説明

認証情報生成装置及び認証装置

【課題】 印刷物偽造に係る認証強度を向上できる認証情報生成装置及び認証装置を提供する。
【解決手段】 認証情報生成装置1aが、識別情報が印刷されている紙媒体について、当該紙媒体に関する特徴量を生成し、この特徴量と、識別情報とを関連付けたデータベースを生成する。そして、当該生成されるデータベースが、例えば認証装置1b側での紙媒体の認証に係る所定処理に供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙媒体の認証を行うための認証情報生成装置及び認証装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷技術の向上に伴い、高精細な印刷物の入手が容易になりつつある。こうした背景の下、紙幣などの精度の高い偽造物が製造されてしまう懸念がある。
【0003】
紙幣の偽造防止や、偽造紙幣の検出に係る技術としては、例えば特許文献1から3に開示されているようなものがある。
【特許文献1】特開平6−301840号公報
【特許文献2】特開2000−67298号公報
【特許文献3】特開2001−195628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の偽造紙幣の検出方法では、いずれも予め真正紙幣に含まれるべき情報や形質の有無を検査するものである。例えば、真正紙幣には凹版印刷によって微小盛り上がりを設けておき、検出ライン上の微小盛り上がりの有無を順次検出し、検出された微小盛り上がりの全並びパターンを真正紙幣のそれと比較し、全並びパターンの内のいずれかの部分で10mm以上連続して真正紙幣に於ける対応部分のそれと一致していれば、対象紙幣を真正と判定し、それ以外は非真正と判定する(特許文献1)。
【0005】
このように、上記従来の偽造印刷物の検出方法では、微小盛り上がりのように、予め当該印刷物において固有の形質を形成しておき、これを検出するものであるので、偽造者が当該形質をそのまま真似てしまえば、真正と判断される偽造物を製造可能となってしまう。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、印刷物偽造に係る認証強度を向上できる認証情報生成装置及び認証装置を提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、認証情報生成装置であって、識別情報が印刷されている紙媒体について、当該紙媒体に関する特徴量を生成する手段と、前記特徴量と、前記識別情報とを関連付けたデータベースを生成する手段と、を含み、前記生成されるデータベースが、前記紙媒体の認証に係る所定処理に供されることを特徴としている。
【0008】
ここで前記紙媒体に関する特徴量は、紙媒体上の少なくとも一つの所定領域における紙繊維のパターンに係る特徴量であることとしてもよい。また前記所定領域は、紙媒体の角の近傍、紙媒体の端部の領域を少なくとも一つ含むこととしてもよい。
【0009】
また、本発明のある態様に係る認証装置は、上記認証情報生成装置によって生成された前記データベースを利用する認証装置であって、認証処理の対象となる紙媒体上に印刷された識別情報の情報を取得する手段と、当該取得した識別情報に関連づけられている特徴量の情報を前記データベースから取得する手段と、前記認証処理の対象となる紙媒体に関する特徴量を生成する手段と、を含み、前記取得した特徴量の情報と、前記生成した特徴量の情報とが、認証に係る所定処理に供されることを特徴としている。
【0010】
さらに本発明の別の態様は、認証情報生成方法であって、識別情報が印刷されている紙媒体について、当該紙媒体に関する特徴量を生成する工程と、前記特徴量と、前記識別情報とを関連付けたデータベースを生成する工程と、を含み、前記生成されるデータベースが、前記紙媒体の認証に係る所定処理に供されることを特徴としている。
【0011】
さらに本発明の別の態様は、上記認証情報生成装置によって生成された前記データベースを利用する認証装置の制御方法であって、認証処理の対象となる紙媒体上に印刷された識別情報の情報を取得させる工程と、当該取得した識別情報に関連づけられている特徴量の情報を前記データベースから取得させる工程と、前記認証処理の対象となる紙媒体に関する特徴量を生成させる工程と、を含み、前記取得した特徴量の情報と、前記生成した特徴量の情報とが、認証に係る所定処理に供されることを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明の別の態様に係るプログラムは、コンピュータを用い、識別情報が印刷されている紙媒体について、当該紙媒体に関する特徴量を生成する手順と、前記特徴量と、前記識別情報とを関連付けたデータベースを生成する手順と、を実行させ、前記生成されるデータベースが、前記紙媒体の認証に係る所定処理に供されることを特徴としている。
【0013】
さらに本発明の別の態様に係るプログラムは、上記認証情報生成装置によって生成された前記データベースを利用する認証装置によって実行されるプログラムであって、認証処理の対象となる紙媒体上に印刷された識別情報の情報を取得する手順と、当該取得した識別情報に関連づけられている特徴量の情報を前記データベースから取得する手順と、前記認証処理の対象となる紙媒体に関する特徴量を生成する手順と、を認証装置に実行させ、前記取得した特徴量の情報と、前記生成した特徴量の情報とが、認証に係る所定処理に供されることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る認証のシステムは、図1に示すように、認証情報生成装置1aと、認証装置1bと、データベースサーバ3とを含んで構成される。ここで認証情報生成装置1aや認証装置1bは、ともに、制御部11と、記憶部12と、操作部13と、表示部14と、通信部15と、スキャナ部16とを含んで構成される。なお、以下の説明では、このシステムを紙幣の偽造防止に利用するものとする。
【0015】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)等で実現でき、記憶部12に格納されたプログラムに基づく処理を行う。本実施の形態においては、この制御部11が実行するプログラムは、認証情報生成装置1aと、認証装置1bとで異なっている。そこで、この制御部11の処理の内容については、後に、各装置におけるものに分けて説明する。
【0016】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)等の記憶素子や、ハードディスク等のディスクデバイスを含むコンピュータ可読な記憶媒体である。この記憶部12には、制御部11によって実行されるプログラムが格納されている。また、この記憶部12は、制御部11の処理において必要となる種々の情報を保持するワークメモリとしても動作する。
【0017】
操作部13は、キーボードやマウス等であり、利用者の指示操作の内容を制御部11に出力する。表示部14は、ディスプレイ装置等であり、制御部11から入力される指示に従って、利用者に対して情報を提示する。通信部15は、ネットワークインタフェース等であり、ネットワークを介して外部の装置に接続されている。この通信部15は、制御部11から入力される指示に従って、指示された宛先に対して種々のデータを伝送する。また、この通信部15は、外部の装置からネットワークを介して到来するデータを受信して制御部11に出力する。
【0018】
スキャナ部16は、一般的なフラットベッド型スキャナである。このスキャナ部16は、原稿を1枚ずつ送る、いわゆる自動原稿給紙装置(ADF)を備えてもよい。また、必ずしもフラットベッド型スキャナの全体が必要なものではなく、フラットベッド型スキャナに用いられているような光電センサ(例えばCCDラインセンサ)と、原稿の読取り位置を走査するライン状に配列された照明部との組み合わせを含むものでもよい。また、ラインセンサである必要もなく、CCDエリアセンサと、このCCDエリアセンサの視野を照明する照明部との組み合わせでもよい。さらにこのスキャナ部16は、例えばデジタルカメラなどであってもよい。また画像を読み取る方法として照明光が対象となる紙媒体上で反射した反射光を読み取るものであってもよいし、紙媒体を透過した透過光を読み取るものであってもよい。
【0019】
データベースサーバ3は、図示しないネットワークインタフェースと制御部、並びにストレージデバイスを含んで構成される。このデータベースサーバ3は、ネットワークインタフェースを介して受信したデータベースへの登録指示に応じて、ストレージデバイス内に当該指示された登録内容を登録する。また、このデータベースサーバ3は、ネットワークインタフェースを介して受信したデータベースからの読み出し指示に応答して、当該読み出し指示に含まれるキー情報に関連づけられているデータをストレージデバイスから読み出して、読み出し指示の送信元へ返信する。
【0020】
ここで制御部11による処理の内容について説明する。既に述べたように、この制御部11の処理は、認証情報生成装置1aにおける処理と、認証装置1bにおける処理とで異なるので、それぞれを分けて説明する。
【0021】
まず、認証情報生成装置1aにおける処理について説明する。なお、紙幣には一般に「記番号」と呼ばれる識別情報(アルファベットや数字などからなる記号及び番号)が付与されている。この記番号は、必ずしも固有(同じ記番号の紙幣が存在しないとの意味で固有)ではない。本実施の形態では、この記番号(認証の対象となった印刷物に予め印刷等されている番号等)を、本発明の識別情報として用いる。
【0022】
認証情報生成装置1aにおいて制御部11が実行するプログラムは、機能的には、図2に示すように、固有情報受入部21と、特徴量情報生成部22と、記番号入力部23と、登録処理部24とを含んで構成されている。すなわち、本実施の形態の認証情報生成装置1aは、認証の対象となる紙幣ごとに、当該紙幣に用いられている紙媒体に固有な特徴量を生成し、この固有な特徴量と、紙幣上に印字された識別情報としての記番号とを関連付けてデータベースサーバ3に登録するものである。そしてこれにより生成されるデータベースが、紙幣の認証に係る所定処理に供されることになる。
【0023】
また本実施の形態において、この固有な特徴量は、紙媒体上の少なくとも一つの所定領域における紙繊維のパターンに係る特徴量であるものとする。すなわち、紙媒体は一般に紙料である繊維質材料を用い、当該繊維質材料を絡み合わせた構造を有する。ここで繊維質材料の絡み合いのパターン(紙繊維のパターン)は固有のランダム性をもち、各紙媒体を識別する情報として利用し得る。また、紙繊維のパターンを偽造するには、紙の繊維をその太さや長さなどを揃えながら微細な構造を再現する必要があるが、これは事実上不可能なことである。
【0024】
具体的に紙繊維パターン(いわば印刷のない無地部分の凹凸)を利用した照合方法は、次のようになる。紙繊維パターンを表す画像データを特徴量(以下、登録特徴量と呼ぶ)として記録しておき、照合の対象となる紙媒体上の上記所定領域における紙繊維パターンを表す画像データと、登録特徴量との相関演算を行って、相関値を得る。そして当該相関値が予め定めたしきい値を越える場合に照合が成功したもの(つまり、記憶されているものと同一の紙媒体である)と判定する。また、相関値がしきい値を下回る場合は照合に失敗したもの(つまり、照合の対象となる紙媒体は記憶されている紙媒体とは異なる)と判定する。ここで画像データ間の同一性を判定するのに用いる相関演算の内容は、次のようになる。
【0025】
すなわち、合計N画素のサイズの2つの画像データF,G間の相関演算の内容は、各画像データの画素の明度値fi及びgi(iは0からN−1までの整数)を用いて、次の(1)式で定められる。
【0026】
【数1】

【0027】
ここでfAVEは画像データFの個々の画素の明度値の平均値、gAVEは画像データGの個々の画素の明度値の平均値である。
【0028】
尤も、本実施の形態におけるように、紙幣などでは、財布へ収納することが広く行われている。この場合に財布への収納形態はさまざまであって、紙幣を折り畳んでいることもある。さらに紙幣はその流通過程で、一部が汚損ないし破損している場合もある。この場合も使用に支障がない範囲の汚損・破損であればそのまま流通しているのが普通である。つまり、紙幣においては折り畳みや書込み、破損などの事情に対処するため、特徴量演算のもととなる紙繊維パターンの読み取り領域を複数設定しておくことが好ましい。またこの場合に、その所定領域は、紙媒体である紙幣の角近傍、ないし端部の領域を例えば少なくとも一つ含むこととする(図3)。このように、折畳まれやすい、高さ方向及び幅方向に1/4又は1/3、1/2の点を結んだ線分から少なくとも所定の距離だけ離れた位置に読み取り領域を設定する。
【0029】
さらに紙幣の発行枚数は約100億枚であり、これらを個別に識別するために、データベース内に格納された少なくとも100億個の登録特徴量と、照合の対象となる紙幣の紙繊維パターンとの間でそれぞれ相関演算していたのでは、妥当な時間内に照合が完了しない。特に、本実施の形態の照合装置1bを、例えば小売店舗側に配備し、その場で偽造紙幣を検出しようとするなどの用途には実質的に応用できない。そこで本実施の形態では紙幣の記番号を用いて、登録特徴量を絞り込み検索できるようにしたものである。以下、その処理の内容を述べる。
【0030】
固有情報受入部21は、スキャナ部16を制御して、紙幣上の予め定められた領域(所定領域)の画像データを少なくとも一つ読み取る。ここで所定領域は、紙幣の上で印刷のない(当初無地の)領域であって、例えば図3に示したように、紙幣の角近傍、ないし端部の領域を少なくとも一つ含む。ここで固有情報受入部21は、所定の解像度(例えば400dpi)かつ所定の階調(例えば8ビットグレイスケール)で画像データを読み取らせる。
【0031】
特徴量情報生成部22は、固有情報受入部21で読み取られた少なくとも一つの画像データについて、その各々から特徴量を演算して生成する。具体的にこの特徴量は、読み取った各画像データを予め定めた順序(登録順序と呼ぶ)で配列したものである。また特徴量情報生成部22は、この特徴量の情報を、所定の秘密鍵(生成側秘密鍵と呼ぶ)で暗号化してもよい。特徴量情報生成部22は、この特徴量の情報を登録処理部24に出力する。
【0032】
記番号入力部23は、操作部13を介して利用者から記番号の入力を受け入れて登録処理部24に出力する。また、この記番号入力部23は、スキャナ部16を制御して、紙幣上の記番号の印刷位置を読み取り、広く知られているOCR(光学的文字認識)処理を適用して記番号の情報を生成してもよい。さらに、記番号入力部23は、これら取得した記番号の情報を生成側秘密鍵で暗号化してもよい。
【0033】
登録処理部24は、特徴量情報生成部22から入力される特徴量と、記番号入力部23から入力される記番号の情報(これら特徴量や記番号の情報はいずれも暗号化されていてもよい)とを関連づけて、データベースサーバ3に対して登録指示する。
【0034】
これによりデータベースサーバ3には、図4に示すように、記番号と特徴量(登録特徴量)の情報とを関連づけたテーブルが記憶されているようになる。本実施の形態において特徴的なことの一つは、ある特定の記番号に対して関連づけられる登録特徴量が必ずしも一つではないことである。これは、各登録特徴量の元となる画像データの読み取り領域が各紙幣ごとに複数あっても構わないことに加え、同一の記番号が記載された紙幣が複数あることもあり得ることによる。
【0035】
なお、特徴量情報生成部22は、各特徴量に対して、その特徴量の演算の元となった画像データの読み取り領域を特定する情報(領域特定情報)を関連づけて出力してもよい。この場合、登録処理部24は、特徴量と、領域特定情報と、記番号の情報とを関連づけてデータベースサーバ3に登録することになる。この領域特定情報もまた、暗号化されてもよい。
【0036】
次に、本実施の形態の制御部11の、認証装置1bでの動作について説明する。認証装置1bでの制御部11が実行するプログラムは、機能的には図5に示すように、固有情報受入部31と、特徴量情報生成部32と、記番号入力部33と、登録特徴量取得部34と、照合部35と、提示部36とを含む。
【0037】
固有情報受入部31は、スキャナ部16を制御して、認証の対象となった紙幣(認証対象紙幣)上の予め定められた領域(所定領域)の画像データを少なくとも一つ読み取る。ここで所定領域は、認証情報生成装置1aにおける特徴量演算の元となる画像データと同じ領域または、当該領域を含む領域(拡大領域と呼ぶ)である。
【0038】
特徴量情報生成部32は、固有情報受入部31で読み取られた少なくとも一つの画像データについて、その各々から特徴量を演算して生成する。具体的にこの特徴量は、読み取った画像データそのものであってもよい。
【0039】
記番号入力部33は、操作部13を介して利用者から記番号の入力を受け入れる。また、この記番号入力部33は、スキャナ部16を制御して、紙幣上の記番号の印刷位置を読み取り、広く知られているOCR(光学的文字認識)処理を適用して記番号の情報を生成してもよい。
【0040】
登録特徴量取得部34は、記番号入力部33で生成した記番号の情報をキー情報として、データベースサーバ3から当該キー情報に関連づけられている登録特徴量の情報を取得する。ここで登録特徴量の情報が暗号化されている場合は、生成側秘密鍵に対応する公開鍵を用いて登録特徴量の情報を復号して用いる。
【0041】
照合部35は、例えば登録特徴量取得部34が取得した登録特徴量と、特徴量情報生成部32が生成した特徴量とを比較(相関演算)して、その相関値が所定のしきい値を越えるか否かを調べる。基本的にこの照合部35は、生成された特徴量と登録特徴量とを、登録順序の順に比較すればよい。
【0042】
しかし特徴量の元となる画像データの読み取り位置は、特徴量の登録時と照合時とで必ずしも一致するとは限らない。また照合時の画像には、紙幣の劣化の影響(汚れなど)が現れているのが普通である。そこで照合部35は、固有情報受入部31で受け入れた各拡大領域(N1×M1画素とする)内で、特徴量の演算に用いる画像データのサイズ(N0×M0画素、ここでN0<N1、M0<M1)の領域をラスタライン順(領域の左上隅から右方向へ1ライン分走査し、次のラインに移って左から右へ1ライン分走査することを繰返す順序)に走査し、それぞれの走査位置で、当該走査位置での画像データに対応する登録特徴量との相関値を演算する(図6)。
【0043】
また、この各走査位置での複数の相関値を用いて、正規化スコア(ノーマライズド・スコア)を次の(2)式で演算する。
【0044】
ノーマライズド・スコア=(相関値の最大値−相関値の平均値)÷相関値の標準偏差 ・・・(2)
【0045】
具体的にノーマライズド・スコアを演算した例を図7(A)から(C)に示す。なお、図7におけるメッシュの図は、各走査位置での相関値をグラフとして図示したものである。
【0046】
照合部35は、ここで演算した相関値の最大値とノーマライズド・スコアとがそれぞれについて定められたしきい値を超えているか否かを判断し、しきい値を超えている場合は、認証対象紙幣が真正の紙幣(登録されている紙幣)であると判断する。なお、登録特徴量取得部34が複数の登録特徴量を取得している場合(つまり一つの記番号に対応する紙幣が複数ある場合)は、各登録特徴量との相関演算結果のうち一つのノーマライズド・スコア及び相関値の最大値がしきい値を超えていれば認証対象紙幣は、真正の紙幣(登録されている紙幣)であると判断する。
【0047】
なお、ここでは登録順序によって複数の登録特徴量の各々の読み取り位置を認識できるようにしているが、各読み取り位置を特定する情報(領域特定情報)と登録特徴量とを関連付けてデータベースサーバ3側に登録している場合は、当該領域特定情報を用いて複数の登録特徴量の各々の読み取り位置を認識してもよい。この場合も、領域特定情報が暗号化されている場合は、生成側秘密鍵に対応する公開鍵を用いて領域特定情報を復号して用いる。
【0048】
提示部36は、照合部35における判断の結果を表示部14に表示出力する。
【0049】
本実施の形態の認証のシステムは上記のように構成されているので、例えば次のように動作する。ここでは認証情報生成装置1aは紙幣の製造拠点側に配置され、認証装置1bは例えば小売店舗側に配置されているものとする。
【0050】
紙幣の製造拠点では、紙幣に記番号を印刷するとともに、各記番号に対応する紙幣の用紙に関する特徴量を演算する。ここで特徴量は、紙幣上の所定領域の紙繊維のパターンの画像である。認証情報生成装置1aは、紙幣上の複数の所定領域における紙繊維のパターンの画像を読み取り、各画像のデータを登録特徴量として、記番号と読み取り領域を特定する情報とに関連付けてデータベースサーバ3に登録する。
【0051】
一方、小売店側では、認証装置1bを用いて紙幣上で記番号が印刷されている部分と、上記複数の所定領域に関連する領域(各所定領域に対応する拡大領域)とを読み取る。ここで紙幣全面を読み取っても構わない場合は、紙幣全面を読み取ってから、各領域を抽出してもよい。
【0052】
認証装置1bは、読み取って得た画像データに対して光学的文字認識の処理を行い、記番号を認識する。そして当該記番号に関連づけられている登録特徴量(及びそれに関連づけられている読み取り領域を特定する情報)をデータベースサーバ3から取得する。次に、認証装置1bは、読み取った各拡大領域の画像データと、当該拡大領域に内包される読み取り領域を特定する情報に関連付けられた登録特徴量との間の相関演算を行う。ここでの相関演算は、既に述べたように、拡大領域内におけるノーマライズド・スコア及び最大相関値を演算するものである。
【0053】
認証装置1bは、記番号に関連付けられている、当該拡大領域に内包される読み取り領域を特定する情報に関連付けられた登録特徴量が複数ある場合は、各登録特徴量と、当該拡大領域の画像データとの間で相関演算を行うことになる。
【0054】
こうして認証装置1bは、複数の相関演算結果を得る。認証装置1bは、この複数の相関演算結果のうち、少なくとも一つにより、真正の紙幣であると判断される場合は、真正の紙幣である旨の表示を行う。
【0055】
なお、複数の相関演算結果のうち、予め定めたn個以上で真正と判断される場合にのみ真正の紙幣であると判定してもよい。また、真正の紙幣であると判定できない場合は、その旨を表示してもよい。
【0056】
ここまでの説明においてデータベースサーバ3は、ネットワークを介して通信可能なものとしていたが、これに代えて、例えば登録特徴量を格納したデータベースを、DVD(Digital Versatile Disk)等の記録媒体に格納して、認証装置1b側で当該データベースから、記番号に対応する登録特徴量を読み出すようにしてもよい。この場合は、当該DVDの内容を所定のタイミングごとに更新しておく。
【0057】
本実施の形態によると、偽造困難な紙に固有の特徴量を用い、かつ認証対象物に付与された識別情報を用いて、登録された特徴量を絞り込んでから検索を行うので、印刷物偽造に係る認証強度を向上でき、かつ実用的な認証速度を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態に係る照合のシステムの構成ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る認証情報生成装置の処理例を表す機能ブロック図である。
【図3】読み取り領域の設定例を表す説明図である。
【図4】データベースの登録内容例を表す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る認証装置の処理例を表す機能ブロック図である。
【図6】相関演算の例を表す説明図である。
【図7】相関演算の結果例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1a 認証情報生成装置、1b 認証装置、3 データベースサーバ、11 制御部、12 記憶部、13 操作部、14 表示部、15 通信部、16 スキャナ部、21,31 固有情報受入部、22,32 特徴量情報生成部、23,33 記番号入力部、24 登録処理部、34 登録特徴量取得部、35 照合部、36 提示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別情報が印刷されている紙媒体について、
当該紙媒体に関する特徴量を生成する手段と、
前記特徴量と、前記識別情報とを関連付けたデータベースを生成する手段と、
を含み、
前記生成されるデータベースが、前記紙媒体の認証に係る所定処理に供されることを特徴とする認証情報生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の認証情報生成装置において、
前記紙媒体に関する特徴量は、紙媒体上の少なくとも一つの所定領域における紙繊維のパターンに係る特徴量であることを特徴とする認証情報生成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の認証情報生成装置において、
前記所定領域は、紙媒体の角の近傍、紙媒体の端部の領域を少なくとも一つ含むことを特徴とする認証情報生成装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の認証情報生成装置によって生成された前記データベースを利用する認証装置であって、
認証処理の対象となる紙媒体上に印刷された識別情報の情報を取得する手段と、
当該取得した識別情報に関連づけられている特徴量の情報を前記データベースから取得する手段と、
前記認証処理の対象となる紙媒体に関する特徴量を生成する手段と、
を含み、前記取得した特徴量の情報と、前記生成した特徴量の情報とが、認証に係る所定処理に供されることを特徴とする認証装置。
【請求項5】
識別情報が印刷されている紙媒体について、
当該紙媒体に関する特徴量を生成する工程と、
前記特徴量と、前記識別情報とを関連付けたデータベースを生成する工程と、
を含み、
前記生成されるデータベースが、前記紙媒体の認証に係る所定処理に供されることを特徴とする認証情報生成方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の認証情報生成装置によって生成された前記データベースを利用する認証装置の制御方法であって、
認証処理の対象となる紙媒体上に印刷された識別情報の情報を取得させる工程と、
当該取得した識別情報に関連づけられている特徴量の情報を前記データベースから取得させる工程と、
前記認証処理の対象となる紙媒体に関する特徴量を生成させる工程と、
を含み、前記取得した特徴量の情報と、前記生成した特徴量の情報とが、認証に係る所定処理に供されることを特徴とする認証装置の制御方法。
【請求項7】
コンピュータを用い、識別情報が印刷されている紙媒体について、
当該紙媒体に関する特徴量を生成する手順と、
前記特徴量と、前記識別情報とを関連付けたデータベースを生成する手順と、
を実行させ、
前記生成されるデータベースが、前記紙媒体の認証に係る所定処理に供されることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項1から3のいずれか一項に記載の認証情報生成装置によって生成された前記データベースを利用する認証装置によって実行されるプログラムであって、
認証処理の対象となる紙媒体上に印刷された識別情報の情報を取得する手順と、
当該取得した識別情報に関連づけられている特徴量の情報を前記データベースから取得する手順と、
前記認証処理の対象となる紙媒体に関する特徴量を生成する手順と、
を認証装置に実行させ、前記取得した特徴量の情報と、前記生成した特徴量の情報とが、認証に係る所定処理に供されることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−107225(P2006−107225A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294497(P2004−294497)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】