説明

誘電層を備える箔形スイッチング素子

スイッチング素子の能動部分を画成する少なくとも1つの切抜き部を含むスペーサーを用いて互いに一定間隔を空けて配置される第一担体箔及び第二担体箔を備えて成る箔形スイッチング素子。前記第一及び第二担体箔間のスイッチング素子の能動部分内に少なくとも2本の電極を配置して、スイッチング素子の能動部分に対して作用する圧力に反応して、第一及び第二担体箔がそれら弾性担体箔の反発力に反して共に押しつけられて前記少なくとも2つの電極間に電気接触を確立する。電極の処理によって担体箔に不均質な変形が生ずることを防止するため、スイッチング素子にさらに誘電材料層を設ける。この誘電材料は担体箔と第一担体箔上に配置される電極との間の第一担体箔上へ処理し、誘電材料層で第一担体箔上へ配置される電極のほぼ外周によって画成される第一担体箔上の少なくとも電極部分を被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は箔形スイッチング素子、より詳細には少なくとも1つの電極構造体が上面へプリントされた柔軟性担体箔を備えるスイッチング素子に関する。
【0002】
本発明は、スペーサーを用いて互いに一定間隔を空けて配置された第一担体箔及び第二担体箔を備えて構成される箔形スイッチング素子に関する。前記スペーサーにはスイッチング素子の能動部分を限定する少なくとも1つの切抜きが含まれる。前記第一及び第二担体箔間のスイッチング素子の能動部分内には少なくとも2本の電極が配置され、前記スイッチング素子の能動部分に対して作用する圧力に反応して前記第一及び第二担体箔がそれら弾性担体箔の反発力に反して共に押しつけられて少なくとも2本の電極間に電気接触が確立される。
【背景技術】
【0003】
このような箔形スイッチング素子についてはいくつかの実施態様が当該技術分野において周知である。これらスイッチング素子は、その数例において、例えば第一担体箔上へ配置される第一電極と、該平面状の第一電極と対向位置関係にある第二担体箔上へ配置される第二電極から成る簡単なスイッチとして構成されている。これら電極は前記能動部分内の担体箔それぞれを本質上全面被覆する平面形状であってもよい。
【0004】
当該技術分野において公知の他のスイッチング素子は、印加される圧量によって電気抵抗が変化する圧力センサとして構成されている。かかる圧力センサの一実施態様においては、第一電極が第一担体箔上へ配置され、第二電極が第二担体箔上へ該第一電極と対向位置関係になるように配置される。これら電極の少なくとも一方は、第一及び第二担体箔がスイッチング素子に対して作用する作用力に反応して共に押しつけられるように、感圧性材料、例えば半導電性料から成る層で被覆され、電気接触が第一及び第二電極間に感圧性材料から成る層を介して確立される。この種の感圧センサは所謂「スルーモード」で作動することがしばしば要求される。
【0005】
前記圧力センサの上記に代わる実施態様においては、第一及び第二担体箔の一方上へ第一及び第二電極が間隔を空けた位置関係になるように配置され、他方の担体箔が感圧性材料から成る層で被覆される。前記感圧性材料層は、第一及び第二担体箔がスイッチング素子の能動部分に対して作用する作用力に反応して共に押しつけられた際に前記感圧性材料層が第一及び第二電極を分路するように、第一及び第二電極へ対向位置関係になるように配置される。この実施態様によるセンサは所謂「分路モード」で作動することが要求される。
【0006】
上記スイッチング素子は有効な価格に製造でき、また実用に際して極めて強靭かつ信頼度が高いことが実証されている。
【0007】
このようなスイッチング素子の電気的応答性は、電極タイプ、感圧性材料層の有無、電極構成、スイッチング素子の能動部分内への電極配置、そして前記能動部分に対して作用する作用力に反応して電極間に確立される物理的接触と依存関係にある。前記電極間の物理的接触は、前記能動部分に対して作用する作用力の場合、スイッチング素子の機械的応答性によって決まる。この機械的応答性は、通常PET箔である担体箔の弾力特性、前記能動部分の横方向の寸法、及び前記2つの対向する担体箔の間隔と依存関係にある。
【0008】
製造工程中、前記電極は通常電極それぞれの担体箔上へプリントされる。このプリント処理中、担体箔はプリントされる電極の導電性材料との境界部分において表面張力を受ける。これらの表面張力によって担体箔が変形を受ける可能性があるが、この変形はスイッチング素子の能動部分全体に亘って前記電極の形状が不均質であることに依存している。
【0009】
前記担体箔及びプリントされた電極の好ましくない変形により、スイッチング素子の形状も前記能動部分において当然変化する。実際、前記2つの担体箔間の間隔は表示間隔から異なり、前記能動部分全域上においてもはや均質でなくなる。さらに電極も同様な変形を受け、電極の形状はもはやその規格とは適合しなくなる。これらのことが要因となって前記センサの機械的反応に変化が生じ、またそれに起因して該センサの電気的反応にも変化が生ずる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は改良型箔形スイッチング素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は特許請求の範囲の請求項1項に限定された箔形スイッチング素子によって達成される。この箔形スイッチング素子には、スペーサーを用いて互いに一定間隔に配置される第一担体箔と第二担体箔が含まれ、前記スペーサーにはスイッチング素子の能動部分を画成する少なくとも1つの切抜き部が含まれている。前記第一及び第二担体箔間のスイッチング素子の能動部分内には少なくとも2本の電極が配置され、前記スイッチング素子の能動部分に対して作用する圧力に反応して前記第一及び第二担体箔がそれら弾性担体箔の反発力に反して共に押しつけられて前記少なくとも2本の電極間に電気接触が確立される。本発明においては、前記スイッチング素子にはさらに、担体箔と該担体箔上へ配置される電極間の前記第一担体箔上へ処理された1層の誘電材料層が含まれ、この誘電材料層によって、前記第一担体箔上へ配置される電極のほぼ外周によって限定される第一担体箔の少なくとも電極部位が被覆される。
【0012】
前記誘電材料が処理される電極部位は、担体箔上へプリントされる電極が限界を画する概略凸状の輪郭によって限定される。従って、たとえば櫛形状電極のように複雑な電極形状の場合であっても、材料が担体箔へ直接処理される部位は概して凸状の形状を呈することになる。前記電極部位全体を被覆する誘電材料層の処理によって、前記能動部分の前記電極部位において支持層が不均質に変形することが防止される。前記誘電層の採用によってたとえ担体箔が変形しても、かかる変形は前記電極部位全体に亘ってほぼ均質であるので制御あるいは補正が可能である。これにより、電極の形状及び担体箔配置が製造過程で制御されない形で変わることはないため、規格に適合しないスイッチング素子の製造を大幅に減少することが可能となる。
【0013】
前記誘電材料は、例えばPUR樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂等の広範囲に亘る適当な材料から選択できる。但し、誘電材料は好ましくは、前記処理中における担体箔の変形が最小限に抑えられるように、担体箔と処理層との間の境界層における応力を減じるように選択すべきことに留意すべきである。また、誘電材料は例えばシルバーインク等のプリントされた導電性電極材料の接着性を高める下塗剤としても作用できることも理解されよう。
【0014】
前記誘電材料及び前記誘電層の厚さによって左右されるが、適当な誘電材料を処理することによって膜系(担体箔と誘電層)の機械的特性を変化させることが可能である。例えば、スイッチング素子の能動部分に対して作用する圧力作用下での前記膜系の片寄りを調節するように前記膜系の剛性を増大させることが可能である。これにより、適当な誘電材料を処理することにより、スイッチング素子の機械的応答性を制御された方式で変えることが可能となる。
【0015】
例えば円盤形状の電極等の凸状形状をした電極は、例えば櫛形状をした電極等の複雑な輪郭あるいは輪片形状をもつ電極、あるいは凸状形状をもたない他の電極に比べて、担体箔の不均質な変形を受けにくい。実際、たとえば櫛形状の電極、輪片形状をした電極等の前記複雑な輪郭をもつ電極は、担体箔の不均質な変形を起こす主因となる。従って、好ましくは、担体箔上へ複雑な輪郭をもつ電極がプリントされる該担体箔へ誘電材料層が処理される。
【0016】
しかしながら、本発明の好ましい実施態様においては、電極の輪郭とは無関係に前記各担体箔上へ誘電材料層が処理される。従って、この実施態様においては、第二担体箔とこの第二担体箔上へ配置される電極との間の該第二担体箔上にも誘電材料層が処理されることになる。この実施態様によるスイッチング素子には、両担体箔が類似の機械的特性を備えること、またそれゆえにスイッチング素子が前記能動部分に対して作用力が働く側とは無関係に機械的あるいは電気的応答性を示す利点がある。
【0017】
しかしながら、前記処理によっては、第一及び第二の膜系の機械的特性が互いに異なるように、またスイッチング素子が非対称な動きを示すように、両担体箔の誘電層が異なる材料から成り、あるいは異なる厚さであってもよいことが理解されるであろう。
【0018】
本発明の好ましい実施態様においては、誘電材料層が前記能動部分の実質的に全範囲において各担体箔上へ処理される。前記能動部分全域のコーティングにより、誘電層の処理によって生ずるいかなる変形もスイッチング素子の能動部分全体に亘って均質となることが確保される。さらに、前記能動部分中にプリントされる電極の配列不良によって生ずる不均質な変形も有効に防止される。
【0019】
この実施態様の変形例においては、前記誘電材料層は前記能動部分中の各担体箔上へ処理され、前記能動部分を越えて横方向に延びている。つまり、誘電材料層の外側境界部分が担体箔とスペーサー材料との間に位置している。
【0020】
この実施態様によれば、たとえスペーサー及び担体箔に僅かな配置不良があっても能動部分全域が確実に被覆される。このようにして規格から外れるスイッチング素子の製造を減ずることができる。
【0021】
さらに別の一実施態様においては、前記誘電材料層は担体箔の全面上の各担体箔上へ処理される。この実施態様によれば使用する誘電材料量が増加するが、前述した実施態様による作製方法に比べれば作製方法がかなり簡略化される。
【0022】
極めて簡略かつコスト効率的な作製方法は、例えばスクリーンプリント処理によって前記担体箔上へ誘電材料層をプリントする方法である。かかるプリント方法は当該技術分野では周知であり、高品質な可プリント層を所望の厚さに処理することが可能である。スイッチング素子を広範な用途へ利用するためには、担体箔の機械的特性を変えないように誘電層の厚さを可能な限り薄くすべきであることが理解されるであろう。それゆえ、誘電層の厚さは通常担体箔の厚さよりもずっと薄い。誘電層の可能な厚さの一例として、該厚さは担体箔の厚さの10%の範囲内である。しかしながら、この比率は用途によってかなり変動し得る。さらに、用途及びスイッチング素子に望まれる機械的反応性によっては、誘電層の厚さは前記能動部分全体に亘って均質でなくともよい。別言すれば、スイッチング素子の実施態様によっては、前記誘電材料層の厚さが前記能動部分全体に亘って異なっていてもよい。
【0023】
本発明が単純膜スイッチやさらには感圧スイッチに適用可能であることは熟練技術者の認識するところである。単純膜スイッチの場合、第一電極が第一担体箔の内面上へ配置され、第二電極が前記第一電極に対して対向位置関係にある第二担体箔の内面上へ配置される。単純スイッチの変形例においては、第一及び第二電極が前記第一担体箔の内面上へ並べて配置され、また分路素子が前記第一及び第二電極に対して対向位置関係にある第二担体箔の内面上へ配置される。前記2本の電極は、例えば櫛形状の輪郭であって、かつ2本の電極の歯が互いに齟齬する形状でもよい。箔形圧力センサは上述したスイッチと同様に形状化される。前記スイッチと異なり、前記第一及び第二電極の少なくとも一方は感圧抵抗性材料で被覆される。また代替の実施態様においては、前記分路素子は抵抗性材料から成る。これら感圧抵抗性あるいは半導電性材料によって、これら圧力センサ間の抵抗は前記2つの担体箔が共に押しつけられた圧力によって左右される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら記載したいくつかの非限定的実施態様の説明によって本発明についてさらに明らかにする。
【0025】
図面には、本発明に係る2つの能動部分12及び14を有する単純膜スイッチ10の種々実施態様が図示されている。スイッチング素子10には、スペーサー20を用いて一定間隔を空けて配置された第一担体箔16及び第二担体箔18が含まれている。前記スペーサー20には、該スペーサー20がスイッチング素子10の能動部分12及び14を囲むように2つの欠截部あるいは切抜き部22が設けられている。電極24は、担体箔が共に押しつけられたならば該電極24間に電気接触が確立されるように、各能動部分12及び14中の担体箔16及び18の内面上へ配置される。図示された実施態様においては、電極24の一方は前記対向位置関係にある担体箔の一方へ配置されている。しかしながら、別の配置方式、例えば2つの電極を担体箔の一方の上へ間隔を空けて配置し、分路素子を第二担体箔上へ配置することも可能であることに留意すべきである。
【0026】
誘電材料層26を担体箔と各電極との間の各担体上へ処理する。この誘電材料は好ましくは少なくとも電極部位全体中の担体箔上へ、すなわち担体箔上へプリントされる電極が限界を画する概略凸状の輪郭によって限定される部位にプリントされる。次いで、複雑な形状であってもよい電極が誘電材料層上へプリントされる。
【0027】
図1に示した実施態様においては、各能動部分12または14の全域に亘って担体箔16及び18が誘電層26で被覆されている。図2に示した実施態様においては、前記能動部分の全域中の各担体箔上へ誘電材料層26が処理され、この誘電材料層は前記能動部分を越えて横方向へ延びている。従って、この誘電材料層はスイッチング素子のスペーサー部分にまで延びている。図3に示した実施態様においては、誘電材料層は各担体箔の全表面を覆うように延びている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】誘電材料で被覆された2つの能動部分を有するスイッチング素子の一実施態様を示す図である。
【図2】誘電材料層が能動部分を越えて伸びている、2つの能動部分を有するスイッチング素子の一実施態様を示す図である。
【図3】誘電材料層が担体箔全体を被覆する、2つの能動部分を有するスイッチング素子の一実施態様を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10:スイッチング素子
12、14:能動部分
16:第一担体箔
18:第二担体箔
20:スペーサー
22:欠截部または切抜き部
24:電極
26:誘電材料層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子の能動部分を画成する少なくとも1つの切抜きを含むスペーサーを用いて互いに一定間隔を空けて配置される第一担体箔及び第二担体箔、及び
前記第一及び第二担体箔間のスイッチング素子の能動部分に対して作用する圧力に反応して第一及び第二担体箔がそれら弾性担体箔の反発力に反して共に押しつけられて少なくとも2本の電極間に電気接触が確立されるようにスイッチング素子の能動部分内に配置される前記少なくとも2本の電極を備える箔形スイッチング素子であって、
誘電材料層が担体箔と該担体箔上へ配置される電極との間の第一担体箔上へ誘電材料を処理して成り、前記誘電材料層によって前記第一担体箔上へ配置される電極のほぼ外周によって画成される第一担体箔の部位が少なくとも被覆されることを特徴とする前記箔形スイッチング素子。
【請求項2】
誘電材料層が第二担体箔と前記第二担体箔上へ配置される電極との間の前記第二担体箔上へ処理されることを特徴とする請求項1項記載の箔形スイッチング素子。
【請求項3】
前記誘電材料層が前記能動部分の実質的に各担体箔全域へ処理されることを特徴とする請求項1または2項記載の箔形スイッチング素子。
【請求項4】
前記誘電材料層が、前記能動部分の各担体箔全域へ処理され、前記能動部分を越えて横方向へ延びていることを特徴とする請求項1または2項記載の箔形スイッチング素子。
【請求項5】
前記誘電材料層が前記担体箔の全面上の各担体箔上へ処理されることを特徴とする請求項1または2項記載の箔形スイッチング素子。
【請求項6】
前記誘電材料層が前記担体箔上へプリントされることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の箔形スイッチング素子。
【請求項7】
前記誘電材料層の厚さが能動部分の全体に亘って変化することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の箔形スイッチング素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−509336(P2006−509336A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558115(P2004−558115)
【出願日】平成15年12月8日(2003.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2003/050962
【国際公開番号】WO2004/053907
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(503150594)アイイーイー インターナショナル エレクトロニクス アンド エンジニアリング エス.エイ. (56)
【氏名又は名称原語表記】IEE INTERNATIONAL ELECTRONICS & ENGINEERING S.A.
【Fターム(参考)】