説明

誘導分圧器

【課題】 広い周波数範囲にわたって高インピーダンスおよび高精度の分圧比を実現する誘導分圧器を提供すること。
【解決手段】 高透磁率材料により形成され、巻線相互の密結合、巻線数およびコア寸法を考慮した数の区分に分けられ、かつ前記区分が予め定められた順番にしたがって配置された巻線巻装領域を有するコア100と、前記区分それぞれに設定された分割領域の各々に所定ターン数ずつの巻線が配置され、かつ前記分割領域の配置順番にしたがって対応する巻線ごとに直列接続されることにより予め定められた数の巻線群として構成された分圧巻線200と、をそなえた誘導分圧器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状コアに巻線が巻装されて構成される誘導分圧器に係わり、とくに広い周波数範囲にわたって入力インピーダンスが高く誤差の少ない特性を実現するものに関する。
【背景技術】
【0002】
測定用に用いられる誘導分圧器は、高い入力インピーダンスおよび高い分圧精度が求められる。この実現には、まず分圧精度を実現すべく巻線間の結合をできるだけ高めるため、10本の巻線を撚り合わせ巻線相互で密着巻きすることが行われている。また、高い入力インピーダンスを実現すべく、巻線の巻回数を増やすことが行われている。
【0003】
そして、巻線の浮遊容量と自己インダクタンスとによって定まる共振周波数付近で高インピーダンスが実現されている。ここで、巻線の巻回数を増すとこれに応じて浮遊容量が増すことを考慮しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにして得られる入力インピーダンスは、共振周波数により非常に狭い周波数範囲でのみ高インピーダンスとなるものである。この結果、誘導分圧器を異なる周波数に適用するには、別の分圧器を必要とし、広い周波数範囲を対象とする場合は、いくつもの分圧器を用意しなければならない問題がある。
【0005】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、広い周波数範囲にわたって高インピーダンスおよび高精度の分圧比を実現する誘導分圧器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、本発明では、
高透磁率材料により形成され、巻線相互の密結合、巻線数およびコア寸法を考慮した数の区分に分けられ、かつ前記区分が予め定められた順番にしたがって配置された巻線巻装領域を有するコアと、
前記区分それぞれに設定された分割領域の各々に所定ターン数ずつの巻線が配置され、かつ前記分割領域の配置順番にしたがって対応する巻線ごとに直列接続されることにより予め定められた数の巻線群として構成された分圧巻線と、
をそなえた誘導分圧器、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は上述のように、環状コアに設けられた巻線巻装領域に順番にしたがって巻線を巻装し、各巻線を順番に直列接続するようにしたため、巻数を増しても巻線間の浮遊容量が抑えられ、広い周波数範囲にわたって高インピーダンスおよび高精度の分圧比を示す誘導分圧器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【実施形態1】
【0009】
図1(a),(b)は、本発明の一実施形態を示す外観図および接続図である。そして図1(a)に示すように、環状コア100は、円周方向に10等分されており、第1区分100a、第2区分100b、第3区分100c、…第9区分100i、第10区分100jと呼ばれる。
【0010】
これら各区分100aないし100jは、それぞれ10個の領域に分割されて分割領域を構成しており、各分割領域に1単位、例えば10ターンずつの巻線が巻装される。したがって、各区分100aないし100jには、10ターンずつの巻線が1ないし10の順番にしたがって10個ずつ配置されている。
【0011】
実際上、各分割領域に10ターンの巻線を平坦に並べることは難しいから、10ターンの範囲内ではある程度重なり合うこともある。
【0012】
図1(b)は、図1(a)に示した巻線の接続状態を示している。第1区分100aから第10区分100jまでの巻線200は、分割領域ごとに直接接続される。すなわち、分割領域1をみると、第1区分100aから第10区分100jまでが直接接続されて1セクションを構成する。同様に、分割領域2をみると、第1区分100aから第10区分100jまでが直列接続されて2セクションを構成する。3セクション以下も同様である。
【0013】
このように10セクションが構成され、各セクションに分圧比0.1ずつを分担させる。したがって、1セクションは0−0.1を受け持ち、2セクションは0.1−0.2を受け持ち、10セクションは分圧比0.9−1.0を受け持つ。この図1(b)では、1セクション、つまり分圧比0.1ごとに端子を設けて1ディケードの分圧器を構成する。
【0014】
図2は、環状コア100における巻線200の巻装状態を示したもので、第1区分100a、第10区分100jおよびその隣接区分100b,…100iにつき示している。各区分は同様の巻線構成であるから、代表例として第1区分100aにつき説明する。
【0015】
第1区分100aにおける10個の分割領域にそれぞれ1単位ずつの巻線が配されているから、1区分内に巻線200は10個あり、順番に並置されている。1番目の巻線は巻線端子1,1’を有し、2番目の巻線は巻線端子2,2’を有し、3番目の巻線は巻線端子3,3’を有し、以下同様である。各巻線は、この場合、10ターンずつ巻装されている。
【0016】
2区分以下も同様に10個ずつの巻線が巻装されており、1区分から10区分まで10個ずつの巻線が順番に配置されている。これにより環状コアには、区分の順番および巻線の順番にしたがって100個の巻線が配置されている。
【0017】
図3(a),(b)は、図2に示したように構成された巻線200の結線状態を示している。図3(a)における右端に端子が、下端に区分符号が示されており、また、各巻線は巻線端子により示されている。これら端子、区分符号および巻線端子の関係から分るように、各区分の分割領域ごとにグループ分けされてそれぞれ直接接続されて端子に接続されている。
【0018】
すなわち、端子「0」と「0.1」との間を例にとれば、1番目の分割領域に巻装された巻線、つまり巻線端子「1」および「1’」を有する10個の巻線が第1区分から第10区分まで順番に直列接続された状態で接続されている。
【0019】
図3(b)は、図3(a)の接続状態を概括的に示したものである。この図3(b)に示すように、端子「0,0.1,0.2,…,0.9,1.0」における10個の端子間に、それぞれ10区分ずつの巻線が直列接続されて接続されている。
【実施形態2】
【0020】
図4は、本発明の実施形態2を示したものである。これは、一般に2段変成器と呼ばれるもので、次のような構成とする。この場合は、2個の環状鉄心を使用するが、説明の都合上棒状コアで説明する。
【0021】
そして、一方の環状コアである励磁専用コア101に、例えば1000ターンの入力巻線201を均等巻きする。この後、励磁専用コア101に並べてもう一つの環状コアである抱き合わせ鉄心102を配し、両コア101,102に10本撚りの巻線を100ターン巻装し、この100ターンの巻線を出力巻線とする。この際、出力巻線202は、図1および図2に示したように、区分および分割領域を設定して均等に巻装する。出力巻線202には、タップを出して分圧器出力端子とする。
【0022】
この構成により、高入力インピーダンスの周波数範囲が広がり、精度も向上することができる。
【0023】
図5は、本発明による誘導分圧器と従来のそれとのインピーダンス対周波数特性を示したものである。従来の誘導分圧器では、図示の場合、200Hzよりやや低い周波数で鋭いピークをなす入力インピーダンス特性を示している。このピークをなす周波数は設計的に変えられるが、鋭いピークをなくすことはできない。
【0024】
これに対し、本発明によれば、1200Hz付近でピーク状をなすものではあるが、ピーク形状が緩やかな特性を示す。図示の場合、入力インピーダンス500kΩ以上の範囲に限ってみても、500Hzよりも低い周波数から2000Hzを超える周波数範囲までの広い周波数範囲につき高入力インピーダンスが確保されている。そして、この周波数範囲は、コアおよび巻線の設計によってより高い周波数範囲へも低い周波数範囲へも変えることができる。
【0025】
図6(a),(b)は、図5の周波数特性を得ることができた浮遊容量の改善につき、従来の誘導分圧器および本発明のものにつき示したものである。図6(a)は従来の誘導分圧器の浮遊容量Csを示したものであり、10本撚りの巻線を巻装するため端子相互間に複雑に浮遊容量Csが生じている。このため、誘導分圧器の入力から見た容量は非常に大きくなる。
【0026】
これに対し、図6(b)に示すように、本発明では隣接する端子間には浮遊容量Csが生じるものの、離れた端子相互間には浮遊容量Csが生じない。これは、巻線を区分および分割領域にしたがって順番に配置し、巻線相互間の静電的関係を疎にしたことにより得られたものである。この結果、誘導分圧器は、小容量Cと巻線インダクタンスとの共振回路の縦属接続となるため、入力端子から見た容量は小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1(a)は本発明の一実施形態における巻線配置状態を示す説明図、図1(b)はその巻線接続状態を示す結線図。
【図2】図1に示した実施形態における巻線配置をより詳細に示した拡大図。
【図3】図3(a),(b)は、図2に示した巻線の接続状態を示す図。
【図4】本発明の他の実施形態である2段変成器の構成を示す説明図。
【図5】本発明による誘導分圧器の入力インピーダンス特性を従来のそれと対比して示したインピーダンス対周波数特性図。
【図6】図6(a),(b)は、誘導分圧器における浮遊容量につき、従来のものおよび本発明のものそれぞれにつき示した図。
【符号の説明】
【0028】
100 環状コア
100a−100j 区分
101 励磁専用コア
102 抱き合わせコア
200 巻線
201 入力巻線
202 出力巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高透磁率材料により形成され、巻線相互の密結合、巻線数およびコア寸法を考慮した数の区分に分けられ、かつ前記区分が予め定められた順番にしたがって配置された巻線巻装領域を有するコアと、
前記区分それぞれに設定された分割領域の各々に所定ターン数ずつの巻線が配置され、かつ前記分割領域の配置順番にしたがって対応する巻線ごとに直列接続されることにより予め定められた数の巻線群として構成された分圧巻線と、
をそなえた誘導分圧器。
【請求項2】
請求項1記載の誘導分圧器において、
前記コアは、環状コアである誘導分圧器。
【請求項3】
請求項2記載の誘導分圧器において、
前記環状コアを複数設け、
それらの環状コアの一つに、1以上のディケードが割り当てられたことを特徴とする誘導分圧器。
【請求項4】
請求項1記載の誘導分圧器において、
前記巻線は、巻線相互の接続点を利用してタップが形成されたことを特徴とする誘導分圧器。
【請求項5】
環状の励磁専用コアおよびこの励磁専用コアに並置される抱き合わせコアと、
前記励磁専用コアに巻装された入力巻線と、
前記励磁専用コアおよび前記抱き合わせコアに、均等に分割巻きされた出力巻線と
をそなえたことを特徴とする誘導分圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−59616(P2007−59616A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243076(P2005−243076)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(390031196)日本電気計器検定所 (17)
【Fターム(参考)】