説明

誘電体フィルタ

【課題】 小型化のために入出力電極を挟む内導体形成孔間を狭くしても最適な入出力結合が得られるフィルタを提供する。
【解決手段】 本発明の誘電体フィルタは、対向する第1と第2の面を有する略6面体の誘電体ブロックに前記第1の面と第2の面とをつなぐ内導体が被覆された複数の貫通孔と前記第1の面を除く前記誘電体ブロックの外面に外導体とを形成することで構成される複数の共振器と、隣接する共振器間に該共振器と容量結合するように前記第1の面に設けられた入出力電極と、を有する誘電体フィルタにおいて、前記入出力電極と該入出力電極に隣接する共振器との間の前記第1の面に前記外導体より延びる接地電極を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体フィルタに関し、特に、単一の誘電体ブロック内に複数の誘電体共振器が形成された小型の誘電体フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの移動通信機器では、送受共用器なども含めて種々の誘電体フィルタが用いられている。従来技術によれば、単一の誘電体ブロックに複数のフィルタを構成する場合、図4に示すようなものとなる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4において、誘電体フィルタは、略六面体形状の誘電体ブロック1の対向する第1の端面1aと第2の端面1bを有する略六面体形状の誘電体ブロック1と、前記第1の端面1aから第2の端面1bにかけて誘電体ブロック1内に形成された複数の貫通孔6と、該貫通孔6の内壁に形成された内導体3と、該内導体3から前記第1の端面(開放端面)にのびる結合用電極13と、隣接する内導体形成孔の間に入出力電極14とを有しており、前記誘電体ブロック1の外面に形成された外導体5と前記外導体と絶縁されて前記外面に形成された外部接続電極4とからなる。前記結合用電極13は、各共振器どうしを結合させるとともに、入出力段の共振器に形成された結合用電極13は、前記入出力電極14との外部結合を得るためにも使用される。前記入出力電極14は、それに近接する共振器と結合用電極を介して容量結合されている。この例の場合、内導体形成孔6d部分をトラップとして作用させ、内導体形成孔6a,6b,6c部分をバンドパスフィルタ(BPF)として作用させる。そして、入出力電極をトラップとバンドパスフィルタの入出力電極として共用する。また、入出力電極14は外部接続電極4に接続され外部回路と接続される。
【0004】
図5は図4における複数のフィルタの入出力結合を共用する部分の拡大図である。図5の入出力部において、内導体から延びる結合用電極13と入出力電極14との間に形成されたギャップa,bを調整することで、それぞれのフィルタが最適な特性を得るように入出力結合を調整している。例えば、入出力結合すなわち容量結合を強くしたい場合ギャップ(a、又はb)を狭くし、入出力結合すなわち容量結合を弱くしたい場合はギャップを広くする。
【0005】
【特許文献1】特許第3205337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、近年小型化の要求に答えるため、入出力電極を挟む内導体形成孔間を狭くした場合、入出力結合を弱くしようとしてもギャップが確保できない場合がある。例えば、図6に示すように、a部のギャップを広く取ろうとしても入出力電極をこれ以上細くすることができず入出力結合を最適化するためには内導体形成孔間を広くするしかなくこれ以上の小型化は困難となる。
【0007】
別の解決手段として、外部接続電極から延びる入出力電極の長さを短くする方法があるが、この場合、他方のフィルタの入出力結合も弱くなってしまい両方のフィルタで最適な特性を得ることができなくなってしまう。
【0008】
本発明の目的は、小型化のために入出力電極を挟む内導体形成孔間を狭くしても最適な入出力結合が得られるフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような問題を解決するために、対向する第1と第2の面を有する略6面体の誘電体ブロックに前記第1の面と第2の面とをつなぐ内導体が被覆された複数の貫通孔と前記第1の面を除く前記誘電体ブロックの外面に外導体とを形成することで構成される複数の共振器と、隣接する共振器間に該共振器と容量結合するように前記第1の面に設けられた入出力電極と、を有する誘電体フィルタにおいて、前記入出力電極と該入出力電極に隣接する共振器との間の前記第1の面に前記外導体より延びる接地電極を設けたことを特徴とする誘電体フィルタが提供される。
【0010】
また、前記入出力電極と容量結合している共振器の前記第1の面に、該共振器の内導体から延びて結合用電極が形成されている前記誘電体フィルタが提供される。
【0011】
さらに、本発明の誘電体フィルタの一実施態様は、前記結合用電極が、共振器の貫通孔の中心より入出力電極に近い領域には形成されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
隣接する共振器間に入出力電極を形成し、さらに、外導体から延びる設置電極を形成することによって、入出力電極を挟む共振器の貫通孔の間隔が狭くても、最適な入出力結合が得られる小型のフィルタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明による実施形態の入出力部分の拡大斜視図である。図1において省略されている部分は図4とほぼ同じ形態である。従来の形態図4との相違点は、図1に示されているように第1の端面において内導体3から延びる結合用電極13と入出力電極14との間に外導体から延びる接地電極15が形成されていることである。
【0014】
図1に示されるように本実施形態では、複数のフィルタの入出力結合を共用する入出力電極と一方のフィルタの入出力段に相当する共振器の内導体から延びる結合用電極との間に、外導体から延びる接地電極を設けることで、結合用電極と入出力電極間のギャップをさほど大きくしなくても双方のフィルタにおいて最適な入出力結合を得ることができフィルタの小型化を実現することができる。
【0015】
図2は図1の開放面(第1の面)における導体パターンの平面図である。Co1,Co4はそれぞれのフィルタの入出力段に相当する共振器の内導体から延びる結合用電極13c、13dと入出力電極14との間に生じる、結合容量である。Co2は、結合用電極13cと外導体から延びる接地電極15との間に生じる容量である。Co3は、入出力電極14と外導体から延びる接地電極15との間に生じる容量である。Co1,Co2,Co3により構成される入出力結合は、外導体から延びる接地電極がない場合のそれに比べ小さくなる。そのためさほど結合用電極−入出力電極間ギャップを広くしなくても最適な入出力結合を得ることができ、小型化に有利である。
【0016】
図3は本発明による第2の実施形態における入出力部分の拡大斜視図である。図3において省略されている部分は図4とほぼ同じ形態である。図3において入出力段の内導体3から開放面(第1の面)に延びる結合用電極13のうち入出力電極側が削除されている。即ち、結合用電極が、共振器の貫通孔の中心より入出力電極に近い領域には形成されていない。この場合、内導体の開放端近傍と入出力電極との間に生じる容量により入出力結合を形成しているが、開放面に延びる結合用電極がないためにより入出力結合を小さくでき、外導体から延びる電極を用いることでさらに入出力結合を小さくできる。その結果、入出力段の共振器と入出力電極との距離をさらに短くしても最適な入出力結合を形成することができ、さらなる小型化を実現できる。
【0017】
本実施例では、入出力電極と隣接する2つの共振器のうち、一方の共振器との間に接地電極を形成する形態を説明したが、もう一方の共振器との間に接地電極を形成してもよいし、両方の共振器と入出力電極との間に2つの接地電極を形成してもよい。2つの共振器のうち一方の共振器と入出力電極との間にだけ接地電極を形成すると、よりフィルタの小型化が実現できるので好ましい。
【0018】
本発明は、複数のフィルタの入出力結合を共用するすべての入出力電極において適応できる。また、本発明は、アンテナ共用器にも適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の誘電体フィルタの実施形態における入出力部分の拡大斜視図である。
【図2】図1の開放面(第1の面)における導体パターンの平面図である。
【図3】本発明の誘電体フィルタの第2の実施形態における入出力部分の拡大斜視図である。
【図4】従来の誘電体フィルタの斜視図である。
【図5】従来の誘電体フィルタの入出力部分の拡大斜視図である。
【図6】従来の誘電体フィルタの入出力部分の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 誘電体ブロック
1a 第1の面
1b 第2の面
3 内導体
4 外部接続電極
5 外導体
6、6a〜6d 貫通孔
13、13c、13d 結合用電極
14 入出力電極
15 接地電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1と第2の面を有する略6面体の誘電体ブロックに前記第1の面と第2の面とをつなぐ内導体が被覆された複数の貫通孔と前記第1の面を除く前記誘電体ブロックの外面に外導体とを形成することで構成される複数の共振器と、隣接する共振器間に該共振器と容量結合するように前記第1の面に設けられた入出力電極と、を有する誘電体フィルタにおいて、前記入出力電極と該入出力電極に隣接する共振器との間の前記第1の面に前記外導体より延びる接地電極を設けたことを特徴とする誘電体フィルタ。
【請求項2】
前記入出力電極と容量結合している共振器の前記第1の面に、該共振器の内導体から延びて結合用電極が形成されていることを特徴とする請求項1記載の誘電体フィルタ。
【請求項3】
前記結合用電極が、共振器の貫通孔の中心より入出力電極に近い領域には形成されていないことを特徴とする請求項2記載の誘電体フィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate