説明

誘電体磁器の評価方法

【課題】X線回折を利用して、コアシェル構造を具備する誘電体磁器におけるコア部とシェル部の結晶相について体積分率とシェル部の厚みの定量を可能とし、これにより材料の平均的な情報、特に微構造情報を取得できるようにした誘電体磁器の評価方法を提供することを課題とする。
【解決手段】コアシェル構造を具備するペロブスカイト型結晶粒子からなる誘電体磁器の誘電体多結晶表面にX線を照射し、前記ペロブスカイト結晶における正方晶の(h k l)と、立方晶の(h' k' l')の回折強度を測定し、明細書に記載の特定式からコア部1(正方晶部分)とシェル部2(立方晶部分)の結晶相の体積分率を定量すると共に、前記ペロブスカイト結晶における立方晶の(h' k' l')の回折強度におけるピーク半値幅を測定し、明細書に記載の特定式からシェル部の厚みを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサなどに用いられる誘電体磁器の微構造を評価するための誘電体磁器の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層コンデンサ等に用いられるBaTiO3を主成分とする誘電体磁器において、高い誘電率と良好な温度特性を確保するためには、結晶粒内に強誘電体相部分(コア部)とこれを囲む常誘電体相部分(シェル部)とを共存させたコアシェル構造が有効であると考えられている。このコアシェル構造は、従来、透過型電子顕微鏡(以下、TEMと呼ぶ)やTEMに付属したエネルギー分散型X線分光器(以下、EDXと呼ぶ)により観察されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、積層セラミックコンデンサと同じ焼結体についてTEM観察およびEDXによりBi濃度分布を調べている。また、特許文献2には、Mg拡散層(シェル部に相当する)のMg分布を分析電子顕微鏡で調べ、これから結晶粒の平均粒径に対するMg拡散層の割合を求めている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−310469号公報([0036])
【特許文献2】特開平10−308321号公報([0008])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したTEMやEDXを用いた評価は、誘電体材料の全てを観察するわけでなく、局所的な部位を選択的に観察するため、材料全体の情報を平均的に表しているとは言い難い。また平均的な情報を得るためには数多くの部位を観察することが必要になり、多くの時間を要する。
【0006】
さらに、誘電体を焼結させるために添加する金属元素等の拡散により生じるコアシェル構造において、EDXのラインスキャンにより粒界から粒子内部に向かって、どの距離まで金属元素が拡散しているのか、つまり濃度勾配はわかるが、それと結晶相の対応、つまり正方晶と立方晶の区別ができないという問題があった。
【0007】
従って、本発明は、X線回折を利用して、コアシェル構造を具備する誘電体磁器におけるコア部とシェル部の結晶相についての定量を可能とし、これにより材料の平均的な情報、特に微構造情報を取得できるようにした誘電体磁器の評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の評価方法は、コア部とシェル部の結晶相の体積分率およびシェル部の厚みを定量できるようにしたものであって、以下の構成からなる。
【0009】
(1)コアシェル構造を具備するペロブスカイト型結晶粒子からなる誘電体磁器の誘電体多結晶表面にX線を照射し、前記ペロブスカイト結晶における正方晶の(h k l)と、立方晶の(h' k' l')の回折強度を測定し、下記式(1)からコア部(正方晶部分)とシェル部(立方晶部分)の結晶相の体積分率を算出することを特徴とする、X線回折法を利用する誘電体磁器の評価方法。
【数5】

obs:誘電体磁器内の正方晶の体積分率
tet:使用した正方晶ピークの多重度
cub:使用した立方晶ピークの多重度
tet:使用した正方晶ピークの回折強度
cub:使用した立方晶ピークの回折強度
(2)球状二重構造モデルに基づく下記式(2)からシェル部の厚みを推定する請求項1記載の誘電体磁器の評価方法。
【数6】

cal:シェル部の厚み(nm)
D:ペロブスカイト型結晶粒子の外径(nm)
obs:前記式(1)から求められた体積分率
(3)正方晶の(h k l)においてh≧4、k=0、l=0またはh=0、k=0、l≧4であり、立方晶の(h' k' l')においてh'=0 、k'=0、l'≧4である請求項1または2記載の誘電体磁器の評価方法。
(4)正方晶の(h k l)が正方晶の(400)または(004)であり、立方晶の(h' k' l')が立方晶の(400)である請求項3記載の誘電体磁器の評価方法。
(5)コアシェル構造を具備するペロブスカイト型結晶粒子による誘電体多結晶表面にX線を照射し、前記ペロブスカイト結晶における立方晶の(h' k' l')の回折強度におけるピーク半値幅を測定し、下記式(3)からシェル部の厚みを算出することを特徴とする、X線回折法を利用する誘電体磁器の評価方法。
【数7】

obs:シェル部の厚み(Å)
λ:波長(Å)
θ:ブラッグ角(deg)
β:下記式から求められる真の半値幅(単位:ラジアン)
【数8】

B:立方晶の(h' k' l')のピーク半値幅の測定値
b:装置定数
(6)立方晶の(h' k' l')において、h'=0 、k'=0、l'≧4である請求項5記載の誘電体磁器の評価方法。
(7)立方晶の(400)を測定することを特徴とする請求項6記載の誘電体磁器の評価方法。
(8)前記回折強度を単色化された放射光を用いて測定する請求項1〜7のいずれかに記載の誘電体磁器の評価方法。
(9)積層セラミックコンデンサに適用される、コアシェル構造を具備するペロブスカイト型誘電体磁器を、前記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法から求められるシェル部の厚みおよび/または誘電体磁器内の正方晶の体積分率から評価することを特徴とする誘電体磁器の評価方法。
(10)BaTiO3を主成分とするペロブスカイト型誘電体磁器において、前記シェル部の厚みが約40nm以下で、かつ前記誘電体磁器内の正方晶の体積分率が45%以上であることを積層セラミックコンデンサへの適用基準とする誘電体磁器の評価方法。
【発明の効果】
【0010】
従来法では、シェル部とコア部の結晶相の体積分率やシェルの厚みを定量的に評価することは困難であったが、本発明によれば、コア部とシェル部の結晶相の体積分率と、シェル部の厚みをX線回折法を利用して定量することが可能になり、誘電率の温度特性などの諸特性に優れた積層セラミックコンデンサの迅速な材料評価が可能になるという効果がある。
【0011】
また、回折強度を単色化された放射光を用いて測定することにより、精度良くコア部とシェル部の結晶相の体積分率を定量でき、シェル部の厚みを評価することができる。
【0012】
前記(9)、(10)の評価方法によれば、例えば、BaTiO3を主成分とするペロブスカイト型誘電体磁器において、前記シェル部の厚みが約40nm以下で、かつ前記誘電体磁器内の正方晶の体積分率が45%以上であることを積層セラミックコンデンサへの適用基準とする場合は、温度特性などに優れた積層セラミックコンデンサを効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の評価方法は、X線回折を利用して、ペロブスカイト型結晶粒子のコアシェル構造を評価するものである。ここで、コアシェル構造とは、図1の模式図に示すように、コア部1をシェル部2で被覆した結晶構造をいい、一般にはコア部1が正方晶からなり、シェル部2が立方晶からなる。
【0014】
X線回折に用いるX線は特に限定されるものでなく、市販X線回折装置や、SPring−8(大型放射光施設)のような放射光施設を用いて評価することができる。
【0015】
精度良くコアシェル構造の結晶相の体積分率やコア部2の厚みを評価するためには、単色化された放射光を用いるのが良い。すなわち、Si(111)などの分光器によって、単色化された放射光を試料に照射し、回折したX線を比例計数管などの検出器を用いてカウントする。X線の波長は任意であるが、ピークのスプリットを良くするために、X線波長は長いのが好ましく、具体的には1.0Å以上、好ましくは1.5〜2.5Åの範囲から選択するのがよい。
【0016】
走査は2θ−θ軸で行い、ステップスキャンにより行う。ステップ幅は任意であるが、0.02°程度が好適である。走査範囲は、正方晶の(h k l),立方晶の(h' k' l')をカバーできる範囲を走査する。走査範囲は任意であり、特に制限されるものではないが、一回のスキャンで正方晶と立方晶のピークが含まれる方が測定上都合よい。1点あたりの計数時間も任意であるが、時間を長くしたり、積算回数を大きくすることによりS/N比(シグナル/ノイズ比)が向上したデータを取得することができる。積算回数は、5回以上、好ましくは10〜20回であるのがよい。積算回数を大きくするには、2θのレンジのスキャンを1回として、それを繰り返し測定し、得られたデータを加算すればよい。これにより、ピークの部分が強調され、ノイズ部はフラットになる。
【0017】
測定された回折データは、正方晶(h k l)および立方晶(h' k' l')の反射であり、それぞれ回折ピークから、ピーク強度(=積分強度)、ピークトップの2θ位置、半値幅、ピークの形状関数等のパラメータを得る。その際、必要に応じて、ピーク分離を行う。ピーク分離には、市販ソフトや自作プログラムなどを用いることができ、ピーク分離のためのツールは特に限定されるものではない。
【0018】
次に、正方晶(h k l)と立方晶(h' k' l')の強度(=積分強度)からコア部とシェル部の結晶相の体積分率を算出する方法を説明する。誘電体磁器内の正方晶の体積分率Vobsは、基本的に下記式(1')から求めることができる。
【数9】

ここで、
tet:正方晶の体積
cub:立方晶の体積
【0019】
上記正方晶の体積Vtetと立方晶の体積Vcubの比は、正方晶(h k l)のピークの回折強度および多重度から前記した式(1)に従って求めることができる。このとき、正方晶の(h k l)においてh≧4、k=0、l=0またはh=0、k=0、l≧4で、立方晶の(h' k' l')においてh'=0、k'=0、l'≧4であるのがよく、好ましくは正方晶の(h k l)が(400)または(004)であり、立方晶の(h' k' l')が(400)である。
【0020】
正方晶(h k l)と立方晶(h' k' l')の各ピークの回折強度ItetおよびIcubは、ピーク分離されたそれらの波形から求めることができる。一方、前記多重度とは、いわゆる粉末法において回折に寄与している、同じ面系に属する等価な面の数をいう。例えば、BaTiO3を主成分としコアシェル構造を具備するペロブスカイト型誘電体磁器では、正方晶(400)の多重度が4であり、立方晶(400)の多重度が6である。ちなみに、試料中にそれぞれの相が体積にして、1:1で存在すると、正方晶と立方晶の回折強度はおよそ4:6の比率となり、得られた強度比から体積分率が得られる。
【0021】
前記式(1)から求められる体積分率Vobsを利用して、前記式(2)からシェル部2の厚みを推定することができる。式(2)において、ペロブスカイト型結晶粒子の外径Dは、TEMなどで測定した値である。
【0022】
一方、X線回折法にてシェル部2の厚みを算出するには、前記式(3)に示すシェラー(Scherrer)の式を利用する。ここで、真の半値幅を求めるための立方晶の(h' k' l')のピーク半値幅は、ピーク分離された当該立方晶(h' k' l')の波形から求められる値であって、波形内におけるピークの頂点からピークのベースラインに下ろした垂線を二等分するベースラインに平行な線分の長さをいう。立方晶の(h' k' l')においても、h'=0、k'=0、l'≧4であるのがよく、特に(400)におけるピーク半値幅を測定するのが好ましい。
【0023】
このようにして得られたシェル部2の厚みdobsから正方晶の体積分率Vobsを算出することができる。すなわち、図1に示すように、コアシェル構造を球形と仮定した場合、結晶粒子の外径Dは、SEMなどで測定することができるので、この外径Dとシェル部の厚みdobsからコア部1とシェル部2の各体積を求め、これから正方晶の体積分率Vcalを算出することができるのである。なお、装置定数bは、結晶子が20〜50μmと十分に大きく、かつ不均一な歪のない試料(好ましくは単結晶試料)を用いて得られたピーク半値幅である。
【0024】
次に、実施例を挙げて本発明の評価方法を具体的に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0025】
[実施例]
(評価用試料1〜4の作製)
評価用試料である誘電体材料の作製には、市販原料で、平均粒度daが0.35μmのBaTiO3粉末を用いた。BaTiO3100質量部に対して、MgOを2.5モル部、MnCO3を0.3モル部と、希土類元素(RE23)としてYb23あるいはY23を1.5モル部、アルカリ土類元素及びSiの酸化物を含むガラス粉末をBaTiO3100質量部に対し、0.8質量部添加した。直径5mmのZrO2ボールを用いたボールミルにより、これらの原料を湿式混合して混合粉末を調製した。このときのボールミルの回転速度は1分間で150〜200回転であり、混合時間を1〜59時間の範囲で変化させた。すなわち、混合時間は、試料1<2<3<4の順である。
【0026】
この混合粉末を直径16mmの金型に入れてプレスを行い、厚さ700〜800μmの成形体を作製した。この成形体を大気中、300℃にて脱バインダ処理を行った後、300℃/時間の昇温速度で、1305℃(酸素分圧10-11atm)で2時間焼成し、続いて300℃/時間の降温速度で冷却した。引続き、弱酸化性の窒素雰囲気中において、1000℃で10時間の熱処理を行い、300℃/時間の降温速度で冷却し、誘電体磁器である試料1〜4を作製した。
【0027】
(評価用試料の特性)
得られた各試料1〜4の結晶粒径、比誘電率、容量変化率および静電容量の温度特性(X7R特性)の測定を行った。すなわち、誘電体磁器における平均結晶粒径Dは、SEM写真の画像処理により結晶の面積Sを算出し、その値から式:D=2√(S/π)により算出した。その結果は、後述する表2に示した。
【0028】
比誘電率は、周波数1.0kHz、測定電圧1Vrms、25℃の条件で測定した静電容量と誘電体磁器の寸法から算出した。
【0029】
静電容量の温度特性(X7R特性)は、周波数1.0kHz、測定電圧0.5Vrmsの条件で測定した。すなわち、−55℃〜+150℃の範囲の静電容量Cを測定し、25℃での静電容量の値C25を基準として、式:ΔC=(C−C25)/C25から容量変化率ΔCを求め、その温度範囲における容量変化率が±15%以内に入る、即ちEIA規格で示されているX7R特性を満足する場合を◎とし、それ以外は×とした。このとき、25℃での静電容量の値C25を基準とした125℃における容量変化率も求めた。
【0030】
表1に各試料1〜4の測定結果を示す。また、図2に−55℃〜+150℃の温度範囲での比誘電率の温度特性を示す。
【表1】

【0031】
(X線回折(XRD)による試料の評価)
回折実験には、大型放射光施設であるSPring−8のBL14B1を利用した。準備した試料1〜4はチタン酸バリウム系材料であったので、正方晶の(004),(400)、立方晶の(400)を測定対象とした。分光器はSi(111)を用いた。ビームの大きさは、縦方向に0.5mm、水平方向に5mmとした。エネルギー(=波長)はCuフォイルで較正し、波長を1.54982Åとした。チタン酸バリウム系誘電体磁器の測定は、2θ角度で99°から104°の間を走査した。ステップ幅を0.02°とし、1点あたりの計数時間を5.0秒とした。また、繰返し回数を10回とし、10回分の積算を回折強度とした。
【0032】
チタン酸バリウム系誘電体磁器である試料1〜4を用いて得られた回折データを図3〜6に示す。装置定数bは、Si(333)を測定し、b=0.03°という値を得た。
【0033】
図3〜6は、ピーク分離した正方晶の(004),(400)および立方晶の(400)の各回折強度を示している。図3〜6において、T(004)およびT(400)は正方晶の(004),(400)を、C(400)は立方晶の(400)を示している。
【0034】
ピーク分離は、ピーク分離ソフトを用いて以下の条件で行なった。
バックグラウンド関数:0次多項式
放射光:Kα1単色光
プロファイル関数:the psedo-Voigt関数
半値幅:すべての反射に対し異なる半値幅
プロファイルの対象性:対象
データ分解能:シャープ(最小半値幅:約0.1°)
解析範囲:99°<2θ<104°
【0035】
(コア部およびシェル部の結晶相の体積分率計算)
コア部とシェル部の結晶相の体積分率は、正方晶(400)と立方晶(400)のピーク強度を利用した。ペロブスカイト構造における正方晶(400)と立方晶(400)の多重度は、それぞれ4,6である。これらの多重度と、図3〜6に示す正方晶(400)と立方晶(400)のピーク強度とから、前記式(1)により正方晶の体積分率、すなわち正方晶率を得た。図7に体積分率の定量結果を示す。なお、同図には、後述するシェル部の厚みと平均結晶粒径とから計算した正方晶率も併せて示した。
【0036】
(シェル部の厚み算出)
シェル部の厚みdは、立方晶(400)ピークの半値幅Bから、式(3)で示すシェラーの式に従い算出した。真の半値幅βを求めるための装置定数bは0.03であった。このようにして得られた、チタン酸バリウム系誘電体磁器である試料1〜4の各シェル部の厚みを図8に示す。また、図8には、前記正方晶率から式(2)より求めたシェル部の厚みも併せて示す。
【0037】
(試験結果)
表1に示した試料1〜試料4において、静電容量の温度特性が−55℃から+125℃の範囲で+25℃の静電容量を基準に±15%を満足している、すなわちX7R特性が◎であるのは、試料1および試料2である。
【0038】
一方、図7および図8より求めた各試料のシェル部の厚みdobsおよび正方晶率(誘電体磁器内の正方晶の体積分率)Vobsは表2に示した通りである。また、表2には、これらの測定値から計算した各試料のシェル部の厚みdcalおよび正方晶率(誘電体磁器内の正方晶の体積分率)Vcal も示してある。
【表2】

【0039】
表2に示す結果より、試料1〜試料3においては、立方晶(400)のピーク半値幅から見積もったシェル厚みdobsと、体積分率から見積もったシェル厚みdcalがよく一致した。このことから、試料1から3のシェル部は、シェルの厚み方向に対して、シングルドメイン構造を有していることが明らかである。
【0040】
また、X7Rの温度特性を満足するには、シェル部の厚みはおよそ40nm以下で、かつ正方晶率が45%以上であることが必要であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】コアシェル構造の断面を示す模式図である。
【図2】試料1〜試料4の誘電率の温度特性(比誘電率)を示すグラフである。
【図3】試料1の放射光を用いた回折パターンを示すグラフである。
【図4】試料2の放射光を用いた回折パターンを示すグラフである。
【図5】試料3の放射光を用いた回折パターンを示すグラフである。
【図6】試料4の放射光を用いた回折パターンを示すグラフである。
【図7】正方晶の体積分率の測定結果を示すグラフである。
【図8】シェル部の厚み測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0042】
1:コア部、2:シェル部、D:結晶粒径、d:シェルの厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル構造を具備するペロブスカイト型結晶粒子からなる誘電体磁器の誘電体多結晶表面にX線を照射し、前記ペロブスカイト結晶における正方晶の(h k l)と、立方晶の(h' k' l')の回折強度を測定し、下記式(1)からコア部(正方晶部分)とシェル部(立方晶部分)の結晶相の体積分率を算出することを特徴とする、X線回折法を利用する誘電体磁器の評価方法。
【数1】

obs:誘電体磁器内の正方晶の体積分率
tet:使用した正方晶ピークの多重度
cub:使用した立方晶ピークの多重度
tet:使用した正方晶ピークの回折強度
cub:使用した立方晶ピークの回折強度
【請求項2】
球状二重構造モデルに基づく下記式(2)からシェル部の厚みを推定する請求項1記載の誘電体磁器の評価方法。
【数2】

cal:シェル部の厚み(nm)
D:ペロブスカイト型結晶粒子の外径(nm)
obs:前記式(1)から求められた体積分率
【請求項3】
正方晶の(h k l)においてh≧4、k=0、l=0またはh=0、k=0、l≧4であり、立方晶の(h' k' l')においてh'=0、k'=0、l'≧4である請求項1または2記載の誘電体磁器の評価方法。
【請求項4】
正方晶の(h k l)が正方晶の(400)または(004)であり、立方晶の(h' k' l')が立方晶の(400)である請求項3記載の誘電体磁器の評価方法。
【請求項5】
コアシェル構造を具備するペロブスカイト型結晶粒子による誘電体多結晶表面にX線を照射し、前記ペロブスカイト結晶における立方晶の(h' k' l')の回折強度におけるピーク半値幅を測定し、下記式(3)からシェル部の厚みを算出することを特徴とする、X線回折法を利用する誘電体磁器の評価方法。
【数3】

obs:シェル部の厚み(Å)
λ:波長(Å)
θ:ブラッグ角(deg)
β:下記式から求められる真の半値幅(単位:ラジアン)
【数4】

B:立方晶の(h' k' l')のピーク半値幅の測定値
b:装置定数
【請求項6】
立方晶の(h' k' l')において、h'=0 、k'=0、l'≧4である請求項5記載の誘電体磁器の評価方法。
【請求項7】
立方晶の(400)を測定することを特徴とする請求項6記載の誘電体磁器の評価方法。
【請求項8】
前記回折強度を単色化された放射光を用いて測定する請求項1〜7のいずれかに記載の誘電体磁器の評価方法。
【請求項9】
積層セラミックコンデンサに適用される、コアシェル構造を具備するペロブスカイト型誘電体磁器を、請求項1〜8のいずれかに記載の方法から求められるシェル部の厚みおよび/または誘電体磁器内の正方晶の体積分率から評価することを特徴とする誘電体磁器の評価方法。
【請求項10】
BaTiO3を主成分とするペロブスカイト型誘電体磁器において、前記シェル部の厚みが約40nm以下で、かつ前記誘電体磁器内の正方晶の体積分率が45%以上であることを積層セラミックコンデンサへの適用基準とする誘電体磁器の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−137647(P2006−137647A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330250(P2004−330250)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】