説明

試験用多連ラバースイッチとその製造方法

【課題】試作コスト抑えて、簡単に試験用の多連ラバースイッチを形成することができる試験用多連ラバースイッチとその製造方法を提供する。
【解決手段】一つの電子機器に設定された複数のスイッチ位置に各々対応して設けられたラバースイッチの複数のドーム部14,16,18と、各ドーム部14,16,18に一体に設けられた接点導体14d,16d,18dとを有する。各ドーム部14,16,18の周囲に一体に形成されたシート状の基部14a,16a,18aと、各基部14a,16a,18aが嵌合する複数の開口部12aを有した1枚のベースシート12を備える。各ドーム部14,16,18の基部14a,16a,18aと、ベースシート12に貼付されて、各々を一体に保持する樹脂シート20を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子機器の押しボタンやキーボード等の内部の接点に使用されるラバースイッチを試験用に試作した試験用多連ラバースイッチとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オーディオ機器や映像機器などの電子機器の操作用スイッチとして取り付けられた押しボタン式のスイッチとして、特許文献1,2,3に開示されているような、シリコーンゴムで成形されたラバースイッチが用いられている。このラバースイッチは、製品の配線が設けられたケースや内部のメンブレンシートに、個々のラバースイッチ本体であるドーム部が接着されているものである。しかし、このラバースイッチの構造の場合、個々のスイッチ用の接点に対応して、ラバースイッチのドーム部を個別に接着しなければならず、スイッチの多い製品の場合、製造工数及びコストがかかるという問題があった。
【0003】
そこで、製品に取り付けるラバースイッチをより効率的に取り付ける構造として、複数の接点に対応して、ラバースイッチの複数のドーム部が1枚のゴムシートに一体に形成された多連ラバースイッチシートがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−255530号公報
【特許文献2】特開平9−1678号公報
【特許文献3】実用新案登録第3132641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この多連ラバースイッチを備えた電子機器の新製品の開発途中においては、試作品のラバースイッチが用いられる。試作品のラバースイッチとしては、型のコストが安いウレタンゴムの注型成形による試作品が用いられている。しかし、ウレタンゴムによる試作品のラバースイッチの場合、操作荷重の特性の再現性が量産品のシリコーンゴムと比較して良くないので、製品の試験用にはシリコーンゴムの多連ラバースイッチを用いなければならない。そのため、試験用にシリコーンゴムの多連ラバースイッチを成形する1個取りの専用の試作型も必要となり、金型コストがかかるものであった。
【0006】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたもので、試作コスト抑えて、簡単に試験用の多連ラバースイッチを形成することができる試験用多連ラバースイッチとその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、一つの電子機器に設定された複数のスイッチ位置に各々対応して設けられたラバースイッチの複数のドーム部と、この各ドーム部に一体に設けられた接点導体とを有し、前記電子機器の各スイッチの試験を行う試験用多連ラバースイッチであって、各ドーム部の周囲に一体に形成されたシート状の基部と、前記各ドーム部の前記基部が嵌合する複数の開口部を有した1枚のベースシートと、前記各ドーム部の前記基部と前記ベースシートとに貼付されて前記基部と前記ベースシートを一体に保持する樹脂シートとから成る試験用多連ラバースイッチである。
【0008】
前記ドーム部の前記基部の厚みと、前記ベースシートの厚みが等しく、前記ドーム部と前記ベースシートとが同様のシリコーンゴムにより形成されているものである。前記ベースシートの裏面には、エアー逃げ溝が形成されている。
【0009】
またこの発明は、一つの電子機器に取り付けられた複数のスイッチ位置に各々対応した複数のラバースイッチのドーム部を成形し、この各ドーム部の前記基部を、各ドーム部と同様のシリコーンゴムにより形成されたベースシートの各開口部に嵌合し、前記各ドーム部の前記基部と前記ベースシートに樹脂シートを貼付して、前記各ドーム部の前記基部と前記ベースシートを一体に固定する試験用多連ラバースイッチの製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
この発明の試験用多連ラバースイッチによれば、試作用の試験用多連ラバースイッチを、量産品と同様の材料により成形することができ、性能試験を量産品と同等の条件で行うことができる。しかも金型コストは、ドーム部の数が少ない少数個取りのもので良く、安価に抑えられ、製造コストが掛からない。また、単体のドーム部をベースシートに嵌合する構造であるが、樹脂シートを貼り付けて被うことにより、隙間を無くし、静電気の進入を防止することができ、一体成形の量産用多連ラバースイッチと同様の性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第一実施形態の試験用多連ラバースイッチのドーム部の成形体を示す平面図(a)、部分破断正面図(b)、底面図(c)である。
【図2】この発明の第一実施形態の試験用多連ラバースイッチに用いるドーム部を示す平面図(a)、縦断面図(b)、底面図(c)である。
【図3】この発明の第一実施形態の試験用多連ラバースイッチの分解斜視図である。
【図4】この発明の第一実施形態の試験用多連ラバースイッチを示す平面図(a)、部分破断正面図(b)、底面図(c)である。
【図5】この発明の第二実施形態の試験用多連ラバースイッチの分解斜視図である。
【図6】この発明の第二実施形態の試験用多連ラバースイッチを示す平面図(a)、部分破断正面図(b)、底面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図4はこの発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態の試験用多連ラバースイッチ10は、所定の製品のスイッチ位置に対応して、例えば3個のドーム部14,16,18が位置するように配置されたもので、シリコーンゴム等の1枚の矩形のベースシート12に、シリコーンゴム等のラバー材から成る個別のドーム部14,16,18が固定されている。ドーム部14,16,18の下端部の周囲には、矩形のシート状の基部14a,16a,18aが一体に形成され、ベースシート12の各開口部12aに基部14a,16a,18aが嵌合されている。ベースシート12の各開口部12aと各基部14a,16a,18aの外形は等しく、ベースシート12と基部14a,16a,18aの厚みは等しいので、互いに密に良好に嵌合する。ベースシート12とドーム部14,16,18の固定は、ベースシート12の表面に貼付された粘着剤付きのPET等の樹脂シート20に、ドーム部14,16,18が貼り付けられて固定されている。なお、樹脂シート20の所定位置にも、ドーム部14,16,18の突出部分が露出するように透孔20aが形成され、ベースシート12の各開口部12aに嵌合した基部14a,16a,18aが、樹脂シート20の裏面の粘着剤に貼り付けられている。
【0013】
ドーム部14内には、図2(b)に示すように、基部14aに対してほぼ直角に下方に突出した円柱状の押圧部14bと、押圧部14bの先端部に設けられた接点導体14dを備えている。また、基部14aの裏面には、十字状にエアー逃げ溝14cが形成されている。さらに、ベースシート12の裏面にも、互いに平行に複数のエアー逃げ溝12cが形成されている。他のドーム部16,18も同様に、押圧部16b,18bと、その先端部の導電性の接点導体16d,18dと、基部16a,18aの裏面に形成された十字状のエアー逃げ溝16c,18cが形成されている。
【0014】
この実施形態の試験用多連ラバースイッチ10の製造方法は、先ず、量産品と同形状のシリコーンゴム製ラバースイッチを成形する金型を作成する。この金型は、量産用の多数個取りでなく、安価な1個又は少数個取りのものを作成する。この金型により、図1に示すようなシリコーンゴム製のラバースイッチ成形体22を複数個作成する。次に、作成したラバースイッチ成形体22を、ドーム部毎に、図2に示すように分割する。これと同時に、例えば量産品の多連ラバースイッチが3個のドーム部を備える場合、3個のスイッチ位置に対応した開口部12aを有し、量産品の多連ラバースイッチのシート形状よりやや大きい形状のラバーシートであるベースシート12を形成する。そして、ベースシート12の所定位置に開口部12aを形成する。この後、分割した各ドーム部14,16,18を、図3に示すように、一枚のベースシート12の各開口部12aに嵌合させる。このとき、ベースシート12の各開口部12aと各基部14a,16a,18aの外形は等しく、ベースシート12と各ドーム部14,16,18の基部14a,16a,18aの厚みは等しいので、表面が面一になり良好に嵌合する。この後、上方から樹脂シート20を貼り付け、各ドーム部14,16,18をベースシート12に固定する。そして、図3の2点鎖線で示す位置で、ベースシート12と樹脂シート20の周縁部を切除し、ベースシート12と樹脂シート20を、量産品の多連ラバースイッチのシート形状と同形状とする。この状態で、シリコーンゴム製のドーム部14,16,18が、量産品と同様の配置に設けられた試作品の試験用多連ラバースイッチ10が完成する。
【0015】
この実施形態の試験用多連ラバースイッチ10によれば、試作用の試験用多連ラバースイッチ10のドーム部を、量産品と同様にシリコーンゴム製で成形することができ、しかも金型コストは、少数個取りのもので良く、安価に抑えられ、製造コストが掛からない。また、単体のドーム部14,16,18をベースシート12に嵌合する構造であるが、樹脂シート20を貼り付けて被うことにより、隙間を無くし、静電気の進入を防止することができ、一体成形の量産用多連ラバースイッチと同様の構成及び性能を有する。
【0016】
次に、この発明の試験用多連ラバースイッチとその製造方法の第二実施形態について、図5、図6を基にして説明する。ここで、上記実施形態と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態のラバースイッチ用成形体30は、樹脂シート32がベースシート12の裏面側に位置し、ベースシート12及びドーム部14,16,18の基部14a,16a,18aの裏面側に、樹脂シート32が貼付されるものである。樹脂シート32には、各ドーム部14,16,18の基部14a,16a,18aに形成されたエアー逃げ溝14c,16c,18cに対応して連通するスリット34が、各開口部32aに繋がって、十字状に形成されている。
【0017】
この実施形態の試験用多連ラバースイッチによっても上記実施形態と同様の効果を得ることができ、エアー逃げ溝用のスリット34により、実際の量産品と同様の構成及び性能とすることができる。
【0018】
この発明の試験用多連ラバースイッチは、上記実施の形態に限定されず、ラバースイッチの形状や数は、電子機器に合わせて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0019】
10 試験用多連ラバースイッチ
12 ベースシート
12a,14c,16c,18c エアー逃げ溝
14,16,18 ドーム部
14a,16a,18a 基部
14b,16b,18b 押圧部
14d,16d,18d 接点導体
20 樹脂シート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの電子機器に設定された複数のスイッチ位置に各々対応して設けられたラバースイッチの複数のドーム部と、この各ドーム部に一体に設けられた接点導体とを有し、前記電子機器の各スイッチの試験を行う試験用多連ラバースイッチにおいて、
前記各ドーム部の周囲に一体に形成されたシート状の基部と、前記各ドーム部の前記基部が嵌合する複数の開口部を有した1枚のベースシートと、前記各ドーム部の前記基部と前記ベースシートとに貼付されて前記基部と前記ベースシートを一体に保持する樹脂シートとから成ることを特徴とする試験用多連ラバースイッチ。
【請求項2】
前記ドーム部の前記基部の厚みと、前記ベースシートの厚みが等しく、前記ドーム部と前記ベースシートとが同様のシリコーンゴムにより形成されている請求項1記載の試験用多連ラバースイッチ。
【請求項3】
前記ベースシートの裏面には、エアー逃げ溝が形成されている請求項2記載の試験用多連ラバースイッチ。
【請求項4】
一つの電子機器に取り付けられた複数のスイッチ位置に各々対応した複数のラバースイッチのドーム部を成形し、この各ドーム部の基部を、前記各ドーム部と同様のシリコーンゴムにより形成されたベースシートの各開口部に嵌合し、前記各ドーム部の前記基部と前記ベースシートに樹脂シートを貼付して、前記各ドーム部の前記基部と前記ベースシートを一体に固定することを特徴とする試験用多連ラバースイッチの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−104224(P2012−104224A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237232(P2010−237232)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(305044693)株式会社リンク大洋 (8)
【Fターム(参考)】