説明

試験片から微小サンプルを分離する方法

【課題】本発明は、試験片(2)から微小サンプル(1)を分離する方法に関する。
【解決手段】そのような方法は、半導体産業分野においてウェハからTEM観察用のサンプルを入手するために、一般的に使用されている。発明者らによれば、試料担体(6)とサンプルの位置ずれのため、得られるサンプルの内の約20%は、適切に処理(薄膜化)されない。この位置ずれは、溶接前に、サンプルと接触する試料担体によって生じることが確認されている。溶接の間、試料担体がサンプルと接触することを回避し、試料担体とサンプルの間に微細な間隙を残しておくことにより、この位置ずれが解消される。例えば振動による、溶接の間の試料担体の移動を回避するため、試料担体は、ウェハ上のサンプルと近接する位置(8)に置載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験片から微小サンプルを分離して、該サンプルに試料担体を取り付ける方法であって、
・前記試験片にビームを集束させて、前記試験片から材料を除去するステップと、
・サンプルおよび試料担体の上に、材料連続体を成膜して、前記試料担体を前記サンプルに接続するステップと、
・前記試験片から前記サンプルを完全に分離するステップと、
を有する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前述の方法は、米国特許第5,270,552号で知られている。
【0003】
そのような方法は、半導体産業分野で使用されており、この分野では、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)などでの分析のため、半導体ウェハから微小サンプルが採取される。
【0004】
半導体ウェハから採取されたサンプルによるTEM分析は、従来から知られている。当業者には明らかなように、被TEM分析サンプルは、極めて薄く、例えば50nmの厚さにする必要がある。
【0005】
今日では、被TEM分析サンプルの寸法は、例えば、長さ(実質的にウェハ表面に平行な方向)が10μmで、幅が5μm(実質的にウェハ表面に対して垂直な方向)で、厚さが50nmである。ただし他の寸法のものも使用される。
【0006】
従来の方法では、例えば、30keVのエネルギーを有するGa+イオンビームのような、エネルギーイオンの集束ビームをウェハに照射することにより、サンプルがウェハの形態の試験片から分離される。ビームがウェハに衝突し、その箇所の材料が除去される。(例えば静電式のまたは磁気偏光器を用いて、ビームを偏向させ、)ビームをウェハにわたって走査することにより、ウェハの表面にパターンが掘り込まれる。
【0007】
サンプルの予備切断と同時にまたはその後に、例えば、ウェハの被分離部分が溝によって取り囲まれた状態で、サンプルがウェハから分離されように、ビームをウェハにわたって走査することにより、サンプルがウェハから完全に分離される。
【0008】
従来の方法では、サンプルは、ウェハから完全に分離される前に、試料担体に接続される。
【0009】
従来の方法は、サンプルを試料ホルダに接続、すなわち溶接するため:
サンプルがウェハから完全に分離される前に、サンプルと試料担体を接続するステップと、
例えば、ある材料の設置により、サンプルと試料担体を相互に溶接するステップと、
ウェハとサンプルを完全に分離することにより、試料担体に設置したサンプルが残されるステップと、
を有する。
【0010】
このようにして分離されたサンプルは、TEM分析には、未だ十分な薄さではない。しばしば、完全な分離の前のサンプルは、長さが例えば10μmの角柱形状を有し、この三角形状の断面は、例えば、ウェハの表面では5μmの寸法を有し、ウェハの表面から5μm下側の深さではゼロとなるようなテーパ形状を有する。
【0011】
従って、従来の方法では、分離後のサンプルを、分析に適した形状となるように処理する必要がある。
【0012】
サンプルを薄膜化する従来の方法は、サンプルをイオンビームで加工するものである。適切な薄膜化処理を行う場合、試料担体に対するサンプルの配向は、加工に使用されるイオンビームに対してサンプルが整列するように調整する必要があることが知られている。不適切な位置合わせでは、例えば被調査材料が逸失されてしまう恐れがある。
【0013】
本願発明者の認識によれば、試料担体に対するサンプルの位置ずれのため、約20%のサンプルが適切に薄膜化されず、更なる分析のため逸失されてしまう。これにより、追加のサンプルを得るために余分な時間が必要となり、サンプルの掘溝化のため、ウェハの余分な部分が損傷を受け、有益な情報の損失につながることは、明らかである。これは処理プロセスの処理者にとって、明らかに問題となる。
【特許文献1】米国特許第5,270,552号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、溶接後のサンプルと試料担体の間の位置ずれによるサンプルの逸失を抑制する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題のため、本発明による方法では、接続の間、前記試料担体と前記サンプルは、間隙によって分離され、この結果、前記接続の間、前記試料担体により、前記サンプルが動かなくなることを特徴とする。
【0016】
本発明は、溶接前に試料担体がサンプルと接触する結果、試料担体からサンプルが受ける力によって、サンプルの配向が変化し、その結果、試料担体に対するサンプルの配向が変化してしまうという発明者らの洞察に基づくものである。
【0017】
また、本発明は、適切な溶接を形成する際に、2つの被溶接部分(サンプルおよび試料担体)を相互に接触させる必要がないという洞察に基づいている。これらの部分が相互に接近した位置に維持され、材料の連続体が、これらの上部に設置されれば十分である。
【0018】
背景技術において示したように、サンプルを溝で取り囲み、完全に予備切断することにより、サンプルは、試験片から完全に分離される。しかしながら、サンプルを分離する際に、試験片からのサンプルの切り離し切断など、他の方法を使用しても良い。この方法は、(溝が完全にはサンプルを取り込んでいないため)サンプルの側面に接続部分がある場合、あるいは(サンプルが予備切断されず、または完全には予備切断されないため)サンプルの底部に接続部分がある場合に使用することができる。
【0019】
本発明による方法のある実施例では、前記材料連続体は、気相または蒸気相中で材料を成膜することにより形成される。
【0020】
気相または蒸気相中の材料からの材料成膜は、よく知られた方法である。この方法の利点は、相互に溶接される2つの部材に応力が負荷されないことである。これは、例えば、静電力または例えば接着剤の設置により、部材が接続される方法とは好対照である。従って、気相または蒸気相からの材料の成膜の際には、溶接処理自身が、試料担体に対するサンプルの配向に悪影響を及ぼすことはない。
【0021】
本発明による方法の別の実施例では、前記成膜は、電子ビーム(電子ビーム誘起成膜もしくはEBID)、イオンビーム(イオンビーム誘起成膜もしくはIBID)、またはレーザビーム(レーザ誘起成膜もしくはLID)により行われる。
【0022】
EBID、IBIDおよびLIDは、従来技術として知られている。EBID、IBIDおよびLIDは、材料の局部的な成膜処理を含む。局部的な成膜処理には、サンプルと試験片の間の既に加工された溝のような、好ましくない箇所での材料の形成が回避されるという利点がある。特に、1μm未満の直径に集束化されるビームを用いるEBIDおよびIBIDは、例えば、現在の半導体産業の分野で使用される微小サンプル寸法に適した寸法の、成膜材料(溶接)の局部的な連続体の形成に適している。
【0023】
本発明による方法の別の実施例では、前記試料担体は、前記材料連続体を形成する材料が設置される間、試験片と接触している。
【0024】
試料担体を試験片と接触させることにより、例えば振動による、接続されたサンプルに対する試料担体のその部分の意図していない動きが、大きく抑制される。接続を形成する間、サンプルが試験片と接続されたままの状態であるため、試料担体を試験片上に支持することにより、サンプルおよび試料担体の相対的な動きが同様に抑制される。
【0025】
本発明による方法の別の実施例では、前記試料担体を前記サンプルに接続する前に、前記試料担体の形状は、集束ビームによって修正される。
【0026】
サンプルに対して狭小の間隔を維持した状態で、試料担体を試験片と接続させるため、試料担体は、適切な形状にする必要がある。
【0027】
本発明による方法のさらに別の実施例では、前記サンプルは、真空室内で前記試験片から分離され、前記試料担体の形状の修正は、同一の真空室内で実施される。
【0028】
例えば、真空または極めて低圧の雰囲気において、イオンビーム加工を行うことが可能であることは、当業者には明らかである。これは、試験片からサンプルを切り離すため、試験片内に溝を加工する場合、および微細な間隔を維持したまま、試験片をサンプルに接触させ、試料担体を適切な形状に加工する場合にも当てはまる。
【0029】
本発明による方法のさらに別の実施例では、前記試料担体の形状の修正に使用される集束ビームは、電子ビーム、イオンビームまたはレーザビームである。
【0030】
本発明による方法のさらに別の実施例では、前記試料担体の形状化に使用される集束ビームは、前記材料連続体の形成を行うステップにも使用される。
【0031】
本発明による方法のさらに別の実施例では、前記試料担体の形状化に使用される集束ビームは、前記試験片から材料を除去するステップに使用されるものと同一の集束ビームである。
【0032】
本発明による方法のさらに別の実施例では、前記サンプルは、前記試験片から前記サンプルを切り離すことにより、前記試験片から完全に分離される。
【0033】
図面を参照することにより、本発明はより明らかとなろう。図面間において、対応する素子には、同一の参照符号が付されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1Aには、ウェハの概略図を示す。この図では、イオンビームによって、材料が除去されている。
【0035】
ウェハ2には、イオンビーム3が照射され、これにより、材料がウェハ2から除去され、サンプル1の周囲に溝4が形成される。この段階では、サンプル1が試料担体と溶接されるまで、サンプル1は、ウェハから完全には分離しておらず、領域5の接続部分は、そのまま残っている。
【0036】
図1Bには、線AA’に沿ったウェハの概略的な断面図を示す。サンプル1は、領域10で示すように、溝4の底部から切り離されている。
【0037】
図1Bには、完全に予備切断されたサンプルが示されていることに留意する必要がある。しかしながら、サンプルを完全に予備切断することは必ずしも必要ではない。例えば、領域10には、溝の底部と接続された薄い壁、およびサンプルの底面があるため、前述のように、サンプルは、ウェハからサンプルを切り離すことによって、ウェハから完全に分離される。
【0038】
さらに、加工処理は、極めて低圧(通常、1〜10mbar)で行われるものの、この圧力(分圧)においても、微量のガスが放出され、イオンビームの加工速度が向上することに留意する必要がある。
【0039】
図2には、試料担体と溶接されるサンプルの概略図を示す。
【0040】
図2は、図1Aから得られたものであると考えることができる。試料担体6は、切断端部7を有するテーパ状の円筒形状を有する。試料担体は、マニピュレータ(図示されていない)で動かされ、これにより、試料担体は、ウェハ上のある位置に接続され、その切断端部7がウェハ2の位置8上に設置される。位置8は、溝4と接近しており、サンプル1の延長線上にある。従って、試料担体6の切断端部7とサンプル1の間の距離は、十分に短く、気相または蒸気相中の材料からの成膜材料が、ここに充填/被覆されることはない。
【0041】
溝の加工処理、試料担体の定形、および/または材料の成膜は、同じ集束ビームで実施する必要はないことに留意する必要がある。しかしながら、ウェハもしくは試料担体に照射される集束ビームの電流密度を変化させることにより、および/または集束ビームの近傍の圧力もしくはガスもしくは蒸気の組成を変化させて、材料加工と成膜の双方に、同じビームを使用しても良いことは、当業者には明らかである。電流密度、気相/蒸気組成および圧力に応じて、電子ビームおよびイオンビームの両方が、成膜または加工に使用され得ることは当業者には明らかである。また、レーザアブレーション法、およびレーザビームを用いた成膜も可能である。従って、加工および/または成膜の実施には、原理上、3種類のビームの全てが適しており、この方法のあるステップは、同時に実施されても良い。
【0042】
また、本願の試料担体6は、従来の試料担体に使用されるニードル状構造と同様の構造であるが、切断部分を有することに留意する必要がある。実験では、この形状は、本発明による方法に、極めて適していることが示されている。この形状は、例えば、イオンビーム3のようなイオンビームを用いた従来の方法で、ニードルから端部を切断することにより、容易に得ることができる。
【0043】
試料担体の定形は、「その場(in-situ)」で行われるとともに、ウェハの処理とサンプルの採取が同じ機器内において実施され、すなわち「ex-situ」で行われても良いことに留意する必要がある。
【0044】
また、この方法は、例えば、加工および材料成膜にイオンビームが使用され、本発明による処理プロセスの進行のモニタに電子ビームおよび二次電子検出器が使用される、一つの機器内で実施することも可能であることに留意する必要がある。
【0045】
サンプルの薄膜化は、いくつかの箇所で行われても良いことに留意する必要がある:サンプルは、それがウェハと接続された状態で、薄膜化することもできる;またサンプルは、サンプルがウェハから分離される機器内で、in-situで薄膜化することもできる;また薄膜化処理は、別の機器で実施することもできる。さらに、これらの処理プロセスの組み合わせを適用することも可能であると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】イオンビーム処理で材料が除去されたウェハの概略的な図である。
【図1B】図1Aの線AA’に沿ったウェハの概略断面図である。
【図2】溶接直前のウェハ上に設置された試料担体の概略図である。
【図3】試料担体と溶接されたサンプルの概略図である。
【図4】サンプルがウェハから完全に分離された概略図である。
【符号の説明】
【0047】
1 サンプル、2 ウェハ、3 イオンビーム、4 溝、5 領域、6 試料担体、7 切断端部、8 位置、10 領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験片から微小サンプルを分離して、該サンプルに試料担体を取り付ける方法であって、
・前記試験片にビームを集束させて、前記試験片から材料を除去するステップと、
・サンプルおよび試料担体の上に、材料連続体を成膜して、前記試料担体を前記サンプルに接続するステップと、
・前記試験片から前記サンプルを完全に分離するステップと、
を有し、
接続の間、前記試料担体と前記サンプルは、間隙によって分離され、この結果、前記接続の間、前記試料担体により、前記サンプルが動かなくなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記材料連続体は、気相または蒸気相中で材料を成膜することにより形成されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成膜は、電子ビーム(電子ビーム誘起成膜もしくはEBID)、イオンビーム(イオンビーム誘起成膜もしくはIBID)、またはレーザビーム(レーザ誘起成膜もしくはLID)により行われることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料担体は、前記材料連続体を形成する材料が設置される間、試験片と接触しており、これにより、前記試料担体と前記試験片に接続された前記サンプルの相対位置が、一定に維持されることを特徴とする前記請求項のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記試料担体を前記サンプルに接続する前に、前記試料担体の形状は、前記サンプルに近接した位置のまま前記サンプルとは接触しないようにした状態で、集束ビームによって、試験片との接続に適した形状に修正されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルは、真空室内で前記試験片から分離され、前記試料担体の形状の修正は、同一の真空室内で実施されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記試料担体の形状の修正に使用される集束ビームは、電子ビーム、イオンビームまたはレーザビームであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記試料担体の形状化に使用される集束ビームは、前記材料連続体の形成を行うステップにも使用されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記試料担体の形状化に使用される集束ビームは、前記試験片から材料を除去するステップに使用されるものと同一の集束ビームであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記サンプルは、前記試験片から前記サンプルを切り離すことにより、前記試験片から完全に分離されることを特徴とする前記請求項のいずれか一つに記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−20450(P2008−20450A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179879(P2007−179879)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】