説明

誘電体ペースト用バインダー樹脂の製造法、樹脂及び誘電体ペースト

【課題】気泡を抑制し、PDPパネルの光線透過率を低下させないバインダー樹脂の製造法を提供することを目的とする。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステル単量体を必須成分とする単量体を、重合開始剤及び連鎖移動剤としてα‐メチルスチレンダイマーを用いて重合することを特徴とする誘電体ペースト用バインダー樹脂の製造法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマディスプレイパネルの誘電体層の形成に好適な誘電体ペースト用バインダー樹脂の製造方法、これにより得られた樹脂、及びこれを用いた誘電体ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
平板ディスプレイの1つとして、プラズマ放電により発光する蛍光体を設けることによって多色表示を可能にしたプラズマディスプレイパネル(以下PDPと記す)が知られている。PDPは、ガラスからなる平板状の前面板と背面板とが互いに平行かつ対向して配設され、両者はその間に設けられたバリアリブにより一定の間隔に保持されており、前面板、背面板およびバリアリブに囲まれた空間で放電する構造になっている。このような空間には、表示のための電極、誘電体層、蛍光体等が付設され、放電によって封入ガスから発生する紫外線によって蛍光体が発光させられ、この光を観察者が視認できるようになっている。
【0003】
ところで、上述の電極、誘電体層、蛍光体の作成は従来、以下のように行われている。まず、電極、誘電体又は蛍光体の材料として、金属若しくは金属酸化物の粒子、誘電体用ガラスフリット等のガラス粒子又は蛍光体粒子を有機高分子バインダーと溶剤との混合物に分散させたスラリー液又はペーストをそれぞれ用意し、これをスクリーン印刷、ダイコーティング等の塗布方法によってガラス基板上に塗布し、その後塗膜を焼成する事により樹脂成分などの有機物を除去して電極、誘電体層又は蛍光体が形成される(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平11‐349349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の技術としては、従来よりエチルセルロース樹脂がバインダー樹脂として用いられていたが、焼成時に分解残渣が残りやすく、誘電体ガラス層中にバインダー樹脂の熱分解物に起因する気泡が残存する問題があった。更にRoHS規制(電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会及び理事会指令)に伴い、誘電体ペースト中のガラス粉が、低融点な鉛含有ガラスから、高融点な鉛非含有ガラスに置き換えられたことにより、焼成時に一部破泡していた気泡がより残存しやすくなった。また誘電体焼成時に電極脇に気泡が発生し、PDPパネルの光線透過率を低下させる問題があった。
【0005】
本発明は、気泡を抑制し、PDPパネルの光線透過率を低下させないバインダー樹脂の製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のことに関する。
(1) (メタ)アクリル酸エステル単量体を必須成分として含む単量体を、重合開始剤、及び連鎖移動剤としてα‐メチルスチレンダイマーを用いて重合することを特徴とする誘電体ペースト用バインダー樹脂の製造法。
(2) 単量体100重量部に対して、重合開始剤0.01〜5.0重量部、連鎖移動剤0.01〜6.0重量部を用いることを特徴とする(1)に記載の誘電体ペースト用バインダー樹脂の製造法。
(3) 重合を懸濁重合法によって行うことを特徴とする、(1)又は(2)に記載の誘電体ペースト用バインダー樹脂の製造法。
【0007】
(4) (1)〜(3)のいずれかの記載の製造法によって得られる誘電体ペースト用バインダー樹脂。
【0008】
(5) 単量体が、下記化学式1及び2で示される化合物から選択される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A) 70〜100重量%、及び炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル単量体(B) 0〜30重量%を合計100重量%となるように含むものである(4)に記載の誘電体ペースト用バインダー樹脂。
【化1】

【化2】

(但し、Rは炭素数1〜8の直鎖または側鎖を有するアルキル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基から選ばれる。)
【0009】
(6) (メタ)アクリル酸エステル単量体(A)が、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルおよび(メタ)アクリル酸イソブチルから選択される単量体であることを特徴とする(5)に記載の誘電体ペースト用バインダ樹脂。
【0010】
(7) (メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル単量体(B)が、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルから選択される単量体であることを特徴とする(5)又は(6)に記載の誘電体ペースト用バインダー樹脂。
【0011】
(8) (4)〜(7)のいずれかに記載のバインダー樹脂を含有してなる誘電体ペースト。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来よりも気泡発生が少なく、光線透過率の低下の少ないPDPパネルを作製することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル単量体を必須成分として含む単量体を、重合開始剤、及び連鎖移動剤としてα‐メチルスチレンダイマーを用いて重合することを特徴とする誘電体ペースト用バインダー樹脂の製造法に関する。本発明によると、チオール基を有する一般的な連鎖移動剤を用いないことにより、誘電体ペースト焼成時の気泡発生が抑制される。
【0014】
本発明で用いられる単量体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)を必須成分として含む。(メタ)アクリル酸エステル単量体としては下記化学式1及び2で示される化合物から選択される単量体が好ましい。
【化3】

【化4】

(但し、Rは炭素数1〜8の直鎖または側鎖を有するアルキル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基から選ばれる。)
化学式1及び2におけるRのうち、炭素数1〜8の直鎖または側鎖を有するアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。中でも、加熱分解性が良好という観点から、(メタ)アクリル酸エチル、 (メタ)アクリル酸n-ブチルおよび (メタ)アクリル酸イソブチルから選択される(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)として、1種を用いても、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を併用してもよい。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)は単独で用いても、他の単量体と併用してもよい。
他の単量体としては、特に限定されないが、炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルが挙げられる。
【0015】
炭素数が1〜4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル単量体(B)としては、以下の例には限定されないが、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルが挙げられる。中でも好ましいのは、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルから選択される単量体である。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)の含有量は、単量体の合計100重量%中70〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましい。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル単量体(B)と組み合わせて用いる場合には、溶剤に対する樹脂の溶解度を考慮すると、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル単量体(B)の含有量は、単量体の合計100重量%中0〜30重量%が好ましく、0〜20重量%がより好ましく、使用する効果の面からは3〜20重量%用いることが好ましい。
【0016】
本発明で用いられる重合開始剤としては有機酸化物系およびアゾ化合物系が挙げられる。有機過酸化物系としては、以下の例には限定されないが、過酸化水素、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ケトンパーオキサイド類、アルキルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類等が挙げられる。またアゾ化合物系としては、以下の例には限定されないが、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルに代表されるニトリル類、その他ニトリル類以外に、アミジン類、アルキル類、脂環類等が挙げられる。誘電体ペースト焼成時に触媒残渣から発生する窒素が、樹脂の速やかな焼成を妨げるため、アゾ化合物系よりも、有機過酸化物系が好ましい。有機過酸化物の中でも、水への溶解度が低い、ラウリルパーオキサイドのような長鎖アルカンをもつ有機過酸化物を用いることが好ましい。
重合開始剤の使用量としては、重合時間、重合速度及び制御の容易性を考慮すると、単量体100重量部に対して0.01〜5.0重量部が好ましく、0.2〜2.0重量部がより好ましい。
【0017】
本願発明で用いられる連鎖移動剤としては、気泡抑制の観点からα‐メチルスチレンダイマー、すなわち、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンを必須成分として含む。連鎖移動剤の使用量としては、重合体の分子量及び単量体の残存率を考慮すると、単量体100重量部に対して0.01〜6.0重量部が好ましく、0.2〜2.0重量部がより好ましい。
【0018】
上記の単量体、重合開始剤、連鎖移動剤等の各材料を配合して重合することができる。重合方法としては、特に限定されないが、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法が挙げられる。中でも懸濁重合法とすることが好ましい。溶液重合法では、溶剤中で単量体を重合するため、重合終了と同時にバインダー樹脂を得ることができるが、高分子量の重合体を得にくい場合があり、乳化重合法では、界面活性剤を溶解した水に乳化させた単量体をミセル中で重合するため、乳化状態のポリマーを析出分離もしくはスプレードライヤーによって水分を乾燥させ、得られたポリマーを溶剤に溶解させてバインダー樹脂とするので、前記界面活性剤がバインダー樹脂中に残り、加熱分解時の分解残渣が多くなる場合がある。これに対し、前記の懸濁重合法では、分散剤を含む水中で単量体懸濁液を重合し、その後に洗浄により前記分散剤を洗い取るため、得られたビーズ状ポリマーは、高分子量の重合体が得られると共に、分解残渣の少ないものとなり、溶剤に溶解したバインダー樹脂は、本発明の誘電体ペースト用バインダーとして、好ましいものとすることができる。
懸濁重合は、媒体である水に分散剤を加えたものに上記の各材料を加えて、撹拌しながら行ってもよい。重合温度は55〜85℃が好ましい。撹拌の回転速度は反応容器寸法・サイズによって異なるが、例えば、容量5Lの場合は200〜500rpmであってもよい。撹拌時間は重合温度によって異なるが、例えば、1−12時間であってもよい。分散剤としては、以下の例には限定されないが、ポリビニルアルコール、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース等の水溶性セルロース誘導体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子や、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム等の難溶性無機物質が挙げられる。
この後、脱水及び乾燥によりバインダー樹脂を得ることができる。脱水は、例えば、得られたスラリー液を吸引ろ過し、ウェットビーズを回収し、ウェットビーズを元のスラリー液と同重量の純水に分散して約10分撹拌した後、吸引ろ過し、この操作を3回繰り返すことによって行ってもよい。乾燥は、例えば、50℃にて12時間行ってもよい。
【0019】
得られたバインダー樹脂をPDPパネル用の誘電体ペーストとするためには、バインダー樹脂とガラス粉末を、有機溶剤に溶解、攪拌・分散させて誘電体ペーストとすることができる。
ガラス粉末としては、鉛含有タイプ、鉛非含有タイプが挙げられるが、鉛非含有タイプが好ましい。ガラス粉末としては、以下の例には限定されないが、酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素系(PbO−B−SiO系)、酸化鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム系(PbO−B−SiO−Al系)、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素系(ZnO−B−SiO系)、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム系(ZnO−B−SiO−Al系)、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素系(PbO−ZnO−B−SiO系)、酸化鉛、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム系(PbO−ZnO−B−SiO−Al系)、酸化ビスマス、酸化ホウ素、酸化ケイ素系(Bi−B−SiO系)、酸化ビスマス、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム系(Bi−B−SiO−Al系)、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素系(Bi−ZnO−B−SiO系)、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化アルミニウム系(Bi−ZnO−B−SiO−Al系)が挙げられる。
ガラス粉末は、誘電体ペースト全量中に5〜70重量%含まれることが好ましい。
有機溶剤としては、以下の例には限定されないが、上記特性を有する溶剤であれば特に制限されないが、例えばエーテル類、エステル類、エーテルエステル類、ケトン類、ケトンエステル類、アミド類、アミドエステル類、ラクタム類、ラクトン類、スルホキシド類、スルホン類、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。より具体的には、テトラヒドロフラン、アニソール、ジオキサン、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、酢酸エステル類、ヒドロキシ酢酸エステル類、アルコキシ酢酸エステル類、プロピオン酸エステル類、ヒドロキシプロピオン酸エステル類、アルコキシプロピオン酸エステル類、乳酸エステル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、アルコキシ酢酸エステル類、環式ケトン類、非環式ケトン類、アセト酢酸エステル類、ピルビン酸エステル類、N,N−ジアルキルホルムアミド類、N,N−ジアルキルアセトアミド類、N−アルキルピロリドン類、γ−ラクトン類、ジアルキルスルホキシド類、ジアルキルスルホン類、ターピネオール、N−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機溶剤の含有量は、良好な膜形成性(流動性または可塑性)が得られる範囲内において適宜選択すればよい。
バインダー樹脂の比率は、誘電体ペースト全量を基準にして1〜20重量%とすることが好ましい。これはバインダー樹脂の固形分が1重量%以上であると、スクリーン印刷により形成された回路にクラックが発生する恐れがなく、また20重量%以下であると、単位時間での分解残渣が残らない。
なお必要に応じて、誘電体ペーストに、可塑剤、分散剤、湿潤剤、消泡剤、帯電防止剤、減粘剤を添加しても良い。
溶解、攪拌・分散は、例えばビーズミル等の小型攪拌器に各成分を加えて、例えば1〜100分間、溶解、混合、分散することにより行うことができる。続いて、この分散液を、必要に応じて適切な大きさの開口部を有する濾布に通過させて誘電体ペーストとすることができる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0021】
表1(実施例および比較例)に示す通り、各成分を配合し、これを重合してバインダー樹脂を作製し、そのバインダー樹脂を用いて誘電体ペーストを作製し、これを硬化させて気泡の有無を観察した。
具体的には、実施例1〜8では、表1に記載の通り(メタ)アクリル酸エステル単量体、連鎖移動剤としてα‐メチルスチレンダイマー及び重合開始剤を含む単量体混合物を準備した。つぎに、ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:PVA−235)をイオン交換水に溶解して分散媒体とし、これに各単量体混合物を加え、攪拌羽を250rpmで、75℃、2時間の懸濁重合を行い、スラリー液を得た。つぎに、得られたスラリー液を吸引ろ過し、ウェットビーズを回収し、ウェットビーズを元のスラリー液と同重量の純水に分散して約10分撹拌した後、吸引ろ過し、これら操作を3回繰り返して樹脂を洗浄した。次に、洗浄した樹脂を50℃、12時間の条件にて乾燥し、、バインダー樹脂とした。
【0022】
次に、得られたバインダー樹脂10部(重量)を有機溶剤 ジヒドロターピネオール60部(重量)に溶解した後、ガラス粉末50部(重量)を加え、ビーズミルを用いて15分間、混合、分散した。続いて、この分散液を、30μm角の開口部を有する濾布に通過させて、誘電体ペーストを作製した。
比較例1では、実施例1で用いた単量体混合物の連鎖移動剤をノルマルオクチルメルカプタン0.15重量部に変更した以外は実施例1と同様の条件で誘電体ペーストを作製した。比較例2では、バインダー樹脂の代わりにエチルセルロースを用いた以外は実施例1と同様の条件で誘電体ペーストを作製した。
【0023】
つぎに前記評価方法において記載すると、透明電極を形成したガラス基板上に誘電体ペーストをアプリケータ(テスター産業(株)製、マイクロメーター付フィルムアプリーケーター、SA-204)を用いてウェット膜厚が50μmとなるように塗布し、積層体を得た。続いて、この積層体を室温から毎分10℃で昇温し、400℃に達したところで30分間保持した。その後更に600℃まで毎分10℃で昇温し更に30分間保持した。冷却して得られた積層体の表面をSEM観察し、目視にて気泡の発生状況を観察した。気泡発生がない部分の面積によって5段階に分類し、0〜20%を1,20〜40%を2,40〜60%を3,60〜80%を4,80〜100%を5とした。実用に耐えうるレベルは4以上である。結果は表1に示すとおりである。
【表1】

表1中、MMAはメタクリル酸メチル、EMAはメタクリル酸エチル、i−BMAはメタクリル酸イソブチル、HEMAはメタクリル酸ヒドロキシエチル、HPMAはメタクリル酸ヒドロキシプロピル、LPOはラウリルパーオキサイド、NOMはノルマルオクチルメルカプタン、AMSDはα‐メチルスチレンダイマー、ECはエチルセルロースを示す。
表1のSEM観察結果によると、実施例1〜8の積層体では気泡発生がない部分の面積が4〜5と実用に耐えうるレベルであった。これに対して比較例1の積層体では気泡発生がない部分の面積が2と多くの気泡が観察された。また、比較例2の積層体では気泡発生がない部分の面積が1と非常に多くの気泡が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル単量体を必須成分として含む単量体を、重合開始剤、及び連鎖移動剤としてα‐メチルスチレンダイマーを用いて重合することを特徴とする誘電体ペースト用バインダー樹脂の製造法。
【請求項2】
前記単量体100重量部に対して、前記重合開始剤0.01〜5.0重量部、前記連鎖移動剤0.01〜6.0重量部を用いることを特徴とする請求項1に記載の誘電体ペースト用バインダー樹脂の製造法。
【請求項3】
前記重合を懸濁重合法によって行うことを特徴とする、請求項1又は2記載の誘電体ペースト用バインダー樹脂の製造法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの記載の製造法によって得られる誘電体ペースト用バインダー樹脂。
【請求項5】
前記単量体が、下記化学式1及び2で示される化合物から選択される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)70〜100重量%、及び炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル単量体(B)0〜30重量%を合計100重量%となるように含むものである請求項4記載の誘電体ペースト用バインダー樹脂。
【化1】

【化2】

(但し、Rは炭素数1〜8の直鎖または側鎖を有するアルキル基、ベンジル基、シクロヘキシル基及びイソボルニル基から選ばれる。)
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)が、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルおよび (メタ)アクリル酸イソブチルから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の誘電体ペースト用バインダー樹脂。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル単量体(B)が、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルから選択されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の誘電体ペースト用バインダー樹脂。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載のバインダー樹脂を含有してなる誘電体ペースト。

【公開番号】特開2009−132827(P2009−132827A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311114(P2007−311114)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】