説明

誘導加熱式融雪システム

【課題】誘導加熱式融雪システムの融雪能力を高める。
【解決手段】磁界を発生させる誘導加熱コイル21と、誘導加熱コイル21に高周波電流を供給する誘導加熱発振器22と、管内に冷却媒体が循環され、誘導加熱コイル21及び誘導加熱発振器22から発生する熱を冷却媒体で吸収するように配管される循環パイプ23と、吸熱した冷却媒体を放熱して道路R上の積雪を融雪する放熱器24と、放熱器24及び循環パイプ23で冷却媒体を強制循環させるポンプ25と、誘導加熱発振器22及びポンプ25に電源を供給する電源供給手段26とを備えた電磁誘導装置2が、道路上を車輪Wによって走行する走行体4に設けられ、且つ放熱器24が誘導加熱コイル21より進行方向の前方に配置され、少なくとも放熱器24が前車輪WFの前方に配置される。道路Rには、誘導加熱コイル21が発生する磁界により電磁誘導加熱させるための鋼網3を埋設するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱式融雪システムに係り、特に、誘導加熱コイルを有する走行体を、導体が埋設されている道路上を走行させて当該導体を誘導加熱して、道路上の積雪を融雪する誘導加熱式融雪システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、誘導加熱を利用して、舗装された道路や、一般家庭や店舗の敷地内に設けられている舗装された歩道に積もった雪を融雪する融雪方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この融雪方法は、道路内部に導体を配置させ、電磁誘導装置を搭載した自動車を当該道路上で移動させて、電磁誘導加熱により当該導体を発熱させることで、道路上に積もった雪を融雪する。電磁誘導装置は、鉄芯と、当該鉄芯に巻き付けられたコイルと、コイルの両端に接続された高周波電源とから構成されている。また、道路内部に配置される導体は、道路に敷設するための舗装材の裏面又は内部に設けられている。舗装材はセラミックタイルやレンガ、コンクリート等で方形に形成され、導体も舗装材と略同一の大きさの方形に形成されている。
【0004】
このような融雪方法によれば、導体と電磁誘導装置とが分離され、導体のみが道路内部に配設されているので、導電性材料から成る金属板体と誘導コイルとが共に道路に埋設されている融雪舗道(例えば、特許文献2参照。)のように、道路内部の誘導コイルが雨水や経年地中環境による応力等により故障してしまうことを防ぐことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−371513号公報
【特許文献2】特開2001−20210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、背景技術に記載した融雪方法は、図示された構造では自動車に予め電磁誘導装置を組み込んでおかなければならず、また、この電磁誘導装置のコイルでは筒状に形成されその軸線方向が縦方向に配置されているので、道路内部に配置された導体を電磁誘導加熱する範囲が狭く限られた範囲になり、電磁誘導装置の融雪能力が低下する難点があった。
【0007】
また、舗装材の裏面又は内部に設けられている導体は方形の舗装材と略同一な大きさなので、誘導負荷が大きくなり全体を適正に昇温するには大きな誘導電流が必要になる難点があった。また、この舗装材では通常使用されるセラミックタイルやレンガ、コンクリート等が使用されることから大きさが限定されるので、道路への敷設面積が大きい場合には、相当数の舗装材を用意しなければならなくなるので、イニシャルコストが上昇する原因となる。また、電磁誘導装置は自動車の前後タイヤの間となる車体の部位に配置されていることから、その自動車を前進させるには未融雪状態の道路を走行しなければならないので、必ず雪用タイヤを装着しなければ正常に走行することが困難になる難点があった。
【0008】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、融雪能力を高めることができる誘導加熱式融雪システムを提供することを目的とする。
また、本発明は、誘導負荷を小さくすると共にイニシャルコストの上昇を防ぐことができる誘導加熱式融雪システムを提供することを目的とする。
また、本発明は、車輪により走行する走行体に雪用タイヤを装着しなくてもよくなる誘導加熱式融雪システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成する本発明の第1の態様である誘導加熱式融雪システムは、道路上に配置され当該道路に向けて磁界を発生させる誘導加熱コイルと、誘導加熱コイルに磁界を発生させるための高周波電流を供給する誘導加熱発振器と、管内に冷却媒体が循環され、誘導加熱コイル及び誘導加熱発振器から発生する熱を冷却媒体で吸収するように配管される循環パイプと、道路上に配置され誘導加熱コイル及び誘導加熱発振器によって加熱された冷却媒体を放熱することで、その熱で道路上の積雪を融雪する放熱器と、放熱器の冷却媒体出口孔から吐出する冷却媒体を誘導加熱コイル及び誘導加熱発振器に配管された循環パイプを介して放熱器の冷却媒体入口孔まで圧送するポンプと、誘導加熱発振器及びポンプに電源を供給する電源供給手段とを備えた電磁誘導装置が、道路上を車輪によって走行する走行体に設けられ、且つ放熱器が誘導加熱コイルより進行方向の前方に配置されると共に少なくとも放熱器が車輪のうち前車輪の前方に配置され、道路には、誘導加熱コイルが発生する磁界により電磁誘導加熱させることで、当該道路上の積雪を融雪する鋼網が埋設されているものである。
【0010】
このような第1の態様である誘導加熱式融雪システムは、道路上の積雪を融雪するための電磁誘導装置の誘導加熱コイルを動作させるために、電源供給手段で誘導加熱発振器に電源を供給すると、誘導加熱発振器が高周波電流を誘導加熱コイルに供給するので、誘導加熱コイルは道路に向けて磁界を発生する。また、電源供給手段はポンプにも電源を供給していることから、当該ポンプは冷却媒体を循環パイプ及び放熱器で強制循環させるので、放熱器は誘導加熱コイル及び誘導加熱発振器によって加熱された冷却媒体を放熱する。このように動作している電磁誘導装置を走行体によって積雪状態の道路上を走行させると、少なくとも放熱器が車輪のうち前車輪の進行方向の前方に配置されているので、走行体の前車輪が道路上の積雪に到達する前に、少なくとも放熱器がその積雪を放熱作用によって融雪することができる。また、誘導加熱コイルからは磁界が発生していることから、電磁誘導による渦電流により道路に埋設された鋼網を加熱できるので、その加熱された鋼網の部位が位置する道路上の積雪を融雪することができる。さらに、電磁誘導による渦電流により加熱する導体が板状のものより発熱効率が高い鋼網なので、コイル直下だけではなくその近傍においても加熱することができる。したがって、電磁誘導装置で道路上の積雪を融雪するには、単に誘導加熱コイルによる電磁誘導作用だけではなく、さらに放熱器による放熱作用と共に鋼網による発熱効率の向上作用も加えることができるようになるので、電磁誘導加熱装置の融雪能力を高めることができる。
【0011】
本発明の第2の態様は第1の態様である誘導加熱式融雪システムにおいて、放熱器は、第1のタンク及び第2タンク間に、当該第1のタンク及び当該第2タンクに連通し加熱された冷却媒体が管内を流通するチューブと、チューブを流通させる加熱された冷却媒体を放熱する放熱フィンとが交互に積層されることにより形成されたラジエータコアから成り、第1のタンクには冷却媒体入口孔が設けられ、第2のタンクには冷却媒体出口孔が設けられているものである。
このような第2の態様である誘導加熱式融雪システムによれば、放熱器の構造がラジエータコアであることから放熱作用を高めることができるので、放熱器による融雪能力を高めることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は第1の態様又は第2の態様である誘導加熱式融雪システムにおいて、誘導加熱コイルは平型巻線であり、当該平型巻線の平面が鋼網の平面と平行に配置されているものである。
このような第3の態様である誘導加熱式融雪システムによれば、道路に埋設された鋼網を電磁誘導加熱する範囲を広げることができるので、誘導加熱コイルによる融雪能力を高めることができる。
【0013】
本発明の第4の態様は第1の態様乃至第3の態様のうち何れか1つの態様である誘導加熱式融雪システムにおいて、走行体はフォークリフトであり、誘導加熱コイル、誘導加熱発振器、循環パイプ、放熱器、ポンプ及び電力供給手段は、1つのフレームに組み込まれ、フレームはフォークリフトのフォーク爪に積載されるものである。
このような第4の態様である誘導加熱式融雪システムによれば、工場や倉庫等で使用されるフォークリフトのフォーク爪でフレームを持ち上げるだけで、電磁誘導装置を走行体に設けることができる。
【0014】
本発明の第5の態様は第1の態様乃至第3の態様のうち何れか1つの態様である誘導加熱式融雪システムにおいて、走行体は、GPS制御のAGVである。
このような第5の態様である誘導加熱式融雪システムによれば、予め定める走行経路に沿って走行するGPS制御のAGVなので、電磁誘導装置を容易に設置することができると共に融雪能力を高めることができる。
【0015】
本発明の第6の態様は第1の態様乃至第5の態様のうち何れか1つの態様である誘導加熱式融雪システムにおいて、電源供給手段は、熱機関により駆動される発電機である。
このような第6の態様である誘導加熱式融雪システムによれば、単体で発電させることができることから、走行体に設けても道路上を障害なく自由に走行させることができるので、融雪能力を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の誘導加熱式融雪システムによれば、融雪能力を高めることができるようになる。
また、本発明の誘導加熱式融雪システムによれば、誘導負荷を小さくすると共にイニシャルコストの上昇を防ぐことができるようになる。
また、本発明の誘導加熱式融雪システムによれば、車輪により走行する走行体が雪用タイヤを装着しなくてもよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の誘導加熱式融雪システムにおける好ましい実施の形態例を示す図で、(A)は走行体の全体斜視図、(B)は誘導加熱コイル、誘導加熱発振器、放熱器及びポンプと、循環パイプとの関係図である。
【図2】誘導加熱式融雪システムの鋼網が埋設された路面状態を示す説明図で、(A)は電磁誘導加熱装置で融雪する前の路面状態、(B)は電磁誘導加熱装置で融雪中の路面状態である。
【図3】本発明の誘導加熱式融雪システムが適用される倉庫の出入り口部を示す説明図である。
【図4】本発明の誘導加熱式融雪システムにおける好ましい他の実施の形態例を示す図で、AGVに適用した全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、誘導加熱式融雪システムを実施するための形態例について、図面を参照して説明する。
本発明の誘導加熱式融雪システムは図1(A)、(B)に示すように、誘導加熱コイル21、誘導加熱発振器22、循環パイプ23、放熱器24、ポンプ25及び電源供給手段26を備えている電磁誘導装置2と、道路に埋設される鋼網3とから構成されている。電磁誘導装置2は、道路R上を車輪W(前車輪WF、後車輪WR)によって走行する走行体4に設けられている。さらに、この電磁誘導装置2の各構成部について詳述する。
【0019】
誘導加熱コイル21は、道路R上に所定の空間を隔てて配置され、当該道路Rに向けて磁界を発生することができる。この誘導加熱コイル21は例えば、平型巻線で構成されている。この平型巻線である誘導加熱コイル21は、耐熱電線が平面視において長円形をなすように平らに巻回されている。なお、この耐熱電線を外部接触により破損しないように、透磁率の小さい金属、例えば銅製の細い管素材に挿入されている。このように、誘導加熱コイル21を平型巻線に形成することで道路Rに埋設された鋼網3を電磁誘導加熱する範囲を広げることができるので、誘導加熱コイル21による融雪能力を高めることができるようになる。
誘導加熱発振器22は、誘導加熱コイル21に磁界を発生させるための高周波電流を供給するもので、所定周波数で動作するように制御するにはインバータによる発振回路が好適である。
【0020】
循環パイプ23は、管内に冷却水等の冷却媒体が循環され、誘導加熱コイル21及び誘導加熱発振器22から発生する熱を当該冷却媒体で吸収するように配管されている。即ち、誘導加熱コイル21の近傍に配置され、誘導加熱発振器22の熱が発生する部位の近傍に配置される。このような吸熱作用のある循環パイプ23としては、鋼管や銅管が好適である。
【0021】
放熱器24は、道路R上に所定の空間を隔てて配置され、誘導加熱コイル21及び誘導加熱発振器22によって加熱された冷却媒体を放熱することで、その熱で道路R上の積雪を融雪するものである。この放熱器24としては、例えば、第1のタンク24a及び第2タンク24b間に、当該第1のタンク24a及び当該第2タンク24bに連通し加熱された冷却媒体が管内を流通するチューブ24cと、チューブ24cを流通させる加熱された冷却媒体を放熱する放熱フィン24dとが交互に積層されることにより形成されたラジエータコアから成るものである。放熱器24の構造をラジエータコアにすることで放熱作用を高めることができるので、放熱器24による融雪能力を高めることができる。なお、第1のタンク24aには循環パイプ23に接続するための冷却媒体入口孔(図示せず。)が設けられ、第2のタンク24bには循環パイプ23に接続するための冷却媒体出口孔(図示せず。)が設けられている。
【0022】
ポンプ25は、放熱器24の冷却媒体出口孔から吐出する冷却媒体を誘導加熱コイル21及び誘導加熱発振器22に配管された循環パイプ23を介して放熱器24の冷却媒体入口孔まで圧送するものである。このようなポンプ25としては走行体4に設置するので、市販されている電動式のウォーターポンプが、小型、軽量で信頼性が高く、また、汎用性が高く調達が容易な点から好ましい。
【0023】
電源供給手段26は、誘導加熱発振器22及びポンプ25に電源を供給するもので、例えば、熱機関により駆動される発電機が好ましい。電磁誘導装置2の電源供給手段26として熱機関により駆動される発電機が好ましいのは、単体で発電させることができることから、走行体4に設けても道路R上を障害なく自由に走行させることができるので、融雪能力を高めることができるからである。このような発電機の熱機関としては、往復エンジン、ガスタービンエンジン、バンケルエンジンまたはスターリングエンジンが考えられる。
【0024】
また、誘導加熱コイル21や放熱器24は、外部接触により破損しないように、図1(A)に示すような筐体(実線で示す六面体)によって覆うとよい。なお、誘導加熱コイル21の筐体の道路に面している側は、道路Rに向けて磁界を発生させなければならないので、開口穴を設けるか、あるいは透磁率の小さい金属で覆うようにする。また、放熱器24の筐体の道路に面している側は、道路Rに向けて放熱しなければならないので、開口穴が設けられている。この放熱器24の筐体にはポンプ25を収納してもよい。さらに、放熱器24が誘導加熱コイル21より走行体4の進行方向の前方に配置されると共に少なくとも放熱器24が走行体4の車輪Wのうち前車輪WFの前方に配置されている。
【0025】
なお、循環パイプ23は図1(B)に示すように、誘導加熱コイル21から発生する熱を冷却媒体で吸収する循環パイプ23は、ポンプ25の第1の吐出口(図示せず。)と、放熱器24の第1のタンク24aの冷却媒体入口孔とを接続し、誘導加熱発振器22から発生する熱を冷却媒体で吸収する循環パイプ23は、ポンプ25の第2の吐出口(図示せず。)と、放熱器24の第1のタンク24aの冷却媒体入口孔とを接続している。この際、図示されているように、誘導加熱コイル21から発生する熱を冷却媒体で吸収する循環パイプ23と、誘導加熱発振器22から発生する熱を冷却媒体で吸収する循環パイプ23とを連結して1つの循環パイプ23として放熱器24の第1のタンク24aの冷却媒体入口孔に接続させてもよい。また、循環パイプ23は、放熱器24の第2のタンク24bの冷却媒体出口孔と、ポンプ25の流入口(図示せず。)とを接続している。
【0026】
このような電磁誘導装置2の誘導加熱コイル21によって加熱する導体として鋼網3を使用するのは、熱伝達率が高くなるからである。この鋼網3としては、JIS G 3551に基づいた溶接金網及び鉄筋格子が好ましく、材質は発熱効率のよい鉄線(JIS G 3532 コンクリート用鉄線 SWM−P)や、亜鉛メッキ鉄線(JIS G3547 SWMGH−3)が好ましい。この鋼網3は図2(A)に示すように、道路Rに埋設し易いように、当該道路Rの舗装部R1の下になる路盤部R2内に埋設されている。このような鋼網3を使用することで、誘導負荷を小さくすると共にイニシャルコストの上昇を防ぐことができる。
【0027】
このように構成された誘導加熱式融雪システム1の動作について以下説明する。
この誘導加熱式融雪システム1の鋼網3が埋設される道路Rは、図3に示すような倉庫Wの出入口部DW1、DW2に配置されている道路RA、道路RBである。この道路RA、道路RBは運搬用のトラック等が走行するメインストリートから倉庫Wに向かって登っていくような坂道になっているものとする。道路RA、道路RBにはそれぞれ図2(A)に示すように、舗装部R1上に雪Sが積もっているものとする。
【0028】
また、走行体4としてはフォークリフトを使用する。フォークリフト4を使用する場合には、誘導加熱コイル21、誘導加熱発振器22、循環パイプ23、放熱器24、ポンプ25及び電力供給手段26は、1つのフレーム(図示せず。)に組み込まれ、フレームはフォークリフト4のフォーク爪に積載させる。このように、工場や倉庫等で使用されるフォークリフト4のフォーク爪でフレームを持ち上げるだけで、電磁誘導装置2を走行体に設けることができるようになる。
【0029】
このような誘導加熱式融雪システム1において、例えば道路RA上の積雪を融雪するための電磁誘導装置2の誘導加熱コイル21を動作させるために、電源供給手段26で誘導加熱発振器22に電源を供給すると、誘導加熱発振器22が高周波電流を誘導加熱コイル21に供給するので、誘導加熱コイル21は道路RAに向けて磁界を発生する。また、電源供給手段26はポンプ25にも電源を供給していることから、当該ポンプ25は冷却媒体を循環パイプ23及び放熱器24で強制循環させるので、放熱器24は誘導加熱コイル21及び誘導加熱発振器22によって加熱された冷却媒体を放熱する。
【0030】
このように動作している電磁誘導装置2をフォークリフト4によって積雪状態の道路上を走行させると、少なくとも放熱器24が車輪Wのうち前車輪WFの進行方向の前方に配置されているので、フォークリフト4の前車輪WFが道路RA上の積雪に到達する前に、少なくとも放熱器24がその積雪を放熱作用によって融雪することができる。したがって、前進中のフォークリフト4の車輪Wのスリップを抑えることができるので、雪用タイヤを装着しなくてもよくなる。また、誘導加熱コイル21からは磁界が発生していることから、この磁界により道路RAに埋設された鋼網3に電磁誘導による渦電流を発生させることができるので、当該鋼網3にジュール熱が発生する。したがって、その加熱された鋼網3の部位が位置する道路RA上の積雪を融雪することができる。さらに、電磁誘導による渦電流により加熱する導体が板状のものより発熱効率が高い鋼網3なので、誘導加熱コイル21の直下だけではなくその近傍においても加熱することができる。
【0031】
このように、電磁誘導装置2で道路RA上の積雪を融雪するには図2(B)に示すように、単に誘導加熱コイル21による電磁誘導作用だけではなく、さらに放熱器24による放熱作用と共に鋼網3による発熱効率の向上作用も加えることができるようになるので、電磁誘導加熱装置2の融雪能力を高めることができる。したがって、坂道になっている道路RAや道路RBにおいても積雪でスリップすることなく運搬用のトラック等を走行させることができるようになる。なお、放熱器24と共に誘導加熱コイル21もフォークリフト4の車輪Wのうち前車輪WFの進行方向の前方に配置されていれば、放熱器24のみがフォークリフト4の車輪Wのうち前車輪WFの進行方向の前方に配置されている場合よりも、前進中のフォークリフト4の車輪Wのスリップを抑えることができるようになる。
【0032】
なお、放熱器24による道路R上の積雪を融雪することができる放熱器24及び道路Rとの間隔や、誘導加熱コイル21で鋼網3を加熱して道路R上の積雪を融雪することができる誘導加熱コイル21と鋼網3との間隔は、試験結果に基づき設定される。
【0033】
なお、上述した実施例においては走行体4としてフォークリフトを例示として挙げていたが、これに限らず、図4に示すような複数の衛星からの電波を受信して現在位置を検出するシステムであるGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)制御のAGV(Automated Guided Vehicle)5でもよい。このAGV5は、フォークリフト4と同様に、AGV5に対して誘導加熱コイル21、誘導加熱発振器22、循環パイプ23、放熱器24、ポンプ25(図示せず。)及び電源供給手段26を備えている電磁誘導装置2が設けられている。また、フォークリフト4と同様に、放熱器24が誘導加熱コイル21より走行体4の進行方向の前方に配置されると共に少なくとも放熱器24が走行体4の車輪Wのうち前車輪WFの前方に配置されている。
【0034】
このようなAGV5に電磁誘導装置2を設けることにより、予め定める走行経路に沿って走行することができるようになるので、電磁誘導装置2を容易に設置することができると共に融雪能力を高めることができる。
なお、走行体4は車輪Wで道路R上を走行するものであれば自動車等でもよい。電磁誘導装置2は上述したように、簡易に組み込むことができるからである。
【0035】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0036】
1……誘導加熱式融雪システム
2……電磁誘導装置
21……誘導加熱コイル
22……誘導加熱発振器
23……循環パイプ
24……放熱器
25……ポンプ
26……電源供給手段
3……鋼網
4……走行体

R……道路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上に配置され当該道路に向けて磁界を発生させる誘導加熱コイルと、前記誘導加熱コイルに前記磁界を発生させるための高周波電流を供給する誘導加熱発振器と、管内に冷却媒体が循環され、前記誘導加熱コイル及び前記誘導加熱発振器から発生する熱を当該冷却媒体で吸収するように配管される循環パイプと、前記道路上に配置され前記誘導加熱コイル及び前記誘導加熱発振器によって加熱された前記冷却媒体を放熱することで、その熱で当該道路上の積雪を融雪する放熱器と、前記放熱器の冷却媒体出口孔から吐出する前記冷却媒体を前記誘導加熱コイル及び前記誘導加熱発振器に配管された前記循環パイプを介して前記放熱器の冷却媒体入口孔まで圧送するポンプと、前記誘導加熱発振器及び前記ポンプに電源を供給する電源供給手段とを備えた電磁誘導装置が、前記道路上を車輪によって走行する走行体に設けられ、且つ前記放熱器が前記誘導加熱コイルより進行方向の前方に配置されると共に少なくとも前記放熱器が前記車輪のうち前車輪の前方に配置され、
前記道路には、前記誘導加熱コイルが発生する前記磁界により電磁誘導加熱させることで、当該道路上の積雪を融雪する鋼網が埋設されていることを特徴とする誘導加熱式融雪システム。
【請求項2】
前記放熱器は、第1のタンク及び第2タンク間に、当該第1のタンク及び当該第2タンクに連通し前記加熱された冷却媒体が管内を流通するチューブと、前記チューブを流通させる前記加熱された冷却媒体を放熱する放熱フィンとが交互に積層されることにより形成されたラジエータコアから成り、前記第1のタンクには前記冷却媒体入口孔が設けられ、前記第2のタンクには前記冷却媒体出口孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の誘導加熱式融雪システム。
【請求項3】
前記誘導加熱コイルは平型巻線であり、当該平型巻線の平面が前記鋼網の平面と平行に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の誘導加熱式融雪システム。
【請求項4】
前記走行体はフォークリフトであり、前記誘導加熱コイル、前記誘導加熱発振器、前記循環パイプ、前記放熱器、前記ポンプ及び前記電力供給手段は、1つのフレームに組み込まれ、前記フレームは前記フォークリフトのフォーク爪に積載されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の誘導加熱式融雪システム。
【請求項5】
前記走行体は、GPS制御のAGVであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の誘導加熱式融雪システム。
【請求項6】
前記電源供給手段は、熱機関により駆動される発電機であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち何れか1項に記載の誘導加熱式融雪システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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