説明

試料製造装置および水晶マイクロバランス分析測定装置

【課題】 高感度に液体中の微量成分を少量の試料においても簡易に測定サイトでリアルタイムに分析、測定するための試料製造装置の提供とその手法を用いた水晶マイクロバランス分析測定装置を提供する。
【解決手段】 液体中に含まれる微量物質を検出するために超音波振動の原理を用い、共振体1に装着されている電極9が施されている圧電特性を持つ無機系セラミックス8に周波数印加を行い液体内に含有する物質を1個以上の水分子にて水素結合または内包し、出来た集合分子体の軽量なものから霧化分離させ、水晶振動子5に霧化した物質を導入することにより、水晶周波数印加装置6により安定発振している水晶振動子5の周波数変化を周波数変化表示装置7による分析において高精度に物質の特定を行う技術を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境汚染により河川や体液中などに含有される有害物質の微少量検出のための試料製造装置および水晶マイクロバランス分析測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に液体原料から所望の成分を分離して取り出す液体分離手法として、液体原料中の各成分の溶離物質および吸着剤等に対する親和性の差を利用して、分離カラム内で各成分に分離する手法や有機系材料や無機系材料の気孔のサイズをコントロールして液体を分離する濾過が各種提案されている。
【0003】
また、特許公開2004−226365号には、ネブライザチップで液体を霧化して液体中の成分分析をプラズマにより発光させ受光し分光して検出する高周波誘導結合プラズマ分光分析法で行う提案がある。
【0004】
また、微量成分などを高感度に比較的簡易に測定する手法として、従来から水晶振動子の共振周波数変化を検出して質量測定する水晶マイクロバランス法(Quartz Crystal Microbalance)があり、特許公開2001−153777号には水晶振動子の構造を工夫して液体中での安定発振と質量測定に関する機構の提案がある。
【0005】
また、一般的に水晶マイクロバランス法を用いた質量測定にあたっては、センサー部分である水晶振動子の電極上に測定対象物質と反応、吸着を行うための有機感応膜または無機感応膜が塗布され、その質量変化を共振周波数の変化で測定する。
【0006】
特許公開2004−108913号において水晶振動子上の電極材と直接化学反応が可能なガスまたは酸化、還元した対象測定ガスを電極材の化学反応又は吸着特性を利用してガス検知を行う測定方法の提案がある。
【特許文献1】特開2004−226365号公報
【特許文献2】特開2001−153777号公報
【特許文献3】特開2004−108913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記の一般の液体分離手法は、混ざり合っているものが固体粒子と水との結合であり、混ざりあって化学結合している成分が気体や液体の場合、分離することおよびごく少量の液体を分離しその分析を行う試料を作成することは困難である。
【0008】
また、特許公開2004−226365号記載のネブライザチップを用いた高周波誘導結合プラズマ分光分析法においては、霧化した物質の原子の特定を行うものであり、化学結合された物質の特定が困難であるのと同時にプラズマ発生電極及び筐体構造、高周波電源、整合器、真空ポンプや配管を必要とし、装置の大型化および高コスト化ならびに測定サイトでのリアルタイム測定ができないという問題がある。
【0009】
一方、水晶マイクロバランス法は、水晶振動子が一定環境下で安定的に振動することを応用したもので、その安定振動に対してのノイズ要因を除去して周波数変化により測定対象物質の質量や識別を行う手法である。
【0010】
この測定方法は、測定環境の整備が比較的簡易に可能である気相中の微量成分検出にあたっては、その分析精度が十分に活用できるが、液体中の微量成分を測定するにあたっては、水の粘性の影響や水による水晶振動素子の電極部の通電による発振不良の改善が施された機構の構築が必要である。
【0011】
特許公開2001−153777号記載の水晶振動子の機構は、表裏に電極が施された水晶振動子の片面の一部分を除いたその他の部分をシリコンなどの弾性材を用いた封止材を介して被覆材で覆い、被覆材と封止材で覆われている電極部でそれぞれリード端子に接続している機構を有し、水晶振動素子を液体に浸漬しても電極間の液体による通電がなくなり、液体に接触している面に修飾されている受容体感応膜において液体中の微量成分分析の提案がされている。
【0012】
図10に前記の水晶振動子システムを用い液体中の分析を行う概念図を記す。
【0013】
水晶振動子システム13は、液体中の分析が可能な構成からなり、液体に接触する表面には、受容体感応膜が施されている。微量物質を含有する溶液14は、容器15に納められており、その溶液14中に水晶振動子システム13を浸漬すると、溶液14中の微量物質が水晶振動子システム13表面と反応し、固定される。
【0014】
水晶振動子システム13は測定回路16に接続されており、ある周波数で発振している。水晶振動子システム13に微量物質が吸着されない状態では、その発振周波数は水晶振動子システム13固有の共振周波数であり、一定であるが、微量物質が吸着する場合は、その吸着量が増加すると、水晶振動子システム13の表面に施されている受容体感応膜重量が増加し、それに応じて発振周波数が変化する。従って、測定回路16により、溶液14中の水晶振動子システム13の発振周波数の変化を測定すると、溶液14に含まれる微量物質の識別分析ができる。
しかしながら、この手法においては水晶振動素子全体を液体中に浸漬しなければならず、その場合水晶振動子を覆いつくせる一定量の液体でないと液体中の微量成分検出にあたって測定が不可能で、液体中の微量物質測定にあたって液体の量に制限があり、少量の液体内の物質識別を簡易に測定できるものではない。
【0015】
さらに水晶振動子の電極上に塗布する有機系感応膜または無機系感応膜において検出を行うにあたっては、均一な感応膜を水晶振動子表面に作製するために手間や、膜作製に関する設備が必要となる。
特許公開2004−108913号における電極材と対象測定ガスの化学反応を利用した測定方法は、化学反応する材料の選定や電極材自体の酸化反応などの経時変化に対する保管方法や電極材を用途に応じて成膜しなければならず、素子作成に関して高コストになり、従来の水晶振動子を製造する設備を応用できず実用的ではない。また、液体中の物質測定に関しては電極材の酸化反応や腐食がノイズ要因と考えられるため適していない。
【0016】
本発明が解決しようとする課題は次のとおりである。高感度に液体中の微量成分を少量の試料においても簡易に測定サイトでリアルタイムに分析、測定するための試料製造装置の提供とその手法を用いた水晶マイクロバランス分析測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記内容を具体化するために以下に本発明の具体的方法を記す。
【0018】
これらを解決するための本発明の試料製造装置の特徴は、液体中に含有されている含有物質を周波数印加による超音波振動により励起し、1つ以上の水分子にて水素結合分子または内包し、形成された集合分子体の軽量な物質から霧化分離することであり、これにより識別するための最適な試料を製造することが出来る。
【0019】
また、本発明の試料製造装置の特徴は、超音波振動を用いて水素結合分子または水分子内包集合分子体化による霧化であることである。このため、少なくとも1個以上の分子体が作成できればよくマイクロシリンジなどの微少量計量器において液体試料を超音波発振体または筐体に滴下することが可能な量(0.1μl以上0.05ml以下の少量)であれば識別に際して最適な試料を製造することが出来る。
【0020】
また、本発明の試料製造装置の特徴は、印加周波数帯を500KHz以上3MHz以下とすることである。これにより、霧化の条件が異なる化学結合物質および含有物質をこの印加周波数帯の範囲内で選別し、簡易識別を行うにあたって十分な霧化分離を促進することができ、最適な試料を製造することが出来る。
【0021】
また、本発明の試料製造装置の特徴は、周波数印加を行なう発振部に圧電特性をもつ無機系セラミックス材料とすることである。これにより、周波数印加による振動の安定性を実現し、霧化する化学結合物質及び含有物質の分析、識別の精度を向上することができる。
【0022】
また、本発明の試料製造装置の特徴は、圧電特性を持つ無機系セラミックス材料(発振部)を、共振構造を持つ筐体に接合することにより、その筐体自体を共振させ、その構造によって少量の液体に超音波振動を与えることである。これにより、霧化を効率的に行うことができる。
【0023】
また、本発明の水晶マイクロバランス分析測定装置において上記の試料製造装置を用いることにより、少量の液体試料においても高精度かつ簡易に液体内の微量成分分析を可能とする。
【0024】
また、本発明の試料製造装置を備えた水晶マイクロバランス分析測定装置における水晶振動子の特徴は、電極上に感応膜を必要とせず、水溶液中に含有する物質を2個以上の水分子に内包または1個以上の水素結合させることにより電極上での極性反応を促進させ周波数変化を喚起し、その周波数変化によって物質が識別することができることである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係わる試料製造方法を用いれば、液体中に含まれる微量な異なる成分を超音波振動により分子体の軽量なものから霧化することにより、液体化学結合物質および含有物質の識別精度を向上する効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を実施例を用いて詳細に説明する。
【0027】
図1は、液相化学結合及び含有物質の簡易識別のための水晶マイクロバランス分析測定装置の構成を示す概念図である。図2は、共振体の断面図である。図3は、試料製造装置の正面図である。なお、図3に示す霧化室は内部の構造を明らかにするために断面図により示されている。
【0028】
水晶マイクロバランス分析測定装置100は、共振体1、霧化室2、周波数印加装置3、霧化物質導入管4、水晶振動子5、水晶周波数印加装置6、および周波数変化表示装置7から構成されている。
【0029】
共振体1は、図2に断面図を示す圧電特性を持つ無機系セラミックス材料8(発振部)及び電極9が装着されている構造体である。霧化室2は、共振体1を備えており、図3に示す液体試料導入口11により滴下し発生した霧化物質を拡散させないためにある空間で遮蔽されている容器である。周波数印加装置3は、500KHzから3MHzの周波数を共振体1に印加するものである。
【0030】
霧化物質導入管4は、前述の霧化室2にて発生した霧化物質を水晶振動子5にて分析するための導入管であり、図3に示す霧化物質送風孔12より窒素ガスなどの不活性ガスを用いてフローし安定的に霧化物質を運搬するためのものである。水晶振動子5は、平板形状をなしておりその両面には金属電極が形成されており、水晶周波数印加装置6で周波数印加され、周波数変化表示装置7にてその振動の周波数変化を分析される。
【0031】
なお、水晶振動子上の電極材料は、一般的な水晶振動子製造品に使われる金、白金を使用することが実用的にも望ましいが、その他のアルミニウム、銀、銅などの導電性を有する金属材料であってもよい。
【0032】
共振体1は、圧電特性を持つ無機系セラミックス材料8に対する共振構造を持つものであればその形状、寸法に制限されるものではない。
【0033】
また、共振体1の材料には、ガラスやセラミックスなどの無機系材料、樹脂やプラスチックなどの有機系材料、ステンレスやアルミニウムなどの金属系材料などを用いることができ、圧電特性を持つ無機系セラミックス材料における500KHzから3MHzの周波数印加に対して共振する材料であれば特に筐体の材料に制限はない。
【0034】
圧電特性を持つ無機系セラミックス材料8は、周波数印加を可能にするために銀、パラジウム、ニッケル、金などの金属の電極9が施してあり、電極の位置は、圧電材料の表と裏又は同一面に接触しないような位置関係に2箇所以上もしくは、圧電材料内部と被表面に形成されることを特徴としており、電極材料は、印加電圧がかかるものであれば特に前述の金属材料に制限されるものではない。
【0035】
また、圧電特性を持つ無機系セラミックス材料8の材料は特に限定されるものではなく、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)やチタン酸バリウムなどを用いることができる。
【0036】
図3に示すように、試料製造装置200は、圧電特性を持つ無機系セラミックス材料8及び電極9が装着されている共振体1、霧化室2、周波数印加装置3、霧化物質通気孔10、液体試料導入口11および霧化物質送風孔12にて構成される。
【0037】
霧化物質通気孔10は、霧化室2に拡散された霧化物質を前述の霧化物質導入管4へ送るための通気孔である。液体試料導入口11は、分析測定する液体試料を導入する口であり、ここから導入された液体が、共振体1にて励起され霧化するものである。霧化物質送風孔12は、発生した霧化物質を霧化物質通気孔10から霧化物質導入管4に対し安定的に導入するために窒素ガスなどの不活性ガスを用いてフローするためのものである。
【0038】
または図4に示す霧化物質通気孔10が開閉式の扉を具する構造にて水晶振動子5に対し直接に霧化物質を導入する。
【0039】
水晶マイクロバランス分析測定装置100内に少なくとも1個具備されている水晶振動子5に対し送風された霧化物質は、その極性などによって共有結合や水素結合などのケミカルアフェニティ反応が発生する。
【0040】
高周波帯域で安定振動を行っている水晶振動子5に対して、ケミカルアフェニティ反応による質量変化が発生し、物質ごとの周波数変化量や周波数変化速度の差が確認され、その変化データを周波数変化表示装置7においてデータ化する構成である。
【実施例1】
【0041】
水晶マイクロバランス分析測定装置100を用いて、水晶振動子5の電極上に修飾した感応膜と超音波振動による液体の霧化による液体に含有する物質のケミカルアフェニティ反応を確認することで高精度に識別できることについて検証を行った。
【0042】
図1に示す構成により本実施例における実施の形態を以下に示す。
【0043】
霧化を行う試料として蒸留水、蒸留水とトルエンの混合液、蒸留水とホルムアルデヒドの混合液の3種を用いた。
【0044】
混合液の割合は蒸留水に対し、トルエン、ホルムアルデヒドとも2:1の割合とし、滴下量0.01mlとした。
【0045】
水晶マイクロバランス分析測定装置100に具備したひとつの水晶振動子5は、9MHz・AT−CUT(ヘルツ(株)社製)を用い、直径5mmの金電極上に親水基と疎水基の両方をもつポリイオンコンプレックス型脂質(相互薬工(株)社製)を3000ng塗布し、感応膜として用いた。
【0046】
今回試料滴下は、マイクロシリンジを用いて実証を行ったが、注射器、スポイト等少量の液体を霧化室2へ注入できるものであれば特に前述機器に限定されるものではない。
【0047】
なお今回の共振体1の材料は、ステンレスを使用し、発振周波数1MHzを圧電特性を持つ無機系セラミックス材料8に印加し共振体1を振動させた。
【0048】
水晶振動子5を5分間の発振安定化後に各サンプルを滴下投入し、霧化させ15分間放置し、その際の周波数変化の測定を行った。
【0049】
図5は、各サンプルについて時間に対する周波数変化量を測定した結果を示すグラフである。周波数変化量は、吸着量に比例しており、両者には1Hz=1ngの対応関係がある。
【0050】
図6は、吸着開始から10秒間における各サンプルにおける周波数変化量から吸着速度を測定した結果を示すグラフである。
【0051】
図5より吸着開始から15分時のサンプル試料の周波数変化量を比較すると、蒸留水306ng、蒸留水とホルムアルデヒドの混合液275ng、蒸留水とトルエンの混合液243ngの結果となった。
【0052】
次に図6より吸着開始から1秒、5秒、10秒時のサンプル試料の周波数変化速度=吸着速度を比較すると、1秒時蒸留水とトルエンの混合液39ng、蒸留水とホルムアルデヒドの混合液7ng、蒸留水2ng、5秒時蒸留水とトルエンの混合液39ng、蒸留水とホルムアルデヒドの混合液7ng、蒸留水2ng、10秒時蒸留水とトルエンの混合液61ng、蒸留水とホルムアルデヒドの混合液16ng、蒸留水3ngの結果となった。
【0053】
図5の結果並びに図6の結果を総合的に検証した。
【0054】
周波数変化の速度に関してみると蒸留水が一番遅いのであるが、吸着量は一番多い。このことは、周波数変化量がある時間帯で交わる箇所があることを意味しており、実際に蒸留水とトルエンの混合液においては吸着開始から5分時、蒸留水とホルムアルデヒドの混合液においては2分30秒時にその箇所が図5よりもわかる。
【0055】
これは、霧化した際の水分子単独の重さよりトルエンの分子集合体、ホルムアルデヒドと蒸留水の水素結合分子体のほうが軽量であるため感応膜との結合が早く、トルエンは疎水性であるため感応膜に先に付着することにより感応膜表面に疎水膜をつくり、遅れて霧化してくる水分子体を寄せ付けにくくしていることが、蒸留水単独での周波数変化量の結果との差によって確認できる。
【0056】
また、ホルムアルデヒドと蒸留水の水素結合分子体を検証すると、分子量の軽いホルムアルデヒドが初期段階では早期に感応膜と反応し、感応膜の吸着サイトにホルムアルデヒドが多く吸着しはじめ水分子の吸着サイトが少なくなってくるため周波数変化量が蒸留水単体時に比べて少ないことが確認できる。しかしながら、ホルムアルデヒド自体が親水性であり、感応膜に吸着したホルムアルデヒド自体に遅れて霧化してくる水分子を少しずつ吸着しているため、徐々に周波数の低下現象が確認される。
【0057】
ここでそれぞれの一般的な分子体の「見かけ密度」について図7にあらわす。
【0058】
クラスター化したミスト分子の密度に関して、お互いの分子同士がなんらかの引力等が作用する互いに干渉し合う分子構造を持つ2種類以上の化合物により構成されたミストには、加成性が成り立つと考えられる。「見かけ密度」とは、通常の化合物の密度を用いて加成性を考慮して算出した値である。
【0059】
純粋な化合物の場合、密度の大小は、大きいものから蒸留水(0.999)、トルエン(0.866)、ホルムアルデヒド(0.815)であるが、ここでは水を含んだミスト分子の密度「見かけ密度」の大小関係について記す。蒸留水のミスト分子は水分子のみで構成されるため、蒸留水の見かけ密度ρH2Oも0.999である。ホルムアルデヒドは親水基であるカルボニル基(C=O)を1個持つことに加え、カルボニル基を構成する酸素原子の電子雲状態を考慮すると、水素原子も不安定状態にあり、これを起点にして、さらに水分子(HO)が水素結合していることが考えられる。
【0060】
よって、カルボニル基の部分で水分子を引き寄せ、クラスター化していると仮定し、0.815(X)+0.999x(1−X)で混合クラスターが形成しているとみなした。Xの値を0.05≦X≦0.722と想定した時、混合ホルムアルデヒドクラスターの見かけ密度は0.868から0.989である。トルエンは水に不溶な疎水性のメチル基(-CH3)と、ベンゼン環を持つため、水分子との混合クラスターにはなり得ない。よって見かけ密度は大きいものから蒸留水(0.999) 、蒸留水とホルムアルデヒドの混合液(0.868〜0.989)、トルエン(0.815)となる。
【0061】
つぎにそれぞれの一般的な見かけ分子量について図8にてあらわす。
【0062】
見かけ分子量とはクラスター化したミスト分子に関して、お互いの分子同士がなんらかの引力等が作用する互いに干渉し合う分子構造を持つ2種類以上の化合物により構成されたミストには、加成性が成り立つと考え算出した値である。
【0063】
霧化状態を構成するクラスターの見かけ分子量は大きいものから蒸留水(18n1)、蒸留水とホルムアルデヒドの混合液(30+18n2)、トルエン(92)である。ここでn の大小は、n1はn2+2より大きく、n2は4より大きいが、一般に水はH2Oなる分子が非常に多くの分子数集まった状態で存在しているとされるため、n1、 n2の値も必然的に先に定義した範囲内で非常に大きな値と考えることができる。
【0064】
このことより密度、分子量においても重い順から蒸留水、蒸留水とホルムアルデヒドの混合液、トルエンであり、図6の結果からも霧化により軽量なものから吸着が始まることが確認できる。
【実施例2】
【0065】
次に水晶振動子5の金電極上に感応膜を修飾せずに超音波振動による液体の霧化による液体に含有する物質および化学結合している物質のケミカルアフェニティ反応の検証を水晶マイクロバランス分析測定装置100を用いて行った。
【0066】
図1に示す構成により本実施例における実施の形態を以下に示す。
【0067】
霧化を行う試料として実施例1同様に蒸留水、蒸留水とトルエンの混合液、蒸留水とホルムアルデヒドの混合液の3種を用いた。
【0068】
混合液の割合は蒸留水に対し、トルエン、ホルムアルデヒドとも2:1の割合とし、滴下量0.01mlとした。
【0069】
水晶マイクロバランス分析測定装置100に具備したひとつの水晶振動子5は、9MHz・AT−CUT(ヘルツ(株)社製)を用い、直径5mmの金電極を用いた。
【0070】
なお今回共振体1の材料は、ステンレスを使用し、発振周波数1MHzを圧電特性を持つ無機系セラミックス材料8に印加し共振体1を振動させた。
【0071】
水晶振動子5を5分間の発振安定化後に各サンプルを滴下投入し、霧化させ15分間放置しその際の周波数変化の測定を行った。
【0072】
図9に周波数変化量の測定データを示す。
【0073】
図9より微小な周波数変化であるが、測定サンプルの周波数変化量ならびに周波数変化速度の差が認められた。今回の結果から液体中に含まれる物質を識別するにあたって感応膜の塗布を施すことなく液体中の物質の識別を電極のみにて測定可能なことが確認された。
【0074】
従って、実施例1ならびに実施例2より吸着量による周波数変化量の差、吸着速度の差が異なる値を示したことにより、物質ごとの周波数変化量や周波数変化速度による近似曲線から微分係数を求めることなどをデータベース化して比較をすることで液相化学結合及び含有物質の簡易識別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明にかかる水晶マイクロバランス分析測定装置の概念図である。
【図2】共振体の断面図である。
【図3】本発明にかかる試料製造装置の正面図である。
【図4】本発明にかかる水晶マイクロバランス分析測定装置の概念図である。
【図5】実施例1におけるサンプル試料の時間に対する周波数変化を表わした図である。
【図6】実施例1におけるサンプル試料の初期吸着速度の変化を表わした図である。
【図7】実施例1におけるみかけ密度の算出の方法を表わした図である。
【図8】実施例1におけるみかけ分子量の算出の方法を表わした図である。
【図9】実施例2における周波数変化を表わした図である。
【図10】従来技術の装置の概念図である。
【符号の説明】
【0076】
1 共振体
2 霧化室
3 周波数印加装置
4 霧化物質導入管
5 水晶振動子
6 水晶周波数印加装置
7 周波数変化表示装置
8 無機系セラミックス材料(発振部)
9 電極
10 霧化物質通気孔
11 液体試料導入口
12 霧化物質送風孔
100 水晶マイクロバランス分析測定装置
200 試料製造装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相化学結合及び含有物質の簡易識別のための試料製造装置であって、
水溶液中の含有物質を周波数印加による超音波振動により励起し、1個以上の水分子にて水素結合または内包し、形成された集合分子体の軽量なものから霧化分離することを特徴とする試料製造装置。
【請求項2】
前記水溶液体の量が、0.1μl以上0.05ml以下の少量において前記含有物質を1個以上の水分子にて水素結合または内包し霧化分離することを特徴とする請求項1記載の試料製造装置。
【請求項3】
前記周波数印加における周波数帯が、500KHz以上3MHz以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の試料製造装置。
【請求項4】
前記周波数印加を行なう発振部が、圧電特性をもつ無機系セラミックス材料であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の試料製造装置。
【請求項5】
共振構造を持つ筐体を備え、
前記発振部が、前記筐体に少なくとも1箇所で接合されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の試料製造装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに試料製造装置を備える水晶マイクロバランス分析測定装置。
【請求項7】
水晶振動子を有する水晶マイクロバランス分析装置を備え、
前記水晶振動子は、金属材料により形成され、表面に有機系感応膜または無機系感応膜の修飾が施されていない電極材を有することを特徴とする請求項6に記載の水晶マイクロバランス分析測定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−162519(P2006−162519A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357109(P2004−357109)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)
【Fターム(参考)】