説明

誘導発熱ローラ装置

【課題】ローラ本体周辺の配線簡素化及び電源部の構成簡単化を可能にする。
【解決手段】ローラ本体2と、鉄心31に巻回された誘導コイル32を有する磁束発生機構3と、誘導コイル32に供給する電力を制御することによりローラ本体2の温度を調整する温度調整機構8と、ローラ本体表面の温度を検出する温度センサT1と、温度センサT1の検出信号をデジタル信号に変換して温度制御機構8に無線送信する信号変換送信機構9とを備えており、信号変換送信機構9の電源部10が、熱電変換素子101を用いて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導発熱ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導発熱ローラ装置は、特許文献1に示すように、ローラ本体の中空内部に鉄心及び誘導コイルからなる磁束発生機構を配置して、ローラ本体を誘導加熱するとともに、当該ローラ本体の側周壁内(肉厚内)に温度センサを配置している。そして、温度センサの温度検出信号に基づいて誘導コイルに流す電流を制御して、ローラ本体の表面温度を所定の温度に制御している。このとき、温度検出信号は、ローラ本体の端部に連結されたジャーナルに配置した回転トランスを介して、ローラ本体の外部(固定側)に配置した温度調整機構に送られる。また、回転側に配置した温度センサ等への電力は、固定側に配置した交流電源から回転トランスを介して供給するように構成している。
【0003】
しかしながら、温度検出信号を、回転トランスを介して温度調整機構に送信する構成では、検出精度の高い温度センサを用いても、回転トランスの信号伝達精度などにより信号が劣化してしまい、ローラ本体の表面温度を高精度に調整することが難しく、ローラ本体の表面温度の変動を例えば±0.1℃以内に収めることが難しいという問題があった。
【0004】
このようなことから、回転トランスによる伝達精度の問題を解決すべく、特許文献2に示すように、ローラ本体の側周壁内に設置された信号変換送信機構で温度検出信号をデジタル信号に変換し、ローラ本体の外部に設置された温度調整機構に無線送信するものが考えられている。具体的には無線送信するための信号変換送信機構をローラ本体の端部に連結されたジャーナルに配置することにより構成している。
【0005】
そして、信号変換送信機構に電力供給を行う電源部として、特許文献2に示すように、ロール本体の回転を利用して発電する発電機や太陽電池を用いたものがある。この発電機や太陽電池は、ロール本体の両端に連結されたジャーナルに設けられている。
【0006】
しかしながら、発電機方式の場合、回転エネルギを電気エネルギに変換する機構であり、ジャーナルの回転により回転する歯車、当該歯車に接続された回転軸を支持する軸受又は交流発電機の場合はスリップリング(回転側のリングや固定側のブラシ)、直流発電機の場合には整流子を備えており、それらの摩耗等に伴い、交換やメンテナンスが必要となるという問題がある。
【0007】
また、太陽電池を電源部として用いた場合には、太陽電池パネル(受光部)もジャーナルの回転に伴い回転することになるので、太陽電池パネルが陰にならないように別途光源を設ける必要がある。
【0008】
一方、信号変換送信機構の電源部として、特許文献3に示すように、磁束発生機構の誘導コイルと電磁結合して発電する発電コイルを用いたものがある。
【0009】
しかしながら、磁束発生機構の誘導コイルに供給される電圧が交流電圧であるため、当該誘導コイルにより生じる磁束が交番磁束となり、発電コイルにより発生する電圧が交流電圧となってしまう。そうすると、信号変換送信機構に直流電圧を供給するためにはAC−DCコンバータが必要になってしまう。この場合、ジャーナルに信号変換送信機構を設ける上にAC−DCコンバータを設けることは構造上難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−178862号公報
【特許文献2】特開2008−262797号公報
【特許文献3】特開2008−298816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、ローラ本体周辺の信号ケーブルや電源ケーブルを無くして配線を簡素化するとともに、電源部の構成を可及的に簡単化することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち本発明に係る誘導発熱ローラ装置は、円筒状のローラ本体と、前記ローラ本体の中空内にその軸方向に沿って配置された鉄心及びこの鉄心に巻回された誘導コイルからなる磁束発生機構と、前記誘導コイルに供給する電力を制御することにより前記ローラ本体の温度を調整する温度調整機構と、前記ローラ本体の側周壁内に挿入して設けられており、ローラ本体表面の温度を検出する温度センサと、前記ローラ本体に設けられており、前記温度センサの検出信号をデジタル信号に変換して前記温度制御機構に無線送信する信号変換送信機構とを備え、前記信号変換送信機構に電力を供給する電源部が、加熱面がローラ本体側に接触して設けられ、冷却面が外気側に面して設けられて、ローラ本体側の温度と外気温との温度差を利用して発電する熱電変換素子を用いて構成されていることを特徴とする。
【0013】
ここで、「熱電変換素子の加熱面がローラ本体側に接触して設けられる」とは、ローラ本体に加熱面を直接又は熱良導体を介して接触させて設けることの他、ローラ本体に熱的に連続して設けられた別部材に直接又は熱良導体を介して接触させて設けることを含む。また、「熱電変換素子の冷却面が外気側に面して設けられる」とは、冷却面そのものが外気に接触して設けられることの他、外気に接触して設けられたヒートパイプ等の熱伝達素子に接触して設けられることを含む。
【0014】
このようなものであれば、温度センサの温度検出信号を温度調整機構に無線送信することによって、少なくとも温度センサの検出信号を温度調整機構に送信するための配線を不要とすることができ、ローラ本体周辺の配線を簡素化することができる。これにより、ローラ本体の設置自由度を高めることができる。また、ローラ本体側の温度と外気温との温度差を利用して発電する熱電変換素子を用いて電源部を構成しているので、ローラ本体の熱を有効活用して電力供給することができるとともに、従来の発電機方式、太陽電池方式又は発電コイル方式に比べて構成を簡単化することができる。
【0015】
熱電変換素子の加熱面及び冷却面での温度差を可及的に大きくして熱電変換素子により生じる出力電圧(起電力)を可及的に大きくするためには、前記ローラ本体の両端部に設けられたジャーナルに前記熱電変換素子が設けられており、前記熱電変換素子の加熱面がジャーナルに接触して設けられており、前記熱電変換素子の冷却面には放熱フィンが設けられていることが望ましい。これならば、ローラ本体により生じる熱により加熱面を加熱しながら、ローラ本体の回転を利用して冷却面を冷却することができ、両面の温度差を可及的に大きくすることができる。また、冷却面に放熱フィンを設けることによって、ローラ本体の回転に伴い冷却面の熱が放熱フィンによって放熱されて冷却されることから、より一層温度差を大きくすることができる。
【0016】
このとき、ローラ本体の回転に伴い放熱フィンによる放熱が効率的に行われるようにするためには、前記放熱フィンが、前記ローラ本体の回転方向に沿って延びるように複数設けられていることが望ましい。
【0017】
その他の熱電変換素子の配置態様としては、前記熱電変換素子が、前記ローラ本体の中空内に設けられており、当該熱電変換素子の加熱面がローラ本体の内側周面に接触して設けられており、前記熱電変換素子の冷却面には、外部に延出して設けられたヒートパイプが接触して設けられていることが望ましい。これならば、熱電変換素子の加熱面がローラ本体の内側周面に接触して設けられているため、加熱面をローラ本体の温度と略同一に加熱することができるとともに、冷却面がヒートパイプにより外気温と略同一にされることから、熱電変換素子の加熱面及び冷却面の温度差を可及的に大きくすることができ、熱電変換素子により生じる出力電圧を可及的に大きくすることができる。
【0018】
このとき、ヒートパイプを可及的に冷却して、熱電変換素子の冷却面を冷却するためには、前記ヒートパイプの外側端部に放熱フィンが設けられていることが望ましい。
【0019】
熱電変換素子の出力電圧を有効活用するとともに、熱電変換素子の出力電圧が小さい場合に信号変換送信機構に動作を行わせるためには、前記信号変換送信機構に電力を供給する電源部が、熱電変換素子の他に二次電池を備えており、前記熱電変換素子の出力電圧が、前記信号変換送信機構の駆動電圧よりも大きい場合には、その余剰電圧を前記二次電池に充電させるとともに、前記熱電変換素子の出力電圧が、前記信号変換送信機構の駆動電圧よりも小さい場合には、その不足電圧を前記二次電池から出力するように構成している。これならば、ローラ本体が冷間状態であり、熱電変換素子に加熱面及び冷却面の温度差が十分でない場合であっても、信号変換送信機構を動作させることができる。
【0020】
前記ローラ本体が、その側周壁内に軸方向に沿って設けられて、気液二相の熱媒体が封入されたジャケット室を有することが望ましい。これならば、ローラ本体の軸方向の温度分布を均一にすることができ、ローラ本体の温度不均一によって熱電変換機構が設けられた部分が低温領域となってしまい、加熱面及び冷却面の温度差が十分に得られてないという不具合を解消することができる。
【発明の効果】
【0021】
このように構成した本発明によれば、ローラ本体周辺の信号ケーブルや電源ケーブルを無くして配線を簡素化するとともに、電源部の構成を可及的に簡単化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の模式的構成図である。
【図2】同実施形態の信号変換送信機構及びその周辺構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態の熱電変換素子の具体的構成を示す部分拡大斜視図である。
【図4】変形実施形態の熱電変換素子の具体的構成を示す模式図である。
【図5】熱電変換素子の放熱フィンの変形例を示す部分拡大斜視図である。
【図6】熱電変換素子の配置態様を示す図である。
【図7】変形実施形態に係る誘導発熱ローラ装置の模式的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明に係る誘導発熱ローラ装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100は、例えばプラスチックフィルム、紙、布、不織布、合成繊維、金属箔等のシート材又はウェブ材、線(糸)材等の連続熱処理工程等において用いられるものであり、図1に示すように、回転可能に設けられた中空円筒状のローラ本体2と、このローラ本体2内に収容される磁束発生機構3と、を備えている。
【0025】
ローラ本体2の両端部には、ジャーナル41が一体的に取り付けられている。このジャーナル41は、中空の駆動軸42が一体に構成されたフランジ形状をなすものである。このジャーナル41は、ローラ本体2の端部開口を覆うように当該本体2の端部に連結されている。また、駆動軸42は、転がり軸受等の軸受51を介して基台52に回転自在に支持されている。そして、ローラ本体2は、例えばモータ等により外部から与えられる駆動力によって回転されるように構成されている。
【0026】
また、ローラ本体2の側周壁21には、長手方向(軸方向)に延びる気液二相の熱媒体を封入するジャケット室21Aが、周方向に複数形成されている。当該複数のジャケット室21Aの端部は、隣接するジャケット室21Aの端部と連通している。このジャケット室21A内に封入した気液二相の熱媒体の潜熱移動によりローラ本体2の表面温度を均一化する。
【0027】
さらに、ローラ本体2には、ローラ本体2の表面温度を検出するための例えばPt100等の測温抵抗体又は例えばK熱電対等の熱電対からなる温度センサT1が設けられている。本実施形態では、ローラ本体2においてジャケット室21Aとローラ本体2の外周面との間に細孔を穿ち、この細孔に温度センサT1を挿入することによって、温度センサT1がローラ本体2の側周壁内に設けられる。なお、符号L1は、温度センサT1の検出信号を後述する信号変換送信機構9に伝送するためのリード線である。
【0028】
磁束発生機構3は、円筒形状をなす円筒状鉄心31と、当該円筒状鉄心31の外側周面に巻装された誘導コイル32とから構成されている。円筒状鉄心31の両端にはそれぞれ、支持ロッド6が取り付けられている。この支持ロッド6は、それぞれ駆動軸42の内部に挿通されており、転がり軸受等の軸受7を介して駆動軸42に対して回転自在に支持されている。これにより、磁束発生機構3は、ローラ本体2の内部において、宙づり状態で支持されることになる。また、磁束発生機構3は、図示しない廻り止めにより架台との間で回転が拘束されている。誘導コイル32には、リード線L2が接続されており、このリード線L2には、交流電圧を印加するための交流電源Pが後述する温度調整機構8を介して接続されている。
【0029】
このような磁束発生機構3により、誘導コイル32に交流電圧が印加されると交番磁束が発生し、その交番磁束はローラ本体2の側周壁21を通過する。この通過によりローラ本体2に誘導電流が発生し、その誘導電流でローラ本体2はジュール発熱する。ローラ本体2は、内部に設けられたジャケット室21Aにより、ローラ本体2の軸方向の表面温度を均一化する。
【0030】
しかして、本実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、誘導コイル32に供給する電力を制御することによりローラ本体2の温度を調整する温度調整機構8と、温度センサT1の検出信号をデジタル信号に変換して温度制御機構8に無線送信する信号変換送信機構9とを備えている。
【0031】
温度調整機構8は、誘導コイル32と交流電源Pとの間に介在して設けられており、交流電源Pから誘導コイル32に印加される交流電圧を調整することによって、ローラ本体2の表面温度を調整するものである。具体的な構成は、図1に示すように、受信用アンテナ、受信IC、マイコン及びD/Aコンバータを有する受信部81と、当該受信部81により変換されたアナログ信号である温度検出信号と予め設定したローラ本体2の表面温度と比較し、その偏差を算出する温度調整部82と、当該温度調整部82により得られた偏差に応じて誘導コイル32に印加する電圧を制御する例えばサイリスタユニットからなる電圧調整部83とを備えている。
【0032】
信号変換送信機構9は、ジャーナル41に固定して設けられており、温度センサT1がリード線L1を介して接続されるとともに、その温度検出信号をアナログ信号から例えば16ビットのデジタル信号に変換して温度調整機構8の受信部81に無線送信するものである。具体的な構成は、図2に示すように、温度センサT1により得られるアナログ信号である温度検出信号を無線伝送に最適なデジタル信号(例えば16ビット)に変換する温度検出信号変換部91と、変換されたデジタル信号を温度調整機構8の受信部81に送信する、受信用アンテナ、受信IC、マイコンを有する送信部92とを備えている。温度検出信号変換部91と送信部92とはリード線L4により接続されている。
【0033】
さらに本実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、信号変換送信機構9に電力を供給する電源部10が、ローラ本体2の熱エネルギを直接電気エネルギに変換する熱電変換素子101を用いて構成されている。具体的に熱電変換素子101は、図3に示すように、加熱面101aがローラ本体2側に接触して設けられ、冷却面101bが外気側に面して設けられて、ローラ本体2側の温度と外気温との温度差を利用して発電するゼーベック素子である。なお、熱電変換素子101は、定電圧回路102を介して、リード線L3によって信号変換送信機構9に接続されている(図2参照)。
【0034】
具体的には、熱電変換素子101は、ローラ本体2の端部に連結されたジャーナル41の少なくとも一方に1又は複数設けられている。このとき、熱電変換素子101は、信号変換送信機構9が設けられたジャーナル41に設けることが、リード線L1の配線の簡単化の観点から望ましい(図2参照)。そして、熱電変換素子101は、その加熱面101aがジャーナル41のフランジ部外端面に接触して設けられており、冷却面101bには放熱フィン103が設けられている(図3参照)。
【0035】
ここで、ジャーナル41のフランジ部との熱伝導率を向上させるために、熱電変換素子101の加熱面101aとフランジ部端面との間にサーモグリス等の熱良導体(不図示)を介在させている。また、熱電変換素子101は、ジャーナル41のフランジ部端面において径方向外縁部に設けられていることが望ましい。これにより、熱電変換素子101の加熱面101aをローラ本体2の表面に可及的に近づけることができ、加熱面101aを加熱し易くすることができる。また、ローラ本体2の回転により、熱電変換素子101の移動距離を大きくして冷却面101bの冷却効率を向上させることをこともできる。
【0036】
熱電変換素子101の冷却面101bに密着して設けられた放熱フィン103は、ローラ本体2の回転方向に沿って延びるように複数設けられている。この放熱フィン103は、例えばアルミニウムや銅等の熱伝導性に優れた材質からなるものであり、冷却面101bから外気への放熱を促進している。本実施形態では、放熱フィン103の加工を容易にする観点から平板状の放熱フィン103を回転方向に沿って設けている。また、加熱面101aと同様にして、冷却面101bと放熱フィン103の基材との間に熱良導体(不図示)を介在させている。この放熱フィン103により、ローラ本体2の回転により放熱フィン103から外気への熱伝達(放熱)が促進されて、熱電変換素子101の両面101a、101b間の温度差が大きくなり、熱起電力を大きくすることができる。
【0037】
さらに、電源部10は、熱電変換素子101の他に二次電池104を備えている。この二次電池104は、過充電保護回路105を介して熱電変換素子101に接続されている。
【0038】
この二次電池104には、熱電変換素子101から出力された出力電圧が充電される。具体的には、熱電変換素子101の出力電圧が、信号変換送信機構9の駆動電圧よりも大きい場合に、その余剰電圧が二次電池104に充電される。また、ローラ本体2の温度が低く熱電変換素子101が十分に機能していない等により、熱電変換素子101の出力電圧が信号変換送信機構9の駆動電圧よりも小さい場合には、その不足電圧を二次電池104から出力する。
【0039】
また、電源部10には、二次電池充電用の外部端子(不図示)が設けられている。これにより、熱電変換素子101により二次電池104が充電されていない場合(例えば誘導発熱ローラ装置100の起動後から一定時間の間)であっても、事前に別途電源ケーブルを外部端子に接続して、二次電池104に充填することができるので、二次電池104の充電量不足により信号変換送信機構9が動作しないという不具合を解消することができる。
【0040】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る誘導発熱ローラ装置100によれば、温度センサT1の温度検出信号を温度調整機構8に無線送信することによって、少なくとも温度センサT1の温度検出信号を温度調整機構8に送信するための配線を不要とすることができ、ローラ本体2周辺の配線を簡素化することができる。これにより、ローラ本体2の設置自由度を高めることができる。
【0041】
また、ローラ本体2側の温度と外気温との温度差を利用して発電する熱電変換素子101を用いて電源部10を構成しているので、ローラ本体2の熱を有効活用して電力供給することができるとともに、従来の発電機方式、太陽電池方式又は発電コイル方式に比べて構成を簡単化することができる。
【0042】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0043】
例えば、前記実施形態の熱電変換素子101の配置の他、以下のように配置しても良い。
つまり、図4に示すように、熱電変換素子101をローラ本体2の中空内に設けて、当該熱電変換素子101の加熱面101aをローラ本体2の内側周面に接触して設けるとともに、熱電変換素子101の冷却面101bに伝熱部材106を介してヒートパイプ107の一端部107aを接続している。なお、ローラ本体2の中空内において、熱電変換素子101及びヒートパイプ107の一端部107aを覆うように断熱材からなるカバー108が設けられている。また、ヒートパイプ107の他端部107bである外側端部は、ジャーナル41に設けられた貫通孔41hからローラ本体2の外部に延出されており、その端部には放熱フィン109が設けられている。放熱フィン109は、回転方向に沿って設けられた例えば円板状をなすものである。このように構成することで、熱電変換素子101の冷却面101bを冷却することができ、熱電変換素子101の両面101a、101b間に十分な温度差をつけることができる。なお、図4の符号110は、ジャーナル41の端面から突き出たヒートパイプ107及び放熱フィン109と外部との接触を防止するための、パンチングメタル等の通気性保護カバー110である。
【0044】
また、前記実施形態の放熱フィン103は、平板状をなすものであったが、図5に示すように、ローラ本体2の回転方向に沿って湾曲した湾曲板状をなすものであっても良い。これにより、ローラ本体2の回転中において放熱フィン103により生じる回転抵抗を可及的に小さくすることができる。また、放熱フィン103と外気との接触面積を大きくすることができ、放熱効率を向上させることができる。なお、放熱フィン103は、板状をなすものの他、棒状をなすものであっても良い。
【0045】
さらに、前記実施形態においては、複数の熱電変換素子を用いた場合のその配置態様については特に言及していないが、例えば、図6に示すように、ジャーナルのフランジ部端面に周方向に等間隔に設けること(図6(A)参照)や、径方向において異なる位置に設けること(図6(B)参照)等が考えられる。また、それら複数の熱電変換素子のうち、一部又は全部を直列接続しても良いし、並列接続しても良い。
【0046】
さらに、前記実施形態では、両持ち式の誘導発熱ローラ装置について説明したが、片持ち式の誘導発熱ローラ装置に適用することもできる。具体的に片持ち式の誘導発熱ローラ装置Xは、図7に示すように、底部中央部に軸嵌合部を有する有底円筒状のローラ本体X1と、ローラ本体X1の中空内部に挿入され先端部がローラ本体X1の軸嵌合部に嵌合締結された回転軸M1と、回転軸M1を軸受を介して支持する軸受ハウジング(機台)X2と、ローラ本体X1の内周面に沿うように軸受ハウジングX2に固定されてローラ本体X1を発熱する誘導発熱機構X3とを備えている。そして、温度センサT1が、ローラ本体X1の先端側周壁内に配置されており、当該温度センサT1の検出信号は、リード線L5(L1とL3からなる。)を介して、信号変換送信機構9に送られる。この信号変換送信機構9は、回転軸M1の後端部に設けられている。また、信号送信返信機構の電源部は、ローラ本体X1の先端面に設けられている。その他の構成は前記実施形態と同様である。
【0047】
その上、熱電変換素子に設けられた放熱フィンを外部から強制的に冷却する冷却機構を設けても良い。例えば、放熱フィンに冷却された空気を送風するようにしても良いし、冷却水を循環させる冷却水流通管を放熱フィン近傍に設けても良い。
【0048】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
100 ・・・誘導発熱ローラ装置
2 ・・・ローラ本体
21A ・・・ジャケット室
3 ・・・磁束発生機構
31 ・・・鉄心
32 ・・・誘導コイル
41 ・・・ジャーナル
T1 ・・・温度センサ
8 ・・・温度調整機構
9 ・・・信号変換送信機構
10 ・・・電源部
101 ・・・熱電変換素子(ゼーベック素子)
101a・・・加熱面
101b・・・冷却面
103 ・・・放熱フィン
104 ・・・二次電池
107 ・・・ヒートパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のローラ本体と、
前記ローラ本体の中空内にその軸方向に沿って配置された鉄心及びこの鉄心に巻回された誘導コイルからなる磁束発生機構と、
前記誘導コイルに供給する電力を制御することにより前記ローラ本体の温度を調整する温度調整機構と、
前記ローラ本体の側周壁内に挿入して設けられており、ローラ本体表面の温度を検出する温度センサと、
前記ローラ本体に設けられており、前記温度センサの検出信号をデジタル信号に変換して前記温度制御機構に無線送信する信号変換送信機構とを備え、
前記信号変換送信機構に電力を供給する電源部が、加熱面がローラ本体側に接触して設けられ、冷却面が外気側に面して設けられて、ローラ本体側の温度と外気温との温度差を利用して発電する熱電変換素子を用いて構成されている誘導発熱ローラ装置。
【請求項2】
前記ローラ本体の両端部に設けられたジャーナルに前記熱電変換素子が設けられており、
前記熱電変換素子の加熱面が前記ジャーナルに接触して設けられており、前記熱電変換素子の冷却面には放熱フィンが設けられている請求項1記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項3】
前記放熱フィンが、前記ローラ本体の回転方向に沿って延びるように複数設けられている請求項2記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項4】
前記熱電変換素子が、前記ローラ本体の中空内に設けられており、当該熱電変換素子の加熱面がローラ本体の内側周面に接触して設けられており、前記熱電変換素子の冷却面には、外部に延出して設けられたヒートパイプが接触して設けられている請求項1記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項5】
前記ヒートパイプの外側端部に放熱フィンが設けられている請求項4記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項6】
前記信号変換送信機構に電力を供給する電源部が、熱電変換素子の他に二次電池を備えており、
前記熱電変換素子の出力電圧が、前記信号変換送信機構の駆動電圧よりも大きい場合には、その余剰電圧を前記二次電池に充電させるとともに、前記熱電変換素子の出力電圧が、前記信号変換送信機構の駆動電圧よりも小さい場合には、その不足電圧を前記二次電池から出力するように構成している請求項1、2、3、4又は5記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項7】
前記ローラ本体が、その側周壁内に軸方向に沿って設けられて、気液二相の熱媒体が封入されたジャケット室を有する請求項1、2、3、4、5又は6記載の誘導発熱ローラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−14845(P2012−14845A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147153(P2010−147153)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】