説明

誘導加熱装置および被加熱体

【課題】被加熱体からの熱伝導による誘導加熱コイルの温度上昇を低コストにて抑制することができるができる誘導加熱装置を提供する。
【解決手段】被加熱体2を加熱する誘導加熱コイル1と、誘導加熱コイル1の被加熱体2の配置されている側と相反する側から空気を供給するファン7とを備え、誘導加熱コイル1と被加熱体2と間には空気層のみが存在し、ファン7により供給される空気は誘導加熱コイル1を介して被加熱体2に到達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被加熱体からの熱伝導による誘導加熱コイルの温度上昇を低コストにて抑制することができる誘導加熱装置および被加熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導加熱装置は、加熱コイルと、加熱コイルに隣接して配設され、誘導加熱される被加熱体と、加熱コイルと被加熱体の間に配置された断熱体と、加熱コイルおよび被加熱体に送風して冷却するファンをそれぞれ備えているものである。また、ファンをひとつにするために、外部に風洞を設けコイルおよび被加熱体を冷却するものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−172104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の誘導加熱装置は、加熱コイルおよび被加熱体を冷却するためにそれぞれにファンを設置しておりコストがかかるという問題点があった。また、これらのファンをひとつにするために、風洞を新たに設けるために装置が大型になりかつコストがかかるという問題点があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、被加熱体からの熱伝導による誘導加熱コイルの温度上昇を低コストにて抑制することができる誘導加熱装置および被加熱体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、被加熱体を誘導加熱する誘導加熱コイルと、上記誘導加熱コイルの上記被加熱体の配置されている側と相反する側から空気を供給するファンとを備え、上記誘導加熱コイルと上記被加熱体と間には空気層のみが存在し、上記ファンにより供給される空気は上記誘導加熱コイルを介して上記被加熱体に到達するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の誘導加熱装置は、被加熱体を誘導加熱する誘導加熱コイルと、上記誘導加熱コイルの上記被加熱体の配置されている側と相反する側から空気を供給するファンとを備え、上記誘導加熱コイルと上記被加熱体と間には空気層のみが存在し、上記ファンにより供給される空気は上記誘導加熱コイルを介して上記被加熱体に到達するので、被加熱体および誘導加熱コイルを直接ファンにて冷却することができるため、被加熱体からの熱伝導による誘導加熱コイルの温度上昇を低コストにて抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1の誘導加熱装置および誘導加熱コイルの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態2の誘導加熱装置および誘導加熱コイルの構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態3の誘導加熱装置の構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態4の誘導加熱装置の構成を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態5の誘導加熱装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、本願発明の実施の形態について説明する。図1はこの発明の実施の形態1における誘導加熱装置および誘導加熱コイルの構成を示した断面図および正面図である。ここでは、誘導加熱装置として、誘導加熱を用いてインバータに回生された電力を消費する電子抵抗器を例に説明する。図1において、誘導加熱コイル1は、電気的エネルギー(電力)を誘導加熱の現象にて被加熱体2を加熱するものであり、共振用コンデンサおよび駆動回路(図示せず)などに接続されている。そして、誘導加熱コイル1が生成した磁束を受け誘導加熱により加熱される被加熱体2と、誘導加熱コイル1の被加熱体2の配置されている側と相反する側から空気を供給するファン7とを備えている。そして、誘導加熱コイル1と被加熱体2との間には断熱材などが存在せず、空気層のみが存在し、ファン7により供給される空気(風B)は誘導加熱コイル1の隙間などを介して被加熱体2に到達する(風A)。被加熱体2には、誘導加熱コイル1が配設されている側と相対する面上に、放熱のためのフィン部2aが形成されている。
【0010】
そして、誘導加熱コイル1は、コイル導線5としての細い線がらせん状に巻回されている。このコイル導線5の間の間隔を形成、維持するために絶縁体で形成されている櫛状もしくはビーズ形状のスペーサ6を挟持して形成している。もしくは、線材として銅板を上記形状に加工して利用してもかまわない。また、コイル導線5の断面形状は、円形のほか多角形、複数の線材がより合わさった形状で形成されていてもよい。さらに、誘導加熱コイル1は熱エネルギーを反射する色に塗装することも考えられる。具体的には、誘導加熱コイル表面を塗装する色としては、例えば金色や銀色などの光沢があるものであればよい。尚、これらの内容は、以下の実施の形態においても同様であるため適宜説明を省略する。
【0011】
上記のように構成された実施の形態1の誘導加熱装置によれば、誘導加熱コイルの被加熱体側では衝突噴流の効果と誘導加熱コイルによる気流の乱れによって被加熱体の壁面での冷却効果が期待できる。しかし、この構成では被加熱体から加熱コイルへの輻射熱が懸念されるが、上記効果による被加熱体の表面温度の低下が見込まれ上記熱伝導の低減が見込まれる。また、被加熱体により暖められた空気が加熱コイルにあたることを防ぐため、従来必要であった断熱材の介在なくして被加熱体から加熱コイルへの熱伝導を減少することができる。さらにふく射を受けにくいコイル表面へ塗装することにより被加熱体から加熱コイルへの熱伝導を減少することができる。このため、加熱コイルと被加熱体の配置によらず、かつ断熱材などを用いなくとも上記被加熱体から加熱コイルへの熱伝導を抑え加熱コイルの温度上昇を小さく維持し、かつ温度上昇してもコイルを形成する巻き線間の絶縁を維持することができる。よって、低コスト、かつ、耐久性を得ることができる。
【0012】
また、コイル導線間が間隔を有しているため空気に触れる表面積が広くなり、伝熱面積が増加され、誘導加熱コイルの熱抵抗が低減される。さらにコイル導線に細い巻き線を使用しているため、伝熱面積が増加するとともに、誘導加熱コイルの巻き線が微小直径円柱のため自然対流時および強制対流時において、熱伝達特性が向上する。そのため、銅損および被加熱体からのふく射による熱を効率よく放熱させることができる。
【0013】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2の誘導加熱装置の誘導加熱コイルの構成を示す断面図および正面図である。図において、上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。誘導加熱コイル1は、コイル導線5、15の巻回しを複数層形成し、各層のコイル導線5、15のおいて巻回方向を異なる方向として、各層のコイル導線5、15を直列に接続して形成されている。具体的には、コイル導線5は反時計回りに巻回され、コイル導線15は時計回りに巻回され、コイル導線5とコイル導線15とは中心部分で接続され、2つは直列に接続され、ひとつの誘導加熱コイル1にて構成されているものである。このような構成によって、コイル導線5、15の中心軸方向から見て、コイル導線5、15に流れる電流は同じ方向に流れるので、被加熱体2に対して生成する磁束を打消し合うことがない。そして、2つのコイル導線5とコイル導線15との空間をおき互いが接触しないようにスペーサ16により間隔が保たれている。
【0014】
上記のように構成された実施の形態2の誘導加熱装置によれば、上記実施の形態1と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、誘導加熱コイルの形状により巻き数が多くなり、大きなインダクタンスを得ることができる。また、外部回路との接続端子や、複数のコイルを並列接続するための端子を外側に設けることが容易となる。
なお、各層のコイル導線を並列接続してもよい。この場合、コイル導線の中心軸方向から見て、コイル導線に流れる電流は同じ方向にするために、各層における巻回方向を同じ方向にした方が良い。
【0015】
実施の形態3.
図3はこの発明の実施の形態3の誘導加熱装置の構成を示す図である。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。図において、被加熱体2の誘導加熱コイル1と相反する面上に放熱のフィン部2bが形成されたものである。
【0016】
上記のように構成された実施の形態3の誘導加熱装置によれば、上記各実施の形態と同様の効果を奏するのはもちろんのこと、誘導加熱コイルを通過する風は被加熱体のフィン部に当接するため、被加熱体の熱抵抗値が小さくなり、効率よく被加熱体を冷却することができる。
【0017】
実施の形態4.
図4はこの発明の実施の形態4の誘導加熱装置の構成を示す断面図である。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。図において、被加熱体20に誘導加熱コイル1の相反する面上にフィン部20aが形成されている。また、被加熱体20の誘導加熱コイル1の配置されている側から相反する側に向けて貫通する通風孔21を形成する。尚、本実施の形態ではフィン部20aを有する被加熱体20に通風孔21を形成する場合について示したが、上記他の実施の形態の被加熱体であっても同様の通風孔を形成する例も考えられる。
【0018】
次に、上記のように構成された実施の形態4の誘導加熱装置の動作は、ファン7により送られた風Bは誘導加熱コイル1を冷却したのち、さらに被加熱体20の内部を、通風孔21を介して貫通し、被加熱体20を冷却し外部へ風A’が吹き抜ける。そして、誘導加熱コイル1と被加熱体20とを冷却する。
【0019】
上記のように構成された実施の形態4の誘導加熱装置によれば、誘導加熱コイルを冷却するファンと被加熱体を冷却するファンとをひとつのファンにて行うことができる。また、被加熱体で暖められた高温の空気が誘導加熱コイルにあたることを防ぐことができるため、誘導加熱コイルの温度上昇を抑えることができる。また、通風孔により暖められた空気が外部に排気されるため、駆動回路など周辺機器への熱の影響を防ぐことができる。
【0020】
実施の形態5.
図5はこの発明の実施の形態5の誘導加熱装置の構成を示す断面図である。図において、上記各実施の形態と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。図5に示すように、被加熱体20の誘導加熱コイル1が配設されている側と相反する側に、底部を有するフィン部20bを形成している。
【0021】
このように形成された実施の形態5によれば、ファン7により送られた風Bは被加熱体20に接続されたフィン部20bの底部に衝突して被加熱体20を冷却し外部へ風Cとして吹き抜ける。このとき風Bはフィン部20bの底面に衝突するため、被加熱体20の放熱効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 誘導加熱コイル、2,20 被加熱体、2a,2b,20a,20b フィン部、5,15 コイル導線、6,16 スペーサ、7 ファン、21 通風孔、
A,A’,B ,C 風。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱体を誘導加熱する誘導加熱コイルと、上記誘導加熱コイルの上記被加熱体の配置されている側と相反する側から空気を供給するファンとを備え、上記誘導加熱コイルと上記被加熱体と間には空気層のみが存在し、上記ファンにより供給される空気は上記誘導加熱コイルを介して上記被加熱体に到達することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
上記誘導加熱コイルは、コイル導線が径方向に複数回巻回され、上記径方向において上記コイル導線間は間隔を有することを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱装置。
【請求項3】
上記コイル導線間の間隔を保持するスペーサを備えたことを特徴とする請求項2に記載の誘導加熱装置。
【請求項4】
上記誘導加熱コイルは、上記コイル導線の巻回しを複数層形成し、当該各層が直列または並列にて接続されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
上記誘導加熱コイルは、上記コイル導線の巻回しを複数層形成し、当該各層のおいて巻回方向を異なる方向として、当該各層を直列に接続して形成されていることを特徴とすると請求項2または請求項3に記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
上記コイル導線は、熱エネルギーを反射する色が塗装されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の誘導加熱装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の誘導加熱装置により加熱される上記被加熱体は、
上記誘導加熱コイルの配置されている側から相反する側向けて貫通する通風孔を備えたことを特徴とする被加熱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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