誘電伝熱流体
電気エネルギーの発生、貯蔵、変換、および/または配送用の装置における誘電および伝熱流体としての、一価不飽和脂肪酸を多く含む植物性油の使用法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電伝熱流体、具体的には植物性の油から作られ、例えば油入変圧器に使用される誘電流体の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器は、一般に誘電体(すなわち非導電性材料)によって隔てなければならない導線の巻線を有する。通常、それらコイルおよび誘電体は、導体を絶縁し、かつ動作中に発生する熱を放散するために流体誘電熱媒中に浸漬される。この熱媒は、なおその上に誘電体としても働かなければならない。典型的な機構ではセルロースおよび/またはアラミド紙もしくは板材が誘電体として使用される。セルロース/アラミド材料は、導線の周りに巻き付けられ、巻線を誘電的に分離するために使用される。またそれは巻線または他の構成要素、例えばコアの構造用の支持材としても使用することができる。流体誘電熱媒は一般には油であり、例えば鉱油または十分に丈夫な植物性の油であることができる。
【0003】
変圧器の使用中、その誘電体および伝熱流体は、かなりの電磁場と、かなりの温度変動および電圧変化と、ブレークダウンとにさらされる。その比較的過激な条件が、経時的に誘電体の破損および伝熱流体の劣化を引き起こす恐れがある。劣化は、誘電損のせいの電力損失を引き起こし、遂には変圧器の放電および壊損を引き起こし、大きな汚染および/または火災の原因となる恐れがある。
【0004】
誘電体および伝熱流体はさらに、変圧器中での酸素の移動と、水の形成または進入とによって直接的また間接的に分解する可能性もある。
【0005】
鉱油は、一般にすぐれた誘電および伝熱挙動を示すが、誘電伝熱流体は莫大な量(すなわち、毎年数十万メートルトン)が使用される。世論は変圧器ユニットを取り巻く環境および安全の懸念に対して益々敏感になっており、したがってそれらは益々厳しい規制を受けている。現在使用されている多くの伝熱流体(鉱油など)は、それらが可燃性であり、かつ妥当な期間内にまたは簡単に生物分解しないので深刻な不安を有する。「バイオ」(すなわち生きている)供給源に由来する流体は、これらの目的に対する未来の流体であるという考えが強くなっている。例えば、米国特許第6,905,638号明細書および第7,048,875号明細書は、伝熱流体として植物性の油を用いる変圧器を開示している。この植物性の油は、化学的に合成された酸化防止剤を含有することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
食品用の油に限定されない、ある期間にわたって良好な性能を示す改良された生分解性伝熱流体の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様において本発明は、電気エネルギーを発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置における伝熱誘電流体としてのダイズ油の使用法を提供する。このダイズ油は、その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつその脂肪酸の16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満が多価不飽和脂肪酸であるものである。
【0008】
第二の態様において本発明は、
(a)導電性材料と、
(b)誘電体と、
(c)その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつその脂肪酸の16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満が多価不飽和脂肪酸であるダイズ油の伝熱誘電流体と
を含む、電気エネルギーおよび/または光学信号を発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置を提供する。
【0009】
第三の態様において本発明は、
(a)植物性トリアシルグリセロールである伝熱誘電流体を一定でかつ均一分布した電磁場にさらす工程
を含む上記流体のプレコンディショニング法を提供する。
【0010】
第四の態様において本発明は、その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつその脂肪酸の16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満が多価不飽和脂肪酸である、少なくとも1重量%の植物性トリアシルグリセロール、好ましくはダイズ油を含浸させた有機繊維構造体(織布または不織布)を含む誘電体を提供する。
【0011】
第五の態様において本発明は、電気エネルギーを発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置中の伝熱誘電流体として、少なくとも1種類のヒドロキシ脂肪酸を有するトリアシルグリセロールである植物性の油の使用法を提供する。
【0012】
第六の態様において本発明は、一定温度において改善されたDf値を有する混合高オレイン酸油を提供し、この混合高オレイン酸油は、
a)高オレイン酸ダイズ油である1〜100体積%の範囲の第一の油と、
b)1〜100体積%の範囲の第二の油と
を含み、
c)その混合高オレイン酸ダイズ油は少なくとも70%のオレイン酸含量を有し、かつ高オレイン酸ダイズ油を含まない油と同一条件下で比較した場合、その混合高オレイン酸油の一定温度におけるDf値が改善される。
【0013】
第七の態様において本発明は、一定温度において改善されたDf値を有する混合高オレイン酸油を提供し、この混合高オレイン酸油は、
a)高オレイン酸ダイズ油である1〜100体積%の範囲の第一の油と、
b)オレイン酸のモノアルキルエステルである1〜100体積%の範囲の第二の油と、
c)1〜100体積%の範囲の第三の油と
を含み、
d)その混合高オレイン酸ダイズ油は少なくとも70%のオレイン酸含量を有し、かつ高オレイン酸ダイズ油および/または精製したオレイン酸のエステルを含まない油と同一条件下で比較した場合、その混合高オレイン酸油の一定温度におけるそのDf値が改善される。
【0014】
配列番号:1;プラスミドPHP19340Aのヌクレオチド配列を示す図である。
配列番号:2;プラスミドPHP17752Aのヌクレオチド配列を示す図である。
配列番号:3;プラスミドPHP19340のヌクレオチド配列を示す図である。
配列番号:4;プラスミドPHP17752のヌクレオチド配列を示す図である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】比較の流体C1(FR3)およびC2(Biotemp)の、また本発明により使用される流体E1(本発明の油の一つであるVGO−B1)の誘電損率(Df)対温度の関係を示す図である。図中で、正方形■および三角形▲は比較の流体C1(FR3)(時を異にして2回測定した)の損率を示し、十字形×は比較の流体C2(Biotemp)の損率を示し、ダイヤモンド形◆は本発明により使用されるダイズ油E1(VGO−B1)の損率を示し、また黒丸●は基準として含まれる鉱油の損率を示す。
【図2】医薬用リシノール酸油に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(点線)および後(実線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す図である。
【図3】市販銘柄の高オレイン酸ひまわり油である比較の流体C2に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(点線)および後(実線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す図である。
【図4】市販銘柄の標準的なダイズ油である比較の流体C1に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(実線)および後(点線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す図である。
【図5】本発明で使用される流体E1に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(実線)および後(点線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す図である。
【図6】未処理クラフト紙(実線)、本発明により使用される流体を吸い込ませたクラフト紙(点線)、および本発明により使用される流体を吸い込ませ、かつ実施例8によるマイクロ波で前処理したクラフト紙(一点鎖線)の熱的挙動を示す図である。
【図7A】21%のオレイン酸および61%の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油(「Cm」、×記号で表す)、および65%のオレイン酸および20%の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油(ダイヤモンド形で表す)と比較した、「HOSO」などの本発明により使用されるダイズ油E2(正方形で表す)、および70%のオレイン酸および16%の多価不飽和脂肪酸を有する高オレイン酸ダイズ油(三角形で表す)の測定されたDf値対温度の関係を示す図である。
【図7B】本発明により使用されるダイズ油の測定されたDf値対温度の関係を示す図である。四角形は、74.36%のオレイン酸(74%)を有するE4の結果を示す。×記号は、21%のオレイン酸と61%の多価不飽和脂肪酸を有する商品ダイズ油(Cm)の結果を表す。三角形は、70%のオレイン酸と16%の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油ブレンド物の結果を表す。ダイヤモンド形は、65%のオレイン酸と20%の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油ブレンド物の結果を表す。
【図8】2つの異なる温度(上側の線:130℃、下側の線:90℃)における混合ダイズ油のオレイン酸含量に対するDfの変化を示す図である。
【図9】比較の流体C1(FR3)およびC2(Biotemp)の、また本発明により使用される2種類の油であるE2(E1、VGO−B1)およびE4(E1、VGO−B2)の誘電損率(Df)対温度の関係を示す図である。図中で、正方形■は比較の流体C1の損率を示し、三角形▲は比較の流体C2の損率を示し、ダイヤモンド形◆は本発明により使用されるダイズ油E2およびE4の損率を示す。
【図10】フラグメントPHP19340Aを描いた図である。
【図11】フラグメントPHP17752Aを描いた図である。
【図12】プラスミドPHP19340を描いた図である。
【図13】プラスミドPHP17752を描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
誘電損率、誘電損値、Df値、Df、または誘電正接という表現は、本明細書中で区別なく使用される。DfおよびTanδは、文献中ではしばしば等価なものとして引用される。
【0017】
「E1」という表現は、本発明のすべての高オレイン酸ダイズ油を対象とし、表1に示す脂肪酸組成物の範囲を含み、VGO−B1と、VGO−B2と、HOSOと、表6中に示す70%オレイン酸のダイズ油と、E2と、E4とを無制限に含む。
【0018】
方法
油の脂肪酸含量は、水素炎イオン化検出によるガスクロマトグラフィ、または蛍光検出による逆相液体クロマトグラフィを用いて求めることができる。引用される割合は、別段の指定がない限り%、すなわち、一つの具体的な脂肪酸のピーク下の面積を特定の試料中の全脂肪酸のピーク面積の和で割ったものとして表される相対的パーセントと関係する。
【0019】
油のトコフェロール含量は、HPLC法を用いて求められる。
【0020】
本発明者等は、比較的高い(すなわち、その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%)含量の一価不飽和C14〜C22脂肪酸、および16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油が、伝熱誘電流体として特に良好な性能を与えることを見出した。
【0021】
より好ましくは本発明により使用されるダイズ油は、少なくとも80%の一価不飽和C14〜C22脂肪酸含量、特に好ましくは少なくとも82%、好ましくは少なくとも84%の一価不飽和C14〜C22脂肪酸含量、あるいは85%または約85%の一価不飽和C14〜C22脂肪酸含量を有する。
【0022】
より好ましくは本発明により使用されるダイズ油は、4%未満の多価不飽和脂肪酸を有する。
【0023】
好ましい実施形態では本発明により使用されるダイズ油は、少なくとも80%の一価不飽和C14〜C22脂肪酸含量、および4%未満の多価不飽和脂肪酸を有する。
【0024】
より好ましくは一価不飽和脂肪酸はC18一価不飽和脂肪酸である。最も好ましくはそれらはオレイン酸である。
【0025】
より好ましくは多価不飽和脂肪酸は、2個または3個の二重結合を有するC18脂肪酸、例えばC18:2および/またはC18:3である。
【0026】
好ましくはC18:2が5%以下である。
【0027】
より好ましくはダイズ油は、脂肪酸部分の約75%を超える含量のC18:1、および脂肪酸の7%未満、より好ましくは6%未満のC18:2とC18:3を合わせた含量を有する。
【0028】
好ましい実施形態ではダイズ油は、12%未満または約12%の、より好ましくは10%未満または約10%の飽和脂肪酸含量を有する。より高い飽和脂肪酸含量は、望ましくない高い流動点と、動的熱伝達能力の低下とを引き起こす。
【0029】
特に好ましい実施形態ではダイズ油は、6%または約6%のC16:0、3%または約3%のC18:0、86%または約86%のC18:1、2%または約2%のC18:2、および0〜2%のC18:3の脂肪酸含量を有する。
【0030】
別の特に好ましい実施形態ではダイズ油は、6%または約6%のC16:0、4%または約4%のC18:0、79%または約79%のC18:1、4%または約4%のC18:2、2%または約2%のC18:3の脂肪酸含量を有する。
【0031】
別の好ましい実施形態ではダイズ油は、下記脂肪酸をその%または約その%の含量で有する(下記表参照)。
【0032】
【0033】
ダイズ油は、好ましくは300ppm未満または約300ppmの含量の水を有する。
【0034】
好ましい実施形態ではダイズ油は、さらにトコフェロール酸化防止剤を含む。好ましくはトコフェロールは、周知のHPLC法で測定される油100g当たり少なくとも85mg、より好ましくは油100g当たり少なくとも100mgの濃度で存在する。トコフェロールは、天然に産出するトコフェロール、具体的にはα−、β−、γ−、およびδ−トコフェロール、およびこれらの混合物から選択することができる。
【0035】
特に好ましい実施形態ではダイズ油は、周知のHPLC法で測定される油100g当たり160mgまたは約160mgのトコフェロール含量を有し、かつ6%または約6%のC16:0、3%または約3%のC18:0、86%または約86%のC18:1、2%または約2%のC18:2、2%または約2%のC18:3の脂肪酸含量を有する。
【0036】
別の特に好ましい実施形態ではダイズ油は、周知のHPLC法で測定される油100g当たり160mgまたは約160mgのトコフェロール含量を有し、かつ6%または約6%のC16:0、4%または約4%のC18:0、79%または約79%のC18:1、4%または約4%のC18:2、2%または約2%のC18:3の脂肪酸含量を有する。
【0037】
好ましくはトコフェロールは、そのダイズ油中に存在する、または植物源から得られる任意の他の植物性の油中に存在する、または天然植物の抽出物NPE中に存在する(すなわち、添加される合成トコフェロールとは対照的な)トコフェロールである。
【0038】
ダイズ油は、当業界で知られている添加剤、例えば殺菌剤、金属キレート化剤、腐食抑制剤、酸化防止剤、熱安定剤、粘度調整剤、流動点降下剤(これらの機能を増進させる天然植物の抽出物などを含めた)をさらに含むことができ、これら添加剤は、一般にはその誘電伝熱流体の5重量%未満を構成する。
【0039】
本発明により使用されるダイズ油は、誘電伝熱流体に使用される他の流体、例えば他の植物性の油、鉱油などとブレンドすることができる。
【0040】
特に好ましい実施形態ではその油は、オレオイル 12−デサチュラーゼをコードする遺伝子の活性の発現を高める組換え操作によって調製されるダイズから得られる。
【0041】
ダイズの適切な遺伝子操作の具体例としての記述は、米国特許第5,981,781号明細書(E.I.du Pont de Nemours and Company)中に記載されており、下記で詳述する。
【0042】
ダイズ(Glycine max)中にはオレオイル 12−デサチュラーゼ活性をコードする2種類の遺伝子が存在し、その一方(GmFad 2−1)は発育種子中でのみ発現する(Heppard等の論文(1996)Plant Physiol.110:311〜319)。この遺伝子の発現は、開花の約19日後に始まる油沈着の期間中に増加し、その遺伝子産物はダイズ油中に見出される多価不飽和脂肪酸の合成を担っている。GmFad 2−1は、Okuley,J.等の論文(1994)Plant Cell 6:147〜158によって、また国際公開第94/11516号パンフレット中に詳細に記載されている。それはプラスミドpSF2−169K(ATCC受託番号69092)の形でATCCから入手できる。もう一方の遺伝子(GmFad 2−2)は、ダイズ植物の種子、葉、根、および茎中で一定のレベルで発現し、「ハウスキーピング」12−デサチュラーゼ遺伝子である。そのFad 2−2遺伝子産物は、細胞膜の多価不飽和脂肪酸の合成を担っている。
【0043】
GmFad 2−1を、ダイズ(Glycine max)β−コングリシニン遺伝子のα’−サブユニットに由来する強力な種子特異的プロモーターの制御下に置いた。このプロモーターは、その形質遺伝子の高レベルの種子特異的発現を可能にする。それは、Glycine max β−コングリシニン貯蔵タンパク質のα’−サブユニットの出発コドンの606bp上流に拡がる。そのβ−コングリシニンプロモーター配列は、27個のヌクレオチド位置に違いを有する公開されているβ−コングリシニン遺伝子(Doyle等の論文(1986)J.Biol.Chem.261:9228〜9238)の対立遺伝子を表す。トランスジェニック植物において種子特異的発現パターンを維持することが示されている(Barker等の論文(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:458〜462およびBeachy等の論文(1985)EMBO J.4:3047〜3053)。そのリーディングフレームは、緑莢インゲン(Phaseolus vulgaris)のファゼオリン遺伝子由来の3’フラグメントで終わった。これは、緑莢インゲン(Phaseolus vulgaris)ファゼオリン遺伝子終止コドン(Doyle等の論文(1986)に記載のクローンから生じる)の3’配列の1174bp領域である。
【0044】
そのGmFad 2−1オープンリーディングフレーム(ORF)は、センスGmFad 2−1 cDNAおよび内在性GmFad 2−1遺伝子の遺伝子抑制を生じさせるようなプロモーターに関してセンスの向きであった。「センス抑制」として知られるこの現象は、植物中の遺伝子を故意に止めるための有効な方法であり、米国特許第5,034,323号明細書中に記載されている。
【0045】
大腸菌(E.coli)中のプラスミドの維持および複製のために、上記のGmFad 2−1転写単位をプラスミドpGEM−9z(−)(Promega Biotech,Madison Wis.,USA)中にクローン化した。
【0046】
形質転換させたダイズ植物を識別するためには大腸菌(E.coli)由来のβ−グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)を使用した。使用されたカセットは、3つのモジュール、すなわちカリフラワー モザイク ウィルス 35Sプロモーターと、大腸菌(E.coli)由来のβ−グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)と、アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のTi−プラスミドのノパリンシンターゼ(NOS)遺伝子由来の遺伝子ターミネーターを含有する0.77kbのDNAフラグメントとからなった。35Sプロモーターは、大部分の植物組織における構成遺伝子発現用のCaMV由来の1.4kbプロモーター領域であり(Odell等の論文(1985)Nature 303:810〜812)、GUS遺伝子は、酵素β−グルクロニダーゼをコードする1.85kbフラグメントであり(Jefferson等の論文(1986)PNAS USA 83:8447〜8451)、またNOSターミネーターは、ノパリンシンターゼコーディング領域の3’末端の一部分である(Fraley等の論文(1983)PNAS USA 80:4803〜4807)。このGUSカセットを、GmFad 2−1/pGEM−9z(−)構築物中にクローン化し、pBS43と呼んだ。
【0047】
プラスミドpBS43を、粒子衝突の方法によって優良ダイズ系A2396の分裂組織に形質転換した(Christou等の論文(1990)Trends Biotechnol.8:145〜151)。受精能力のある植物を、当業界でよく知られている方法を用いて再生させた。
【0048】
GUS活性を発現しており、かつPCRによって評価した場合にGmFad 2−1遺伝子に対して陽性でもあった植物(Event 260−05)を、形質転換した植物の最初の個体群から選択した。植物260−05の複数個のR1種子から小片を採取し、脂肪酸組成についてスクリーニングした。次いで、小片に砕いた種子を植え付け、発芽させた。その得られた植物の葉からゲノムDNAを抽出し、制限酵素Bam HIで切断した。ブロットをファゼオリンプローブでプローブした。
【0049】
最初の形質転換イベントにおいてGmFad 2−1構築物がダイズゲノム中の2つの異なる遺伝子座において組み込まれるようになったことは、そのDNAハイブリッド形成パターンから明らかであった。一方の座(遺伝子座A)においてGmFad 2−1構築物は、内在性GmFad 2−1遺伝子の遺伝子抑制を引き起こし、結果として約85%の相対的オレイン酸含量(優良ダイズ品種における約20%と比較して)を生じさせた。遺伝子座AではpBS43の2つのコピーが存在した。DNAハイブリッド形成ブロット上に、それは2つの同時分離帯として見られた。もう一方の組込み座(遺伝子座B)ではGmFad 2−1は過剰発現し、―――。
【0050】
最初の形質転換細胞から生じた第四世代分離個体系統(R4植物)を成熟期まで成長させた。遺伝子抑制座Aのみを含有するR4種子(例えばG94−1)は、開化20日後に回収した試料中に検出可能なGmFad 2−1 mRNAを少しも含有しなかった(ノーザンブロット法により測定した場合)。対照と比べて多少低下するが、GmFad 2−2 mRNAは抑制されなかった。したがってGmFad 2−1センス構築物は、GmFad 2−1遺伝子の発現を妨げる望ましい効果を有し、したがって種子のオレイン酸含量を増加させた。GmFad 2−1遺伝子抑制座に対して同型接合性のすべての植物は、複数の世代にわたって同一のサザンブロットプロフィールを有した。これは、その挿入断片が安定であり、少なくとも4世代にわたってゲノム中の同じ位置にあることを示している。
【0051】
ダイズ油は、既知の抽出方法を用いて植物源から抽出される。好ましい抽出方法は、自然のトコフェロール内容の破壊を引き起こす工程を避けるものである。例えば、油を長期間、例えば脱臭の工程の間に200℃超に加熱することは避けることが好ましい。これら工程を減らすか、またはなくすことができる。幾つかの例では水素添加を避けることが好ましい場合もある。種子から油をより徹底的に抽出する前を意味する「最初に」抽出される油の画分を取ることもまた好ましい。物理的抽出が、溶媒抽出または任意の複合抽出工程よりも好ましく、物理的抽出の工程に特権を与える。
【0052】
ダイズの油および粗引き粉を生産するためのダイズ種子の抽出および加工方法は、ダイズ加工業界でよく知られている。一般にダイズ油は、含油種子からの食用油製品の抽出および精製を達成する一連の工程を用いて生産される。本発明の油は食品用の油に限定されない。ダイズ油およびダイズ副産物は、下記図式に示す一般化工程を用いて生産される。
【0053】
工程 除去される不純物/得られる副産物
ダイズ種子
↓
油抽出 → 粗びき粉
↓
脱ガム → レシチン
↓
アルカリまたは物理的精製 → ガム、遊離脂肪酸、ピグメント
↓
水洗浄 → セッケン
↓
漂白 → 色、セッケン、金属
↓
(水素化)
↓
(脱ろう) → ステアリン
↓
脱臭 → FFA、トコフェロール、ステロール、揮発性物質
↓
油製品
【0054】
ダイズ種子を清浄にし、調質し、外皮を除き、薄片にする。これは油抽出の効率を高める。油抽出は、一般には溶媒(ヘキサン)抽出によって達成されるが、物理的圧力および/または溶媒抽出の組合せによって達成することもまた可能である。得られた油は粗油と呼ばれる。粗油は、リン脂質ならびに他の極性および中性脂質複合体を水和することによって脱ガムすることができる。これは、非水和性トリグリセリド画分(ダイズ油)からのそれらの分離を容易にする。得られるレシチンガムをさらに加工して様々な食品および工業製品に乳化剤および離型(粘着防止)剤として使用される商業的に重要なレシチン製品を製造することができる。脱ガムした油を、不純物、すなわち一次遊離脂肪酸、ピグメント、および残留ガムの除去のためにさらに精製することができる。精製は、遊離脂肪酸と反応させてセッケンを形成し、また粗油中のホスファチドおよびタンパク質を水和するカセイアルカリの添加によって達成される。水を用いて、精製の間に形成される微量のセッケンを洗い流す。そのソープストック副産物は、直接に動物の飼料に使用することも、また酸性にして遊離脂肪酸を回収することもできる。着色を、活性白土、粉末活性炭、および/または合成中性樹脂を用いて吸着により除去する。それによりクロロフィルおよびカロテノイド化合物の大部分が除去される。主として真空下での水蒸気蒸留である脱臭は最後の工程であり、油の臭気または風味に影響を与える化合物を除去するように設計される。ダイズ種子の加工、ダイズ油の生産、および副産物の利用に関するより詳細な言及は、Erickson(1995)Practical Handbook of Soybean Processing and Utilization,The American Oil Chemists’ Society and United Soybean Board中に見出すことができる。
【0055】
本発明の第二の態様は、
(a)導電性材料と、
(b)誘電体と、
(c)その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつその脂肪酸の16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満が多価不飽和脂肪酸であるダイズ油の伝熱誘電流体と
を含む、場合によっては光学信号を伴う電気エネルギーを発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置を提供する。
【0056】
本発明の装置に使用される伝熱誘電流体は、本明細書中で述べる本発明で使用される好ましい油のいずれかおよびそれらの任意の混合物であることができる。
【0057】
好ましい実施形態ではこの装置は変圧器である。一般に変圧器は、導線のコイルまたは巻線、および接続部の形態の導電性材料(例えば、銅、アルミニウム、鉄、鋼、銀など)を有するはずである。導電性材料は、一般に製織または不織繊維材料、フィルム、および積層板、例えば紙、板材、および/または多次元構造体から選択される誘電体の周りに巻かれ、かつ誘電体で覆われる。この紙または板材は、セルロース系材料でもよく、また、例えばアラミド繊維、好ましくはm−アラミド繊維、ポリイミド、ポリフェニルスルホン、ポリアミド、ポリエステル(例えばPET)、およびポリエチレン、ならびにそれらによる様々な形態の組合せ、例えば複合体、積層板、および個別仕様の形態的に合わせて作られた表面および/または多次元構造体、およびこれらの混成物/混合物からなってもよい。導電性材料および誘電体は容器中に入れられ、かつそれら構成材を沈めるように、または部分的に沈めるように誘電伝熱流体が加えられる。別法では、その加工の様々な段階で吸収させる(「吸い込ませる」)ことによって誘電体(例えば、紙または板材)に誘電伝熱流体を含浸させる。
【0058】
別の好ましい実施形態では誘電伝熱流体を、例えば発電機、コンデンサー、インバーターまたはモーター、スイッチ、およびケーブルに使用することができる。
【0059】
本発明の第三の態様は、植物性トリアシルグリセロールである伝熱誘電流体をプレコンディショニングするための方法であり、この方法は、
(a)上記流体を一定のかつ均一に分布した電磁場にさらす工程
を含む。電磁場は、連続的に、あるいは直列で、必要に応じてしばしばその照射シーケンスを繰り返して適用することができる。
【0060】
前処理の有益な効果は、すべてのトリアシルグリセロール誘電伝熱流体およびその混合物に及び、本発明により使用される流体に限定されない。
【0061】
好ましい実施形態では電磁場は、マイクロ波の形態で適用される。
【0062】
好ましくは電磁場は、少なくとも100℃または約100℃、好ましくは少なくとも120℃または約120℃ではあるが、170℃以下または約170℃、より好ましくは160℃以下または約160℃で植物性トリアシルグリセロールを処理するのに十分な出力で、かつ十分な期間適用される。140℃または約140℃まで植物性トリアシルグリセロールを加熱することが特に好ましい。
【0063】
流体を電磁場にさらした後、放置して冷却する。
【0064】
一実施形態では植物性トリアシルグリセロールは、ニート流体として電磁場にさらされ(すなわち適切な容器内で)、次いで必要に応じて使用される。別の実施形態では植物性トリアシルグリセロールは、まず紙(例えばセルロース系材料またはアラミド)などの吸収性の誘電体に塗布し、次いでこの吸い込ませた紙を、電磁場を含むインライン型加工処理にかける。好ましくは、このようなインラインまたはオフライン型加工処理は、電磁場への油の照射を最大にする、例えば処理される材料の大部分の範囲内で勾配(主に温度および/または電磁放射束)を減らす方法で行われることになる。流下薄膜搬送設備および/または液滴チャンバーが適している。
【0065】
本発明の第四の態様は、その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつその脂肪酸の16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満が多価不飽和脂肪酸である、少なくとも1重量%の植物性トリアシルグリセロール、好ましくはダイズ油を含浸させた有機繊維構造体(例えば、織組織または布、あるいは不織布)を含む誘電体である。
【0066】
含浸用に使用される植物性トリアシルグリセロールは、本明細書中で述べる本発明により使用される流体のいずれかであることができる。
【0067】
好ましい実施形態ではこの有機繊維構造体は、セルロースまたはアラミド繊維、ポリイミド、ポリフェニルスルホン、ポリアミド、ポリエステル(例えばPET)、およびポリエチレンから作られる不織布、ならびにそれらによる様々な形態の組合せ、例えば複合体、積層板、および個別仕様の形態的に合わせて作られた表面および/または多次元構造体、およびこれらの混成物/混合物である。
【0068】
植物性トリアシルグリセロールは、好ましくは約1重量%〜10重量%、より好ましくは10重量%〜約50重量%、さらに好ましくは約20重量%〜40重量%またはその近傍で存在する。
【0069】
第五の態様において本発明は、電気エネルギーを発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置中の伝熱誘電流体として、少なくとも1種類のヒドロキシ脂肪酸を有するトリアシルグリセロールである植物性の油の使用法を提供する。好ましくはこのヒドロキシル脂肪酸は、好ましくはそのキラル炭素にD立体配置を有するcis−12−ヒドロキシオクタデカ−9−エン酸である。特に好ましい実施形態ではトリアシルグリセロール中の脂肪酸のすべてがD−cis−12−ヒドロキシオクタデカ−9−エン酸(ひまし油またはリシノール酸)であり、このトリアシルグリセロールは、その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつその脂肪酸の16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満が多価不飽和脂肪酸であるトリアシルグリセロールと様々な割合で混合される。好ましくはブレンド物中でひまし油が、そのトリアシルグリセロールの5から15%に相当する。
【0070】
用語「高オレイン酸ダイズ油」は、オレイン酸含量が少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、および95%のダイズ種子を指す。好ましい高オレイン酸ダイズ油出発原料は、国際公開第94/11516号パンフレット中に開示されており、この開示内容はそれにより本明細書中に参照により援用される。
【0071】
用語「高オレイン酸油」は、オレイン酸含量が少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、および95%の油を指す。
【0072】
本発明で使用するための油の多価不飽和脂肪酸の含量の有用な例は、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%未満である。
【0073】
第六の態様において本発明は、一定温度において改善されたDf値を有する混合高オレイン酸油を提供し、この混合高オレイン酸油は、
a)高オレイン酸ダイズ油である1〜100体積%の範囲の第一の油と、
b)1〜100体積%の範囲の第二の油と
を含み、
c)その混合高オレイン酸ダイズ油は、少なくとも70%のオレイン酸含量を有し、かつ高オレイン酸ダイズ油を含まない油と同一条件下で比較した場合、その混合高オレイン酸油の一定温度におけるDf値が改善される。
【0074】
本発明の混合油の油a)およびb)の体積%の有用な例は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%である。使用することができる油の量は、その得られる最終混合油製品において達成しようとする所望の特性によって決まることになる。
【0075】
第七の態様において本発明は、一定温度において改善されたDf値を有する混合高オレイン酸油を提供し、この混合高オレイン酸油は、
a)高オレイン酸ダイズ油である1〜100体積%の範囲の第一の油と、
b)オレイン酸のモノアルキルエステルである1〜100体積%の範囲の第二の油と、
c)1〜100体積%の範囲の第三の油と
を含み、
d)その混合高オレイン酸ダイズ油は、少なくとも70%のオレイン酸含量を有し、かつ高オレイン酸ダイズ油および/または精製したオレイン酸のエステルを含まない油と同一条件下で比較した場合、その混合高オレイン酸油の一定温度におけるそのDf値が改善される。
【0076】
本発明の混合油の油a)、b)、およびc)の体積%の有用な例は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%である。使用することができる油の量は、その得られる最終混合油製品において達成しようとする所望の特性によって決まることになる。
【0077】
オレイン酸のモノアルキルエステルである油b)は、オレイン酸の任意のC1〜C12アルキルエステルであることができる。C1〜C8アルキルエステルが特に好ましく、C1〜C6アルキルエステル、例えば直鎖および分岐の両方のメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルエステルがより好ましい。
【0078】
誘電損失Dfを測定することによって本明細書中で述べる油を、その伝熱誘電流体としてのその適切性について試験した。Dfは、電場および/または磁場の存在下における誘電体絶縁用に使用される流体を比較するための重要なパラメータである。
【0079】
誘電損失Dfは、ひとつには交番電磁場中の流体の、エネルギー散逸損失がなにも起こらないはずの純粋な誘電媒質の理想からの逸脱傾向を表す。誘電損は、一般には流体中の不純物、特に帯電した不純物の存在により、水含量の増加により、遊離酸により、また流体の分子のより小さな化学種への崩壊により増大する。さらに、代表的な温度範囲内での温度に対する誘電損の安定性は、長期間にわたって良好な性能(すなわち、良好な老化挙動)を示す耐久性のある流体組成物の保険でもある。
【0080】
Dfの測定はASTM D924を用いて行われ、これはスーパーヘテロダイン原理に基づいている。
一態様では、好ましくは本発明により使用されるダイズ油または混合油は、23℃で測定した場合、1.2×10-3未満または約1.2×10-3のDf、70℃で測定した場合、5.4×10-3未満または約5.4×10-3のDf、90℃で測定した場合、好ましくは9.1×10-3未満のDf、100℃で測定した場合、好ましくは1.21×10-2未満または約1.21×10-2のDf、120℃で測定した場合、好ましくは1.95×10-2未満または約1.95×10-2のDf、130℃で測定した場合、2.32×10-2未満または約2.32×10-2のDfを示し、また好ましくは23〜130℃または約23〜130℃の温度範囲にわたって2.32×10-2未満または約2.32×10-2のDfを示す。
【0081】
別の態様では、本発明により使用されるダイズ油または混合油は、23℃で測定した場合、好ましくは2.5×10-4未満または約2.5×10-4のDf、70℃で測定した場合、好ましくは2.5×10-3未満または約2.5×10-3、より好ましくは1.5×10-3未満または約1.5×10-3のDf、90℃で測定した場合、好ましくは5×10-3未満または約5×10-3、より好ましくは3×10-3未満または約3×10-3のDf、100℃で測定した場合、好ましくは7×10-3未満または約7×10-3、より好ましくは4×10-3未満または約4×10-3のDf、120℃で測定した場合、好ましくは2×10-2未満または約2×10-2、より好ましくは7×10-3未満または約7×10-3のDf、また130℃で測定した場合、好ましくは2×10-2未満または約2×10-2、より好ましくは1×10-2未満または約1×10-2のDfを示す。好ましくは23〜130℃または約23〜130℃の温度範囲にわたって2×10-2未満または約2×10-2、より好ましくは1×10-2未満または約1×10-2のDfを示す。
【0082】
本発明により使用される一態様においては混合油を使用することができる。このようなブレンド物は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%のオレイン酸含量を有する高オレイン酸ダイズ油を、別の油、好ましくは植物性の油とブレンドすることによって作られる。別の油に加えられる高オレイン酸ダイズ油の量は滴定によって決めることができる。この高オレイン酸ダイズ油は、混合油が、23℃で測定した場合、1.2×10-3未満または約1.2×10-3のDf、70℃で測定した場合、好ましくは5.4×10-3未満または約5.4×10-3のDf、90℃で測定した場合、好ましくは9.1×10-3未満または約9.1×10-3のDf、100℃で測定した場合、好ましくは1.21×10-2未満または約1.21×10-2のDf、120℃で測定した場合、好ましくは1.95×10-2未満または約1.95×10-2のDf、130℃で測定した場合、好ましくは2.32×10-2未満または約2.32×10-2のDfになるまで加えることができ、また好ましくは23〜130℃または約23〜130℃の温度範囲にわたって2.32×10-2未満または約2.32×10-2のDfを示す。ブレンド用に使用される高オレイン酸ダイズ油は、好ましくは16%未満または約16%、より好ましくは7%未満または約7%の多価不飽和脂肪酸含量を有する。
【0083】
本発明により使用される別の態様においては混合油を使用することができる。このようなブレンド物は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%のオレイン酸含量を有する高オレイン酸ダイズ油を、別の油、好ましくは植物性の油とブレンドすることによって作られる。別の油に加えられる高オレイン酸ダイズ油の量は滴定によって決めることができる。この高オレイン酸ダイズ油は、その混合油が、23℃で測定した場合、2.5×10-4未満または約2.5×10-4のDf、70℃で測定した場合、好ましくは2.5×10-3未満または約2.5×10-3の、より好ましくは1.5×10-3未満または約1.5×10-3のDf、90℃で測定した場合、好ましくは5×10-3未満または約5×10-3の、より好ましくは3×10-3未満または約3×10-3のDf、100℃で測定した場合、好ましくは7×10-3未満または約7×10-3の、より好ましくは4×10-3未満または約4×10-3のDf、120℃で測定した場合、好ましくは2×10-2未満または約2×10-2の、より好ましくは7×10-2未満または約7×10-2のDf、また130℃で測定した場合、好ましくは2×10-2未満または約2×10-2の、より好ましくは1×10-2未満または約1×10-2のDfを有するまで加えることができる。好ましくはその混合油は、23〜130℃または約23〜130℃の温度範囲にわたって0.02未満または約0.02の、より好ましくは1×10-2未満または約1×10-2のDfを示す。ブレンド用に使用される高オレイン酸ダイズ油は、好ましくは16%未満または約16%の、より好ましくは7%未満または約7%の多価不飽和脂肪酸含量を有する。
【0084】
動的(自然または強制)熱伝達は、油で冷却され、電気的に絶縁される大部分の電気設備で起こる。液体を満たした変圧器の加熱は、内部ホットスポットと、冬および夏の外部温度の極値との間のかなり大きな温度変動を考慮に入れて、多くの部分が冷却液および誘電流体によって制御されなければならない。うまく制御された条件下では変圧器は、30年を上回る期間のあいだ動作状態であることができるが、設計されたそれら変圧器の各カテゴリーおよびそのエネルギー変換負荷に対して定められる理想的動作温度から時には10℃未満の比較的小さな偏りで急速に損傷を受けることもある。
【0085】
油の少なくとも4つの重要な特性が温度により変わり、それらのそれぞれは様々な度合いで誘電伝熱流体(油)における可逆的または不可逆的特性変化を引き起こす。これらの特性は、密度、熱伝導率、動的粘度(これら3つのすべてが温度の上昇と共に低下する)、および比熱(これは温度の上昇と共に増大する)である。
【0086】
25℃から85℃までの油の温度変動に対して、密度変化が5%未満または約5%であり、伝導率変化が3%未満または約3%であり、熱容量変化が10%未満または約10%であることが好ましい。粘度変化は、それが同じ範囲の温度に対して50%に達する可能性があるので最も重要なものである。
【0087】
したがって粘度は、Re数(レイノルズRe=(速度×直径×密度)/粘度)を介して流体力学に寄与し、その流体の熱伝達能力に直接影響を与える。粘度が増大する場合にはより不十分な熱伝達を生じさせ、粘度が低下する場合にはより良好な熱伝達を生じさせる。
【実施例】
【0088】
実施例1
ダイズ(Glycine max)の形質転換
ダイズ植物の胚培養液および再生:
ダイズ胚形成懸濁培養液を、当業界で知られている手順(Klein等の論文(1987)Nature(London)327:70〜73、米国特許第4,945,050号明細書、Hazel等の論文(1998)Plant Cell Rep.17:765〜772、Samoylov等の論文(1998)In Vitro Cell Dev.Biol.Plant 34:8〜13)を用いて微粒子銃の方法により形質転換する。微粒子銃の手順では、精製した、1)全プラスミドDNA、または2)関心のある組換えDNA発現カセットのみを含有するDNAフラグメントを使用することができる。
【0089】
ダイズ未熟種子から開始することによって形質転換実験用の保存組織を得る。二次胚を、培養開始培地上で6から8週後の外殖片から切り取る。この開始培地は、ビタミン類、2,4−D、およびグルコースを補った寒天凝固改変MS培地(MurashigeおよびSkoogの論文(1962)Physiol.Plant.15:473〜497)である。二次胚を、液体培養維持培地を入れたフラスコ中に置き、ジャイレートリー振とう機上で26±2℃において光強度〜80μEm−2s−1で7〜9日間維持する。この培養維持培地は、ビタミン類、2,4−D、スクロース、およびアスパラギンを補った改変MS培地である。衝撃に先立ってフラスコから組織の凝塊を除去し、衝撃用の空の60×15mmペトリ皿に移した。組織を、Whatman #2濾紙上で吸い取ることによって乾燥させる。衝撃を与えられる組織のプレート当たり10〜20個の凝塊(それぞれ1〜5mmのサイズ)に相当する約100〜200mgの組織を使用する。
【0090】
衝撃後、それぞれの衝撃を与えたプレートからの組織を分割し、衝撃を与えた組織のプレートに付き2つの液体培養維持培地のフラスコに入れる。衝撃の7日後に各フラスコ中の液体培地を、100ng/mlの選択剤を補った新鮮な培養維持培地(選択培地)と取り替える。形質転換されたダイズ細胞の選択に関して使用される選択剤は、化学名2−クロロ−N((4−メトキシ−6−メチル−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノカルボニル)ベンゼンスルホンアミド(慣用名、DPX−W4189およびクロロスルフロン)を有するスルホニル尿素(SU)化合物であることができる。クロロスルフロンは、DuPontのスルホニル尿素除草剤GLEAN(登録商標)中の有効成分である。SUを含有する選択培地は、6〜8週間のあいだ、週に1回取り替えられる。この6〜8週間の選択期間の後、緑の形質転換された組織の島が、形質転換されていない壊死胚形成凝塊から成長しているのに気づく。これらの推定上のトランスジェニックイベントを単離し、100ng/mlのSUを有する培地中で1〜2週間ごとに培地を替えながらさらに2〜6週間保って、新しいクローン増殖した形質転換された胚形成懸濁培養液を生じさせる。胚を、全体で約8〜12週間のあいだSUと接した状態で過ごさせる。懸濁培養液を未熟胚の凝塊として継代培養し維持し、また個々の体細胞胚の成熟および発芽によって全植物に再生させる。
【0091】
実施例2
高オレイン酸形質の産生に使用される遺伝物質
ダイズ(Glycine max)イベントを、実施例1において述べたような微粒子同時衝撃(particle co−bombardment)によってフラグメントPHP19340A(図10、配列番号:1)およびPHP17752A(図11、配列番号:2)で生じさせた。これらのフラグメントは、Asc I消化によってプラスミド源から得た。フラグメントPHP19340Aは、プラスミドPHP19340(図12、配列番号:3)から、またフラグメントPHP17752Aは、プラスミドPHP17752(図13、配列番号:4)から得た。このPHP19340Aフラグメントは、ダイズミクロソームω−6 デサチュラーゼ遺伝子1(gm−fad2−1)の597bpフラグメントを有するカセットを含有する(Heppard等の論文(1996)Plant Physiol.110:311〜319)。
【0092】
発現カセット中のgm−fad2−1フラグメントの存在は、内在性ω−6 デサチュラーゼの発現を抑制するように作用し、オレイン酸レベルの増加と、パルミチン酸、リノール酸、およびリノレン酸レベルの低下とを引き起こす。gm−fad2−1フラグメントの上流は、転写産物の発現を調整するクニッツトリプシン阻害遺伝子3(KTi3)由来のプロモーター領域である(JofukuおよびGoldbergの論文(1989)Plant Cell 1:1079〜1093、Jofuku等の論文(1989)Plant Cell 1:427〜435)。このKTi3プロモーターは、ダイズ胚中では高度に活性であり、また葉組織中では1000分の1の活性である(JofukuおよびGoldbergの論文(1989)Plant Cell 1:1079〜1093)。KTi3遺伝子の3’非翻訳領域(KTi3ターミネーター)(JofukuおよびGoldbergの論文(1989)Plant Cell 1:1079〜1093)は、このカセット由来の発現を終結させる。
【0093】
PHP17752Aフラグメントは、ダイズアセト乳酸シンターゼ遺伝子5’非翻訳領域の翻訳に由来するタンパク質のN末端領域に内在性酵素由来の2個の修飾アミノ酸残基と5個の追加のアミノ酸とを有するGM−HRAタンパク質をコードするダイズアセト乳酸シンターゼ遺伝子(gm−hra)の改変バージョンを有するカセットを含有する(FalcoおよびLi(2003)の米国特許出願第2003/0226166号明細書)。gm−hra遺伝子は、スルホニル尿素の部類の除草剤に対して耐性のあるアセト乳酸シンターゼの形をコードする。GM−HRAタンパク質は656個のアミノ酸からなり、約71kDaの分子量を有する。
【0094】
gm−hra遺伝子の発現は、ダイズ由来のS−アデノシル−L−メチオニンシンテターゼ(SAMS)遺伝子の5’プロモーター領域によって制御される(FalcoおよびLi(2003)の米国特許出願第2003/0226166号明細書)。この5’領域は、構成的プロモーターと、SAMS 5’非翻訳領域を中断するイントロンとから構成される。gm−hra遺伝子のターミネーターは、内在性ダイズアセト乳酸シンターゼターミネーター(alsターミネーター)である(FalcoおよびLi(2003)の米国特許出願第2003/0226166号明細書)。
【0095】
実施例3
ダイズの高オレイン酸イベントの形質転換および選択
ダイズ組織の形質転換の場合、gm−fad2−1遺伝子配列と発現に必要な調節成分とを含有するDNAの線状部分を、制限酵素AscIの使用によりプラスミドPHP19340から切り取り、アガロースゲル電気泳動を用いて精製した。gm−hra遺伝子配列と発現に必要な調節成分とを含有するDNAの線状部分を、制限酵素AscIの使用によりプラスミドPHP17522から切り取り、アガロースゲル電気泳動を用いて精製した。gm−fad2−1遺伝子を含有するDNAの線状部分は、挿入断片PHP19340Aと呼ばれ、サイズが2924bpである。gm−hra遺伝子を含有するDNAの線状部分は、挿入断片PHP17752Aと呼ばれ、サイズが4511bpである。形質転換イベントDP−305423−1中に導入された唯一のDNAは、上記挿入断片のDNAであった。
【0096】
イベントDP−305423−1からのトランスジェニック植物を、実施例1で述べたと同様の微粒子銃によって得た。胚形成組織試料を、サザン分析によりgm−fad2−1およびgm−hra導入遺伝子の存在を確かめるための分子分析用に採取した。各ユニークイベントに由来する組織から植物を再生し、種子生産用の温室に移した。
【0097】
実施例4
高オレイン酸イベントを含有する植物のサザン分析
材料および方法:ゲノムDNAを、標準的なUrea Extraction Buffer法を用いてDP305423 1の、および対照(品種:Jack)のT4およびT5世代の個々の植物の凍結ダイズ葉組織から抽出した。ゲノムDNAを、Pico Green(登録商標)試薬(Molecular Probes,Invitrogen)を用いて蛍光分光光度計上で定量した。1試料に付き約4μgのDNAをHind IIIまたはNco Iで消化した。陽性対照試料の場合、消化の前に対照ダイズゲノムDNAに約3pg(2ゲノムコピー当量)のプラスミドPHP19340またはPHP17752を加えた。陰性対照試料は、非修飾ダイズゲノムDNA(品種:Jack)から構成される。DNAフラグメントを、アガロースゲル電気泳動を用いてサイズ別に分離した。
【0098】
アガロースゲル電気泳動に続いて、その分離したDNAフラグメントをその場で脱プリン化、変性、中和し、TURBOBLOTTER(商標)Rapid Downward Transfer System(Schleicher & Schuell)について述べられている方法を用いて20×SSC緩衝液中でナイロン膜に移した。膜への移動後、UV架橋によってDNAを膜に結合させた。
【0099】
PCR DIG Probe Synthesis Kit(Roche)を用いてgm−fad2−1およびgm−hra用のDNAプローブを、PCRによってジゴキシゲニン(DIG)で標識した。
【0100】
特異的フラグメントの検出のために、基本的には製造業者が述べているDIG Easy Hyb溶液(Roche)を用いて、標識したプローブを、ナイロン膜上で標的DNAとハイブリッドを形成させた。高い厳密さでポストハイブリダイゼーション洗浄を行った。結合フラグメントとハイブリッドを形成したDIG標識プローブを、CDP−Star Chemiluminescent Nucleic Acid Detection System(Roche)を用いて検出した。1または複数の時点に関してブロットをX線フィルムに室温で露光させてハイブリッド形成するフラグメントを検出した。このイベントの脂肪酸組成は、実施例2で述べたと同様に求めた。29の異なるイベント(T1世代)において求められたオレイン酸レベルは、61.5〜84.6%の範囲であった。一イベント(T4〜T5世代)からのオレイン酸レベルは、72〜82%の範囲であった。
【0101】
実施例5
脂肪酸含量および組成
油の定性的および定量的な脂肪酸組成は、AOCS Ce 2−66(脂肪酸のメチルエステルの調製)およびAOCS Ce 1e−91(キャピラリーGLCによる食用の油および脂中の脂肪酸の決定)の公認の方法体系の変法を用いて次の通り求めた。油加工素材は、10mlのメスフラスコに0.5000g(0.0001gの精度まで計量し記録する)の油および0.0130g〜0.0260g(0.0001gの精度まで計量し記録する)の内標準(トリペンタデカノイン、NuChek Prep,Elysian,MN,USA)を加えることによって調製した。内標準は、分析が定性的(面積%)データに限定される場合は省略された。7mlのヘプタンを加え、Internal Standard Powder(IST)粉の完全な溶解を確実にするためにその加工素材を2分間音波処理した。室温まで冷却した後、ヘプタンで加工素材を体積までもっていった。加工素材は分析の直前に調製した。次いで、予め標識した管(テフロン(登録商標)のリッドインサート(lid inserts)を有するガラス13×100mm、VWR 53283 800チューブ、60826−304キャップ、VWR Bridgeport,NJ,USA)に、0、50、100、(4×150)、200、250、および300μl(管当たり油約0〜0.0150g)の油加工素材を加えることによってこれら油加工素材の希釈系列を調製し、各試料をヘプタンで300μlの最終体積までもっていく。PTFEシーラントテープでねじ込み部分を包むことによって誘導体化のために管を準備をした。誘導体化は、次の通り行った。管を渦流混合(vortex mix)し、1mlの誘導体化酸加工素材(50mlの氷冷(ice−cold)無水メタノールに5mlの塩化アセチル(Fluka 00990、Sigma Aldrich St Louis,MO,USA)を加えることによって調製される)を加えた。管にしっかりと蓋をかぶせ、再び渦を発生させ、ヒートブロック中で80℃において1時間インキュベートした。管を室温まで冷却し、1mlの1M NaCl水溶液を加え、次いで0.5mlのヘプタンを加えた。試料を激しく渦流混合し、放置して相を分離させてから、約200μlの上部(ヘプタン)の相を、ライナー張りのGC試料バイアル(Part#225350−631SP、Wheaton,Millville,NJ,USA)に移した。試料を、次の通りGCにより分析した。Agilent 6890は、Omegawax 320(Supelco,Bellefonte,PA,USA)毛細管カラム(30m×ID0.32mm、膜厚0.25μm)を装備する。1μlの試料を、250℃に加熱したGC注入口に分割比10:1で注入した。キャリアガスとして水素を39cm/秒の線速度(定流量モード)で使用した。最初のオーブン温度は160℃、4分間であり、次いでオーブン温度を2℃/分で220℃まで上昇させ、次いでその最終温度に10分間保った(全試験時間44分)。検出は炎イオン化によるものであり、NuChek Prep 461 Standard(1:100ヘプタン希釈、NuChek Prep、Elysian,NM,USA)を用いて共クロマトグラフィによりピークを識別した。面積>0.01%を有するすべてのピークが分析に含まれた。
【0102】
トコフェロール分析
トコフェロール含量を、250×4mm Lycoshere Si 60(5μm)分析用カラムおよびG1321A蛍光検出器を装備したAgilent 1100 HPLCシステム上でAOCS公認の方法Ce 8−89に従って測定した。内標準なしの上記油加工素材をこの分析用に使用した。ヘプタンに溶解した定量標準を、由緒正しいα(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、およびδ(デルタ)トコフェロール標準(Supelo,Bellefonte,PA,USA)を用いて調製した。標準濃度を、次の波長および吸光係数、α(アルファ):OD292および0.0076、β(ベータ):OD296および0.0089、γ(ガンマ):OD298および0.0091、δ(デルタ):OD298および0.0087を用いて紫外分光法により確認した。
【0103】
油質および酸化安定性の測定
遊離脂肪酸含量:
油の遊離脂肪酸含量については、Mettler−Toredo DL22 F&B滴定装置(Mettler−Toredo,Columbus,OH,USA)を用いて製造業者のプロトコルM345(食用油の酸価)に従って滴定により行った。
【0104】
過酸化物価:
油の過酸化物価については、Mettler−Toredo DL22 F&B滴定装置(Mettler−Toredo,Columbus,OH,USA)を用いて製造業者のプロトコルM346(食用油および脂の過酸化物価)に従ってヨウ素滴定により行った。
【0105】
p−アニシジン価:
p−アニシジン価については、AOCS公認の方法Cd 18−90に従って油上で求めた。
【0106】
酸化安定性指数:
酸化安定性指数については、OSI−24 Oxidative Stability Instrumentを用いてAOCS公認の方法Cd 12b−92に従って純粋な油試料(添加剤有または無)の5.0±0.2g試料上で測定した。計器の制御およびデータ分析は、OSI Program v8.18およびInstacal 5.33ソフトウェア(Omnion,Inc.,Rockland,MA,USA)を用いて行った。
【0107】
この表に関して脂肪酸%は、表示された5種類の主要な脂肪酸の合計に対して個々の脂肪酸を関係づけるものである。たまに存在することもあり、全脂肪酸の3%未満に相当する他の脂肪酸の種類は、比較の目的では考慮されない。
1商品ダイズ油中の5種類の主要な脂肪酸の値の範囲は、「The Lipid Handbook」2nd ed.,(1994)Gunstone,FD.,Harwood,J.L.,Padley,F.B.,Chapman & Hallからとられる。
16:0=パルミチン酸、18:0=ステアリン酸、18:1=オレイン酸、18:2=リノール酸、18:3=リノレン酸。
【0108】
実施例6
誘電損
損率(Df)は、表2に示す誘電伝熱流体についてASTM D924を用いて様々な温度で測定した。損失率は温度に対してプロットした。
結果を図1に示し、正方形■および三角形▲は比較の流体C1(時を異にして2回測定した)の損率を示し、十字形×は比較の流体C2の損率を示し、ダイヤモンド形◆は本発明により使用されるダイズ油E1の損率を示し、また黒丸●は基準として含まれる鉱油の損率を示す。
【0109】
【0110】
【0111】
本発明により使用されるダイズ油(E1)は温度の上昇に対して比較的変わらないままである低い誘電損を示し、一方、その他の植物性の油(C1およびC2)は温度が上昇するに従って損率の顕著な増大を示すことが図1から明らかである。
【0112】
結果を表の形で表4に示す。
【0113】
【0114】
実施例7
破壊電圧
絶縁破壊電圧は、電場および磁場の存在下で誘電体絶縁および/または熱交換に使用される流体を比較するために不可欠なパラメータである。それはまた、流体のアーク伝達(arcing transmission)特性の関連指標でもある。
【0115】
絶縁破壊電圧は、ASTM D877に従って測定され、流体の誘電性能の限界を特徴づける。それは、その誘電体の使用できる極限電圧と、結果として起こるその電圧パルスを持続させる能力とへの間接的アクセスを与えるバルク特性である。
【0116】
本発明により使用されるダイズ油(E1)は、23℃で57から66kVの範囲内の破壊電圧を有する。一方、2種類の比較の流体C1およびC2は、25℃で47から65kVの範囲内の、すなわち著しく広くかつ低い破壊電圧を有する。本発明により使用されるダイズ油(E1)は明らかに優れており、その上にアーク伝達に対する良好な整合性も示す。
【0117】
実施例8
前処理法
2.6gの質量の本発明により使用されるダイズ油(E1)および2種類の比較の流体(C1およびC2)を、最大出力900Wで1分間の業務用マイクロ波処理にかけた。このような条件は、流体の必須成分の分子の完全性を維持するために200℃未満、好ましくは160℃未満の流体温度を生じさせるように選択される。
【0118】
実施例9
示差走査熱量測定および熱重量分析
電磁マイクロ波照射による前処理法(実施例8)の利点を実証するために、様々な植物性誘電伝熱流体を、前処理した場合としない場合の両方を、熱重量分析と結合された示差走査熱量測定にかけた。
【0119】
特定の条件および設備の参考事項を下記に提供する。
設備:2960 SDT−CE5275 Ta Instrument(DSC−TGA(示差走査熱量測定および熱重量分析)を同時に行う)
【0120】
試験条件
− 650まで10℃/分(℃)
− 空気流:100ml/分
− 空気の組成
N2:78.09%
O2:20.95%
Ar:0.93%
CO2:0.03%
【0121】
図2は、医薬用リシノール酸含有油に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(点線)および後(実線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す。
【0122】
熱流束シグナルの鮮明度およびそれらの相対強度は、例えば前処理後のピークの鋭さ、開始温度、および立上り温度によって示されるように電磁マイクロ波処理工程およびそれに伴う方法による油のプレコンディショニングが有益なことをはっきりと示す。
【0123】
図3は、市販銘柄の高オレイン酸ひまわり油である比較の流体C2に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(点線)および後(実線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す。
【0124】
熱流束シグナルの鮮明度およびそれらの相対強度は、前処理後のピークの鋭さによって示されるように電磁マイクロ波処理工程およびそれに伴う方法による油のプレコンディショニングが有益なことをはっきりと示す。
【0125】
図4は、市販銘柄の標準的なダイズ油である比較の流体C1に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(実線)および後(点線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す。
【0126】
熱流束シグナルの鮮明度およびそれらの相対強度は、前処理後のピークの鋭さによって示されるように電磁マイクロ波処理工程およびそれに伴う方法による油のプレコンディショニングが有益なことをはっきりと示す。
【0127】
図5は、本発明で使用される流体E1に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(実線)および後(点線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す。
【0128】
熱流束シグナルの鮮明度およびそれらの相対強度は、前処理後のピークの鋭さによって示されるように電磁マイクロ波処理工程およびそれに伴う方法による油のプレコンディショニングが有益なことをはっきりと示す。
【0129】
注記:前処理の有益な効果は、すべてのトリアシルグリセロール誘電伝熱流体およびその混合物に及び、それは本発明により使用される流体に限定されない。
【0130】
実施例10
誘電体紙を伴う誘電伝熱流体の挙動
本発明により使用される流体の30重量%に相当する量を、Weidmann AG,Rapperswill,Switzerlandから入手した市販の変圧器絶縁クラフト紙に、自然に起こる吸収作用により室温で含浸させた。この紙の最初の比重量は95g/m2であった。
【0131】
このような吸収させた紙の一試料を実施例8のマイクロ波前処理法にかけ、二つ目の試料はかけなかった。
【0132】
図6は、未処理クラフト紙(実線)、本発明により使用される流体を吸収させたクラフト紙(点線)と、本発明により使用される流体を吸収させ、かつ実施例8によるマイクロ波で前処理したクラフト紙(一点鎖線)との熱的挙動を示す。
【0133】
本発明により使用される流体をクラフト紙に吸い込ませることにより、結果として紙の耐熱性が20〜40℃強化される。マイクロ波前処理により、結果としてさらに10℃強化される。
【0134】
含浸は、紙の製造の間または後に行われる。マイクロ波処理は、何度も必要とされる回数繰り返すことができ、上記流体を、一定かつ/または可変パルスおよび緩和のシーケンスを連続的に、あるいは直列で、必要に応じてしばしばその照射シーケンスを繰り返して適用される一定のかつ均一に分布した電磁場にさらすことによって行うことができる。本発明者は、例えば7.2gの本発明の油を10秒の300W−マイクロ波パルスおよび50秒の緩和の20回の繰返し回数で照射することが油を、長期のより高いマイクロ波−出力照射によって誘発される恐れのある損傷を引き起こすことなくプレコンディショニングするのに効果的であることを見出した。吸収用の油は、本発明の任意の油混合物であることができる。20%の商品亜麻仁油と混合した本発明の油は、驚くべきことに本発明の密封型電気装置、特に20から30年など比較的長期間使用されるものの場合、時間とともに微少漏れを起こしがちである特に変圧器において、特に価値のある良好な封止性を示した。本発明の油のブレンド物の封止性は、特に高く評価される。天然に産するまたは合成の植物性の油もまた、絶縁紙ならびに封止界面の類似の封止効果を示すものと考えられてきた。本発明の油および/またはその混合物による紙処理は、例えば紙の粘弾性挙動ならびに絶縁破壊および裂けに対するその力学抵抗に与える価値のある効果を有し、液体を満たした変圧器などの電気装置の寿命を延ばすことが分かっている紙の耐久性を高めることにつながる。
【0135】
実施例12
適度な老化(通気オーブン中において170℃で88時間)の下で、約21%の一価不飽和C18/1を有する通常の商品ダイズ油の動的粘性率は、23℃で測定される60mPa・秒から180mPa・秒へ不可逆的に増大することが分かった。さらに、この通常の油は浅黄色から紫檀色への強い変色を示した。これは、比較的短期間で動的粘性率が3倍に増大することを意味する。動的粘性率のこのような増大は、変圧器内の循環量および圧力降下の補償を25%調整する必要性につながる場合がある。
【0136】
本発明により使用される流体E1をこの同じ熱老化に曝したところ、動的粘性率の変化は観察されなかった。
【0137】
この種の特性は、その油を誘電伝熱流体として特に有用なものにする。
【0138】
実施例13
Df対温度の挙動に与えるオレイン酸含量の影響を測定するために実験を行った。
【0139】
表6に示した脂肪酸組成(「FAC」)プロフィールを有する所定量の低リノール酸ダイズ油(LL)を、表6に示したプロフィールの本発明で使用される油E4とブレンドして、表6に示したFACプロフィールの70%オレイン酸油混合物および65%オレイン酸油混合物に一致する混合油を生成した。表6に示したFACプロフィールの商品ダイズ油試料(Cm)は、低オレイン酸含量試料の代表として役立つ。
【0140】
表6.実施例13に使用される様々なダイズ油および混合ダイズ油のFAC
【0141】
表6中に列挙した油およびブレンド物の試料を、実施例6で述べたDf分析にかけ、23から130℃の範囲にわたる温度において温度の関数としてDfを測定した。
【0142】
図7Aおよび7Bは、表6中に列挙した油および混合油の、温度の関数としてのDfの変化を示す。図7Aは、78%のオレイン酸を含む本発明の油(E2)を、商品油、65%オレイン酸ブレンド物、および70%オレイン酸ブレンド物と比較して示す。図7Bは、74%のオレイン酸を含む本発明の油(E4)を、商品油、65%オレイン酸ブレンド物、および70%オレイン酸ブレンド物と比較して示す。
【0143】
図7Aにおいて、正方形は77.74%のオレイン酸を有するE2(「HOSO」)の結果を示す。図7B中の×記号は、74.36%のオレイン酸(74%)を有するE4の結果を示す。図AおよびB中の星印は、21%のオレイン酸と61%の多価不飽和脂肪酸を有する商品ダイズ油(Cm)の結果を示す。三角形は、図7Aおよび7B中の70%のオレイン酸と16%の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油ブレンド物の結果を示す。ダイヤモンド形は、図7Aおよび7B中の65%のオレイン酸と20%の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油ブレンド物の結果を示す。
【0144】
本発明により使用される油E1はDfが低く、23〜130℃の全温度範囲にわたって低いままである点で、その他の油を凌ぐ優れた挙動を示すことが図7Aおよび7Bから明らかである。さらに本発明の油E1(例えば70%オレイン酸ブレンド物など)、油E2、および油E4は、温度に伴うDfの増大が小さいことを示す。酸化防止剤および他の添加剤を含まない商品ダイズ油Cmは、変圧器用途のための伝統的な添加剤を含有する市販のダイズ油C1と同様に応答する。
【0145】
図8は、2つの温度(上側の線:130℃、下側の線:90℃)における単位%で表したオレイン酸含量の関数としてDfの変化を示す。両温度においてDfはオレイン酸含量の増加と共に下がり、65%または約65%のオレイン酸から70%または約70%のオレイン酸まで鋭く低下することが図8から分かる。この実験に使用した油は、本発明の油の一つの例としての油E2である。
【0146】
実施例14
温度の関数としてDfを測定(実施例6に従って)するために、本発明により使用される2種類の異なるダイズ油E2およびE4を、高オレイン酸ひまわり油(オレイン酸84%、全多価不飽和脂肪酸8%)および油C1およびC2と対照させて用いて追加の実験を行った。これら油のFACを表7中に列挙する。
【0147】
【0148】
Dfは、様々な温度で実施例6に従って測定した。結果を表8に列挙する。これらの結果は、本発明により使用されるダイズ油である油E2およびE4が、23〜130℃の温度範囲にわたって著しく低いDfを示し、かつ高温において比較の油よりも小さいDfの増大を示すことをはっきり示している。この高オレイン酸ひまわり油のDfデータは、位置的にはちょうどE4とC1の間のC1の近くにあり、23〜130℃の温度範囲内で高オレイン酸ひまわり油のDf値の顕著な変化を示す。酸化防止剤および他の添加剤を含まない高オレイン酸ひまわり油は、変圧器用途のための伝統的な添加剤を含有する市販の高オレイン酸ひまわり油C2と同様に応答する。
【0149】
【0150】
図9は、比較の流体C1およびC2の、また油E2およびE4の誘電損率(Df)対温度の関係をグラフの形で示し、正方形■は比較の流体C1の損率を示し、三角形▲は比較の流体C2の損率を示し、ダイヤモンド形◆は本発明により使用されるダイズ油E2およびE4の損率を示す(下側の線:E2、上側の線:E4)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電伝熱流体、具体的には植物性の油から作られ、例えば油入変圧器に使用される誘電流体の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器は、一般に誘電体(すなわち非導電性材料)によって隔てなければならない導線の巻線を有する。通常、それらコイルおよび誘電体は、導体を絶縁し、かつ動作中に発生する熱を放散するために流体誘電熱媒中に浸漬される。この熱媒は、なおその上に誘電体としても働かなければならない。典型的な機構ではセルロースおよび/またはアラミド紙もしくは板材が誘電体として使用される。セルロース/アラミド材料は、導線の周りに巻き付けられ、巻線を誘電的に分離するために使用される。またそれは巻線または他の構成要素、例えばコアの構造用の支持材としても使用することができる。流体誘電熱媒は一般には油であり、例えば鉱油または十分に丈夫な植物性の油であることができる。
【0003】
変圧器の使用中、その誘電体および伝熱流体は、かなりの電磁場と、かなりの温度変動および電圧変化と、ブレークダウンとにさらされる。その比較的過激な条件が、経時的に誘電体の破損および伝熱流体の劣化を引き起こす恐れがある。劣化は、誘電損のせいの電力損失を引き起こし、遂には変圧器の放電および壊損を引き起こし、大きな汚染および/または火災の原因となる恐れがある。
【0004】
誘電体および伝熱流体はさらに、変圧器中での酸素の移動と、水の形成または進入とによって直接的また間接的に分解する可能性もある。
【0005】
鉱油は、一般にすぐれた誘電および伝熱挙動を示すが、誘電伝熱流体は莫大な量(すなわち、毎年数十万メートルトン)が使用される。世論は変圧器ユニットを取り巻く環境および安全の懸念に対して益々敏感になっており、したがってそれらは益々厳しい規制を受けている。現在使用されている多くの伝熱流体(鉱油など)は、それらが可燃性であり、かつ妥当な期間内にまたは簡単に生物分解しないので深刻な不安を有する。「バイオ」(すなわち生きている)供給源に由来する流体は、これらの目的に対する未来の流体であるという考えが強くなっている。例えば、米国特許第6,905,638号明細書および第7,048,875号明細書は、伝熱流体として植物性の油を用いる変圧器を開示している。この植物性の油は、化学的に合成された酸化防止剤を含有することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
食品用の油に限定されない、ある期間にわたって良好な性能を示す改良された生分解性伝熱流体の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様において本発明は、電気エネルギーを発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置における伝熱誘電流体としてのダイズ油の使用法を提供する。このダイズ油は、その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつその脂肪酸の16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満が多価不飽和脂肪酸であるものである。
【0008】
第二の態様において本発明は、
(a)導電性材料と、
(b)誘電体と、
(c)その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつその脂肪酸の16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満が多価不飽和脂肪酸であるダイズ油の伝熱誘電流体と
を含む、電気エネルギーおよび/または光学信号を発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置を提供する。
【0009】
第三の態様において本発明は、
(a)植物性トリアシルグリセロールである伝熱誘電流体を一定でかつ均一分布した電磁場にさらす工程
を含む上記流体のプレコンディショニング法を提供する。
【0010】
第四の態様において本発明は、その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつその脂肪酸の16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満が多価不飽和脂肪酸である、少なくとも1重量%の植物性トリアシルグリセロール、好ましくはダイズ油を含浸させた有機繊維構造体(織布または不織布)を含む誘電体を提供する。
【0011】
第五の態様において本発明は、電気エネルギーを発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置中の伝熱誘電流体として、少なくとも1種類のヒドロキシ脂肪酸を有するトリアシルグリセロールである植物性の油の使用法を提供する。
【0012】
第六の態様において本発明は、一定温度において改善されたDf値を有する混合高オレイン酸油を提供し、この混合高オレイン酸油は、
a)高オレイン酸ダイズ油である1〜100体積%の範囲の第一の油と、
b)1〜100体積%の範囲の第二の油と
を含み、
c)その混合高オレイン酸ダイズ油は少なくとも70%のオレイン酸含量を有し、かつ高オレイン酸ダイズ油を含まない油と同一条件下で比較した場合、その混合高オレイン酸油の一定温度におけるDf値が改善される。
【0013】
第七の態様において本発明は、一定温度において改善されたDf値を有する混合高オレイン酸油を提供し、この混合高オレイン酸油は、
a)高オレイン酸ダイズ油である1〜100体積%の範囲の第一の油と、
b)オレイン酸のモノアルキルエステルである1〜100体積%の範囲の第二の油と、
c)1〜100体積%の範囲の第三の油と
を含み、
d)その混合高オレイン酸ダイズ油は少なくとも70%のオレイン酸含量を有し、かつ高オレイン酸ダイズ油および/または精製したオレイン酸のエステルを含まない油と同一条件下で比較した場合、その混合高オレイン酸油の一定温度におけるそのDf値が改善される。
【0014】
配列番号:1;プラスミドPHP19340Aのヌクレオチド配列を示す図である。
配列番号:2;プラスミドPHP17752Aのヌクレオチド配列を示す図である。
配列番号:3;プラスミドPHP19340のヌクレオチド配列を示す図である。
配列番号:4;プラスミドPHP17752のヌクレオチド配列を示す図である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】比較の流体C1(FR3)およびC2(Biotemp)の、また本発明により使用される流体E1(本発明の油の一つであるVGO−B1)の誘電損率(Df)対温度の関係を示す図である。図中で、正方形■および三角形▲は比較の流体C1(FR3)(時を異にして2回測定した)の損率を示し、十字形×は比較の流体C2(Biotemp)の損率を示し、ダイヤモンド形◆は本発明により使用されるダイズ油E1(VGO−B1)の損率を示し、また黒丸●は基準として含まれる鉱油の損率を示す。
【図2】医薬用リシノール酸油に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(点線)および後(実線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す図である。
【図3】市販銘柄の高オレイン酸ひまわり油である比較の流体C2に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(点線)および後(実線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す図である。
【図4】市販銘柄の標準的なダイズ油である比較の流体C1に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(実線)および後(点線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す図である。
【図5】本発明で使用される流体E1に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(実線)および後(点線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す図である。
【図6】未処理クラフト紙(実線)、本発明により使用される流体を吸い込ませたクラフト紙(点線)、および本発明により使用される流体を吸い込ませ、かつ実施例8によるマイクロ波で前処理したクラフト紙(一点鎖線)の熱的挙動を示す図である。
【図7A】21%のオレイン酸および61%の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油(「Cm」、×記号で表す)、および65%のオレイン酸および20%の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油(ダイヤモンド形で表す)と比較した、「HOSO」などの本発明により使用されるダイズ油E2(正方形で表す)、および70%のオレイン酸および16%の多価不飽和脂肪酸を有する高オレイン酸ダイズ油(三角形で表す)の測定されたDf値対温度の関係を示す図である。
【図7B】本発明により使用されるダイズ油の測定されたDf値対温度の関係を示す図である。四角形は、74.36%のオレイン酸(74%)を有するE4の結果を示す。×記号は、21%のオレイン酸と61%の多価不飽和脂肪酸を有する商品ダイズ油(Cm)の結果を表す。三角形は、70%のオレイン酸と16%の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油ブレンド物の結果を表す。ダイヤモンド形は、65%のオレイン酸と20%の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油ブレンド物の結果を表す。
【図8】2つの異なる温度(上側の線:130℃、下側の線:90℃)における混合ダイズ油のオレイン酸含量に対するDfの変化を示す図である。
【図9】比較の流体C1(FR3)およびC2(Biotemp)の、また本発明により使用される2種類の油であるE2(E1、VGO−B1)およびE4(E1、VGO−B2)の誘電損率(Df)対温度の関係を示す図である。図中で、正方形■は比較の流体C1の損率を示し、三角形▲は比較の流体C2の損率を示し、ダイヤモンド形◆は本発明により使用されるダイズ油E2およびE4の損率を示す。
【図10】フラグメントPHP19340Aを描いた図である。
【図11】フラグメントPHP17752Aを描いた図である。
【図12】プラスミドPHP19340を描いた図である。
【図13】プラスミドPHP17752を描いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
誘電損率、誘電損値、Df値、Df、または誘電正接という表現は、本明細書中で区別なく使用される。DfおよびTanδは、文献中ではしばしば等価なものとして引用される。
【0017】
「E1」という表現は、本発明のすべての高オレイン酸ダイズ油を対象とし、表1に示す脂肪酸組成物の範囲を含み、VGO−B1と、VGO−B2と、HOSOと、表6中に示す70%オレイン酸のダイズ油と、E2と、E4とを無制限に含む。
【0018】
方法
油の脂肪酸含量は、水素炎イオン化検出によるガスクロマトグラフィ、または蛍光検出による逆相液体クロマトグラフィを用いて求めることができる。引用される割合は、別段の指定がない限り%、すなわち、一つの具体的な脂肪酸のピーク下の面積を特定の試料中の全脂肪酸のピーク面積の和で割ったものとして表される相対的パーセントと関係する。
【0019】
油のトコフェロール含量は、HPLC法を用いて求められる。
【0020】
本発明者等は、比較的高い(すなわち、その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%)含量の一価不飽和C14〜C22脂肪酸、および16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油が、伝熱誘電流体として特に良好な性能を与えることを見出した。
【0021】
より好ましくは本発明により使用されるダイズ油は、少なくとも80%の一価不飽和C14〜C22脂肪酸含量、特に好ましくは少なくとも82%、好ましくは少なくとも84%の一価不飽和C14〜C22脂肪酸含量、あるいは85%または約85%の一価不飽和C14〜C22脂肪酸含量を有する。
【0022】
より好ましくは本発明により使用されるダイズ油は、4%未満の多価不飽和脂肪酸を有する。
【0023】
好ましい実施形態では本発明により使用されるダイズ油は、少なくとも80%の一価不飽和C14〜C22脂肪酸含量、および4%未満の多価不飽和脂肪酸を有する。
【0024】
より好ましくは一価不飽和脂肪酸はC18一価不飽和脂肪酸である。最も好ましくはそれらはオレイン酸である。
【0025】
より好ましくは多価不飽和脂肪酸は、2個または3個の二重結合を有するC18脂肪酸、例えばC18:2および/またはC18:3である。
【0026】
好ましくはC18:2が5%以下である。
【0027】
より好ましくはダイズ油は、脂肪酸部分の約75%を超える含量のC18:1、および脂肪酸の7%未満、より好ましくは6%未満のC18:2とC18:3を合わせた含量を有する。
【0028】
好ましい実施形態ではダイズ油は、12%未満または約12%の、より好ましくは10%未満または約10%の飽和脂肪酸含量を有する。より高い飽和脂肪酸含量は、望ましくない高い流動点と、動的熱伝達能力の低下とを引き起こす。
【0029】
特に好ましい実施形態ではダイズ油は、6%または約6%のC16:0、3%または約3%のC18:0、86%または約86%のC18:1、2%または約2%のC18:2、および0〜2%のC18:3の脂肪酸含量を有する。
【0030】
別の特に好ましい実施形態ではダイズ油は、6%または約6%のC16:0、4%または約4%のC18:0、79%または約79%のC18:1、4%または約4%のC18:2、2%または約2%のC18:3の脂肪酸含量を有する。
【0031】
別の好ましい実施形態ではダイズ油は、下記脂肪酸をその%または約その%の含量で有する(下記表参照)。
【0032】
【0033】
ダイズ油は、好ましくは300ppm未満または約300ppmの含量の水を有する。
【0034】
好ましい実施形態ではダイズ油は、さらにトコフェロール酸化防止剤を含む。好ましくはトコフェロールは、周知のHPLC法で測定される油100g当たり少なくとも85mg、より好ましくは油100g当たり少なくとも100mgの濃度で存在する。トコフェロールは、天然に産出するトコフェロール、具体的にはα−、β−、γ−、およびδ−トコフェロール、およびこれらの混合物から選択することができる。
【0035】
特に好ましい実施形態ではダイズ油は、周知のHPLC法で測定される油100g当たり160mgまたは約160mgのトコフェロール含量を有し、かつ6%または約6%のC16:0、3%または約3%のC18:0、86%または約86%のC18:1、2%または約2%のC18:2、2%または約2%のC18:3の脂肪酸含量を有する。
【0036】
別の特に好ましい実施形態ではダイズ油は、周知のHPLC法で測定される油100g当たり160mgまたは約160mgのトコフェロール含量を有し、かつ6%または約6%のC16:0、4%または約4%のC18:0、79%または約79%のC18:1、4%または約4%のC18:2、2%または約2%のC18:3の脂肪酸含量を有する。
【0037】
好ましくはトコフェロールは、そのダイズ油中に存在する、または植物源から得られる任意の他の植物性の油中に存在する、または天然植物の抽出物NPE中に存在する(すなわち、添加される合成トコフェロールとは対照的な)トコフェロールである。
【0038】
ダイズ油は、当業界で知られている添加剤、例えば殺菌剤、金属キレート化剤、腐食抑制剤、酸化防止剤、熱安定剤、粘度調整剤、流動点降下剤(これらの機能を増進させる天然植物の抽出物などを含めた)をさらに含むことができ、これら添加剤は、一般にはその誘電伝熱流体の5重量%未満を構成する。
【0039】
本発明により使用されるダイズ油は、誘電伝熱流体に使用される他の流体、例えば他の植物性の油、鉱油などとブレンドすることができる。
【0040】
特に好ましい実施形態ではその油は、オレオイル 12−デサチュラーゼをコードする遺伝子の活性の発現を高める組換え操作によって調製されるダイズから得られる。
【0041】
ダイズの適切な遺伝子操作の具体例としての記述は、米国特許第5,981,781号明細書(E.I.du Pont de Nemours and Company)中に記載されており、下記で詳述する。
【0042】
ダイズ(Glycine max)中にはオレオイル 12−デサチュラーゼ活性をコードする2種類の遺伝子が存在し、その一方(GmFad 2−1)は発育種子中でのみ発現する(Heppard等の論文(1996)Plant Physiol.110:311〜319)。この遺伝子の発現は、開花の約19日後に始まる油沈着の期間中に増加し、その遺伝子産物はダイズ油中に見出される多価不飽和脂肪酸の合成を担っている。GmFad 2−1は、Okuley,J.等の論文(1994)Plant Cell 6:147〜158によって、また国際公開第94/11516号パンフレット中に詳細に記載されている。それはプラスミドpSF2−169K(ATCC受託番号69092)の形でATCCから入手できる。もう一方の遺伝子(GmFad 2−2)は、ダイズ植物の種子、葉、根、および茎中で一定のレベルで発現し、「ハウスキーピング」12−デサチュラーゼ遺伝子である。そのFad 2−2遺伝子産物は、細胞膜の多価不飽和脂肪酸の合成を担っている。
【0043】
GmFad 2−1を、ダイズ(Glycine max)β−コングリシニン遺伝子のα’−サブユニットに由来する強力な種子特異的プロモーターの制御下に置いた。このプロモーターは、その形質遺伝子の高レベルの種子特異的発現を可能にする。それは、Glycine max β−コングリシニン貯蔵タンパク質のα’−サブユニットの出発コドンの606bp上流に拡がる。そのβ−コングリシニンプロモーター配列は、27個のヌクレオチド位置に違いを有する公開されているβ−コングリシニン遺伝子(Doyle等の論文(1986)J.Biol.Chem.261:9228〜9238)の対立遺伝子を表す。トランスジェニック植物において種子特異的発現パターンを維持することが示されている(Barker等の論文(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:458〜462およびBeachy等の論文(1985)EMBO J.4:3047〜3053)。そのリーディングフレームは、緑莢インゲン(Phaseolus vulgaris)のファゼオリン遺伝子由来の3’フラグメントで終わった。これは、緑莢インゲン(Phaseolus vulgaris)ファゼオリン遺伝子終止コドン(Doyle等の論文(1986)に記載のクローンから生じる)の3’配列の1174bp領域である。
【0044】
そのGmFad 2−1オープンリーディングフレーム(ORF)は、センスGmFad 2−1 cDNAおよび内在性GmFad 2−1遺伝子の遺伝子抑制を生じさせるようなプロモーターに関してセンスの向きであった。「センス抑制」として知られるこの現象は、植物中の遺伝子を故意に止めるための有効な方法であり、米国特許第5,034,323号明細書中に記載されている。
【0045】
大腸菌(E.coli)中のプラスミドの維持および複製のために、上記のGmFad 2−1転写単位をプラスミドpGEM−9z(−)(Promega Biotech,Madison Wis.,USA)中にクローン化した。
【0046】
形質転換させたダイズ植物を識別するためには大腸菌(E.coli)由来のβ−グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)を使用した。使用されたカセットは、3つのモジュール、すなわちカリフラワー モザイク ウィルス 35Sプロモーターと、大腸菌(E.coli)由来のβ−グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)と、アグロバクテリウム ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のTi−プラスミドのノパリンシンターゼ(NOS)遺伝子由来の遺伝子ターミネーターを含有する0.77kbのDNAフラグメントとからなった。35Sプロモーターは、大部分の植物組織における構成遺伝子発現用のCaMV由来の1.4kbプロモーター領域であり(Odell等の論文(1985)Nature 303:810〜812)、GUS遺伝子は、酵素β−グルクロニダーゼをコードする1.85kbフラグメントであり(Jefferson等の論文(1986)PNAS USA 83:8447〜8451)、またNOSターミネーターは、ノパリンシンターゼコーディング領域の3’末端の一部分である(Fraley等の論文(1983)PNAS USA 80:4803〜4807)。このGUSカセットを、GmFad 2−1/pGEM−9z(−)構築物中にクローン化し、pBS43と呼んだ。
【0047】
プラスミドpBS43を、粒子衝突の方法によって優良ダイズ系A2396の分裂組織に形質転換した(Christou等の論文(1990)Trends Biotechnol.8:145〜151)。受精能力のある植物を、当業界でよく知られている方法を用いて再生させた。
【0048】
GUS活性を発現しており、かつPCRによって評価した場合にGmFad 2−1遺伝子に対して陽性でもあった植物(Event 260−05)を、形質転換した植物の最初の個体群から選択した。植物260−05の複数個のR1種子から小片を採取し、脂肪酸組成についてスクリーニングした。次いで、小片に砕いた種子を植え付け、発芽させた。その得られた植物の葉からゲノムDNAを抽出し、制限酵素Bam HIで切断した。ブロットをファゼオリンプローブでプローブした。
【0049】
最初の形質転換イベントにおいてGmFad 2−1構築物がダイズゲノム中の2つの異なる遺伝子座において組み込まれるようになったことは、そのDNAハイブリッド形成パターンから明らかであった。一方の座(遺伝子座A)においてGmFad 2−1構築物は、内在性GmFad 2−1遺伝子の遺伝子抑制を引き起こし、結果として約85%の相対的オレイン酸含量(優良ダイズ品種における約20%と比較して)を生じさせた。遺伝子座AではpBS43の2つのコピーが存在した。DNAハイブリッド形成ブロット上に、それは2つの同時分離帯として見られた。もう一方の組込み座(遺伝子座B)ではGmFad 2−1は過剰発現し、―――。
【0050】
最初の形質転換細胞から生じた第四世代分離個体系統(R4植物)を成熟期まで成長させた。遺伝子抑制座Aのみを含有するR4種子(例えばG94−1)は、開化20日後に回収した試料中に検出可能なGmFad 2−1 mRNAを少しも含有しなかった(ノーザンブロット法により測定した場合)。対照と比べて多少低下するが、GmFad 2−2 mRNAは抑制されなかった。したがってGmFad 2−1センス構築物は、GmFad 2−1遺伝子の発現を妨げる望ましい効果を有し、したがって種子のオレイン酸含量を増加させた。GmFad 2−1遺伝子抑制座に対して同型接合性のすべての植物は、複数の世代にわたって同一のサザンブロットプロフィールを有した。これは、その挿入断片が安定であり、少なくとも4世代にわたってゲノム中の同じ位置にあることを示している。
【0051】
ダイズ油は、既知の抽出方法を用いて植物源から抽出される。好ましい抽出方法は、自然のトコフェロール内容の破壊を引き起こす工程を避けるものである。例えば、油を長期間、例えば脱臭の工程の間に200℃超に加熱することは避けることが好ましい。これら工程を減らすか、またはなくすことができる。幾つかの例では水素添加を避けることが好ましい場合もある。種子から油をより徹底的に抽出する前を意味する「最初に」抽出される油の画分を取ることもまた好ましい。物理的抽出が、溶媒抽出または任意の複合抽出工程よりも好ましく、物理的抽出の工程に特権を与える。
【0052】
ダイズの油および粗引き粉を生産するためのダイズ種子の抽出および加工方法は、ダイズ加工業界でよく知られている。一般にダイズ油は、含油種子からの食用油製品の抽出および精製を達成する一連の工程を用いて生産される。本発明の油は食品用の油に限定されない。ダイズ油およびダイズ副産物は、下記図式に示す一般化工程を用いて生産される。
【0053】
工程 除去される不純物/得られる副産物
ダイズ種子
↓
油抽出 → 粗びき粉
↓
脱ガム → レシチン
↓
アルカリまたは物理的精製 → ガム、遊離脂肪酸、ピグメント
↓
水洗浄 → セッケン
↓
漂白 → 色、セッケン、金属
↓
(水素化)
↓
(脱ろう) → ステアリン
↓
脱臭 → FFA、トコフェロール、ステロール、揮発性物質
↓
油製品
【0054】
ダイズ種子を清浄にし、調質し、外皮を除き、薄片にする。これは油抽出の効率を高める。油抽出は、一般には溶媒(ヘキサン)抽出によって達成されるが、物理的圧力および/または溶媒抽出の組合せによって達成することもまた可能である。得られた油は粗油と呼ばれる。粗油は、リン脂質ならびに他の極性および中性脂質複合体を水和することによって脱ガムすることができる。これは、非水和性トリグリセリド画分(ダイズ油)からのそれらの分離を容易にする。得られるレシチンガムをさらに加工して様々な食品および工業製品に乳化剤および離型(粘着防止)剤として使用される商業的に重要なレシチン製品を製造することができる。脱ガムした油を、不純物、すなわち一次遊離脂肪酸、ピグメント、および残留ガムの除去のためにさらに精製することができる。精製は、遊離脂肪酸と反応させてセッケンを形成し、また粗油中のホスファチドおよびタンパク質を水和するカセイアルカリの添加によって達成される。水を用いて、精製の間に形成される微量のセッケンを洗い流す。そのソープストック副産物は、直接に動物の飼料に使用することも、また酸性にして遊離脂肪酸を回収することもできる。着色を、活性白土、粉末活性炭、および/または合成中性樹脂を用いて吸着により除去する。それによりクロロフィルおよびカロテノイド化合物の大部分が除去される。主として真空下での水蒸気蒸留である脱臭は最後の工程であり、油の臭気または風味に影響を与える化合物を除去するように設計される。ダイズ種子の加工、ダイズ油の生産、および副産物の利用に関するより詳細な言及は、Erickson(1995)Practical Handbook of Soybean Processing and Utilization,The American Oil Chemists’ Society and United Soybean Board中に見出すことができる。
【0055】
本発明の第二の態様は、
(a)導電性材料と、
(b)誘電体と、
(c)その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつその脂肪酸の16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満が多価不飽和脂肪酸であるダイズ油の伝熱誘電流体と
を含む、場合によっては光学信号を伴う電気エネルギーを発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置を提供する。
【0056】
本発明の装置に使用される伝熱誘電流体は、本明細書中で述べる本発明で使用される好ましい油のいずれかおよびそれらの任意の混合物であることができる。
【0057】
好ましい実施形態ではこの装置は変圧器である。一般に変圧器は、導線のコイルまたは巻線、および接続部の形態の導電性材料(例えば、銅、アルミニウム、鉄、鋼、銀など)を有するはずである。導電性材料は、一般に製織または不織繊維材料、フィルム、および積層板、例えば紙、板材、および/または多次元構造体から選択される誘電体の周りに巻かれ、かつ誘電体で覆われる。この紙または板材は、セルロース系材料でもよく、また、例えばアラミド繊維、好ましくはm−アラミド繊維、ポリイミド、ポリフェニルスルホン、ポリアミド、ポリエステル(例えばPET)、およびポリエチレン、ならびにそれらによる様々な形態の組合せ、例えば複合体、積層板、および個別仕様の形態的に合わせて作られた表面および/または多次元構造体、およびこれらの混成物/混合物からなってもよい。導電性材料および誘電体は容器中に入れられ、かつそれら構成材を沈めるように、または部分的に沈めるように誘電伝熱流体が加えられる。別法では、その加工の様々な段階で吸収させる(「吸い込ませる」)ことによって誘電体(例えば、紙または板材)に誘電伝熱流体を含浸させる。
【0058】
別の好ましい実施形態では誘電伝熱流体を、例えば発電機、コンデンサー、インバーターまたはモーター、スイッチ、およびケーブルに使用することができる。
【0059】
本発明の第三の態様は、植物性トリアシルグリセロールである伝熱誘電流体をプレコンディショニングするための方法であり、この方法は、
(a)上記流体を一定のかつ均一に分布した電磁場にさらす工程
を含む。電磁場は、連続的に、あるいは直列で、必要に応じてしばしばその照射シーケンスを繰り返して適用することができる。
【0060】
前処理の有益な効果は、すべてのトリアシルグリセロール誘電伝熱流体およびその混合物に及び、本発明により使用される流体に限定されない。
【0061】
好ましい実施形態では電磁場は、マイクロ波の形態で適用される。
【0062】
好ましくは電磁場は、少なくとも100℃または約100℃、好ましくは少なくとも120℃または約120℃ではあるが、170℃以下または約170℃、より好ましくは160℃以下または約160℃で植物性トリアシルグリセロールを処理するのに十分な出力で、かつ十分な期間適用される。140℃または約140℃まで植物性トリアシルグリセロールを加熱することが特に好ましい。
【0063】
流体を電磁場にさらした後、放置して冷却する。
【0064】
一実施形態では植物性トリアシルグリセロールは、ニート流体として電磁場にさらされ(すなわち適切な容器内で)、次いで必要に応じて使用される。別の実施形態では植物性トリアシルグリセロールは、まず紙(例えばセルロース系材料またはアラミド)などの吸収性の誘電体に塗布し、次いでこの吸い込ませた紙を、電磁場を含むインライン型加工処理にかける。好ましくは、このようなインラインまたはオフライン型加工処理は、電磁場への油の照射を最大にする、例えば処理される材料の大部分の範囲内で勾配(主に温度および/または電磁放射束)を減らす方法で行われることになる。流下薄膜搬送設備および/または液滴チャンバーが適している。
【0065】
本発明の第四の態様は、その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつその脂肪酸の16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満が多価不飽和脂肪酸である、少なくとも1重量%の植物性トリアシルグリセロール、好ましくはダイズ油を含浸させた有機繊維構造体(例えば、織組織または布、あるいは不織布)を含む誘電体である。
【0066】
含浸用に使用される植物性トリアシルグリセロールは、本明細書中で述べる本発明により使用される流体のいずれかであることができる。
【0067】
好ましい実施形態ではこの有機繊維構造体は、セルロースまたはアラミド繊維、ポリイミド、ポリフェニルスルホン、ポリアミド、ポリエステル(例えばPET)、およびポリエチレンから作られる不織布、ならびにそれらによる様々な形態の組合せ、例えば複合体、積層板、および個別仕様の形態的に合わせて作られた表面および/または多次元構造体、およびこれらの混成物/混合物である。
【0068】
植物性トリアシルグリセロールは、好ましくは約1重量%〜10重量%、より好ましくは10重量%〜約50重量%、さらに好ましくは約20重量%〜40重量%またはその近傍で存在する。
【0069】
第五の態様において本発明は、電気エネルギーを発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置中の伝熱誘電流体として、少なくとも1種類のヒドロキシ脂肪酸を有するトリアシルグリセロールである植物性の油の使用法を提供する。好ましくはこのヒドロキシル脂肪酸は、好ましくはそのキラル炭素にD立体配置を有するcis−12−ヒドロキシオクタデカ−9−エン酸である。特に好ましい実施形態ではトリアシルグリセロール中の脂肪酸のすべてがD−cis−12−ヒドロキシオクタデカ−9−エン酸(ひまし油またはリシノール酸)であり、このトリアシルグリセロールは、その脂肪酸の少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつその脂肪酸の16%未満、好ましくは7%未満、より好ましくは6%未満が多価不飽和脂肪酸であるトリアシルグリセロールと様々な割合で混合される。好ましくはブレンド物中でひまし油が、そのトリアシルグリセロールの5から15%に相当する。
【0070】
用語「高オレイン酸ダイズ油」は、オレイン酸含量が少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、および95%のダイズ種子を指す。好ましい高オレイン酸ダイズ油出発原料は、国際公開第94/11516号パンフレット中に開示されており、この開示内容はそれにより本明細書中に参照により援用される。
【0071】
用語「高オレイン酸油」は、オレイン酸含量が少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、および95%の油を指す。
【0072】
本発明で使用するための油の多価不飽和脂肪酸の含量の有用な例は、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%未満である。
【0073】
第六の態様において本発明は、一定温度において改善されたDf値を有する混合高オレイン酸油を提供し、この混合高オレイン酸油は、
a)高オレイン酸ダイズ油である1〜100体積%の範囲の第一の油と、
b)1〜100体積%の範囲の第二の油と
を含み、
c)その混合高オレイン酸ダイズ油は、少なくとも70%のオレイン酸含量を有し、かつ高オレイン酸ダイズ油を含まない油と同一条件下で比較した場合、その混合高オレイン酸油の一定温度におけるDf値が改善される。
【0074】
本発明の混合油の油a)およびb)の体積%の有用な例は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%である。使用することができる油の量は、その得られる最終混合油製品において達成しようとする所望の特性によって決まることになる。
【0075】
第七の態様において本発明は、一定温度において改善されたDf値を有する混合高オレイン酸油を提供し、この混合高オレイン酸油は、
a)高オレイン酸ダイズ油である1〜100体積%の範囲の第一の油と、
b)オレイン酸のモノアルキルエステルである1〜100体積%の範囲の第二の油と、
c)1〜100体積%の範囲の第三の油と
を含み、
d)その混合高オレイン酸ダイズ油は、少なくとも70%のオレイン酸含量を有し、かつ高オレイン酸ダイズ油および/または精製したオレイン酸のエステルを含まない油と同一条件下で比較した場合、その混合高オレイン酸油の一定温度におけるそのDf値が改善される。
【0076】
本発明の混合油の油a)、b)、およびc)の体積%の有用な例は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、および100%である。使用することができる油の量は、その得られる最終混合油製品において達成しようとする所望の特性によって決まることになる。
【0077】
オレイン酸のモノアルキルエステルである油b)は、オレイン酸の任意のC1〜C12アルキルエステルであることができる。C1〜C8アルキルエステルが特に好ましく、C1〜C6アルキルエステル、例えば直鎖および分岐の両方のメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、およびヘキシルエステルがより好ましい。
【0078】
誘電損失Dfを測定することによって本明細書中で述べる油を、その伝熱誘電流体としてのその適切性について試験した。Dfは、電場および/または磁場の存在下における誘電体絶縁用に使用される流体を比較するための重要なパラメータである。
【0079】
誘電損失Dfは、ひとつには交番電磁場中の流体の、エネルギー散逸損失がなにも起こらないはずの純粋な誘電媒質の理想からの逸脱傾向を表す。誘電損は、一般には流体中の不純物、特に帯電した不純物の存在により、水含量の増加により、遊離酸により、また流体の分子のより小さな化学種への崩壊により増大する。さらに、代表的な温度範囲内での温度に対する誘電損の安定性は、長期間にわたって良好な性能(すなわち、良好な老化挙動)を示す耐久性のある流体組成物の保険でもある。
【0080】
Dfの測定はASTM D924を用いて行われ、これはスーパーヘテロダイン原理に基づいている。
一態様では、好ましくは本発明により使用されるダイズ油または混合油は、23℃で測定した場合、1.2×10-3未満または約1.2×10-3のDf、70℃で測定した場合、5.4×10-3未満または約5.4×10-3のDf、90℃で測定した場合、好ましくは9.1×10-3未満のDf、100℃で測定した場合、好ましくは1.21×10-2未満または約1.21×10-2のDf、120℃で測定した場合、好ましくは1.95×10-2未満または約1.95×10-2のDf、130℃で測定した場合、2.32×10-2未満または約2.32×10-2のDfを示し、また好ましくは23〜130℃または約23〜130℃の温度範囲にわたって2.32×10-2未満または約2.32×10-2のDfを示す。
【0081】
別の態様では、本発明により使用されるダイズ油または混合油は、23℃で測定した場合、好ましくは2.5×10-4未満または約2.5×10-4のDf、70℃で測定した場合、好ましくは2.5×10-3未満または約2.5×10-3、より好ましくは1.5×10-3未満または約1.5×10-3のDf、90℃で測定した場合、好ましくは5×10-3未満または約5×10-3、より好ましくは3×10-3未満または約3×10-3のDf、100℃で測定した場合、好ましくは7×10-3未満または約7×10-3、より好ましくは4×10-3未満または約4×10-3のDf、120℃で測定した場合、好ましくは2×10-2未満または約2×10-2、より好ましくは7×10-3未満または約7×10-3のDf、また130℃で測定した場合、好ましくは2×10-2未満または約2×10-2、より好ましくは1×10-2未満または約1×10-2のDfを示す。好ましくは23〜130℃または約23〜130℃の温度範囲にわたって2×10-2未満または約2×10-2、より好ましくは1×10-2未満または約1×10-2のDfを示す。
【0082】
本発明により使用される一態様においては混合油を使用することができる。このようなブレンド物は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%のオレイン酸含量を有する高オレイン酸ダイズ油を、別の油、好ましくは植物性の油とブレンドすることによって作られる。別の油に加えられる高オレイン酸ダイズ油の量は滴定によって決めることができる。この高オレイン酸ダイズ油は、混合油が、23℃で測定した場合、1.2×10-3未満または約1.2×10-3のDf、70℃で測定した場合、好ましくは5.4×10-3未満または約5.4×10-3のDf、90℃で測定した場合、好ましくは9.1×10-3未満または約9.1×10-3のDf、100℃で測定した場合、好ましくは1.21×10-2未満または約1.21×10-2のDf、120℃で測定した場合、好ましくは1.95×10-2未満または約1.95×10-2のDf、130℃で測定した場合、好ましくは2.32×10-2未満または約2.32×10-2のDfになるまで加えることができ、また好ましくは23〜130℃または約23〜130℃の温度範囲にわたって2.32×10-2未満または約2.32×10-2のDfを示す。ブレンド用に使用される高オレイン酸ダイズ油は、好ましくは16%未満または約16%、より好ましくは7%未満または約7%の多価不飽和脂肪酸含量を有する。
【0083】
本発明により使用される別の態様においては混合油を使用することができる。このようなブレンド物は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%のオレイン酸含量を有する高オレイン酸ダイズ油を、別の油、好ましくは植物性の油とブレンドすることによって作られる。別の油に加えられる高オレイン酸ダイズ油の量は滴定によって決めることができる。この高オレイン酸ダイズ油は、その混合油が、23℃で測定した場合、2.5×10-4未満または約2.5×10-4のDf、70℃で測定した場合、好ましくは2.5×10-3未満または約2.5×10-3の、より好ましくは1.5×10-3未満または約1.5×10-3のDf、90℃で測定した場合、好ましくは5×10-3未満または約5×10-3の、より好ましくは3×10-3未満または約3×10-3のDf、100℃で測定した場合、好ましくは7×10-3未満または約7×10-3の、より好ましくは4×10-3未満または約4×10-3のDf、120℃で測定した場合、好ましくは2×10-2未満または約2×10-2の、より好ましくは7×10-2未満または約7×10-2のDf、また130℃で測定した場合、好ましくは2×10-2未満または約2×10-2の、より好ましくは1×10-2未満または約1×10-2のDfを有するまで加えることができる。好ましくはその混合油は、23〜130℃または約23〜130℃の温度範囲にわたって0.02未満または約0.02の、より好ましくは1×10-2未満または約1×10-2のDfを示す。ブレンド用に使用される高オレイン酸ダイズ油は、好ましくは16%未満または約16%の、より好ましくは7%未満または約7%の多価不飽和脂肪酸含量を有する。
【0084】
動的(自然または強制)熱伝達は、油で冷却され、電気的に絶縁される大部分の電気設備で起こる。液体を満たした変圧器の加熱は、内部ホットスポットと、冬および夏の外部温度の極値との間のかなり大きな温度変動を考慮に入れて、多くの部分が冷却液および誘電流体によって制御されなければならない。うまく制御された条件下では変圧器は、30年を上回る期間のあいだ動作状態であることができるが、設計されたそれら変圧器の各カテゴリーおよびそのエネルギー変換負荷に対して定められる理想的動作温度から時には10℃未満の比較的小さな偏りで急速に損傷を受けることもある。
【0085】
油の少なくとも4つの重要な特性が温度により変わり、それらのそれぞれは様々な度合いで誘電伝熱流体(油)における可逆的または不可逆的特性変化を引き起こす。これらの特性は、密度、熱伝導率、動的粘度(これら3つのすべてが温度の上昇と共に低下する)、および比熱(これは温度の上昇と共に増大する)である。
【0086】
25℃から85℃までの油の温度変動に対して、密度変化が5%未満または約5%であり、伝導率変化が3%未満または約3%であり、熱容量変化が10%未満または約10%であることが好ましい。粘度変化は、それが同じ範囲の温度に対して50%に達する可能性があるので最も重要なものである。
【0087】
したがって粘度は、Re数(レイノルズRe=(速度×直径×密度)/粘度)を介して流体力学に寄与し、その流体の熱伝達能力に直接影響を与える。粘度が増大する場合にはより不十分な熱伝達を生じさせ、粘度が低下する場合にはより良好な熱伝達を生じさせる。
【実施例】
【0088】
実施例1
ダイズ(Glycine max)の形質転換
ダイズ植物の胚培養液および再生:
ダイズ胚形成懸濁培養液を、当業界で知られている手順(Klein等の論文(1987)Nature(London)327:70〜73、米国特許第4,945,050号明細書、Hazel等の論文(1998)Plant Cell Rep.17:765〜772、Samoylov等の論文(1998)In Vitro Cell Dev.Biol.Plant 34:8〜13)を用いて微粒子銃の方法により形質転換する。微粒子銃の手順では、精製した、1)全プラスミドDNA、または2)関心のある組換えDNA発現カセットのみを含有するDNAフラグメントを使用することができる。
【0089】
ダイズ未熟種子から開始することによって形質転換実験用の保存組織を得る。二次胚を、培養開始培地上で6から8週後の外殖片から切り取る。この開始培地は、ビタミン類、2,4−D、およびグルコースを補った寒天凝固改変MS培地(MurashigeおよびSkoogの論文(1962)Physiol.Plant.15:473〜497)である。二次胚を、液体培養維持培地を入れたフラスコ中に置き、ジャイレートリー振とう機上で26±2℃において光強度〜80μEm−2s−1で7〜9日間維持する。この培養維持培地は、ビタミン類、2,4−D、スクロース、およびアスパラギンを補った改変MS培地である。衝撃に先立ってフラスコから組織の凝塊を除去し、衝撃用の空の60×15mmペトリ皿に移した。組織を、Whatman #2濾紙上で吸い取ることによって乾燥させる。衝撃を与えられる組織のプレート当たり10〜20個の凝塊(それぞれ1〜5mmのサイズ)に相当する約100〜200mgの組織を使用する。
【0090】
衝撃後、それぞれの衝撃を与えたプレートからの組織を分割し、衝撃を与えた組織のプレートに付き2つの液体培養維持培地のフラスコに入れる。衝撃の7日後に各フラスコ中の液体培地を、100ng/mlの選択剤を補った新鮮な培養維持培地(選択培地)と取り替える。形質転換されたダイズ細胞の選択に関して使用される選択剤は、化学名2−クロロ−N((4−メトキシ−6−メチル−1,3,5−トリアジン−2−イル)アミノカルボニル)ベンゼンスルホンアミド(慣用名、DPX−W4189およびクロロスルフロン)を有するスルホニル尿素(SU)化合物であることができる。クロロスルフロンは、DuPontのスルホニル尿素除草剤GLEAN(登録商標)中の有効成分である。SUを含有する選択培地は、6〜8週間のあいだ、週に1回取り替えられる。この6〜8週間の選択期間の後、緑の形質転換された組織の島が、形質転換されていない壊死胚形成凝塊から成長しているのに気づく。これらの推定上のトランスジェニックイベントを単離し、100ng/mlのSUを有する培地中で1〜2週間ごとに培地を替えながらさらに2〜6週間保って、新しいクローン増殖した形質転換された胚形成懸濁培養液を生じさせる。胚を、全体で約8〜12週間のあいだSUと接した状態で過ごさせる。懸濁培養液を未熟胚の凝塊として継代培養し維持し、また個々の体細胞胚の成熟および発芽によって全植物に再生させる。
【0091】
実施例2
高オレイン酸形質の産生に使用される遺伝物質
ダイズ(Glycine max)イベントを、実施例1において述べたような微粒子同時衝撃(particle co−bombardment)によってフラグメントPHP19340A(図10、配列番号:1)およびPHP17752A(図11、配列番号:2)で生じさせた。これらのフラグメントは、Asc I消化によってプラスミド源から得た。フラグメントPHP19340Aは、プラスミドPHP19340(図12、配列番号:3)から、またフラグメントPHP17752Aは、プラスミドPHP17752(図13、配列番号:4)から得た。このPHP19340Aフラグメントは、ダイズミクロソームω−6 デサチュラーゼ遺伝子1(gm−fad2−1)の597bpフラグメントを有するカセットを含有する(Heppard等の論文(1996)Plant Physiol.110:311〜319)。
【0092】
発現カセット中のgm−fad2−1フラグメントの存在は、内在性ω−6 デサチュラーゼの発現を抑制するように作用し、オレイン酸レベルの増加と、パルミチン酸、リノール酸、およびリノレン酸レベルの低下とを引き起こす。gm−fad2−1フラグメントの上流は、転写産物の発現を調整するクニッツトリプシン阻害遺伝子3(KTi3)由来のプロモーター領域である(JofukuおよびGoldbergの論文(1989)Plant Cell 1:1079〜1093、Jofuku等の論文(1989)Plant Cell 1:427〜435)。このKTi3プロモーターは、ダイズ胚中では高度に活性であり、また葉組織中では1000分の1の活性である(JofukuおよびGoldbergの論文(1989)Plant Cell 1:1079〜1093)。KTi3遺伝子の3’非翻訳領域(KTi3ターミネーター)(JofukuおよびGoldbergの論文(1989)Plant Cell 1:1079〜1093)は、このカセット由来の発現を終結させる。
【0093】
PHP17752Aフラグメントは、ダイズアセト乳酸シンターゼ遺伝子5’非翻訳領域の翻訳に由来するタンパク質のN末端領域に内在性酵素由来の2個の修飾アミノ酸残基と5個の追加のアミノ酸とを有するGM−HRAタンパク質をコードするダイズアセト乳酸シンターゼ遺伝子(gm−hra)の改変バージョンを有するカセットを含有する(FalcoおよびLi(2003)の米国特許出願第2003/0226166号明細書)。gm−hra遺伝子は、スルホニル尿素の部類の除草剤に対して耐性のあるアセト乳酸シンターゼの形をコードする。GM−HRAタンパク質は656個のアミノ酸からなり、約71kDaの分子量を有する。
【0094】
gm−hra遺伝子の発現は、ダイズ由来のS−アデノシル−L−メチオニンシンテターゼ(SAMS)遺伝子の5’プロモーター領域によって制御される(FalcoおよびLi(2003)の米国特許出願第2003/0226166号明細書)。この5’領域は、構成的プロモーターと、SAMS 5’非翻訳領域を中断するイントロンとから構成される。gm−hra遺伝子のターミネーターは、内在性ダイズアセト乳酸シンターゼターミネーター(alsターミネーター)である(FalcoおよびLi(2003)の米国特許出願第2003/0226166号明細書)。
【0095】
実施例3
ダイズの高オレイン酸イベントの形質転換および選択
ダイズ組織の形質転換の場合、gm−fad2−1遺伝子配列と発現に必要な調節成分とを含有するDNAの線状部分を、制限酵素AscIの使用によりプラスミドPHP19340から切り取り、アガロースゲル電気泳動を用いて精製した。gm−hra遺伝子配列と発現に必要な調節成分とを含有するDNAの線状部分を、制限酵素AscIの使用によりプラスミドPHP17522から切り取り、アガロースゲル電気泳動を用いて精製した。gm−fad2−1遺伝子を含有するDNAの線状部分は、挿入断片PHP19340Aと呼ばれ、サイズが2924bpである。gm−hra遺伝子を含有するDNAの線状部分は、挿入断片PHP17752Aと呼ばれ、サイズが4511bpである。形質転換イベントDP−305423−1中に導入された唯一のDNAは、上記挿入断片のDNAであった。
【0096】
イベントDP−305423−1からのトランスジェニック植物を、実施例1で述べたと同様の微粒子銃によって得た。胚形成組織試料を、サザン分析によりgm−fad2−1およびgm−hra導入遺伝子の存在を確かめるための分子分析用に採取した。各ユニークイベントに由来する組織から植物を再生し、種子生産用の温室に移した。
【0097】
実施例4
高オレイン酸イベントを含有する植物のサザン分析
材料および方法:ゲノムDNAを、標準的なUrea Extraction Buffer法を用いてDP305423 1の、および対照(品種:Jack)のT4およびT5世代の個々の植物の凍結ダイズ葉組織から抽出した。ゲノムDNAを、Pico Green(登録商標)試薬(Molecular Probes,Invitrogen)を用いて蛍光分光光度計上で定量した。1試料に付き約4μgのDNAをHind IIIまたはNco Iで消化した。陽性対照試料の場合、消化の前に対照ダイズゲノムDNAに約3pg(2ゲノムコピー当量)のプラスミドPHP19340またはPHP17752を加えた。陰性対照試料は、非修飾ダイズゲノムDNA(品種:Jack)から構成される。DNAフラグメントを、アガロースゲル電気泳動を用いてサイズ別に分離した。
【0098】
アガロースゲル電気泳動に続いて、その分離したDNAフラグメントをその場で脱プリン化、変性、中和し、TURBOBLOTTER(商標)Rapid Downward Transfer System(Schleicher & Schuell)について述べられている方法を用いて20×SSC緩衝液中でナイロン膜に移した。膜への移動後、UV架橋によってDNAを膜に結合させた。
【0099】
PCR DIG Probe Synthesis Kit(Roche)を用いてgm−fad2−1およびgm−hra用のDNAプローブを、PCRによってジゴキシゲニン(DIG)で標識した。
【0100】
特異的フラグメントの検出のために、基本的には製造業者が述べているDIG Easy Hyb溶液(Roche)を用いて、標識したプローブを、ナイロン膜上で標的DNAとハイブリッドを形成させた。高い厳密さでポストハイブリダイゼーション洗浄を行った。結合フラグメントとハイブリッドを形成したDIG標識プローブを、CDP−Star Chemiluminescent Nucleic Acid Detection System(Roche)を用いて検出した。1または複数の時点に関してブロットをX線フィルムに室温で露光させてハイブリッド形成するフラグメントを検出した。このイベントの脂肪酸組成は、実施例2で述べたと同様に求めた。29の異なるイベント(T1世代)において求められたオレイン酸レベルは、61.5〜84.6%の範囲であった。一イベント(T4〜T5世代)からのオレイン酸レベルは、72〜82%の範囲であった。
【0101】
実施例5
脂肪酸含量および組成
油の定性的および定量的な脂肪酸組成は、AOCS Ce 2−66(脂肪酸のメチルエステルの調製)およびAOCS Ce 1e−91(キャピラリーGLCによる食用の油および脂中の脂肪酸の決定)の公認の方法体系の変法を用いて次の通り求めた。油加工素材は、10mlのメスフラスコに0.5000g(0.0001gの精度まで計量し記録する)の油および0.0130g〜0.0260g(0.0001gの精度まで計量し記録する)の内標準(トリペンタデカノイン、NuChek Prep,Elysian,MN,USA)を加えることによって調製した。内標準は、分析が定性的(面積%)データに限定される場合は省略された。7mlのヘプタンを加え、Internal Standard Powder(IST)粉の完全な溶解を確実にするためにその加工素材を2分間音波処理した。室温まで冷却した後、ヘプタンで加工素材を体積までもっていった。加工素材は分析の直前に調製した。次いで、予め標識した管(テフロン(登録商標)のリッドインサート(lid inserts)を有するガラス13×100mm、VWR 53283 800チューブ、60826−304キャップ、VWR Bridgeport,NJ,USA)に、0、50、100、(4×150)、200、250、および300μl(管当たり油約0〜0.0150g)の油加工素材を加えることによってこれら油加工素材の希釈系列を調製し、各試料をヘプタンで300μlの最終体積までもっていく。PTFEシーラントテープでねじ込み部分を包むことによって誘導体化のために管を準備をした。誘導体化は、次の通り行った。管を渦流混合(vortex mix)し、1mlの誘導体化酸加工素材(50mlの氷冷(ice−cold)無水メタノールに5mlの塩化アセチル(Fluka 00990、Sigma Aldrich St Louis,MO,USA)を加えることによって調製される)を加えた。管にしっかりと蓋をかぶせ、再び渦を発生させ、ヒートブロック中で80℃において1時間インキュベートした。管を室温まで冷却し、1mlの1M NaCl水溶液を加え、次いで0.5mlのヘプタンを加えた。試料を激しく渦流混合し、放置して相を分離させてから、約200μlの上部(ヘプタン)の相を、ライナー張りのGC試料バイアル(Part#225350−631SP、Wheaton,Millville,NJ,USA)に移した。試料を、次の通りGCにより分析した。Agilent 6890は、Omegawax 320(Supelco,Bellefonte,PA,USA)毛細管カラム(30m×ID0.32mm、膜厚0.25μm)を装備する。1μlの試料を、250℃に加熱したGC注入口に分割比10:1で注入した。キャリアガスとして水素を39cm/秒の線速度(定流量モード)で使用した。最初のオーブン温度は160℃、4分間であり、次いでオーブン温度を2℃/分で220℃まで上昇させ、次いでその最終温度に10分間保った(全試験時間44分)。検出は炎イオン化によるものであり、NuChek Prep 461 Standard(1:100ヘプタン希釈、NuChek Prep、Elysian,NM,USA)を用いて共クロマトグラフィによりピークを識別した。面積>0.01%を有するすべてのピークが分析に含まれた。
【0102】
トコフェロール分析
トコフェロール含量を、250×4mm Lycoshere Si 60(5μm)分析用カラムおよびG1321A蛍光検出器を装備したAgilent 1100 HPLCシステム上でAOCS公認の方法Ce 8−89に従って測定した。内標準なしの上記油加工素材をこの分析用に使用した。ヘプタンに溶解した定量標準を、由緒正しいα(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、およびδ(デルタ)トコフェロール標準(Supelo,Bellefonte,PA,USA)を用いて調製した。標準濃度を、次の波長および吸光係数、α(アルファ):OD292および0.0076、β(ベータ):OD296および0.0089、γ(ガンマ):OD298および0.0091、δ(デルタ):OD298および0.0087を用いて紫外分光法により確認した。
【0103】
油質および酸化安定性の測定
遊離脂肪酸含量:
油の遊離脂肪酸含量については、Mettler−Toredo DL22 F&B滴定装置(Mettler−Toredo,Columbus,OH,USA)を用いて製造業者のプロトコルM345(食用油の酸価)に従って滴定により行った。
【0104】
過酸化物価:
油の過酸化物価については、Mettler−Toredo DL22 F&B滴定装置(Mettler−Toredo,Columbus,OH,USA)を用いて製造業者のプロトコルM346(食用油および脂の過酸化物価)に従ってヨウ素滴定により行った。
【0105】
p−アニシジン価:
p−アニシジン価については、AOCS公認の方法Cd 18−90に従って油上で求めた。
【0106】
酸化安定性指数:
酸化安定性指数については、OSI−24 Oxidative Stability Instrumentを用いてAOCS公認の方法Cd 12b−92に従って純粋な油試料(添加剤有または無)の5.0±0.2g試料上で測定した。計器の制御およびデータ分析は、OSI Program v8.18およびInstacal 5.33ソフトウェア(Omnion,Inc.,Rockland,MA,USA)を用いて行った。
【0107】
この表に関して脂肪酸%は、表示された5種類の主要な脂肪酸の合計に対して個々の脂肪酸を関係づけるものである。たまに存在することもあり、全脂肪酸の3%未満に相当する他の脂肪酸の種類は、比較の目的では考慮されない。
1商品ダイズ油中の5種類の主要な脂肪酸の値の範囲は、「The Lipid Handbook」2nd ed.,(1994)Gunstone,FD.,Harwood,J.L.,Padley,F.B.,Chapman & Hallからとられる。
16:0=パルミチン酸、18:0=ステアリン酸、18:1=オレイン酸、18:2=リノール酸、18:3=リノレン酸。
【0108】
実施例6
誘電損
損率(Df)は、表2に示す誘電伝熱流体についてASTM D924を用いて様々な温度で測定した。損失率は温度に対してプロットした。
結果を図1に示し、正方形■および三角形▲は比較の流体C1(時を異にして2回測定した)の損率を示し、十字形×は比較の流体C2の損率を示し、ダイヤモンド形◆は本発明により使用されるダイズ油E1の損率を示し、また黒丸●は基準として含まれる鉱油の損率を示す。
【0109】
【0110】
【0111】
本発明により使用されるダイズ油(E1)は温度の上昇に対して比較的変わらないままである低い誘電損を示し、一方、その他の植物性の油(C1およびC2)は温度が上昇するに従って損率の顕著な増大を示すことが図1から明らかである。
【0112】
結果を表の形で表4に示す。
【0113】
【0114】
実施例7
破壊電圧
絶縁破壊電圧は、電場および磁場の存在下で誘電体絶縁および/または熱交換に使用される流体を比較するために不可欠なパラメータである。それはまた、流体のアーク伝達(arcing transmission)特性の関連指標でもある。
【0115】
絶縁破壊電圧は、ASTM D877に従って測定され、流体の誘電性能の限界を特徴づける。それは、その誘電体の使用できる極限電圧と、結果として起こるその電圧パルスを持続させる能力とへの間接的アクセスを与えるバルク特性である。
【0116】
本発明により使用されるダイズ油(E1)は、23℃で57から66kVの範囲内の破壊電圧を有する。一方、2種類の比較の流体C1およびC2は、25℃で47から65kVの範囲内の、すなわち著しく広くかつ低い破壊電圧を有する。本発明により使用されるダイズ油(E1)は明らかに優れており、その上にアーク伝達に対する良好な整合性も示す。
【0117】
実施例8
前処理法
2.6gの質量の本発明により使用されるダイズ油(E1)および2種類の比較の流体(C1およびC2)を、最大出力900Wで1分間の業務用マイクロ波処理にかけた。このような条件は、流体の必須成分の分子の完全性を維持するために200℃未満、好ましくは160℃未満の流体温度を生じさせるように選択される。
【0118】
実施例9
示差走査熱量測定および熱重量分析
電磁マイクロ波照射による前処理法(実施例8)の利点を実証するために、様々な植物性誘電伝熱流体を、前処理した場合としない場合の両方を、熱重量分析と結合された示差走査熱量測定にかけた。
【0119】
特定の条件および設備の参考事項を下記に提供する。
設備:2960 SDT−CE5275 Ta Instrument(DSC−TGA(示差走査熱量測定および熱重量分析)を同時に行う)
【0120】
試験条件
− 650まで10℃/分(℃)
− 空気流:100ml/分
− 空気の組成
N2:78.09%
O2:20.95%
Ar:0.93%
CO2:0.03%
【0121】
図2は、医薬用リシノール酸含有油に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(点線)および後(実線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す。
【0122】
熱流束シグナルの鮮明度およびそれらの相対強度は、例えば前処理後のピークの鋭さ、開始温度、および立上り温度によって示されるように電磁マイクロ波処理工程およびそれに伴う方法による油のプレコンディショニングが有益なことをはっきりと示す。
【0123】
図3は、市販銘柄の高オレイン酸ひまわり油である比較の流体C2に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(点線)および後(実線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す。
【0124】
熱流束シグナルの鮮明度およびそれらの相対強度は、前処理後のピークの鋭さによって示されるように電磁マイクロ波処理工程およびそれに伴う方法による油のプレコンディショニングが有益なことをはっきりと示す。
【0125】
図4は、市販銘柄の標準的なダイズ油である比較の流体C1に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(実線)および後(点線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す。
【0126】
熱流束シグナルの鮮明度およびそれらの相対強度は、前処理後のピークの鋭さによって示されるように電磁マイクロ波処理工程およびそれに伴う方法による油のプレコンディショニングが有益なことをはっきりと示す。
【0127】
図5は、本発明で使用される流体E1に実施例8の電磁マイクロ波処理を施す前(実線)および後(点線)に得られた熱重量パターンおよび熱流束を示す。
【0128】
熱流束シグナルの鮮明度およびそれらの相対強度は、前処理後のピークの鋭さによって示されるように電磁マイクロ波処理工程およびそれに伴う方法による油のプレコンディショニングが有益なことをはっきりと示す。
【0129】
注記:前処理の有益な効果は、すべてのトリアシルグリセロール誘電伝熱流体およびその混合物に及び、それは本発明により使用される流体に限定されない。
【0130】
実施例10
誘電体紙を伴う誘電伝熱流体の挙動
本発明により使用される流体の30重量%に相当する量を、Weidmann AG,Rapperswill,Switzerlandから入手した市販の変圧器絶縁クラフト紙に、自然に起こる吸収作用により室温で含浸させた。この紙の最初の比重量は95g/m2であった。
【0131】
このような吸収させた紙の一試料を実施例8のマイクロ波前処理法にかけ、二つ目の試料はかけなかった。
【0132】
図6は、未処理クラフト紙(実線)、本発明により使用される流体を吸収させたクラフト紙(点線)と、本発明により使用される流体を吸収させ、かつ実施例8によるマイクロ波で前処理したクラフト紙(一点鎖線)との熱的挙動を示す。
【0133】
本発明により使用される流体をクラフト紙に吸い込ませることにより、結果として紙の耐熱性が20〜40℃強化される。マイクロ波前処理により、結果としてさらに10℃強化される。
【0134】
含浸は、紙の製造の間または後に行われる。マイクロ波処理は、何度も必要とされる回数繰り返すことができ、上記流体を、一定かつ/または可変パルスおよび緩和のシーケンスを連続的に、あるいは直列で、必要に応じてしばしばその照射シーケンスを繰り返して適用される一定のかつ均一に分布した電磁場にさらすことによって行うことができる。本発明者は、例えば7.2gの本発明の油を10秒の300W−マイクロ波パルスおよび50秒の緩和の20回の繰返し回数で照射することが油を、長期のより高いマイクロ波−出力照射によって誘発される恐れのある損傷を引き起こすことなくプレコンディショニングするのに効果的であることを見出した。吸収用の油は、本発明の任意の油混合物であることができる。20%の商品亜麻仁油と混合した本発明の油は、驚くべきことに本発明の密封型電気装置、特に20から30年など比較的長期間使用されるものの場合、時間とともに微少漏れを起こしがちである特に変圧器において、特に価値のある良好な封止性を示した。本発明の油のブレンド物の封止性は、特に高く評価される。天然に産するまたは合成の植物性の油もまた、絶縁紙ならびに封止界面の類似の封止効果を示すものと考えられてきた。本発明の油および/またはその混合物による紙処理は、例えば紙の粘弾性挙動ならびに絶縁破壊および裂けに対するその力学抵抗に与える価値のある効果を有し、液体を満たした変圧器などの電気装置の寿命を延ばすことが分かっている紙の耐久性を高めることにつながる。
【0135】
実施例12
適度な老化(通気オーブン中において170℃で88時間)の下で、約21%の一価不飽和C18/1を有する通常の商品ダイズ油の動的粘性率は、23℃で測定される60mPa・秒から180mPa・秒へ不可逆的に増大することが分かった。さらに、この通常の油は浅黄色から紫檀色への強い変色を示した。これは、比較的短期間で動的粘性率が3倍に増大することを意味する。動的粘性率のこのような増大は、変圧器内の循環量および圧力降下の補償を25%調整する必要性につながる場合がある。
【0136】
本発明により使用される流体E1をこの同じ熱老化に曝したところ、動的粘性率の変化は観察されなかった。
【0137】
この種の特性は、その油を誘電伝熱流体として特に有用なものにする。
【0138】
実施例13
Df対温度の挙動に与えるオレイン酸含量の影響を測定するために実験を行った。
【0139】
表6に示した脂肪酸組成(「FAC」)プロフィールを有する所定量の低リノール酸ダイズ油(LL)を、表6に示したプロフィールの本発明で使用される油E4とブレンドして、表6に示したFACプロフィールの70%オレイン酸油混合物および65%オレイン酸油混合物に一致する混合油を生成した。表6に示したFACプロフィールの商品ダイズ油試料(Cm)は、低オレイン酸含量試料の代表として役立つ。
【0140】
表6.実施例13に使用される様々なダイズ油および混合ダイズ油のFAC
【0141】
表6中に列挙した油およびブレンド物の試料を、実施例6で述べたDf分析にかけ、23から130℃の範囲にわたる温度において温度の関数としてDfを測定した。
【0142】
図7Aおよび7Bは、表6中に列挙した油および混合油の、温度の関数としてのDfの変化を示す。図7Aは、78%のオレイン酸を含む本発明の油(E2)を、商品油、65%オレイン酸ブレンド物、および70%オレイン酸ブレンド物と比較して示す。図7Bは、74%のオレイン酸を含む本発明の油(E4)を、商品油、65%オレイン酸ブレンド物、および70%オレイン酸ブレンド物と比較して示す。
【0143】
図7Aにおいて、正方形は77.74%のオレイン酸を有するE2(「HOSO」)の結果を示す。図7B中の×記号は、74.36%のオレイン酸(74%)を有するE4の結果を示す。図AおよびB中の星印は、21%のオレイン酸と61%の多価不飽和脂肪酸を有する商品ダイズ油(Cm)の結果を示す。三角形は、図7Aおよび7B中の70%のオレイン酸と16%の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油ブレンド物の結果を示す。ダイヤモンド形は、図7Aおよび7B中の65%のオレイン酸と20%の多価不飽和脂肪酸を有するダイズ油ブレンド物の結果を示す。
【0144】
本発明により使用される油E1はDfが低く、23〜130℃の全温度範囲にわたって低いままである点で、その他の油を凌ぐ優れた挙動を示すことが図7Aおよび7Bから明らかである。さらに本発明の油E1(例えば70%オレイン酸ブレンド物など)、油E2、および油E4は、温度に伴うDfの増大が小さいことを示す。酸化防止剤および他の添加剤を含まない商品ダイズ油Cmは、変圧器用途のための伝統的な添加剤を含有する市販のダイズ油C1と同様に応答する。
【0145】
図8は、2つの温度(上側の線:130℃、下側の線:90℃)における単位%で表したオレイン酸含量の関数としてDfの変化を示す。両温度においてDfはオレイン酸含量の増加と共に下がり、65%または約65%のオレイン酸から70%または約70%のオレイン酸まで鋭く低下することが図8から分かる。この実験に使用した油は、本発明の油の一つの例としての油E2である。
【0146】
実施例14
温度の関数としてDfを測定(実施例6に従って)するために、本発明により使用される2種類の異なるダイズ油E2およびE4を、高オレイン酸ひまわり油(オレイン酸84%、全多価不飽和脂肪酸8%)および油C1およびC2と対照させて用いて追加の実験を行った。これら油のFACを表7中に列挙する。
【0147】
【0148】
Dfは、様々な温度で実施例6に従って測定した。結果を表8に列挙する。これらの結果は、本発明により使用されるダイズ油である油E2およびE4が、23〜130℃の温度範囲にわたって著しく低いDfを示し、かつ高温において比較の油よりも小さいDfの増大を示すことをはっきり示している。この高オレイン酸ひまわり油のDfデータは、位置的にはちょうどE4とC1の間のC1の近くにあり、23〜130℃の温度範囲内で高オレイン酸ひまわり油のDf値の顕著な変化を示す。酸化防止剤および他の添加剤を含まない高オレイン酸ひまわり油は、変圧器用途のための伝統的な添加剤を含有する市販の高オレイン酸ひまわり油C2と同様に応答する。
【0149】
【0150】
図9は、比較の流体C1およびC2の、また油E2およびE4の誘電損率(Df)対温度の関係をグラフの形で示し、正方形■は比較の流体C1の損率を示し、三角形▲は比較の流体C2の損率を示し、ダイヤモンド形◆は本発明により使用されるダイズ油E2およびE4の損率を示す(下側の線:E2、上側の線:E4)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーを発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置における伝熱誘電流体としてのダイズ油の使用法であって、前記ダイズ油は、脂肪酸の少なくとも70%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつ脂肪酸の16%未満が多価不飽和脂肪酸であるものである、使用法。
【請求項2】
前記ダイズ油が、6%未満の多価不飽和脂肪酸を有する、請求項1に記載の使用法。
【請求項3】
前記ダイズ油が、少なくとも80%含量のC14〜C22一価不飽和脂肪酸を有する、請求項1または2に記載の使用法。
【請求項4】
前記ダイズ油が、12%未満または約12%の飽和脂肪酸含量を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の使用法。
【請求項5】
前記ダイズ油が、10%未満または約10%の飽和脂肪酸含量を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の使用法。
【請求項6】
前記ダイズ油が、4%未満の多価不飽和脂肪酸を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の使用法。
【請求項7】
前記一価不飽和脂肪酸が、C18一価不飽和脂肪酸である、請求項1〜6のいずれかに記載の使用法。
【請求項8】
前記一価不飽和脂肪酸がオレイン酸である、請求項1〜7のいずれかに記載の使用法。
【請求項9】
前記多価不飽和脂肪酸が、2個または3個の二重結合を有するC18脂肪酸、好ましくはC18:2および/またはC18:3である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項10】
前記ダイズ油が、6%または約6%のC16:0、3%または約3%のC18:0、86%または約86%のC18:1、2%または約2%のC18:2、および2%または約2%のC18:3の脂肪酸含量を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項11】
前記ダイズ油が、6%または約6%のC16:0、4%または約4%のC18:0、79%または約79%のC18:1、4%または約4%のC18:2、および2%または約2%のC18:3の脂肪酸含量を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項12】
前記ダイズ油が、7%または約7%のC16:0、4%または約4%のC18:0、70%または約70%のC18:1、13%または約13%のC18:2、および3%または約3%のC18:3の脂肪酸含量を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項13】
前記ダイズ油が、6%または約6%のC16:0、4%または約4%のC18:0、74%または約74%のC18:1、9%または約9%のC18:2、および3%または約3%のC18:3の脂肪酸含量を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項14】
前記ダイズ油が、6%または約6%のC16:0、4%または約4%のC18:0、78%または約78%のC18:1、4%または約4%のC18:2、および2%または約2%のC18:3の脂肪酸含量を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項15】
前記ダイズ油が、さらにトコフェロール酸化防止剤を少なくとも85mg/油100gの濃度で含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項16】
前記トコフェロールが、天然に産出するトコフェロールである、請求項15に記載の使用法。
【請求項17】
前記ダイズ油が、オレオイル 12−デサチュラーゼをコードする遺伝子の発現を高めるように遺伝子操作されている種子植物から得られる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項18】
C18:2の含量が5%未満または約5%である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項19】
電気エネルギーを発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置であって、
(a)導電性材料と、
(b)誘電体と、
(c)脂肪酸の少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつ脂肪酸の7%未満が多価不飽和脂肪酸であるダイズ油の伝熱誘電流体と
を含む、装置。
【請求項20】
前記ダイズ油が、請求項1〜18のいずれか一項に記載の植物性の油である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記誘電体が、セルロースまたはアラミド、ポリイミド、ポリフェニルスルホン、ポリアミド、ポリエステル(例えばPET)、およびポリエチレンから作られる紙または板材、ならびにそれらによる様々な形態の組合せ、例えば複合体、積層板、形態的に合わせて作られた表面および/または多次元構造体、およびこれらの混成物/混合物である、請求項19または20に記載の装置。
【請求項22】
植物性トリアシルグリセロールである伝熱誘電流体をプレコンディショニングするための方法であって、
(a)前記流体を一定のかつ均一に分布した電磁場にさらす工程
を含む、方法。
【請求項23】
前記電磁場が、マイクロ波の形態であり、少なくとも100℃または約100℃ではあるが、170℃以下または約170℃まで前記植物性トリアシルグリセロールを加熱するのに十分な出力で、かつ十分な時間適用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
脂肪酸の少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつ脂肪酸の7%未満が多価不飽和脂肪酸である、少なくとも10重量%の植物性トリアシルグリセロールおよび/または混合物を含浸させた有機繊維構造体(例えば、織布または不織布)を含む誘電体。
【請求項25】
前記植物性トリアシルグリセロールが、6%未満の多価不飽和脂肪酸を有する、請求項24に記載の誘電体。
【請求項26】
一定温度において改善されたDf値を有する混合高オレイン酸油であって、
a)高オレイン酸ダイズ油である1〜100体積%の範囲の第一の油と、
b)1〜100体積%の範囲の第二の油と
を含み、
c)前記混合高オレイン酸油が少なくとも70%のオレイン酸含量を有し、かつ前記高オレイン酸ダイズ油を含まない油と同一条件下で比較した場合、前記混合高オレイン酸油の一定温度における前記Df値が改善される、
混合高オレイン酸油。
【請求項27】
23℃で測定した場合、1.2×10-3未満または約1.2×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項28】
70℃で測定した場合、5.4×10-3未満または約5.4×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項29】
90℃で測定した場合、9.1×10-3未満または約9.1×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項30】
100℃で測定した場合、1.21×10-2未満または約1.21×10-2のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項31】
120℃で測定した場合、1.95×10-2未満または約1.95×10-2のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項32】
130℃で測定した場合、2.32×10-2未満または約2.32×10-2のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項33】
23〜130℃または約23〜130℃の温度範囲にわたって2.32×10-2未満のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項34】
23℃で測定した場合、2.5×10-4未満または約2.5×10-4のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項35】
70℃で測定した場合、1.5×10-3未満または約1.5×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項36】
90℃で測定した場合、3×10-3未満または約3×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項37】
100℃で測定した場合、4×10-3未満または約4×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項38】
120℃で測定した場合、7×10-3未満または約7×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項39】
130℃で測定した場合、1×10-2未満または約1×10-2のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項40】
23〜130℃または約23〜130℃の温度範囲にわたって0.01未満のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項41】
一定温度において改善されたDf値を有する混合高オレイン酸油であって、
a)高オレイン酸ダイズ油である1〜100体積%の範囲の第一の油と、
b)オレイン酸のモノアルキルエステルである1〜100体積%の範囲の第二の油と、
c)1〜100体積%の範囲の第三の油と
を含み、
d)前記混合高オレイン酸油が少なくとも80%のオレイン酸含量を有し、かつ前記高オレイン酸ダイズ油を含まない、かつ/または前記高オレイン酸ブレンド物の性能を改善するために必要とされる前記油の精製オレイン酸および/または任意の単離成分を含まない油と同一条件下で比較した場合、前記混合高オレイン酸油の一定温度における前記Df値が改善される、混合高オレイン酸油。
【請求項42】
前記油が、トコフェロール、トコトリエノール、天然に産出するトコフェロール、天然に産出するトコトリエノール、Lubrizol 7653、TBHQ、Decanox MPS−90、および/または天然植物の抽出物からなる群から選択される少なくとも1種類の酸化防止剤を含む、請求項26〜41のいずれか一項に記載の油。
【請求項1】
電気エネルギーを発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置における伝熱誘電流体としてのダイズ油の使用法であって、前記ダイズ油は、脂肪酸の少なくとも70%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつ脂肪酸の16%未満が多価不飽和脂肪酸であるものである、使用法。
【請求項2】
前記ダイズ油が、6%未満の多価不飽和脂肪酸を有する、請求項1に記載の使用法。
【請求項3】
前記ダイズ油が、少なくとも80%含量のC14〜C22一価不飽和脂肪酸を有する、請求項1または2に記載の使用法。
【請求項4】
前記ダイズ油が、12%未満または約12%の飽和脂肪酸含量を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の使用法。
【請求項5】
前記ダイズ油が、10%未満または約10%の飽和脂肪酸含量を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の使用法。
【請求項6】
前記ダイズ油が、4%未満の多価不飽和脂肪酸を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の使用法。
【請求項7】
前記一価不飽和脂肪酸が、C18一価不飽和脂肪酸である、請求項1〜6のいずれかに記載の使用法。
【請求項8】
前記一価不飽和脂肪酸がオレイン酸である、請求項1〜7のいずれかに記載の使用法。
【請求項9】
前記多価不飽和脂肪酸が、2個または3個の二重結合を有するC18脂肪酸、好ましくはC18:2および/またはC18:3である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項10】
前記ダイズ油が、6%または約6%のC16:0、3%または約3%のC18:0、86%または約86%のC18:1、2%または約2%のC18:2、および2%または約2%のC18:3の脂肪酸含量を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項11】
前記ダイズ油が、6%または約6%のC16:0、4%または約4%のC18:0、79%または約79%のC18:1、4%または約4%のC18:2、および2%または約2%のC18:3の脂肪酸含量を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項12】
前記ダイズ油が、7%または約7%のC16:0、4%または約4%のC18:0、70%または約70%のC18:1、13%または約13%のC18:2、および3%または約3%のC18:3の脂肪酸含量を有する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項13】
前記ダイズ油が、6%または約6%のC16:0、4%または約4%のC18:0、74%または約74%のC18:1、9%または約9%のC18:2、および3%または約3%のC18:3の脂肪酸含量を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項14】
前記ダイズ油が、6%または約6%のC16:0、4%または約4%のC18:0、78%または約78%のC18:1、4%または約4%のC18:2、および2%または約2%のC18:3の脂肪酸含量を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項15】
前記ダイズ油が、さらにトコフェロール酸化防止剤を少なくとも85mg/油100gの濃度で含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項16】
前記トコフェロールが、天然に産出するトコフェロールである、請求項15に記載の使用法。
【請求項17】
前記ダイズ油が、オレオイル 12−デサチュラーゼをコードする遺伝子の発現を高めるように遺伝子操作されている種子植物から得られる、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項18】
C18:2の含量が5%未満または約5%である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の使用法。
【請求項19】
電気エネルギーを発生させ、貯蔵し、変換し、かつ/または配送する装置であって、
(a)導電性材料と、
(b)誘電体と、
(c)脂肪酸の少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつ脂肪酸の7%未満が多価不飽和脂肪酸であるダイズ油の伝熱誘電流体と
を含む、装置。
【請求項20】
前記ダイズ油が、請求項1〜18のいずれか一項に記載の植物性の油である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記誘電体が、セルロースまたはアラミド、ポリイミド、ポリフェニルスルホン、ポリアミド、ポリエステル(例えばPET)、およびポリエチレンから作られる紙または板材、ならびにそれらによる様々な形態の組合せ、例えば複合体、積層板、形態的に合わせて作られた表面および/または多次元構造体、およびこれらの混成物/混合物である、請求項19または20に記載の装置。
【請求項22】
植物性トリアシルグリセロールである伝熱誘電流体をプレコンディショニングするための方法であって、
(a)前記流体を一定のかつ均一に分布した電磁場にさらす工程
を含む、方法。
【請求項23】
前記電磁場が、マイクロ波の形態であり、少なくとも100℃または約100℃ではあるが、170℃以下または約170℃まで前記植物性トリアシルグリセロールを加熱するのに十分な出力で、かつ十分な時間適用される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
脂肪酸の少なくとも75%がC14〜C22一価不飽和脂肪酸であり、かつ脂肪酸の7%未満が多価不飽和脂肪酸である、少なくとも10重量%の植物性トリアシルグリセロールおよび/または混合物を含浸させた有機繊維構造体(例えば、織布または不織布)を含む誘電体。
【請求項25】
前記植物性トリアシルグリセロールが、6%未満の多価不飽和脂肪酸を有する、請求項24に記載の誘電体。
【請求項26】
一定温度において改善されたDf値を有する混合高オレイン酸油であって、
a)高オレイン酸ダイズ油である1〜100体積%の範囲の第一の油と、
b)1〜100体積%の範囲の第二の油と
を含み、
c)前記混合高オレイン酸油が少なくとも70%のオレイン酸含量を有し、かつ前記高オレイン酸ダイズ油を含まない油と同一条件下で比較した場合、前記混合高オレイン酸油の一定温度における前記Df値が改善される、
混合高オレイン酸油。
【請求項27】
23℃で測定した場合、1.2×10-3未満または約1.2×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項28】
70℃で測定した場合、5.4×10-3未満または約5.4×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項29】
90℃で測定した場合、9.1×10-3未満または約9.1×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項30】
100℃で測定した場合、1.21×10-2未満または約1.21×10-2のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項31】
120℃で測定した場合、1.95×10-2未満または約1.95×10-2のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項32】
130℃で測定した場合、2.32×10-2未満または約2.32×10-2のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項33】
23〜130℃または約23〜130℃の温度範囲にわたって2.32×10-2未満のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項34】
23℃で測定した場合、2.5×10-4未満または約2.5×10-4のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項35】
70℃で測定した場合、1.5×10-3未満または約1.5×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項36】
90℃で測定した場合、3×10-3未満または約3×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項37】
100℃で測定した場合、4×10-3未満または約4×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項38】
120℃で測定した場合、7×10-3未満または約7×10-3のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項39】
130℃で測定した場合、1×10-2未満または約1×10-2のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項40】
23〜130℃または約23〜130℃の温度範囲にわたって0.01未満のDfを有する、請求項26に記載の混合高オレイン酸油。
【請求項41】
一定温度において改善されたDf値を有する混合高オレイン酸油であって、
a)高オレイン酸ダイズ油である1〜100体積%の範囲の第一の油と、
b)オレイン酸のモノアルキルエステルである1〜100体積%の範囲の第二の油と、
c)1〜100体積%の範囲の第三の油と
を含み、
d)前記混合高オレイン酸油が少なくとも80%のオレイン酸含量を有し、かつ前記高オレイン酸ダイズ油を含まない、かつ/または前記高オレイン酸ブレンド物の性能を改善するために必要とされる前記油の精製オレイン酸および/または任意の単離成分を含まない油と同一条件下で比較した場合、前記混合高オレイン酸油の一定温度における前記Df値が改善される、混合高オレイン酸油。
【請求項42】
前記油が、トコフェロール、トコトリエノール、天然に産出するトコフェロール、天然に産出するトコトリエノール、Lubrizol 7653、TBHQ、Decanox MPS−90、および/または天然植物の抽出物からなる群から選択される少なくとも1種類の酸化防止剤を含む、請求項26〜41のいずれか一項に記載の油。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−522337(P2012−522337A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502321(P2012−502321)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/029037
【国際公開番号】WO2010/111698
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/029037
【国際公開番号】WO2010/111698
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
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