説明

誘導加熱装置の制御装置、誘導加熱システム及び誘導加熱装置の制御方法

【課題】トランスバース方式の誘導加熱装置を用いて導体板を加熱する際に、導体板の通板速度が変化しても、導体板の板幅方向における温度分布が不均一になることを防止して従来よりも温度分布を均一にする。
【解決手段】通板されている導体板の板面に交番磁界を交差させてこの導体板を誘導加熱するトランスバース方式の誘導加熱装置の加熱コイルに出力される交流電力を制御するこの誘導加熱装置の制御装置は、前記加熱コイルに交流電力を出力する磁気エネルギー回生双方向電流スイッチと;前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚の少なくとも1つに応じた出力周波数を設定する周波数設定装置と;前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチのスイッチ動作を、前記周波数設定装置で設定された出力周波数に基づいて制御するゲート制御装置と;を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱装置の制御装置、誘導加熱システム及び誘導加熱装置の制御方法に関する。特に、導体板に交番磁界を略垂直に交差させて導体板を誘導加熱するために用いて好適なものである。
本願は、2009年12月14日に、日本に出願された特願2009−283255号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば製造ラインを通板中の鋼板等の導体板を加熱する際に、誘導加熱装置が用いられている。誘導加熱装置は、加熱コイルを有し、この加熱コイルにより誘起された渦電流により導体板を加熱する装置である。この誘導加熱装置では、加熱コイルから発生した交番磁界(交流磁界)により導体板に渦電流を誘起させ、この渦電流によって導体板中にジュール熱を発生させている。このような誘導加熱装置の一つとして、トランスバース方式の誘導加熱装置がある。このトランスバース方式の誘導加熱装置では、加熱対象の導体板の板面に略垂直に交差するように交番磁界が導体板に与えられる。
トランスバース方式の誘導加熱装置を制御する方法として特許文献1に開示された技術がある。特許文献1では、誘導加熱装置を構成する加熱コイルと並列にコンデンサを設けて加熱コイルとコンデンサとの並列共振回路を構成し、並列共振型のインバータにより加熱コイルに給電している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2002−313547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、誘導加熱装置の給電装置(給電回路)から誘導加熱装置の加熱コイルを見た場合に、誘導加熱装置の加熱対象である導体板の通板速度に応じてインダクタンスが変化する(以下の説明では、このインダクタンスを必要に応じて見掛け上のインダクタンスと称する)。具体的には、導体板の通板速度が速く(または遅く)なると、見掛け上のインダクタンスが小さく(または大きく)なる。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、加熱コイルとコンデンサとが並列共振回路を構成している。したがって、見かけ上のインダクタンスが変化すると、加熱コイルに給電される電力の周波数も変化する。例えば、導体板の通板速度が速くなり、見掛け上のインダクタンスが小さくなると、加熱コイルに給電される電力の周波数が高くなる。このように加熱コイルに給電される電力の周波数が高くなると、導体板の板幅方向における端部(エッジ)付近の温度が、導体板の板幅方向の中央部付近の温度よりも高くなり、導体板の板幅方向における温度分布が不均一になる虞がある。
以上のように従来の技術では、トランスバース方式の誘導加熱装置を用いて導体板を加熱する際に、導体板の通板速度が変化すると、導体板の板幅方向における温度分布が不均一になるという問題点があった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、トランスバース方式の誘導加熱装置を用いて導体板を加熱する際に、導体板の通板速度が変化しても、導体板の板幅方向における温度分布が不均一になることを防止して従来よりも温度分布を均一にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一態様に係る誘導加熱装置の制御装置は、通板されている導体板の板面に交番磁界を交差させてこの導体板を誘導加熱するトランスバース方式の誘導加熱装置の加熱コイルに出力される交流電力を制御する誘導加熱装置の制御装置であって、前記加熱コイルに交流電力を出力する磁気エネルギー回生双方向電流スイッチと;前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚の少なくとも1つに応じた出力周波数を設定する周波数設定装置と;前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチのスイッチ動作を、前記周波数設定装置で設定された出力周波数に基づいて制御するゲート制御装置と;を備える。
(2)上記(1)に記載の誘導加熱装置の制御装置では、前記周波数設定装置が、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚を特定する属性情報を取得し、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚と、周波数とが相互に関連付けて予め登録されたテーブルを参照して、取得した属性情報に対応する周波数を前記出力周波数として選択してもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の誘導加熱装置の制御装置は、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚の少なくとも1つに応じた出力電流値を設定する出力電流設定装置と;前記誘導加熱装置に流れる交流電流を測定する電流測定装置と;直流電力を前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチに供給して前記電流測定装置により測定される交流電流を前記出力電流設定装置により設定された前記出力電流値に調整する電力供給装置と;を更に備え、前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチは、前記電力供給装置により直流電力を供給されて交流電力を前記加熱コイルに出力してもよい。
(4)上記(3)に記載の誘導加熱装置の制御装置では、前記出力電流設定装置が、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚を特定する属性情報を取得し、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚と、電流値とが相互に関連付けて予め登録されたテーブルを参照して、取得した属性情報に対応する電流値を前記出力電流値として選択してもよい。
(5)上記(1)または(2)に記載の誘導加熱装置の制御装置は、前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチと前記誘導加熱装置との間に配置され、前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチから出力された交流電圧を降圧して前記加熱コイルに出力する出力トランスを更に備えてもよい。
(6)上記(1)または(2)に記載の誘導加熱装置の制御装置では、前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチが、前記加熱コイルの一端及び他端と相互に接続される第1、第2の交流端子と;前記電力供給装置の出力端と相互に接続される第1、第2の直流端子と;前記第1の交流端子と前記第1の直流端子との間に配置された第1の逆導通型半導体スイッチと;前記第1の交流端子と前記第2の直流端子との間に配置された第2の逆導通型半導体スイッチと;前記第2の交流端子と前記第2の直流端子との間に配置された第3の逆導通型半導体スイッチと;前記第2の交流端子と前記第1の直流端子との間に配置された第4の逆導通型半導体スイッチと;前記第1、第2の直流端子の間に配置されたコンデンサと;を備え、前記第1の逆導通型半導体スイッチと前記第4の逆導通型半導体スイッチとは、スイッチオフ時の導通方向が相互に逆向きとなるように直列に配置され、前記第2の逆導通型半導体スイッチと前記第3の逆導通型半導体スイッチとは、スイッチオフ時の導通方向が相互に逆向きになるように直列に配置され、前記第1の逆導通型半導体スイッチと前記第3の逆導通型半導体スイッチとでは、スイッチオフ時の導通方向が同じ向きであり、前記第2の逆導通型半導体スイッチと前記第4の逆導通型半導体スイッチとでは、スイッチオフ時の導通方向が同じ向きであり、前記ゲート制御装置が、前記周波数設定装置で設定された前記出力周波数に基づいて、前記第1、第3の逆導通型半導体スイッチのスイッチ動作の時間と、前記第2、第4の逆導通型半導体スイッチのスイッチ動作の時間とを制御してもよい。
(7)本発明の一態様に係る誘導加熱システムは、通板されている導体板の板面に交番磁界を交差させてこの導体板を誘導加熱する誘導加熱システムであって、上記(1)または(2)に記載の誘導加熱装置の制御装置と:前記導体板の板面と対向するように配置された加熱コイルと;前記加熱コイルが巻き回されたコアと;前記導体板の幅方向におけるエッジを含む領域と対向するように配置される透磁率が1の導体である遮蔽板と;を備える。
(8)上記(7)に記載の誘導加熱システムでは、前記遮蔽板は、凹部を有してもよい。
(9)上記(8)に記載の誘導加熱システムでは、前記導体板に流れる渦電流が最大になる領域よりも前記エッジ側に存在する領域と、前記凹部とが相互に対向するように、前記遮蔽板を配置してもよい。
【0006】
(10)本発明の一態様に係る誘導加熱装置の制御方法は、通板されている導体板の板面に交番磁界を交差させてこの導体板を誘導加熱するトランスバース方式の誘導加熱装置の加熱コイルに出力される交流電力を制御する誘導加熱装置の制御方法であって、磁気エネルギー回生双方向電流スイッチにより前記加熱コイルに交流電力を出力し; 前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚の少なくとも1つに応じた出力周波数を設定し; 前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチのスイッチ動作を、設定された前記出力周波数に基づいて制御する。
(11)上記(10)に記載の誘導加熱装置の制御方法では、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚を特定する属性情報を取得し、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚と、周波数とが相互に関連付けて予め登録されたテーブルを参照して、取得した属性情報に対応する周波数を前記出力周波数として選択し、前記出力周波数を設定してもよい。
(12)上記(10)又は(11)に記載の誘導加熱装置の制御方法では、さらに、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚の少なくとも1つに応じた出力電流値を設定し; 前記誘導加熱装置に流れる交流電流を測定し; 測定される交流電流を設定された前記出力電流値に調整するために必要な直流電力を前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチに供給してもよい。
(13)上記(12)に記載の誘導加熱装置の制御方法では、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚を特定する属性情報を取得し、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚と、電流値とが相互に関連付けて予め登録されたテーブルを参照して、取得した属性情報に対応する電流値を前記出力電流値として選択し、前記出力電流値を設定してもよい。
(14)上記(10)又は(11)に記載の誘導加熱装置の制御方法では、前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチから出力された交流電圧を、出力トランスにより降圧して前記加熱コイルに出力してもよい。
(15)上記(10)又は(11)に記載の誘導加熱装置の制御方法では、前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチが、前記加熱コイルの一端及び他端と相互に接続される第1、第2の交流端子と;前記電力供給装置の出力端と相互に接続される第1、第2の直流端子と;前記第1の交流端子と前記第1の直流端子との間に配置された第1の逆導通型半導体スイッチと;前記第1の交流端子と前記第2の直流端子との間に配置された第2の逆導通型半導体スイッチと;前記第2の交流端子と前記第2の直流端子との間に配置された第3の逆導通型半導体スイッチと;前記第2の交流端子と前記第1の直流端子との間に配置された第4の逆導通型半導体スイッチと;前記第1、第2の直流端子の間に配置されたコンデンサと;を備え、前記第1の逆導通型半導体スイッチと前記第4の逆導通型半導体スイッチとは、スイッチオフ時の導通方向が相互に逆向きとなるように直列に配置され、前記第2の逆導通型半導体スイッチと前記第3の逆導通型半導体スイッチとは、スイッチオフ時の導通方向が相互に逆向きになるように直列に配置され、前記第1の逆導通型半導体スイッチと前記第3の逆導通型半導体スイッチとでは、スイッチオフ時の導通方向が同じ向きであり、前記第2の逆導通型半導体スイッチと前記第4の逆導通型半導体スイッチとでは、スイッチオフ時の導通方向が同じ向きであり、設定された前記出力周波数に基づいて、前記第1、第3の逆導通型半導体スイッチのスイッチ動作の時間と、前記第2、第4の逆導通型半導体スイッチのスイッチ動作の時間とを制御して前記加熱コイルに交流電力を出力してもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様に係る誘導加熱装置の制御装置によれば、通板されている導体板の透磁率、抵抗率及び板厚の少なくとも1つに応じた周波数に基づいて、磁気エネルギー回生双方向電流スイッチのスイッチ動作を制御し、この周波数の交流電力を磁気エネルギー回生双方向電流スイッチから出力する。したがって、共振周波数で動作させるといった制約を受けることなく、通板されている導体板の属性に応じた周波数の交流電力を加熱コイルに与えることができる。よって、トランスバース方式の誘導加熱装置を用いて導体板を加熱する際に、導体板の通板速度が変化しても、導体板の板幅方向における温度分布が不均一になることを防止することができる。さらには、操業条件と独立に、通板されている導体板の属性に応じた周波数の交流電力を加熱コイルに与えることができるため、よりシンプルかつ確実に誘導加熱制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態における鋼板の連続焼鈍ラインの概略構成の一例を示す側面図である。
【図2A】本発明の第1の実施形態における誘導加熱装置の構成の一例を示す縦断面図である。
【図2B】本発明の第1の実施形態における誘導加熱装置の構成の一例を示す縦断面図である。
【図2C】本発明の第1の実施形態における誘導加熱装置の構成の一例を示す部分斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における上側加熱コイル及び下側加熱コイルの構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における誘導加熱装置の制御装置の構成の一例を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における、MERSのコンデンサの両端の電圧Vと、誘導加熱装置に流れる電流Iと、半導体スイッチの動作状態との関係の一例を示す図である。
【図6A】本発明の第1の実施形態の制御装置を用いて誘導加熱装置に給電し、帯状鋼板を加熱したときの通板速度に対する周波数及び温度比の関係を示したグラフである。
【図6B】従来の並列共振型のインバータを用いて誘導加熱装置に給電し、帯状鋼板を加熱したときの通板速度に対する周波数及び温度比の関係を示したグラフである。
【図7】本発明の第2の実施形態における誘導加熱装置の制御装置の構成の一例を示す図である。
【図8A】本発明の第3の実施形態における誘導加熱装置の構成の一例を示す縦断面図である。
【図8B】本発明の第3の実施形態における誘導加熱装置の構成の一例を示す縦断面図である。
【図8C】本発明の第3の実施形態における誘導加熱装置の構成の一例を示す部分斜視図である。
【図9A】本発明の第3の実施形態における遮蔽板の構成の一例を示す図である。
【図9B】本発明の第3の実施形態において、帯状鋼板及び遮蔽板に流れる渦電流の一例を示す概略図である。
【図9C】本発明の第3の実施形態において、渦電流により発生する磁場の一例を示す概略図である。
【図10A】本発明の第3の実施形態の遮蔽板を用いた場合における、誘導加熱装置により加熱された導体板の板幅方向における温度分布の一例を示す図である。
【図10B】本発明の第1の実施形態の遮蔽板を用いた場合における、誘導加熱装置により加熱された導体板の板幅方向における温度分布の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下の各実施形態では、トランスバース方式の誘導加熱装置及びその制御装置を、製造ラインにおける鋼板の連続焼鈍ラインに適用した場合を例に挙げて説明する。尚、以下の説明では、「トランスバース方式の誘導加熱装置」を、必要に応じて「誘導加熱装置」と略称する。また、特に指定しない限り、鋼板(帯状鋼板)の属性には、室温(例えば、25℃)における値を使用する。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
<連続焼鈍ラインの概略構成>
図1は、鋼板の連続焼鈍ラインの概略構成の一例を示す側面図である。
図1において、連続焼鈍ライン1は、第1の容器11と、第2の容器12と、第3の容器13と、第1のシールローラ組立体14と、移送器15と、第2のシールローラ組立体16と、気体供給装置17と、ローラ19a〜19uと、誘導加熱装置20と、誘導加熱装置の制御装置100とを備えている。また、この誘導加熱装置20と、誘導加熱装置の制御装置100とにより、誘導加熱システムが構成されている。
【0011】
第1のシールローラ組立体14は、第1の容器11と外気とを遮断しながら帯状鋼板10を第1の容器11内に搬送する。この第1のシールローラ組立体14により第1の容器11内に搬送された帯状鋼板10は、第1の容器11内のローラ19a、19bによって第2の容器12内に搬送される。第2の容器12内に搬送された帯状鋼板10は、第2の容器12の水平部分(搬送される帯状鋼帯10)の上下に配置された誘導加熱装置20によって加熱されながら、ローラ19g、19hによって第1の容器11内に再び搬送される。ここで、誘導加熱装置20(の加熱コイル)は、誘導加熱装置の制御装置100に電気的に接続されており、この誘導加熱装置の制御装置100から誘導加熱装置20に交流電力が供給される。この交流電力により、帯状鋼板10の板面に対して略垂直に交差する交番磁界が発生し、帯状鋼板10が誘導加熱される。尚、誘導加熱装置20の構成の詳細については後述する。また、以下の説明では、「電気的に接続」を必要に応じて「接続」と略称する。
【0012】
第1の容器11内に戻った帯状鋼板10は、ローラ19c〜19fによって、均熱・緩冷ステージを通って移送器15に搬送される。移送器15に搬送された帯状鋼板10は、ローラ19i、19jによって、第3の容器13に搬送される。第3の容器13に搬送された帯状鋼板10は、ローラ19k〜19uによって上下に蛇行しながら搬送され、第3の容器13内で急冷される。
第2のシールローラ組立体16は、このようにして急冷された帯状鋼板10を、第3の容器13と外気とを遮断しながら後工程に送り出す。
以上のような「帯状鋼板10の搬送経路」となる「第1の容器11、第2の容器12、第3の容器13、及び移送器15」には、気体供給装置17によって非酸化性の気体が供給されている。そして、外部(外気)と内部(連続焼鈍ライン1の内部)とを遮断する「第1のシールローラ組立体14及び第2のシールローラ組立体16」によって、第1の容器11、第2の容器12、第3の容器13、及び移送器15は、非酸化性の気体雰囲気に保たれている。
【0013】
<誘導加熱装置20の構成>
図2A〜2Cは、誘導加熱装置の構成の一例を示す図である。
具体的に図2Aは、本実施形態の誘導加熱装置20の一例を、ラインの側方から見た図であって、帯状鋼板10の長手方向に沿って(図1の上下方向に)切った縦断面図である。図2Aでは、左方向に帯状鋼板10が搬送されている(図2Aの右から左に向かう矢印を参照)。また、図2Bは、本実施形態の誘導加熱装置20の一例を図1のA−A’方向から見た縦断面図(すなわち通板方向の下流から見た図)である。図2Bでは、奥から手前の方向に帯状鋼板10が搬送されている。尚、図2A、図2Bには、寸法[mm]も併せて示している。また、図2Cは、本実施形態の誘導加熱装置20の一例の一部を示す部分斜視図である。図2Cでは、図2Bに示した右下の領域(図2Bの破線の囲み領域)を、帯状鋼板10の上方から俯瞰している。但し、この図2Cでは、遮蔽板31と帯状鋼板10との位置関係を理解しやすいように、第2の容器12を省略している。
【0014】
図2A〜2Cにおいて、誘導加熱装置20は、上側誘導器21と、下側誘導器22とを備えている。
上側誘導器21は、コア(磁心)23と、上側加熱コイル24と、遮蔽板31a、31cとを備えている。コア23は、複数枚の電磁鋼板を積み重ねて構成してもよい。
上側加熱コイル24は、コア23のスロット(ここではコア23の凹み部)を通してコア23に巻き回された導体であり、巻数が「1」のコイル(いわゆるシングルターン)である。また、図2Aに示すように、上側加熱コイル24は、その縦断面の形状が中空の長方形である部分を有する。この中空の長方形の中空部分の端面には、水冷パイプが接続されている。この水冷パイプから供給される冷却水が中空の長方形の中空部分(上側加熱コイル24の内部)に流れ、上側誘導器21が冷却される。また、コア23の底面(スロット側)には、遮蔽板31a、31cが取り付けられている。
【0015】
下側誘導器22も、上側誘導器21と同様に、コア(磁心)27と、下側加熱コイル28と、遮蔽板31b、31dとを備えている。
下側加熱コイル28も、上側加熱コイル24と同様に、コア27のスロットを通してコア27に巻き回された導体であり、巻数が「1」のコイル(いわゆるシングルターン)である。更に、下側加熱コイル28は、上側加熱コイル24と同様に、その縦断面の形状が中空の長方形である部分を有している。この中空の長方形の中空部分の端面には、水冷パイプが接続され、中空の長方形の中空部分に冷却水を流すことができる。また、コア27の上面(スロット側)には、遮蔽板31b、31dが取り付けられている。
【0016】
また、上側誘導器21の上側加熱コイル24のコイル面(ループが形成されている面、磁力線が貫く面)と、下側誘導器22の下側加熱コイル28のコイル面とが、帯状鋼板10を介して対向している。さらに、遮蔽板31a〜31dの板面が、帯状鋼板10の板幅方向における端部(エッジ)と対向している。このような位置関係を満足するように、上側誘導器21は、帯状鋼板10よりも上側(第2の容器12の水平部分の上面付近)に設けられ、下側誘導器22は、帯状鋼板10よりも下側(第2の容器12の水平部分の下面付近)に設けられている。本実施形態では、遮蔽板31a〜31dは、平らな表面を有する銅板である(図2Cを参照)。遮蔽板31a〜31dは、上側加熱コイル24と帯状鋼板10との電磁結合度及び下側加熱コイル28と帯状鋼板10との電磁結合度を弱め、帯状鋼板10のエッジ付近の過加熱を防止する。
以上のように、上側誘導器21と、下側誘導器22とは、配置する位置が異なるが、同じ構成を有する。なお、この構成では、加熱コイルから発生する交番磁界が導体板10の全幅にわたって交差するため、導体板10の全幅を加熱することができる。
【0017】
図3は、上側加熱コイル24及び下側加熱コイル28の構成の一例を示す図である。尚、図3に示す矢印は、電流の流れる方向の一例を示している。
図3に示すように、上側加熱コイル24は、銅パイプ41a、41bと、銅パイプ41a、41bの基端側に接続されている銅ブスバー(結線板)42bとを備えている。また、下側加熱コイル28は、銅パイプ41c、41dと、銅パイプ41c、41dの基端側に接続されている銅ブスバー42fとを備えている。
【0018】
上側加熱コイル24の一端(銅パイプ41aの先端側)には、銅ブスバー42aを介して誘導加熱装置の制御装置100の一方の出力端が接続されている。一方、上側加熱コイル24の他端(銅パイプ41bの先端側)には、銅ブスバー42c〜42eを介して下側加熱コイル28の一端(銅パイプ41cの先端側)が接続されている。また、下側加熱コイル28の他端(銅パイプ41dの先端側)には、銅ブスバー42i、42h、42gを介して誘導加熱装置の制御装置100の他方の出力端が接続されている。
以上のように、上側加熱コイル24及び下側加熱コイル28は、銅パイプ41a〜41dと、銅ブスバー42a〜42iとを組み合わせることによって、誘導加熱装置の制御装置100に対して直列に接続され、夫々巻数が「1」のコイルを形成している。ここで、上側加熱コイル24に流れる電流のループの方向(図3では、時計回り)は、下側加熱コイル28に流れる電流のループの方向と同じである。
【0019】
尚、後述するように誘導加熱装置の制御装置100は、誘導加熱装置20の上側加熱コイル24及び下側加熱コイル28に交流電力を供給する。そのため、図3では、誘導加熱装置の制御装置100を交流電源として示している。
また、ここでは、上側加熱コイル24及び下側加熱コイル28の構成を分かり易く示すため、銅パイプ41a〜41dと、銅ブスバー42a〜42iとを図3に示すように接続している。しかしながら、上側加熱コイル24、下側加熱コイル28をそれぞれコア23、27に巻き回す際には、銅パイプ41a〜41dを、コア23、27のスロットに通す(取り付ける)必要がある。したがって、実際には、銅ブスバー42a〜42gは、銅パイプ41a〜41dがコア23、27に取り付けられる部分を避けて銅パイプ41a〜41dに取り付けられる。
【0020】
<誘導加熱装置の制御装置100の構成>
図4は、誘導加熱装置の制御装置100の構成の一例を示す図である。尚、以下の説明では、「誘導加熱装置の制御装置」を必要に応じて「制御装置」と略称する。
図4において、制御装置100は、交流電源160と、整流装置110と、リアクトル120と、磁気エネルギー回生双方向電流スイッチ(MERS;Magnetic Energy Recovery Switch)130と、ゲート制御装置140と、出力電流設定装置150と、カレントトランス170と、周波数設定装置180とを備えている。ここで、カレントトランス170は、誘導加熱装置に流れる交流電流値を測定する電流測定装置として使用している。尚、以下の説明では、「磁気エネルギー回生双方向電流スイッチ」を必要に応じて「MERS」と称する。
図4において、整流回路110の入力端には交流電源160が接続される。整流回路110の出力側の一端にはリアクトル120の一端が接続され、他端にはMERS130の直流端子cが接続される。リアクトル120の他端は、MERS130の直流端子bに接続される。整流回路110は、交流電源160から供給される交流電力を整流し、リアクトル120を介してMERS130に直流電力を印加する。整流回路110は、例えばサイリスタを用いて構成される。このように本実施形態では、例えば、交流電源160と整流回路110とを用いることにより電力供給装置が実現される。この電力供給装置は、図4において、MERS130の直流端子b、cに後述の直流電力を供給する装置である。そのため、電流制御機能を有する電池のような直流電源を電力供給装置に使用しても良い。
【0021】
[MERS130の構成]
以下に、MERS130の構成の一例を説明する。
MERS130は、整流回路110からリアクトル120を介して入力した直流電力を後述の方法によって交流電力に変換し、この交流電力を誘導加熱装置20に出力する。
図4において、MERS130は、第1〜第4の逆導通型半導体スイッチ131〜134を用いて構成されたブリッジ回路と、極性を有するコンデンサCとを備えている。このコンデンサCは、ブリッジ回路の直流端子b、cの間に接続され、コンデンサCの正極(+)が直流端子bに接続されている。
直流端子bにはリアクトル120の他端が接続され、直流端子cには整流回路110の出力側の他端が接続される。また、交流端子a、dには、それぞれ誘導加熱装置20の一端(銅ブスバー42a)、他端(銅ブスバー42g)が接続される(図3を参照)。
【0022】
MERS130のブリッジ回路は、交流端子aから直流端子bを経由して交流端子dまで到達する第1の経路L1と、交流端子aから直流端子cを経由して交流端子dまで到達する第2の経路L2とを含む。交流端子dと直流端子bとの間には第1の逆導通型半導体スイッチ131が配置され、直流端子bと交流端子aとの間には第4の逆導通型半導体スイッチ134が配置される。また、交流端子dと直流端子cとの間には第2の逆導通型半導体スイッチ132が配置され、直流端子cと交流端子aとの間には第3の逆導通型半導体スイッチ133が配置される。このように、第1、第2の逆導通型半導体スイッチ131、132は、互いに並列に接続され、第3、第4の逆導通型半導体スイッチ133、134は、互いに並列に接続される。また、第1、第4の逆導通型半導体スイッチ131、134は、互いに直列に接続され、第2、第3の逆導通型半導体スイッチ132、133は、互いに直列に接続される。
【0023】
第1〜第4の逆導通型半導体スイッチ131〜134のそれぞれは、ゲート端子にオン信号が入力されていないスイッチオフ時には、電流を一方向にのみ導通させ、ゲート端子にオン信号が入力されたスイッチオン時には、電流を両方向に導通させることができる。すなわち、逆導通半導体スイッチ131〜134は、スイッチオフ時には、ソース端子及びドレイン端子間の一方向にのみ電流を導通させるが、スイッチオン時には、ソース端子及びドレイン端子間の両方向に電流を導通させることができる。尚、以下の説明では、「各逆導通型半導体スイッチ131〜134がスイッチオフ時に電流を流せる方向」を、必要に応じて「スイッチ順方向」と称する。また、「各逆導通型半導体スイッチ131〜134がスイッチオフ時に電流を流せない方向」を、必要に応じて「スイッチ逆方向」と称する。さらに、以下の説明では、「スイッチ順方向及びスイッチ逆方向のブリッジ回路に対する接続方向」を、必要に応じて「スイッチの極性」と称する。
【0024】
また、各逆導通型半導体スイッチ131〜134は、それぞれ以下のようなスイッチの極性を満たすように配置される。互いに並列に接続された第1の逆導通型半導体スイッチ131と第2の逆導通型半導体スイッチ132とは、互いに逆方向のスイッチ極性を有する。同様に、互いに並列に接続された第3の逆導通型半導体スイッチ133と第4の逆導通型半導体スイッチ134とは、互いに逆方向のスイッチ極性を有する。また、互いに直列に接続された第1の逆導通型半導体スイッチ131と第4の逆導通型半導体スイッチ134とは、互いに逆方向のスイッチ極性を有する。同様に、互いに直列に接続された第2の逆導通型半導体スイッチ132と第3の逆導通型半導体スイッチ133とは、互いに逆方向のスイッチ極性を有する。よって、第1の逆導通型半導体スイッチ131と第3の逆導通型半導体スイッチ133とは、互いに順方向のスイッチ極性を有する。同様に、第2の逆導通型半導体スイッチ132と第4の逆導通型半導体スイッチ134とは、互いに順方向のスイッチ極性を有する。また、第1、第3の逆導通型半導体スイッチ131、133のスイッチ極性は、第2、第4の逆導通型半導体スイッチ132、134のスイッチ極性と逆方向である。
【0025】
尚、図4に示すスイッチ極性は、第1、第3の逆導通型半導体スイッチ131、133と、第2、第4の逆導通型半導体スイッチ132、134との間で、反対であってもよい。
また、第1〜第4の逆導通型半導体スイッチ131〜134には、様々な構成が考えられるが、本実施形態では、第1〜第4の逆導通型半導体スイッチ131〜134は、半導体スイッチS1〜S4とダイオードD1〜D4との並列接続によって構成されている。すなわち、第1〜第4の逆導通型半導体スイッチ131〜134のそれぞれは、1つのダイオード(対応するダイオードD1〜D4)と、このダイオードに並列に接続された1つの半導体スイッチ(対応する半導体スイッチS1〜S4)とを備えている。
また、半導体スイッチS1〜S4のそれぞれのゲート端子G1〜G4は、それぞれゲート制御装置140と接続される。このゲート端子G1〜G4には、MERS130への制御信号として、ゲート制御装置140から半導体スイッチS1〜S4をオンするオン信号が入力される。オン信号が入力される場合、半導体スイッチS1〜S4は、オン状態になり、両方向に電流を導通させることができる。しかしながら、オン信号が入力されない場合、半導体スイッチS1〜S4は、オフ状態になり、電流をどちらの方向にも導通させることができない。よって、半導体スイッチS1〜S4がオフである時には、半導体スイッチS1〜S4に並列に接続されたダイオードD1〜D4の導通方向(順方向)にのみ、電流を導通させることができる。
【0026】
また、MERS130に含まれる逆導通型半導体スイッチは、第1〜第4の逆導通型半導体スイッチ131〜134に限定されない。すなわち、逆導通型半導体スイッチは、前述した動作を示す構成であればよい。例えば、逆導通型半導体スイッチは、パワーMOS FET、逆導通型GTOサイリスタ等のスイッチング素子を用いた構成であってもよく、IGBT等の半導体スイッチとダイオードとの並列接続した構成であってもよい。
また、以下に、第1〜第4の逆導通型半導体スイッチ131〜134のスイッチ極性を、ダイオードD1〜D4の極性に置き換えて説明する。スイッチ順方向(スイッチオフ時に導通する方向)は、各ダイオードD1〜D4の導通方向(順方向)であり、スイッチ逆方向(スイッチオフ時に導通しない方向)は、各ダイオードD1〜D4の非導通方向(逆方向)である。また、並列に接続されたダイオード同士(D1とD2又はD3とD4)の導通方向は、相互に逆方向であり、直列に接続されたダイオード同士(D1とD4又はD2とD3)の導通方向も、相互に逆方向である。また、ダイオードD1、D3の導通方向は、相互に順方向であり、同様にダイオードD2、D4の導通方向も相互に順方向である。よって、ダイオードD1、D3と、ダイオードD2、D4との導通方向は、相互に逆方向である。なお、半導体スイッチS1〜S4及びダイオードD1〜D4の導通方向は、誘導加熱装置20に流れる電流の方向を基準にしている。
【0027】
[MERS130の動作]
図5は、MERS130のコンデンサCの両端の電圧Vと、誘導加熱装置20に流れる電流Iと、半導体スイッチS1〜S4の動作状態との関係の一例を示す図である。
図5において、「S1・S3ゲート」と表記されている側に波形が立ち上がっている期間では、スイッチS1、S3がオン状態、半導体スイッチS2、S4がオフ状態である。また、「S2・S4ゲート」と表記されている側に波形が立ち上がっている期間では、半導体スイッチS2、S4がオン状態、スイッチS1、S3がオフ状態である。「S1・S3ゲート」側、「S2・S4ゲート」側の何れにも波形が立ち上がっていない期間では、何れの半導体スイッチS1〜S4もオフ状態である。このように、半導体スイッチS1がオン(オフ)すると、半導体スイッチS3がオン(オフ)し、半導体スイッチS1、S3が連動して動作する。同様に、半導体スイッチS2がオン(オフ)すると、半導体スイッチS4がオン(オフ)し、半導体スイッチS2,S4が連動して動作する。以下では、図5と図4とを参照しながら、MERS130の動作の一例を説明する。
【0028】
図5に示すように、期間Aの最初の部分は、スイッチ動作に伴うデッドタイムであり、このデッドタイムでは、半導体スイッチS1、S3も半導体スイッチS2、S4もオフしている。このデッドタイムでは、ダイオードD4→コンデンサC→ダイオードD2の経路で電流が流れ、コンデンサCの充電が開始される。その結果、コンデンサCの両端の電圧Vが上昇し、誘導加熱装置20に流れる電流I(絶対値)が減少する。コンデンサCの充電が完了する前に半導体スイッチS2、S4がオンされると(半導体スイッチS1、S3はオフのまま)、半導体スイッチS4及びダイオードD4→コンデンサC→半導体スイッチS2及びダイオードD2の経路で電流が流れ、コンデンサCが充電される(期間A)。すなわち、この期間Aでは、コンデンサCの両端の電圧Vが上昇し、誘導加熱装置20に流れる電流I(絶対値)が減少する。
コンデンサCの充電が完了すると、誘導加熱装置20に流れる電流Iは0となる。コンデンサCの充電が完了するまでに半導体スイッチS2、S4がオンされ、その後コンデンサCの充電が完了すると、コンデンサCに充電されたエネルギー(電荷)が半導体スイッチS4、S2を通して出力される(放電される)。その結果、半導体スイッチS4→誘導加熱装置20→半導体スイッチS2の経路で電流Iが流れる(期間B)。すなわち、この期間Bでは、コンデンサCの両端の電圧Vが低下し、誘導加熱装置20に流れる電流I(絶対値)が増加する。
【0029】
コンデンサCの放電が完了すると、コンデンサCの両端の電圧Vは0となり、ダイオードD1、D3には逆電圧が印加されない。そのため、これらのダイオードD1、D3が導通して、半導体スイッチS4→誘導加熱装置20→ダイオードD1の経路と、ダイオードD3→誘導加熱装置20→半導体スイッチS2の経路とを並列に電流Iが流れる(期間C)。この電流Iは、誘導加熱装置20とMERS130との間を還流している。そのため、期間Cでは、電流Iの絶対値は、上側加熱コイル24、下側加熱コイル28、及び被加熱材である帯状鋼板10のインピーダンスから決まる時定数に従って減衰する。
その後、デッドタイムにおいて、半導体スイッチS1、S3も半導体スイッチS2、S4もオフとなる。このデッドタイムでは、ダイオードD1→コンデンサC→ダイオードD3の経路で電流が流れ、コンデンサCの充電が開始される(期間D)。その結果、コンデンサCの両端の電圧Vが上昇し、誘導加熱装置20に流れる電流I(絶対値)が減少する。コンデンサCの充電が完了する前に半導体スイッチS1、S3がオンされると(半導体スイッチS2、S4はオフのまま)、半導体スイッチS1及びダイオードD1→コンデンサC→半導体スイッチS3及びダイオードD3の経路で電流が流れ、コンデンサCが充電される(期間D)。すなわち、この期間Dでは、コンデンサCの両端の電圧Vが上昇し、誘導加熱装置20に流れる電流I(絶対値)が減少する。
【0030】
コンデンサCの充電が完了すると、誘導加熱装置20に流れる電流Iは0となる。コンデンサCの充電が完了するまでに半導体スイッチS1、S3がオンされ、その後コンデンサCの充電が完了すると、コンデンサCに充電されたエネルギー(電荷)が半導体スイッチS1、S3を通して出力される(放電される)。その結果、半導体スイッチS1→誘導加熱装置20→半導体スイッチS3の経路で電流Iが流れ出す(期間E)。すなわち、この期間Eでは、コンデンサCの両端の電圧Vが低下し、誘導加熱装置20に流れる電流I(絶対値)が増加する。
コンデンサCの放電が完了すると、コンデンサCの両端の電圧Vは0となり、ダイオードD2、D4には逆電圧が印加されない。そのため、これらのダイオードD2、D4が導通して、半導体スイッチS1→誘導加熱装置20→ダイオードD4の経路と、ダイオードD2→誘導加熱装置20→半導体スイッチS3の経路とを並列に電流Iが流れる(期間F)。この電流Iは、誘導加熱装置20とMERS130との間を還流している。そのため、期間Fでは、電流Iの絶対値は、上側加熱コイル24、下側加熱コイル28、及び被加熱材である帯状鋼板10のインピーダンスから決まる時定数に従って減衰する。その後、期間Aの動作に戻り、期間A〜Fの動作を繰り返し行う。
【0031】
以上のように、半導体スイッチS1〜S4(S1及びS3、S2及びS4)の各々のゲート端子G1〜G4(G1及びG2、G3及びG4)のオン及びオフ(スイッチ動作)のタイミング(時間)を調整することで、誘導加熱装置20(上側加熱コイル24及び下側加熱コイル28)に所望の周波数の電流を流すことが可能になり、周波数制御型の誘導加熱が実現できる。すなわち、半導体スイッチS1〜S4の導通タイミングを調整するゲート制御装置140により、負荷である誘導加熱装置20に流れる電流Iの周波数を任意の値に制御することができる。また、コンデンサCの容量Cを以下の(1)式に従って定めることにより、コンデンサCの両端の電圧Vが0の期間を調節することが可能である。
=1/[(2×π×f×L] ・・・(1)
ここで、Cは、コンデンサCの容量(F)であり、Lは、誘導加熱装置20を含む負荷のインダクタンス(H)である。また、fは、以下の(2)式で表されるコンデンサCに対する見掛けの周波数(Hz)である。
=1/(2×t+1/f) ・・・(2)
tは、コンデンサCの両端の電圧Vが0の期間(sec)であり、fは、コンデンサCの両端の電圧Vが0である期間が存在しない場合の電圧V及び電流Iの周波数(Hz)である。(2)式においてtが0である場合のf(すなわちf)を(1)式に代入して得られるコンデンサ容量Cを有するコンデンサCを選定すると、コンデンサCの両端の電圧Vが0である期間が存在しなくなる。
【0032】
[周波数設定装置180の構成]
図4の説明に戻り、周波数設定装置180の構成の一例について説明する。周波数設定装置180は、誘導加熱装置20に供給する交流電力の周波数(出力周波数)を設定する装置である。その機能を実現するために、この周波数設定装置180は、加熱対象情報取得部181と、周波数設定テーブル182と、周波数選択部183とを備えている。
加熱対象情報取得部181は、加熱対象となる帯状鋼板10の属性情報を取得する。例えば、加熱対象情報取得部181は、入力装置である外部のコンピュータからネットワーク経由で属性情報を取得(受信)したり、制御装置100が備えるユーザインターフェース(入力装置の一つ)に対してユーザが入力した情報に基づいて属性情報を取得(入力)したりすることができる。ここで、帯状鋼板10の属性情報は、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率及び板厚を特定することができる情報である。例えば、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率及び板厚そのものを属性情報としたり、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率及び板厚が仕様により定まっている場合には、その仕様を有する帯状鋼板10の名称(商品名等)を属性情報としたりすることができる。
【0033】
周波数選択部183は、加熱対象情報取得部181により取得された属性情報をキーとして使用し、周波数設定テーブル182に登録されている周波数を1つ選択する。周波数設定テーブル182には、予め属性情報と周波数とが相互に関連付けられて登録されている。
周波数選択部183で選択された周波数(出力周波数)の情報は、ゲート制御装置140に送られる。ゲート制御装置140は、この選択された周波数の交流電力が発生するように、MERS130の各半導体スイッチS1〜S4のゲート端子G1〜G4のオン及びオフ(スイッチ動作)のタイミングを決定し、オンすべき半導体スイッチのゲート端子にオン信号を出力する。このようにしてMERS130は、周波数設定装置180によってゲート制御装置140に設定された周波数(出力周波数)の交流電力を前述したようにして誘導加熱装置20に出力する。
【0034】
以上のように本実施形態では、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率及び板厚に応じて誘導加熱装置20に供給する交流電力の周波数(出力周波数)を自動的に決定している。これは、本発明者らが、各種の実験を行った結果、帯状鋼板10の温度分布(特にエッジ付近の温度)は、誘導加熱装置20に供給する交流電力の周波数と、被加熱材である帯状鋼板10の属性情報(透磁率、抵抗率及び板厚)と、ギャップ(上側加熱コイル24と下側加熱コイル28との間隔)との影響を受けることを見出したことに基づいている。
以下に、このような現象が生じる理由について説明する。
まず、帯状鋼板10の温度がキュリー温度以上である場合について説明する。
帯状鋼板10がキュリー温度以上であると、誘導加熱装置20から発生した主磁場が帯状鋼板10を貫通し、帯状鋼板10内(板厚に垂直な面内)の渦電流が多くなる。この渦電流は、主磁場と反発して帯状鋼板10のエッジ付近に片寄り易くなる。このため、帯状鋼板10のエッジ付近に高温の領域が生じ易い。
【0035】
ここで、帯状鋼板10内の渦電流は、帯状鋼板10の断面積(板厚方向を含む断面積)と比例関係にあるので、帯状鋼板10の板厚が厚い場合には、帯状鋼板10の断面積が大きくなり、帯状鋼板10内の渦電流が多くなる。
また、帯状鋼板10の渦電流は、帯状鋼板10の抵抗率と反比例の関係にあるので、帯状鋼板10の抵抗率が小さい場合には、帯状鋼板10内の渦電流が多くなる。
また、誘導加熱装置20に供給する交流電力の周波数は、誘導加熱装置20から発生した主磁場によって帯状鋼板10内に発生する誘導起電力と比例関係にある。帯状鋼板10の渦電流は、この誘導起電力と比例関係にあるので、誘導加熱装置20に供給する交流電力の周波数が高い場合には、帯状鋼板10内の渦電流が多くなる。
また、ギャップが小さい場合には、誘導加熱装置20から発生した主磁場が大きくなり、この主磁場によって帯状鋼板10内に発生する誘導起電力が大きくなるので、帯状鋼板10内の渦電流が多くなる。
【0036】
次に、帯状鋼板10の温度がキュリー温度未満である場合について説明する。
帯状鋼板10の温度がキュリー温度未満である場合には、帯状鋼板10の比透磁率が大きいため、誘導加熱装置20から発生した主磁場は、帯状鋼板10を貫通しにくく、帯状鋼板10のエッジ部分を迂回する。その結果、帯状鋼板10のエッジ付近では、渦電流の電流密度が大きくなり、帯状鋼板10のエッジ付近に高温の領域が生じる。
以上のように、帯状鋼板10の温度に影響を与える因子(誘導加熱装置20に供給する交流電力の周波数、加熱対象の帯状鋼板10の透磁率と抵抗率と板厚、ギャップ)は、相互に独立した因子である。これらの因子のうち、帯状鋼板10の透磁率と抵抗率と板厚及びギャップは、操業条件(加熱対象となる材料及び設備のハードウェア的な制約)によって決定される。そこで、本実施形態では、これらの因子のうち、オンラインで制御することができる“誘導加熱装置20に供給する交流電力の周波数(出力周波数)”を、周波数設定装置180を用いて変更することにより、帯状鋼板10の温度を調整している。
尚、本実施形態のように、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率、板厚の全てと周波数とを相互に対応付けて周波数設定テーブル182に登録すれば、帯状鋼板10の板幅方向における温度分布を、より均一に調節することができる。そのため、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率、板厚の全てと周波数とを相互に対応付けることが好ましい。しかしながら、必ずしも、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率、板厚の全てと周波数とを相互に対応付ける必要はなく、周波数設定装置180内で帯状鋼板10の透磁率、抵抗率、板厚の少なくとも1つと周波数とを相互に対応付ければよい。また、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率、板厚の少なくとも何れか1つ及びギャップと、周波数とを相互に対応付けてもよい。
【0037】
[出力電流設定装置150の構成]
出力電流設定装置150は、誘導加熱装置20に供給する交流電流Iの大きさ(出力電流値)を設定する装置である。その機能を実現するために、この出力電流設定装置150は、加熱対象情報取得部151と、出力電流設定テーブル152と、出力電流選択部153とを備えている。
加熱対象情報取得部151は、加熱対象情報取得部181と同様に、加熱対象となる帯状鋼板10の属性情報を取得する。
出力電流選択部153は、加熱対象情報取得部151により取得された属性情報をキーとして使用し、出力電流設定テーブル152に登録されている電流値を1つ選択する。出力電流設定テーブル152には、予め属性情報と電流値とが相互に関連付けられて登録されている。そして、出力電流選択部153で選択された電流値(出力電流値)と、カレントトランス170で測定された電流値との差分に応じて、整流装置110のゲート角度が設定される。整流装置110としてサイリスタ整流装置を採用する場合には、サイリスタのゲート点弧角度が設定される。このように、誘導加熱装置20に流れる電流値をフィードバックして整流装置110のゲート角度(ゲート点弧角度)を制御するので、誘導加熱装置20に流れる電流値を、出力電流選択部153で選択された電流値(出力電流値)で一定に制御することができる。したがって、電力供給装置(交流電源160及び整流装置110)は、直流電力をMERS130に供給して、カレントトランス170により測定される交流電流を出力電流設定装置により設定された電流値(出力電流値)に調整することができる。
以上のように本実施形態では、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率及び板厚に応じて誘導加熱装置20に供給する交流電力の電流値(出力電流値)を自動的に決定している。これは、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率及び板厚により、目標温度に対応する電流値を定めることができるからである。
尚、本実施形態のように、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率、板厚の全てと電流値とを相互に対応付けて出力電流設定テーブル152に登録すれば、帯状鋼板10の板幅方向における温度分布及び板幅方向の平均温度を、より適切に設定することができる。そのため、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率、板厚の全てと電流値とを相互に対応付けることが好ましい。しかしながら、必ずしも、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率、板厚の全てと電流値とを相互に対応付ける必要はなく、出力電流設定装置150内で帯状鋼板10の透磁率、抵抗率、板厚の少なくとも1つと電流値とを相互に対応付ければよい。また、帯状鋼板10の透磁率、抵抗率、板厚の少なくとも何れか1つ及びギャップと、電流値とを相互に対応付けてもよい。
【0038】
<本実施形態の効果>
図6Aは、本実施形態の制御装置100を用いて誘導加熱装置20に給電し、帯状鋼板10を加熱したときの通板速度に対する周波数及び温度比の関係を示したグラフである。また、図6Bは、従来の並列共振型のインバータを用いて誘導加熱装置20に給電し、帯状鋼板10を加熱したときの通板速度に対する周波数及び温度比の関係を示したグラフである。ここで、温度比(エッジ/中央温度比)は、帯状鋼板10の板幅方向における端部(エッジ)の温度を、帯状鋼板10の板幅方向における中央部の温度で除算した値である。この温度比の値が1に近いほど、帯状鋼板10の板幅方向における温度分布が均一である。また、周波数は、誘導加熱装置20に与えられる電流の周波数である。また、帯状鋼板10の仕様は、以下の通りである。
<帯状鋼板の仕様>
・材質:ステンレス鋼板 ・厚み:0.3mm ・幅 :500mm
図6Aに示すように、本実施形態の制御装置100を用いれば、通板速度が変更された場合であっても、誘導加熱装置20に与えられる電流の周波数を常に略一定に保つことができ、結果として温度比を一定に制御することが可能である。
一方、通板速度が変更されると、負荷のインピーダンスが変化するため、従来の並列共振型のインバータを用いた場合、電圧源のインバータは、負荷の共振条件を維持するように、インバータの出力周波数を制御する。よって、図6Bに示すように、負荷のインピーダンスの変化に応じてインバータの出力周波数が変動し、結果として温度比が大きく変動し、温度比を一定に制御することが不可能である。
【0039】
以上のように本実施形態では、帯状鋼板10の属性(属性情報)に応じた周波数(出力周波数)の電流Iを、MERS130を用いて誘導加熱装置20に供給する。したがって、本実施形態の制御装置は、従来のように共振周波数で動作させるという制約を受けないので、帯状鋼板10の通板速度が変更された場合であっても、誘導加熱装置20に供給する電流Iの周波数を帯状鋼板10の属性に応じた所望の値に設定することができる。よって、トランスバース方式の誘導加熱装置を用いて導体板を加熱する際に、導体板の通板速度が変化しても、導体板の板幅方向における温度分布が不均一になることを防止することができる。また、被加熱材である帯状鋼板10に適した(特に、板幅方向の温度分布を可及的に均一にするための)周波数の電流Iを誘導加熱装置20に設定することができる。
また、本実施形態では、整流装置110のゲート角度を、帯状鋼板10の属性に応じて変更することにより、帯状鋼板10の属性に応じた大きさの電流Iを誘導加熱装置20に供給している。したがって、被加熱材である帯状鋼板10に適した大きさの電流Iを誘導加熱装置20に流すことができる。さらには、周波数を一定に制御できるため、帯状鋼板10の各位置における温度の時間的変化を実測することなく、導体板の板幅方向における温度分布を均一に制御できる。
加えて、制御装置100と、遮蔽板31a〜31dを有する誘導加熱装置20とを備える誘導加熱システムでは、通板速度が変化した場合であっても、交流電力の周波数が変化しないため、帯状鋼板10のエッジ部分に生じる渦電流の変化(時間的変化)を考慮する必要がない。そのため、誘導加熱システムに制御装置100を使用すると、操業条件が変動した場合であっても、遮蔽板31a〜31dによりエッジ付近の加熱量を適切に制御できる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。前述した第1の実施形態では、MERS130から誘導加熱装置20に交流電流Iを直接流している。これに対し、本実施形態では、MERS130から変圧器を介して誘導加熱装置20に交流電流Iを流している。このように本実施形態の構成には、前述した第1の実施形態の構成に対し、変圧器を追加している。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1の実施形態と同一の部分については、図1〜図6Bに付した符号と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
図7は、誘導加熱装置の制御装置200の構成の一例を示す図である。
図7に示すように、本実施形態の制御装置200は、図4に示した第1の実施形態の制御装置100に対し、出力変圧器(出力トランス)210が追加されている。
出力変圧器210の一次側(入力側)の端子は、MERS130の交流端子a、dに接続される。出力変圧器210の二次側(出力側)の端子は、誘導加熱装置20(銅ブスバー42a、42g)に接続される。出力変圧器210の変圧比(入力:出力)は、N:1(N>1)である。
以上のように本実施形態では、MERS130と誘導加熱装置20との間に、変圧比がN:1(N>1)の出力変圧器210を配置しているので、誘導加熱装置20には、MERS130に流れる電流の約N倍の電流を流すことができる。したがって、本実施形態では、MERS130を構成する「半導体スイッチS1〜S4及びダイオードD1〜D4」に大電流を流すことなく、誘導加熱装置20に大電流を流すことができる。
尚、出力変圧器210の変圧比が変えられるように、出力変圧器210の一次側又は二次側に複数のタップを設け、被加熱材である帯状鋼板10に応じて、使用するタップを使い分けてもよい。
【0042】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。前述した第1、第2の実施形態では、誘導加熱装置20に設けられる遮蔽板31a〜31dとして平らな板を使用している。これに対し、本実施形態では、誘導加熱装置20に設けられる遮蔽板に凹部を設けている。このように本実施形態と前述した第1、第2の実施形態とでは、遮蔽板の構成の一部が異なる。したがって、本実施形態の説明において、前述した第1、第2の実施形態と同一の部分については、図1〜図7に付した符号と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
図8A〜8Cは、誘導加熱装置の構成の一例を示す図である。図8A、図8B、図8Cは、それぞれ図2A、図2B、図2Cに対応している。遮蔽板301a〜301dは、それぞれ図2A〜2Cに示した遮蔽板31a〜31dの代わりに用いられている。また、遮蔽板301a〜301dは、後述する凹部を帯状鋼板10側(第二の容器12内)に向けて図8Bに示す位置に配置されている。また、誘導加熱装置は、上側誘導器201と下側誘導器202とを備えている。なお、遮蔽板の構成を除き、上側誘導器201、下側誘導器202は、それぞれ図2A〜2Cに示した上側誘導器21、下側誘導器22と同じである。
【0044】
また、図9A〜9Cは、遮蔽板301(遮蔽板301a〜301d)の構成の一例を示す図である。具体的に図9Aは、遮蔽板301をその上方から俯瞰した斜視図である。また、図9Bは、図8Cに示した遮蔽板301dの領域を帯状鋼板10の真上から俯瞰した図である。尚、図9Bでは、帯状鋼板10と遮蔽板301dとの位置関係を説明するために必要な部分のみを示している。また、図9Cは、遮蔽板301a、301bと帯状鋼板10との間で生じる磁界の一例を示す概略図である。但し、この図9B及び図9Cでは、遮蔽板301a〜301dの効果を理解しやすいように、第2の容器12を省略している。
【0045】
図9Aに示すように、遮蔽板301は、主遮蔽板50aと、背面板50bとを備えている。
主遮蔽板50aの幅及び長さは、背面板50bの幅及び長さと同じである。ただし、背面板50bは、縦断面及び横断面が一様な銅板であるのに対し、主遮蔽板50aは、その長手方向に菱形の孔が2つ形成された銅板である。遮蔽板301は、このような主遮蔽板50aと背面板50bとを密着させることにより形成され、長手方向に菱形の2つの凹部(非貫通穴)51、52を有している。尚、図9Aには、凹部51、52を配置する位置に関する寸法[mm]も併せて示している。
【0046】
このような遮蔽板301は、図9B及び図9Cに示すように、凹部51、52を有する面が帯状鋼板10の方を向くようにコア23の底面(スロット側)とコア27の上面(スロット側)とに取り付けられる。
本実施形態では、図9Bに示すように、帯状鋼板10のエッジ10a付近で、遮蔽板301(301d)の凹部51、52と帯状鋼板10の板面とを対向させている。具体的には、誘導加熱装置を動作させることによって帯状鋼板10に流れる渦電流が最大になる領域である最大電流通過領域56と帯状鋼板10のエッジ10aとの間の領域を含み、かつ最大電流通過領域56よりもエッジ10a側に存在する領域と、遮蔽板301の凹部51、52とが相互に対向している。
特に、本実施形態では、遮蔽板301(301d)の凹部51、52の内側の縁51a、52aを、最大電流通過領域56よりもエッジ10a側に配置すると共に、凹部51、52の外側の縁51b、52bを、帯状鋼板10のエッジ10a近傍に流れる渦電流の通過領域であるエッジ電流通過領域57よりもエッジ10a側に配置している。ここで、内側の縁51a、52aは、凹部51、52の縁のうち、帯状鋼板10の幅方向における中心部に最も近く、かつ対応する凹部52、51(または、遮蔽板301dの通板方向における中心部)に最も近い縁である。また、外側の縁51b、52bは、凹部51、52の縁のうち、帯状鋼板10の幅方向における中心部から最も遠く、かつ対応する凹部52、51(または、遮蔽板301dの通板方向における中心部)から最も遠い縁である。
【0047】
本実施形態では、以上のように配置した遮蔽板301によって、帯状鋼板10のエッジ10a付近の温度の低下を抑制している。以下に、遮蔽板301によって帯状鋼板10のエッジ10a付近の温度の低下を抑制するメカニズムを説明する。
図9Cに示すように、誘導加熱装置を動作させることによって主磁場58a〜58cが発生し、帯状鋼板10のエッジ側に渦電流60a〜60eが流れる。そして、この渦電流60a〜60eにより磁場59iが発生する。また、図9A〜図9Cに示すように、遮蔽板301(301a、301b)には、渦電流53〜55が流れる。渦電流53は、遮蔽板301(主遮蔽板50a)の四辺の縁の部分に沿って流れる渦電流である。一方、渦電流54、55は、遮蔽板301の凹部51、52の縁の部分に沿って流れる電流である。このように遮蔽板301では、遮蔽板301の四辺の縁の部分と、遮蔽板301の凹部51、52の縁の部分に渦電流51〜53が集中して流れる。さらに、このような渦電流53〜55により磁場59a〜59hが発生する。
【0048】
その結果、図9Cに示すように、遮蔽板301(301a、301b)に流れる渦電流54、55と、帯状鋼板10に流れる渦電流60との間に反発力が生じる。この反発力により、帯状鋼板10のエッジ部分に流れている渦電流60(60a〜60e)が帯状鋼板10の内側(図9Cの帯状鋼板10の下に示す矢印の方向)に移動し、従来では温度が低下していた領域の電流密度が増大する。これにより、帯状鋼板10のエッジ付近(エッジよりも少し内側の領域)の温度の低下を抑制することができ、遮蔽板301は、帯状鋼板10の板幅方向におけるエッジ側の領域と、加熱コイル24、28との電磁結合度を調整することができる。ここで、遮蔽板301は、銅製であり、高温であっても必要な特性が維持される。したがって、遮蔽板301が高温下に晒されても、帯状鋼板10のエッジ付近の温度の低下を抑制することができる。
【0049】
これに対し、第1の実施形態のように遮蔽板31に凹部が存在しない場合、遮蔽板31には図9A、図9Cに示したような渦電流53、54が流れず、遮蔽板31の四辺の縁の部分に渦電流が集中して流れる。したがって、帯状鋼板10のエッジ近傍に流れている渦電流は、帯状鋼板10の内側(中央側)に向かう力を受けず、温度が低下する領域(帯状鋼板10のエッジよりも少し内側の領域)の電流密度が増大しない。よって、帯状鋼板10のエッジ付近の温度の低下を抑制することができない。
以上のように本発明者らは、銅製の遮蔽板301に凹部51、52を形成し、この凹部51、52が帯状鋼板10のエッジ付近と対向するように遮蔽板301を配置することによって、帯状鋼板10のエッジ付近の温度の低下を抑制することができることを見出した。以上のことを確認するために、本発明者らは、本実施形態の遮蔽板301を使用した場合と、第1の実施形態で説明した遮蔽板31を使用した場合とのそれぞれにおいて、導体板(帯状鋼板10に相当)の板幅方向における温度分布を測定した。
【0050】
図10A及び図10Bは、誘導加熱装置により加熱された導体板の板幅方向における温度分布の一例を示す図である。
具体的に図10Aは、本実施形態の遮蔽板301を用いた誘導加熱装置(本実施形態の誘導加熱装置)についてのグラフである。一方、図10Bは、第1の実施形態の遮蔽板31を用いた誘導加熱装置(第1の実施形態の誘導加熱装置)についてのグラフである。また、図10A及び図10Bに示すグラフの横軸は、導体板の板幅方向における位置を示し、横軸の「0」の位置が導体板のエッジに対応し、「250」の位置が導体板の中央に対応する。一方、縦軸は、加熱による導体板の温度上昇量(昇温量)を示す。ここで、図10A及び図10Bに示すグラフの実験条件を、以下に示す。
加熱コイル幅 :250[mm](通板方向の長さ)
コア :フェライトコア
加熱材料 :非磁性のSUS(ステンレス)板(幅500[mm]、厚み0.3[mm])
通板速度 :8[mpm(m/分)]
加熱温度 :30〜130[℃](中央昇温量を100[℃]に設定)
電源周波数 :29[kHz]、21[kHz]、10[kHz]
遮蔽板の材質 :銅
なお、透磁率が1に近い材料であるほど、エッジ付近における温度の低下が生じやすい。また、導体板(加熱材料)の温度がキュリー温度以上になると、導体板の透磁率が1になる。そのため、透磁率が1である加熱材料として、非磁性のSUS(ステンレス)板を使用した。
【0051】
図10Aに示すように、本実施形態の遮蔽板301を用いた誘導加熱装置では、周波数を29[kHz]→21[kHz]→10[kHz]の順に変更すると、エッジの温度が下がり、エッジ付近(ここでは、横軸の「50」〜「100」の位置)における温度の低下が抑制される(板幅方向における温度分布が均一になる)ことが分かる。
一方、図10Bに示すように、第1の実施形態の遮蔽板31を用いた誘導加熱装置では、周波数を29[kHz]→21[kHz]→10[kHz]の順に変更すると、エッジの温度が下がるが、エッジ付近(ここでは、横軸の「50」〜「100」の位置)における温度の低下量も大きくなることが分かる。
尚、遮蔽板を設けない場合には、エッジ付近(ここでは、横軸の「50」〜「100」の位置)の温度が低下しないが、エッジにおける昇温量が500[℃]程度になるため過加熱であった。
【0052】
以上のように本実施形態では、銅製の遮蔽板301に凹部51、52を形成し、この凹部51、52が帯状鋼板10のエッジ付近と対向するように遮蔽板301を、上側加熱コイル24及び下側加熱コイル28と帯状鋼板10との間に配置する。これにより、帯状鋼板10が高温に晒されても、帯状鋼板10のエッジ付近における温度の低下を抑制することができる。
加えて、制御装置100と、遮蔽板301を有する誘導加熱装置とを備える誘導加熱システムでは、通板速度が変化した場合であっても、交流電力の周波数が変化しないため、帯状鋼板10のエッジ部分に生じる渦電流の変化(時間的変化)を考慮する必要がない。そのため、誘導加熱システムに制御装置100を使用すると、操業条件が変動した場合であっても、遮蔽板301によりエッジ付近の加熱量を適切に制御できる。さらに、遮蔽板301が凹部51、52を有しているため、鋼板の加熱状態に応じて比透磁率が変化する場合であっても、凹部51、52によりエッジ付近の温度分布を適切に制御できる。したがって、本実施形態の構成では、より柔軟に加熱速度の変更に対応できる。
尚、上記実施形態(第1の実施形態〜第3の実施形態)では、遮蔽板31、301は、銅製の板に限定されない。すなわち、比透磁率が1の導電体(例えば常磁性体や反磁性体である金属)であれば、どのような材料で遮蔽板31、301を形成してもよい。例えば、アルミニウムで遮蔽板31を形成することができる。
また、本実施形態では、最大電流通過領域56よりもエッジ10a側に存在する領域で、遮蔽板301の凹部と帯状鋼板10(帯状鋼板10を延長した面も含む)とが対向していれば、帯状鋼板10と遮蔽板301との位置関係は、特に限定されない。ただし、遮蔽板301に流れる渦電流と、帯状鋼板10に流れる渦電流との間に反発力を確実に生じさせるため、図9Bに示すように、最大電流通過領域56と帯状鋼板10のエッジ10aとの間の領域と、遮蔽板の凹部の少なくとも一部とが対向するようにすることが好ましい。
【0053】
また、本実施形態では、遮蔽板に2つの凹部を形成した場合を例に挙げて説明したが、遮蔽板に形成される凹部の数は幾つであってもよい。
また、本実施形態では、凹部51、52の形状を菱形にした場合を例に挙げて示した。しかしながら、凹部51、52の縁の部分に沿って帯状鋼板10に渦電流を流すことができれば、凹部51、52の形状は、どのような形状であってもよい。凹部51、52の形状を、例えば、楕円、菱形以外の四角形、その他の角形にすることができる。このとき、通板方向における長さが、通板方向に垂直な方向における長さよりも長い凹部を形成すると、凹部の縁の部分に沿って容易に渦電流を流すことができる。そのため、通板方向における長さが、通板方向に垂直な方向における長さよりも長い凹部を形成することが好ましい。また、遮蔽板の凹部の形状は、必ずしも閉じた形状でなくてもよい。例えば、遮蔽板の端部に形成されてもよい。
さらに、上側加熱コイル24及び下側加熱コイル28には、銅が通常使用されるが、銅以外の導体(金属)を使用してもよい。また、連続焼鈍ライン以外に誘導加熱システムを適用してもよい。また、図2Aに示したコア23、27の寸法は、コア23、27が磁気飽和しない範囲で適宜決定することができる。ここで、加熱コイル24、28に流れる電流から算出される磁界強度[A/m]からコア23、27の磁気飽和の発生を判断することができる。
また、上記実施形態では、一例として上側誘導器21と下側誘導器22との両方を設けているが、上側誘導器21と下側誘導器22との何れか一方のみを設けてもよい。加えて、ギャップの大きさは、特に限定されない。
【0054】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。すなわち、本発明は、その技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
トランスバース方式の誘導加熱装置を用いて導体板を加熱する際に、導体板の通板速度が変化しても、導体板の板幅方向における温度分布を従来よりも均一にする誘導加熱装置の制御装置、誘導加熱システム及び誘導加熱装置の制御方法を提供する。
【符号の説明】
【0056】
10 帯状鋼板(導体板)
20 誘導加熱装置
23、27 コア(磁心)
24 上側加熱コイル(加熱コイル)
28 下側加熱コイル(加熱コイル)
31a〜31d 遮蔽板
51、52 凹部
100、200 誘導加熱装置の制御装置
110 整流装置
120 リアクトル
130 磁気エネルギー回生双方向電流スイッチ(MERS)
131〜134 第1〜第4の逆導通型半導体スイッチ
140 ゲート制御装置
150 出力電流設定装置
160 交流電源
170 カレントトランス(電流測定装置)
180 周波数設定装置
210 出力変圧器(出力トランス)
301 遮蔽板
S1〜S4 半導体スイッチ
D1〜D4 ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通板されている導体板の板面に交番磁界を交差させてこの導体板を誘導加熱するトランスバース方式の誘導加熱装置の加熱コイルに出力される交流電力を制御する誘導加熱装置の制御装置であって、
前記加熱コイルに交流電力を出力する磁気エネルギー回生双方向電流スイッチと;
前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚の少なくとも1つに応じた出力周波数を設定する周波数設定装置と;
前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチのスイッチ動作を、前記周波数設定装置で設定された出力周波数に基づいて制御するゲート制御装置と;
を備えることを特徴とする誘導加熱装置の制御装置。
【請求項2】
前記周波数設定装置は、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚を特定する属性情報を取得し、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚と、周波数とが相互に関連付けて予め登録されたテーブルを参照して、取得した属性情報に対応する周波数を前記出力周波数として選択することを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱装置の制御装置。
【請求項3】
前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚の少なくとも1つに応じた出力電流値を設定する出力電流設定装置と;
前記誘導加熱装置に流れる交流電流を測定する電流測定装置と;
直流電力を前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチに供給して前記電流測定装置により測定される交流電流を前記出力電流設定装置により設定された前記出力電流値に調整する電力供給装置と;
を更に備え、
前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチは、前記電力供給装置により直流電力を供給されて交流電力を前記加熱コイルに出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱装置の制御装置。
【請求項4】
前記出力電流設定装置は、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚を特定する属性情報を取得し、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚と、電流値とが相互に関連付けて予め登録されたテーブルを参照して、取得した属性情報に対応する電流値を前記出力電流値として選択することを特徴とする請求項3に記載の誘導加熱装置の制御装置。
【請求項5】
前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチと前記誘導加熱装置との間に配置され、前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチから出力された交流電圧を降圧して前記加熱コイルに出力する出力トランスを更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱装置の制御装置。
【請求項6】
前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチは、
前記加熱コイルの一端及び他端と相互に接続される第1、第2の交流端子と;
前記電力供給装置の出力端と相互に接続される第1、第2の直流端子と;
前記第1の交流端子と前記第1の直流端子との間に配置された第1の逆導通型半導体スイッチと;
前記第1の交流端子と前記第2の直流端子との間に配置された第2の逆導通型半導体スイッチと;
前記第2の交流端子と前記第2の直流端子との間に配置された第3の逆導通型半導体スイッチと;
前記第2の交流端子と前記第1の直流端子との間に配置された第4の逆導通型半導体スイッチと;
前記第1、第2の直流端子の間に配置されたコンデンサと;
を備え、
前記第1の逆導通型半導体スイッチと前記第4の逆導通型半導体スイッチとは、スイッチオフ時の導通方向が相互に逆向きとなるように直列に配置され、
前記第2の逆導通型半導体スイッチと前記第3の逆導通型半導体スイッチとは、スイッチオフ時の導通方向が相互に逆向きになるように直列に配置され、
前記第1の逆導通型半導体スイッチと前記第3の逆導通型半導体スイッチとでは、スイッチオフ時の導通方向が同じ向きであり、
前記第2の逆導通型半導体スイッチと前記第4の逆導通型半導体スイッチとでは、スイッチオフ時の導通方向が同じ向きであり、
前記ゲート制御装置は、前記周波数設定装置で設定された前記出力周波数に基づいて、前記第1、第3の逆導通型半導体スイッチのスイッチ動作の時間と、前記第2、第4の逆導通型半導体スイッチのスイッチ動作の時間とを制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導加熱装置の制御装置。
【請求項7】
通板されている導体板の板面に交番磁界を交差させてこの導体板を誘導加熱する誘導加熱システムであって、
請求項1又は2に記載の誘導加熱装置の制御装置と:
前記導体板の板面と対向するように配置された加熱コイルと;
前記加熱コイルが巻き回されたコアと;
前記導体板の幅方向におけるエッジを含む領域と対向するように配置される透磁率が1の導体である遮蔽板と;
を備えることを特徴とする誘導加熱システム。
【請求項8】
前記遮蔽板は、凹部を有することを特徴とする請求項7に記載の誘導加熱システム。
【請求項9】
前記導体板に流れる渦電流が最大になる領域よりも前記エッジ側に存在する領域と、前記凹部とが相互に対向するように、前記遮蔽板を配置することを特徴とする請求項8に記載の誘導加熱システム。
【請求項10】
通板されている導体板の板面に交番磁界を交差させてこの導体板を誘導加熱するトランスバース方式の誘導加熱装置の加熱コイルに出力される交流電力を制御する誘導加熱装置の制御方法であって、
磁気エネルギー回生双方向電流スイッチにより前記加熱コイルに交流電力を出力し;
前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚の少なくとも1つに応じた出力周波数を設定し;
前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチのスイッチ動作を、設定された前記出力周波数に基づいて制御する;
ことを特徴とする誘導加熱装置の制御方法。
【請求項11】
前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚を特定する属性情報を取得し、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚と、周波数とが相互に関連付けて予め登録されたテーブルを参照して、取得した属性情報に対応する周波数を前記出力周波数として選択し、前記出力周波数を設定することを特徴とする請求項10に記載の誘導加熱装置の制御方法。
【請求項12】
さらに、
前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚の少なくとも1つに応じた出力電流値を設定し;
前記誘導加熱装置に流れる交流電流を測定し;
測定される交流電流を設定された前記出力電流値に調整するために必要な直流電力を前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチに供給する;
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の誘導加熱装置の制御方法。
【請求項13】
前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚を特定する属性情報を取得し、前記導体板の透磁率、抵抗率及び板厚と、電流値とが相互に関連付けて予め登録されたテーブルを参照して、取得した属性情報に対応する電流値を前記出力電流値として選択し、前記出力電流値を設定することを特徴とする請求項12に記載の誘導加熱装置の制御方法。
【請求項14】
前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチから出力された交流電圧を、出力トランスにより降圧して前記加熱コイルに出力することを特徴とする請求項10又は11に記載の誘導加熱装置の制御方法。
【請求項15】
前記磁気エネルギー回生双方向電流スイッチは、
前記加熱コイルの一端及び他端と相互に接続される第1、第2の交流端子と;
前記電力供給装置の出力端と相互に接続される第1、第2の直流端子と;
前記第1の交流端子と前記第1の直流端子との間に配置された第1の逆導通型半導体スイッチと;
前記第1の交流端子と前記第2の直流端子との間に配置された第2の逆導通型半導体スイッチと;
前記第2の交流端子と前記第2の直流端子との間に配置された第3の逆導通型半導体スイッチと;
前記第2の交流端子と前記第1の直流端子との間に配置された第4の逆導通型半導体スイッチと;
前記第1、第2の直流端子の間に配置されたコンデンサと;
を備え、
前記第1の逆導通型半導体スイッチと前記第4の逆導通型半導体スイッチとは、スイッチオフ時の導通方向が相互に逆向きとなるように直列に配置され、
前記第2の逆導通型半導体スイッチと前記第3の逆導通型半導体スイッチとは、スイッチオフ時の導通方向が相互に逆向きになるように直列に配置され、
前記第1の逆導通型半導体スイッチと前記第3の逆導通型半導体スイッチとでは、スイッチオフ時の導通方向が同じ向きであり、
前記第2の逆導通型半導体スイッチと前記第4の逆導通型半導体スイッチとでは、スイッチオフ時の導通方向が同じ向きであり、
設定された前記出力周波数に基づいて、前記第1、第3の逆導通型半導体スイッチのスイッチ動作の時間と、前記第2、第4の逆導通型半導体スイッチのスイッチ動作の時間とを制御して前記加熱コイルに交流電力を出力することを特徴とする請求項10又は11に記載の誘導加熱装置の制御方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2011−216502(P2011−216502A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171344(P2011−171344)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【分割の表示】特願2011−512742(P2011−512742)の分割
【原出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】