説明

誘導加熱部材、融着部材、画像レンダリング装置

【課題】誘導加熱部材の効率が高く、ウォームアップ時間を短縮し得る融着部材を提供する。
【解決手段】融着部材100は、基板110と、基板110の上に配置された加熱層130と、表面層140と、を備える。加熱層130は、カーボンナノチューブおよび金属を含み、表面層140は、表面自由エネルギーが22mN/mより低い疎水性ポリマーを含む。弾性層120を適用してもよく、該疎水性ポリマーは、フルオロポリマーであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱部材、融着部材、画像レンダリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真(xerography)または電子写真画像形成としても知られている、電子写真において、導電層の上に光導電性絶縁層を含む、電子写真用のプレート、ドラム、ベルトなど(画像形成部材または感光体)の表面は、まず均一に静電的に帯電される。次に、画像形成部材を活性化電磁線、例えば光などのパターンに露光する。光活性顔料により生成された電荷は、印加された場の力の下で移動する。感光体を経由する電荷の移動は、光導電性絶縁層の被照領域(the illuminated areas)に電荷を選択的に散逸させながら、静電潜像を後に残す。次に、この静電潜像を現像して、光導電性絶縁層の表面に逆帯電した粒子を付着させることにより、可視画像を形成することができる。次に、結果として生じる可視画像を、画像形成部材から直接的または間接的に(例えば転写またはその他の部材により)印刷基板、例えば透明シート(transparency)または紙などに転写することができる。この画像形成プロセスは、再使用できる画像形成部材を用いて何度も繰り返すことができる。このようにして印刷基板に転写された可視トナー像は、緩い粉末の形態(loose powdered form)であり、容易に乱され、または破壊されうるが、通常定着または融着して永久画像を形成する。トナー像を支持部材に定着させるために熱エネルギーを使用することは周知である。検電トナー材料(electroscopic toner material)を支持表面に熱によって永久的に融着させるためには、トナー材料の構成要素が融合して粘着性となる時点までトナー材料の温度を上昇させることが必要である。この加熱によって、支持部材の繊維または細孔内にある程度までトナーが流入する。その後、トナー材料が冷却されるにつれて、トナー材料の固化によりトナー材料が支持部材にしっかりと結合される。
【0003】
検電トナー像の熱融着に対するいくつかのアプローチが先行技術において記載されている。これらの方法には、様々な手段、つまり圧接して維持されるロール対、ロールに圧接しているベルト部材などによって実質的に同時に熱および圧力の印加をもたらすことが含まれる。熱は、一方または両方のロール、プレート部材またはベルト部材を加熱することにより加えることができる。トナー粒子の融着は、熱、圧力および接触時間の適切な組合せが与えられる場合に起こる。トナー粒子の融着を引き起こすこれらのパラメータのバランスをとることは、当分野で周知であり、それらは特定の機械もしくは処理条件に適合するように調節することができる。
【0004】
融着および定着ロールもしくはベルトは、1以上の層を適した基板に適用することにより作製することができる。一般に、融着および定着ロールもしくはベルトには、良好なトナー離型のための表面層が含まれる。例えば、円筒型の融着および定着ロールは、離型層としての機能を果たすシリコーンエラストマーまたはフルオロエラストマーを適用することにより作製することができる。被覆されたロールを加熱してエラストマーを硬化させる。そのような処理は、例えば、米国特許第5,501,881号、同第5,512,409号、および同第5,729,813号に開示されている。公知の融着器表面塗膜には、剥離液またはフルオロ樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」と呼ぶ)、パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、「PFA」と呼ぶ)などと共に使用される、架橋フルオロポリマー、例えばVITON−GF(登録商標)(デュポン社)なども含まれる。
【0005】
加熱部材は、一般に検電トナー像の熱融着をもたらす。トナー融着のためのいくつかの加熱方法が先行技術において記載されている。ウォームアップ時間(融着または定着部材を融着温度まで加熱するために必要な時間)を短くするために、誘導加熱法がトナー融着に適用されている。誘導加熱を利用する画像融着または定着装置は、一般に、ロールまたはベルトなどの融着部材と、例えば高周波電力供給体に電気接続されたコイルから構成される電磁部品を含む。コイルは、融着部材の内側または融着部材の外側および近くの位置に配置される。誘導加熱に適した融着部材は、金属加熱層を含む。電力供給体によりもたらされる高周波交流がコイルを通過するとき、渦電流が融着部材の加熱金属内に誘導されて抵抗により熱エネルギーを発生させ、融着部材を所望の温度に加熱する。
【0006】
例えば、米国特許第7,060,349号および同第7,054,589号には、誘導加熱に適した画像定着ベルトおよびそれを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,501,881号明細書
【特許文献2】米国特許第5,512,409号明細書
【特許文献3】米国特許第5,729,813号明細書
【特許文献4】米国特許第7,060,349号明細書
【特許文献5】米国特許第7,054,589号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の課題の少なくとも一つを解決することを目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
カーボンナノチューブおよび金属を含む加熱層を備える、誘導加熱部材である。
【0010】
現像像を定着するための融着部材であって、基板と、前記基板の上に配置された加熱層であって、カーボンナノチューブおよび金属を含む、加熱層と、表面自由エネルギーが22mN/mより低い疎水性ポリマーを含む外層と、を備える、融着部材である。
【0011】
画像を複写基板に塗工するための画像塗工部品と、前記画像塗工部品から塗工画像を有する前記複写基板を受け取り、前記塗工画像をさらに永久的に前記複写基板に定着させる融着装置と、を備え、前記融着装置が、それを通して前記複写基板を受け取るニップをその間に規定する融着部材および圧力部材を含み、前記融着部材が、基板と、前記基板の上に配置された、カーボンナノチューブおよび金属を含む加熱層と、前記加熱層の上に配置された、フルオロポリマーを含む外層と、を含む、画像レンダリング装置である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】例示的な融着部材の一部を示す。
【図2A】図1の融着部材に使用される、例示的な加熱層を示す概略図である。
【図2B】図1の融着部材に使用される、例示的な加熱層を示す概略図である。
【図2C】図1の融着部材に使用される、例示的な加熱層を示す概略図である。
【図3】図1の融着部材を形成するための、例示的な方法を示す。
【図4】融着部材の実施形態の誘導ユニット周波数に応じた、346mm幅ベルトで誘導される加熱を示す。
【図5】融着部材の実施形態における346mm幅ベルトで100kHzにて運転温度に到達する時間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、一般に、デジタル式を含む電子写真装置で使用するための画像形成装置の部材および部品において有用な層に関する。より詳細には、本実施形態は、カーボンナノチューブおよび金属からなる層を含む、誘導加熱された融着部材に関する。
【0014】
様々な実施形態によれば、本教示には誘導加熱部材が含まれる。誘導加熱部材には加熱層が含まれ得る。加熱層にはカーボンナノチューブおよび金属が含まれる。
【0015】
本教示には、基板と基板の上に配置された少なくとも1つの加熱層を含む融着部材が含まれる。加熱層には、カーボンナノチューブおよび銀の相互侵入網目が含まれる。外層は加熱層の上に配置され、フルオロポリマーを含む。
【0016】
典型的な電子写真再生装置では、複写する原本の光像を感光性部材上の静電潜像の形で記録し、その後にその潜像を通例トナーと呼ばれる検電性の熱可塑性樹脂粒子を適用することにより可視化させる。具体的には、電源から電圧が供給される帯電器を用いて感光体の表面を帯電させる。次に、感光体は、光学系または画像入力装置、例えばレーザーおよび発光ダイオードなどからの光で像様に露光され、その上に静電潜像を形成する。一般に、静電潜像は現像部からの現像液混合物をそれらと接触させることにより現像される。現像は、磁気ブラシ、パウダークラウド、またはその他の公知の現像プロセスを使用することにより達成することができる。
【0017】
光導電性表面に画像の形状でトナー粒子を付着させた後、圧力転写または静電転写であり得る転写手段によって複写シートにトナー粒子を転写する。実施形態では、現像像を中間転写部材に転写し、その後に複写シートに転写することができる。
【0018】
現像像の転写が完了した後、複写シートは融着部に進み、そこで融着部材と圧力部材の間を複写シートが通過することにより現像像は複写シートに融着され、それにより永久画像が形成される。融着は、様々な手段、つまり、圧接した状態に維持されるロール対;ロールに圧接しているベルト部材などにより実質的に同時に熱および圧力を印加することにより達成することができる。
【0019】
ウォームアップ時間の速い画像融着系において、画像融着(または定着)装置には、一般に、ロールまたはベルトなどの融着部材、および、例えば高周波電力供給装置に電気的に接続されたコイルを含み構成される電磁部品が含まれる。コイルは、融着部材の内側または融着部材の外側および近傍の位置に配置される。誘導加熱に適した融着部材には、金属加熱層が含まれる。電力供給装置によりもたらされる高周波交流がコイルを通過するとき、渦電流が融着部材の加熱金属内に誘導されて抵抗により熱エネルギーを発生させ、融着部材を所望の温度に加熱する。誘導加熱に適した画像融着部材は当分野で公知であり、それには、例えば、基板に付着したポリイミド基板、ニッケルまたは銅から構成される金属層、エラストマーから構成される任意の弾性層、および最も外側の離型層を含み構成される、多層構成を有する融着ベルトが含まれ得る。融着部材には、付着性またはその他の特性の改善のために、基板と金属加熱層、金属加熱層と弾性層、または弾性層と離型層の間にその他の層がさらに含まれてもよい。
【0020】
一態様では、加熱層を含む融着部材ならびに加熱層および融着部材を形成するための方法が提供される。融着部材には、基板、弾性層、表面層、および、弾性層と表面層の間に配置される加熱層が含まれ得る。弾性層には、例えば、シリコーンゴム層が含まれ得て、表面層には、例えば、表面自由エネルギーが22mN/mより低い疎水性ポリマーが含まれ得る。表面自由エネルギーは、ルイス酸−塩基法を用い、Fibro DAT1100測定器で測定した接触角の結果から計算することにより決定される。使用した3種類の液体は、水、ホルムアミド、およびジヨードメタンであった。より具体的には、疎水性ポリマーには、例えば、フルオロポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシ(PFA)などのテフロン(登録商標)材料のフッ素樹脂、およびそれらの混合物などが含まれる。加熱層には、カーボンナノチューブ(CNT)および金属含有層が含まれ得て、この際CNTは、その中に分散しているかまたは含まれている。
【0021】
用語「融着部材」は、本明細書において例示目的で使用されるが、用語「融着部材」は、限定されるものではないが、定着部材、圧力部材、加熱部材および/またはドナー部材を含む、静電写真印刷工程に有用なその他の部材も包含することが意図される。「融着部材」は、例えば、ベルト、プレート、シート、ロールなどの形態であり得る。
【0022】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす添付の図面は、いくつかの実施形態を示し、説明と共に、本開示の原理を説明する働きをする。
【0023】
図1は、本教示に従う、例示的な融着部材100の断面図を示す。図1に示される部材100が一般化された概略図を示し、その他の部品/層/フィルム/粒子を添加することができるか、または既存の部品/層/フィルム/粒子を除去または変更することができることは、当業者に容易に明らかである。
【0024】
図示されるように、融着部材100には、基板110、中間体または加熱層130、弾性層120、および表面層140が含まれ得る。表面層140は、弾性層120の上に形成することができ、弾性層は順に基板110の上に形成することができる。開示される中間体または加熱層130は、融着部材100を約250℃以上の温度で形成および/または使用するための望ましい特性、例えば、熱安定性、機械的強度などを付与するために、弾性層120と基板110の間に形成することができる。
【0025】
基板110は、例えば、開示される融着部材100のベルト、プレート、および/または円筒形ドラムの形態であり得る。融着部材の基板は、融着温度で分解しない高強度および物理的特性をもたらし得るのであれば、制限されない。具体的には、基板は耐熱性樹脂から製造することができる。耐熱性樹脂の例としては、高耐熱性および高強度を有する樹脂、例えばポリイミド、芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフタラミド、ポリエステルなど、ならびに液晶材料、例えばサーモトロピック液晶ポリマーなどが挙げられる。特に適しているものは、デュポン社より入手可能なKAPTON(登録商標)ポリイミドである。基板の厚さは、融着ベルトを繰り返し回転させることを可能にする剛性および柔軟性が矛盾なく確立され得る範囲内、例えば、約10〜約200マイクロメートルまたは約30〜約100マイクロメートルの範囲内に収まる。
【0026】
弾性層120には、例えば、ゴム層が含まれ得る。弾性層は弾力性をもたらすものであり、シリコーンゴムを主成分として含み、無機粒子、例えばSiCまたはAlを必要に応じて混合し得る。
【0027】
適した弾性層の例としては、シリコーンゴム、例えば室温加硫(RTV)シリコーンゴム;高温加硫(HTV)シリコーンゴムおよび低温加硫(LTV)シリコーンゴムなどが挙げられる。これらのゴムは公知であり、例えば、SILASTIC(登録商標)735ブラックRTVおよびSILASTIC(登録商標)732RTV(両方ともダウ・コーニング社より);106RTVシリコーンゴムおよび90RTVシリコーンゴム(両方ともジェネラル・エレクトリック社より);ならびにJCR6115CLEAR HTVおよびSE4705U HTVシリコーンゴム(ダウ・コーニング・東レ・シリコーンズ社より)などが商業的に容易に入手可能である。その他の適したシリコーン材料としては、シロキサン(例えばポリジメチルシロキサンなど);フルオロシリコーン、例えばバージニア州リッチモンド所在のサンプソン・コーティングス社より入手可能なシリコーンゴム552など;液体シリコーンゴム、例えばビニル架橋熱硬化性ゴムまたはシラノール室温架橋材料などが挙げられる。その他の具体例は、Dow Corning Sylgard 182である。市販のLSRゴムとしては、ダウ・コーニング社製のDow Corning Q3−6395、Q3−6396、SILASTIC(登録商標)590 LSR、SILASTIC(登録商標)591 LSR、SILASTIC(登録商標)595 LSR、SILASTIC(登録商標)596 LSR、およびSILASTIC(登録商標)598 LSRが挙げられる。
【0028】
融着部材100の離型層とも呼ばれる表面層140は、一般にトナー汚れを避けるためにフッ素含有ポリマーから構成される。そのような離型層の厚さは、約3マイクロメートル〜約100マイクロメートル、または約5マイクロメートル〜約50マイクロメートルの範囲であり得る。適したフッ素含有ポリマーとしては、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択されるモノマー反復単位を含むフルオロポリマーを挙げることができる。フルオロポリマーとしては、直鎖状または分枝状ポリマー、および架橋フルオロエラストマーを挙げることができる。フルオロポリマーの例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);パーフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA);テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)のコポリマー;ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)のコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー;ならびにテトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VF2)、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ポリ(テトラフルオロエチレン)のテトラポリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0029】
具体的には、適したフルオロエラストマーは、米国特許第4,257,699号、同第5,017,432号および同第5,061,965号とともに、米国特許第5,166,031号、同第5,281,506号、同第5,366,772号および同第5,370,931号に詳細に記載されている。その中に記載されるように、これらのエラストマーは、1)ビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンのうちの2種類のコポリマー;2)ビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンのターポリマー;ならびに3)ビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、および架橋性モノマーのテトラポリマーのクラスのものである。これらのフルオロエラストマーは、VITON A(登録商標)、VITON B(登録商標)、VITON E(登録商標)、VITON E60C(登録商標)、VITON E430(登録商標)、VITON 910(登録商標)、VITON GH(登録商標);VITON GF(登録商標);およびVITON ETP(登録商標)などの様々な呼称で商業的に公知である。VITON(登録商標)はデュポン社(E.I. DuPont de Nemours,Inc)の商標である。架橋性モノマーは、4−ブロモパーフルオロブテン−1、1,1−ジヒドロ−4−ブロモパーフルオロブテン−1、3−ブロモパーフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロ−3−ブロモパーフルオロプロペン−1、または任意のその他の適した公知の架橋性モノマー、例えばデュポン社から市販されているものなどであってもよい。その他の市販のフルオロポリマーとしては、FLUOREL 2170(登録商標)、FLUOREL 2174(登録商標)、FLUOREL 2176(登録商標)、FLUOREL 2177(登録商標)およびFLUOREL LVS76(登録商標)が挙げられ、FLUOREL(登録商標)はスリーエム・カンパニー(3M Company)の登録商標である。さらなる市販材料としては、AFLAS(商標)ポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレン)およびFLUOREL II(登録商標)(LII900)ポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレンビニリデンフルオリド)(両方ともスリーエム・カンパニーのより入手可能)、ならびに、オーシモント社(Ausimont)より入手可能な、FOR−60KIR(登録商標)、FOR−LHF(登録商標)、NM(登録商標)FOR−THF(登録商標)、FOR−TFS(登録商標)、TH(登録商標)、NH(登録商標)、P757(登録商標)、TNS(登録商標)、T439(登録商標)、PL958(登録商標)、BR9151(登録商標)およびTN505(登録商標)として特定されるテクノフロン(Tecnoflon)が挙げられる。
【0030】
3種類の公知のフルオロエラストマーの例は、(1)ビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンのうちの2種類のコポリマーのクラス、例えばVITON A(登録商標)として商業的に公知のものなど;(2)VITON B(登録商標)として商業的に公知のビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンのターポリマーのクラス;ならびに(3)VITON GH(登録商標)またはVITON GF(登録商標)として商業的に公知の、ビニリデンフルオリド、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、および硬化部位
モノマーのテトラポリマーのクラスである。
【0031】
フルオロエラストマーVITON GH(登録商標)およびVITON GF(登録商標)は、相対的に少量のビニリデンフルオリドを有する。VITON GF(登録商標)およびVITON GH(登録商標)は、約35重量パーセントのビニリデンフルオリド、約34重量パーセントのヘキサフルオロプロピレン、および約29重量パーセントのテトラフルオロエチレンを、約2重量パーセントの硬化部位モノマーと共に有する。
【0032】
加熱層130は、弾性層120と基板110との間に形成することができる。様々な実施形態では、加熱層130には、複数のカーボンナノチューブ(CNT)および金属が含まれ得る。カーボンナノチューブは、図2Aに示されるように、金属層の内部で相互侵入網目(interpenetrating network)を形成することができる。カーボンナノチューブ200は金属220に相互侵入して、強く強靭な導電層を形成する。図2Bに示される、層130の代替実施形態は、金属220の層で被覆されたカーボンナノチューブ200を示す。これらのカーボンナノチューブは、ポリマーマトリックス内で基板に被覆され得る。図2Cは、層130のその他の実施形態を示し、ここで、金属の層で覆われた金属およびカーボンナノチューブの層は積み重なっている。
【0033】
金属は、一般に金属ナノ粒子(限定されるものではないが、例えば、ポリイミド基板の上に付着させる、トルエンなどの溶媒中に分散した銀ナノ粒子)により提供される。塗工は、金属ナノ粒子分散体を基板に浸漬コーティング、ウェブコーティング、またはスプレーすることによってもよい。金属層に使用することのできるその他の金属としては、銅、ニッケル、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0034】
本明細書において使用されるように、また特に断りのない限り、用語「ナノチューブ」とは、少なくとも1つの短い寸法、例えば、約100ナノメートル以下の幅または直径を有する細長い材料(有機材料および無機材料を含む)を指す。用語「ナノチューブ」は、本明細書において例示目的で使用されるが、この用語は同様の寸法を有するその他の細長い構造も包含することを意図し、それには、限定されるものではないが、ナノシャフト、ナノピラー、ナノワイヤ、ナノロッド、およびナノニードル、ならびに、それらの様々な機能化および誘導体化された小繊維形態(スレッド、ヤーン、織物などの例示的な形態のナノファイバが含まれる)が含まれる。
【0035】
また、ナノチューブには、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、ならびにカーボンナノファイバーなどのそれらの様々な機能化および誘導体化された小繊維形態も含まれ得る。様々な実施形態では、ナノチューブは内径および外径を有し得る。例えば、内径は約0.5〜約20ナノメートルの範囲内であり得、一方、外径は約1〜約80ナノメートルの範囲であり得る。あるいは、ナノチューブのアスペクト比は、例えば約1〜約1,000,000の範囲であり得る。
【0036】
ナノチューブは、例えば、長方形、多角形、楕円形、または円形などの様々な断面形状を有し得る。したがって、ナノチューブは、例えば、円筒状の三次元形状を有し得る。
【0037】
ナノチューブは導体または半導電体から形成されてもよく、並外れた所望の機能、例えば熱的(例えば、安定性または導電率)、機械的、および電気的(例えば、導電率)機能などをもたらすことができる。CNTの配合量は、0.1重量%〜90重量%、好ましくは5%〜50重量%の範囲である。
【0038】
所望により、金属被覆カーボンナノチューブは、ポリマーマトリックス中に分散させることができる。ポリマーマトリックスには、1以上の化学的または物理的に架橋したポリマー、例えば、熱可塑性樹脂、サーモエラストマー、樹脂、ポリパーフルオロエーテルエラストマー、シリコーンエラストマー、熱硬化性ポリマーまたはその他の架橋された材料などが含まれ得る。様々なその他の実施形態では、ポリマーには、例えば、フッ素化ポリマー(すなわちフルオロポリマー)が含まれ得て、それには、限定されるものではないが、フルオロエラストマー(例えばViton)、フッ素化ポリエーテル、フッ素化ポリイミド、フッ素化ポリエーテルケトン、フッ素化ポリアミド、またはフッ素化ポリエステルを含むフッ素化熱可塑性樹脂が含まれ得る。様々な実施形態では、1以上の架橋ポリマーは、金属被覆カーボンナノチューブと混合するために、半軟質および/または融解物であり得る。
【0039】
ポリマーマトリックスには、例えば、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、およびそれらの混合物からなる群から選択されるモノマー反復単位を有するフルオロエラストマーが含まれ得る。また、ポリマーマトリックスには硬化したシリコーンエラストマーも含まれ得る。
【0040】
様々な実施形態には、本教示に従う融着部材100を形成するための方法が含まれ得る。形成の間、様々な層成形技法、例えば、コーティング技法、押出技法および/または成形技法などを、それぞれ、基板110に塗工して弾性層120を形成することができ、弾性層120に塗工して中間体層130を形成することができ、かつ/あるいは加熱層130に塗工して表面層140を形成することができる。
【0041】
本明細書において使用される、用語「コーティング技法」とは、分散体を材料または表面に塗布、形成、または付着させるための技法またはプロセスを指す。したがって、用語「コーティング」または「コーティング技法」は、本教示において特に限定されるものでなく、浸漬コーティング、塗装、ブラシコーティング、ローラーコーティング、パッド塗工、スプレーコーティング、スピンコーティング、キャスティング、またはフローコーティングを用い得る。例えば、加熱層130を形成するための複合分散体および表面層140を形成するための第2の分散体は、エアブラシを用いるスプレーコーティングによって弾性層120および形成された加熱層130にそれぞれ被覆することができる。様々な実施形態では、ギャップコーティングを用いて平らな基板、例えばベルトまたはプレートなどを被覆することができ、一方、フローコーティングを用いて円筒状の基板、例えばドラムまたは融着ロールまたは融着部材基板などを被覆することができる。
【0042】
様々な実施形態では、開示される融着部材には、約0.1マイクロメートル〜約50マイクロメートルの厚さを有する加熱層;約1マイクロメートル〜約40マイクロメートルの厚さを有する表面層;および約2マイクロメートル〜約10ミリメートルの厚さを有する弾性層が含まれ得る。
【0043】
表面層(図1の140参照)は、第2の分散体を弾性層に塗工し、次いで熱処理することにより形成することができる。例えば、弾性層を形成するための硬化プロセスの後、PFAから調製したフッ素樹脂分散体を形成された中間体層に、例えば、スプレーコーティングまたはパウダーコーティング技法によって付着させることができる。次に、表面層付着物は、約250℃以上、例えば、約350℃〜約360℃などの高温で焼付けてもよい。
【0044】
このようにして、加熱層130は高温熱安定性および機械的堅牢性をもたらすことができるので、表面層140の高温焼付けまたは硬化を行って、例えば、下にある弾性層120および形成された表面層140の内部に何ら欠陥を生じることなく、高品質の表面層を融着部材100にもたらすことができる。その上、加熱層130によって、融着部材100は、例えば、改良された層間の付着性、付着安定性、改良された熱伝導率、および長い耐用年数を有することができる。
【0045】
金属−CNT複合層130は、金属およびCNTをポリイミド基板(図1、110)に付着させることにより二次加工されたものである。安定した金属ナノ粒子分散体を吹付け塗りすることにより加熱層130を作製して金属層を形成することができ、その後CNT水性分散液を吹付け塗りすることによりCNT層を形成し、それに続いて被覆した層を熱アニーリングする。複合層の厚さは塗装およびアニーリング工程を反復することにより積み重ねられる。金属−CNT複合塗膜(約15ミクロン厚)には、Agおよび4探針測定法により測定されたAgと同じ導電率を示した多層カーボンナノチューブ(約1.5×10(1.5E+05)S・m−1)が含まれる。
【実施例】
【0046】
酢酸銀(3.34g、20ミリモル)およびオレイルアミン(13.4g、50ミリモル)を40mLトルエンに溶解させ、55℃にて5分間撹拌した。トルエン(10mL)中のフェニルヒドロジン(phenylhydrozine)(1.19g、11ミリモル)溶液を、酢酸銀−トルエン溶液の中に激しく撹拌しながら滴加した。溶液は暗い赤茶色となった。この溶液を55℃にて10分間撹拌した。上記で調製した溶液を、アセトン/メタノール(150mL/150mL)の混合物に滴加した。沈殿を濾過し、アセトンおよびメタノールで短時間洗浄した。得られる灰色の固体を50mLのヘキサンに溶解し、それをオレイン酸(14.12g、50ミリモル)のヘキサン(50mL)中溶液に室温にて滴加した。30分後、ヘキサンを除去し、残渣を撹拌しているメタノール(200mL)中に注入した。濾過後、メタノールで洗浄し、乾燥させ(真空で)、灰色の固体を得た。収量:3.05g(96%、TGA分析から68%のAg含量に基づく)。10%の銀ナノ粒子をヘキサン/トルエン(1:2)の溶液に溶解して銀ナノ粒子分散体を形成した。
【0047】
[CNT水性分散液の調製]
ポリ(アクリル酸)(0.05g)を5gの脱イオン水に溶かした。0.1gのCNTをこの溶液に添加した。高出力超音波処理機で1分間(出力60%にて)数回、均一な分散体を実現するまで分散体を超音波処理した。
【0048】
[ポリイミド基板のコーティング]
ポリイミド基板を清浄し、5M KOH溶液によりエッチングさせた。基板をCNT分散体の層で交互に(alternatively)被覆し、それに続いて200℃にて焼付け、次いでナノ銀分散体の層で被覆し、それに続いて250℃にて焼付けて、金属−CNT複合層を形成した。ナノ−銀分散体を基板に吹付け塗りすることによって、ナノ粒子(例えば銀ナノ粒子)の金属層をCNT被覆ポリイミドに付着させた。
【0049】
残りのシリコーンおよびPFA塗膜は、現在の既存の工程を用いて被覆することができる。銀−CNT−銀複合材料を含む上記サンプルの導電率を、4探針測定法により測定した。結果を表1に記載する。
【0050】
【表1】

【0051】
複合材料の導電率および厚さに基づいて、誘導加熱(IH)モデルを実行して、加熱層として複合Ag−CNT材料を含むベルトでの誘導加熱の量を決定した。図3は、誘導加熱されたAg−CNTベルト融着の概略図を示す。外側のフェライトスリーブ310および内側のフェライトスリーブ312は、Ag−CNT加熱層を含有する融着部材320内の渦電流加熱を促進するために使用される。誘導コイル311は高周波(数)電源314に接続されている。高周波数交流がコイルを通過するとき、熱エネルギーを生じ、融着部材を加熱する、融着部材320の加熱層において渦電流が誘導される。基板(図示せず)と融着部材320の接触を確実にするための圧力ロール315が図3に示されている。
【0052】
図4は、誘導ユニット周波数に応じた、346mm幅ベルトにおける加熱の量を示す。100kHzで誘導加熱は1kWである。
【0053】
Ag−CNTベルトの熱シミュレーションは、IHユニットを100kHzで動作させた場合に誘導された加熱で、融着ニップの出口でのトナーと紙の界面温度が124℃のときに融着は約5秒でウォームアップし、良好な融着を実現することを示す。これは図5に示される。本明細書に記載される実施形態の利点には、より低い費用および密度とともに、誘導加熱部材の高い効率が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブおよび金属を含む加熱層を備える、誘導加熱部材。
【請求項2】
現像像を定着するための融着部材であって、
基板と、
前記基板の上に配置された加熱層であって、カーボンナノチューブおよび金属を含む、加熱層と、
表面自由エネルギーが22mN/mより低い疎水性ポリマーを含む外層と、
を備える、融着部材。
【請求項3】
画像を複写基板に塗工するための画像塗工部品と、
前記画像塗工部品から塗工画像を有する前記複写基板を受け取り、前記塗工画像をさらに永久的に前記複写基板に定着させる融着装置と、
を備え、
前記融着装置が、それを通して前記複写基板を受け取るニップをその間に規定する融着部材および圧力部材を含み、
前記融着部材が、基板と、前記基板の上に配置された、カーボンナノチューブおよび金属を含む加熱層と、前記加熱層の上に配置された、フルオロポリマーを含む外層と、を含む、画像レンダリング装置。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−107704(P2011−107704A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255143(P2010−255143)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】