムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本実施形態では、ワーク(基板)として燃料電池のMEAに使用されるセパレータ板、検出の対象となる試料ガスとして酸素ガス、蛍光塗料としてルテニウム錯体塗料(酸素消光性)、励起光源として波長470nmの青色光を励起光として照射できる励起光源を用い、セパレータ板の表面の酸素ガス濃度分布を検出する。なお、このような状況下で発生する蛍光は約600nmである。また、光の強度として輝度値の強度を用いている。このような構成を用いて燃料電池電極に用いられるセパレータ板に燃料電池で用いられる酸素ガスがどのようにセパレータ板上で分布するのかを検出する。
【0022】
[参考形態1]
「装置の全体構成」
図1には参考形態1に係る酸素ガス濃度検出装置100の構成図が示される。表面ガス濃度の分布の検出対象となるセパレータ12を基板とする検知材10がある。検知材10は励起光および蛍光を通過できる透過窓を有したケース18内に設置されている。検知材10とこの透過窓の間は空間19を有しており、この空間19が検知材10の表面に拡散される酸素ガスを通じるガス流路19となる。検知材10に励起光を照射可能となるように励起光源20が設置される。検知材10で反射した励起光および発生した蛍光を2方向へ分割する光分割手段としてのハーフプリズム30が検知材10の正面に設置される。ハーフプリズム30で分割された光が進行する2方向のうち1方向には、励起光の波長(約470nm)の光線を選択して通過させる励起光波長通過手段としての励起光透過フィルタ40が備えられている。フィルタ40の背後にはフィルタ40を通過した励起光の輝度値を検知する励起光検知手段としての励起光用CCDカメラ50が備えられている。ハーフプリズム30で分割された光が進行する2方向のうち残りのもう1つの方向には、蛍光の波長(約600nm)の光線を選択して通過させる蛍光波長通過手段としての蛍光透過フィルタ60が備えられている。フィルタ60の背後にはフィルタ60を通過した蛍光の輝度値を検知する蛍光検知手段としての蛍光用CCDカメラ70が備えられている。CCDカメラ50およびCCDカメラ70は、コンピュータ80と電気通信接続されている。コンピュータ80は、それぞれのCCDカメラからのデータを取得し、その取得データに基づいて内部で演算し、画像出力手段に画像データを送信する演算手段である。コンピュータ80から受け取った画像データを出力する画像出力手段としてはディスプレイ90を有している。
【0023】
「検知材の構成」
図1Aには測定対象となる検知材10のハーフプリズム30側から見た上面図が示される。図1Bには図1Aの検知材10をX−Y面で切断した場合の断面図が示される。セパレータ12に蛍光塗料が全面に塗布され、蛍光塗料層14が形成されている。蛍光塗料層14上には、励起光を反射する励起光反射層16が部分的に塗布されている。励起光反射層は白色塗料等、励起光を反射できる一般的塗料でよい。
【0024】
部分的に励起光反射層16を塗布するとは、蛍光塗料層14面の全面ではないという態様を示し、励起光を反射させて励起光により蛍光輝度値変動要因の影響を演算し、補正できるデータを採取できる態様であればよい。例えば、縞状、マトリックス状、まだら状等、蛍光塗料層14に励起光反射層16を散在させて塗布することが挙げられる。参考形態においては、蛍光塗料層14上に直径1mm程度の円形状の多数の励起光反射層16を、等間隔に散在させて塗布して、この円形状の励起光反射層それぞれを励起光反射部領域としている(図1A)。塗布手段はスクリーン印刷手段等を用いて塗布するなど一般的な塗布手段であればよい。
【0025】
励起光反射部領域の数が多く、相互間の距離が短いほど後述の内挿補間による全箇所の励起光輝度値の演算制度が向上するので励起反射部の数が多く、相互間距離を短くする方が好適である。また、蛍光データの取得阻害を防止するためにも励起光反射部領域各々の面積は小さい方が好適である。
【0026】
「コンピュータの内部構成」
図1Cにはコンピュータ80の内部構成を示すブロック図が示される。位置輝度演算手段81は、励起光用CCDカメラ50と電気通信接続され、CCDカメラ50から励起光の輝度値データを得る。また、位置輝度演算手段81は、位置記憶手段81Rと電気通信接続されている。位置記憶手段81Rには予め記憶されたCCDカメラ50の撮影箇所に対する励起光反射部領域の位置関係が予め記憶されている。位置輝度演算手段81は、位置記憶手段81Rから位置関係のデータを読み出し、反射励起光の輝度値データと位置関係から、検知材10のどの励起光反射部領域から反射されて来た励起光であるかという輝度値と位置関係を演算して整合させる。また、位置輝度演算手段81は、その演算結果を平均輝度演算手段82に送信する。平均輝度演算手段82は位置輝度演算手段81からのデータに基づき、励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均を演算する。また、平均輝度演算手段82は内挿補間演算手段83に励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均のデータを送信する。内挿補間演算手段83は平均輝度演算手段82からのデータに基づき、励起光反射部領域間の内挿補間を行い、CCDカメラ50で撮影した全箇所の励起光輝度値を演算する。内挿補間演算手段83は撮影した全箇所と励起光輝度値の関係データを理論輝度値演算手段84に送信する。理論輝度値演算手段84は、内挿補間演算手段83と、検定線記憶手段84Rと電気通信接続されている。検定線記憶手段84Rは励起光輝度と蛍光輝度との理論上の検定線が予め記憶されている。理論輝度値演算手段84は内挿補間演算手段83からの撮影した全箇所と励起光輝度値の関係をデータに基づいて、検定線記憶手段84Rから検定線を呼び出し、その検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値を演算する。理論輝度値演算手段84は全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値を比較補正演算手段85へ送信する。比較補正演算手段85は理論輝度値演算手段84と、蛍光用CCDカメラ70と、補正関係記憶手段85Rと電気通信接続されている。補正関係記憶手段85Rには理論蛍光輝度値と実際の蛍光輝度値とのずれに対して実際の蛍光輝度値をいくらに補正すべきかという補正関係が予め記憶されている。比較補正演算手段85はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段84から送られた理論上の理論蛍光輝度値と比較する。その比較結果に基づいて、補正関係記憶手段85Rから実際の蛍光輝度値をいくらに補正すべきかという補正関係を読み出し、その補正関係に基づいて実際の蛍光輝度値データを補正する。その補正処理を行った後の蛍光輝度値データを濃度演算手段86へ送信する。濃度演算手段86は比較補正演算手段85と、蛍光輝度値と酸素ガス濃度の関係を記憶した輝度濃度記憶手段86Rと接続されている。濃度演算手段86は輝度濃度記憶手段86Rから蛍光輝度値と酸素ガス濃度の関係を読み出し、比較補正演算手段85からの補正した蛍光輝度値データに基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度を演算し、その濃度に応じて色を分けた画像データをディスプレイ90へと送信する。なお、上記一連の処理は上記通常は1つのコンピュータ内でなされる。通常、演算手段はCPU(Central Processing Unit)、記憶手段はメモリなどを用いる。予め記憶手段に記憶されている検定線等の相関関係は当業者であれば容易に測定できるものである。
【0027】
「酸素ガス濃度分布の検出方法」
図1Dに示されるフローチャートに基づいて、図1の酸素ガス濃度検出装置を用いた酸素ガス濃度分布の検出の方法について説明する。セパレータを基板12として、その上に蛍光塗料14に励起光反射層16を部分的に塗布した検知材10上に、ガス流路19を通じて酸素ガスを表面拡散させる(S10)。酸素ガスを拡散させると共に、励起光源20により、励起光を検知材10に照射して励起光反射部16で励起光を反射させる。励起光反射部16では、励起光は蛍光塗料の励起に用いられることなく、反射する。反射励起光は酸素濃度ガスに依存することがないので、反射励起光を検知することでガス濃度非依存の蛍光強度変動要因である励起光の照射ムラや励起光源の経時的な明暗変化の影響等を検知して、その影響を除去することが可能となる。また、励起光反射部16が塗布されておらず、蛍光塗料層14が表面に露出している箇所においては、励起光により蛍光を発生させる。酸素ガス濃度が濃い箇所においては酸素ガスにより蛍光が消光される。反射した励起光と発生した蛍光は混合し、これらが混合した混合光となる(S12)。混合光をハーフプリズム30によって、2方向に分離する(S14)。1方向は、励起光透過フィルタ40を通じる方向へ、残りの1方向は蛍光透過フィルタ60を通じる方向へと分離する。励起光透過フィルタ40を通じる方向へ進行する混合光を励起光透過フィルタ40を用い、励起光波長のみを選択して取り出す。取り出した反射励起光の画像輝度値を励起光用CCDカメラ50で取得する(S16)。反射励起光の画像輝度値はコンピュータ80によって処理する。
【0028】
すなわち、CCDカメラ50から励起光の輝度値データを得た位置輝度演算手段81は、励起光の輝度値データとCCDカメラ50の撮影箇所の位置関係から、検知材10のどの励起光反射部領域から反射されて来た励起光であるかを演算し、位置と輝度値の関係を整合させたデータP(Xn,Yn)を得る(S18)。次に平均輝度演算手段82は位置輝度演算手段81からの輝度データP(Xn,Yn)に基づき、励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均を演算し、励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均のデータA(Xn,Yn)を得る(S20)。これにより、さらに内挿補間演算手段83は平均輝度演算手段82からの輝度データA(Xn,Yn)に基づき、励起光反射部領域相互間の内挿補間を行い、CCDカメラ50で撮影した全箇所の励起光輝度値のデータE(Xn,Yn)を得る(S22)。ここで内挿補間の方法としては、例えば線形内挿、多項式補間、スプライン補間などを用いることができる。次に理論輝度値演算手段84により内挿補間演算手段83からの反射励起光輝度データE(Xn,Yn)と蛍光輝度との理論上の検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値データC(Xn,Yn)を演算する(S24)。
【0029】
次に、蛍光透過フィルタ60を通じる方向へ進行する混合光を、蛍光透過フィルタ60を用い、蛍光波長のみを選択して取り出す。取り出した蛍光の画像輝度値を蛍光用CCDカメラ70で取得する(S26)。比較補正演算手段85はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段84から送られた全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値C(Xn,Yn)と比較し、その比較結果に基づいて実際の蛍光の輝度値データを補正し、その補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)を得る(S28)。次に濃度演算手段86は比較補正演算手段85からの補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)に基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度データO(Xn,Yn)を演算し、その濃度に応じて色を分けた画像データをディスプレイ90へと送信する(S30)。ディスプレイ90には、酸素ガス濃度O(Xn,Yn)に応じて色を分けた画像データを出力させる。これによりセパレータ上の酸素ガス濃度の分布を精度良く色により可視化して認識できる(S32)。
【0030】
以上の方法により、励起光の照射ムラや励起光源の経時的な明暗変化の検出ノイズの影響を除去して正確にセパレータ上の酸素ガス濃度分布を測定できる。また、本方法では、ガス濃度に依存しない蛍光強度変動要因の検定補正を、ガス濃度検出時に同時に行うことができ、ガス濃度の検出前において、事前にこれら蛍光強度変動要因の検定補正を行う必要がない。よって工程数を削減できる。
【0031】
[実施形態1]
「装置の全体構成」
図2には実施形態1に係る酸素ガス濃度検出装置200の構成図が示される。表面ガス濃度の分布の検出対象となるセパレータ12を基板とする検知材110がある。検知材110は励起光および蛍光を通過できる透過窓を有したケース18内に設置されている。検知材110とこの透過窓の間は空間19を有しており、この空間19が検知材110の表面に拡散される酸素ガスを通じるガス流路19となる。検知材110に励起光を照射可能となるように励起光源20が設置される。検知材110で発生した蛍光の波長(約600nm)の光線を選択して通過させる蛍光波長通過手段としての蛍光透過フィルタ60が検知材110の正面に備えられている。フィルタ60の背後にはフィルタ60を通過した蛍光の輝度値を検知する蛍光検知手段としての蛍光用CCDカメラ70が備えられている。CCDカメラ70は、コンピュータ180と電気通信接続されている。コンピュータ180は、CCDカメラ70からのデータを取得し、その取得データに基づいて内部で演算し、画像出力手段に画像データを送信する演算手段である。コンピュータ180から受け取った画像データを出力する画像出力手段としてはディスプレイ90を有している。
【0032】
「検知材の構成」
図2Aには測定対象となる検知材110のカメラ70から見た上面図が示される。図2Bには図2Aの検知材110をX−Y面で切断した場合の断面図が示される。図1Aおよび図1Bの検知材10とは蛍光塗料層14上に形成されるのが励起光反射層16でなく、酸素不透過層116である点が主に相違する。すなわち、セパレータ12に蛍光塗料が全面に塗布され、蛍光塗料層14が形成されている。蛍光塗料層14上には、酸素ガスが蛍光反応層14と接触することを防止する酸素不透過層116が部分的に塗布されている。酸素不透過層116は600nm程度の蛍光を発しなく、蛍光反応層14と酸素ガスが接触できるのを防止できるものでよい。
【0033】
部分的に酸素不透過層116を塗布するとは、蛍光塗料層14面の全面ではないという態様を示し、励起光を反射させて励起光により蛍光輝度値変動要因の影響を演算し、補正できるデータを採取できる態様であればよい。例えば、縞状、マトリックス状、まだら状等、蛍光塗料層14に酸素不透過層116を散在させて塗布することが挙げられる。実施形態においては、蛍光塗料層14上に直径1mm程度の円形状の多数の酸素不透過層116を、等間隔に散在させて塗布して、この円形状の励起光反射層それぞれを酸素不透過部領域としている(図2A)。塗布手段はスクリーン印刷手段等を用いて塗布するなど一般的な塗布手段であればよい。
【0034】
酸素不透過部領域の数が多く、相互間の距離が短いほど後述の内挿補間による全箇所の励起光輝度値の演算制度が向上するので酸素不透過部の数が多く、相互距離間を短くする方が好適である。また、蛍光データの取得阻害を防止するためにも酸素不透過部領域各々の面積は小さい方が好適である。
【0035】
「コンピュータの内部構成」
図2Cにはコンピュータ180の内部構成を示すブロック図が示される。位置輝度演算手段181は、蛍光用CCDカメラ70と電気通信接続され、CCDカメラ70から蛍光の輝度値データを得る。また、位置輝度演算手段181は、位置記憶手段181Rと電気通信接続されている。位置記憶手段181Rには予め記憶されたCCDカメラ50の撮影箇所に対する酸素不透過部領域の位置関係が予め記憶されている。位置輝度演算手段181は、位置記憶手段181Rから位置関係のデータを読み出し、酸素不透過部の輝度値データと位置関係から、検知材110のどの酸素不透過部領域から反射されて来た蛍光であるかという輝度値と位置関係を演算して整合させる。また、位置輝度演算手段181は、その演算結果を平均輝度演算手段182に送信する。平均輝度演算手段182は位置輝度演算手段181からのデータに基づき、酸素不透過部領域各々の蛍光の輝度値平均を演算する。また、平均輝度演算手段182は内挿補間演算手段183に酸素不透過部領域各々の蛍光の輝度値平均データを送信する。内挿補間演算手段183は平均輝度演算手段182からのデータに基づき、酸素不透過部領域間の内挿補間を行い、CCDカメラ70で撮影した全箇所の蛍光輝度値を演算する。内挿補間演算手段183は撮影した全箇所と蛍光輝度値の関係データを励起光演算手段187へ送信する。励起光演算手段187は、内挿補間演算手段183と、検定線記憶手段187Rと電気通信接続されている。検定線記憶手段187Rには酸素不透過部領域で得られた蛍光輝度と励起光輝度の関係が予め記憶されている。励起光演算手段187は内挿補間演算手段183からの撮影した全箇所と蛍光輝度値の関係データに基づいて、検定線記憶手段187Rから蛍光輝度と励起光輝度の検定線を呼び出し、その検定線により全撮影箇所の励起光輝度データを演算する。また、励起光演算手段187Rは、全撮影箇所の励起光輝度データを理論輝度値演算手段184に送信する。理論輝度値演算手段184は、励起光演算手段187と、検定線記憶手段184Rと電気通信接続されている。検定線記憶手段184Rは励起光輝度と蛍光輝度との理論上の検定線が予め記憶されている。理論輝度値演算手段184は励起光演算手段187からの撮影した全箇所と励起光輝度値の関係をデータに基づいて、検定線記憶手段184Rから検定線を呼び出し、その検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値を演算する。理論輝度値演算手段184は全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値を比較補正演算手段185へ送信する。比較補正演算手段185は理論輝度値演算手段184と、蛍光用CCDカメラ70と、補正関係記憶手段185Rと電気通信接続されている。補正関係記憶手段85Rには理論蛍光輝度値と実際の蛍光輝度値とのずれに対して実際の蛍光輝度値をいくらに補正すべきかという補正関係が予め記憶されている。比較補正演算手段185はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段184から送られた理論上の理論蛍光輝度値と比較する。その比較結果に基づいて、補正関係記憶手段185Rから実際の蛍光輝度値をいくらに補正すべきかという補正関係を読み出し、その補正関係に基づいて実際の蛍光輝度値データを補正する。その補正処理を行った後の蛍光輝度値データを濃度演算手段186へ送信する。濃度演算手段186は比較補正演算手段185と、蛍光輝度値と酸素ガス濃度の関係を記憶した輝度濃度記憶手段186Rと接続されている。濃度演算手段86は輝度濃度記憶手段186から蛍光輝度値と酸素ガス濃度の関係を読み出し、比較補正演算手段185からの補正した蛍光輝度値データに基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度を演算し、その濃度に応じて色を分けた画像データをディスプレイ90へと送信する。なお、上記一連の処理は上記通常は1つのコンピュータ内でなされる。通常、演算手段はCPU、記憶手段はメモリなどを用い、記憶手段はメモリなどを用いる。予め記憶手段に記憶されている検定線等の相関関係は当業者であれば容易に測定できるものであるのは参考形態1と同様である。
【0036】
「酸素ガス濃度分布の検出方法」
図2Dに示されるフローチャートに基づいて、図2の酸素ガス濃度検出装置を用いた酸素ガス濃度分布の検出の方法について説明する。セパレータを基板12として、その上に蛍光塗料14に酸素不透過部層116を部分的に塗布した検知材110上に、ガス流路19を通じて酸素ガスを表面拡散させる。酸素ガスを拡散させると共に、酸素不透過部領域116から発せられる蛍光を取得する。励起光源20により、励起光を検知材110に照射して(S110)、酸素不透過部層116下の蛍光塗料層14により、蛍光を発生させる(S112)。この部位で発生する蛍光は酸素不透過部層116によって酸素が介在しない状況で発生する蛍光であり、酸素ガス濃度に非依存である。よって、この部位で発生する蛍光を測定することにより励起光の照射ムラや励起光源の経時的な明暗変化の検出ノイズの影響を検知して、そのノイズを除去することが可能となる。酸素不透過部領域116の下層の蛍光塗料14で発生した蛍光を蛍光透過フィルタ60で蛍光波長のみを選択して取り出す。取り出した蛍光の画像輝度値を蛍光用CCDカメラ70で取得する(S114)。蛍光の画像輝度値はコンピュータ180によって処理する。
【0037】
すなわち、CCDカメラ70から蛍光の輝度値データを得た位置輝度演算手段181は、蛍光の輝度値データとCCDカメラ70の撮影箇所との位置関係から、検知材10のどの酸素不透過部領域116を通じて発せられた蛍光であるかを演算し、位置と輝度値の関係を整合させたデータP(Xn,Yn)を得る(S116)。次に平均輝度演算手段182は位置輝度演算手段181からの輝度データP(Xn,Yn)に基づき、酸素不透過部領域各々の蛍光の輝度値平均を演算し、酸素不透過部領域各々の励起光の輝度値平均データA(Xn,Yn)を得る(S118)。これにより、さらに内挿補間演算手段183は平均輝度演算手段182からの輝度データA(Xn,Yn)に基づき、酸素不透過部領域相互間の内挿補間を行い、CCDカメラ70で撮影した全箇所の蛍光輝度値データM(Xn,Yn)を得る(S120)。次に励起光演算手段187により内挿補間演算手段183からの蛍光輝度データM(Xn,Yn)と励起光輝度との検定線により全撮影箇所の蛍光輝度値データE(Xn,Yn)を演算する(S122)。次に理論輝度値演算手段184により励起光演算手段187からの励起光輝度データE(Xn,Yn)と蛍光輝度との理論上の検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値データC(Xn,Yn)を演算する(S124)。
【0038】
次に酸素不透過部領域116以外から発せられる蛍光、すなわち、輝度が酸素濃度に依存している蛍光を蛍光透過フィルタ70を用い、蛍光波長のみを選択して取り出す。取り出した蛍光の画像輝度値を蛍光用CCDカメラ70で取得する(S126)。比較補正演算手段185はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段184から送られた全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値C(Xn,Yn)と比較する。その比較結果に基づいて、比較補正演算手段185は実際の蛍光の輝度値データを補正し、その補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)を得る(S128)。次に濃度演算手段186は比較補正演算手段185からの補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)に基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度データO(Xn,Yn)を演算し、その濃度に応じて色を分けた画像データをディスプレイ90へと送信する(S130)。次に参考形態1と同様に、ディスプレイ90には、酸素ガス濃度O(Xn,Yn)に応じて色を分けた画像データを出力させる(S132)。
【0039】
以上によりセパレータ上の酸素ガス濃度の分布を精度良く色により可視化して認識できる。以上の方法により、参考形態1と同様に励起光の照射ムラや励起光源の経時的な明暗変化の検出ノイズの影響を除去して正確にセパレータ上の酸素ガス濃度分布を測定できる。また、本方法では、ガス濃度に依存しない蛍光強度変動要因の検定補正を、ガス濃度検出時に同時に行うことができ、ガス濃度の検出前において、事前にこれら蛍光強度変動要因の検定補正を行う必要がない。よって工程数を削減できる。さらに実施形態1においては、蛍光の画像輝度値を検知する蛍光検知手段(蛍光用CCDカメラ)のみで検定補正を行うことができ、励起光検知手段や光分割手段を検定補正に必要としないという利点がある。
【0040】
[参考形態2]
「装置の全体構成」
図3には参考形態2に係る酸素ガス濃度検出装置300の構成図が示される。基本的な構成は参考形態1と同様である。表面ガス濃度の分布の検出対象となるセパレータ12を基板とする検知材210がある。検知材210は励起光および蛍光を通過できる透過窓を有したケース18内に設置されている。検知材210とこの透過窓の間は空間19を有しており、この空間19が検知材210の表面に拡散される酸素ガスを通じるガス流路19となる。検知材210に励起光を照射可能となるように励起光源20が設置される。検知材210で反射した励起光および発生した蛍光を2方向へ分割する光分割手段としてのハーフプリズム30が検知材210の正面に設置される。ハーフプリズム30で分割された光が進行する2方向のうち1方向には、励起光の波長の光線を選択して通過させる励起光波長通過手段としての励起光透過フィルタ40が備えられている。フィルタ40の背後にはフィルタ40を通過した励起光の輝度値を検知する励起光検知手段としての励起光用CCDカメラ50が備えられている。ハーフプリズム30で分割された光が進行する2方向のうち残りのもう1つの方向には、蛍光の波長の光線を選択して通過させる蛍光波長通過手段としての蛍光透過フィルタ60が備えられている。フィルタ60の背後にはフィルタ60を通過した蛍光の輝度値を検知する蛍光検知手段としての蛍光用CCDカメラ70が備えられている。CCDカメラ50およびCCDカメラ70は、コンピュータ280と電気通信接続されている。コンピュータ280は、それぞれのCCDカメラからのデータを取得し、その取得データに基づいて内部で演算し、画像出力手段に画像データを送信する演算手段である。コンピュータ280から受け取った画像データを出力する画像出力手段としてはディスプレイ90を有している。
【0041】
「検知材の構成」
図3Aには測定対象となる検知材210ののハーフプリズム30側から見た上面図が示される。図3Bには図3Aの検知材210をX−Y面で切断した場合の断面図が示される。セパレータ12に励起光を反射する励起光反射層16が部分的に塗布されている。塗布の態様は参考形態1と同様である。励起光反射層16上には蛍光塗料層14が塗布され、励起光反射層16は蛍光塗料層14に埋め込まれており、検知材210の表面は蛍光塗料層14で全面が覆われている。
【0042】
励起光反射部領域16の数が多く、相互間の距離が短いほど後述の内挿補間による全箇所の励起光輝度値の演算制度が向上するので励起反射部の数が多く、相互間距離を短くする方が好適である等は参考形態1と同様である。
【0043】
「コンピュータの内部構成」
図3Cにはコンピュータ280の内部構成を示すブロック図が示される。位置輝度演算手段281は、励起光用CCDカメラ50と電気通信接続され、CCDカメラ50から励起光の輝度値データを得る。また、位置輝度演算手段281は、位置記憶手段281Rと電気通信接続されている。位置記憶手段281Rには予め記憶されたCCDカメラ50の撮影箇所に対する励起光反射部領域の位置関係が予め記憶されている。位置輝度演算手段281は、位置記憶手段281Rから位置関係のデータを読み出し、反射励起光の輝度値データと位置関係から、検知材10のどの励起光反射部領域から反射されて来た励起光であるかという輝度値と位置関係を演算して整合させる。また、位置輝度演算手段281は、その演算結果を平均輝度演算手段282に送信する。平均輝度演算手段282は位置輝度演算手段281からの輝度値データに基づき、励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均を演算する。また、平均輝度演算手段282は内挿補間演算手段283に励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均のデータを送信する。内挿補間演算手段283は平均輝度演算手段282からのデータに基づき、励起光反射部領域間の内挿補間を行い、CCDカメラ50で撮影した全箇所の励起光輝度値を演算する。内挿補間演算手段283は撮影した全箇所と励起光輝度値の関係データを膜厚演算手段288に送信する。膜厚演算手段288は、内挿補間演算手段283と、検定線記憶手段288Rと電気通信接続されている。検定線記憶手段288Rは励起光輝度と蛍光輝度との理論上の検定線が予め記憶されている。膜厚演算手段288は内挿補間演算手段283からの撮影した全箇所と励起光輝度値の関係をデータに基づいて、検定線記憶手段288Rから検定線を呼び出し、その検定線により全撮影箇所の蛍光塗料膜厚を演算する。また、膜厚演算手段288は全撮影箇所の蛍光塗料膜厚のデータを理論輝度値演算手段284に送信する。理論輝度値演算手段284は、膜厚演算手段288と、検定線記憶手段284Rと電気通信接続されている。検定線記憶手段284Rは塗料膜厚と蛍光輝度との理論上の検定線が予め記憶されている。理論輝度値演算手段284は膜厚演算手段288からの膜厚データに基づいて、検定線記憶手段284Rから検定線を呼び出し、その検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値を演算する。理論輝度値演算手段284は全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値を比較補正演算手段285へ送信する。
【0044】
比較補正演算手段285は理論輝度値演算手段284と、蛍光用CCDカメラ70と、補正関係記憶手段285Rと電気通信接続されている。補正関係記憶手段285Rには理論蛍光輝度値と実際の蛍光輝度値とのずれに対して実際の蛍光輝度値をいくらに補正すべきかという補正関係が予め記憶されている。比較補正演算手段285はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段284から送られた理論上の理論蛍光輝度値と比較する。その比較結果に基づいて、補正関係記憶手段285Rから実際の蛍光輝度値をいくらに補正すべきかという補正関係を読み出し、その補正関係に基づいて実際の蛍光輝度値データを補正する。その補正処理を行った後の蛍光輝度値データを濃度演算手段286へ送信する。濃度演算手段286は比較補正演算手段285と、蛍光輝度値と酸素ガス濃度の関係を記憶した輝度濃度記憶手段286Rと接続されている。濃度演算手段286は輝度濃度記憶手段286Rから蛍光輝度値と酸素ガス濃度の関係を読み出し、比較補正演算手段285からの補正した蛍光輝度値データに基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度を演算し、その濃度に応じて色を分けた画像データをディスプレイ90へと送信する。なお、上記一連の処理は上記通常は1つのコンピュータ内でなされる。通常、演算手段はCPU、記憶手段はメモリなどを用いる。予め記憶手段に記憶されている検定線等の相関関係は当業者であれば容易に測定できるものである等は参考形態1と同様である。
【0045】
「酸素ガス濃度分布の検出方法」
図3Dに示されるフローチャートに基づいて、図3の酸素ガス濃度検出装置を用いた酸素ガス濃度分布の検出の方法について説明する。セパレータを基板12として、その上に励起光反射層16を部分的に塗布し、蛍光塗料層14をその上に被覆させた検知材210上に、ガス流路19を通じて酸素ガスを表面拡散させる。酸素ガスを拡散させると共に、励起光源20により、励起光を検知材210に照射して(S210)、蛍光塗料層14を通じて、励起光反射部16で励起光を反射させる。蛍光塗料膜が厚いほど励起光反射部16に届く、励起光量は減衰し、また、励起光反射層16で反射した反射励起光も減衰する。よって、反射励起光の減衰と蛍光塗料膜厚14には相関関係があり、反射励起光を検知することでガス濃度非依存の蛍光強度変動要因である塗料膜厚のムラを検知して、その影響を除去することが可能となる。
【0046】
励起光を検知材210全体に照射して蛍光を発生させる。酸素ガス濃度が濃い箇所においては酸素ガスにより蛍光が消光される。励起光反射層16で反射した励起光と発生した蛍光は混合し、これらが混合した混合光となる(S212)。混合光をハーフプリズム30によって、2方向に分離する。1方向は、励起光透過フィルタ40を通じる方向へ、残りの1方向は蛍光透過フィルタ60を通じる方向へと分離する(S214)。励起光透過フィルタ40を通じる方向へ進行する混合光を励起光透過フィルタ40を用い、励起光波長のみを選択して取り出す。取り出した反射励起光の画像輝度値を励起光用CCDカメラ50で取得する(S216)。反射励起光の画像輝度値はコンピュータ280によって処理する。
【0047】
すなわち、CCDカメラ50から励起光の輝度値データを得た位置輝度演算手段281は、励起光の輝度値データとCCDカメラ50の撮影箇所の位置関係から、検知材210のどの励起光反射部領域から反射されて来た励起光であるかを演算し、位置と輝度値の関係を整合させたデータP(Xn,Yn)を得る(S218)。次に平均輝度演算手段282は位置輝度演算手段281からの輝度データP(Xn,Yn)に基づき、励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均を演算し、励起光反射部領域各々の励起光の輝度値平均のデータA(Xn,Yn)を得る(S220)。これにより、さらに内挿補間演算手段283は平均輝度演算手段282からの輝度データA(Xn,Yn)に基づき、励起光反射部領域相互間の内挿補間を行い、CCDカメラ50で撮影した全箇所の励起光輝度値のデータE(Xn,Yn)を得る(S222)。
【0048】
次に膜厚演算手段288により内挿補間演算手段283からの反射励起光輝度データE(Xn,Yn)と蛍光塗料膜厚との理論上の検定線により全撮影箇所の蛍光塗料膜厚データD(Xn,Yn)を演算する(S224)。次に理論輝度値演算手段284により膜厚演算手段288からの膜厚データD(Xn,Yn)と蛍光輝度との理論上の検定線により全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値データC(Xn,Yn)を演算する(S226)。
【0049】
次に、蛍光透過フィルタ60を通じる方向へ進行する混合光を蛍光透過フィルタ60を用い、蛍光波長のみを選択して取り出す。取り出した蛍光の画像輝度値を蛍光用CCDカメラ70で取得する(S228)。比較補正演算手段285はCCDカメラ70から実際の蛍光の輝度値データを得、理論輝度値演算手段284から送られた全撮影箇所の理論上の理論蛍光輝度値C(Xn,Yn)と比較し、その比較結果に基づいて実際の蛍光の輝度値データを補正し、その補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)を得る(S230)。次に濃度演算手段286は比較補正演算手段285からの補正した蛍光輝度値データL(Xn,Yn)に基づき、撮影箇所全体の酸素ガス濃度データO(Xn,Yn)を演算し、その濃度に応じて色を分けた画像データをディスプレイ90へと送信する(S232)。ディスプレイ90には、酸素ガス濃度O(Xn,Yn)に応じて色を分けた画像データを出力させる(S234)。
【0050】
以上によりセパレータ上の酸素ガス濃度の分布を精度良く色により可視化して認識できる。以上の方法により、蛍光塗料の膜厚のムラを除去して正確にセパレータ上の酸素ガス濃度分布を測定できる。
【0051】
[実施形態2]
実施形態2は、実施形態1と、参考形態2の装置を組み合わせる構成である。検知材は参考形態2の蛍光塗料層14の上に実施形態1の酸素不透過部層116を部分的に塗布する。
【0052】
実施形態2では、実施形態1の励起光の照射ムラや励起光源の経時的な明暗変化による蛍光強度変動要因の補正と、参考形態2の蛍光塗料の膜厚のムラによる蛍光強度変動要因の補正を同時に行うことができる利点がある。
【0053】
[その他]
上記はガス濃度検出装置について実施形態を示したが同様のガス濃度検出方法およびガス濃度検出プログラムの提供も可能であり、当業者であれば上記実施形態に基づいて十分に実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、試料濃度を検出する必要があるワーク全般に適用できる。試料濃度とはガス濃度に限られるものではなく、液体濃度、固体密度であっても適用できる場合がある。例えば、燃料電池の電極セルを流れるガス濃度の検出測定に適用できる。また、ワークの溶接の際のシールドガスのガス濃度の分布測定などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】参考形態1のガス濃度検出装置の構成図である。
【図1A】参考形態1の検知材の上面図である。
【図1B】参考形態1の検知材の断面図である。
【図1C】参考形態1のコンピュータの内部構成を示すブロック図である。
【図1D】参考形態1に係るガス濃度検出フローチャートである。
【図2】実施形態1のガス濃度検出装置の構成図である。
【図2A】実施形態1の検知材の上面図である。
【図2B】実施形態1の検知材の断面図である。
【図2C】実施形態1のコンピュータの内部構成を示すブロック図である。
【図2D】実施形態1に係るガス濃度検出フローチャートである。
【図3】参考形態2のガス濃度検出装置の構成図である。
【図3A】参考形態2の検知材の上面図である。
【図3B】参考形態2の検知材の断面図である。
【図3C】参考形態2のコンピュータの内部構成を示すブロック図である。
【図3D】参考形態2に係るガス濃度検出フローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
10,110,210 検知材、12 セパレータ、14 蛍光塗料層、16 励起光反射層、18 ケース、19 ガス流路(空間)、116 酸素不透過層、20 励起光源、30 ハーフプリズム、40,60 フィルタ、50,70 CCDカメラ、80,180,280 コンピュータ、90 ディスプレイ、100,200,300 ガス濃度検出装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法であって、
励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、
この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算工程と、
この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正工程と、
補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定工程と、
を有し、
前記変動要因演算工程は、
前記ワークの前記蛍光塗料面上に前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層を部分的に塗布する塗布工程と、
前記接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、
この蛍光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算工程と、
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記影響演算工程は、
前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合工程と、
前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定工程と、
この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算工程と、
この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算工程と、
この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する比較工程と、
を有し、
この比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する方法。
【請求項3】
試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法であって、
励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、
この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算工程と、
この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正工程と、
補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定工程と、
を有し、
前記変動要因演算工程は、
前記ワークの前記蛍光塗料面上に前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層を部分的に塗布する第1の塗布工程と、
前記ワークの前記蛍光塗料面下に前記励起光を反射する励起光反射層を部分的に塗布する第2の塗布工程と、
前記接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、
蛍光塗料層を通じて前記励起光反射層により反射した励起光の励起光強度を取得する励起光強度取得工程と、
この蛍光強度および反射した励起光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算工程と、
を有する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記影響演算工程は、
前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合工程と、
前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定工程と、
この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算工程と、
この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算工程と、
この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第1の比較工程と、
を有し、
さらに、
励起光反射層の位置と反射した励起光の励起光強度の関係を整合する整合工程と、
励起光反射層相互間を内挿補間してワーク表面全体の励起光を推定する推定工程と、
この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算工程と、
この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第2の比較工程と、
を有し、
この第1の比較工程および第2の比較工程による比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する方法。
【請求項5】
試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出装置であって、
励起光を前記蛍光塗料面上へ照射することにより発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、
この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算手段と、
この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正手段と、
補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定手段と、
を有し、
前記変動要因演算手段は、
前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、
この蛍光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算手段と、
を有する装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、
前記影響演算手段は、
前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合手段と、
前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定手段と、
この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算手段と、
この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算手段と、
この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する比較手段と、
を有し、
この比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する装置。
【請求項7】
試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出装置であって、
励起光を前記蛍光塗料面上へ照射することにより発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、
この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算手段と、
この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正手段と、
補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定手段と、
を有し、
前記変動要因演算手段は、
前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、
前記ワークの前記蛍光塗料面下に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面を通じた前記励起光を反射する励起光反射層により反射した励起光の励起光強度を取得する励起光強度取得手段と、
この蛍光強度および反射した励起光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算手段と、
を有する装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、
前記影響演算手段は、
前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合手段と、
前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定手段と、
この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算手段と、
この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算手段と、
この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第1の比較手段と、
を有し、
さらに、
励起光反射層の位置と反射した励起光の励起光強度の関係を整合する整合手段と、
励起光反射層相互間を内挿補間してワーク表面全体の励起光を推定する推定手段と、
この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算手段と、
この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第2の比較手段と、
を有し、
この第1の比較手段および第2の比較手段による比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する装置。
【請求項9】
試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度をコンピュータによって検出する試料濃度検出プログラムであって、
励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、
この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、
この蛍光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算し、
この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正し、
補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定するプログラム。
【請求項10】
試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度をコンピュータによって検出する試料濃度検出プログラムであって、
励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、
前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、
蛍光塗料層を通じて前記ワークの前記蛍光塗料面下に部分的に塗布された、前記励起光を反射する励起光反射層により反射した励起光の励起光強度を取得し、
この蛍光強度および反射した励起光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算し、
この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正し、
補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定するプログラム。
【請求項1】
試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法であって、
励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、
この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算工程と、
この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正工程と、
補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定工程と、
を有し、
前記変動要因演算工程は、
前記ワークの前記蛍光塗料面上に前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層を部分的に塗布する塗布工程と、
前記接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、
この蛍光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算工程と、
を有する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記影響演算工程は、
前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合工程と、
前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定工程と、
この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算工程と、
この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算工程と、
この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する比較工程と、
を有し、
この比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する方法。
【請求項3】
試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出方法であって、
励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、
この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算工程と、
この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正工程と、
補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定工程と、
を有し、
前記変動要因演算工程は、
前記ワークの前記蛍光塗料面上に前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層を部分的に塗布する第1の塗布工程と、
前記ワークの前記蛍光塗料面下に前記励起光を反射する励起光反射層を部分的に塗布する第2の塗布工程と、
前記接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得工程と、
蛍光塗料層を通じて前記励起光反射層により反射した励起光の励起光強度を取得する励起光強度取得工程と、
この蛍光強度および反射した励起光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算工程と、
を有する方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記影響演算工程は、
前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合工程と、
前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定工程と、
この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算工程と、
この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算工程と、
この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第1の比較工程と、
を有し、
さらに、
励起光反射層の位置と反射した励起光の励起光強度の関係を整合する整合工程と、
励起光反射層相互間を内挿補間してワーク表面全体の励起光を推定する推定工程と、
この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算工程と、
この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第2の比較工程と、
を有し、
この第1の比較工程および第2の比較工程による比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する方法。
【請求項5】
試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出装置であって、
励起光を前記蛍光塗料面上へ照射することにより発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、
この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算手段と、
この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正手段と、
補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定手段と、
を有し、
前記変動要因演算手段は、
前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、
この蛍光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算手段と、
を有する装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、
前記影響演算手段は、
前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合手段と、
前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定手段と、
この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算手段と、
この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算手段と、
この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する比較手段と、
を有し、
この比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する装置。
【請求項7】
試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度を検出する試料濃度検出装置であって、
励起光を前記蛍光塗料面上へ照射することにより発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、
この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワーク表面から試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する変動要因演算手段と、
この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正する補正手段と、
補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定する判定手段と、
を有し、
前記変動要因演算手段は、
前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において、励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得する蛍光強度取得手段と、
前記ワークの前記蛍光塗料面下に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面を通じた前記励起光を反射する励起光反射層により反射した励起光の励起光強度を取得する励起光強度取得手段と、
この蛍光強度および反射した励起光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する影響演算手段と、
を有する装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、
前記影響演算手段は、
前記接触防止層の位置と蛍光強度の関係を整合する整合手段と、
前記接触防止層相互間を内挿補間してワーク表面全体の蛍光強度を推定する蛍光強度推定手段と、
この推定された蛍光強度からワーク表面全体の励起光強度を推定する励起光強度演算手段と、
この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算手段と、
この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第1の比較手段と、
を有し、
さらに、
励起光反射層の位置と反射した励起光の励起光強度の関係を整合する整合手段と、
励起光反射層相互間を内挿補間してワーク表面全体の励起光を推定する推定手段と、
この推定された励起光からワーク表面全体の理論蛍光強度を推定する理論強度演算手段と、
この理論蛍光強度と前記蛍光強度とを比較する第2の比較手段と、
を有し、
この第1の比較手段および第2の比較手段による比較結果に基づいて試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算する装置。
【請求項9】
試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度をコンピュータによって検出する試料濃度検出プログラムであって、
励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、
この蛍光強度を取得すると同時に、前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、
この蛍光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算し、
この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正し、
補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定するプログラム。
【請求項10】
試料雰囲気中のワーク表面上に塗布された蛍光塗料面上に励起光を照射することにより蛍光を発生させ、この蛍光強度を取得することにより、前記ワーク表面の試料濃度をコンピュータによって検出する試料濃度検出プログラムであって、
励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、
前記ワークの前記蛍光塗料面上に部分的に塗布された、前記蛍光塗料面と前記試料の接触を防止する接触防止層において励起光の照射により発生した蛍光の蛍光強度を取得し、
蛍光塗料層を通じて前記ワークの前記蛍光塗料面下に部分的に塗布された、前記励起光を反射する励起光反射層により反射した励起光の励起光強度を取得し、
この蛍光強度および反射した励起光強度に基づいて、試料濃度非依存による蛍光強度変動要因の影響を演算し、
この蛍光強度変動要因の影響に基づいて、前記蛍光強度を補正し、
補正後の蛍光強度に基づいて前記ワーク表面の試料濃度を判定するプログラム。
【図1】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【公開番号】特開2008−197116(P2008−197116A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90539(P2008−90539)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【分割の表示】特願2003−321211(P2003−321211)の分割
【原出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【分割の表示】特願2003−321211(P2003−321211)の分割
【原出願日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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