説明

誘雷装置、防雷装置、および落雷防止システム

【課題】背の高い避雷針を設置せずとも建造物Kへの落雷を防止できる誘雷装置1および落雷防止システム9を提供する
【解決手段】誘雷装置に、プラスに帯電する外壁3a(またはプラス帯電翼11a)と、該外壁3aをプラスに帯電させるコロナ放電装置4a(または駆動部14)と、マイナスに帯電する外壁3b(またはマイナス帯電翼11b)と、該外壁3bをマイナスに帯電させるコロナ放電装置4b(または駆動部14)とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば落雷の方向を誘導し、ビルや風力発電装置、あるいは船といった建造物を落雷から保護するような誘雷装置および落雷防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雷は樹木や鉄塔、ビルなど、背の高いものに落ちやすいことが知られている。背の高い建造物を落雷から防止する方法としては、落雷防止対象となる建造物よりも背の高い避雷針を設置する方法が提案されている。(特許文献1参照)。
この避雷針によれば、雷を避雷針に落とすことができ、落雷防止対象の建造物を落雷から保護することができる。
【0003】
しかし、避雷針にて落雷を防止するためには、落雷防止対象となる建造物よりも背の高い避雷針を建造し設置する必要があった。そして、落雷防止対象となる建造物が例えば高さ100mの風力発電装置である場合など、非常に背の高い装置であれば、これより背の高い避雷針を設置するには非常にコストがかかるという問題点があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−342518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上述の問題に鑑みて、背の高い避雷針を設置せずとも落雷防止対象への落雷を防止できる誘雷装置および落雷防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、プラス又はマイナスに帯電する帯電体と、該帯電体をプラス又はマイナスに帯電させる帯電手段とを備えた誘雷装置とすることができる。
【0007】
またこの発明は、少なくとも前記帯電体を落雷防止対象の最上位置に備え、
前記帯電手段により前記帯電体を帯電させる電位を、前記最上位置と地上面との距離に対応する電位差を打ち消す電位に設定することが好ましい。
【0008】
この発明は、グランドに接続された導電体と、該導電体と前記帯電体との間に介装される絶縁体とを備え、該絶縁体に、前記帯電体に落雷した際に絶縁破壊されて前記帯電体から前記導電体へ雷電荷を通過許容する絶縁破壊部を備えることができる。
【0009】
なお、絶縁体は、例えば、シリコン、合成樹脂、ゴム、シリコン、ガラス、などの部材、さらには油などの液体により形成することができる。
【0010】
前記絶縁破壊部は、例えば、前記絶縁体の肉厚を部分的に薄くした薄肉部である。
【0011】
また、この発明は、前記帯電手段により前記帯電体を帯電させる電位を、落雷防止対象の最上位置と地上面との距離に対応する電位差と同等かそれより高い電位に設定することが好ましい。
【0012】
また、この発明は、少なくとも前記帯電体を、地上面に対して上昇させる昇降手段を備えることもできる。
【0013】
前記昇降手段は、例えば、テーブル式、リフト式、はしご式など方式により、少なくとも前記帯電体を昇降させる手段を含む。
【0014】
この発明は、少なくとも前記帯電体を移動させる移動手段を備えることができる。さらに前記移動手段には、前記導電体を備え、該導電体がグランドに対して離間可能に接続されるグランド接続手段を備えることが好ましい。
【0015】
またこの発明は、プラスに帯電するプラス帯電体と、マイナスに帯電するマイナス帯電体と、前記プラス帯電体をプラスに帯電させ前記マイナス帯電体をマイナスに帯電させる帯電手段とを備えた誘雷装置とすることができる。
【0016】
この発明の落雷防止システムは、上述した誘雷装置を備え、落雷防止対象の接地部分を絶縁部材で被覆することもできる。
【0017】
また、この発明は、防雷装置プラス又はマイナスの電荷を放散する電荷放散体と、該電荷放散体に電力を供給してプラス又はマイナスの電荷を放散させる電荷放散手段とを備えた防雷装置を構成することもできる。
【0018】
この構成の防雷装置には、プラス又はマイナスに帯電する帯電体と、該帯電体を、前記電荷放散体が放散する電荷とは逆の電荷に帯電させる帯電手段とを備えることもできる。
【0019】
前記帯電手段は、昇圧手段、又は、コロナ放電装置および駆動部により構成することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明により、背の高い避雷針を設置せずとも落雷防止対象への落雷を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、誘雷装置1の概略構成を示す構成図である。
誘雷装置1は、プラス帯電ユニット2aと、マイナス帯電ユニット2bとで構成されている。
【0023】
プラス帯電ユニット2aは、筐体全体に外壁3aが設けられ、その内部にコロナ放電装置4aが設けられている。
【0024】
コロナ放電装置4aは、外壁3aの天板に向けてコロナ放電し、外壁3aの天板をプラスに帯電させる。これにより、外壁3aはプラスに帯電し、特に天板部分がプラスに帯電することになる。このプラス帯電ユニット2aのプラスの帯電は、例えば+200V程度に帯電させるとよい。
【0025】
マイナス帯電ユニット2bは、筐体全体に外壁3bが設けられ、その内部にコロナ放電装置4bが設けられている。
【0026】
コロナ放電装置4bは、外壁3bの天板に向けてコロナ放電し、外壁3bの天板をマイナスに帯電させる。これにより、外壁3bはマイナスに帯電し、特に天板部分がマイナスに帯電することになる。このマイナス帯電ユニット2bのマイナスの帯電は、例えば−200V程度に帯電させるとよい。
【0027】
これらのプラスの帯電とマイナスの帯電は、雷雲が生じる等して落雷のおそれが発生した場合に実行すればよい。したがって、誘雷装置1には、図示省略する押下ボタンなどの入力部を備え、該入力部に実行開始の入力を受けるとプラス帯電ユニット2aのプラスの帯電とマイナス帯電ユニット2bのマイナスの帯電を実行する構成とすればよい。
【0028】
図2は、誘雷装置1の概略構成を示すブロック図である。
誘雷装置1には、1つの電源部6が設けられている。この電源部6は、コロナ放電装置4aおよびコロナ放電装置4bの両方に電力を供給する。これにより、電力源を1つとして装置を簡素化している。つまり、電源部6が1つで済むことに加え、電源部6からの電力供給を開始するという1つの操作で、コロナ放電装置4aおよびコロナ放電装置4bの両方が駆動し、それぞれスイッチONとするようなわずらわしさを排除できる。
【0029】
なお、コロナ放電装置4aおよびコロナ放電装置4bのコロナ放電の仕組みは、コロナ放電装置4aおよびコロナ放電装置4bのそれぞれに尖った針で構成される電極針を設け、この電極針に前記電源部6からの高電圧を印加することで、周囲にイオンを放ちコロナ放電する周知の仕組みとすれば良い。
【0030】
図3は、落雷防止システム9の構成と、落雷の様子を説明する説明図である。
落雷防止システム9は、上述した誘雷装置1が設置されると共に、落雷防止対象となる建造物Kの設置面に絶縁部材8を設けることで構成されている。この絶縁部材8は、充分な強度を有するゴム材などにより、雷を遮断するのに充分な厚みに形成されている。この絶縁部材8により、建造物Kを電気的に地面Aから浮かした状態とし、落雷時に地面Aを這ってくるサージ電圧から建造物Kの電子機器等を保護している。
【0031】
雷雲が発生するなどして落雷の恐れがある状況になると、誘雷装置1の電源部6を電源ONにし、コロナ放電装置4a,4bから外壁3a,3bに向けてそれぞれプラスとマイナスの放電を行い、外壁3aをプラスに帯電(例えば+200V)させ、外壁3bをマイナスに帯電(例えば−200V)させる。
【0032】
落雷防止対象となる建造物Kは、地面Aよりも充分高い位置にあるため、数万Vから1億Vに帯電している雷雲から地面Aに放電するとき、通常であれば雷雲に最も近い建造物Kに落雷することになる。
【0033】
ここで、雷にはプラスとマイナスの雷があり、上空の雷雲から地面Aに落ちてくる雷Tは、殆どの場合がマイナスである。
このため、プラスに帯電しているプラス帯電ユニット2aの外壁3aと引き合い、雷Tは外壁3aに落ちることになる。
【0034】
外壁3aのプラスの帯電が弱いものであれば、建造物Kに落雷する恐れが残るが、例えば+200Vなど充分に強く帯電させているため、雷Tを建造物Kではなく外壁3aに誘導して該外壁3aに落とすことができる。
【0035】
仮に雷Tがプラスの雷であった場合は、マイナスに帯電しているマイナス帯電ユニット2bの外壁3bに落雷することになり、この場合も建造物Kを落雷から保護することができる。
【0036】
このように、雷がプラスであってもマイナスであっても、落雷保護対象である建造物Kを落雷から確実に保護することができる。
本実施形態の誘雷装置1は、プラス帯電ユニット2aとマイナス帯電ユニット2bをセットにして1つの装置としているため、利用者は落雷防止対象の設置場所において落ちてくる雷の性質がプラスかマイナスかを知らずとも、誘雷装置1を設置して作動させるだけで雷を誘雷装置1に落とすことができ、建造物Kなどの落雷防止対象を落雷から保護できる。
【実施例2】
【0037】
図4は、実施例2の誘雷装置10の概略構成を示す構成図である。
誘雷装置10は、モータ等で構成される駆動部14の駆動力によって回転するプラス帯電翼11aとマイナス帯電翼11bとが設けられている。
【0038】
駆動部14には、該駆動部14によって回転する絶縁シャフト13a,13bが対象に設けられており、絶縁シャフト13a,13bとプラス帯電翼11aとマイナス帯電翼11bの間にはそれぞれシャフト12a,12bが設けられている。従って、駆動部14による回転力は、絶縁シャフト13a,13bおよびシャフト12a,12bを介してプラス帯電翼11aおよびマイナス帯電翼11bに伝達される。
【0039】
図5は、プラス帯電翼11aとマイナス帯電翼11bの構成を示す断面図である。
プラス帯電翼11aは、図5(A)に示すように、金属などの硬質部材で構成された筐体21の外周全体にゴムなどによる絶縁層22が設けられており、さらに絶縁層22の外周全体にプラス帯電層23aが設けられている。プラス帯電層23aは、風があたるとプラスに帯電するナイロンなどの部材で構成されている。このため、プラス帯電翼11aは、回転している間常にプラス帯電層23aがプラスに帯電することになる。また、プラス帯電層23aの内側には絶縁層22が全体に渡って設けられているため、帯電したプラスの電荷が誘雷装置10を通じて放電してしまうことを防止でき、効率よくプラス帯電することができる。
【0040】
マイナス帯電翼11bは、図5(B)に示すように、金属などの硬質部材で構成された筐体21の外周全体にゴムなどによる絶縁層22が設けられており、さらに絶縁層22の外周全体にマイナス帯電層23bが設けられている。マイナス帯電層23bは、風があたるとマイナスに帯電するポリエステルや革などの部材で構成されている。このため、マイナス帯電翼11bは、回転している間常にマイナス帯電層23bがマイナスに帯電することになる。また、マイナス帯電層23bの内側には絶縁層22が全体に渡って設けられているため、帯電したマイナスの電荷が誘雷装置10を通じて放電してしまうことを防止でき、効率よくマイナス帯電することができる。
【0041】
以上の構成により、1つの駆動部14により、プラス帯電翼11aとマイナス帯電翼11bをそれぞれプラスとマイナスに帯電させることができる。
従って、マイナスの雷はプラス帯電翼11aに落とすことができ、プラスの雷はマイナス帯電翼11bに落とすことができる。
【0042】
なお、上述した構成以外にも、例えば交流電流を整流してプラスとマイナスに分け、このプラスとマイナスを用いてプラスに帯電する部分とマイナスに帯電する部分を有する誘雷装置を構成してもよい。
この場合でも、実施例1,2と同様の効果を得ることができる。
【0043】
また、プラスとマイナスのセットで構成したが、いずれか一方の構成としてもよい。
例えばプラスに帯電するプラス帯電ユニット2aまたはプラス帯電翼11aを備え、マイナスに帯電するマイナス帯電ユニット2bまたはマイナス帯電翼11bを備えない構成とすることができる。この場合も、プラス帯電ユニット2aまたはプラス帯電翼11にマイナスの雷を落とすことができ、雷を誘導することができる。
【実施例3】
【0044】
図6は、実施例3の誘雷装置20の概略構成を示す構成図である。
実施例3における誘雷装置20は、その上部にプラス帯電ユニット22aを備えている。
【0045】
前記誘雷装置20の下部には、金属板などの導電性の有する板状の導電体25を備えている。前記誘雷装置20における導電体25とプラス帯電ユニット22aとの間には、絶縁体26が介装されている。
前記プラス帯電ユニット22aは、実施例1の誘雷装置1のプラス帯電ユニット2aと同様に筐体全体に外壁23aが設けられ、その内部にコロナ放電装置24aが設けられている。なお、誘雷装置20は、その上部にプラスの雷のときに用いるマイナス帯電ユニットを備えることもできる。
【0046】
また、前記導電体25は、地面Aに設置され、地中に配したグランドG(アース)と接続されている。
【0047】
さらにまた、前記絶縁体26の上面には、前記プラス帯電ユニット22aの略下半分を収納する凹状の収納部26cが設けられている。
【0048】
さらに、前記絶縁体26の底面は、前記導電体25の上面に接地可能な平坦状であるが、底面中央部から上方へ凹んだ底面視円形の凹部26aが設けられている。このため、前記絶縁体26は、前記凹部26aで薄肉となっており、該凹部26aと前記導電体25との間には、空間部Bが形成されている。
【0049】
なお、前記誘雷装置20には、雷Tがプラス帯電ユニット22aへより誘導されるよう、図6中の仮想線に示すように該プラス帯電ユニット22aの上面から針28を立設してもよい。
【0050】
以下では、上述した誘雷装置20の奏する作用、効果について図7から図9を用いて説明する。
なお、図7から図9は、実施例3の誘雷装置20を模式的に示した該誘雷装置20の作用説明図であり、殊に図8は、図7(b)中の領域Xに相当する部位を拡大して示した説明図である。
【0051】
まず、図7(a)の模式図に示すように、前記凹部26aは、落雷のおそれが発生した場合に、誘雷装置20における実施例1で説明した電源部6をONにし、プラス帯電ユニット22aの外壁23aをコロナ放電装置24aの放電によってプラスに帯電(例えば、+200Vや+1000V等)させておく。
【0052】
このように外壁23aをプラスに帯電させることにより、図7(b)の模式図に示すようにマイナスの雷を建造物ではなく外壁23aに誘導して落とす。
【0053】
落雷すると、プラス帯電ユニット22aの外壁23aがマイナスに帯電し、外壁23aと地面Aとの間の電位差が非常に大きくなる(数万V〜1億V)。このため、図8(c)の模式図に示すように絶縁体26の薄肉部26bを飛び越えて導電体25に放電し、図8(b)に示すように絶縁破壊される。
【0054】
その後は、外壁23aの雷電荷は、プラス帯電ユニット22aと導電体25との間において外壁23aから直接、導電体25へ向けて放電される。
【0055】
以上により、図9(e)の模式図に示すように導電体25には、雷電荷が流れ込むことになるが、導電体25は、地中に設けられたグランドGに接続されているため、図9(f)の模式図に示すように、絶縁性を有する地面Aに埋設されているグランドG側へと雷電荷を流すことができる。
【0056】
実施例3の誘雷装置20は、プラス帯電ユニット22aと導電体25との間に絶縁体26を介在しているため、プラス帯電ユニット22aに帯電させたプラスの電荷が導電体25等に流れることなく、効率よく溜めることができる。落雷したときは、絶縁体26の絶縁破壊によって雷電荷をグランドGへ流し込むことができる。
【0057】
また、プラス帯電ユニット22aを絶縁体26により収納することにより、コロナ放電装置24aにより外壁23aをプラスに帯電させたとき、その電荷が不用意に地中へ流出してしまうこともなく、帯電に要した消費電力を無駄にしてしまうこともない。
【0058】
なお、絶縁体26が絶縁破壊して雷電荷が流れる部位は、薄肉部26bに限らない。例えば、絶縁体26の収納部26cの底側に凹部26bを形成してもよく、また、外壁23aから導電体25へ直接、放電するよう絶縁体26の中央部に連通孔を形成してもよい。
【実施例4】
【0059】
実施例4の誘雷装置30は、図10に示すように、前記プラス帯電ユニット22a、前記導電体25、及び、前記絶縁体26(以下「誘雷装置本体20a」という。)を地面Aに対して上昇させる昇降装置32を備えている。
なお、図10は、実施例4の誘雷装置30の概略構成を示す構成図である。
具体的に、前記昇降装置32は、誘雷装置本体20aを下側から支持し、地面Aに対して上方へ突き出し、或いは、下方へ退避するロッド33と、該ロッド33を、油圧を利用して可動させる可動装置34を備えている。
【0060】
可動装置34は、地中に埋設され、主に、誘雷装置本体20aの下側で起立状態に埋設された管35と、油タンク36と、管35と油タンク36との間に接続された2本の細管37a,37bを備えている。2本の細管37a,37bは、それぞれ管35の上下各側で接続され、途中部には、適宜、ポンプ39a、方向制御弁39b、流量制御弁39cが設けられている。
【0061】
また、前記管35の内部には、ピストン40が備えられ、該ピストン40は、前記ロッド33の軸方向の一端に接続された状態で管35内をスライド移動する。
【0062】
上述した構成により、ロッド33を上方に可動させて誘雷装置本体20aを地面Aに対して上昇させることができる。また、前記ロッド33を下方に可動させて誘雷装置本体20aを地面Aに対して下降することができる。
【0063】
前記構成の誘雷装置30は、例えば、図11に示すように、雷雲が発生しやすい街から少し外れた場所に設けておくとよい。
特に街の風上に誘雷装置30を設置した場合は、雷雲が街に届く前に放電させることができ、街への落雷を防止することができる。
なお、図11は、実施例4の誘雷装置30の作用の説明図である。
【0064】
このような場所に誘雷装置30を設けておき、雲が徐々に帯電し雷雲へと発達しながら街へ近づいてくると、誘雷装置本体20aを昇降装置32により上昇させる。これにより、雷雲が未だ完全に発達していない段階であっても雷雲と誘雷装置本体20aとの距離に対応する電位差を高めることができ、プラス帯電ユニット22aに誘雷させることができる。
【0065】
これにより、街へ到達する前に雷雲の電位を下げることができるため、街へ到達しても落雷してしまうことがない。
なお、実施例4の誘雷装置30は、勿論、街中に設けてもよい。この場合、雷雲が発生したとき、プラス帯電ユニット22aに帯電させる電位差が、建造物の最上位置と地上面との距離に対応する電位差と同等かそれより高い電位になる高さにまで誘雷装置本体20aを、昇降装置32により上昇させるとよい。
これにより、プラス帯電ユニット22aに誘雷させることができる。
【実施例5】
【0066】
図12は、実施例5の誘雷装置40の概略構成を示す構成図である。
実施例5の誘雷装置40は、プラス帯電ユニット42a、前記絶縁体26、及び、前記導電体25を備えている。
【0067】
前記プラス帯電ユニット42aの上面には、水平回転するようプラス帯電翼41aが設けられている。
【0068】
プラス帯電翼41aは、実施例2のプラス帯電翼11aと同様に、その表面にプラス帯電層53aが設けられ、該プラス帯電層53aは、風があたるとプラスに帯電するナイロンなどの部材で構成されている。
【0069】
さらに、前記プラス帯電ユニット42aの内部には、コロナ放電装置4aの代わりにプラス帯電翼41aを駆動力により回転させる駆動部44を備えている。
【0070】
上述した構成により、実施例5の誘雷装置40は、実施例2の誘雷装置10と同様にプラス帯電翼41aをプラスに帯電させることができるため、マイナスの雷を落とすことができる。
【0071】
なお、上述したプラス帯電翼41aを備えた誘雷装置40は、実施例4の昇降装置32を備えることもできる。
【0072】
実施例4,5の誘雷装置30,40は、上述した構成のようにプラスに帯電させる構成に限らず、マイナスに帯電させる、或いは、プラスとマイナスのセットで帯電させる構成としてもよい。
【実施例6】
【0073】
また、誘雷装置は、上述した実施例の構成に限定せず、本実施例6のように構成することができる。例えば、図13の構成図に示すように、例えば、プラスに帯電するプラス帯電ユニット2aを備えず、マイナスに帯電するマイナス帯電ユニット2bを備える構成の誘雷装置1Aを、建造物Kの最上位置に設けて雷を避けるようにすることもできる。この場合、例えば船やビルなどの落雷防止対象の最も高い位置にマイナス帯電ユニット2bを備え、雷が落ちにくい状況にすることができる。
【0074】
このとき、マイナス帯電ユニット2bに帯電させるマイナスの電位は、前記最上位置と地上面との距離に対応する電位差を打ち消す電位に設定することが好ましい。
【0075】
これにより、上から落ちてくるマイナスの雷を避けることができる。つまり、マイナスに帯電している雷雲から見て、マイナスに帯電したマイナス帯電ユニット2bまたはマイナス帯電翼11bの電位は、高さの低い地面の電位よりさらに低いため、マイナス帯電ユニット2bまたはマイナス帯電翼11bに落雷することなく地面などに落雷することになる。従って、落雷対象物に落雷すること自体を防止することができる。
【0076】
また、上述した実施形態の誘雷装置20,30,40は、落雷により絶縁破壊した絶縁体26を、絶縁破壊していない新たな絶縁体26に取り換えることにより再利用することができる。
【実施例7】
【0077】
図14は、実施例6の誘雷装置100の概略構成を示す構成図である。
実施例7の誘雷装置100には、雷レーダ102、蓄電機能付き直流電源103、地電流制御装置104、昇圧器105、電位相切替器106、誘雷器107、及び、避雷電極108が備えられている。
【0078】
蓄電機能付き直流電源103と地電流制御装置104との間、地電流制御装置104と昇圧器105との間、昇圧器105と電位相切替器106との間は、それぞれ一対のケーブル111a,111bにより接続されている。
【0079】
蓄電機能付き直流電源103から電位相切替器106までの間における、前記一方のケーブル111aには、プラス側の電圧(プラス電圧P)が供給され、他方のケーブル111bには、マイナス側の電圧(マイナス電圧M)とが供給される。
【0080】
さらに、電位相切替器106と誘雷器107との間は、前記一方のケーブル111aが接続されている。
一方、電位相切替器106と避雷電極108との間は、前記他方のケーブル111bが接続されている。
【0081】
前記雷レーダ102は、雷雲が到来したことを検知するとともに、電界強度や雷雲の下部が正負いずれの電荷に帯電しているかも含めて検知する。なお、前記雷レーダ102は、街外れの風上側に設置していることが好ましい。
【0082】
さらに前記雷レーダ102は、本実施例7では、空気中の電位差の変化をもとに雷を検知する仕組みのものを採用しているが、この構成に限定せず、雷を検知できる装置であれば他の手段によるものであってもよい。
【0083】
前記蓄電機能付き直流電源103は、適宜、雷レーダ102、地電流制御装置104、昇圧器105、電位相切替器106、誘雷器107、及び、避雷電極108に電力を供給する電源として機能する。また、高電圧の放電を行うために必要となる電力を蓄電しておく蓄電機能を備えている。
【0084】
前記地電流制御装置104は、プラス側とマイナス側とがそれぞれグランド(GND)に接続され、この接続ラインにそれぞれ変流器112a,112bが設けられている。これにより、前記地電流制御装置104は、地面の電荷を測定する。
【0085】
前記昇圧器105は、地電流制御装置104側から供給されたプラス電圧Pとマイナス電圧Mとを昇圧させて各電圧の絶対値が高電位になるよう構成している。
【0086】
前記電位相切替器106は、誘雷器107、及び、避雷電極108のそれぞれに対してプラス電圧P又はマイナス電圧Mを供給するが、その際、雷雲が帯電している電荷に応じて供給する電圧の正負の組み合わせ(位相)を適宜、逆転させて供給することができる。
【0087】
例えば、誘雷器107側へプラス電圧Pを供給したときは、避雷電極108へは、マイナス電圧Mを供給する、又は、誘雷器107側へマイナス電圧Mを供給したときは、避雷電極108へは、プラス電圧Pを供給する切替えを行う。
【0088】
なお、前記雷雲が帯電している電荷とは、雷雲の下部に帯電している電荷のことを示す(以下同じ)。
【0089】
前記誘雷器107は、落雷しても安全な場所に設置されることが好ましい。これに対して、前記避雷電極108は、適宜、落雷を防止したい建物の最上部などに設置していることが好ましい。
【0090】
さらに、誘雷器107、及び、避雷電極108は、雷の直撃を受けたときに、この直撃雷をGNDへ逃がすための公知のSPDなどの雷保護装置109の一端が接続されている。この雷保護装置109の他端は、GNDに接続され、これにより、前記電位相切替器106などを雷の直撃から保護している。
【0091】
以下では、例えば、マイナスに帯電している雷が街に到来してきた場合において上述した構成の誘雷装置100が奏する作用について説明する。
【0092】
雷レーダ102による検知信号をもとに2本のケーブル111a,111bのそれぞれには、地電流制御装置104からプラス電圧P、又は、マイナス電圧Mが供給され、これらプラス電圧Pとマイナス電圧Mとの各電圧値は、昇圧器105で昇圧される。
【0093】
さらに、電位相切替器106は、供給されたプラス電圧Pとマイナス電圧Mとを正負そのままの電荷で、誘雷器107側と避雷電極108側へ供給する。すなわち、前記誘雷器107側へは、雷雲が帯電しているマイナスの電荷と逆のプラス電圧Pが供給される。これに対して、前記避雷電極108側へは、雷雲が帯電している電荷と同じマイナス電圧Mが供給されることになる。
【0094】
このように、誘雷器107を、雷雲が帯電している電荷と逆の電位に帯電させることにより、該誘雷器107に確実に雷を落とすことができ、落雷によりマイナスに帯電した誘雷器107の電荷は、グランドへと流し込むことができる。
一方、前記避雷電極108は、雷雲の下部と同じマイナスに帯電させることにより、マイナスの電荷どうしが反発しあって落雷を確実に防止することができる。
【0095】
続いてプラスに帯電した雷が街に到来してきた場合において上述した構成の誘雷装置100が奏する作用について説明する。
【0096】
上述したマイナスに帯電した雷が到来してきた場合と同様に、地電流制御装置104、昇圧器105を経て、雷レーダ102の検知信号をもとに昇圧されたプラス電圧(P)とマイナス電圧(M)とが電位相切替器106に供給される。
【0097】
電位相切替器106は、雷雲がプラスに帯電している場合は、2本のケーブル111a,111bから供給されたプラス電圧(P)とマイナス電圧(M)とを、それぞれ正負反転させてから誘雷器107、避雷電極108へ供給する。
【0098】
これにより、誘雷器107には、雷雲が帯電している電荷と逆のマイナス電圧(M)を供給してマイナスに帯電させることができ、該誘雷器107に確実に雷を落とすことができる。
【0099】
一方、前記避雷電極108は、雷雲の下部と同じプラス電圧(P)を供給してプラスに帯電させることにより、プラスの電荷どうしが反発しあって落雷を確実に防止することができる。
【実施例8】
【0100】
以下、実施例8の誘雷装置110の概略構成を図15を用いて説明する。
但し、以下の実施例において上述した誘雷装置100と同様の構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0101】
実施例8の誘雷装置110には、前記避雷電極108が設けられておらず、誘雷器107のみが設けられ、該誘雷器107と電位相切替器106との間には、2本のケーブル111a,111bが配されている。
【0102】
マイナスに帯電した雷が街に到来してきた場合において上述した構成の誘雷装置110が奏する作用について説明する。
【0103】
上述した実施例7での場合と同様に、地電流制御装置104、昇圧器105を経て、雷レーダ102の検知信号をもとに昇圧された所定の電圧が電位相切替器106へ供給される。
【0104】
さらに、電位相切替器106は、誘雷器107側へマイナス電圧Mは供給せずに、プラス電圧Pのみを、昇圧器105から供給された電荷のまま誘雷器107側へ供給する。すなわち、前記誘雷器107側へは、雷雲が帯電しているマイナスの電荷と逆のプラス電圧(P)が供給され、該誘雷器107は、プラスに帯電することになる。
【0105】
これに対して雷雲がプラスに帯電している場合、電位相切替器106は、誘雷器107側へプラス電圧Pは供給せずに、マイナス電圧(M)のみを、昇圧器105から供給された電荷のまま誘雷器107側へ供給する。すなわち、前記誘雷器107側へは、雷雲の下部が帯電している電荷と逆のマイナス電圧(M)が供給され、マイナスに帯電することになる。
【0106】
以上より、雷雲がプラス、又は、マイナスのいずれの電荷に帯電している場合であっても、誘雷器107を、雷雲が帯電している電荷と逆の電位に帯電させることにより、該誘雷器107に確実に雷を落とすことができる。
【実施例9】
【0107】
以下、実施例9の防雷装置120の概略構成を図16を用いて説明する。
実施例9の防雷装置120では、前記誘雷器107は備えておらず、代わりに電荷放散器121(イオナイザ)が設けられている。なお、実施例9の防雷装置120は、実施例7の防雷装置120と同様に避雷電極108を備えている。
【0108】
前記電荷放散器121は、電位相切替器106から供給された電圧をもとに生成された電荷(イオン)を空中放散する装置である。
【0109】
マイナスに帯電した雷が街に到来してきた場合において上述した構成の防雷装置120が奏する作用について説明する。
【0110】
上述した実施例の場合と同様に、地電流制御装置104、昇圧器105を経て、雷レーダ102の検知信号をもとに昇圧された所定の電圧が電位相切替器106へ供給される。
【0111】
さらに、電位相切替器106は、供給されたプラス電圧Pとマイナス電圧Mとを正負そのままの電荷で、それぞれ電荷放散器121側、避雷電極108側へ供給する。すなわち、前記電荷放散器121側へは、雷雲が帯電しているマイナスの電荷と逆のプラス電圧(P)が供給される。これに対して、前記避雷電極108側へは、雷雲の下部に帯電している電荷と同じマイナス電圧(M)が供給されることになる。
【0112】
これにより電荷放散器121から空気中に多量の正電荷(プラスイオン)が連続的に放散されることになり、電荷放散器121の上方では、図17に示すように、該正電荷による保護シールドZが構成される。この保護シールドZによって、地上に落雷する前に雷に帯電している電荷を放電させることができ、地面と雷雲との間の電界上昇を緩和する。
なお、図17は、マイナスに帯電した雷雲の下方で電荷放散器121から多数の正電荷(プラスイオン)を放散している様子を模式的に示した作用説明図である。
【0113】
一方、前記避雷電極108は、図示しないが、雷雲と同じマイナスの電荷に帯電させることにより、マイナスの電荷どうしが反発しあって落雷を確実に防止することができる。
【0114】
続いてプラスに帯電した雷が街に到来してきた場合において上述した構成の防雷装置120が奏する作用について説明する。
【0115】
上述したマイナスに帯電した雷が到来してきた場合と同様に、地電流制御装置104、昇圧器105を経て、雷レーダ102の検知信号をもとに昇圧された所定の電圧が電位相切替器106に供給される。
【0116】
雷雲がプラスに帯電している場合、電位相切替器106は、2本のケーブル111a,111bから供給されたプラス電圧(P)とマイナス電圧(M)とをそれぞれ正負反転させて電荷放散器121、避雷電極108へ供給する。
【0117】
これにより、電荷放散器121側へは、マイナス電圧(M)が供給され、該電荷放散器12から雷雲が帯電している電荷と逆のマイナスの電荷を多量に放散させることができるため、確実に落雷を防ぐことができる。
【0118】
一方、前記避雷電極108へは、プラス電圧(P)が供給され、雷雲の下部と同じプラスに帯電させることにより、プラスの電荷どうしが反発しあって落雷を確実に防止することができる。
【0119】
また、例えば、先の尖った金属などを地上に設置しておき、雷雲の電荷と反対の電荷(イオン)を発生させる公知の先端放電現象を利用した場合は、強風などの気象条件により電荷のずれが生じ、結果的に誤作動を起こしやすいという難点があった。これに対して本実施例9では、電荷放散器121側に電圧を供給して人工的に電荷を発生させる構成であるため、雷の電界強度に応じた多量の電荷を放散させて、確実に落雷を防ぐことができるといった利点を有する。
【実施例10】
【0120】
以下、実施例10の防雷装置130の概略構成を図18を用いて説明する。
実施例10の防雷装置130には、前記避雷電極108が設けられておらず、電位相切替器106と電荷放散器121との間には、2本のケーブル111a,111bが配されている。
【0121】
マイナスに帯電した雷が街に到来してきた場合において上述した構成の防雷装置130が奏する作用について説明する。
【0122】
上述した実施例の場合と同様に、地電流制御装置104、昇圧器105を経て、雷レーダ102の検知信号をもとに昇圧された所定の電圧が電位相切替器106へ供給される。
【0123】
さらに、電位相切替器106は、昇圧器105から供給された電荷のままのプラス電圧Pのみを電荷放散器121側へ供給する。
【0124】
これに対して雷雲がプラスに帯電している場合、電位相切替器106は、昇圧器105から供給された電荷のままのマイナス電圧(M)のみを電荷放散器121側へ供給する。
【0125】
以上より、雷雲がプラス、又は、マイナスのいずれの電荷に帯電している場合であっても、電荷放散器121から雷雲が帯電している電荷と逆の電荷を大量に放散させることにより、地面と雷雲との間の電界上昇を緩和し、地上に落雷する前に放電させ、結果的に落雷を防止することができる。
【0126】
また、上述した実施例7,8の誘雷装置100,110、及び、実施例9,10の防雷装置120,130は、上述した雷レーダ102を設置せずに他の手段により雷を検知する構成を備えてもよい。例えば、地電流制御装置104から地面に直流電気を流すことにより、雷が到来していること、及び、雷雲による電荷の電気量を計測してもよい。
【0127】
但し、上述した実施例のように雷レーダ102を備えることにより、雷雲の正確な検知が可能となるため好ましい。
【0128】
具体的に雷レーダ102を利用することにより、例えば、半径40km以上の広い範囲を検知することができる。これにより、昇圧器105により昇圧させる際に要する電力を蓄電機能付き直流電源103により蓄電する蓄電時間を十分、確保することができる。
【0129】
さらに、地面の電荷をもとに雷雲の存在を検知する場合、電荷自体が有する重力により、強風などの天候によって雷雲の電荷と地面の電荷とのズレが生じてしまうという難点を有する。これに対して、雷レーダ102を設けた場合、該雷レーダ102によって空中の電荷を検知できるため、正確に雷の到来を確認することが可能となる。
【0130】
さらにまた、上述した実施例7,8の誘雷装置100,110、及び、実施例9,10の防雷装置120,130は、それぞれ2つの電源を組み合わせて構成し、誘雷器107と避雷電極108との正負の電圧バランスを変更可能に構成してもよい。これにより、より細かいコントロールが可能となる。
【実施例11】
【0131】
以下、実施例11の誘雷装置50の概略構成を図19を用いて説明する。
実施例11の誘雷装置50は、一般のクレーン車と同様の構成をした上下方向に伸縮可能な昇降アーム53を走行車52に備えた昇降アーム付き走行車54を備えている。前記昇降アーム53の先端部には、誘雷装置本体51を備えている。誘雷装置本体51は、実施例4の誘雷装置本体31と同様の構成であり、すなわち、前記プラス帯電ユニット22a、前記導電体25、及び、前記絶縁体26を備えて構成されている。
【0132】
さらに、昇降アーム付き走行車54は、前記昇降アーム53を上昇させる際に、下方へ向けて突き出して地面Aに設置される設置用柱体55が設けられている。この設置用柱体55により、昇降アーム付き走行車54ごと安定して支持することができる。
【0133】
前記設置用柱体55は、移動中は、昇降アーム付き走行車54側へ退避させており、このように上下方向に伸縮自在に構成されている。さらに、設置用柱体55自体が導電性を有した部材を備えて構成しているため、地面に設置したとき、誘雷装置本体51の導電体25と、グランドとして作用する地面Aとが電気的に接続された接続手段として機能する。
【0134】
前記構成により、例えば、雷雲が街の方へ到来してきたことを、適宜、雷レーダ(図示せず)で検知すると、雷雲が到来時に通過すると予想される街外れの場所にまで前記昇降アーム付き走行車54を移動させて、該昇降アーム付き走行車54を雷雲の到来に備えて待機させる(図19の仮想線参照)。
【0135】
さらに、前記設置用柱体55を下方へ直動して地面に設置させ、前記昇降アーム53を適宜、回転、或いは、伸張させるなどして誘雷装置本体51を上昇させておく。
【0136】
実施例11の誘雷装置50は、雷雲が該誘雷装置50を通過する過程において落雷させることができる。誘雷装置本体51により雷雲から落雷を促す作用については、上述した実施例と同様のため、詳説しないが、落雷により導電体25に帯電した電荷は、前記設置用柱体55を通じてグランドとして作用する街外れの地中へと流し込むことができる。
【0137】
上述したように、実施例11の誘雷装置50は、昇降アーム53により誘雷装置本体51を上昇させることにより、雷雲が街へ到達する前の未だ完全に発達していない段階であっても確実に落雷させることができる。
【0138】
さらに、実施例11の誘雷装置50は、誘雷装置本体51を地面に設置した場合のように一定の場所のみならず、昇降アーム付き走行車54により任意の場所にまで移動することができる。
このため、雷雲がいずれの進行経路を辿って街に到来するかに関わらず、街に到来するまでの如何なる場所においても上述したように、待機させておくことによって、確実に落雷させることができる。
【0139】
さらにまた、実施例11の誘雷装置50は、雷雲が到来するおそれのない天候時においては、所定の待機場所で待機させておけばよいため、邪魔になることもない。
【0140】
このように、実施例11の誘雷装置50は、雷雲が到来するおそれのない天候時において邪魔になることもないため、上述したように街外れの場所で用いるに限らず、街中で用いることもできる。
【0141】
また、実施例11の誘導装置50は、本実施例11の誘導装置本体51のように、実施例4の誘導装置本体31と同様の構成に限らず、上述した実施例1の誘導装置1、実施例3の誘導装置20、実施例5の誘導装置40と同様の構成のものを昇降アーム53の先端側に具備した構成であってもよい。
【0142】
さらにまた、実施例11の誘雷装置50は、昇降アーム付き走行車54に雷レーダを搭載した構成であってもよい。
【0143】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の誘雷装置は、実施形態の誘雷装置1,1A,10,20,30,40,50,100,110に対応し、
以下同様に、
防雷装置は、実施形態の防雷装置120,130に対応し、
プラス帯電体は、外壁3a,23a,43aおよびプラス帯電翼11a,41aに対応し、
マイナス帯電体は、外壁3bおよびマイナス帯電翼11bに対応し、
帯電体は、外壁3a,23a,43a,3b、プラス帯電翼11a,41aおよびマイナス帯電翼11b、又は、誘雷器107、或いは、退避電極108に対応し、
帯電手段は、コロナ放電装置4a,4b,24aおよび駆動部14,43、又は、昇圧器105に対応し、
絶縁部材は、絶縁部材8に対応し、
落雷防止システムは、落雷防止システム9に対応し、
地上面は、地面Aに対応し、
落雷防止対象は、建造物Kに対応
電荷放散手段は、電荷放散器121に対応し、
昇圧手段は、昇圧器105に対応し、
移動手段は、走行車52に対応し、
昇降手段は、昇降装置32、昇降アーム53に対応し、
グランド接続手段は、前記設置用柱体55に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】誘雷装置の概略構成を示す構成図。
【図2】誘雷装置の概略構成を示すブロック図。
【図3】落雷防止システムの構成と、落雷の様子を説明する説明図。
【図4】実施例2の誘雷装置の概略構成を示す構成図。
【図5】実施例2のプラス帯電翼とマイナス帯電翼の構成を示す断面図。
【図6】実施例3の誘雷装置の概略構成を示す構成図。
【図7】実施例3の誘雷装置を模式的に示した作用の説明図。
【図8】実施例3の誘雷装置の模式的に示した作用の説明図。
【図9】実施例3の誘雷装置の模式的に示した作用の説明図。
【図10】実施例4の誘雷装置の概略構成を示す構成図。
【図11】実施例4の誘雷装置の作用の説明図。
【図12】実施例5の誘雷装置の概略構成を示す構成図。
【図13】実施例6の誘雷装置の概略構成を示す構成図。
【図14】実施例7の誘雷装置の概略構成を示す構成図。
【図15】実施例8の誘雷装置の概略構成を示す構成図。
【図16】実施例9の防雷装置の概略構成を示す構成図。
【図17】実施例9の防雷装置の作用の説明図。
【図18】実施例10の防雷装置の概略構成を示す構成図。
【図19】実施例11の誘雷装置の概略構成を示す構成図。
【符号の説明】
【0145】
1,1A,10,20,30,40,50,100,110,…誘雷装置、120,130…防雷装置、3a,23a,43a,3b…外壁、11a,41a…プラス帯電翼、11b…マイナス帯電翼、4a,4b,24a…コロナ放電装置、8…絶縁部材、9…落雷防止システム、14,43…駆動部、25…導電体、26…絶縁体、32…昇降装置、107…誘雷器、108…避雷電極、105…昇圧器、121…電荷放散器121、走行車…52、昇降アーム…53、前記設置用柱体…55、A…地面、K…建造物、G…グランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラス又はマイナスに帯電する帯電体と、
該帯電体をプラス又はマイナスに帯電させる帯電手段とを備えた
誘雷装置。
【請求項2】
少なくとも前記帯電体を落雷防止対象の最上位置に備え、
前記帯電手段により前記帯電体を帯電させる電位を、前記最上位置と地上面との距離に対応する電位差を打ち消す電位に設定した
請求項1記載の誘雷装置。
【請求項3】
グランドに接続された導電体と、
該導電体と前記帯電体との間に介装される絶縁体とを備え、
該絶縁体に、前記帯電体に落雷した際に絶縁破壊されて前記帯電体から前記導電体へ雷電荷を通過許容する絶縁破壊部を備えた
請求項1または2記載の誘雷装置。
【請求項4】
前記絶縁破壊部は、前記絶縁体の肉厚を部分的に薄くした薄肉部である
請求項3記載の誘雷装置。
【請求項5】
少なくとも前記帯電体を移動させる移動手段を備えた
請求項1から4のうちいずれか1に記載の誘雷装置。
【請求項6】
少なくとも前記帯電体を移動させる移動手段を備え、
前記導電体は、前記移動手段に備えられ、
該導電体がグランドに対して離間可能に接続されるグランド接続手段を備えた
請求項3または4記載の誘雷装置。
【請求項7】
前記帯電手段により前記帯電体を帯電させる電位を、落雷防止対象の最上位置と地上面との距離に対応する電位差と同等かそれより高い電位に設定した
請求項1から6のうちいずれか1に記載の誘雷装置。
【請求項8】
少なくとも前記帯電体を、地上面に対して上昇させる昇降手段を備えた
請求項1または7記載の誘雷装置。
【請求項9】
プラスに帯電するプラス帯電体と、
マイナスに帯電するマイナス帯電体と、
前記プラス帯電体をプラスに帯電させ前記マイナス帯電体をマイナスに帯電させる帯電手段とを備えた
誘雷装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の誘雷装置を備え、
落雷防止対象の接地部分を絶縁部材で被覆した
落雷防止システム。
【請求項11】
プラス又はマイナスの電荷を放散する電荷放散体と、
該電荷放散体に電力を供給してプラス又はマイナスの電荷を放散させる電荷放散手段とを備えた
防雷装置。
【請求項12】
プラス又はマイナスに帯電する帯電体と、
該帯電体を、前記電荷放散体が放散する電荷とは逆の電荷に帯電させる帯電手段とを備えた
請求項11記載の防雷装置。
【請求項13】
前記帯電手段は、昇圧手段である
請求項1から9のうちいずれか1に記載の誘雷装置、又は、請求項12記載の防雷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−123976(P2008−123976A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310951(P2006−310951)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(597120972)オリエント測器コンピュータ株式会社 (56)
【Fターム(参考)】