説明

試料調製装置、細胞分析装置および細胞弁別装置

【課題】所定の大きさの細胞を弁別可能であるとともに、容易に、ろ過の処理速度を向上させることが可能な試料調製装置を提供する。
【解決手段】この試料調製装置4は、生体試料中の所定の大きさの細胞を通過させ、所定の大きさの細胞よりも大きい細胞を通過させない所定の間隔s1(s2、s3)を隔てて設けられた複数の板状部材416a(417a、418a)を含む細胞弁別部416(417、418)と、生体試料が複数の板状部材416a(417a、418a)間の間隙を通過することにより、複数の板状部材416a(417a、418a)間の間隙を通過した細胞、および、複数の板状部材416a(417a、418a)により捕捉された細胞のうちの少なくとも一方と所定の試薬とから測定試料を調製する試料調製部42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料調製装置、細胞分析装置および細胞弁別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体試料に含まれる細胞を分析する細胞分析装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、生体試料中の上皮細胞を測定対象とする細胞分析装置が開示されている。被験者から採取された生体試料には測定対象の細胞の他、測定対象の細胞以外の細胞や細胞以外の異物も含まれているため、上記特許文献1の細胞分析装置のように所定の細胞を測定対象とする細胞分析装置では、生体試料をそのまま測定試料として用いると、測定対象の細胞を精度よく分析することができない。このため、従来から、所定の細胞を弁別する細胞弁別装置が望まれている。また、従来、細胞レベルの大きさの微生物を弁別するものとして、微生物採取キット(弁別装置)が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
上記特許文献2には、金属製の異物除去用フィルタと微生物採取用フィルタとを備えた微生物採取キット(弁別装置)が開示されている。これらの異物除去用フィルタおよび微生物採取用フィルタには、それぞれ、径が5μm〜20μmおよび0.2μm〜0.8μmの細胞レベルの大きさの細孔が複数形成されており、試料がこれらの細孔を通過することにより、細胞レベルの大きさの微生物を弁別することが可能である。
【0005】
【特許文献1】WO2006/103920号公報
【特許文献2】特開2005−291940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2の微生物採取キット(弁別装置)では、細胞レベルの大きさの微生物を弁別することが可能である一方、複数の細孔を有するフィルタを用いるため、フィルタの開口率(=細孔による開口面積/フィルタの表面積)を大きくし難いという不都合がある。すなわち、フィルタに細胞レベルの大きさの複数の細孔を設ける場合、開口率を大きくし易い電気鋳造法を用いたとしても、開口率を30%以上にするのが製造上難しいことが知られている。このため、所定時間内におけるフィルタを通過する生体試料の量を増加させ難いので、ろ過の処理速度を向上させ難いという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、所定の大きさの細胞を弁別可能であるとともに、容易に、ろ過の処理速度を向上させることが可能な試料調製装置、細胞分析装置および細胞弁別装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における試料調製装置は、生体試料中の所定の大きさの細胞を通過させ、所定の大きさの細胞よりも大きい細胞を通過させない所定の間隔を隔てて設けられた複数の板状部を含む細胞弁別部と、生体試料が複数の板状部間の間隙を通過することにより、複数の板状部間の間隙を通過した細胞、および、複数の板状部により捕捉された細胞のうちの少なくとも一方と、所定の試薬とから測定試料を調製する試料調製部とを備える。
【0009】
この発明の第1の局面による試料調製装置では、上記のように、生体試料中の所定の大きさの細胞を通過させ、所定の大きさの細胞よりも大きい細胞を通過させない所定の間隔を隔てて設けられた複数の板状部を含む細胞弁別部を設けることによって、所定の大きさの細胞と所定の大きさの細胞よりも大きい細胞とを弁別することができる。また、細胞弁別部に所定の間隔を隔てて配置された複数の板状部を設けることによって、細胞弁別部に細孔を設ける場合に比べて、製造上、開口部間の部材(板状部)の厚みを容易に小さくすることができるので、容易に開口率を大きくすることができる。これにより、容易に、所定時間内における細胞弁別部を通過する生体試料の量を増加させることができるので、容易に、ろ過の処理速度を向上させることができる。また、複数の板状部を用いてろ過することによって、生体試料の流れ方向の厚みが小さいフィルタを用いる場合に比べて、生体試料の流れ方向の厚み(長さ)を容易に大きくすることができるので、容易に、生体試料の流れ方向における細胞弁別部の機械的強度を高めることができる。
【0010】
上記第1の局面による試料調製装置において、好ましくは、所定の大きさの細胞は、赤血球、白血球および細菌から選択される少なくとも1つを含む第1細胞であり、所定の大きさの細胞よりも大きい細胞は、上皮細胞を含む第2細胞であり、複数の板状部は、生体試料が複数の板状部間の間隙を通過することにより、第1細胞が複数の板状部間の間隙を通過し、第2細胞が複数の板状部により捕捉されるように構成されている。このように構成すれば、赤血球、白血球および細菌から選択される少なくとも1つを含む第1細胞と上皮細胞を含む第2細胞とを弁別することができる。このような第1細胞と第2細胞とを弁別可能な試料調製装置を、上皮細胞を測定対象とする細胞分析装置に適用すれば、測定試料から測定対象でない赤血球、白血球および細菌などを取り除くことができるので、精度よく測定対象を測定することができる。
【0011】
上記第1の局面による試料調製装置において、好ましくは、所定の大きさの細胞は、上皮細胞の単一細胞を含む第3細胞であり、所定の大きさの細胞よりも大きい細胞は、上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第4細胞であり、複数の板状部は、生体試料が複数の板状部間の間隙を通過することにより、第3細胞が複数の板状部間の間隙を通過し、第4細胞が複数の板状部により捕捉されるように構成されている。このように構成すれば、上皮細胞の単一細胞を含む第3細胞と上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第4細胞とを弁別することができる。このような第3細胞と第4細胞とを弁別可能な試料調製装置を、上皮細胞を測定対象とする細胞分析装置に適用すれば、上皮細胞の単一細胞を測定対象にするか、または、上皮細胞の単一細胞と凝集細胞との両方を測定対象にするかを選択することができるので、測定の自由度を向上させることができる。
【0012】
上記第1の局面による試料調製装置において、好ましくは、所定の大きさの細胞は、3つ以下の上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第5細胞であり、所定の大きさの細胞よりも大きい細胞は、4つ以上の上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第6細胞であり、複数の板状部は、生体試料が複数の板状部間の間隙を通過することにより、第5細胞が複数の板状部間の間隙を通過し、第6細胞が複数の板状部により捕捉されるように構成されている。このように構成すれば、3つ以下の上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第5細胞と4つ以上の上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第6細胞とを弁別することができる。このような第5細胞と第6細胞とを弁別可能な試料調製装置を、上皮細胞を測定対象とする細胞分析装置に適用すれば、測定試料から4つ以上の上皮細胞が凝集した凝集細胞を取り除くことができるので、3つ以下の上皮細胞が凝集した凝集細胞を用いて精度よく測定対象を測定することができる。
【0013】
上記第1の局面による試料調製装置において、好ましくは、細胞弁別部より生体試料の流れの上流側に配置され、所定の間隔よりも広い間隔を隔てて設けられた複数の第2板状部を含む第2細胞弁別部をさらに備える。このように構成すれば、第2板状部により、比較的大きな細胞を弁別した後、さらに、細胞弁別部により、所定の大きさの細胞を弁別することができるので、精度よく細胞を弁別することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、所定の大きさの細胞は、赤血球、白血球および細菌から選択される少なくとも1つを含む第1細胞であり、所定の大きさの細胞よりも大きい細胞は、上皮細胞の単一細胞を含む第3細胞であり、細胞弁別部の複数の板状部は、生体試料が複数の板状部間の間隙を通過することにより、第1細胞が複数の板状部間の間隙を通過し、第3細胞が複数の板状部により捕捉されるように構成されており、第2細胞弁別部の複数の第2板状部は、第3細胞を通過させ、上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第4細胞を通過させない間隔を隔てて設けられ、生体試料が複数の第2板状部間の間隙を通過することにより、第3細胞が複数の第2板状部間の間隙を通過し、第4細胞が複数の第2板状部により捕捉されるように構成されている。このように構成すれば、第2細胞弁別部により、上皮細胞の単一細胞を含む第3細胞と上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第4細胞とを弁別することができるとともに、細胞弁別部により、赤血球、白血球および細菌から選択される少なくとも1つを含む第1細胞と上皮細胞の単一細胞を含む第3細胞とを弁別することができるので、上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第4細胞と、上皮細胞の単一細胞を含む第3細胞と、赤血球、白血球および細菌から選択される少なくとも1つを含む第1細胞とを弁別することができる。
【0015】
上記第2細胞弁別部を備えた構成において、好ましくは、第2細胞弁別部の複数の第2板状部は、第3細胞を通過させ、3つ以下の上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第5細胞を通過させない間隔を隔てて設けられ、試料調製装置は、第2細胞弁別部より生体試料の流れの上流側に配置された第3細胞弁別部をさらに備え、第3細胞弁別部は、第5細胞を通過させ、4つ以上の上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第6細胞および第5細胞よりも大きい異物を通過させない間隔を隔てて設けられた複数の第3板状部を含み、生体試料が複数の第3板状部間の間隙を通過することにより、第5細胞が複数の第3板状部間の間隙を通過し、第6細胞および異物が複数の第3板状部により捕捉されるように構成されている。このように構成すれば、第3細胞弁別部により、3つ以下の上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第5細胞と4つ以上の上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第6細胞および第5細胞よりも大きい異物とをさらに弁別することができるので、4つ以上の上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第6細胞および第5細胞よりも大きい異物と、3つ以下の上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第5細胞と、上皮細胞の単一細胞を含む第3細胞と、赤血球、白血球および細菌から選択される少なくとも1つを含む第1細胞とを弁別することができる。
【0016】
上記第1の局面による試料調製装置において、好ましくは、細胞弁別部の複数の板状部間の間隙に対して生体試料を供給する試料供給部と、複数の板状部により捕捉された細胞を回収する細胞回収部とをさらに備える。このように構成すれば、試料供給部から供給される生体試料中の細胞を細胞弁別部により弁別し、弁別された細胞を細胞回収部により回収することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、細胞回収部は、収容容器と、細胞弁別部における生体試料の流れ方向と交差する方向に回収液を供給することにより、複数の板状部により捕捉された細胞と回収液とを収容容器に移送する細胞移送部とを含む。このように構成すれば、細胞弁別部に対してせん断力を作用させるように回収液を供給することができるので、弁別された細胞を細胞弁別部から容易に離間させることができ、その結果、容易に弁別された細胞を回収液とともに収容容器に移送することができる。
【0018】
上記細胞移送部を設けた構成において、好ましくは、細胞弁別部を含む細胞弁別装置をさらに備え、細胞弁別装置は、試料供給部に供給された生体試料を受け入れて、細胞弁別部に生体試料を導入するための試料導入部と、生体試料の流れ方向に配置され、複数の板状部間の間隙を通過した生体試料を受け入れて細胞弁別装置の外部に出すための試料受入部と、細胞移送部により供給される回収液を受け入れて、生体試料の流れ方向と交差する方向に回収液を導入するための回収液導入部と、回収液の流れ方向に配置され、複数の板状部により捕捉された細胞と回収液導入部に導入された回収液とを受け入れて細胞弁別装置の外部に出すための回収液受入部とを含む。
【0019】
上記細胞移送部を設けた構成において、好ましくは、試料供給部は、生体試料を保存するための保存液とともに生体試料を細胞弁別部に供給し、細胞移送部は、回収液として測定試料の調製に用いられる試料調製用液体を供給するように構成されている。このように構成すれば、弁別された細胞を収容容器に移送しながら、保存液を試料調製用液体で希釈することができる。また、弁別された細胞と試料調製用液体とを上記収容容器に移送できるため、保存液と試料調製用液体との溶液置換を行うことができる。
【0020】
上記第1の局面による試料調製装置において、好ましくは、細胞弁別部における生体試料の流れ方向と交差する方向に洗浄液を供給することにより、細胞弁別部の洗浄を行う洗浄部をさらに備える。このように構成すれば、細胞弁別部に対してせん断力を作用させるように洗浄液を供給することができるので、細胞や異物を細胞弁別部から容易に離間させることができ、その結果、容易に細胞弁別部の洗浄を行うことができる。
【0021】
上記第1の局面による試料調製装置において、好ましくは、細胞弁別部における生体試料の流れ方向における板状部の長さは、複数の板状部間の間隔の2倍以上である。このように構成すれば、容易に、複数の板状部の生体試料の流れ方向における機械的強度を高めることができる。
【0022】
上記第1の局面による試料調製装置において、好ましくは、複数の板状部は、各々の板状部が略同じ形状に形成され、各々の板状部が互いに略平行に配置されている。このように構成すれば、生体試料の流れ方向に対して、複数の板状部間の間隙の大きさを略一定にすることができるので、精度よく細胞を弁別することができる。
【0023】
上記第1の局面による試料調製装置において、好ましくは、細胞弁別部は、ドライエッチングを用いてシリコンウエハーに所定の間隔の間隙を複数形成することにより製造される。このように構成すれば、容易に、精度よく細胞弁別部の複数の板状部を製造することができる。
【0024】
この発明の第2の局面における細胞分析装置は、生体試料中の所定の大きさの細胞を通過させ、所定の大きさの細胞よりも大きい細胞を通過させない所定の間隔を隔てて設けられた複数の板状部を含む細胞弁別部と、生体試料が複数の板状部間の間隙を通過することにより、複数の板状部間の間隙を通過した細胞、および、複数の板状部により捕捉された細胞のうちの少なくとも一方と所定の試薬とから調製された測定試料から、所定の大きさの細胞および所定の大きさの細胞よりも大きい細胞のうちの少なくとも一方に関する情報を検出する検出部と、検出部の検出結果に基づいて、所定の大きさの細胞および所定の大きさの細胞よりも大きい細胞のうちの少なくとも一方を分析する分析手段とを備える。
【0025】
この発明の第2の局面による細胞分析装置では、上記のように、生体試料中の所定の大きさの細胞を通過させ、所定の大きさの細胞よりも大きい細胞を通過させない所定の間隔を隔てて設けられた複数の板状部を含む細胞弁別部を設けることによって、所定の大きさの細胞と所定の大きさの細胞よりも大きい細胞とを弁別することができる。また、細胞弁別部に所定の間隔を隔てて配置された複数の板状部を設けることによって、細胞弁別部に細孔を設ける場合に比べて、製造上、開口部間の部材(板状部)の厚みを容易に小さくすることができるので、容易に開口率を大きくすることができる。これにより、容易に、所定時間内における細胞弁別部を通過する生体試料の量を増加させることができるので、容易に、ろ過の処理速度を向上させることができる。また、複数の板状部を用いてろ過することによって、生体試料の流れ方向の厚みが小さいフィルタを用いる場合に比べて、生体試料の流れ方向の厚み(長さ)を容易に大きくすることができるので、容易に、生体試料の流れ方向における細胞弁別部の機械的強度を高めることができる。
【0026】
この発明の第3の局面における細胞弁別装置は、生体試料中の所定の大きさの細胞を通過させ、所定の大きさの細胞よりも大きい細胞を通過させない所定の間隔を隔てて設けられた複数の板状部を含み、生体試料が複数の板状部間の間隙を通過することにより、所定の大きさの細胞が複数の板状部間の間隙を通過し、所定の大きさの細胞よりも大きい細胞が複数の板状部に捕捉されるように構成された細胞弁別部を備える。
【0027】
この発明の第3の局面による細胞弁別装置では、上記のように、生体試料中の所定の大きさの細胞を通過させ、所定の大きさの細胞よりも大きい細胞を通過させない所定の間隔を隔てて設けられた複数の板状部を含む細胞弁別部を設けることによって、所定の大きさの細胞と所定の大きさの細胞よりも大きい細胞とを弁別することができる。また、細胞弁別部に所定の間隔を隔てて配置された複数の板状部を設けることによって、細胞弁別部に細孔を設ける場合に比べて、製造上、開口部間の部材(板状部)の厚みを容易に小さくすることができるので、容易に開口率を大きくすることができる。これにより、容易に、所定時間内における細胞弁別部を通過する生体試料の量を増加させることができるので、容易に、ろ過の処理速度を向上させることができる。また、複数の板状部を用いてろ過することによって、生体試料の流れ方向の厚みが小さいフィルタを用いる場合に比べて、生体試料の流れ方向の厚み(長さ)を容易に大きくすることができるので、容易に、生体試料の流れ方向における細胞弁別部の機械的強度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による細胞分析装置の使用状態を示した斜視図である。図2〜図14は、図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の構成を説明するための図である。まず、図1〜図14を参照して、本発明の第1実施形態による細胞分析装置1の構成について説明する。
【0030】
本発明の第1実施形態による細胞分析装置1は、図1に示すように、細胞の測定を行う機能を有する測定装置2と、測定装置2から出力された測定データを分析して分析結果を得るデータ処理装置3と、測定試料を調製する試料調製装置4とにより構成されている。また、細胞分析装置1は、生体試料中の子宮頸部の上皮細胞を分析対象としており、子宮頸癌をスクリーニングするのに用いられる。測定装置2は、フローサイトメトリー法により、子宮頸部の上皮細胞の測定を行うように構成されている。なお、フローサイトメトリー法とは、測定試料を含む試料流を形成するとともに、その試料流にレーザ光を照射することによって、測定試料中の粒子が発する前方散乱光、側方散乱光および側方蛍光を検出する粒子の測定方法である。
【0031】
測定装置2は、図2に示すように、測定試料の測定を行う検出部21と、検出部21の出力に対するアナログ処理部22と、表示・操作部23と、測定装置2を制御するためのマイクロコンピュータ部24とを備えている。
【0032】
検出部21は、図3に示すように、レーザ光を出射する発光部21aと、照射レンズユニット21bと、レーザ光が照射されるシースフローセル21cと、発光部21aから出射されるレーザ光が進む方向の延長線上に配置されている集光レンズ21d、ピンホール21eおよびPD(フォトダイオード)21fと、発光部21aから出射されるレーザ光が進む方向と交差する方向に配置されている集光レンズ21g、ダイクロイックミラー21h、光学フィルタ21i、ピンホール21jおよびAPD(アバランシェフォトダイオード)21kと、ダイクロイックミラー21hの側方に配置されているPD21lとを含んでいる。
【0033】
発光部21aは、シースフローセル21cの内部を通過する測定試料を含む試料流に対して光を出射するために設けられている。また、照射レンズユニット21bは、発光部21aから出射された光をシースフローセル21cを流れる測定試料に集光するために設けられている。具体的には、照射レンズユニット21bには、図4に示すように、発光部21a側から順に、コリメータレンズ211、平凸シリンダレンズ212、両凸シリンダレンズ213、コンデンサレンズ214および215が設けられている。また、PD21fは、シースフローセル21cから出射された前方散乱光を受光するために設けられている。なお、シースフローセル21cから出射された前方散乱光により、測定試料中の粒子の大きさに関する情報を得ることが可能である。
【0034】
ダイクロイックミラー21hは、シースフローセル21cから出射された側方散乱光および側方蛍光を分離するために設けられている。具体的には、ダイクロイックミラー21hは、シースフローセル21cから出射された側方散乱光をPD21lに入射させるとともに、シースフローセル21cから出射された側方蛍光をAPD21kに入射させるために設けられている。また、PD21lは、側方散乱光を受光するために設けられている。なお、シースフローセル21cから出射された側方散乱光により、測定試料中の粒子の核の大きさなどの内部情報を得ることが可能である。また、APD21kは、側方蛍光を受光するために設けられている。なお、シースフローセル21cから出射された側方蛍光により、測定試料中の粒子の染色度合いに関する情報を得ることが可能である。また、PD21f、21lおよびAPD21kは、それぞれ、受光した光信号を電気信号に変換する機能を有する。
【0035】
アナログ処理部22は、図3に示すように、アンプ22a、22bおよび22cを含んでいる。また、アンプ22a、22bおよび22cは、それぞれ、PD21f、21lおよびAPD21kから出力された電気信号を増幅および波形処理するために設けられている。
【0036】
マイクロコンピュータ部24は、図2に示すように、制御用プロセッサおよび制御用プロセッサを動作させるためのメモリを有する制御部241と、アナログ処理部22から出力された信号をデジタル信号に変換するA/D変換部242と、A/D変換部242から出力されたデジタル信号に所定の処理を行うための演算部243とを含んでいる。
【0037】
制御部241は、バス244aおよびインターフェース245aを介して検出部21を制御する機能を有している。また、制御部241は、バス244aおよびインターフェース245bを介して表示・操作部23と接続されるとともに、バス244bおよびインターフェース245cを介してデータ処理装置3と接続されている。また、演算部243は、インターフェース245dおよびバス244aを介して制御部241に演算結果を出力する機能を有している。また、制御部241は、演算結果(測定データ)をデータ処理装置3に送信する機能を有している。
【0038】
データ処理装置3は、図1に示すように、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、測定装置2の測定データを分析するとともに、その分析結果を表示する機能を有している。また、データ処理装置3は、図5に示すように、制御部31と、表示部32と、入力デバイス33とを含んでいる。
【0039】
制御部31は、測定モード情報を含む測定開始信号およびシャットダウン信号を測定装置2に送信する機能を有している。また、制御部31は、図5に示すように、CPU31aと、ROM31bと、RAM31cと、ハードディスク31dと、読出装置31eと、入出力インターフェース31fと、画像出力インターフェース31gと、通信インターフェース31iとから構成されている。CPU31a、ROM31b、RAM31c、ハードディスク31d、読出装置31e、入出力インターフェース31f、画像出力インターフェース31gおよび通信インターフェース31iは、それぞれ、バス31hによって接続されている。
【0040】
CPU31aは、ROM31bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM31cにロードされたコンピュータプログラムを実行するために設けられている。ROM31bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU31aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0041】
RAM31cは、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM31cは、ROM31bおよびハードディスク31dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU31aの作業領域として利用される。
【0042】
ハードディスク31dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU31aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。後述するアプリケーションプログラム34aも、このハードディスク31dにインストールされている。
【0043】
読出装置31eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体34に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体34には、コンピュータに所定の機能を実現させるためのアプリケーションプログラム34aが格納されている。そして、データ処理装置3としてのコンピュータは、その可搬型記録媒体34からアプリケーションプログラム34aを読み出し、そのアプリケーションプログラム34aをハードディスク31dにインストールするように構成されている。
【0044】
なお、上記アプリケーションプログラム34aは、可搬型記録媒体34によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってデータ処理装置3と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、上記アプリケーションプログラム34aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにデータ処理装置3がアクセスして、そのアプリケーションプログラム34aをダウンロードし、これをハードディスク31dにインストールすることも可能である。
【0045】
また、ハードディスク31dには、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインターフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、第1実施形態に係るアプリケーションプログラム34aは上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0046】
入出力インターフェース31fは、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインターフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインターフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインターフェースなどから構成されている。入出力インターフェース31fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイス33が接続されており、ユーザがその入力デバイス33を使用することにより、データ処理装置3にデータを入力することが可能である。
【0047】
画像出力インターフェース31gは、LCDまたはCRTなどで構成された表示部32に接続されており、CPU31aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部32に出力するようになっている。表示部32は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示するように構成されている。
【0048】
通信インターフェース31iは、測定装置2に接続されており、測定装置2の測定データを受信するための機能を有している。また、通信インターフェース31iは、測定装置2に対してCPU31aからの指令を送信するための機能を有している。
【0049】
試料調製装置4は、測定装置2の検出部21で用いられる測定試料を調製するために設けられている。具体的には、試料調製装置4は、測定装置2の測定対象である生体試料中の子宮頸部の上皮細胞と所定の試薬とから測定試料を調製するように構成されている。
【0050】
試料調製装置4は、図6に示すように、弁別部41と、試料調製部42(図7参照)と、試料供給部43と、第1細胞回収部44と、第2細胞回収部45と、洗浄液供給部46と、置換液供給部47と、検体セット部48とを含んでいる。さらに、試料調製装置4は、図8に示すように、測定試料供給部49と制御部50とを含んでいる。また、試料調製装置4は、図示しない空圧装置の陰圧源51および陽圧源52から供給される陰圧および陽圧を用いて、装置内における各液体の移送を行うように構成されている。
【0051】
ここで、第1実施形態では、弁別部41は、測定対象の細胞とその他の細胞および細胞以外の測定対象の細胞よりも大きいゴミなどの異物とを弁別するために設けられている。また、弁別部41は、図6および図9に示すように、試料供給部411と、生体試料の流域部412と、生体試料の排出部413とを有している。また、弁別部41は、第1液体供給部414a、第2液体供給部414bおよび第3液体供給部414cと、第1液体回収部415a、第2液体回収部415bおよび第3液体回収部415cと、第1細胞弁別部416と、第2細胞弁別部417と、第3細胞弁別部418とをさらに有している。
【0052】
試料供給部411は、生体試料を弁別部41に供給する際に、生体試料の投入口として機能するように構成されている。また、試料供給部411は、図9に示すように、平面的に見て、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に延びるように深さD2(約800μm)で形成されている。また、試料供給部411は、流域部412の矢印X2方向側の端部に設けられている。
【0053】
流域部412は、試料供給部411から流入された生体試料が排出部413に向かって流れる領域である。流域部412は、図9に示すように、試料供給部411と接続されている。また、流域部412は、試料供給部411の矢印X1方向側の端部から矢印X1方向に向かって徐々に幅が大きくなるように形成されるとともに、最も大きい幅がW1(約20mm)となるように形成されている。また、流域部412は、W1の幅を有する部分が矢印X1およびX2方向に長さD1(約10mm)だけ延びるように形成されている。また、流域部412の矢印X1方向側は、矢印X2方向側と対称形状となるように、矢印X1方向に向かって幅がW1から徐々に小さくなるように形成されている。そして、流域部412の矢印X1方向側の端部は、排出部413に接続されている。また、流域部412は、試料供給部411と同じ深さD2(約800μm)を有している。
【0054】
排出部413は、上皮細胞がろ過された後の生体試料を弁別部41から排出するための流出口として機能するように構成されている。また、排出部413は、図9に示すように、平面的に見て、流域部412の矢印X1方向側の端部から生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に延びるように試料供給部411と同じ深さD2(約800μm)で形成されている。また、排出部413には、電磁バルブ52aを介して陽圧源52が接続されているとともに、電磁バルブ52bを介して後述する排液部53が接続されている。
【0055】
第1液体供給部414a、第2液体供給部414bおよび第3液体供給部414cは、それぞれ、洗浄液供給部46から供給される洗浄液および後述する置換液供給部47から供給される置換液を流域部412に供給するための投入口として機能するように構成されている。また、第1液体供給部414a、第2液体供給部414bおよび第3液体供給部414cから供給される洗浄液および置換液は、それぞれ、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に略直交する方向(矢印Y1方向)に流される。また、第1液体供給部414a、第2液体供給部414bおよび第3液体供給部414cは、図9に示すように、それぞれ、流域部412のW1の幅を有する部分の矢印Y2方向側の側面に接続されている。また、第1液体供給部414a、第2液体供給部414bおよび第3液体供給部414cは、それぞれ、平面的に見て、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に直交する方向(矢印Y2方向)に流域部412から外側に向かって延びるように流域部412と同じ深さD2(約800μm)で形成されている。また、第1液体供給部414a、第2液体供給部414bおよび第3液体供給部414cには、図6に示すように、それぞれ、電磁バルブ46a、46bおよび46cを介して洗浄液供給部46が接続されている。また、第1液体供給部414a、第2液体供給部414bおよび第3液体供給部414cには、それぞれ、電磁バルブ47a、47bおよび47cを介して置換液供給部47が接続されている。
【0056】
第1液体回収部415a、第2液体回収部415bおよび第3液体回収部415cは、それぞれ、第1液体供給部414a、第2液体供給部414bおよび第3液体供給部414cから流域部412に流入された洗浄液および置換液を生体試料とともに弁別部41から流出させるための流出口として機能するように構成されている。また、第1液体回収部415a、第2液体回収部415bおよび第3液体回収部415cは、図9に示すように、それぞれ、流域部412のW1の幅を有する部分の矢印Y1方向側の側面に接続されている。また、第1液体回収部415a、第2液体回収部415bおよび第3液体回収部415cは、それぞれ、平面的に見て、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に直交する方向(矢印Y1方向)に流域部412から外側に向かって延びるように流域部412と同じ深さD2(約800μm)で形成されている。また、第1液体回収部415a、第2液体回収部415bおよび第3液体回収部415cには、図6に示すように、それぞれ、電磁バルブ53a、53bおよび53cを介して排液部53が接続されている。
【0057】
第1細胞弁別部416は、図9および図10に示すように、耐薬性に優れるシリコンからなる複数の板状部材416aを有している。複数の板状部材416aは、それぞれ、略同じ形状に形成され、互いに略平行に配置されている。具体的には、複数の板状部材416aは、図10に示すように、それぞれ、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に直交する方向(矢印Y1およびY2方向)にt1(約15μm)の厚みを有している。また、複数の板状部材416aは、それぞれ、矢印Z1およびZ2方向に流域部412の深さD2と同じh1(約800μm)の高さを有するとともに、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に後述する板状部材416aの間隔s1の2倍以上の大きさのL1(約1000μm)の長さを有している。また、複数の板状部材416aは、第1細胞弁別部416の開口率が実質的に50%となるように配置されている。具体的には、複数の板状部材416aは、互いに生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に直交する方向(矢印Y1およびY2方向)に、赤血球、白血球および細菌などの微小細胞60を通過させ、子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61を通過させない間隔s1(約15μm)を隔てて配列されている。これによって、第1細胞弁別部416は、生体試料が通過される際に、微小細胞60と単一細胞61とを弁別する機能を有している。なお、シリコンからなる複数の板状部材416aは、ドライエッチングを用いてシリコンウエハーに間隙s1を形成することにより製造されている。これにより、電気鋳造法などを用いて細孔を設ける場合に比べて、容易に、板状部材416aの厚みt1を小さくすることができるので、容易に、開口率を大きくすることが可能である。また、複数の板状部材416aは、それぞれ、矢印X2方向側の表面が第1液体供給部414aの矢印X1方向側の側面と面一となるように配置されている。
【0058】
第2細胞弁別部417は、図9および図10に示すように、第1細胞弁別部416よりも生体試料の流れの上流側(矢印X2方向側)に配置されている。また、第2細胞弁別部417は、耐薬性に優れるシリコンからなる複数の板状部材417aを有している。複数の板状部材417aは、それぞれ、略同じ形状に形成され、互いに略平行に配置されている。具体的には、複数の板状部材417aは、図10に示すように、それぞれ、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に直交する方向(矢印Y1およびY2方向)にt2(約80μm)の厚みを有している。また、複数の板状部材417aは、それぞれ、矢印Z1およびZ2方向に流域部412の深さD2と同じh2(約800μm)の高さを有するとともに、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に後述する板状部材417aの間隔s2の2倍以上の大きさのL2(約1000μm)の長さを有している。また、複数の板状部材417aは、第2細胞弁別部417の開口率が実質的に50%となるように配置されている。具体的には、複数の板状部材417aは、互いに生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に直交する方向(矢印Y1およびY2方向)に、子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61を通過させ、2つまたは3つの子宮頸部の上皮細胞が凝集した第1凝集細胞62を通過させない間隔s2(約80μm)を隔てて配列されている。これによって、第2細胞弁別部417は、生体試料が通過される際に、単一細胞61と第1凝集細胞62とを弁別する機能を有している。なお、シリコンからなる複数の板状部材417aは、ドライエッチングを用いてシリコンウエハーに間隙s2を形成することにより製造されている。これにより、電気鋳造法などを用いて細孔を設ける場合に比べて、容易に、板状部材417aの厚みt2を小さくすることができるので、容易に、開口率を大きくすることが可能である。また、複数の板状部材417aは、それぞれ、矢印X2方向側の表面が第2液体供給部414bの矢印X1方向側の側面と面一となるように配置されている。
【0059】
第3細胞弁別部418は、図9および図10に示すように、第2細胞弁別部417よりも生体試料の流れの上流側(矢印X2方向側)に配置されている。また、第3細胞弁別部418は、耐薬性に優れるシリコンからなる複数の板状部材418aを有している。複数の板状部材418aは、それぞれ、略同じ形状に形成され、互いに略平行に配置されている。具体的には、複数の板状部材418aは、図10に示すように、それぞれ、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に直交する方向(矢印Y1およびY2方向)にt3(約120μm)の厚みを有している。また、複数の板状部材418aは、それぞれ、矢印Z1およびZ2方向に流域部412の深さD2と同じh3(約800μm)の高さを有するとともに、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に後述する板状部材418aの間隔s3の2倍以上の大きさのL3(約1000μm)の長さを有している。また、複数の板状部材418aは、第3細胞弁別部418の開口率が実質的に50%となるように配置されている。具体的には、複数の板状部材418aは、互いに生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に直交する方向(矢印Y1およびY2方向)に、2つまたは3つの子宮頸部の上皮細胞が凝集した第1凝集細胞62を通過させ、4つ以上の子宮頸部の上皮細胞が凝集した第2凝集細胞63および細胞以外の異物64を通過させない間隔s3(約120μm)を隔てて配列されている。これによって、第3細胞弁別部418は、生体試料が通過される際に、第1凝集細胞62と第2凝集細胞63および細胞以外の異物64とを弁別する機能を有している。なお、シリコンからなる複数の板状部材418aは、ドライエッチングを用いてシリコンウエハーに間隙s3を形成することにより製造されている。これにより、電気鋳造法などを用いて細孔を設ける場合に比べて、容易に、板状部材418aの厚みt3を小さくすることができるので、容易に、開口率を大きくすることが可能である。また、複数の板状部材418aは、それぞれ、矢印X2方向側の表面が第3液体供給部414cの矢印X1方向側の側面と面一となるように配置されている。
【0060】
また、弁別部41は、図9および図11に示すように、試料供給部411、生体試料の流域部412、生体試料の排出部413、液体供給部414a〜414cおよび液体回収部415a〜415cの全体を上下方向(矢印Z1およびZ2方向側)から塞ぐように配置する上側ガラス板419a(図11参照)および下側ガラス板419bを有している。複数の板状部材416a〜418aは、それぞれ、上側ガラス板419aおよび下側ガラス板419bにより上下方向(矢印Z1およびZ2方向)から挟み込まれるようにして支持されている。
【0061】
上記の構成により、弁別部41は、図9に示すように、流域部412の第3細胞弁別部418よりも矢印X2方向側の領域に第2凝集細胞63および細胞以外の異物64を捕捉することが可能である。また、弁別部41は、流域部412の第3細胞弁別部418と第2細胞弁別部417との間の領域に第1凝集細胞62を捕捉することが可能である。また、弁別部41は、流域部412の第2細胞弁別部417と第1細胞弁別部416との間の領域に子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61を捕捉することが可能である。
【0062】
試料調製部42は、DNAの染色を行うための染色液および細胞にRNA処理を行うためのRNaseのそれぞれを測定対象の細胞が濃縮された濃縮液に供給するために設けられている。具体的には、試料調製部42は、図7に示すように、試料調製装置4に設置された染色液タンク421からシリンジポンプ422により定量される染色液を、検体セット部48にセットされたろ過処理後の濃縮液を収容するキュベット70にピペット423を介して供給するように構成されている。また、試料調製部42は、試料調製装置4に設置されたRNaseタンク424からシリンジポンプ425により定量されるRNaseを、ろ過処理後の濃縮液を収容するキュベット70にピペット423を介して供給するように構成されている。また、染色液タンク421とシリンジポンプ422とは、電磁バルブ426を介して接続されており、RNaseタンク424とシリンジポンプ425とは、電磁バルブ427を介して接続されている。また、シリンジポンプ422およびシリンジポンプ425は、それぞれ、ステッピングモータにより駆動されるように構成されている。
【0063】
試料供給部43は、弁別部41によりろ過処理する前の生体試料を保持するとともに、ろ過処理する前の生体試料を弁別部41に供給するように構成されている。また、試料供給部43は、図6に示すように、ろ過処理する前の生体試料を収容する試料保持部431を有し、試料保持部431は、電磁バルブ432を介して弁別部41の試料供給部411に接続されている。また、試料保持部431は、電磁バルブ433を介して後述する排液部53に接続されている。また、試料保持部431は、電磁バルブ434を介して洗浄液供給部46に接続されているとともに、電磁バルブ435を介して置換液供給部47に接続されている。さらに、試料保持部431は、電磁バルブ436を介して陰圧源51に接続されているとともに、電磁バルブ437を介して陽圧源52に接続されている。また、試料保持部431は、電磁バルブ438を介して検体ピペット483に接続されている。また、試料供給部43内の生体試料は、後述するようにメタノールからなる保存液とともに収容されており、生体試料は、保存液とともに試料保持部431から弁別部41の試料供給部411に移送される。
【0064】
第1細胞回収部44は、弁別部41の流域部412の第2細胞弁別部417と第1細胞弁別部416との間の領域に捕捉された子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61を回収するために設けられている。第1細胞回収部44は、図6に示すように、第1収容容器441と、第1回収ピペット442と、シリンジポンプ443とを有している。第1収容容器441は、電磁バルブ444を介して弁別部41の第1液体回収部415aに接続されている。さらに、第1収容容器441は、電磁バルブ445を介して洗浄液供給部46に接続されているとともに、電磁バルブ446を介して排液部53に接続されている。また、第1収容容器441には、後述する置換液とともに、子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61が収容される。また、第1収容容器441は、大気開放されている。また、第1回収ピペット442は、第1収容容器441に収容された置換液および子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61を、シリンジポンプ443により定量された液量だけ吸引する機能を有している。また、第1回収ピペット442は、第1収容容器441から吸引した試料を検体セット部48にセットされたキュベット70に吐出するように構成されている。また、第1回収ピペット442は、第1収容容器441での吸引位置からキュベット70への吐出位置まで、図8に示す第1回収ピペット駆動部447により移動されるように構成されている。また、シリンジポンプ443は、電磁バルブ448を介して洗浄液供給部46に接続されているとともに、ステッピングモータにより駆動されるように構成されている。
【0065】
第2細胞回収部45は、弁別部41の流域部412の第3細胞弁別部418と第2細胞弁別部417との間の領域に捕捉された2つまたは3つの子宮頸部の上皮細胞が凝集した第1凝集細胞62を回収するために設けられている。第2細胞回収部45は、図6に示すように、第2収容容器451と、第2回収ピペット452と、シリンジポンプ453とを有している。第2収容容器451には、後述する置換液とともに、第1凝集細胞62が収容される。また、第2細胞回収部45は、上記した第1細胞回収部44の構成と同様であるため、説明を省略する。なお、第2細胞回収部45の第2収容容器451、第2回収ピペット452およびシリンジポンプ453は、それぞれ、第1細胞回収部44の第1収容容器441、第1回収ピペット442およびシリンジポンプ443に対応している。また、第2細胞回収部45の電磁バルブ454、電磁バルブ455、電磁バルブ456、第2回収ピペット駆動部457および電磁バルブ458は、それぞれ、第1細胞回収部44の電磁バルブ444、電磁バルブ445、電磁バルブ446、第1回収ピペット駆動部447および電磁バルブ448に対応している。
【0066】
洗浄液供給部46は、試料調製装置4の各部に洗浄液を供給する機能を有している。また、洗浄液供給部46は、図12に示すように、次亜塩素酸などからなる洗浄液を収容する洗浄液タンク461を有し、洗浄液タンク461は、電磁バルブを介して試料調製装置4の各部に接続されている。また、洗浄液タンク461は、電磁バルブ462を介して陰圧源51に接続されているとともに、電磁バルブ463を介して陽圧源52に接続されている。また、洗浄液タンク461は、電磁バルブ464を介して、装置外の洗浄液貯留タンクに接続されている。
【0067】
置換液供給部47は、弁別部41の第1液体供給部414a、第2液体供給部414bおよび第3液体供給部414cに、pH調整剤、DNaseの失活剤および界面活性剤からなる置換液を供給する機能を有している。また、置換液供給部47は、図13に示すように、置換液タンク471を有し、置換液タンク471は、各電磁バルブを介して試料調製装置4の各部に接続されている。また、置換液タンク471は、電磁バルブ472を介して陰圧源51に接続されているとともに、電磁バルブ473を介して陽圧源52に接続されている。また、置換液タンク471は、電磁バルブ474を介して、装置外の置換液貯留タンクに接続されている。
【0068】
検体セット部48は、図1に示すように、キュベット70およびろ過処理前の生体試料を収容する生体容器71を保持するとともに、生体容器71からろ過処理前の生体試料を吸引して試料保持部431に移送する機能を有している。具体的には、検体セット部48は、キュベット70および生体容器71を保持する回転テーブル481と、回転テーブル481を回転駆動させるためのステッピングモータ482(図6および図8参照)と、検体ピペット483(図6参照)とを有している。回転テーブル481は、保持するキュベット70および生体容器71内の液体を約40℃に加温する機能を有している。また、検体ピペット483は、検体ピペット駆動部484により上下方向に移動可能に構成されており、検体セット部48は、検体ピペット483により、生体容器71からろ過処理前の生体試料を吸引して試料保持部431に移送するように構成されている。また、検体セット部48は、図示しない細胞分散部をさらに有し、細胞分散部により、生体容器71内でメタノールからなる保存液を加えた生体試料を攪拌して細胞を分散するように構成されている。
【0069】
測定試料供給部49は、図8に示すように、試料調製部42によりDNA染色およびRNA処理が行われた測定試料を測定装置2の検出部21に移送する機能を有している。
【0070】
制御部50は、図8に示すように、インターフェース50aを介して測定装置2のインターフェース245aに接続されるとともに、I/O(Input/Output)部50bおよび各回路を介して、試料調製装置4の各部に接続されている。
【0071】
排液部53は、図14に示すように、試料調製装置4の各部から移送される液体を装置外に排出するために設けられている。排液部53は、試料調製装置4の各部から移送される液体を収容する排液タンク531を有し、排液タンク531は、電磁バルブ532を介して試料調製装置4の外部に液体を排出するように構成されている。また、排液タンク531は、電磁バルブ533を介して陰圧源51に接続されているとともに、電磁バルブ534を介して陽圧源52に接続されている。
【0072】
図15は、図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の分析処理動作を説明するためのフローチャートである。次に、図6および図15を参照して、本発明の第1実施形態による細胞分析装置の分析処理動作について説明する。
【0073】
まず、図15のステップS1において、データ処理装置3の初期化が行われ、ステップS2において、測定の開始指示を受け付けるメニュー画面(図示せず)が表示部32に表示される。そして、ステップS3において、CPU31aにより、測定開始指示を受け付けたか否かが判断され、受け付けていない場合には、ステップS8に移行される。一方測定開始指示を受け付けた場合には、ステップS4において、測定を開始させるための信号が測定装置2に送信される。
【0074】
測定装置2では、ステップS11において初期化が行われた後、ステップS12において、制御部241により、データ処理装置3から測定開始のための信号を受け付けたか否かが判断される。測定開始の信号を受け付けていない場合には、ステップS17に移行され、測定開始の信号を受け付けた場合には、ステップS13において、測定試料を調製させるための信号が試料調製装置4に送信される。
【0075】
試料調製装置4では、ステップS21において初期化が行われた後、ステップS22において、制御部50により、測定装置2から測定試料調製のための信号を受け付けたか否かが判断される。測定試料調製の信号を受け付けていない場合には、ステップS31に移行され、測定試料調製の信号を受け付けた場合には、ステップS23において、生体容器71内の細胞が分散される。具体的には、検体セット部48の回転テーブル481にセットされた生体容器71内のろ過処理前の生体試料に保存液が加えられた後、細胞分散部(図示せず)により生体試料中の細胞が分散される。その後、ステップS24において、検体ピペット483により、生体容器71に収容された生体試料が吸引されて、試料保持部431に移送される。そして、ステップS25において弁別・置換処理が行われる。
【0076】
図16は、図15に示した分析処理動作のステップS25における弁別・置換処理動作を説明するためのフローチャートである。ここで、図6、図13および図16を参照して、図15に示した分析処理動作のステップS25における弁別・置換処理動作について説明する。
【0077】
まず、図16のステップS251において、生体試料が保存液とともに弁別部41に送液される。具体的には、図6に示す試料供給部411と試料保持部431との間の電磁バルブ432および試料保持部431と陽圧源52との間の電磁バルブ437を開放することによって、試料保持部431に収容された生体試料が保存液とともに弁別部41の試料供給部411に移送される。そして、生体試料は矢印X1方向に向かって、上流側から順に、第3細胞弁別部418、第2細胞弁別部417および第1細胞弁別部416を通過する。これにより、第3細胞弁別部418では、4つ以上の子宮頸部の上皮細胞が凝集した第2凝集細胞63および細胞以外の異物64が捕捉され、第2細胞弁別部417では、2つまたは3つの子宮頸部の上皮細胞が凝集した第1凝集細胞62が捕捉される。また、第1細胞弁別部416では、子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61が捕捉される。
【0078】
そして、ステップS252において、制御部50により、n=1に設定される。ここで、nは1から始まる実数である。その後、ステップS253において、排出部413と陽圧源52との間の電磁バルブ52a、試料供給部411と試料保持部431との間の電磁バルブ432および試料保持部431と陰圧源51との間の電磁バルブ436が開放されることにより、生体試料の流れの下流側から上流側に向かって(矢印X2方向側に向かって)陽圧が瞬間的(約0.1秒)に印加される。これにより、第1細胞弁別部416、第2細胞弁別部417および第3細胞弁別部418のそれぞれの間隙に挟まった細胞や異物が、各細胞弁別部の上流側に押し戻されるので、次に行われる置換液の供給動作により、捕捉された細胞や異物を生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に直交する方向(矢印Y1方向)に流し易くなる。
【0079】
次に、ステップS254において、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に直交する方向(矢印Y1方向)に置換液が供給される。具体的には、置換液供給部47と第3液体供給部414cとの間の電磁バルブ47c、第3液体回収部415cと排液部53との間の電磁バルブ53cおよび図13に示す置換液タンク471と陽圧源52との間の電磁バルブ473が開放されることによって、置換液が第3液体供給部414cに供給される。そして、供給された置換液は、弁別部41の流域部412における第3細胞弁別部418の矢印X2方向側の領域を通って、矢印Y1方向に流れる。これにより、第3細胞弁別部418により捕捉された第2凝集細胞63および細胞以外の異物64が置換液により押し流されて、排液部53に移送される。
【0080】
また、置換液供給部47と第2液体供給部414bとの間の電磁バルブ47b、第2液体回収部415bと第2収容容器451との間の電磁バルブ454および図13に示す置換液タンク471と陽圧源52との間の電磁バルブ473が開放されることによって、置換液が第2液体供給部414bに供給される。そして、供給された置換液は、弁別部41の流域部412における第2細胞弁別部417と第3細胞弁別部418との間の領域を通って、矢印Y1方向に流れる。これにより、第2細胞弁別部417により捕捉された第1凝集細胞62が置換液により押し流されて、第2収容容器451に移送される。この際、生体試料とともに供給された保存液は、置換液により所定の濃度に希釈される。すなわち、置換液を供給することによって、保存液を所定の濃度に希釈しながら、捕捉された第1凝集細胞62を第2収容容器451に移送することが可能である。また、捕捉された第1凝集細胞62と置換液を第2収容容器451に移送できるため、保存液と置換液との溶液置換を行うことができる。
【0081】
また、置換液供給部47と第1液体供給部414aとの間の電磁バルブ47a、第1液体回収部415aと第1収容容器441との間の電磁バルブ444および図13に示す置換液タンク471と陽圧源52との間の電磁バルブ473が開放されることによって、置換液が第1液体供給部414aに供給される。そして、供給された置換液は、弁別部41の流域部412における第1細胞弁別部416と第2細胞弁別部417との間の領域を通って、矢印Y1方向に流れる。これにより、第1細胞弁別部416により捕捉された子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61が置換液により押し流されて、第1収容容器441に移送される。この際、生体試料とともに供給された保存液は、置換液により所定の濃度に希釈される。すなわち、置換液を供給することによって、保存液を所定の濃度に希釈しながら、捕捉された子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61を第1収容容器441に移送することが可能である。また、捕捉された上皮細胞の単一細胞61と置換液とを第1収容容器441に移送できるため、保存液と置換液との溶液置換を行うことができる。
【0082】
そして、ステップS255において、制御部50により、nが1より大きいか否かが判断され、大きい場合には、そのまま弁別・置換処理動作が終了される。一方、nが1より大きくない場合には、ステップS256において、制御部50により、n=n+1に設定され(nに1がインクリメントされ)、ステップS253〜255の動作が再度実行される。
【0083】
図15のステップS25による弁別・置換処理動作が実行された後、ステップS26において、図6に示す第1収容容器441に収容された子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61が、第1回収ピペット442により吸引される。そして、吸引された濃縮液は、検体セット部48の回転テーブル481に保持されたキュベット70に吐出される。また、第2細胞回収部45においても、第2収容容器451に収容された2つまたは3つの子宮頸部の上皮細胞が凝集した第1凝集細胞62の濃縮液が、第2回収ピペット452により吸引される。そして、吸引された濃縮液は、検体セット部48の回転テーブル481に保持されたキュベット70に吐出される。その後、ステップS27において、洗浄処理が行われる。
【0084】
図17は、図15に示した分析処理動作のステップS27における洗浄処理動作を説明するためのフローチャートである。ここで、図6、図12および図17を参照して、図15に示した分析処理動作のステップS27における洗浄処理動作について説明する。
【0085】
まず、図17のステップS271において、制御部50により、n=1に設定される。ここで、nは1から始まる実数である。その後、ステップS272において、図6に示す排出部413と陽圧源52との間の電磁バルブ52a、試料供給部411と試料保持部431との間の電磁バルブ432および試料保持部431と陰圧源51との間の電磁バルブ436が開放されることにより、生体試料の流れの下流側から上流側に向かって(矢印X2方向側に向かって)陽圧が瞬間的(約0.1秒)に印加される。これにより、第1細胞弁別部416、第2細胞弁別部417および第3細胞弁別部418のそれぞれの間隙に挟まった細胞や異物が、各細胞弁別部の上流側に押し戻されるので、次に行われる洗浄液の供給動作により、捕捉された細胞や異物を生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に直交する方向(矢印Y1方向)に流し易くなる。
【0086】
次に、ステップS273において、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)に直交する方向(矢印Y1方向)に洗浄液が供給される。具体的には、洗浄液供給部46と第3液体供給部414cとの間の電磁バルブ46c、第3液体回収部415cと排液部53との間の電磁バルブ53cおよび図12に示す洗浄液タンク461と陽圧源52との間の電磁バルブ463が開放されることによって、洗浄液が第3液体供給部414cに供給される。そして、供給された洗浄液は、弁別部41の流域部412における第3細胞弁別部418の矢印X2方向側の領域を通って、矢印Y1方向に流れる。これにより、流域部412における第3細胞弁別部418の矢印X2方向側の領域内に残存する第2凝集細胞63および細胞以外の異物64が洗浄液により押し流されて、排液部53に移送される。
【0087】
また、洗浄液供給部46と第2液体供給部414bとの間の電磁バルブ46b、第2液体回収部415bと排液部53との間の電磁バルブ53bおよび図12に示す洗浄液タンク461と陽圧源52との間の電磁バルブ463が開放されることによって、洗浄液が第2液体供給部414bに供給される。そして、供給された洗浄液は、弁別部41の流域部412における第2細胞弁別部417と第3細胞弁別部418との間の領域を通って、矢印Y1方向に流れる。これにより、流域部412における第2細胞弁別部417と第3細胞弁別部418との間の領域内に残存する第1凝集細胞62が洗浄液により押し流されて、排液部53に移送される。
【0088】
また、洗浄液供給部46と第1液体供給部414aとの間の電磁バルブ46a、第1液体回収部415aと排液部53との間の電磁バルブ53aおよび図12に示す洗浄液タンク461と陽圧源52との間の電磁バルブ463が開放されることによって、洗浄液が第1液体供給部414aに供給される。そして、供給された洗浄液は、弁別部41の流域部412における第1細胞弁別部416と第2細胞弁別部417との間の領域を通って、矢印Y1方向に流れる。これにより、流域部412における第1細胞弁別部416と第2細胞弁別部417との間の領域に残存する子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61が洗浄液により押し流されて、排液部53に移送される。
【0089】
このように、洗浄液の供給動作により、弁別部41および各流路が洗浄されるので、異なる被験者から採取した生体試料が互いに混合されるのが防止される。
【0090】
そして、ステップS274において、制御部50により、nが1より大きいか否かが判断され、大きい場合には、そのまま洗浄処理動作が終了される。一方、nが1より大きくない場合には、ステップS275において、制御部50により、n=n+1に設定され(nに1がインクリメントされ)、ステップS272〜274の動作が再度実行される。
【0091】
図15のステップS27による洗浄処理動作が実行された後、ステップS28において、濃縮液を収容するキュベット70に対して、試料調製部42により染色液およびRNaseが供給される。そして、ステップS29において、回転テーブル481により加温が所定時間行われ、DNA染色およびRNA処理がなされる。その後、ステップS30において、DNA染色およびRNA処理がなされた測定試料が、測定試料供給部49により、測定装置2の検出部21に送液される。
【0092】
測定装置2では、ステップS14において、測定試料が供給されたか否かが判断され、供給されるまでこの判断が繰り返される。測定試料が供給されると、ステップS15において、測定が実施され、ステップS16において、測定データがインターフェース245cを介してデータ処理装置3に送信される。
【0093】
データ処理装置3では、ステップS5において、測定データを受信したか否かが判断され、受信するまでこの判断が繰り返される。測定データが受信されると、ステップS6において、測定データに基づいて分析が行われ、ステップS7において、分析結果が表示部32に表示される。そして、ステップS8において、シャットダウン指示があったか否かが判断され、指示がない場合には、ステップS3に移行される。シャットダウン指示があった場合には、ステップS9において、シャットダウン指示の信号が測定装置2に送信され、データ処理装置3における分析処理動作が終了される。
【0094】
測定装置2では、ステップS17において、データ処理装置3からのシャットダウン指示の信号が受信されたか否かが判断され、シャットダウン指示がない場合には、ステップS12に移行される。一方、シャットダウン指示が受信されると、ステップS18において、シャットダウン指示の信号が試料調製装置4に送信される。そして、ステップS19において、シャットダウンが実行され、測定装置2における分析処理動作が終了される。
【0095】
試料調製装置4では、ステップS31において、測定装置2からのシャットダウン指示の信号が受信されたか否かが判断され、シャットダウン指示がない場合には、ステップS22に移行される。一方、シャットダウン指示が受信されると、ステップS32において、シャットダウンが実行され、試料調製装置4における分析処理動作が終了される。
【0096】
第1実施形態では、上記のように、細胞弁別部416〜418に所定の間隔s1〜s3を隔てて配置された複数の板状部材416a〜418aを設けることによって、細胞弁別部416〜418に細孔を設ける場合に比べて、製造上、開口部間の部材(板状部材416a〜418a)の厚みを容易に小さくすることができるので、容易に開口率を大きくすることができる。これにより、容易に、所定時間内における細胞弁別部416〜418を通過する生体試料の量を増加させることができるので、容易に、ろ過の処理速度を向上させることができる。また、複数の板状部材416a〜418aを用いてろ過することによって、生体試料の流れ方向の厚みが小さいフィルタを用いる場合に比べて、生体試料の流れ方向の厚み(長さ)L1〜L3を容易に大きくすることができるので、容易に、生体試料の流れ方向における細胞弁別部416〜418の機械的強度を高めることができる。
【0097】
また、第1実施形態では、赤血球、白血球および細菌などの微小細胞60を通過させ、子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61を通過させない第1細胞弁別部416、子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61を通過させ、2つまたは3つの子宮頸部の上皮細胞が凝集した第1凝集細胞62を通過させない第2細胞弁別部417、および、2つまたは3つの子宮頸部の上皮細胞が凝集した第1凝集細胞62を通過させ、4つ以上の子宮頸部の上皮細胞が凝集した第2凝集細胞63および細胞以外の異物64を通過させない第3細胞弁別部418を設けることによって、4つ以上の子宮頸部の上皮細胞が凝集した第2凝集細胞63および細胞以外の異物64と、2つまたは3つの子宮頸部の上皮細胞が凝集した第1凝集細胞62と、子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61と、赤血球、白血球および細菌などの微小細胞60とを弁別することができる。
【0098】
また、第1実施形態では、収容容器441、451と、および、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)と交差する方向(矢印Y1方向)に置換液を供給することにより、弁別された所定の大きさの細胞および所定の大きさの細胞よりも大きい細胞のうちの少なくともいずれか一方と置換液とを収容容器441、451に移送する置換液供給部47を設けることによって、第1細胞弁別部416および第2細胞弁別部417に対してせん断力を作用させるように置換液を供給することができるので、弁別された細胞を複数の板状部材416a〜418aから容易に離間させることができ、その結果、容易に弁別された細胞を置換液とともに収容容器441、451に移送することができる。
【0099】
また、第1実施形態では、生体試料を保存するための保存液とともに生体試料を弁別部41に供給し、回収液として測定試料の調製に用いられる置換液を供給するように構成することによって、弁別された細胞を収容容器441、451に移送しながら、保存液を置換液で希釈することができる。また、弁別された細胞と置換液とを収容容器441,451に移送できるため、保存液と置換液との溶液置換を行うことができる。
【0100】
また、第1実施形態では、生体試料の流れ方向と交差する方向に洗浄液を供給することにより、弁別部41の洗浄を行う洗浄液供給部46を設けることによって、細胞弁別部416〜418に対してせん断力を作用させるように洗浄液を供給することができるので、細胞や異物を複数の板状部材416a〜418aから容易に離間させることができ、その結果、容易に弁別部41の洗浄を行うことができる。
【0101】
また、第1実施形態では、生体試料の流れ方向(矢印X1方向)における板状部材416a〜418aの長さL1〜L3を、複数の板状部間の間隔s1〜s3の2倍以上とすることによって、容易に、複数の板状部材416a〜418aの生体試料の流れ方向における機械的強度を高めることができる。
【0102】
また、第1実施形態では、耐薬性に優れるシリコンを用いて細胞弁別部416〜418の板状部材416a〜418aを形成しているため、洗浄液の選択肢を広げることができる。そのため、洗浄力の強い洗浄液を用いることができ、異なる被検者から採取した生体試料が互いに混合されるのをより効果的に防止することが可能となる。
【0103】
(第2実施形態)
図18は、本発明の第2実施形態による細胞分析装置の弁別部を示した斜視図である。図19〜図21は、図18に示した第2実施形態による細胞分析装置の弁別部の構成を説明するための図である。次に、図18〜図21を参照して、この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、第2細胞弁別部417および第3細胞弁別部418を有さず、第1細胞弁別部416bのみが設けられた弁別部141の構成について説明する。
【0104】
第2実施形態による弁別部141は、測定対象の細胞とその他の細胞とを弁別するために設けられている。また、弁別部141は、図18〜図20に示すように、試料供給部411aと、生体試料の流域部412a(図19および図20参照)と、生体試料の排出部413aとを有している。また、弁別部141は、第1液体回収部415dと、第1細胞弁別部416bとをさらに有している。
【0105】
試料供給部411aは、生体試料を弁別部141に供給する際に、生体試料の投入口として機能するように構成されている。また、試料供給部411aは、図18〜図20に示すように、上側ガラス板419cを垂直方向(矢印Z1およびZ2方向)に貫通するように形成されている。また、試料供給部411aは、図19に示すように、平面的に見て、上側ガラス板419cにおいて、流域部412aの矢印X4方向側で矢印Y4方向側の端部に設けられている。また、試料供給部411aには、電磁バルブ432を介して試料保持部431が接続されている。
【0106】
流域部412aは、上側ガラス板419cおよび下側ガラス板419dのそれぞれに形成されている。また、流域部412aは、試料供給部411aから流入された生体試料が排出部413aまたは第1液体回収部415dに向かって流れる領域である。また、上側ガラス板419cにおける流域部412aは、試料供給部411aおよび第1液体回収部415dのそれぞれと接続されている。具体的には、上側ガラス板419cの流域部412aは、平面的に見て、U字形状を有しており、その両端部でそれぞれ試料供給部411aおよび第1液体回収部415dに接続されている。また、上側ガラス板419cの流域部412aは、矢印X3およびX4方向における最も狭い部分において幅W2(約800μm)を有している。また、上側ガラス板419cの流域部412aは、矢印Y3およびY4方向に距離D3(約20mm)にわたって、深さD4(約500μm)で形成されている。
【0107】
また、下側ガラス板419dにおける流域部412aは、排出部413aと接続されている。具体的には、下側ガラス板419dの流域部412aは、平面的に見て、逆L字形状を有しており、その終端部で排出部413aに接続されている。また、下側ガラス板419dの流域部412aは、矢印X3およびX4方向における最も狭い部分において幅W3(約800μm)を有している。また、下側ガラス板419dの流域部412aは、矢印Y3およびY4方向に距離D5(約20mm)にわたって、深さD6(約500μm)で形成されている。
【0108】
排出部413aは、上皮細胞がろ過された後の生体試料を弁別部141から排出するための流出口として機能するように構成されている。また、排出部413aは、図18〜図20に示すように、下側ガラス板419dを垂直方向(矢印Z1およびZ2方向)に貫通するように形成されている。また、排出部413aは、図19に示すように、平面的に見て、下側ガラス板419dにおいて、流域部412aの矢印X4方向側で矢印Y4方向側の端部に設けられている。また、排出部413aには、電磁バルブ52aを介して陽圧源52が接続されているとともに、電磁バルブ53dを介して排液部53が接続されている。
【0109】
第1液体回収部415dは、試料供給部411aから流域部412aに流入された洗浄液、置換液および生体試料を弁別部141から流出させるための流出口として機能するように構成されている。また、第1液体回収部415dは、図18〜図20に示すように、上側ガラス板419cを垂直方向(矢印Z1およびZ2方向)に貫通するように形成されている。また、第1液体回収部415dは、図19に示すように、平面的に見て、上側ガラス板419cにおいて、流域部412aの矢印X4方向側で矢印Y3方向側の端部に設けられている。また、第1液体回収部415dには、電磁バルブ53aを介して排液部53が接続されているとともに、電磁バルブ444を介して第1収容容器441が接続されている。
【0110】
第1細胞弁別部416bは、図19および図20に示すように、耐薬性に優れるシリコンからなる複数の板状部材416cを有している。複数の板状部材416cは、図20に示すように、それぞれ、第1細胞弁別部416bにおける生体試料の流れ方向(矢印Z2方向)に直交する方向(矢印Y3およびY4方向)にt4(約15μm)の厚みを有している。また、複数の板状部材416cは、図19に示すように、それぞれ、矢印X3およびX4方向に流域部412aの幅W2、W3と同じ長さh4(約800μm)で形成されている。また、複数の板状部材416cは、図20に示すように、生体試料の流れ方向(矢印Z2方向)に後述する板状部材416cの間隔s4の2倍以上の大きさのL4(約1000μm)の長さを有している。また、複数の板状部材416cは、第1細胞弁別部416bの開口率が実質的に50%となるように配置されている。具体的には、複数の板状部材416cは、互いに第1細胞弁別部416bにおける生体試料の流れ方向(矢印Z2方向)に直交する方向(矢印Y3およびY4方向)に、赤血球、白血球および細菌などの微小細胞60を通過させ、子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61、単一細胞61よりも大きい第1凝集細胞62、第2凝集細胞63および細胞以外の異物64を通過させない間隔s4(約15μm)を隔てて配列されている。これによって、第1細胞弁別部416bは、生体試料が通過される際に、微小細胞60と、単一細胞61、第1凝集細胞62、第2凝集細胞63および細胞以外の異物64とを弁別する機能を有している。なお、複数の板状部材416cは、ドライエッチングにより形成されている。これにより、電気鋳造法などを用いて細孔を設ける場合に比べて、容易に、板状部材416cの厚みt4を小さくすることができるので、容易に、開口率を大きくすることが可能である。
【0111】
次に、第2実施形態による弁別部141における弁別・置換処理について説明する。弁別部141では、図21に示すように、試料供給部411aと試料保持部431との間の電磁バルブ432、および、排出部413aと排液部53との間の電磁バルブ53dを開放することによって、生体試料が保存液とともに試料供給部411aに供給される。そして、生体試料が矢印Z2方向に向かって、第1細胞弁別部416bを通過することによって、子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61、2つまたは3つの子宮頸部の上皮細胞が凝集した第1凝集細胞62、4つ以上の子宮頸部の上皮細胞が凝集した第2凝集細胞63および細胞以外の異物64が捕捉される。また、第1細胞弁別部416bの間隙を通過した赤血球、白血球および細菌などの微小細胞60は、排出部413aを介して排液部53に移送される。これにより、上皮細胞の単一細胞61などの測定対象細胞と、赤血球、白血球および細菌などの微小細胞60とが弁別される。
【0112】
その後、排出部413aと陽圧源52との間の電磁バルブ52a、試料供給部411aと試料保持部431との間の電磁バルブ432および試料保持部431と陰圧源51との間の電磁バルブ436が開放されることにより、生体試料の流れの下流側から上流側に向かって(矢印Z1方向側に向かって)陽圧が瞬間的(約0.1秒)に印加される。これにより、第1細胞弁別部416bの間隙に挟まった細胞や異物が第1細胞弁別部416bの上流側に押し戻されるので、次に行われる置換液の供給動作により、捕捉された細胞や異物を生体試料の流れ方向(矢印Z2方向)に直交する方向(矢印Y3方向)に流し易くなる。
【0113】
次に、置換液供給部47と試料保持部431との間の電磁バルブ435、試料供給部411aと試料保持部431との間の電磁バルブ432、第1液体回収部415dと第1収容容器441との間の電磁バルブ444、および、図13に示す置換液タンク471と陽圧源52との間の電磁バルブ473が開放されることによって、置換液が試料供給部411aに供給される。そして、供給された置換液は、流域部412aの第1細胞弁別部416bよりも矢印Z1方向側の領域を通って、矢印Y3方向に流れる。これにより、第1細胞弁別部416bにより捕捉された子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61などが置換液により押し流されて、第1液体回収部415dを介して第1収容容器441に移送される。この際、生体試料とともに供給された保存液は、置換液により所定の濃度に希釈される。すなわち、置換液を供給することによって、保存液を所定の濃度に希釈しながら、捕捉された子宮頸部の上皮細胞の単一細胞61などを第1収容容器441に移送することが可能である。また、捕捉された上皮細胞の単一細胞61などと置換液を第1収容容器441に移送できるため、保存液と置換液との溶液置換を行うことができる。
【0114】
なお、第2実施形態のその他の構造は、上記第1実施形態と同様である。
【0115】
第2実施形態では、上記のように、第2細胞弁別部417および第3細胞弁別部418を設けずに、第1細胞弁別部416bのみを設けることによって、部品点数が増加するのを抑制しながら、上皮細胞の単一細胞61などの測定対象細胞と、赤血球、白血球および細菌などの微小細胞60とを弁別することができる。
【0116】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0117】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0118】
たとえば、上記第1実施形態および第2実施形態では、置換液を供給する前に、常に、下流側から上流側に向かって陽圧を印加する構成の例を示したが、本発明はこれに限らず、1回目に置換液を供給する前には陽圧を印加せず、2回目に置換液を供給する前にだけ陽圧を印加するように構成してもよい。また、置換液を供給する前に、下流側から上流側に向かって陽圧を一切印加しなくてもよい。
【0119】
また、上記第1実施形態では、第1細胞弁別部、第2細胞弁別部および第3細胞弁別部の3つの細胞弁別部を有する弁別部を設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、第1細胞弁別部、第2細胞弁別部および第3細胞弁別部のうちのいずれか1つの細胞弁別部を有する弁別部を設ける構成であってもよい。また、第1細胞弁別部だけを有する弁別部、第2細胞弁別部だけを有する弁別部および第3細胞弁別部だけを有する弁別部をそれぞれ、直列に接続することによって、上記第1実施形態と同様の効果を得ることも可能である。
【0120】
また、上記第1実施形態では、第1細胞弁別部、第2細胞弁別部および第3細胞弁別部の各板状部材は、流域部の深さD2と同じ高さ(約800μm)を有しているが、本発明はこれに限らず、第1細胞弁別部、第2細胞弁別部および第3細胞弁別部の各板状部材は、流域部の深さと異なる高さを有していてもよい。たとえば、流域部の深さを約1000μmとし、第1細胞弁別部の板状部材の高さを約750μm、第2細胞弁別部の板状部材の高さを約800μm、第3細胞弁別部の板状部材の高さを約900μmとしてもよい。
【0121】
また、上記第2実施形態では、第1細胞弁別部だけを有する弁別部を設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、第2実施形態と同様の構成で板状部材間の間隔を変えることにより、第2細胞弁別部だけを有する弁別部または第3細胞弁別部だけを有する弁別部を設けることができる。また、この場合、第1細胞弁別部だけを有する弁別部、第2細胞弁別部だけを有する弁別部および第3細胞弁別部だけを有する弁別部をそれぞれ、直列に接続する構成であってもよい。この場合には、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能である。また、上記第2実施形態において、第1細胞弁別部、第2細胞弁別部および第3細胞弁別部の3つを含む弁別部を設けてもよい。この場合にも、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0122】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、細胞弁別部を通過した赤血球、白血球および細菌などの微小細胞60を廃棄しているが、本発明はこれに限らず、微小細胞60から調製された測定試料を測定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第1実施形態による細胞分析装置の使用状態を示した斜視図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の測定装置の構成を示したブロック図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の測定装置の構成を説明するための斜視図である。
【図4】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の測定装置の構成を説明するための図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置のデータ処理装置の構成を示したブロック図である。
【図6】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の試料調製装置の構成を説明するための流路図である。
【図7】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の試料調製装置の構成を説明するための図である。
【図8】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の試料調製装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図9】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の弁別部の構成を説明するための斜視図である。
【図10】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の弁別部の構成を説明するための斜視図である。
【図11】図9の100−100線に沿った断面図である。
【図12】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の試料調製装置の構成を説明するための斜視図である。
【図13】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の試料調製装置の構成を説明するための斜視図である。
【図14】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の試料調製装置の構成を説明するための斜視図である。
【図15】図1に示した第1実施形態による細胞分析装置の分析処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図16】図15に示した分析処理動作のステップS25における弁別・置換処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】図15に示した分析処理動作のステップS27における洗浄処理動作を説明するためのフローチャートである。
【図18】本発明の第2実施形態による細胞分析装置の弁別部を示した斜視図である。
【図19】図18に示した第2実施形態による細胞分析装置の弁別部の構成を説明するための分解斜視図である。
【図20】図18に示した第2実施形態による細胞分析装置の弁別部の構成を説明するための断面図である。
【図21】図18に示した第2実施形態による細胞分析装置の弁別部の構成を説明するための流路図である。
【符号の説明】
【0124】
1 細胞分析装置
3 データ処理装置
4 試料調製装置
21 検出部
41 弁別部
42 試料調製部
43 試料供給部
46 洗浄液供給部
47 置換液供給部
60 微小細胞
61 単一細胞
62 第1凝集細胞
63 第2凝集細胞
64 異物
416、416b 第1細胞弁別部
416a、416c 板状部材
417 第2細胞弁別部
417a 板状部材
418 第3細胞弁別部
418a 板状部材
441 第1収容容器
451 第2収容容器
s1、s2、s3 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中の所定の大きさの細胞を通過させ、前記所定の大きさの細胞よりも大きい細胞を通過させない所定の間隔を隔てて設けられた複数の板状部を含む細胞弁別部と、
前記生体試料が前記複数の板状部間の間隙を通過することにより、前記複数の板状部間の間隙を通過した細胞、および、前記複数の板状部により捕捉された細胞のうちの少なくとも一方と、所定の試薬とから測定試料を調製する試料調製部とを備える、試料調製装置。
【請求項2】
前記所定の大きさの細胞は、赤血球、白血球および細菌から選択される少なくとも1つを含む第1細胞であり、
前記所定の大きさの細胞よりも大きい細胞は、上皮細胞を含む第2細胞であり、
前記複数の板状部は、前記生体試料が前記複数の板状部間の間隙を通過することにより、前記第1細胞が前記複数の板状部間の間隙を通過し、前記第2細胞が前記複数の板状部により捕捉されるように構成されている、請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項3】
前記所定の大きさの細胞は、上皮細胞の単一細胞を含む第3細胞であり、
前記所定の大きさの細胞よりも大きい細胞は、前記上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第4細胞であり、
前記複数の板状部は、前記生体試料が前記複数の板状部間の間隙を通過することにより、前記第3細胞が前記複数の板状部間の間隙を通過し、前記第4細胞が前記複数の板状部により捕捉されるように構成されている、請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項4】
前記所定の大きさの細胞は、3つ以下の上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第5細胞であり、
前記所定の大きさの細胞よりも大きい細胞は、4つ以上の前記上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第6細胞であり、
前記複数の板状部は、前記生体試料が前記複数の板状部間の間隙を通過することにより、前記第5細胞が前記複数の板状部間の間隙を通過し、前記第6細胞が前記複数の板状部により捕捉されるように構成されている、請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項5】
前記細胞弁別部より前記生体試料の流れの上流側に配置され、前記所定の間隔よりも広い間隔を隔てて設けられた複数の第2板状部を含む第2細胞弁別部をさらに備える、請求項1に記載の試料調製装置。
【請求項6】
前記所定の大きさの細胞は、赤血球、白血球および細菌から選択される少なくとも1つを含む第1細胞であり、
前記所定の大きさの細胞よりも大きい細胞は、上皮細胞の単一細胞を含む第3細胞であり、
前記細胞弁別部の複数の板状部は、前記生体試料が前記複数の板状部間の間隙を通過することにより、前記第1細胞が前記複数の板状部間の間隙を通過し、前記第3細胞が前記複数の板状部により捕捉されるように構成されており、
前記第2細胞弁別部の前記複数の第2板状部は、前記第3細胞を通過させ、前記上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第4細胞を通過させない間隔を隔てて設けられ、前記生体試料が前記複数の第2板状部間の間隙を通過することにより、前記第3細胞が前記複数の第2板状部間の間隙を通過し、前記第4細胞が前記複数の第2板状部により捕捉されるように構成されている、請求項5に記載の試料調製装置。
【請求項7】
前記第2細胞弁別部の前記複数の第2板状部は、前記第3細胞を通過させ、3つ以下の前記上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第5細胞を通過させない間隔を隔てて設けられ、
前記試料調製装置は、前記第2細胞弁別部より前記生体試料の流れの上流側に配置された第3細胞弁別部をさらに備え、
前記第3細胞弁別部は、前記第5細胞を通過させ、4つ以上の前記上皮細胞が凝集した凝集細胞を含む第6細胞および前記第5細胞よりも大きい異物を通過させない間隔を隔てて設けられた複数の第3板状部を含み、前記生体試料が前記複数の第3板状部間の間隙を通過することにより、前記第5細胞が前記複数の第3板状部間の間隙を通過し、前記第6細胞および前記異物が前記複数の第3板状部により捕捉されるように構成されている、請求項6に記載の試料調製装置。
【請求項8】
前記細胞弁別部の前記複数の板状部間の間隙に対して前記生体試料を供給する試料供給部と、
前記複数の板状部により捕捉された細胞を回収する細胞回収部とをさらに備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載の試料調製装置。
【請求項9】
前記細胞回収部は、
収容容器と、
前記細胞弁別部における前記生体試料の流れ方向と交差する方向に回収液を供給することにより、前記複数の板状部により捕捉された細胞と前記回収液とを前記収容容器に移送する細胞移送部とを含む、請求項8に記載の試料調製装置。
【請求項10】
前記細胞弁別部を含む細胞弁別装置をさらに備え、
前記細胞弁別装置は、
前記試料供給部に供給された前記生体試料を受け入れて、前記細胞弁別部に前記生体試料を導入するための試料導入部と、
前記生体試料の流れ方向に配置され、前記複数の板状部間の間隙を通過した生体試料を受け入れて前記細胞弁別装置の外部に出すための試料受入部と、
前記細胞移送部により供給される前記回収液を受け入れて、前記生体試料の流れ方向と交差する方向に前記回収液を導入するための回収液導入部と、
前記回収液の流れ方向に配置され、前記複数の板状部により捕捉された細胞と前記回収液導入部に導入された前記回収液とを受け入れて前記細胞弁別装置の外部に出すための回収液受入部とを含む、請求項9に記載の試料調製装置。
【請求項11】
前記試料供給部は、前記生体試料を保存するための保存液とともに前記生体試料を前記細胞弁別部に供給し、
前記細胞移送部は、前記回収液として前記測定試料の調製に用いられる試料調製用液体を供給するように構成されている、請求項9または10に記載の試料調製装置。
【請求項12】
前記細胞弁別部における前記生体試料の流れ方向と交差する方向に洗浄液を供給することにより、前記細胞弁別部の洗浄を行う洗浄部をさらに備える、請求項1〜11のいずれか1項に記載の試料調製装置。
【請求項13】
前記細胞弁別部における前記生体試料の流れ方向における前記板状部の長さは、前記複数の板状部間の間隔の2倍以上である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の試料調製装置。
【請求項14】
前記複数の板状部は、各々の板状部が略同じ形状に形成され、各々の板状部が互いに略平行に配置されている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の試料調製装置。
【請求項15】
前記細胞弁別部は、ドライエッチングを用いてシリコンウエハーに前記所定の間隔の間隙を複数形成することにより製造される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の試料調製装置。
【請求項16】
生体試料中の所定の大きさの細胞を通過させ、前記所定の大きさの細胞よりも大きい細胞を通過させない所定の間隔を隔てて設けられた複数の板状部を含む細胞弁別部と、
前記生体試料が前記複数の板状部間の間隙を通過することにより、前記複数の板状部間の間隙を通過した細胞、および、前記複数の板状部により捕捉された細胞のうちの少なくとも一方と所定の試薬とから調製された測定試料から、前記所定の大きさの細胞および前記所定の大きさの細胞よりも大きい細胞のうちの少なくとも一方に関する情報を検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記所定の大きさの細胞および前記所定の大きさの細胞よりも大きい細胞のうちの少なくとも一方を分析する分析手段とを備える、細胞分析装置。
【請求項17】
生体試料中の所定の大きさの細胞を通過させ、前記所定の大きさの細胞よりも大きい細胞を通過させない所定の間隔を隔てて設けられた複数の板状部を含み、前記生体試料が前記複数の板状部間の間隙を通過することにより、前記所定の大きさの細胞が前記複数の板状部間の間隙を通過し、前記所定の大きさの細胞よりも大きい細胞が前記複数の板状部に捕捉されるように構成された細胞弁別部を備える、細胞弁別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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