説明

誘電泳動力を用いて電気泳動ディスプレイを駆動する方法

【課題】誘電泳動力を用いて電気泳動ディスプレイを駆動する方法を提供すること。
【解決手段】誘電泳動ディスプレイは、複数の中間周波数状態を経由して低周波数閉状態から高周波数開状態へ転換され、そのような複数の周波数ステップの使用は、遷移中のフリッカを減少させる。誘電泳動ディスプレイの第2のタイプは、光透過電極を有し、それを通って誘電泳動媒体が見られ得、導体は、いくつかの点において光透過電極に接続され、光透過電極内の電圧変化を減少させ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、
(a)米国特許第7,116,466号と、
(b)米国特許出願公開第2006/0038772号と、
(c)米国特許出願公開第2005/0213191号と、
(b)米国特許第7,259,744号と、
(c)米国特許第7,193,625号と
に関する。
【0002】
本発明は、誘電泳動力(dieelectrophoretic force)を用いて電気泳動ディスプレイを駆動する方法に関する。より詳細には、本発明は、電気泳動力および誘電泳動力を用いて様々な光学状態間の粒子ベース電気泳動ディスプレイを切り替える駆動方法に関する。本発明のディスプレイは、シャッタモードディスプレイ(この用語は下記に定義される)または光変調器、すなわち、可変透過窓、鏡、および、光量もしくは通過する他の電磁放射を変調するように設計された類似のデバイスのいずれかであり得、便宜上、用語「光」は、本明細書において普通に用いられるが、この用語は、不可視波長における電磁放射を含む広い意味で理解されるべきである。例えば、下記に言及されるように、本発明は、建物内の温度を制御する赤外線放射を変調し得る窓を提供するように適用され得る。より詳細には、本発明は、電気光学ディスプレイおよび光変調を制御する粒子ベース電気泳動媒体を用いる光変調器に関する。
【背景技術】
【0003】
用語「グレー状態」は、本明細書において画像技術における従来の意味で用いられ、画素の2つの極端光学状態の中間の状態をいい、これらの2つの極端状態の間の黒−白の遷移を必ずしも意味するものではない。例えば、下記に参照される特許および公開された出願のいくつかは、極端状態が白および濃い青であり、その結果、中間の「グレー状態」が実際は薄い青である電気泳動ディスプレイを説明する。実際に2つの極端状態間の遷移は、色変化では全くない場合があり、光伝送、反射率、ルミネッセンス、または、機械読取り用のディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射率の変化の意味での擬似色などの、ディスプレイの他の光学特性における変化であり得る。
【0004】
用語「双安定」および「双安定性」は、当該分野における従来の意味で用いられ、少なくとも1つの光学特性において異なる第1よび第2の表示状態を有する表示要素を備えているディスプレイであって、任意の所定の要素が有限継続時間のアドレッシングパルスによって第1または第2の表示状態のいずれかになるように駆動された後に、アドレッシングパルスが終了後、その状態が、表示要素の状態を変化させるのに必要なアドレッシングパルスの最小限の継続時間である、例えば少なくとも4回などの少なくとも数回持続するようなディスプレイをいう。グレースケールが可能ないくつかの粒子ベース電気泳動ディスプレイが極端な黒および白状態においてのみならず、中間のグレー状態においても安定であることが特許文献1に示され、一部の他のタイプの電気光学ディスプレイについても同じことがいえる。このタイプのディスプレイは、双安定というよりもむしろ「多安定」と適切に呼ばれる。但し、便宜上、用語「双安定」は、本明細書において双安定ディスプレイおよび多安定ディスプレイの両方を含むように用いられ得る。
【0005】
用語「インパルス」は、本明細書において時間に対する電圧の積分である従来の意味で用いられる。しかしながら、一部の双安定電気光学媒体は、電荷変換器として働き、そのような媒体に関して、インパルスの代替の定義、すなわち時間に対する電流の積分(これは印加された全電荷に等しい)が用いられ得る。媒体が電圧−時間インパルス変換器として働くかまたは電荷インパルス変換器として働くかどうか従って、インパルスの適切な定義が用いられるべきである。
【0006】
複数の荷電粒子が電界の作用により流体を通って動く、粒子ベース電気泳動ディスプレイは、長年の真剣な研究開発の主題であった。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較した場合、良好な明るさおよびコントラスト、広い観察角、状態の双安定性、および低い消費電力という属性を有し得る。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期の画像品質の問題により、これらのディスプレイの広範囲の使用が妨げられてきた。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は定着する傾向があり、これらのディスプレイに関する不適切な耐用年数という結果となる。
【0007】
上記のように、電気泳動媒体は流体の存在を必要とする。ほとんどの先行技術の電気泳動媒体において、この流体は液体であるが、電気泳動媒体は、気体の流体を用いて生成され得る。例えば、Kitamura,T.らの「Electrical toner movement for electronic paper−like display」,IDW Japan,2001,Paper HCS1−1、およびYamaguchi,Y.らの「Toner display using insulative particles charged triboelectrically」,IDW
Japan,2001,Paper AMD4−4)を参照されたい。また特許文献2;欧州特許出願第1,462,847号;同第1,482,354号;同第1,484,635号;同第1,500,971号;同第1,501,194号;同第1,536,271号;同第1,542,067号;同第1,577,702号;同第1,577,703号;および同第1,598,694号;ならびに特許文献3;特許文献4;および特許文献5を参照されたい。そのような気体ベース電気泳動媒体は、例えば媒体が垂直面に配置される符号においてそのような定着を許容する配向に媒体が用いられる場合、液体ベース電気泳動媒体と同じ種類の、粒子定着による問題を受けやすいように見える。実際に粒子定着は、液体ベース電気泳動媒体におけるより気体ベース電気泳動媒体において深刻な問題であるように見える。なぜなら液体懸濁流体と比較して気体懸濁流体の低い粘性は、電気泳動粒子をより急速に定着させるからである。
【0008】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡されるかまたはそれらの名において譲渡された、カプセル化された電気泳動媒体を説明する多数の特許および出願が公開されている。そのようなカプセル化された媒体は多数の小さなカプセルを備え、該カプセル自体の各々は液体懸濁媒体において懸濁する電気泳動的に可動性の粒子を含む内部相と、内部相を囲むカプセル壁とを備えている。典型的には、カプセルはそれ自体、ポリマーバインダ内に保持され、2つの電極間に位置を決められるコヒーレント層を形成する。このタイプのカプセル化された媒体は、例えば次の文献に説明されている。米国特許第5,930,026号;同第5,961,804号;同第6,017,584号;同第6,067,185号;同第6,118,426号;同第6,120,588号;同第6,120,839号;同第6,124,851号;同第6,130,773号;同第6,130,774号;同第6,172,798号;同第6,177,921号;同第6,232,950号;同第6,249,271号;同第6,252,564号;同第6,262,706号;同第6,262,833号;同第6,300,932号;同第6,312,304号;同第6,312,971号;同第6,323,989号;同第6,327,072号;同第6,376,828号;同第6,377,387号;同第6,392,785号;同第6,392,786号;同第6,413,790号;同第6,422,687号;同第6,445,374号;同第6,445,489号;同第6,459,418号;同第6,473,072号;同第6,480,182号;同第6,498,114号;同第6,504,524号;同第6,506,438号;同第6,512,354号;同第6,515,649号;同第6,518,949号;同第6,521,489号;同第6,531,997号;同第6,535,197号;同第6,538,801号;同第6,545,291号;同第6,580,545号;同第6,639,578号;同第6,652,075号;同第6,657,772号;同第6,664,944号;同第6,680,725号;同第6,683,333号;同第6,704,133号;同第6,710,540号;同第6,721,083号;同第6,724,519号;同第6,727,881号;同第6,738,050号;同第6,750,473号;同第6,753,999号;同第6,816,147号;同第6,819,471号;同第6,822,782号;同第6,825,068号;同第6,825,829号;同第6,825,970号;同第6,831,769号;同第6,839,158号;同第6,842,167号;同第6,842,279号;同第6,842,657号;同第6,864,875号;同第6,865,010号;同第6,866,760号;同第6,870,661号;同第6,900,851号;同第6,922,276号;同第6,950,200号;同第6,958,848号;同第6,967,640号;同第6,982,178号;同第6,987,603号;同第6,995,550号;同第7,002,728号;同第7,012,600号;同第7,012,735号;同第7,023,420号;同第7,030,412号;同第7,030,854号;同第7,034,783号;同第7,038,655号;同第7,061,663号;同第7,071,913号;同第7,075,502号;同第7,075,703号;同第7,079,305号;同第7,106,296号;同第7,109,968号;同第7,110,163号;同第7,110,164号;同第7,116,318号;同第7,116,466号;同第7,119,759号;同第7,119,772号;同第7,148,128号;同第7,167,155号;同第7,170,670号;同第7,173,752号;同第7,176,880号;同第7,180,649号;同第7,190,008号;同第7,193,625号;同第7,202,847号;同第7,202,991号;同第7,206,119号;同第7,223,672号;同第7,230,750号;同第7,230,751号;同第7,236,790;および同第7,236,792号;ならびに米国特許出願公開第2002/0060321号;同第2002/0090980号;同第2003/0011560号;同第2003/0102858号;同第2003/0151702号;同第2003/0222315;同第2004/0094422号;同第2004/0105036号;同第2004/0112750号;同第2004/0119681号;同第2004/0136048号;同第2004/0155857号;同第2004/0180476号;同第2004/0190114号;同第2004/0196215号;同第2004/0226820号;同第2004/0257635号;同第2004/0263947号;同第2005/0000813号;同第2005/0007336号;同第2005/0012980号;同第2005/0017944号;同第2005/0018273号;同第2005/0024353号;同第2005/0062714号;同第2005/0067656号;同第2005/0099672号;同第2005/0122284号;同第2005/0122306号;同第2005/0122563号;同第2005/0134554号;同第2005/0151709号;同第2005/0152018号;同第2005/0156340号;同第2005/0179642号;同第2005/0190137号;同第2005/0212747号;同第2005/0213191号;同第2005/0219184号;同第2005/0253777号;同第2005/0280626号;同第2006/0007527号;同第2006/0024437号;同第2006/0038772号;同第2006/0139308号;同第2006/0139310号;同第2006/0139311号;同第2006/0176267号;同第2006/0181492号;同第2006/0181504号;同第2006/0194619号;同第2006/0197736号;同第2006/0197737号;同第2006/0197738号;同第2006/0202949号;同第2006/0223282号;同第2006/0232531号;同第2006/0245038号;同第2006/0256425号;同第2006/0262060号;同第2006/0279527号;同第2006/0291034号;同第2007/0035532号;同第2007/0035808号;同第2007/0052757号;同第2007/0057908号;同第2007/0069247号;同第2007/0085818号;同第2007/0091417号;同第2007/0091418号;同第2007/0097489号;同第2007/0109219号;同第2007/0128352;および同第2007/0146310号;ならびに国際出願公開第00/38000号;同第00/36560;同第00/67110号;および同第01/07961号;ならびに欧州特許第1,099,207 Bl号;および同第1,145,072 Bl号。
【0009】
カプセル化された公知の電気泳動媒体およびカプセル化されない公知の電気泳動媒体の両方は、それぞれ以下に便宜上「シングル粒子」および「デュアル粒子」と呼ばれる2つの主要なタイプに分けられ得る。両タイプの完全な説明は、特許文献6に見出され得る。本質的に、シングル粒子媒体は、少なくとも1つの光学特性が粒子の光学特性とは異なる懸濁媒体において懸濁するシングルタイプの電気泳動粒子のみを有し、一方、デュアル粒子媒体は、少なくとも1つの光学特性、および色づけされ得ないかまたは色づけされ得るが典型的には色づけされ得ない懸濁流体において異なる2つの異なるタイプの粒子を有する。2つのタイプの粒子は、電気泳動易動度において異なる。シングル粒子電気泳動ディスプレイおよびデュアル粒子電気泳動ディスプレイの両方は、ディスプレイの2つの極端光学状態の中間の光学特性を有する中間のグレー状態が可能であり得る。
【0010】
上記の特許および出願の多くが認識することは、カプセル化された電気泳動媒体において別個のマイクロカプセルを囲む壁が連続層によって置き換えられ得、従っていわゆる「ポリマー分散電気泳動ディスプレイ」を生成し、該ポリマー分散電気泳動ディスプレイにおいて、電気泳動媒体が、電気泳動流体の複数の別個の小滴と、ポリマー材料の連続相とを備えていること、およびそのようなポリマー分散電気泳動ディスプレイ内の電気泳動流体の別個の小滴が、どの別個のカプセル膜も各個々の小滴に関係しないとしても、カプセルまたはマイクロカプセルとして見なされ得ることである。例えば、上記の米国特許第6,866,760号を参照されたい。従って、本出願の目的のために、そのようなポリマー分散電気泳動媒体は、カプセル化された電気泳動媒体の亜種として見なされる。
【0011】
関係のあるタイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイにおいて、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されないで、代わりに典型的にはポリマー膜である担体媒体内に形成される複数の空洞内に保持される。例えば、両方ともSipix Imaging,Inc.に譲渡された米国特許第6,672,921号および同第6,788,449号を参照されたい。
【0012】
電気泳動媒体は、しばしば不透明であり(なぜなら、例えば多くの電気泳動媒体において、粒子がディスプレイを通る可視光の透過を実質的に遮断するので)、反射モードで動作するが、多くの電気泳動ディスプレイは、1つの表示状態が実質的に不透明であり、1つが光透過であるいわゆる「シャッタモード」で動作するように作られ得る。例えば、上記の米国特許第6,130,774号および同第6,172,798号、ならびに米国特許第5,872,552号、同第6,144,361号、同第6,271,823号、同第6,225,971号および同第6,184,856号を参照されたい。電気泳動ディスプレイに類似しているが電界強度における変動に依存する誘電泳動ディスプレイは、類似したモードで動作し得る。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイもまた、シャッタモードで動作することが可能であり得る。
【0013】
カプセル化された電気泳動ディスプレイは、典型的には、従来の電気泳動デバイスのクラスタおよび定着故障モードを被ることなく、種々様々な柔軟性そして剛性のある基板に表示を印刷するかまたはコーティングする能力などのさらなる利点を提供する。(語「印刷」の使用は、パッチダイコーティング、スロットまたは押出しコーティング、スライドまたはカスケードコーティング、カーテンコーティングなどの前計量コーティングと、ナイフオーバロールコーティング、前ロールおよび逆ロールコーティングなどのロールコーティングと、グラビアコーティングと、浸漬コーティングと、スプレーコーティングと、メニスカスコーティングと、スピンコーティングと、ブラシコーティングと、エアナイフコーティングと、シルクスクリーン印刷プロセスと、静電印刷プロセスと、熱印刷プロセスと、インクジェット印刷プロセスと、電気泳動蒸着(米国特許出願公開第2004/0226820号を参照されたい)と、他の類似の技術とを含むがこれらに限定されないすべての形態の印刷およびコーティングを含むように意図される。)従って、結果として生じるディスプレイは柔軟性があり得る。さらに、ディスプレイ媒体は(様々な方法を用いて)印刷され得るので、ディスプレイ自体は安価に作られ得る。
【0014】
シャッタモードディスプレイの1つの潜在的に重要な用途は、光変調器、すなわち、可変透過窓、鏡、および、光量もしくは通過する他の電磁放射を変調するように設計された類似のデバイスとしてである。例えば、本発明は、建物内の温度を制御する赤外線放射を変調し得る窓を提供するように適用され得る。
【0015】
上記の2005/0213191において論議されているように、電気泳動媒体に対する1つの可能性のある重要なマーケットは、可変の光透過を有する窓である。建物および車両のエネルギパフォーマンスが益々重要になっているので、電気泳動媒体は、窓のコーティングとして用いられ、窓を通って透過した入射放射線の一部分が電気泳動媒体の光学状態を変化させることによって電子的に制御されることを可能にし得る。そのような電子制御は、例えば、ウィンドウブラインドを用いることによる入射放射線の「機械式」の制御に取って代わり得る。建物におけるそのような電子「可変透過率」(「VT」)技術の効果的なインプリメンテーションは、(1)暑い気候時の望まれない暖房効果の減少、従って、冷房に必要とするエネルギ量と、空調設備のサイズと、ピーク電気需要とを減少させることと、(2)自然の日光の使用の増加、従って、照明に用いられるエネルギとピーク電気需要とを減少させることと、(3)熱的および視覚的の両方の快適性を増加することによる占有者の快適性の増加とを提供することが期待される。囲まれた容積に対するガラス面の比率が典型的な建物よりかなり大きい自動車において、さらにより大きい利益が生ずることが期待される。特に自動車においてVT技術の効果的なインプリメンテーションは、上記の利益のみならず、(1)ドライブの安全性の増加と、(2)グレアの減少と、(3)ミラー性能の向上(ミラーに電気光学コーティングを用いることによる)と、(4)機能的ディスプレイを用いる能力の増加ともまた提供することが期待される。VT技術の他の可能性のある用途は、電子デバイスにおけるプライバシーガラスとグレア防止とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第7,170,670号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0001810号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/090626号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2004/079442号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2004/001498号パンフレット
【特許文献6】国際公開第02/093245号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、電気泳動力および誘電泳動力を用いる電気泳動ディスプレイのための改良された駆動方式を提供するように努める。本発明は、特に但し専用ではないが、光変調器として用いられるようなディスプレイにおいて使用することが意図される。
【0018】
光変調器を含む電気泳動シャッタモードディスプレイがその開光学状態と閉光学状態との間を移動するときの電気泳動粒子が動く正確な方法に対して、これまで比較的にほとんど考慮がなされなかったように見える。上記の2005/0213191において論議されるように、開状態は電気泳動粒子の電界依存集合によってもたらされ、そのような電界依存集合は、カプセルもしくはマイクロセルの側壁への電気泳動粒子の誘電泳動運動、または「連鎖」すなわちカプセルもしくはマイクロセル内の電気泳動粒子のストランドの形成の形態を取り得るか、またはおそらく他の方法をとり得る。達成された集合の正確な種類に関係なく、電気泳動粒子のそのような電界依存集合は、観察者がそれを通して媒体を見る観察面に垂直に見るように、粒子が各カプセルまたはマイクロセルの観察領域のほんの小さな部分を占有するようにさせる。従って、透明状態において、各カプセルまたはマイクロセルの観察領域の主要部分には電気泳動粒子がなく、光はそこを自由に通過し得る。対照的に、不透明状態において、電気泳動粒子は、各カプセルまたはマイクロセルの全観察可能領域に分散され(粒子は、懸濁流体の容量全体に均一に分散され得るかまたは電気泳動層の1つの主要な表面に隣接した層に集中され得)、その結果、光は通過し得ない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の2006/0038772は、誘電泳動ディスプレイを駆動する様々な方法を説明する。特に、この公開は、誘電泳動ディスプレイを動作する方法を説明し、該方法は、少なくとも1つの空洞であって、空洞は視覚面を有する、空洞を画定する壁を有する基板と、空洞内に含まれる流体と、流体内の複数の少なくとも1種類の粒子とを提供することと、粒子が視覚面の小さい方の一部分のみを占有するように粒子の誘電泳動移動を引き起こすことに効果的な電界を基板に印加することとを包含する。
【0020】
この公開はまた、誘電泳動ディスプレイを動作する方法を説明し、該方法は、流体と流体内に複数の少なくとも1種類の粒子とを備えている誘電泳動媒体を提供することと、第1の周波数を有する電界を媒体に印加し、それによって粒子が電気泳動動作を受けるようにして、第1の光学状態を生成することと、第1の周波数より高い第2の周波数を有する電界を媒体に印加して、それによって粒子が誘電泳動動作を受けるようにすることと、第2の周波数より高い第3の周波数を有する電界を媒体に印加して、それによって粒子が誘電泳動動作を受けるようにし、第1の光学状態とは異なる第2の光学状態を生成することとを包含する。この方法は、「変化する周波数」方法と呼ばれる。そのような方法において、第1の周波数は約10Hz以下であり得、第2の周波数は少なくとも約100Hzであり得る。好都合にも電界は、実質的に方形波または正弦波の形態を有する。但し、他の波形はもちろん用いられ得る。第2の周波数電界が第1の周波数電界より大きな振幅を有することが有利であり得る。
【0021】
この変化する周波数方法において、どの電界も印加されないかまたは第2の周波数電界の波形とは異なる波形が印加される1つ以上の期間によって分離された第2の周波数電界を印加する2つ以上の期間を有する「割り込まれ方法」で、第2の周波数電界を印加することが賢明であり得る。従って、変化する周波数方法の一形態において、第2の周波数電界の印加は、第1の期間に第2の周波数電界を印加することと、その後期間にゼロ電界を印加することと、その後第2の期間に第2の周波数電界を印加することとによって達成される。変化する周波数方法の別の形態において、第2の周波数電界の印加は、第1の振幅で第1の期間に第2の周波数電界を印加することと、その後第1の振幅より小さい第2の振幅で期間に第2の周波数電界を印加することと、その後第1の振幅で第2の期間に第2の周波数電界を印加することとによって達成される。変化する周波数方法の第3の形態において、第2の周波数電界の印加は、第1の期間に第2の周波数電界を印加することと、その後期間に第2の周波数より小さい周波数を有する電界を印加することと、その後第2の期間に第2の周波数電界を印加することとによって達成される。
【0022】
この公開はまた、誘電泳動ディスプレイを動作する方法を説明し、該方法は、流体と流体内に複数の少なくとも1種類の粒子とを備えている誘電泳動媒体を提供することと、高振幅低周波数成分と低振幅高周波数成分とを有する電界を媒体に印加し、それによって粒子が電気泳動動作を受けるようにして、第1の光学状態を生成することと、低振幅低周波数成分と高振幅高周波数成分とを有する電界を媒体に印加して、それによって粒子が誘電泳動動作を受けるようにし、第1の光学状態とは異なる第2の光学状態を生成することとを包含する。この方法は、「変化する振幅」方法と呼ばれる。そのような方法において、低周波数成分は約10Hz以下の周波数を有し、高周波数成分は少なくとも約100Hzの周波数を有する。成分は、実質的に方形波または正弦波の形態を有し得る。
【0023】
消費者は、できる限り広い光学透過範囲を有する可変透過窓を所望する。なぜならこれは、可変透過窓によって制御される光レベルを変化させる最大の自由を消費者に与えるか、または逆にそのような窓によって提供されるプライバシーの程度を消費者に与えるからである。十分に不透過の「閉」状態の窓を提供することは通常ほとんど困難ではないので(電気泳動媒体は、この閉状態において本質的に不透明となるように容易に公式化され得る)、光学透過範囲を最大にすることは通常、閉状態における不透明の任意の所望の程度に対する「開」状態透過を最大にすることになる。開状態透過に影響を及ぼす要因は、材料と、ディスプレイ構造および窓を形成するために用いられる生産プロセスと、窓をその開状態および閉状態に駆動するために用いられる方法とを含む。
【0024】
既に言及されたように、上記の2006/0038772は、誘電泳動ディスプレイのための変化する周波数駆動方法を説明し、該方法において、ディスプレイは、電気泳動粒子の電気泳動移動を引き起こす第1の低周波数および電気泳動粒子の誘電泳動移動を引き起こす第2の高周波数で駆動される。そのような駆動方法は、電気泳動粒子が集合隣接カプセル、小滴、またはマイクロセル壁を形成するようにし得、かつ/または誘電泳動媒体内に電気泳動粒子の連鎖を形成させ得る。一定の高駆動周波数を用いてディスプレイをその開状態に駆動することは、ゆるく詰められた集合体、その結果、最適開状態未満の光学透過を生成する傾向があることが見出された。この同時係属の出願に説明された様々な方法を用いることは、より密集して詰められた集合体および従ってより透過的な開状態を生成し得る。しかしながら、駆動周波数における突然の大きな変化を用いる方法は、ディスプレイの観察者の目に見える厄介なフリッカ(すなわち、光学透過の急速な変化)を引き起こし得ることが見出された。
【0025】
上記の米国特許第7,116,466号および公開第2006/0256425号は、懸濁流体に懸濁する複数の荷電粒子を有する電気泳動媒体と、電気泳動媒体の向かい合う側に配置される2つの電極であって、電極のうちの少なくとも1つは光透過であり、視覚面を通して観察者がディスプレイを見得る視覚面を形成し、ディスプレイは、光が電気泳動媒体を通過し得ないように荷電粒子が実質的に視覚面全体に分散される閉光学状態と、光が電気泳動媒体を通過し得るように電極間に延びる連鎖を電気泳動粒子が形成する開光学状態とを有し、ディスプレイは、電極と電気泳動媒体との間に配置された絶縁層をさらに備えている、電極とを備えている、電気泳動ディスプレイを説明する。この特許および公開は、ディスプレイが、電圧を2つの電極に印加する電圧供給手段を備え得、電圧供給手段は、ディスプレイをその開光学状態に駆動するのに効果的な高周波数交流電流電圧とディスプレイをその閉光学状態に駆動するのに効果的な低周波数交流電流電圧または直流電流電圧との両方を供給するように配置され、電圧供給手段は、高周波数交流電流電圧および低周波数交流電流電圧または直流電流電圧の中間の周波数を有する少なくとも1つの中間周波数交流電流電圧を供給するように配置され得、中間周波数交流電圧は、ディスプレイの開光学状態と閉光学状態との中間のグレー状態にディスプレイを駆動するのに効果的であることを述べている。
【0026】
本発明は、上記の米国特許第7,116,466号に説明される可変周波数駆動方法の修正を提供し、フリッカを減少させるかまたは除去する。本発明の修正された駆動方法はまた、開状態において光学透過を改善し得る。
【0027】
本発明はまた、誘電泳動ディスプレイにおいてディスプレイ電極を電源に接続するために用いられる導体を修正することに関する。
【0028】
従って、一局面において、本発明は、誘電泳動ディスプレイを動作する方法を提供し、該方法は、
流体と流体内に複数の少なくとも1種類の粒子とを備えている誘電泳動媒体を提供することと、
第1の周波数を有する電界を媒体に印加し、それによって粒子が電気泳動動作を受けるようにして、第1の光学状態を生成することと、
第1の周波数より高い第2の周波数を有する少なくとも1つの電界を媒体に印加して、それによって粒子が誘電泳動動作を受けるようにすることと、
第2の周波数より高い第3の周波数を有する電界を媒体に印加して、それによって粒子が誘電泳動動作を受けるようにし、第1の光学状態とは異なる第2の光学状態を生成することと
を包含する。
【0029】
本発明の方法は、複数の中間周波数電界が第1の周波数電界と第3の周波数電界との間で用いられ、その結果、遷移範囲内(下記に定義されるように)において、連続する印加された電界間のどの周波数ステップも第1の周波数と第3の周波数との間の全周波数差の10パーセントを超えないことを特徴とする。
【0030】
本発明のこの方法は、便宜上以下に「周波数ステップ方法」呼ばれ得る。既に示されたように、この周波数ステップ方法は、粒子の電気泳動動作を生成するために用いられる第1の低周波数(これは直流であり得る)電界と誘電泳動動作を生成するために用いられる第3の高周波数との間の複数の第2または中間の周波数を利用する。換言すると、周波数ステップ方法は、ディスプレイの低周波数(閉)状態から高周波数(開)状態に動くとき、少なくとも3つの「周波数ステップ」を伴う。しかしながら、4つ以上の周波数ステップがしばしば望ましい。
【0031】
可変透過窓または類似の光変調器として用いられる誘電泳動ディスプレイの駆動を最適化するために、ディスプレイの切り替え中にディスプレイの動作電圧と印加された駆動周波数対時間の変化との両方を綿密に制御する必要があることが見出された。VT窓は典型的には大面積のディスプレイであり、用いられるVT媒体は比較的薄く、媒体の各側の電極は(例えば)100μm離れていて、電極間に相当な静電容量があり、特に高周波数動作中に、この静電容量を充電しそして放電するのにかなりの電力が消散され得る。電力消散は動作電圧の平方に比例するので、良好な開状態および閉状態に調和して動作電圧をできるだけ低く保つことが望ましい。実際に、動作電圧が増加すると、開状態および閉状態は特定の電圧まで確実に改善し、その後は、電圧のさらなる増加は、開状態および閉状態におけるさらなる実質的な改善を生成しないことが見出された。従って最適駆動電圧を定義することが可能であり、それは、より高い駆動電圧によって達成されることが可能である最大および最小の開状態透過および閉状態透過から1パーセント以下だけ異なる開状態および閉状態を達成することが必要な最小駆動電圧である。実際に最適駆動電圧は、通常約100〜150ボルトであることが見出される。例えば、一シリーズの実験において、VTディスプレイは、60ボルトおよび低周波数において10パーセントの閉状態透過ならびに同じ電圧および高周波数において60パーセントの開状態透過が与えられることが見出された。対応する透過は、100ボルトでそれぞれ8および62パーセントであり、120ボルトでそれぞれ5パーセントおよび65パーセントであり、200ボルトでそれぞれ4および66パーセントである。(200ボルトを超えては、開状態および閉状態において本質的にさらなる変化は観察されなかった)。このディスプレイにおいて、最適駆動電圧は120ボルトである。
【0032】
VTディスプレイの開状態と閉状態との間の遷移は、しばしば非常に非対称的であり、その結果、ディスプレイの閉は、同じディスプレイの開より実質的に低い電圧を用いて達成され得ることに注意すべきである。これらの状況において、1つは開のためおよび1つは閉のためである2つの異なる最適駆動電圧を定義することは可能であり、事実、VTディスプレイは、実質的なエネルギ節約ではあるが、駆動回路のいくらかの追加コストのかかる、開および閉のための異なる駆動電圧を用いて便利に動作され得る。以下にそのような状況において、「最適駆動電圧」は、開最適駆動電圧および閉最適駆動電圧の高い方をいう。
【0033】
任意の与えられた駆動電圧に対して、厄介なフリッカなしで最小の最適透過が生成される場合、最適閉状態周波数を定義することが可能であることも見出された。以下において「最適閉状態周波数」は、上記に定義されるように最適駆動電圧で測定された最適閉状態周波数をいう。典型的には、最適閉状態周波数は、15Hzと100Hzとの間であり、最も頻繁には20Hzと40Hzとの間である。
【0034】
同様に、最小周波数として最適開状態周波数を定義することが可能であり、最小周波数は、最適駆動電圧で印加されたとき、上記に定義されるように、より高い周波数および同じ最適駆動電圧で達成され得る最大光学透過の1パーセント以内の光学透過を生成する。最適開状態周波数をできる限り低く保つことは、上記の理由により、動作中のエネルギ消費を最小にするためにもちろん望ましい。
【0035】
本発明の周波数ステップ方法において、特定の範囲内で時間経過による周波数の変化が最適開状態を確実にするように注意深く制御されるべきである特定の周波数範囲があることが見出された。達成された開状態は、最適閉状態周波数からこの周波数の2倍までの範囲内および最適開状態周波数の2分の1から開状態周波数自体までの範囲内において、典型的には時間の経過による周波数の変化に対して無感度である。しかしながら、最適閉状態周波数の2倍から最適開状態周波数の2分の1までとして実験上定義され得る遷移範囲内において、開状態は、時間経過による周波数の変化に依存して得られる。この遷移範囲内において、周波数ステップは、用いられる最適閉状態周波数と最適開状態周波数との合計周波数差の約10パーセント未満、好ましくは約5パーセント未満、そして最も望ましくは約1パーセント未満であるように小さく保たれるべきである。実際に、遷移範囲内において時間経過による周波数の変化が本質的に連続的となるほど小さいように(例えば、約1Hz)個々の周波数を保つことが望ましいことが見出された。用いられる様々な周波数は、算術級数または幾何級数のいずれかであり得る。
【0036】
遷移範囲外において、周波数ステップは、生成される開状態に実質的に影響を及ぼすことなく、比較的大きくあり得る。例えば、一部の場合において、最適閉状態周波数からこの周波数の2倍(遷移範囲の開始)に単一ステップで跳ぶことおよび最適開状態周波数の2分の1(遷移範囲の終了)から最適開状態周波数に単一ステップで跳ぶことは、生成される開状態に不都合に影響を及ぼさない。
【0037】
既に言及されたように、誘電泳動ディスプレイの開状態と閉状態との間の遷移は、非対称であり、周波数ステッピングの影響は、遷移の方向に従って異なり、開状態の透過は、典型的には閉から開への遷移中に用いられる周波数ステップに対して高感度であり、一方、閉状態の品質は、開から閉への遷移中に用いられる周波数ステップに対して比較的無感度である。このことは、この出願の第1パラグラフにおいて言及された出願に説明されているように、閉状態および開状態の性質に関する本発明者の現在の理解の観点から説明可能である(但し、本発明はこの説明によって決して限定されない)。誘電ディスプレイの閉状態は、誘電粒子がそれを囲む流体において実質的に均一に分散させられるということのみを必要とし、必要な分散は、閉状態を生成するために用いられる低周波数で優位である誘電泳動力によって達成される。ディスプレイを閉じることは、開状態において存在するどのような集合体でも粉砕され、その結果、粒子が閉状態において均一に分散されることを単に必要とし、集合体のそのような粉砕は、実質的に均一の粒子分散が達成される限り、用いられる電圧対時間曲線に対して感度があるようには期待されない。
【0038】
しかしながらディスプレイを開くことは異なる。本質的に、ディスプレイを開くことは、粒子が均一の分散から多数の別個の集合体に動くことを必要とし、良好な開状態を提供するために、集合体はディスプレイ面積のできる限り小さい割合を占有すべきである。実際にこのことは、いくらかの大きな集合体を形成することが望ましいことを意味し、マイクロキャビティディスプレイ(本明細書において、粒子およびそれを囲む流体が連続相内の複数の分離したキャビティ内に閉じ込められるディスプレイを意味するように用いられる用語であり、従ってこの用語はカプセルベースのマイクロセルおよびポリマー分散ディスプレイを含む)の場合において、粒子は、壁から間隔を置いて集合体を形成するよりはむしろキャビティの側壁の方にできる限り動くべきであることを意味する。そのような大きな集合体を形成することは、粒子と粒子の相互作用ならびに電界による個々の粒子の相互作用に依存し、従って、開状態の品質がディスプレイを開く際に用いられる周波数対時間曲線によって影響を及ぼされ得ることは驚くことではない。
【0039】
ディスプレイの開と閉との間の非対称性を考慮すると、本発明の周波数ステップ方法において、2つの遷移に対して同じ周波数対時間曲線が用いられることは必要ではない。事実、少なくとも一部の場合において、ディスプレイを閉じるとき周波数ステップ方法を用いることは必要ではないことがあり得る。なぜなら、開最適周波数から閉最適周波数への直接の転換は、満足な結果を与えるからである。
【0040】
本発明の周波数ステップ方法において、各中間周波数が印加される期間は大きく変化し得る。多数の中間周波数が用いられる場合において、各中間周波数は、連続する周波数変化を刺激するために、非常に短い時間、例えば約0.05秒の間、印加され得る。他の場合において、より長い期間の間、特定の周波数を維持することが有用であり得る。例えば、用いられる駆動回路が周波数の細かい変化を許容しなく、その結果、ほんの限定された数の中間周波数が利用可能である場合、(例えば)0.05秒間隔で遷移範囲外の中間周波数を速くステップし、一方、(例えば)0.5秒または1秒のより長い期間の間、遷移範囲内の中間周波数を維持することが望まれ得る。
【0041】
本発明の周波数ステップ方法において、第1、第2および第3の周波数電界は、すべて実質的に同じ振幅で印加され得るか、またはより高い周波数電界は、より低い周波数電界より大きな振幅で印加され得、その結果、例えば、第3の周波数電界は、第1の周波数電界より大きい振幅で印加され得る。
【0042】
本発明はまた、
流体と流体内に複数の少なくとも1種類の粒子とを備えている誘電泳動媒体と、
誘電泳動媒体に電界を印加するように配置された少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの電極によって印加される電界を制御する電界制御手段であって、電界制御手段は、第1の周波数を有する電界であって、粒子が電気泳動動作を受け第1の光学状態を生成するようにする、電界と、第1の周波数より高い第2の周波数を有する少なくとも1つの電界であって、粒子が誘電泳動動作を受けるようにする、電界と、第2の周波数より高い第3の周波数を有する電界であって、粒子が誘電泳動動作を受けるようにし、第1の光学状態とは異なる第2の光学状態を生成する、電界とを印加するように配置された、電界制御手段と
を備えている誘電泳動ディスプレイを提供する。本発明のディスプレイは、電界制御手段が第1の周波数電界と第3の周波数との間に複数の中間周波数電界を印加するように配置され、その結果、遷移範囲内(本明細書において定義されるように)において、連続する印加された電界間のどの周波数ステップも第1の周波数と第3の周波数との間の合計周波数差の10パーセントを超えないことを特徴とする。
【0043】
本発明のディスプレイは、可変透過窓と、光変調器と、電子ブック読取り装置と、ポータブルコンピュータと、タブレットコンピュータと、セルラ電話と、スマートカードと、標示と、時計と、シェルフラベルまたはフラッシュドライブを備え、本発明はこれらのものに及ぶ。
【0044】
本発明はまた、
流体と流体内に複数の少なくとも1種類の粒子とを備え、粒子は、誘電泳動媒体に電界を印加時に流体を通って可動である、誘電泳動媒体と、
誘電泳動媒体が光透過電極を通って見られ得るように、誘電泳動媒体に隣接して配置された少なくとも1つの光透過電極と、
光透過電極から電源に延びる導体であって、導体は光透過電極よりも高い導電率を有し、導体が少なくとも2つの間隔を置かれた点において光透過電極と接触することを特徴とする、導体と
を備えている誘電泳動ディスプレイを提供する。
【0045】
このタイプのディスプレイは、以下に便宜上、本発明の「マルチポイント接触」ディスプレイと呼ばれ得る。そのような誘電泳動ディスプレイの一形態において、誘電泳動媒体および光透過電極は直角をなし、導体は実質的に電極の各端の中点で光透過電極と接触するように配置される。本発明の誘電泳動ディスプレイは、誘電泳動媒体および光透過電極が十分に大きく、導体が1つの点のみにおいて光透過電極に接続された場合、この単一の接続点から少なくとも200mm離れて、少なくとも1つの点が誘電泳動媒体にあるとき、特に有用である。
【0046】
導体は、光透過電極の実質的に全周囲の周りに延びる導電性トレースの形態を有し得る。
以下に説明される理由により、導体の導電率は重要であり、多くの場合、導体は、約1オーム/平方以下の抵抗率を有するべきである。光透過電極は、インジウム酸化スズを備え得る。電気泳動ディスプレイは、誘電泳動媒体の両側に光透過電極を有する可変透過窓の形態を有し得る。しかしながら、本発明の誘電泳動ディスプレイの使用は、可変透過窓に限定されないで、誘電泳動ディスプレイは、誘電泳動ディスプレイおよび電気誘導ディスプレイがこれまで用いられてきた任意の用途に用いられ得る。従って、例えば、本発明はまた、本発明のディスプレイが備えている電子ブック読取り装置と、ポータブルコンピュータと、タブレットコンピュータと、セルラ電話と、スマートカードと、標示と、時計と、シェルフラベルまたはフラッシュドライブを提供する。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
誘電泳動ディスプレイを動作する方法であって、該方法は、
流体と、該流体内の複数の少なくとも1種類の粒子とを備えている誘電泳動媒体を提供することと、
第1の周波数を有する電界を該媒体に印加し、それによって該粒子が電気泳動動作を受け、第1の光学状態を生成することと、
該第1の周波数より高い第2の周波数を有する少なくとも1つの電界を該媒体に印加して、それによって該粒子が誘電泳動動作を受けるようにすることと、
該第2の周波数より高い第3の周波数を有する電界を該媒体に印加して、それによって該粒子が誘電泳動動作を受け、該第1の光学状態とは異なる第2の光学状態を生成することと
を包含し、
該方法は、複数の中間周波数の電界が該第1の周波数電界と第3の周波数電界との間で用いられ、その結果、(本明細書において定義されるようの)遷移範囲内において、連続する印加された電界間のどの周波数ステップも該第1の周波数と第3の周波数との間の全周波数差の10パーセントを超えないことを特徴とする、方法。
(項目2)
連続する印加された電界間の上記遷移範囲内のどの周波数ステップも、上記第1の周波数と第3の周波数との間の全周波数差の5パーセントを超えない、項目1に記載の方法。
(項目3)
連続する印加された電界間の上記遷移範囲内のどの周波数ステップも、上記第1の周波数と第3の周波数との間の全周波数差の1パーセントを超えない、項目2に記載の方法。
(項目4)
上記遷移範囲内の上記周波数ステップは、該遷移範囲外の周波数ステップより小さい、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記第1、第2および第3の周波数電界はすべて、実質的に同じ振幅で印加される、項目1に記載の方法。
(項目6)
上記第3の周波数電界は、上記第1の周波数電界より大きい振幅で印加される、項目1に記載の方法。
(項目7)
流体と、該流体内の複数の少なくとも1種類の粒子とを備えている誘電泳動媒体と、
該誘電泳動媒体に電界を印加するように配置された少なくとも1つの電極と、
該少なくとも1つの電極によって印加される該電界を制御する電界制御手段であって、該電界制御手段は、第1の周波数を有する電界であって、該粒子が電気泳動動作を受け第1の光学状態を生成するようにする、電界と、該第1の周波数より高い第2の周波数を有する少なくとも1つの電界であって、該粒子が誘電泳動動作を受けるようにする、電界と、該第2の周波数より高い第3の周波数を有する電界であって、該粒子が誘電泳動動作を受けるようにし、該第1の光学状態とは異なる第2の光学状態を生成する、電界とを印加するように配置された、電界制御手段と、
該電界制御手段が該第1の周波数電界と第3の周波数電界との間の複数の中間周波数電界を印加するように配置され、その結果、(本明細書において定義されるような)遷移範囲内において、連続する印加された電界間のどの周波数ステップも該第1の周波数と第3の周波数との間の合計周波数差の10パーセントを超えないことを特徴とするディスプレイと
を備えている、誘電泳動ディスプレイ。
(項目8)
可変透過窓と、光変調器と、電子ブック読取り装置と、ポータブルコンピュータと、タブレットコンピュータと、セルラ電話と、スマートカードと、標示と、時計と、シェルフラベルまたはフラッシュドライブを備えている、項目7に記載のディスプレイ。
(項目9)
流体と、該流体内の複数の少なくとも1種類の粒子とを備えている誘電泳動媒体であって、該粒子は、誘電泳動媒体に電界を印加時に該流体を通って可動である、誘電泳動媒体と、
該誘電泳動媒体が該光透過電極を通って見られ得るように、該誘電泳動媒体に隣接して配置された少なくとも1つの光透過電極と、
該光透過電極から電源に延びる導体であって、該導体は光透過電極よりも高い導電率を有し、該誘電泳動ディスプレイは該導体が少なくとも2つの間隔を置かれた点において光透過電極と接触することを特徴とする、導体と
を備えている、誘電泳動ディスプレイ。
(項目10)
上記誘電泳動媒体および上記光透過電極は直角をなし、上記導体は実質的に該電極の各端の中点で該光透過電極と接触するように配置される、項目9に記載の誘電泳動ディスプレイ。
(項目11)
上記誘電泳動媒体および上記光透過電極は十分に大きく、上記導体が1つの点のみにおいて該光透過電極に接続された場合、該誘電泳動媒体に該1つの点から少なくとも200mm離れて、少なくとも1つの点が該誘電泳動媒体にある、項目9に記載の誘電泳動ディスプレイ。
(項目12)
上記導体は、上記光透過電極の実質的に全周囲の周りに延びる導電性トレースの形態を有する、項目9に記載の誘電泳動ディスプレイ。
(項目13)
上記導体は、約1オーム/平方以下の抵抗率を有する、項目9に記載の誘電泳動ディスプレイ。
(項目14)
光透過電極は、インジウム酸化スズを備えている、項目9に記載の誘電泳動ディスプレイ。
(項目15)
上記誘電泳動媒体の両側に光透過電極を有する可変透過窓の形態である、項目9に記載の誘電泳動ディスプレイ。
(項目16)
光変調器と、電子ブック読取り装置と、ポータブルコンピュータと、タブレットコンピュータと、セルラ電話と、スマートカードと、標示と、時計と、シェルフラベルまたはフラッシュドライブを備えている、項目9に記載のディスプレイ。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】添付図面の図1は、単一の中間周波数のみを用いる先行技術の周波数ステップ方法に関する概略の電圧対時間曲線である。
【図2】図2および図3は、本発明の2つの周波数ステップ方法に関する2つの異なる周波数対時間曲線を示す。
【図3】図2および図3は、本発明の2つの周波数ステップ方法に関する2つの異なる周波数対時間曲線を示す。
【図4】図4は、先行技術ディスプレイの低周波数駆動時の同等の回路および電圧対位置曲線を例示する。
【図5】図5は、図4の同等の回路および電圧対位置曲線に類似した同等および電圧対位置曲線であって、図4における同じ先行技術ディスプレイの高周波数駆動時の状態を示す、曲線を例示する。
【図6】図6は、図5の同等の回路および電圧対位置曲線に類似した同等および電圧対位置曲線であって、本発明のマルチポイント接触ディスプレイの高周波数駆動時の状態を示す、曲線を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
上記のように、本発明は、誘電泳動ディスプレイ(およびこの方法を用いた対応するディスプレイ)ならびにマルチポイント接触ディスプレイを駆動する周波数ステップ方法を提供する。本発明のこれらの2つの局面は、主として以下に別々に説明されるが、単一の物理ディスプレイが本発明の両方の局面を利用し得ることは理解されるべきである。実際に以下に説明される理由により、駆動する周波数ステップ方法を用いるディスプレイがマルチポイント接触アーキテクチャも用いることは有利である。
【0049】
本発明の周波数ステップ方法は、上記の米国特許第7,116,466号の変化する周波数駆動方法の変形である誘電泳動ディスプレイを動作する方法である。本発明の方法において、粒子が電気泳動動作を受け第1の光学状態を生成するようにする低周波数および粒子が誘電泳動動作を受け第1の光学状態とは異なる第2の光学状態を生成するようにする高周波数を用いるのみならず、少なくとも多数の中間周波数も用いて、ディスプレイは駆動される。従って、粒子の電気泳動運動から誘電泳動運動への変化をもたらすのに必要とする周波数の増加は、先行技術の方法における2つのみのステップよりもむしろ一連のステップにおいて引き起される。
【0050】
周波数ステップ方法はほんの少しの周波数ステップを用いて実施され得るが、多数の周波数ステップが用いられることが望ましい。なぜなら(本発明者が発見したことであるが)個々の周波数ステップが小さければ小さいほど、フリッカが観察者によって知覚される可能性は少なくなる。理論的には、別個の周波数ステップがなく、電界の周波数を連続的に変化させることによって、ディスプレイの低周波数閉状態から高周波数開状態への遷移を実行することが望まれ得る。しかしながら、そのような連続的な周波数変化は、典型的には、電気光学的ディスプレイを駆動するために通常用いられるタイプの駆動回路に関して実行可能ではない。従って、実際には周波数ステップ方法は通常、連続して印加される別個の周波数を用いて実行されるが、それでも、個々の周波数ステップが小さく保たれ、その結果、誘電泳動媒体が駆動周波数において事実上徐々の増加を受けることが望ましい。
【0051】
上記のように、各周波数が印加される期間もまた、重要である。但し、各周波数の印加の最適な期間は、用いられる駆動回路および特定の誘電泳動媒体の特性と共に変化する。光学透過において一連の別個のステップよりもむしろ滑らかな連続的な変化の印象を観察者に与えることが望まれる。振幅(すなわち、ディスプレイ全体に印加される電圧)は、周波数が変化すると、一定に保たれ得るかまたは保たれ得ないが、一定の振幅を使用することが典型的には好ましい。なぜなら、そのことがより単純な駆動回路の使用を可能にするからである。一方、低周波数ステップはしばしば、より低い電圧においてうまく実行するので、低周波数ステップにおいて、より低い電圧を使用することは、ディスプレイの全消費電力を減少させる。
【0052】
添付図面の図1は、1つの先行技術の周波数ステップ方法に関する電圧対時間曲線を概略的に示す。図1に示されるように、ディスプレイは、方形波交流電圧を用いて、時間tに対して周波数fで、次いで、時間tに対してより高い周波数fで、その後、時間tに対してさらにより高い周波数fで駆動される。
【0053】
対照的に、下記の表は、誘電泳動ディスプレイをその閉状態からその開状態に駆動する、本発明のより典型的な波形を示す。
【0054】
【表1】

この表から、この好ましい波形は、各25Hzの16個の別個のステップで各ステップ間が0.2秒の期間である100Hzから500Hzまでのステップであることがわかる。
駆動周波数のそのような徐々の増加は、ディスプレイの開状態において透過の向上(増加)という結果となることが見出された。顕微鏡による観察に基づき、この透過の向上は、カプセルまたは小滴の壁における色素パッキングの向上によるものと考えられる(但し本発明はこの考えに決して限定されない)。この方法での非常に多くの数のより小さい周波数ステップを用いることはまた、ディスプレイの閉状態から開状態への速くかつ滑らかな遷移を提供し、観察者には個々の小さなステップを見えない。一方、単一またはより少ない数の大きなステップが用いられる場合、観察者には遷移中の望ましくないフリッカが見え得る。
【0055】
図2および図3は、共に定電圧で動作する、本発明の2つの異なる周波数ステップ方法に関する周波数対時間曲線を例示する。図2および図3において、誘電泳動媒体は30Hzの最適閉周波数および1000Hzの最適開周波数を有することが仮定され、これらの周波数は実際に得られる典型的な周波数である。従って、各場合において、遷移範囲は60〜500Hzである。図2の方法において、277の異なる周波数の各々が0.05秒間、印加され、周波数は時間と共に幾何級数的に増加する。ディスプレイが遷移範囲内の全14秒の開遷移の中から約8秒を費やすことが分かり、遷移範囲内のこのドウェル時間が良好な開状態を提供するのに十分であることが見出された。
【0056】
図3は、単純な回路に関して図2の指数周波数曲線よりもインプリメントするのが易しくあり得る周波数対時間曲線を例示する。図3において、周波数は、30Hzの最適閉周波数から60Hzの遷移範囲の低端に3ステップで急速に増加させられ、各周波数は0.2秒間印加される。遷移領域内において、周波数は、好都合には1Hzである多数の非常に小さい周波数ステップで直線的に増加させられ、各周波数は0.03秒の最小期間に印加される。周波数が一旦500Hzの遷移領域の上限に到達すると、周波数は50Hzステップで上げられ、各周波数は0.2秒間印加される。この周波数対時間曲線は、ディスプレイが遷移範囲内の16秒の全遷移時間のうちの13秒を越えて時間を費やすことを可能にし、最適に非常に近い開状態を生成する。
【0057】
本発明の周波数ステップ方法およびこの方法を用いるディスプレイは、上記の米国特許第7,116,466号および第2006/0038772号に説明される駆動方法の任意のオプションの特徴を含み得る。従って、例えば、周波数ステップ方法は、ゼロ電圧の期間を含み得、駆動電圧の振幅が変化する。ディスプレイは、電極と誘電泳動媒体との間に配置される絶縁層が備えつけられ得る。そのような絶縁層は、約10〜約1011オームcmの体積抵抗率を有し得る。一部の場合において、視覚面から離れた絶縁層は、接着層によって形成され得る。粒子を囲む流体は、懸濁流体において固有粘度ηを有しかつ懸濁流体においてイオン群またはイオン化可能群が実質的にないポリマーを流体内において溶解しそして分散させ得、ポリマーは、約0.5η−1〜約2.0η−1の濃度の懸濁流体に存在する。ポリマーはポリイソブチレンであり得る。ディスプレイは、観察者に見えるようにディスプレイに隣接したカラーアレイを備え得、その結果、観察者によって知覚されるディスプレイの色は、ディスプレイの様々な画素の開光学状態および閉光学状態を変化させることによって変動され得る。
【0058】
本発明の周波数ステップ方法は、完全に開の高度透過状態への滑らかでかつ速い遷移を生成し得、中間グレーレベル、すなわち完全開状態と完全閉状態との中間の光学状態にディスプレイを駆動するためにもまた用いられ得る。
【0059】
本発明の第2の局面は、光透過電極を通して電気泳動ディスプレイまたは誘電泳動ディスプレイが見られる光透過電極が電源に接続される方法に関する。上記のE InkおよびMIT特許および出願のいくつかにおいて論議されるように、電気泳動媒体は典型的には、約1010オームcmの高体積抵抗率を有し、その結果、DC電界が媒体全体に印加されるとき、電流(current draw)は、非常に低く、媒体を通る漏電のみから生ずる。しかしながら、AC電界が印加されるとき、電気泳動媒体はキャパシタとして働き、該キャパシタは、交流半周期ごとに充電および放電される。換言すると、電気泳動媒体のインピーダンスは、駆動周波数に反比例し、高周波数動作中に流れる電流は、DC駆動中に流れる電流よりはるかに大きい。
【0060】
電気泳動ディスプレイおよび誘電泳動ディスプレイにおいて光透過電極(これは、典型的にはディスプレイ全体に延びる単一の電極である)を形成するために通常用いられる材料は、適度の導電性があり、例えばインジウム酸化スズ(ITO)は、約300オーム/平方の導電率を有する。従って、大型ディスプレイ(例えば、11×14インチまたは279×355mm)が高周波数で駆動されるとき、重大な電圧降下が、光透過電極を電源に接続するために用いられる導体が光透過電極に接触する点と、この導体から離れている光透過電極における点との間の光透過電極内において起こり得る。(光透過電極である必要はなく典型的には金属トレースである導体は、光透過電極の導電率よりはるかに大きい導電率を有する)。
【0061】
そのようなディスプレイのDC駆動および高周波数AC駆動中の異なる状態は、添付図面の図4および図5に例示される。図4は、DC(または非常に低い周波数AC)駆動中の状態を例示する。電気泳動媒体は事実上一連のキャパシタとして(厳密にいうと非常に高い抵抗率の抵抗器と並列である一連のキャパシタとしてであるが、しかし本目的にとってこのことは本質的に差がない)として働き、光透過層内において本質的に電圧降下がない。対照的に、図5は、高周波数AC駆動中の状態を例示する。電気泳動媒体は、光透過電極の固有抵抗と直列の一連の抵抗器として働き、重大な電圧降下が光透過電極内に起り、その結果、電極の電圧が導体からの距離に従って変化する。
【0062】
光透過電極内の電極電圧における変化は望ましくない。なぜなら、それらの変化が、同じ電界を受けるように意図されている同じディスプレイの種々の部分において異なる電界を生成し、従って、ディスプレイの種々の部分を異なる速度で切り替わらせるからである。例えば、ディスプレイが白の背景上の(例えば)黒のテキストから濃い黒に書き直される場合、光透過電極内の電極電圧における変化が目に見える「波」を起こし得、それによって、導体に最も近い白の背景の部分が最初に切り替わり、導体からより遠い部分は後に切り替わる。そのような波のアーティファクトは、ディスプレイのユーザにとって通常不快である。
【0063】
そのような目に見えるアーティファクトを減少させる1つの方法は、より導電性のある光透過電極を提供することである。しかしながら、技術の現在の状態において、そのようなより高い導電率は、電極の光学透過の犠牲を伴う。また、例えばITOなどの、光透過電極を形成するために用いられる多くの材料は、色づけされ、光透過電極の導電率をその厚さを増加させることによって増加させることは、ディスプレイの望ましくない色づけという結果となり得る。
【0064】
本発明に従って、導体は複数の間隔を置いた点において光透過電極に接続される。例えば、長方形のディスプレイにおいて導体は、電極の各端の中点で光透過電極と接触するように配置され得る。本発明は、ディスプレイの少なくとも1つの点が単一の導体接続点から200mm以上ある十分に大きいディスプレイにおいて特に有用であり得る。実際上、建物において用いられるほとんどの可変透過窓は、少なくともこの大きさである。本発明の好ましい形態において、導体は、光透過電極の全周囲または実質的にその全周囲の周りに延びる導電性のトレースの形態を有する。このことは、導体をディスプレイの活動領域内のすべての点にできるだけ近くに導体を配置し、従って光透過を犠牲にしたり、または望ましくない色を生成したりすることなく、高周波数駆動中に非均一性を切り替えることを最小限にする。そのような導電性トレースはできるだけ高い導電性を有し、例えば、約0.02オーム/平方の導電性を有するスクリーン印刷のシルバーペイントは、11×14インチ(279×355mm)までのディスプレイにおける均一の切り替えを生成することが見出され、約15オーム/平方の導電性を有するスクリーン印刷のカーボンペイントは、そのような大型ディスプレイにおいて不満足であった。
【0065】
ディスプレイの周囲の周りに導電性トレースを提供する効果は、添付の図面の図6において例示される。光透過電極の全周囲は、導電性トレースと接触しているので、全周囲は、トレースの電圧Vに保たれる。図5と図6とを比較すると、光透過電極において間隔を置かれた点に存在する電圧間の最大差は、図5に示される先行技術のディスプレイにおいてよりも図6に示される本発明のディスプレイにおいてはるかに少ない。
【0066】
本発明は、大型ディスプレイにおいて、より均一の切り替えを提供するのみならず、光透過電極内の抵抗の加熱の減少によるディスプレイの信頼性および耐久性を向上させる。可変透過窓が電気泳動媒体の向かい合う側に2つの光透過電極を有することが理解され、そのような窓において、通常、本発明を両方の光透過電極に適用することが望ましい。但し、本出願人は、本発明が2つの光透過電極のうちの1つのみに適用され得ることの可能性を絶対に排除しない。しかしながら、本発明の有用性は、可変の透過窓に限定されない。本発明は、1つの光透過電極、および1つ以上の不透明の電極を有する、電子ブックリーダおよび類似のデバイスに用いられるディスプレイなどのディスプレイに適用され得、高周波数駆動を必要とする駆動計画を用いることが必要であるかまたは望ましい場合、そのようなディスプレイにおいて切り替えの均一性を改善し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体と、該流体内の複数の少なくとも1種類の粒子とを含む誘電泳動媒体であって、該粒子は、誘電泳動媒体に電界を印加する際に該流体を通って可動である、誘電泳動媒体と、
少なくとも1つの光透過電極であって、該誘電泳動媒体が該少なくとも1つの光透過電極を通って見られ得るように、該誘電泳動媒体に隣接して配置された少なくとも1つの光透過電極と、
該少なくとも1つの光透過電極から電源に延びる導体であって、該導体は光透過電極よりも高い導電率を有し、該誘電泳動ディスプレイは、該導体が少なくとも2つの間隔を置かれた点において該少なくとも1つの光透過電極と接触することを特徴とする、導体と
を含み、
該誘電泳動媒体および該少なくとも1つの光透過電極は、該導体が単一の点のみにおいて該少なくとも1つの光透過電極に接続されるときに、該単一の点から少なくとも200mmにある該誘電泳動媒体に隣接する少なくとも1つの点が存在するように構成されている、誘電泳動ディスプレイ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの光透過電極は、平面図において長方形であり、前記導体は、実質的に該少なくとも1つの光透過電極の平面図における各端の中間で該少なくとも1つの光透過電極と接触するように配置されている、請求項1に記載の誘電泳動ディスプレイ。
【請求項3】
前記導体は、前記少なくとも1つの光透過電極の平面図における実質的に全周囲の周りに延びる導電性経路の形態を有する、請求項1に記載の誘電泳動ディスプレイ。
【請求項4】
前記導体は、1オーム/平方以下の抵抗率を有する、請求項1に記載の誘電泳動ディスプレイ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの光透過電極は、インジウム酸化スズを含む、請求項1に記載の誘電泳動ディスプレイ。
【請求項6】
前記誘電泳動媒体の両側に光透過電極を有する可変透過窓の形態である、請求項1に記載の誘電泳動ディスプレイ。
【請求項7】
請求項1に記載のディスプレイを含むデバイスであって、該デバイスは、光変調器と、電子ブック読取り装置と、ポータブルコンピュータと、タブレットコンピュータと、セルラ電話と、スマートカードと、標示と、時計と、シェルフラベルと、フラッシュドライブとのうちの1つである、デバイス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−238032(P2012−238032A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−194141(P2012−194141)
【出願日】平成24年9月4日(2012.9.4)
【分割の表示】特願2009−548364(P2009−548364)の分割
【原出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(500080214)イー インク コーポレイション (148)
【Fターム(参考)】